.医師主導治験の実績あり -...

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1)背景 上記40施設のうち、32(80%)500床以上の 医療機関であり、半数以上は大学病院であっ た。最も多かった回答は、医師主導治験実施 件数では1件、治験の相ではPhaseであった。 [111113] 病床数 件数 500床以上 32 80 300~499床 6 15 無回答 2 5 1111.病床数 件数 国立大学病院 14 35 私立大学病院 8 20 国立病院機構 6 15 公立病院 5 12 公的病院 3 7 国立高度医療 センター 1 3 私立病院 1 3 その他 1 3 無回答 1 3 1112.経営母体 ※その他:Phaseなし 1 調査にご協力頂いた45施設中、医師主導治験の実績があったのは40施設であり、それらの医師主導治験 の実績のあった施設における調査結果は次の通りであった。 .医師主導治験の実績あり

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1)背景

上記40施設のうち、32件(80%)が500床以上の

医療機関であり、半数以上は大学病院であった。最も多かった回答は、医師主導治験実施件数では1件、治験の相ではPhaseⅢであった。[1‐1‐1~1‐1‐3]

病床数 件数 %

500床以上 32 80

300~499床 6 15

無回答 2 5

1‐1‐1‐1.病床数

件数 %

国立大学病院 14 35

私立大学病院 8 20

国立病院機構 6 15

公立病院 5 12

公的病院 3 7

国立高度医療センター

1 3

私立病院 1 3

その他 1 3

無回答 1 3

1‐1‐1‐2.経営母体

※その他:Phaseなし

1

調査にご協力頂いた45施設中、医師主導治験の実績があったのは40施設であり、それらの医師主導治験の実績のあった施設における調査結果は次の通りであった。

Ⅰ.医師主導治験の実績あり

1-1-3-2-2(2)対象疾患(複数ある場合は全て)

2

悪性腫瘍 29 間質性肺炎 3

血液疾患 14 麻酔の補助・鎮痛[小児・新生児] 2

ワクチン 9 膠原病 1

神経変性疾患・末梢神経障害 9 脳動脈瘤 1

けいれん[小児・新生児] 7 炎症性腸疾患 1

ネフローゼ症候群[小児・成人] 6 その他[健康成人・小児・婦人科] 3

心房細動 4

企業治験用と医師主導治験用の2SOPを別々に作成していたのは、23 件(57%)であった(IRB の手順書のみ共通としている施設含む)。[1-1-4]

※2SOP:企業治験用SOPと医師主導治験用SOP1SOP:企業治験用、医師主導治験用(治験調整医師業務は除く)共通の一体型※その他:委員会手順書は共通、他は別々

3

2)結果

2‐1.医師主導治験の実施上の課題[1‐1‐5]2.医師主導治験の実態

【結果1】 実施医療機関内で、他部門の協力を得るために行った工夫 [1‐1‐5‐1]

(1)特になし企業治験の実施経験があるので、医師主導治験として特別な工夫は必要としなかった。(16件)(2)啓発活動 医師主導治験の意義を理解してもらうために、外部講師による講演会や院内説明会を対象者に合わせた内容で企画・開催した(対象者:病

院幹部のみ、医療スタッフ全体、特定の医師主導治験に関連する部署のスタッフなど)。(2件) 臨床研究の重要性、ならびに企業治験と医師主導治験の相違点について、病院職員全体に説明した。(3件) 医師主導治験と企業治験との業務分担の違いを確認し、文書化した。(3)実施協力体制整備 GCPと医師主導治験について関係者の理解を深め、意識改革する必要があった。 医師主導治験の支援業務のほとんどをCRC個人が担う体制(治験管理センターは関与しない)であったため、院内の協力体制をどのように

整備すればよいかわからなかった。 医療機関内の統一した対応を考えるには至らなかった。 医師主導治験実施体制整備の責任者をはじめに明確にした。(担当医師、経験豊富なCRCや治験事務担当者からなる推進チームなど) 関連部門の協力を得るための依頼方法や役割分担について、当該部署の実務キーパーソン(課長、師長や主任など)と早期に調整を行い、

スタッフに周知する具体的な対策を検討した。 可能な限り早い段階で関係者を対象としたミーティングを開催し、疑問点の解消ならびにメンバー・顔合わせによる連帯感を生むように努め

た(担当診療科、臨床試験管理センター、看護部、薬剤部、検査部、経理部門、医事部門など) 詳細な調整を要する部署の担当者とは、とくにコミュニケーションをとりながら業務内容の確認を行った。病院全体の事業であることを理解

してもらう必要があった。• 外来/化学療法センターの看護師や薬剤師• 夜間や緊急検査を依頼する検査部

関連部署に配布する説明資料が重要であった。試験概要のわかりやすいサマリーや当該部署が直接関連する業務の詳細な説明スライド等、協力を依頼する部門に焦点を当てた資料の作成が必要であった。当該治験用のクリニカルパスウェイを作成して、目的や実施すべき業務を1枚に図式化してまとめた。

当該診療科の医師とのコミュニケーションと情報共有が重要であった。(カンファレンスや勉強会の時間を活用した医師主導治験に関するミーティングの実施、症例適格規準と連絡先を記載した文書を外来/病棟の目につきやすい場所に配置、被験者カルテに医師主導治験参加が一目でわかるシール貼付、被験者スクリーニングリストや有害事象記録シートの使用徹底など)

(4)経費に関する調整 医師主導治験の必要経費について、事務部門と事前協議を行った。 当該部署へ研究費を配分した。あるいは、研究費を直接配分できない旨を説明して理解してもらった。 CRC人件費が配分されない医師主導治験について、治験管理センター予算枠から支援したが、負担が大きかった。 CRC人件費を配分されない医師主導治験では、SMOからCRCを追加雇用する経費を捻出できないので、治験を実施できなかった。(5)実施上の問題点 企業治験と比較すると、依頼者に判断を仰ぐのではなく、治験責任医師として判断する事項が多くあるため、本当に医師判断でよいのか迷

うことがあった。 医師主導治験では、安全性情報管理について特別なWEB対応を求められたが、対応が難しかった。

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

4

【結果2】 医師主導治験と同時に、企業治験や院内臨床研究を並行実施(または支援)する際の問題点[1‐1‐5‐2]

(1)特に問題なし (3件)(2)人的リソースの問題 CRCのマンパワーが足りなかった。(7件)

• CRC人件費が配分されない医師主導治験では、新たに派遣CRCを雇用することができなかった• 担当CRCの負担が大きかった。企業治験、医師主導治験、研究者主導臨床研究のすべてをCRCが支援する医療機関では、一人のCRC

が担当する試験数が30を超えた。高度で複雑な試験に関連した日々の業務を遂行するだけで精一杯の状況であった。• 担当CRCは、CRC業務と治験事務局業務のバランスを取りながら両方実施しなければならなかった。• マンパワーの問題で、十分な支援が実施できていない。

治験事務局担当者のマンパワーが足りなかった。• 事務局担当者の医師主導治験に関する理解度と事務処理能力により、実施可能な医師主導治験数が制限された。

(3)企業治験との業務内容の違いに由来した問題 医師主導治験では、CRCならびに治験事務局の業務量が全体的に増加した。(3件)

• CRC負担を軽減するために、疾患別の担当グループ制導入、職種や経験を考慮した担当試験の決定、SMOからのCRC派遣、CRC定員増と新規雇用を行ったが、担当CRCの負担感は大きかった。

企業治験であれば企業(モニター)が準備してくれる書類や資材を、医療機関側で準備しなければならなかった。(例:治験ファイル、治験ツール、関連部門への連絡や交渉、重篤な有害事象発生時の対応方法の確認、安全性情報のIRB報告書など)(3件)

IRB審議が必須となる文書が企業治験とは異なるため、特別な注意が必要であった。 治験実施計画書の変更手続きや安全性情報に関するIRB報告をタイムリーにもれなく行うための業務量が多かった。 自ら治験を実施する者は多忙であり、医師主導治験に関する知識・理解を深めるには至らなかった。(CRCが実施主体であった。)

• 特に、対応しなければならない書類の多さやモニターの位置づけが企業治験とは異なることを治験責任医師に理解してもらうのが大変であった。

• 責務が多すぎて、自ら治験を実施する者のモチベーションが低下しがちであった。 企業治験用のSOPに医師主導治験に対応する内容を追記したので、医師主導治験の調整事務局から提供された雛形SOPを活用できなかった。 企業治験とは異なる保険外併用療養費や負担軽減費の取扱いについて、医事課と事前調整(オーダリングシステムの変更等)を行う必要があっ

た。(4)研究費に関する問題 医師主導治験では、施設配分の研究費が少なすぎた。(4件)

• 医師主導治験数が増えても、収入が少ないためにCRC増員申請の理由にならなかった。• 被験者に支払う負担軽減費がない、または少額であった。

試験の種類により医療機関の費用負担が異なることについて、被験者のみならず、医師や看護婦にも周知徹底する必要があった。 公的研究費であったため、医療機関に配布された研究費管理について、経理課との連絡・調整が重要であった。

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

5

【結果3】 医師主導治験における調整事務局と実施医療機関の業務分担について

主に実施医療機関が実施していた業務①医療機関におけるSOP作成③スクリーニング名簿・署名印影一覧他(雛形)の作成④自施設スタートアップミーティングの開催⑤モニタリング・監査を実施するための手続き⑧研究費運用・管理⑪症例報告書作成・クエリ対応⑬IRB申請業務⑭臨床検査基準値一覧(雛形)作成⑮院内関連部署の役割分担⑯自施設で発生したSAEに関する報告書作成⑰実施医療機関における「治験に係る文書又は記録」の管理⑳治験調整事務局との情報共有以上の各業務について、半数以上で治験責任医師/自ら治験を実施する者や実施医療機関内のスタッフが担当していた。しかし、③、⑬、⑭については、一部治験調整事務局が実施しているケースが認められた。また、⑳をモニターやデータセンターが行っていると回答した施設はなかった。

主に治験調整事務局により実施されていた業務②治験調整医師への委嘱/依頼者契約手続き⑦説明文書・同意文書・補償関連文書の雛形作成⑫ポケット版プロトコル・症例ファイル等ツール作成⑱業務委託先との契約書作成・締結⑲治験実施計画書・標準業務手順書等治験特定文書作成㉒PMDAへの治験届(計画届、変更届、終了届含む)の対応・提出以上の各業務については、半数以上の施設が治験調整事務局からの提供を受けていた。

施設によって、主な実施者が治験調整事務局と実施医療機関に分かれた業務⑨治験薬管理表(雛形)作成⑳資金提供者への実績報告書作成㉓知的財産の取り扱い㉔他施設で発生したSAEに関する治験責任医師間の意見調整以上の各業務については、実施医療機関が実施している場合と、治験調整事務局が実施している場合に分かれた。

2‐2 企業主導治験との主要な相違点及び業務分担の相違点

6

2‐1 (1)多施設共同医師主導治験での実務のメイン担当2‐1 (2)企業治験での実務のメイン担当

37

【結果4】 企業主導治験と医師主導治験での実施体制の違い[2‐1(1)、(2)]

多くの施設において、企業主導治験で治験依頼者またはモニターが実施していた業務(スクリーニング名簿・署名印影一覧及び補償関連〔保険加入・補償概要雛形の作成等〕、治験薬管理表雛形、説明文書・同意文書/アセント文書の雛形及びポケット版プロトコルや症例ファイル等のツール作成)は、医師主導治験においては治験調整事務局により実施されていた。また、企業治験において、IRB 申請業務を治験依頼者またはモニターが行っている施設でも、医師主導治験において、これらの業務をモニターが行っている施設はなかった。※“治験責任医師―実施医療機関の長との間の合意書(雛形)作成“については、GCP省令改訂により不要となったため反映していない。

7

2‐1 (1)多施設共同医師主導治験での実務のメイン担当2‐1 (2)企業治験での実務のメイン担当

37

8

【結果5】医師主導治験と企業治験の相違点で理解・調整に時間を要した事項 [2-1(3)]

医師主導治験を実施した際に、企業治験との相違点について、理解・調整に時間を要した業務30項目から5つ選択してもらった。その結果をもとに、上位5項目に対して順に、5~1 ポイントを加算し、ポイント化した。最もポイントが高かった項目は、「新規IRB申請と治験計画届提出の順番の違い等、治験開始までの手順」であり、次いで、「医療機関における医師主導治験のSOP作成」、「IRB申請業務」、「治験調整事務局との情報共有」、「研究費交付手続き、運用・管理」の順であった。[2‐1(3)]

0 20 40 60 80 100 120

その他

PMDAへの治験届(計画届・変更届・終了届含)の提出

自施設で発生したSAEに関する報告書作成

業務委託先との契約書作成・締結

適合性書面調査、GCP実地調査(経験がある場合)

自施設におけるスタートアップミーティングの日程調整・開催

資金提供者への実績報告書作成

モニタリング・監査関連手続き

他施設で発生したSAEに関する治験責任医師間の意見調整

治験責任医師―実施医療機関の長との間の合意書作成

実施医療機関における「治験に係る文書又は記録」の管理

補償関連(保険加入・補償概要雛形の作成等)

治験実施中の手順

院内関連部署の役割分担

ポケット版プロトコル、症例ファイルなどツール作成

症例報告書作成・クエリ対応

治験実施計画書・説明文書同意文書などの版番号管理

説明文書・同意文書/アセント文書の作成

研究費交付手続き、運用・管理

治験調整事務局との情報共有

IRB申請業務(新規・変更・安全性情報・終了報告など含む)

医療機関における医師主導治験のSOP作成

新規IRB申請と治験計画届提出の順番の違いなど、治験…

9

【結果6】 実施医療機関内で、医師主導治験と企業治験との相違点を理解してもらうために、調整に特に時間を要した(2‐1(3)回答))の詳細および改善策 [2‐1(4)]

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

1.新規IRB申請と治験計画届提出の順番の違い等、治験開始までの手順【詳細】・企業治験との手順の違いに当惑した。特に、IRB、治験届、SOP、関連文書、版番号管理、治験調整事務局との情報共有、研究費運用に関する理解が必要である。・新規IRB申請書類の準備に過去3回関わり、初回はSOPその他文書整理と確認に3ヶ月を要した。2回目は補償と個人情報管理の対応に多大な時間を要した。3回目で、基本的には統一書式の治験実施申請書に記載されている資料のみが重要であることがわかった。【改善策】治験開始までの手順の違いについて、まずは自分でGCPやQ&Aの記載を確認し、本質的な理解を深める努力が重要である。不明確な点は、調整事務局に確認する必要がある。少しでも早く準備に取りかかるのがよい。医師主導治験と企業治験の相違点をまとめたマニュアル等があれば、医師主導治験が実施しやすくなると思う。

2.医療機関における医師主導治験のSOP作成【詳細】・初めて医師主導治験を実施する際に、最も時間を要したのはSOP作成であった。・企業治験と医師主導治験のSOPは一体型になっており、度重なる改訂作業が必要であった。・企業治験用のSOPをもとに医師主導治験用のSOPを作成したが、多大な労力を要した。治験調整事務局が提供してくれた雛形をそのまま使用できなかった。【改善策】企業治験と医師主導治験のどちらにも対応できるSOPの雛形があれば、医療機関でのSOP作成が容易になると思う。治験事務局担当者が、SOPの作成や確認作業に関与した方がよい。

3.治験実施計画書・標準業務手順書など特定の治験のための文書作成【詳細】・はじめて医師主導治験を実施した時は、特有な書類や医療機関が準備しなければならない書類に戸惑った。・「治験に係る文書または記録」の整理を行い、企業治験の業務効率化に大いに役立ったので、医師主導治験についても着手した。【改善策】文書作成と管理に係るマニュアル作成を望む。

4.治験実施計画書・説明文書・同意文書などの版番号管理【詳細】・医療機関が作成した文書の改訂の履歴(経緯)を、どこまで残す必要があるのか悩ましい。・説明文書・同意文書を製本する際に、(改訂が多いので)最新版であることに注意を要した。【改善策】治験調整事務局から配信された資料を、すぐにリスト化・フォルダ化して整理・保管する。(治験調整事務局がWEB管理してくれると、医療機関側も経緯把握と保管が容易であった)。最新版の説明文書・同意文書は、被験者候補の連絡があったらすぐに提供できるようにCRC管理とした。

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5.治験調整事務局との情報共有【詳細】・関与組織が多すぎて、問い合わせ窓口が不明瞭であった。組織間の認識が異なり、回答に齟齬があり混乱することがあった。

・治験調整事務局と情報共有をしなければならない機会が頻繁であった。しかし、医療機関側では、担当医師からのレスポンスが遅れるため、事務局担当者が調整事務局に再度連絡することが多かった。・はじめて医師主導治験を実施する医療機関では、事務手続きについて治験調整事務局からの詳細な情報提供が必要であった。・調整事務局の母体により、求められる手続きや書類が異なるため、調整事務局と医療機関が密に連絡をとることが重要であった。・医療機関側で必要となる文書についても、調整事務局から雛形を配信してもらえたので助かった。【改善策】はじめに、調整事務局の問い合わせ窓口を確認しておく。調整事務局との連絡を密にとる。(メール連絡の際は、調整事務局とCRC・医療機関の事務局担当者間の連絡ではなく、医師にもCCをつけて情報共有するとよい。)調整事務局との連絡や事務手続きに時間を要すため、医療機関側にも柔軟な対応が求められる。

6.研究費交付手続き、運用・管理【詳細】・企業治験とはまったく運用が異なり、公的研究費は制限がありすぎて使いづらかった。人件費に使えず、年度末に消耗品にしか使えない感があった。被験者負担軽減費も十分ではなかった。・企業治験とは研究費の額に差があるため、通常のポイント算定方法による病院への支払いができなかった。

・医師主導治験では、医療機関側の研究費に関する窓口が治験事務局になったが、通常は研究費に関する取扱いは行わない部署であるため苦労した。【改善策】研究費が少ないので、人件費はボランティアと考えて、被験者の負担軽減費に配分するように予算化せざるを得ない。医学的・社会的貢献を考慮した「医師主導治験用治験費用算定の取り決め」を経営陣と交渉して作成した。医師主導治験の受託件数は、治験事務局がどの程度までサポートできるかの業務量を勘案して決定する。

7.資金提供者への実績報告書作成【詳細】・実績報告書の作成には、治験責任医師・分担医師・治験事務局・経理部門・CRC等の関係者が合同で作成しなければならないが、年度末の繁忙期になることから、関係者間のスムースな連携に努力を要した。報告書作成には、1ヶ月半を要した。【改善策】

年度始めに、年度末には実績報告書の作成が必要であることを念頭に、月々の業務実績の記録、症例報告書の記載、経理に関する必要書類の確認等を整理しておくと、年度末の負担を軽減できる。

11注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

8.ポケット判プロトコル、症例ファイルなどツール作成【詳細】・企業治験ではサポートしてもらえるツールを、自分たちで作成しなければならなかった。【改善策】医師主導治験でなくとも、治験実施に必要なツールは、実施医療機関として積極的に創意工夫して作成している。

9.説明文書・同意文書/アセントの作成【詳細】

・国際共同医師主導治験の場合、または国内多施設共同治験の場合、治験調整事務局から配信される雛形を、医療機関のテンプレートに合わせてアレンジするが、この作業が大変であった。特に、有害事象の頻度を情報収集して追記する作業に時間を要した。【改善策】説明文書の雛形を使用する際は、治験の目的と対象者を重視して、本質を見失わないように注意する。

10.IRB申請業務【詳細】・IRB申請資料の作成や、審査情報管理(情報の共有)に労力を要した。・特に、初回IRB申請資料の準備に時間がかかった。・年度はじめの初回IRB申請は、人事異動等と重なり、混乱をきたした。・当初は、モニタリング報告者や監査報告書のIRB審議が必要であることを知らず、数ヶ月間審議申請していなかった。【改善策】IRB審査資料は、ファイルや見出しなどの必要資料を「医師主導治験用」として作成し、他の医師主導治験でも使用できる汎用性のあるものにする。

11.院内関連部署の役割分担【詳細】・「自ら治験を実施する者」の医師主導治験に対する意欲と考え方が、他の院内スタッフには十分伝わっていなかった。・「自ら治験を実施する者」の責務が、医師自身に認識されていなかった。・分担医師:企業治験との違いについて理解が不十分であったため、各々の責務について共通認識を得られなかった。(特にCRF記載の責務)・IRB委員ならびに事務部門:同上であった。・CRC:医師に代わり、すべての治験調整事務局との連絡・院内調整の役割を担うことが多かった。・医師主導治験の実施にあたり、IRBのみならず病院内の承認会議の開催に手間取った。・関連部署に説明し、協力を得るのが困難だった。(Web対応の理解等)【改善策】CRCが医師主導治験と企業治験を兼務しない方がよいという見解である。当院では、CRC業務は企業治験3本=医師主導治験1本という見解であるが、実際にはうまく配分できていない。したがって、CRC増員もしくは医師の協力が必須である。医師主導治験担当が重複して業務負荷が集中しないように、担当者の配置に配慮する。医師主導治験の専任として、企業治験の経験が豊富なスタッフを増員する。院内調整を円滑に行うために、院内窓口として医師主導治験に詳しい専門家を配置する。研究費の制約からスタッフ増員は望めないので、既存のスタッフ活用をする。

12

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

12.その他

【詳細】・「安全性情報の取扱い」について、調整に労力を要した。【改善策】日頃から業務の効率化を考慮した文書管理を行う。院内関係者(特に責任医師・分担医師・CRC・事務局)の教育計画を具体的に立案する必要がある。医師主導試験を実施するにあたり、実施医療機関における研究費の運用方法について検討する必要がある。(使いやすくしてほしい。)臨床試験を熟知した医師、生物統計家、データマネジャー、メディカルライター等、不足している人材の確保が課題である。

13

【結果7】医師主導治験の実施経験がある40施設のうち、27 施設が複数の医師主導治験の同時実施は可能と回答し、実際に19施設(47%)が複数医師主導治験の同時実施を経験していた。同時実施は不可能と回答した施設は3施設であり、いずれも経験した医師主導治験の実施件数が1件の施設であった[2‐2]。

2‐3 複数の医師主導治験の同時進行について

14

2‐4 医師主導治験実施によるメリット

【結果8】医師主導治験の実施によるメリットとしては、多くの施設が、「対象となる被験者の治療の選択肢を広げられる」、「医療の発展に貢献できるという認識が高まる」を挙げていた[2‐4]。

【結果9】医師主導治験を同時に複数件実施する際の問題として、マンパワーやコスト等の負担や、手順の複雑化が挙げられた。一方で、医師主導治験の実施にあたり提供を希望するツールとしては、保存すべき文書のリストや、スクリーニング名簿や署名印影一覧の文書フォーマット、マニュアルやIRB 審査手続き状況管理リスト等が挙げられた[2‐3]。

15

【結果10】治験調整事務局、行政、治験薬提供者、CRO、SMOに対する、実施医療機関からの要望は次の通りであった。

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

1)当局への要望研究費について・公的研究費の運用について制約が多すぎるので、使いやすく改善を望む。

・医師主導治験を実施する際の公的研究費は、治験終了までの全体予算を担保してほしい。(治験を完遂できなくなる。協力いただいた患者さんや関係者に多大な迷惑をかけることになる。)

・医療ニーズがあるにも関わらず、治験を実施しなかった製薬企業に対して、医師主導治験の成果物と製造販売権が与えられ、実働した研究者や医療機関には実費すら補填できない仕組みは問題がある。したがって、国として、賛同する企業等から資金を集めて医師主導治験ファンドを創設する等の研究資金対策を講じてほしい。

・国として、薬剤の開発方法の標準化やシステム化に取り組んでほしい。具体的には、医師主導治験を簡便で安価な方法で実施できるような環境整備をしてほしい。

・国策として臨床試験を推進している韓国のように、国として医師主導治験実施のための積極的な研究費交付を行い、実施医療機関に必要なスタッフ配置ができるようにしてほしい。・最低限の医療機関の必要経費として、フルサポートするCRCその他の人件費を予算化できる研究費の配分を望む。[複数回答あり]

実施体制について

・多施設共同で実施する医師主導治験は、すべての実施医療機関の責任医師が「自ら治験を実施する者」にならなければならない点は、とても煩雑である。自ら治験を実施する者(個人)ではなく、学会等の団体が医師主導治験を実施できるような法整備を望む。

教育システムについて・医師主導治験に関する教育システム・専門家の資格について、第三者的に評価する体制を望む。

実地調査について・実地調査の項目や注意事項等をまとめてもらいたい。

2治験調整事務局への要望

・治験調整事務局の対応・業務処理能力・連絡・配信資料が治験の成功に大きく影響すると思うので、医療機関の事務局と治験調整事務局のコミュニケーションを密に行う努力をしたい。・これまでの経験をもとに、業務のマニュアル化を進めてほしい。・班会議を定期的に開催してもらいたい。・実施医療機関に対して、特にIRB申請書類や保管文書について、細かく指示してもらいたい。・問い合わせした際に、施設判断(担当医師の判断)ではなく、推奨案をもらえると有り難い。・治験薬搬入の際に、医療機関ごとの事情を考慮して個別対応をしてもらいたい。

16注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

3)治験薬提供者への要望・特になし。

4)CRO/SMOへの要望・医師主導治験を実施するにあたり、治験調整事務局業務の参考になると思うので、製薬企業の開発部門やCROの業務を見学したい。・医師主導治験において、治験調整事務局と実施医療機関と一緒に業務を行うCROの存在は重要なので、医師主導治験に関する理解度の高いCROが増えてほしい。

17

1)背景

Ⅱ.医師主導治験の実績なし

回答45施設中、医師主導治験実績なしと回答した5施設は、すべて企業治験の経験ありと回答した。4施設は300床未満、1施設は500床以上であり、診療所2施設、国立病院機構、私立病院、地方独立行政法人各1施設であった。

2)結果

医師主導治験の実態

【結果1】 実施医療機関として医師主導治験に参加するにあたり不明な点または不安な点[1-1-3-2-1(1)]

・医師主導試験の場合の試験実施に伴う責任の所在と研究費の負担者が不明?・治験依頼者が実施していた業務を全て実施医療機関側で実施しなければならない(治験相談、治験実施計画書作成、データマネジメント等)。 治験に関わる費用を実施医療機関で賄わなくてはならない。 治験が長期間に渡って実施する場合の費用負担(人件費等)が大きい。・何が企業治験と違うのか、具体的にわからないので、不明な点をあげられない。不安は、ない。・他施設で経験があるので事務局担当者については、不明や不安な点はない

医師主導治験への参加に際し、治験調整事務局、行政、治験薬等提供者、CRO、SMOへの要望[] [2‐5]

・<行政に対して> 同種同効薬を検査・画像診断料と同様に保険負担に変更してほしい。 医師主導治験に関する研修会・勉強会の開催頻度を増やして欲しい。・試験により、調整事務局やCROと実施施設の業務分担が異なるため、複数の医師主導治験を実施している場合に混乱を来す場合がある。 国立病院機構内では医師主導治験の実施はそれなりに評価されるが、研究費は少なく更に事務局やCRCの手間が企業治験より遙かにかかるため、モチベーションがあがらない。医師主導治験を実施している治験事務局やCRCが評価されるシステムがあると良い。・医師主導治験の担当をしたことがないのでわからない。・わからないので、要望も浮かばない。これから、医師主導治験に参加するので、実施していく中で、多くの疑問が生じるのか。

医師主導治験に参加する際の要望

注) フリー記載欄は回答を出来る限り忠実に掲載していますが、一部公開用に改編しています。

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3)考察

基本情報今回の調査で、医師主導治験実施経験ありと回答した施設の多くは、大学病院あるいは国公立・公的病院であった。医師主導治験は、難治

性希少疾患を対象としたものが多く、また企業主導治験と異なり、十分な研究費が得られないため施設側の負担が大きい。それでも、臨床研究の実施が業績の一部ととらえられる大学病院や、高度・特殊・先駆的医療の実施を使命とする国立高度医療センター、国公立病院では、医師主導治験の実施が多いと考えられる。

個々の医療機関の医師主導治験経験件数は1件が最も多く、国立高度医療センター、大学病院では、5件以上の経験がある施設も認められた。また、PhaseⅠ及びPhaseⅠ/Ⅱ試験を実施している施設は、大学病院及びがんセンターであり、日常的に高度先進医療が実施されている施設において、開発早期段階から多くの医師主導治験が実施されている現状が窺える。

標準業務手順書について55%の施設で、企業主導治験とは別に医師主導治験用の手順書を作成していたが、多くの施設で、医師主導治験と企業主導治験の相違点

に戸惑いを感じていることより(結果5,6)、双方の相違点が理解しやすい手順書の作成が望ましいと思われた。さらに、医師主導治験の場合、医療機関で設置する手順書以外に、実施計画書毎に準備及び管理に関する手順書が定められる必要がある。実施医療機関における手順書作成の際には、医師主導治験共通の部分と、実施計画書毎にアレンジが必要な部分を明確化することが重要であると思われ、本研究班ではこの点に留意して手順書を作成した。(標準業務手順書 参照)

治験調整事務局と実施医療機関の業務分担自施設内で完結する業務は、多くの実施医療機関がメインで実施していた。一方で、治験実施計画書の作成、業務委託先との契約書作成・

締結、PMDAへの治験届提出等の各施設で共通した対応が必要となる業務は、治験調整事務局が担当しており、ある程度の役割分担はできているものと思われる。ただし、一部で調整事務局が行っていた実施医療機関内の手順書作成、IRB申請業務については、本来医療機関内で行われるべき業務であり、改善を求めたい。また、治験薬管理表、スクリーニング名簿・署名印影一覧、臨床検査基準値一覧などプロトコル共通で使用できる書式については、企業主導治験でも使える汎用性の高い雛形を各医療機関で作成し、使用することが望ましい。

治験調整事務局の役割は、各医療機関で果たすべき責任(業務)を肩代わりするものではなく、各施設内で完結する業務は、各施設の自ら治験を実施する者の責任下、実施されるべきものである。この大前提にたった治験調整事務局と実施医療機関の関係が、両者のコミュニケーションと実施体制の改善につながると思われる。

企業主導治験における実施体制との比較

医師主導治験を実施した施設では、企業主導治験において、自施設におけるスタートアップミーティングの日程調整、症例報告書作成・クエリ対応、院内関連部署の役割分担、自施設で発生したSAEに関する報告書の作成を、モニターが担当していると回答した施設はほとんどなく、

実施医療機関で行うべき業務が自立して行われていた。また、企業主導治験と比較して、自施設におけるスタートアップミーティングの日程調整や、症例報告書作成・クエリ対応については、医師主導治験では治験責任医師自らが実施している施設が多かった。この背景には、医師主導治験に対する治験責任医師のモチベーションの高さが考えられる。

一方、調整事務局が実施している項目は、企業主導治験では治験依頼者が実施している項目であった。このため、実施医療機関では、治験調整事務局の役割を企業主導治験における治験依頼者と混同し、調整事務局の指示に従い医師主導治験を実施しているという認識になりがちであるが、あくまでも、調整事務局の役割は多施設間の意見の調整であり、決定した内容の最終責任は自ら治験を実施する者に帰することを理解する必要がある。

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モニターの業務の違い調整事務局との情報共有については、実際には、多くの実施医療機関でそのスタッフが担当しており、企業主導治験で医療機関と治

験依頼者間の情報伝達の主役となるモニターは、医師主導治験では関与していなかった。GCP第26条の7運用通知第1項第8号において、医師主導治験のモニターの役割には、「治験責任医師、実施医療機関及び治験に係るその他の施設との間の情報交換の主役を務めること」は含まれていないため、企業治験と医師主導治験ではモニターの役割に大きな違いがあること、治験実施に関わる全ての業務を行うのは実施医療機関側のスタッフであることを認識した上で、医師主導治験を実施する必要がある。

実施医療機関として、複数の医師主導治験を同時に実施する際の課題医師主導治験を実施した経験のある施設の半数が、すでに複数の医師主導治験を同時に実施しており、それらの施設で、複数の医

師主導治験の同時進行が不可能と回答した施設はなかった。しかし、実施する際の問題点として、マンパワーやコストが挙げられていた。

使用できる研究費は限られているからこそ、実施医療機関としては、企業主導治験・医師主導治験に限らず、治験実施プロセスの効率化や標準化等により、マンパワー・コストの削減について検討する必要があると思われる。

多施設共同医師主導治験実施に際し、提供や統一化が希望されるツール・システム文書管理リストや To do listなど、実施医療機関が自施設の治験を管理するためのツールとともに、署名・印影一覧、スクリーニング

名簿、治験参加カード等、ほぼすべての治験で普遍的に使用するツールの雛形も同様に望まれていた。実施医療機関における治験プロセスを効率化するため、管理ツールやその他の雛形を誰もが使用な形で公開することが望ましいと考

える。

医師主導治験を行うメリット社会貢献(「対象となる被験者の治療の選択肢を広げられる」、「医療の発展に貢献できるという認識が高まる」)を、殆どの回答者がメ

リットと感じていた。このことが、限られたリソース、業務量の増大にも関わらず、医師主導治験に関与する原動力であると考えられる。また、「医師主導治験から企業主導治験の実施上の改善点を見出すことができる」「医療機関内の治験・臨床研究に対する認識が深まる」等もメリットとして挙げられており、各実施医療機関のスタッフが、自ら治験を実施する者としての自覚、治験を主体的に実施する意識をもって医師主導治験を実施していくことで、企業主導治験の役割分担意識の改善につながることが期待される。

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医師主導治験実施上の問題点治験調整事務局に対する要望として、細かい手順の指示や、見解の明確化等が求められていた。しかし、治験調整事務局の役割は、あ

くまでも、治験実施上、見解の統一が必要となる事項についての施設間の意見を調整するものであり、医療機関における自ら治験を実施する者の責任を代わるものではない。医療機関が医師主導治験を自立して行うという認識と、この前提を踏まえた、治験調整事務局とのコミュニケーションが、多施設共同試験における実施体制の改善につながると思われる。

また、医師主導治験を実施する際の問題点として、マンパワーやコストの不足に関する回答が最も多かった。これまで医師主導治験を実施し続けることが出来たのは、現場の採算性を度外視した、医療への貢献という使命感によるものであり、その体制は脆弱である。とくに、CRC等の治験に関わるスタッフの確保及びその人件費、研究費の使用規定については、今年度の実施医療機関を対象とした調査だけでなく、昨年の調整事務局を対象とした調査でも問題として挙げられており、公的研究費の増額、運用方法の改善を強く望みたい。さらに、多くの医師主導治験は公的資金を用いて行われてきたが、国の財政状況や社会情勢により、複数年度の安定した資金確保が保証されないことが医師主導治験の活性化を目指すための非常に大きな制限となっている。今後は、利益相反の適切な管理、資金の流れの透明化を前提として、民間資金の導入も考慮する必要がある。

同時に、公的資金・民間資金、企業主導治験・医師主導治験に限らず、治験実施プロセスの効率化や標準化等により、治験実施業務のスリム化を図り、マンパワー・コストの削減を検討するとともに、治験の適正なコストについての議論が必要と思われる。

なお、資金の問題に関連し、同種同効薬を保険外併用療養費の支給対象とするよう要望があった。既存の標準治療に治験薬を併用するデザインの医師主導治験では、標準治療で用いられる薬剤(同種同効薬)の費用は保険外併用療養費の支給対象外であり、医師主導治験の経費で賄うことは現実的に難しい。しかし、一方で、高度医療評価制度では標準治療で用いる薬剤の保険給付が認められており、同じ医師主導臨床試験であっても実施区分により保険給付の可否が分かれる。医師主導治験においても、高度医療評価制度と同様の同種同効薬の取扱いとなるよう、関連通知の改訂が強く望まれる。

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4.提言治験・臨床研究活性化5か年計画のもと、今後、医師主導治験が活性化されるために、以下の提言を行う。

(1) 実施医療機関における課題医師主導治験では、治験責任医師及び実施医療機関に治験実施に係る責任があり、企業治験以上に実施医療機関で行うべき業

務を自立して行う必要がある。これを実現するためには、業務に関わる医師、スタッフを対象とした医師主導治験の業務内容(企業治験との違い)、及びその意義の教育が不可欠である。

(2)同種同効薬にかかる費用の取扱いについて同種同効薬にかかる費用を医師主導治験の経費で賄うことは、現実的に難しい。高度医療評価制度と同様の同種同効薬の取扱い

となるよう、関連通知の改訂が強く望まれる。

(3)医師主導治験の費用に関する課題公的研究費では、金額及び使用規定のため、CRC 等の治験に関わるスタッフの人件費を支出することが困難であるとともに、複数

年度の予算が保証されず、治験の継続そのものが困難となるケースがある。実施体制の恒常的な維持が可能となる公的研究費の増額、採択及び運用方法についての改善を強く望む。

一方で、公的資金だけに頼ることなく、利益相反の適切な管理、資金の流れの透明化を前提とした民間資金の導入も考慮すべきである。この場合には資金管理のための第三者組織の設立などを具体的に検討する必要がある。

(4) 医師主導治験のコストの適正化に関する課題企業治験よりも低いコストで実施されている医師主導治験であっても、開発業務受託機関への委託費などは企業治験のコストを基

準にして算定されることがある。企業主導/医師主導を問わず、治験における適正な業務レベルと役割分担を見直すことでコストパフォーマンスの改善につながり、本来必要な業務により多くのリソースを導入することが可能になると考える。