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1 IOSCO (証券監督者国際機構)金融指標に関する原則の最終報告書(抄訳) 第 1 章 - はじめに 背景 2013 年 4 月 16 日に、証券監督者国際機構(IOSCO)は、市中協議報告書「金融指標に関す る原則」 2 (第二次市中協議報告書)を公表し、金融指標に関する原則の最終化案に関してパ ブリック・コメントを募集した。これらの原則は、IOSCO の代表理事会レベルの金融市場に おける金融指標に関するタスク・フォース(Task Force on Financial Market Benchmarks)が 策定したものであった。IOSCO は、主要な金利指標の不正操作の試みに対する調査や法執行 enforcement)の動き 3 を踏まえて、このタスク・フォースを設置した。これらの調査や法執 行を通じて、一部の指標について、その健全性(integrity)及び提供の継続性という両観点か ら、脆弱性に対する懸念が提起された。このような脆弱性は、市場の信認を損ないかねず、投 資家と実体経済に損害を与えるおそれがある。 第二次市中協議文書は、 IOSCO が 2013 年 1 月に公表した初版の市中協議報告書(第一次市 2 IOSCO「金融指標に関する第二次市中協議報告書」(2013 年 4 月公表、supra fn No13 日本の金融庁(JFSA)は、アール・ビー・エス証券会社東京支店に対して行政処分を行った(2013年4月12日): http://www.fsa.go.jp/en/news/2013/20130412.html 米国商品先物取引委員会(CFTC)は、UBS AGUBS証券会社東京支店に対して、一定のグローバルな指標金利の不正 操作、不正操作の試み、虚偽報告に対する制裁金として、7億ドルを科した(2012年12月19日): http://www.cftc.gov/PressRoom/PressReleases/pr6472-12 http://www.cftc.gov/ucm/groups/public/@lrenforcementactions/documents/legalpleading/enfubsorder121912.pdf 英国金融サービス機構(FSA)は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)と欧州銀行間取引金利(EURIBOR)に関連する 重大な不正について、UBS AGに対して、1億6千万ポンドの制裁金を科した(2012年12月19日): http://www.fsa.gov.uk/library/communication/pr/2012/116.shtml http://www.fsa.gov.uk/static/pubs/final/ubs.pdf スイス金融市場監督当局(FINMA)は、金利の呈示(特にLIBOR)に関連して、金融市場の関連法令を著しく違反した として、5,900 万スイス・フランの不正利得をスイス連邦に支払うよう、UBS AGに命じた(2012年12月19日): http://www.finma.ch/e/aktuell/Pages/mm-ubs-libor-20121219.aspx 米国CFTCは、LIBOREURIBORに関する不正操作の試みと虚偽報告に関連して、Barclays PLCBarclays Bank PLC及びBarclays Capital Inc.に2億ドルの制裁金を科した(2012年6月27日): http://www.cftc.gov/PressRoom/PressReleases/pr6289-12http://www.cftc.gov/ucm/groups/public/@lrenforcement actions/documents/legalpleading/enfbarclaysorder062712.pdf 英国FSAは、 LIBOREURIBOR関連の違法行為に対して、 Barclays Bank PLCに5,950万ポンドの制裁金を科した(2012 年6月27日): http://www.fsa.gov.uk/library/communication/pr/2012/070.shtml http://www.fsa.gov.uk/static/pubs/final/barclays-jun12.pdf 日本の金融庁は、UBS証券会社東京支店及びユービーエス・エイ・ジー日本支店に対して行政処分を行った(2011年12 月16日):http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-3.html 日本の金融庁は、シティグループ証券株式会社に対して行政処分を行った(2011年12月16日): http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-2.html 日本の金融庁は、シティバンク銀行株式会社に対して行政処分を行った(2011 年 12 月 16 日): http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-1.html (仮訳)

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1

IOSCO(証券監督者国際機構)金融指標に関する原則の最終報告書(抄訳)

第 1 章 - はじめに

背景

2013年 4月 16日に、証券監督者国際機構(IOSCO)は、市中協議報告書「金融指標に関す

る原則」2(第二次市中協議報告書)を公表し、金融指標に関する原則の最終化案に関してパ

ブリック・コメントを募集した。これらの原則は、IOSCO の代表理事会レベルの金融市場に

おける金融指標に関するタスク・フォース(Task Force on Financial Market Benchmarks)が

策定したものであった。IOSCO は、主要な金利指標の不正操作の試みに対する調査や法執行

(enforcement)の動き3を踏まえて、このタスク・フォースを設置した。これらの調査や法執

行を通じて、一部の指標について、その健全性(integrity)及び提供の継続性という両観点か

ら、脆弱性に対する懸念が提起された。このような脆弱性は、市場の信認を損ないかねず、投

資家と実体経済に損害を与えるおそれがある。

第二次市中協議文書は、IOSCO が 2013年 1月に公表した初版の市中協議報告書(第一次市

2 IOSCO「金融指標に関する第二次市中協議報告書」(2013年 4月公表、supra fn No1) 3 日本の金融庁(JFSA)は、アール・ビー・エス証券会社東京支店に対して行政処分を行った(2013年4月12日):

http://www.fsa.go.jp/en/news/2013/20130412.html

米国商品先物取引委員会(CFTC)は、UBS AGとUBS証券会社東京支店に対して、一定のグローバルな指標金利の不正

操作、不正操作の試み、虚偽報告に対する制裁金として、7億ドルを科した(2012年12月19日):

http://www.cftc.gov/PressRoom/PressReleases/pr6472-12

http://www.cftc.gov/ucm/groups/public/@lrenforcementactions/documents/legalpleading/enfubsorder121912.pdf

英国金融サービス機構(FSA)は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)と欧州銀行間取引金利(EURIBOR)に関連する

重大な不正について、UBS AGに対して、1億6千万ポンドの制裁金を科した(2012年12月19日):

http://www.fsa.gov.uk/library/communication/pr/2012/116.shtml http://www.fsa.gov.uk/static/pubs/final/ubs.pdf

スイス金融市場監督当局(FINMA)は、金利の呈示(特にLIBOR)に関連して、金融市場の関連法令を著しく違反した

として、5,900 万スイス・フランの不正利得をスイス連邦に支払うよう、UBS AGに命じた(2012年12月19日):

http://www.finma.ch/e/aktuell/Pages/mm-ubs-libor-20121219.aspx

米国CFTCは、LIBORとEURIBORに関する不正操作の試みと虚偽報告に関連して、Barclays PLC、Barclays

Bank PLC及びBarclays Capital Inc.に2億ドルの制裁金を科した(2012年6月27日):

http://www.cftc.gov/PressRoom/PressReleases/pr6289-12http://www.cftc.gov/ucm/groups/public/@lrenforcement

actions/documents/legalpleading/enfbarclaysorder062712.pdf

英国FSAは、LIBORとEURIBOR関連の違法行為に対して、 Barclays Bank PLCに5,950万ポンドの制裁金を科した(2012

年6月27日): http://www.fsa.gov.uk/library/communication/pr/2012/070.shtml

http://www.fsa.gov.uk/static/pubs/final/barclays-jun12.pdf

日本の金融庁は、UBS証券会社東京支店及びユービーエス・エイ・ジー日本支店に対して行政処分を行った(2011年12

月16日):http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-3.html

日本の金融庁は、シティグループ証券株式会社に対して行政処分を行った(2011年12月16日):

http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-2.html

日本の金融庁は、シティバンク銀行株式会社に対して行政処分を行った(2011年 12月 16日):

http://www.fsa.go.jp/en/news/2011/20111216-1.html

(仮訳)

2

中協議報告書)4に対して提供されたコメントに加え、2013年 2月 21日にロンドンの英国金融

サービス機構(FSA)(英国金融行為規制機構(Financial Conduct Authority:FCA)の前身)

において、また 2013年 2月 26日に米国商品先物取引委員会(CFTC)において開催された利

害関係者のミーティングにおいて挙げられたコメントを踏まえて策定されたものであった。

この作業において、タスク・フォースは、規制当局や業界による様々なフォーラムで行われ

た以下のような関連作業も勘案した。

規制当局によるワークストリーム:

IOSCO の商品先物市場委員会 7(IOSCO Committee 7 on Commodity Future Markets)

が起草した IOSCO「石油価格報告機関に関する原則(PRA 原則)」

国内インターバンクの指標に対する大規模な調査、中でも、CFTC による UBS に対す

る処分、CFTC によるバークレイズに対する処分5、英国財務省 LIBOR 改革案(ウィー

トリー・レビュー)最終報告書6

欧州委員会による「指標に対する規制」に関する市中協議7

欧州証券市場監督機構と欧州銀行監督機構の「EU における指標設定プロセスに係る原

則」8

国際決済銀行の Board of Governor Economic Consultative Committee Report9

業界によるワークストリーム:

Global Financial Market Association(GFMA)公表の指標決定の評価に係るベスト・

プラクティス基準10

独立価格報告機関(Independent price reporting agencies(IRPO))に係る価格報告

コードに関する Argus Media、ICIS、Platts による提案11

4 CR01/13 「金融指標に関する市中協議報告書」(2013年 1月 10日公表の IOSCO 代表理事会の報告書):

http://www.iosco.org/library/pubdocs/pdf/IOSCOPD399.pdf 5 IOSCO の「金融指標に関する原則」(2013年 4月公表、supra fn No1)参照。 6 「The Wheatley Review of LIBOR:最終報告書」(2012年 9月)

http://cdn.hm-treasury.gov.uk/wheatley_review_libor_finalreport_280912.pdf 7 欧州委員会による「指標に対する規制:金融契約及び他の契約において指標として機能している指数の設定と利用に係る

規制の想定しうる枠組み」」に対する市中協議(2012年 9月 5日から 2012年 11月 29日)

http://ec.europa.eu/internal_market/consultations/2012/benchmarks_en.htm 8 欧州証券市場監督局(ESMA)と欧州銀行監督機構(EBA)の「EUにおける指標設定プロセスに関する原則」ESMA/2013/658

(2013年 6月 5日公表):

http://eba.europa.eu/documents/10180/217545/2013-658+ESMA-EBA+Principles+on+Benchmarks+Final+Report.pdf 9 プレスリリース: http://www.bis.org/press/wnew.htm と国際決済銀行の報告書「より優れた参照指標実務の実現に向

けて:中央銀行の視点」(2013年 3月 18日): http://www.bis.org/publ/othp19.pdf 10 Global Financial Market Association(GFMA)「金融指標に関する原則」(2012年 11月)と GMFA「金融指標に関する

原則改訂版」(2012年 11月) 11 「独立価格報告機関に係る価格報告コード」(案)(2012年 4月 30日):

3

指標に係る IOSCO の作業の目的

第一次市中協議報告書で述べられているとおり、IOSCO は、金融市場において使用される

指標に関する原則の包括的な枠組みを確立することを目的としている12。具体的には、IOSCO

代表理事会は、指標に関連する活動における指針と原則を打ち出そうとしている。これは、指

標設定プロセスにおける利益相反に加え、移行に伴う課題を検討する際の透明性と公開性を取

り扱うものである。

当該作業の元となる情報を提供するために、IOSCO のタスク・フォースは、まず、様々な

法域における多数の資産クラスを代表する選定された指標のレビューを行った。このレビュー

に加え、石油価格報告機関や他のフォーラムで行われている作業を踏まえて指標の問題を検討

したことは、指標の算出方針や透明性、ガバナンス態勢の脆弱性に起因する指標の信頼性に関

連する広範囲かつ一般的なリスクの特定に役立った13。

両市中協議報告書における検討のとおり、これらのリスクは、利益相反に伴うインセンティ

ブから生じており、指標の決定に専門家の判断(Expert Judgement)が利用される場合に増

幅されうる。以下は、指標のリスクを判定する際に考慮すべき要因である。

1. 指標に関するデータの呈示:第一次市中協議報告書に記載のとおり、様々な種類の

データを作成、収集し、運営機関に呈示するに当たって様々な手法がある。呈示プロ

セスに対して適切な統制と方針が整備されていなければ、当該プロセスによって指標

決定プロセスの脆弱性が一段と高まるおそれがある。例えば、呈示者が指標の水準に

ついて利害関係を有する市場参加者である場合には、決定プロセスに利益相反が生じ、

同プロセスを不正操作するインセンティブが生じるおそれがある。これ以外にも、任

意及び(又は)選択的な呈示の可能性、呈示者の多様性、提供するデータの選定にお

ける自由裁量によって、その他の利益相反や不正操作を行う機会が生じる可能性があ

る。

2. 算出方針の内容と透明性:算出方針に係る手続きと方針が詳細なものでない場合には、

利害関係者による指標の信頼性の評価が制限されかねない。また、透明性が欠如して

いる場合には、指標の決定を左右するような不正行為を許してしまうおそれがある。

更に、強固な内部統制が整備されていない状況で透明性が低いと、指標を左右するた

めに呈示を操作する機会が生じる可能性がある。

3. ガバナンスプロセス:タスク・フォースがレビューを行った法執行事案から、呈示者

と運営機関の両段階で生じる利益相反によって、不正行為のインセンティブが生じる

http://platts.com/IM.Platts.Content/aboutplatts/mediacenter/mediakits/draftiprcode30apr12.pdf

12 CR01/13 「金融指標に関する市中協議報告書」(2013年 1月 10日公表)supra fn 4.: 13 付属文書 B の Id.参照。 第一次市中協議報告書の 8ページに記載のとおり、IOSCO のタスク・フォースは、特定の指標

に関連した勧告は行わなかった。

4

ことが明らかになった。このような利益相反は、指標に関する呈示と算出のプロセス

において存在する様々な仕組みにおいて生じ得る。例えば、虚偽ないし誤解を招くお

それのあるデータを呈示することによって、あるいは専門家の判断を行う責任を担う

運営機関の担当者への働きかけを試みることによって、呈示者、運営機関、算定機関

又は他の第三者が指標の不正操作を試みるおそれがある。

こういった脆弱性に対処するために、原則の最終版が策定されたが、これらは、総合的に理

解されるべきである。

範囲

前述のとおり、IOSCO の目的は、金融市場において使用されている指標の原則の包括的な

枠組みを構築することである。この目的に従い、本原則について採用された指標の定義は、非

常に広義なものとなっている。

政策目的で使用されている指標(労働関連、経済活動関連、インフレ関連ないし消費者物価

指数等)の国内当局による運営は、本原則の適用対象外である。ただし、国内当局が機械的に

運営機関としての機能を果たす指標は、本原則の適用対象である。また、中央清算機関(CCP)

がリスク管理と決済目的のみで参照価格又は決済価格を算定する場合には、これらの価格は本

原則の対象とならない。単一の金融商品の価格(例えば、株式オプション又は先物の原資産で

ある持分証券)は、本原則上、指標とはみなされない。

コメントレターや利害関係者のミーティングで繰り返し強調されている点であるが、指標の

母集団は大きく、多様なため、タスク・フォースはまずあらゆる指標に適用可能な一連のハイ

レベル原則を策定した。後述のとおり、呈示に依拠すること(原則 4、5、11、14、18)及び

(又は)所有構造(原則 3 と 5)に起因して発生する特定のリスクを有する指標については、

より具体的な内容を定めた原則のサブセットが策定された。

指標の運営機関は、推奨された方法を採用すべきである

本原則は、指標の運営機関及び呈示者が実施すべき一連の推奨された方法であると認識され

るべきである。これらの原則の適用は、指標及び(又は)運営機関、指標設定プロセスの規模

及びこれらからもたらされるリスクに見合ったものであるべきである。

実施

市中協議報告書に対するフィードバックを通じて、原則の適用、とりわけより具体的な運営

機関と呈示者の内部統制の枠組み、説明責任、透明性に係る要件に関して数多くの質問が提起

された。

第二次市中協議報告書において、IOSCO は、「原則は均一な案を打ち出しているが、IOSCO

5

は、原則の目的を実現するために、すべての指標に一律に適用し得る(one-size-fits-all)方

法を採用することは期待していない」という認識に立っている。本作業の対象となる指標の母

集団が大きいことを踏まえると、IOSCO は、各指標に対して一律に原則を適用するものでは

ないと考える。むしろ、原則は、基準の枠組みを提供するものであり、当該基準への準拠方法

は、それぞれの指標の特異性に応じて、様々であることが考えられる。特に、原則の適用と実

施は、各指標及び(又は)運営機関や指標設定プロセスの規模及びもたらされるリスクに見合っ

たものであるべきである。これには、参入に当たっての規制上の重大な障壁とならないよう、

新規ないし新興の指標に見合った原則の適用も含まれる。

また、このような比例原則に基づいて本原則を実施するに当たっては、基礎となるデータイ

ンプットの情報源も勘案すべきである14。特に、取引後の透明性に係る要件が義務付けられて

いる規制市場又は取引所が情報源であるデータに基づき算定される指標に対する原則の適用

の程度は、より厳格なものでなくともよい場合がある15。この点は、規制市場又は取引所にお

いて整備されている検証・モニタリングの内容や、これらの指標を参照する金融商品の上場・

取引に係る規則に対する IOSCO メンバーの権限によって正当化される。

比例原則に基づき原則を遵守するということは、一部の指標にとっては、例えば、以下を意

味する。

原則 3(c)に関して:報告ラインの分離が実行できない可能性があることについて、

その理由(例えば、職員数が限られているなど)を説明するとともに、これを軽減可

能な統制の措置を説明する。

原則 3(d)に関して:指標決定ごとの承認が可能でない理由(例えば、設定数が非常

に多いなど)を説明する。代替として、指標決定を検証する一般的な枠組みを提案す

ることができる。この枠組みには、個別の指標決定について定期的又はランダムに手

作業によって検証するようなサンプリングが含まれうる。

原則 5に関して:指標の利害関係者に対して、原則で定められる監督機能がどのよう

に実施されているかを明確に説明するとともに、特定の監督委員会が利用されない場

合には、実際に整備されているガバナンス体制が適切である理由を説明する。また、

機密保持の理由からすべての条件や個々の職員(名前を含む)を公表できない場合、

運営機関は、役職や技能、経験の観点からその構成を説明するべきである。

原則 17 に関して:監査形態(内部監査、外部監査又は独立監査)が、運営の規模と

そのリスクの特徴に照らして適切である理由を説明する。

14 比例原則は、観測可能かつ独立当事者間取引を有する活発な市場によって指標は裏付けられなければならない旨定める

原則 7の要件に影響を与えることは意図していない。 15 例えば、取引後の透明性に係る要件が義務付けられている規制市場又は取引所を情報源とするデータにもとづき算定さ

れる金融指標が定期的に算定手法を公表している場合には、原則 9を充足することになる。原則 9参照。

6

上記の例に関しては、本原則が求める機能が実現できていることを示していれば、運営機関

は一般的な手続きによることでも当該原則を遵守しているといえる場合もある。

指標の運営機関は、原則の遵守状況を開示すべきである

指標の運営機関は、年に 1回、原則の遵守状況を開示すべきである。実施が何らかの点で原

則から乖離している場合には、運営機関は、比例原則に基づく適用(この概念については上記

に記載)への依拠の程度を含め、原則の目的と機能を充足していると考える理由を説明すべき

である。

指標の運営機関は、本報告書の公表から 12 カ月以内に、原則の遵守状況を開示すべきであ

る。

石油価格報告機関に係る具体的な適用

2012年 10月、IOSCO は、国際エネルギー機関(IEA)、国際エネルギー・フォーラム(IEF)、

及び石油輸出国機構(OPEC)と協働して策定された PRA 原則16を導入した。IOSCO は、PRA

原則の自主的な採用や実施を勧告し、当該原則の公表後 18 カ月にわたるレビュープロセスを

確立した。そのプロセスに則り、IOSCO は、IEA、IEF 及び OPEC と協働して、石油価格報

告機関が PRA 原則をどの程度実施しているかについて評価することになる。さらに、IOSCO

は、市場当局や利害関係者、石油価格報告機関からの意見を求め、評価期間終了後に、必要で

あれば、追加の勧告を行う旨を述べた。

前述のとおり、IOSCO は、金融指標に関する原則の策定の過程で、PRA 原則17を勘案した。

PRA 原則は石油市場の特性を十分に考慮して策定されたものであるが、金融指標に関する原

則は指標全般に着目している。その結果、両原則はハイレベルでは類似する懸念を反映したも

のとなっているが、詳細は異なっている。

これらの2つの原則を導入した状況やPRA原則の継続的な検証プロセスを重視するために、

IOSCO は、石油価格報告機関が PRA 原則を遵守・実施し続けることを期待する。IOSCO は、

金融指標に関する原則とより一致させるために PRA 原則を改訂する必要があるか否かについ

て、IEA、IEF 及び OPEC と協働して検討する予定である。

IOSCO メンバーは、必要に応じて規制措置を通じて、原則の実施を促すべきである。

本報告書は、特定の指標について具体的な勧告を行うものではない。IOSCO メンバーの大

半は、指標の運営機関又は呈示者を規制していない。しかしながら、IOSCO メンバーは、規

16 FR06/12 「石油価格報告機関に関する原則」(2012年10月公表のIOSCO代表理事会報告書)

http://www.iosco.org/library/pubdocs/pdf/IOSCOPD391.pdfを参照。 17 例えば、金融指標に関する原則 9は、石油 PRA 原則の原則 2.3に基づく。

7

制措置(あるいは、各法域内の他の関連する国内当局による措置の勧告)が原則の実施を促す

のに適切かどうかを検討すべきである。この点に関する政策決定は、特に、以下によって決ま

る。

特定の IOSCO メンバーの法域における指標に対する取組みの実態及び状況

当該取組みが IOSCO メンバーの規制上の責任に与える影響

投資家やリテールにおける利用

当該取組みが経済や金融の安定に与える影響

指標を参照する証券及びデリバティブの上場・取引に係る規則に対する既存の審査機

関及び承認機関18

法域内の規制上の責任の割当て

政策変更の必要性及び効果に関する IOSCO メンバーの決定

第一次市中協議報告書で規制上の区別に関して議論された点も、規制措置が原則の実施を促

すのに適切かどうかという問いに関連している19。さらに、様々な指標に対して異なるアプ

ローチを適用することが適切な場合がある。

適切な法執行権限に関する IOSCO のステートメント

実効的かつ信頼性のある法執行プログラムは、不正操作の試みや証券詐欺を含む市場操作に

関する頑健な権限を含むべきである。これらの権限は、一般に適用される場合や、指標関連の

業務に直接関連する場合がある。

実際には、指標の不正操作に対して措置を講じるという明示的な権限が一般的にないにもか

かわらず、規制当局は、指標の操作やその試みに対して制裁を科すために、証券違反に関連す

る既存の権限を行使している。例えば、米国 CFTC と英国 FSA は、2012 年 6 月から 2013 年

2 月にかけて、総額 26 億米ドルを超える罰金を 3 行に科した。これらの調査に当たっては、

IOSCO の多国間情報交換枠組み(「マルチ MOU」)のパラグラフ 7 に準拠した、IOSCO のマ

ルチ MOU に基づく重要な情報共有及び協力が行われた。パラグラフ 7では、署名当局は相互

に「許容可能な最大支援」を提供し、各法域で適用される証券法への準拠を確保すると定めて

いる。

18 2013年 1月の市中協議報告書は、IOSCO の「証券規制の目的と原則」において、規制当局が取引所やトレーディング・

システムで取引される証券や商品の種類について情報を入手し、商品の取引を規制する規則を見直す、又は承認すべきで

ある旨規定していると述べている。FRO8/11「IOSCO『証券規制の目的と原則』の実施状況の評価のためのメソドロジー」

(2011年 10月公表、207ページの原則 33、主要な論点(key issue) 4の商品と参加者(products and participants)。 19 CR01/13金融指標(IOSCO 代表理事会報告書、2013年 1月 10日公表)supra fn 4の 34~37ページの検討を参照。

8

これら最近の動向に後押しされ、指標の不正操作に対して措置を発動するという明示的な権

限を規制当局に付与するという多数の提案がなされている。例えば、英国 FCA は、LIBOR 算

出に関して虚偽又は誤解を招く発言を行った者(2012 年金融サービス法セクション 91)に対

して、新たな刑事犯罪として告訴する権限を 2013年 4月 1日から有する。欧州経済地域では、

新たな市場阻害行為規制(Market Abuse Regulation)(2014 年までに施行予定)によって、

指標算定の操作が欧州市場阻害行為制度(European Market Abuse regime)20のもとで不正

行為に該当する旨を定める条項が導入される。これらの動向を歓迎する。

これを受け、IOSCO メンバーは、各法域の法体系及び規制体系に照らして適切な対応(あ

るいは、各法域の他の関連する国内当局による措置の勧告)を行い、ある指標が金融契約又は

金融商品で参照されている場合には、当該指標の操作やその試みを不正行為(offence)とし

て執行する規制を採択すべきである。

原則は、既存の国内法に優先するものではない

原則は、特定の法域における既存の法律、規制若しくは関連する規制や監督の枠組み

(IOSCO のあらゆる原則、又は特定のタイプの指標に関連して規制当局と合意された枠組み

若しくは関連する活動を含む。)に優先するものではない。むしろ、これらの原則は、運営機

関、呈示者、規制当局に指針を提供し、既存の IOSCO の原則を補完することを目的とするも

のである。

検証

原則の公表を受けて、IOSCO は 18カ月以内に、利害関係者、市場当局、及び(必要に応じ

て)指標の運営機関から情報を取得し、原則の実施状況についてレビューする予定である。

20 http://ec.europa.eu/internal_market/securities/abuse/index_en.htmを参照。

9

第 2 章-金融指標に関する原則

原則の概要

これらの原則は、指標決定の信頼性を高め、指標のガバナンス、品質、及び説明責任のメカ

ニズムの強化を目的としている。原則は均一な案を打ち出しているが、IOSCO は、これらの

目的を実現するために原則を導入するに当たって、すべての指標に一律に適用し得る方法を採

用することは期待していない。原則は、運営機関が各指標の特性に応じて実施すべき基準の枠

組みを提供する。具体的には、原則の適用・実施は、指標及び(又は)運営機関や指標設定プ

ロセスの規模及びもたらされるリスクに見合ったものであるべきである。さらに、これらの原

則は、原則を充足するために、運営機関による独自の手法の採用や、変化する市場環境に適合

するよう手法を調整することに制限を課すものではない。

ガバナンス:

これらの原則の目的は、運営機関が指標決定プロセスの健全性を守り、利益相反に対応する

ために適切なガバナンス態勢を整備することを確保することである。これらの原則は、具体的

には、以下を取り扱う。

運営機関は、指標の構築・決定の他、ガバナンス、監督、及び説明責任に係る信頼性

及び透明性のある体制の確立等、指標決定プロセスのあらゆる面に対して第一義的な

責任を有すること。本原則は、指標の決定と管理に係る特定の体制に関わりなく、指

標の健全性に関して全般的に責任を負うエンティティを設置すべきである旨を明確

にするものである。[1. 運営機関の全般的責任]

運営機関(及びその監督部門)は、明確に定義された書面による取決めを導入するこ

と。当該取決めは、指標設定に関与する者の役割と義務の他、第三者による当該取決

めの遵守状況の監視について定めるものとする。本原則は、機能の外部委託は運営機

関の監督対象とすべきであるという懸案事項を盛り込んだものである。本原則は、第

三者が、例えばデータの収集、あるいは指標の算定機関(Calculation Agent)又は公

表機関(Publisher)として機能するなど、指標決定プロセスに係る活動を実施する

場合にのみ適用される。[2. 第三者の監督]

重要な利益相反について利害関係者及び関連する規制当局へ開示する等、利益相反を

特定、開示、管理、又は回避するための方針及び手続きを文書化、実施、執行するこ

と。本枠組みは、運営機関によって特定された既存のあるいは潜在的な利益相反の度

合いに応じて適切に構築されるべきであり、所有構造や支配関係によって、あるいは

運営機関の職員個人やグループが指標決定に関連して有する可能性のあるその他利

害関係によって生じる既存又は潜在的な利益相反を軽減することに努める内容とす

10

るべきである。本原則の目的は、指標の不正操作のインセンティブをもたらす脆弱性

に対応することである。[3. 運営機関の利益相反]

運営機関における、指標を決定及び公表するプロセスに対する適切な統制の枠組みは、

特定された潜在的又は既存の利益相反の重要性、及び指標のインプット・アウトプッ

トの特徴に応じて適切に構築されるべきである。また、当該統制の枠組みは文書化さ

れ、関連する規制当局が入手できるようにすべきであり、利害関係者に対して公表又

は入手可能とすべきである。特に、統制の枠組みには、潜在的な不正行為の早期発見

を促進する効果的な内部告発のメカニズムが含まれるべきである。[4. 運営機関の統

制の枠組み]

指標決定プロセスのあらゆる面をレビューし、検証する監督機能は、レビュー対象の

指標(規模、スケール、複雑性を含む)に適したものであり、運営機関を実効的に監

督するものであるべきである。監督機能とその構成要素は、指標の特徴や、意図され

る、予期される、又は知られている指標の利用方法や、既存の又は潜在的な利益相反

を考慮したものであるべきである。監督機能は、独立した委員会、又はその他適切な

ガバナンス機能によって遂行されるべきである。[5. 内部監督機能]

指標の品質:

これらの原則の目的は、指標が計測する「価値」(Interest)に係る信頼性の高い市場を反映

する指標となるような設計要素が用いられるようにすることにより、指標決定の品質と健全性

を高めることである。これらの原則は、データの十分性の原則を充足する(すなわち、活発な

市場に基づく)限り、指標の作成に当たって、様々なデータを適切に使用することができるこ

とについても明確にしている。具体的には、これらの原則は、以下を取り扱う。

指標を設計するに当たっては、指標が計測する「価値」の経済的な実態を高い信頼性

をもって反映し、また、指標の価格やレート、指数、価値(values)の歪曲をもたら

すような要素を排除することを目的とする一般的な設計要素を勘案するべきである。

提示されている要素は、一般的かつ包括的な例示である。[6. 指標の設計]

指標の作成に使用するデータは、需要と供給の競争原理によって(すなわち、活発な

市場で)決定した価格、レート、指数、又は価値に基づいており、かつ、指標が計測

する「価値」に係る市場における独立当事者間の観測可能な取引によって裏付けられ

ているべきである21。本原則は、活発な市場における真正(Bona-Fide)かつ観測可

21 「活発な市場」という用語は定義されておらず、これは指標の設計(原則 6)の過程及び選定された参照市場の定期的な

見直し(原則 10)において運営機関によって決められるものである。第一次市中協議報告書は、規模、流動性、市場集

中度、市場の動態など、この論点に関連するであろう様々な要素を取り上げている。CR01/13金融指標(IOSCO により

2013年 1月 10日公表)supra fn 4の 40~42ページの検討を参照。

11

能な取引を通じて提供され、指標の基礎として使用される価格又は価値は信頼できる

ものであるとの認識に立つものである。原則 7は、個々の指標を決定するに当たって、

取引データのみに基づかなければならないことを意味するものではない。活発な市場

が存在することを条件として、ある日の市況によっては、運営機関は、取引データに

付随するもの又は補足するものとして、観測可能な市場データに関連する異なる形態

のデータに依拠することが求められる場合がある22。この結果、運営機関の算出方針

によっては、主として、あるいはもっぱら、ビッド・オファーにもとづき、又は過去

の取引から推定することによって、個々の指標が決定されることになる。

活発な市場が存在することを条件として、原則 7 は、真正な独立当事者間取引

(Arms-length transaction)で構成される観測可能な市場によって裏付けられる指標

を設定する手段として、取引執行されうるビッドやオファーを使用することを妨げる

ものではない。例えば、長期にわたって市場全体の取引量が多いものの、ある日にお

いては業者のビッド・オファーの方が、公示された実取引よりも多く執行される可能

性のある市場では、この手法が適している場合がある。

原則は、様々な指数が、ルールベースの投資戦略のパフォーマンス、指数又は市場の

ボラティリティないし推移、若しくは活発な市場についてのその他の面を計測若しく

は反映するよう設計されている場合があることも認識している。また、原則は、指数

が取引を反映するよう設計されていない場合、及び指数の性質により、指数で測定す

るものを反映するために取引データ以外のデータを使用する場合、取引データ以外の

データを使用することを妨げてはいない。例えば、証券取引の指数に関する期待変動

率を計測するために設計された特定のボラティリティ・インデックスは、取引データ

以外のデータに依拠しているが、当該データは実際に機能している証券市場又はオプ

ション市場から得られており、当該市場に裏付けられている(anchored)。[7. デー

タの十分性]

データの使用順序(hierarchy)及び指標決定に利用する専門家の判断について明確

な指針を策定すること。本原則の目的は、指標を決定するためのデータや専門家の判

断の利用方法に関して、利用者に対する透明性を高めることである。本原則は、デー

タの十分性の原則に従っている限り、厳格なチェックリストを作成することを求める

ものではなく、また、指標の算出方針で定められている、指標の決定に係る品質、健

全性、継続性、及び信頼性を確保するという運営機関の試みと一致するよう、運営機

関が柔軟にデータを利用することを制限するものではない。[8. データのヒエラル

22 第一次市中協議報告書に記載のとおり、流動性の低い市場であっても市場の商業的実態(commercial realities)や金利

決定市場としての機能を反映している場合には、指標集計に当たって、低い取引量を補うデータとして、検証可能な(業

者の)ビッド・オファー等取引データ以外のデータを使用したとしても、本原則に従い、当該市場は、指標を裏付けるこ

とができるものとする。41の id.を参照。

12

キー]

運営機関の公表期限に遅延することのないよう合理的な程度に、どのように指標が決

定されたかについて利用者又は市場当局がより良く理解するための十分かつ簡潔な

説明、及び運営機関が指標を決定するに当たり行った判断があれば、その程度及び根

拠についての簡潔な説明を各指標の決定に当たって公表すること。算出手法を定期的

に公表する指標は、取引後の透明性に係る要件が義務付けられている規制市場又は取

引所を情報源とするデータから得た場合には、原則 9を充足することになる。加えて、

原則 7で意図されている取引執行されうる気配値(quotes)のみに依拠して決定され

る指標は、算出方針において開示されている限り、取引執行されうるビッド又はオ

ファーにより作成した理由について各指標の決定の都度説明を行う必要はない。[9.

指標決定の透明性]

運営機関は、指標を決定するための「元となる価値」(underlying interest)の状況を

定期的に見直し、算出方針の設計の変更を要するような構造的な変更があったかを判

断すること(例えば、信頼性のある指標の基礎として機能しない程度までに「価値」

が減少してしまう)。利害関係者が指標の存続可能性(viability)をよりよく把握でき

るようにするために、見直しによって指標に重要な修正が加えられた場合、見直しの

根拠を含め、当該見直しの概要を公表し、入手可能にすべきである。[10. 定期的な

見直し]

算出方針の品質:

これらの原則の目的は、算出方針において取り扱われるべき最低限の情報を定めることに

よって、算出方針の品質及び健全性を高めることである。当該最低限の情報は、利害関係者が

指標の全般的な信頼性を理解し、判断できるようにするために、公表・入手可能にすべきであ

る。算出方針について重要な変更が予定されている場合に、保有するポジション、金融商品又

は契約に影響を与え得る変更に関して利害関係者に注意喚起する手段としての管理手続きが

必要であり、これについても算出方針において取り扱うべきである。

これらの原則は、指標が消滅する場合又は利害関係者が別の指標へ移行する必要がある場合

について、運営機関が信頼性のある方針を整備すべきであることも定めている。これらの方針

の目的は、指標の停止の可能性に備えて、今後の計画を立てるよう運営機関や利害関係者に奨

励することである。

これらの原則は、呈示者が担うべき責任の概要を提供すること(すなわち、「呈示者に係る

行動規範」(Submitter Code of Conduct))によって、呈示プロセスの脆弱性(例えば、利益相

反、呈示者と運営機関との間の不適切なコミュニケーション、選択的なデータ呈示)について

13

も取り扱っている。また、これらの原則は、規制対象の情報源(regulated sources)からの

データ収集に対する内部統制の整備に係る運営機関の責任についても明確にしている。具体的

には、これらの原則は、以下を取り扱う。

指標決定に使用する算出方針を文書化、公表すること。利害関係者が指標決定の方法

を理解したうえで、指標の反映対象、特定の利害関係者との関連性、金融商品の参照

指標としての妥当性について評価できるように、十分に詳細な情報であること。[11.

算出方針の内容]

提案されている算出方針への重要な変更の根拠とそのような変更を行う手続きを公

表すること。これらの手続きは、重要な変更の内容を明確にし、また、変更について

利用者(及び指標が使用されている範囲及び深度を勘案のうえ、必要に応じて、その

他の利害関係者)と協議、又は利用者に通知する方法とタイミングを明確に定めるべ

きである。[12. 算出方針に対する変更]

市場構造の変化、商品の定義の変更、又は指標が対象とする「価値」を反映しなくな

るようなその他の状況による指標の停止の必要性に対応する明確な方針書と手続書

を整備すること。これらの方針書と手続書は、指標を参照する契約と金融商品につい

て見込まれる取引の幅と深度に加え、指標の停止が経済・金融安定性に及ぼす影響に

対応したものであるべきである。運営機関は、特定の指標について方針書と手続書を

定めるに当たって、利害関係者、関連当局及び国内当局の見解を勘案すべきである。

運営機関は、利用者及び利害関係者に対し、指標を参照する契約又は金融商品に係る

強固な代替策を整備するよう奨励するべきである。[13. 移行]

呈示者に係る指針(「呈示者に係る行動規範」)を策定し、関連する規制当局に入手可

能とするだけではなく、利害関係者に対しても公表・入手可能とすること。注記:本

原則は呈示にもとづく指標についてのみ適用される。[14. 呈示者に係る行動規範]

運営機関が規制市場、取引所、又はそれ以外のデータ集計機関(data aggregator)

から直接データを収集する場合、運営機関はデータ収集及び伝達のプロセスに関する

適切な内部統制を整備すること。これらの統制は、情報源の選択、データ収集、及び

データの健全性と機密性を保護するプロセスに対応するものであるべきである。[15.

データ収集に係る内部統制]

説明責任:

これらの原則は、不服処理、文書化に関する基準、監査・レビュー(audit reviews)につい

て定めることにより、原則及び運営機関自身により定められる指標の品質基準を運営機関が遵

14

守していることの証拠を提供させることを目的とする。これらの原則は、関連する市場当局が

前述の情報を入手できるようにする旨定めている。具体的には、これらの原則は、以下を取り

扱う。

不服処理に係る方針書を策定し、公表すること。これにより、利害関係者は、特定の

指標の決定が、計測対象とする「価値」を反映しているかどうか、特定の指標の決定

に対する算出方針の適用のあり方、及びその他の指標決定に係る運営機関の決定等に

関する不服を申し立てることが認められる。本原則の目的は、利害関係者の意見を通

じて指標の決定に対する信頼性を高め、当該信頼性に影響を与え得る要素について市

場当局に注意喚起することである。[16. 不服処理]

運営機関により定められた基準及び原則の要件に対する運営機関の遵守状況を、定期

的に検討し報告するための適切な経験と能力を有する独立した内部又は外部の監査

人を任命すること。監査の頻度は、運営機関の業務の規模と複雑性に見合ったもので

なければならない。一部の状況下において(運営機関が特定した既存又は潜在的な利

益相反の程度に応じて)、運営機関は、運営機関により定められた算出方針の基準に

対する運営機関の遵守状況を定期的に検討し報告する独立の立場の外部監査人を任

命すべきである。これらの規定の目的は、原則の遵守を促し、原則が遵守されている

ことの確認書(confirmation)を関連する市場当局及び利害関係者に提示することで

ある。[17. 監査]

記録文書は、適用される国内法又は規制上の要件に従い、運営機関が 5年間保存する

こと。本原則の目的は、監査で必要な書類を保全することである。呈示に基づく指標

については、追加的な要件が適用される。[18. 監査証跡]

これらの原則において要求される関連文書、監査証跡及びその他の文書は、関連当事

者により関連する規制当局が規制上又は監督上の責務を遂行するうえで容易に利用

できるようにし、要請があった場合、迅速に提出する。この目的は、規制当局が特定

の指標決定の信頼性に係る判断に必要とされ得る情報、又は不正操作の調査に必要と

され得る情報を入手・利用しやすくすることである。[19. 規制当局との連携]

15

指標の原則

ガバナンス

指標の健全性(integrity)を守り、利益相反に対応するために、適切なガバナンス態勢の

整備が必要となる。

1.運営機関の全般的責任

運営機関は、指標決定プロセスのあらゆる側面について第一義的に責任を負うべきであ

る。当該責任には、例えば以下が含まれる。

a) 構築:指標の定義及び算出方針

b) 決定及び提供:正確かつ適時の指標の計算、公表及び提供

c) 運営:データが欠如又は不十分であること、市場のストレスや混乱、重要なイン

フラストラクチャーの機能不全など、不測の事態に対応する措置も含め、指標の

計算やその他関連する決定プロセスに影響を与え得る重要な意思決定について適

切な透明性を確保すること

d) ガバナンス:指標の決定プロセスに関して、ガバナンス、監督及び説明責任に係

る信頼性かつ透明性のある体制を確立すること。これには、指標の構築、公表、

及び運営に対して説明責任を負う明確な監督機能も含まれる

2.第三者の監督

第三者が、例えばデータの収集、公表、あるいは算定機関(Calculation Agent)として

機能するなど、指標決定プロセスに係る活動を受託する場合、運営機関は当該第三者を適

切に監督するべきである。その際、運営機関(及びその監督部門)は、以下のような方針

や手続きを検討するべきである。

a) 適切な書面による取決めをもって、指標決定プロセスに関与する第三者の役割及

び義務を明確に定義、具体化し、さらに、運営機関がこれらの第三者に遵守を求

める基準を定めること

b) 運営機関が定める基準の第三者による遵守状況を監視すること

c) 指標決定プロセスに関与する第三者の身元及び役割について、利害関係者及び関

連する規制当局に開示すること

d) 第三者の指標決定プロセスへの関与による不要なオペレーショナルリスクを避け

るため、コンティンジェンシープランの策定など適切な措置を講じること

16

当該原則は、第三者が規制市場又は取引所である場合、運営機関のデータ入手元である

第三者には適用されない。

3.運営機関の利益相反

指標決定の健全性及び独立性を担保するため、運営機関は、利益相反を特定、開示、管

理、軽減又は回避するための方針及び手続きを文書化し、実施、強化するべきである。運

営機関は、当該方針及び手続きを必要に応じて見直し、更新するべきである。

運営機関は、その利用者及び関連する規制当局に対し、重大な利益相反を(存在する場

合には)開示するべきである。

そのための枠組みは、既存のあるいは潜在的な利益相反の度合いや、指標が有するリス

クに応じて適切に構築されるべきである。また、以下の事項を確保すべきである。

a) 既存のあるいは潜在的な利益相反が、指標決定プロセスに対して不適切な影響を

及ぼさないこと

b) 個人的な利害や関係、ビジネス上の関係が、運営機関による職務の遂行を損なわ

ないこと

c) 必要に応じて運営機関内の報告ラインを分離することで、責任を明確化し、不必

要な利益相反が生じることや、利益相反あるいは利益相反の認識の隠ぺいを防ぐ

こと

d) 決定された指標を公表する前に、権限や資格のある職員による適切な監督及び承

認プロセスが確保されていること

e) 運営機関に呈示され、又は運営機関が受領し、あるいは作成したデータ、情報及

びその他データに係る機密性が、運営機関の開示義務に準拠していること

f) 利益相反のリスクを伴う活動に従事する職員間の、あるいは当該職員と第三者と

の間の指標決定に影響を与えると合理的に考えられる情報の交換を統制する実効

的な手続きを整備すること

g) 指標決定に関与するすべての職員が指標の水準に応じて直接又は間接的に報酬や

インセンティブを与えられることがないよう、適切な報酬方針を設定すること

運営機関の利益相反に係る枠組みは、所有構造や支配関係によって、あるいは運営機関

の職員個人やグループが指標決定に関連して有する可能性のあるその他利害関係によって

生じる既存又は潜在的な利益相反を軽減する内容とするべきである。そのために、当該枠

組みは、以下の条件を満たすべきである。

17

a) 指標の決定業務(指標を作成する、若しくは関連業務に関与する全ての職員を含

む)と、運営機関又はその関連会社の業務との間に存在する可能性のある利益相

反を回避、軽減、あるいは開示するための施策を含んでいること

b) 運営機関が、その所有構造や支配関係によって生じる利益相反を、利害関係者及

び関連する規制当局に適時に開示するものであること

4.運営機関の統制の枠組み

運営機関は、指標を決定及び公表するプロセスに対して適切な統制の枠組みを導入する

べきである。当該統制の枠組みは、特定された潜在的又は既存の利益相反の重要性、指標

設定プロセスにおいて許容される裁量の範囲、指標のインプット・アウトプットの特徴に

応じて適切に構築されるべきである。また、当該統制の枠組みは文書化され、(該当があれ

ば)関連する規制当局に利用可能とすべきである。その主な特徴の概要は、利害関係者に

対して公表・入手可能とするべきである。

さらに、当該統制の枠組みは、定期的に見直され、必要に応じて変更されるべきである。

また、以下に掲げる項目に対応するべきである。

a) 原則 3(運営機関の利益相反)を踏まえた利益相反

b) 指標決定の健全性及び品質

i. 指標の品質及び算出方針に係る原則 6から 15に則った、指標の品質及び健全性を

維持する取組み

ii. データの提供元の適切なデューデリジェンスを含め、データの健全性を高める取

組み

iii. 原則 16 から 19 に則った、説明責任及び不服対応の仕組みの実効性を確保する取

組み

iv. オペレーショナルリスクなどのリスク管理のための強固なインフラストラク

チャー、方針及び手続きの提供

c) 内部告発のメカニズム

運営機関は、潜在的な不正操作や不正行為の早期発見を促進する効果的な内部告

発のメカニズムを確立するべきである。また、当該メカニズムは、必要に応じて、

これらの事案の対外報告を認めるべきである。

d) 専門知識

18

i. 適切な水準の専門知識を有する担当者により指標が設定されることが確保され、当

該担当者の適性が定期的にレビューされるプロセスを整備

ii. 倫理や利益相反、継続性や後継者育成に係る研修など、職員を対象とした研修の実

指標が呈示にもとづく場合:運営機関は、データの健全性を以下の方法によって高めるべ

きである。

a) 指標が計測する「価値」を勘案し、呈示者が当該価値を適切に反映するグループ

を形成していることを最大限に確保すること

b) 呈示者が、「呈示者に係る行動規範」に定める呈示に係る指針や、運営機関の定め

る呈示に係る品質及び健全性の基準に可能な限り準拠するよう、一連の適切な施

策を採用すること

c) 呈示の頻度を明確にし、また、すべての指標決定について呈示が行われるべきこ

とを明確にすること

d) 実効的にデータや呈示を監視・精査するための施策を策定し、採用すること。こ

れには、データや呈示に係る誤謬を特定及び回避するために実施する、算定前及

び公表前のモニタリングや、トレンドや異常値の事後分析も含まれる。

5.内部監督機能

運営機関は、指標決定プロセスのあらゆる面をレビューし、検証する監督機能を設ける

べきである。当該機能は、指標の特徴や、意図される、予期される、あるいは知られてい

る指標の利用方法や、既存の又は潜在的な利益相反を考慮したものであるべきである。

監督機能は、独立した委員会、又はその他適切なガバナンス機能のいずれかによって遂

行されるべきである。また、監督機能及びその構成要素は、運営機関を実効的に精査する

ことに適したものとすべきである。当該原則を満たしている場合には、タイプや資産クラ

ス毎に指標をグループ化し、当該グループに対し監督を実施することを検討することも可

能である。

運営機関は、その監督機能に関連して強固な手続きを構築、維持し、これを文書化し、(該

当があれば)関連する規制当局に入手可能とするべきである。また、手続きの主な特徴は、

利害関係者に開示するべきである。この手続きには、以下の項目が含まれる。

a) 監督機能の付託条項(terms of reference)

b) 監督部門のメンバーの選出基準

19

c) 監督機能に責任をもつ委員会又はその他の機能に係るメンバーシップの概要、利

益相反の申告や委員の選出、指名、解任・交代のプロセス

監督部門の責任として、以下が挙げられる。

a) 指標の設計に係る監督

i. 指標及びその算出方針の定義に関する定期的な見直し

ii. 指標に係る問題やリスクに関する情報を継続的に入手するための措置をとること、

また、(必要に応じて)外部機関への指標のレビューを委託すること

iii. 指標の算出方針に係る変更の監督。例えば、当該算出手法が「価値」を引き続き

適切に計測するものであるかを評価すること、算出方針の変更案や変更をレ

ビューすること、運営機関に対し、(分かる範囲での)利害関係者、又は利用者と

の間で原則 12に則り当該変更に係る協議を行う権限を与えるか、そのことを要求

すること

iv. 指標を停止する際に運営機関が利害関係者とどのように協議すべきかを示した指

針など、指標の停止に係る手続きをレビューし、承認すること

b) 指標決定及び統制枠組みの健全性に係る監督

i. 第三者による指標決定に係る活動を含む、指標の管理及び運営を監督する。

ii. 内部及び外部監査の結果を検討し、当該監査において指摘された改善措置の実施

についてフォローアップする。

iii. 運営機関による専門家の判断の行使を監督し、公表されている算出方針に従って

いることを確かめる。

運営機関において、所有構造や支配関係によって、あるいは当該運営機関を所有又は支配

するエンティティ、当該運営機関又はその関連会社の活動によって、利益相反が生じる可

能性がある場合:運営機関は、利益相反を適切に調整できるように選ばれた(分かる範囲

での)利害関係者、利用者及び呈示者の均衡のとれた代表を含む独立した監督部門を設置

するべきである。

指標が呈示にもとづく場合:監督部門は、以下のような方法をもって、適切に監督を実施

し、呈示について検証するべきである。

a) データや呈示に対する運営機関による精査及び監視を監督する、また、それらに

ついて検証する。例えば、データや呈示の態様について定期的に議論を行うこと、

データや呈示を分析するうえで用いるパラメータを定義すること、異常なデータ

20

や呈示について検証あるいはサンプリングを行うに当たっての運営機関の役割を

問うことなどが含まれうる。

b) 「呈示者に係る行動規範」の監督

c) 「呈示者に係る行動規範」の違反に対応する実効的な取決めの確立

d) 異常あるいは疑わしい呈示の可能性を検出し、疑わしい行為があった場合、当該

行為及び発覚した呈示者による不正行為を、(該当があれば)関連する規制当局に

報告するための方策を講じること

指標の品質

6.指標の設計

指標は、計測する「価値」の経済的な実態を正確かつ高い信頼性をもって反映するよう

設計され、指標に係る価格やレート、指数、価値の歪曲をもたらすような要素を排除する

ものであるべきである。

指標の設計にあたっては、以下の一般的かつ包括的な特徴の他、特定の「価値」にとっ

て適当なその他の要素も考慮されるべきである。

a) 「価値」を反映するために利用するサンプルの妥当性

b) 関連市場の規模及び流動性(例えば、観測可能な、透明性のある価格設定が可能

となるような十分な取引の存在等)

c) 指標を参照する市場における取引量との関係での、当該指標の基礎となる市場

(underlying market)の相対的な規模

d) 市場参加者の間の取引の分布状況(市場集中度)

e) 市場の動態(指標が、指標の裏付けとなっている資産の変動を確実に反映してい

ることの確保等)

7.データの十分性

指標の決定に使用するデータは、指標が計測する「価値」を正確かつ高い信頼性をもっ

て反映するのに十分であるべきであり、かつ以下を満たすべきである。

a) 価格発見システムの信頼性を確保するため、需要と供給の競争原理によって決定

した価格、レート、指数、又は価値に基づくこと

21

b) 価格、レート、指数、又は価値にとっての信頼性の高い指標として機能するため

に、指標が計測する「価値」に関する市場における観測可能な独立当事者間取引

によって裏付けられていること

当該原則は、指標が、観測可能かつ真正な、独立当事者間取引を行う活発な市場に基づ

くこと(すなわち、その市場で裏付けられること)を定めるものである。原則 7 は、個々

の指標を決定するに当たって、取引データのみに基づかなければならないことを意味する

ものではない。活発な市場が存在することを条件として、ある日の市況によっては、運営

機関は、取引データに付随又は補足するものとして、観測可能な市場データに関連する異

なる形態のデータに依拠することが求められる場合がある。この結果、運営機関の算出方

針によっては、主として、あるいはもっぱら、ビッド・オファーに基づき、又は過去の取

引から推定することによって、個々の指標が決定されることになる。この点については、

原則 8でさらに明示されている。

上記のサブパラグラフ(a)及び(b)を充足していることを条件に、原則 7 は、真正かつ独

立当事者間取引で構成される観測可能な市場によって裏付けられる指標を作成する手段

として、取引執行されうるビッドやオファーを使用することを妨げるものではない23。

本原則は、様々な指数が、ルールベースの投資戦略のパフォーマンス、指数や市場のボ

ラティリティないし推移、又は市場又は活発な市場のその他の側面を計測若しくは反映す

るよう設計されている場合があることも認識している。指数が取引を反映するものではな

い場合や、指標が、取引に基づかないデータが反映するものを計測しようとする性質を持

つ場合、取引データ以外のデータを使用することを妨げない。例えば、証券取引に関する

指数のボラティリティを計測するために設計された特定のボラティリティ・インデックス

は、取引データ以外のデータに依拠しているが、当該データは実際に機能している証券市

場又はオプション市場から得られており、当該市場に裏付けられている。

8.データのヒエラルキー

運営機関は、データの使用順序及び指標設計に利用する専門家の判断について明確な指

針を策定し、公表するか入手可能にすべきである。一般的に、データのヒエラルキーの構

成要素としては以下を含むべきである。

a) 指標が呈示に依拠している場合、呈示者自身が行った「価値」に関する又は関連

市場における呈示者による独立当事者間取引

b) 「価値」に関する独立当事者間取引であって報告又は観測されたもの

23例えば、長期にわたって市場全体の取引量が多いものの、ある日においてはファームのビッド・オファー

の方が公示取引よりも多い可能性もあるような市場では、この手法は適している場合もある。

22

c) 関連市場における独立当事者間取引であって報告又は観測されたもの

d) 業者による(取引執行されうる)ビッド・オファー

e) その他の市場情報又は専門家の判断

当該原則は、データの十分性の原則(すなわち、活発な市場の存在)に従うことを条件

として、運営機関の算出方針で定められている指標決定に係る品質、健全性、継続性及び

信頼性を確保するための運営機関の試みと一致するよう、運営機関が柔軟にデータを使用

することを制限するものではない。運営機関は、その算出方針において、指標の品質と健

全性の確保に適切と考えるデータを柔軟に利用すべきである。例えば、活発であるが流動

性の低い市場で取引が毎日存在するとは限らない場合、運営機関によっては、専門家の判

断に依拠することを決定することがある。IOSCO は、確認されたビッドやオファーが異常

値を示す実取引よりも意味を持つ場合(例えば流動性の低い市場)が存在し得ることも認

識している。こういった状況では、ある指標決定においては、ビッド・オファー及び過去

の取引から推定されるデータ等の取引データ以外のデータが優位となるかもしれない。

9.指標決定の透明性24

運営機関は、運営機関の公表期限に遅延することのないよう合理的な程度に、各指標決

定について説明し、公表すべきである。

a) 利害関係者又は市場当局が、どのように指標が決定されたかについて理解を深める

のに十分な、簡潔な説明。これには、少なくとも、評価対象の市場の規模及び流動

性(呈示された取引件数と取引量を意味する)、取引量及び価格の範囲とその平均、

並びに指標決定において検討された各種の市場データの割合を含む。算出方針を指

す用語(すなわち、取引ベース、スプレッドベース、又は内挿法/外挿法等)も含

むべきである。

b) 指標の決定にあたり専門家の判断が利用された場合、その程度及び根拠の簡潔な説

10.定期的な見直し

運営機関は、指標によって計測される「価値」の状況を定期的に見直し、算出方針の設

計の変更を要するような構造的な変更があったかを判断すべきである。また、運営機関は、

この「価値」が使用するに値しなくなったか、機能していないために、信頼性のある指標

24 当該原則のさらなる詳細については、付属文書 Cを参照。算定手法を定期的に公表する指標は、取引後

の透明性に係る要件が義務付けられている規制市場又は取引所を情報源とするデータから得られる場合

には、原則 9を充足することになる。加えて、原則 7で意図されている執行可能な気配値(quotes)の

みに依拠して設定される指標は、算定手法において開示することを条件として、執行可能なビッド又は

オファーで設定した理由について各指標設定で説明する必要はない。

23

の基礎としての役割を持たなくなっているかについて定期的に見直すべきである。

運営機関は、見直しによって指標に重要な修正が加えられた場合、当該見直しの概要(修

正の根拠を含む)を公表・入手可能にすべきである。

算出方針の品質

11.算出方針の内容

運営機関は、指標を決定するために使用する算出方針を文書化し、公表・入手可能にす

べきである。運営機関は、特定の算出方針を採用する根拠を提供すべきである。公表する

算出方針は、利害関係者がどのように指標が決定されるかを理解したうえで、指標の反映

対象、特定の利害関係者との関連性、金融商品の参照指標としての妥当性について評価で

きるように、十分に詳細な情報を提供すべきである。

算出方針は、最低限、以下を含むべきである。

a) 重要な用語の定義

b) 指標を策定するために使用されるすべての基準と手続き。これには、データの選

択、指標を決定するために使用したデータの組み合わせ、運営機関による専門家

の判断の利用を管理するための指針、特定の種類のデータの優先性、指標を決定

するために必要な最低限のデータ、すべてのモデル又は推定の方法が含まれる。

c) 各指標の決定に利用される専門家の判断の一貫性を高めるために設計された手続

きと方法

d) 市場のストレス時又は混乱時、あるいはデータソースの欠如時に指標の決定方法

を管理する手続き(例えば、理論的な見積りモデル)

e) エラー報告に対応するための手続き(指標の訂正が必要となる場合を含む)

f) 内部レビューの頻度及び算出方針の承認に関する情報。可能な場合、公表される

算定手法は、当該手法の外部レビューの手続きと頻度に関する情報も含むべきで

ある。

g) (必要に応じて)運営機関が利害関係者と協議を行う状況及び手続き

h) 指標の潜在的な限界を特定すること。これには、市場の流動性の低下又は分裂や、

データの潜在的な集中が含まれる。

指標が呈示にもとづく場合、以下の追加的な原則も適用される

24

運営機関は、呈示者の追加と除外に係る基準を明確に策定すべきである。これらの基準

は、運営機関の法域と呈示者の法域が異なる場合、呈示者の所在地から生じるすべての問

題を考慮に入れるべきである。当該基準は、(該当があれば)関連する規制当局が入手可能

とすべきであり、利害関係者に対して公表・入手可能とすべきである。また、通知期間を

含む、呈示者の構成の変更に関連するあらゆる規定を明確にすべきである。

12.算出方針に対する変更

運営機関は、提案されている算出方針への重要な変更の根拠とそのような変更を行う手

続きを公表・入手可能にすべきである。これらの手続きは、何が重要な変更にあたるかと

いうことと、変更について利用者(及び指標が使用されている範囲及び深度を勘案のうえ、

必要に応じて、その他の利害関係者)と協議するか、又は利用者に通知する方法とタイミ

ングを明確にするものであるべきである。

これらの手続きは、運営機関が指標決定の健全性を継続的に確保するという最優先の目

的と一致すべきである。変更が提案された場合、運営機関はこれらの変更が具体的にどの

ような結果を伴うか、及びその適用予定時期について、明確に示すべきである。

運営機関は、監督部門が算出方針の変更を精査する方法を明記すべきである。

運営機関は、監督部門が重大であるとみなした算出方針への変更に関する利害関係者と

の協議の手続きを策定すべきである。これは、指標が利用される範囲及び深度と、利害関

係者の性質との関係で適切であり、かつ適合するものであるべきである。手続きは、以下

を満たすものであるべきである。

a) 運営機関による全般的な評価を勘案したうえで、重大な変更案の影響について利

害関係者が分析やコメントを行う十分な機会を与えるための、事前通知と明確な

期間を提供すること。

b) コメントを提出した者が機密にすることを要望した場合を除き、利害関係者のコ

メントの概要及びこれらのコメントに対する運営機関の回答の概要を、協議期間

の終了後、すべての利害関係者が入手できるようにすること

13.移行

運営機関は、市場構造の変化、商品の定義の変更、又は指標が測定対象とする「価値」

を反映しなくなるようなその他の状況による指標の停止の必要性に対応するため、明確な

方針書と手続書を整備すべきである。これらの方針書と手続書は、指標を参照する契約と

金融商品の幅と深度に加え、指標の停止が経済・金融安定性に及ぼす影響に対応したもの

であるべきである。運営機関は、特定の指標について方針書と手続書を定めるに当たって、

利害関係者、関連当局、及び国内当局の見解を勘案すべきである。

25

これらの方針書と手続書は、すべての利害関係者に対して公表・入手可能とするべきで

ある。

運営機関は、利用者及び指標を参照する金融商品を保有するその他の利害関係者が、以

下を確保するための措置を講じることを促すべきである。

a) 指標を参照する契約又はその他の金融商品が、参照する指標の重要な変更があっ

た場合又は停止した場合の強固な代替措置を講じること

b) 利害関係者が、運営機関が管理できない外的要因を含む様々な要因によって指標

に重要な変更が必要となる可能性について認識すること

指標停止の可能性に対応する運営機関の方針書と手続書には、運営機関が妥当かつ適切

であると判断した場合、以下の項目を含めることが考えられる。

a) 信頼性が高い代替指標を選択するための基準。例えば、既存の指標の特徴(代替

市場の信頼度、満期、流動性等)に可能な限り合致しているか、指標間の差異、

代替的な指標が利害関係者の資産・負債のニーズを満たす程度、修正された指標

が投資可能かどうか、透明性のある取引データの入手可能性、利害関係者に対す

る影響、既存の法令の影響を含むが、これらに限定されない。

b) 新たな指標への秩序だった移行を行うために複数の指標を同時に維持することが

実践的であるか(可能な場合、既存の契約と金融商品が満期を迎え、新たな指標

を公表するまで、一定期間、既存の指標を維持する)

c) 適切な代替指標を特定できなかった場合に運営機関が取る手続き

d) 指標又は指標のテナーが完全に停止される場合、既存の契約が、必要に応じて、

代替指標に移行することができるよう、指標を引き続き算定する期間について定

める方針

e) 運営機関が、必要に応じて利害関係者及び関連する市場当局及び国内当局を、代

替指標を選択してこれに移行する行為に従事させるプロセス。これは、指標を参

照する金融商品のテナーに応じた対応を行うための時間枠及び利害関係者に対す

る充分な周知を含む。

14.呈示者に係る行動規範

指標が呈示に基づく場合、以下の追加的な原則も適用される

運営機関は、呈示者に係る指針を策定し(「呈示者に係る行動規範」)、(該当があれば)

関連する規制当局が入手可能にすべきであり、利害関係者に対して公表・入手可能にすべ

26

きである。

運営機関は、呈示者に係る行動規範を遵守する主体からのデータ又は呈示のみを使用す

べきであり、運営機関は呈示者の遵守状況を適切に監視及び記録すべきである。運営機関

は、呈示者に対して、年 1 回及び呈示者に係る行動規範の改訂の都度、呈示者に係る行動

規範への遵守状況を確認することを要求すべきである。

運営機関の監督部門は、呈示者に係る行動規範の継続的な見直しと監視の責任を担うべ

きである。

呈示者に係る行動規範は、以下を取り扱うものであるべきである。

a) データの選択

b) データ及び情報の運営機関への呈示担当者

c) 呈示者及びデータや情報を報告する呈示者の職員の確認、並びに、当該職員が呈示

者に代わって市場データの報告を行う権限について検証するための品質管理手続き

d) 呈示者に代わって運営機関にデータ又は情報を呈示する呈示者の職員に適用される

基準

e) 呈示者が途中で調査や呈示行(Panels)から脱退しないようにするための措置

f) 呈示者がすべての関連データを呈示することを促す措置

g) 呈示者の内部システムと内部統制。これには以下を含むべきである。

i. データを呈示するための手続き(運営機関の算出方針に従い、適格なデータの種

類を決定するための手法を含む)

ii. 疑わしいデータ又は取引(グループ間取引を含む)を検出及び検証し、また、必

要に応じて、当該データが真正であるかを確かめる手続き

iii. 専門家の判断の利用方法について案内し、詳細を示す方針(文書化の要件を含む)

iv. 記録保持に係る方針

v. 呈示前のデータの検証及びデータ確認のための上級職員による複数回の検証の手

続き

vi. 研修((指標規制又は市場における不正行為を扱う)関連する規制に関する研修を

含む)

vii. 疑わしい呈示の報告

27

viii. 主要な人物の役割と責任及び説明責任のあるライン

ix. データを呈示するための経営者による内部の承認手続き

x. 内部告発制度(原則 4に沿ったもの)

xi. 利益相反の手続きと方針。これには、(a) 運営機関が、フロントオフィスから運

営機関へのデータの呈示に対する適切な内部監督機能と検証手続きが存在すると

確信している場合(上記パラグラフ(v)及び(ix)に記載のとおり、生じうる利

益相反に対応するための保護と監督を含む)を除き、フロントオフィスからのデー

タの呈示の禁止、(b) 必要に応じて職員と報告ラインの物理的な分離、(c)(指標

の水準に影響を与えることを意図しているかを問わず)データ入力の操作若しく

は影響を与えることへの既存又は潜在的なインセンティブの特定、開示、管理、

軽減及び回避方法の検討。これには、適切な報酬制度や、呈示者の呈示行為(指

標呈示について責任を有するすべての職員)と、呈示者又は関連会社やそれぞれ

の顧客のその他業務との間に存在する可能性のある利益相反に実効的に対応する

ことを含むが、これらに限定されない。

15.データ収集に係る内部統制

運営機関が外部の情報源からデータを収集する場合、運営機関はデータ収集及び伝達の

プロセスにおいて適切な内部統制の構築を確保すべきである。これらの統制は、情報源の

選択、データ収集及びデータの健全性と機密性を保護するプロセスに対応するものである

べきである。運営機関がフロントオフィスの職員からデータを受け取った場合、運営機関

は当該データをその他の情報源により裏付けるようにすべきである。

説明責任

16.不服処理

運営機関は、不服処理に係る方針書を策定し、公表・入手可能にすることにより、利害

関係者が、特定の指標の決定が計測対象である「価値」を反映しているかどうか、特定の

指標の決定に関する算出方針の適用、及び指標決定に係る運営機関のその他の決定等に関

する不服を申し立てることができるようにすべきである。

不服処理に係る方針には、以下を含むべきである。

a) 利用しやすい不服処理プロセス(電子申請等)を通じて不服を申し立てることが

できるものであること

28

b) 運営機関の指標決定プロセスに対する不服の受理及び調査を、不服の対象となっ

ている指標に関与しているあるいは関与していた者から独立の立場にある者によ

り、適時及び公正に行う手続きを含むものであること。当該手続においては、不

服申立人及びその他の関連当事者に合理的な期間内で調査結果について報告し、

不服に関するすべての記録を保持するものであること

c) 必要に応じて、運営機関のガバナンス機構へ不服を上程するプロセス

d) 不服申立人が提出した書類及び運営機関自体の記録を含む、不服に関連するすべ

ての書類を、適用される国内法又は規制上の要件に従い、最低 5 年間保存するこ

とを求めるものであること

指標決定に関する異義のうち正式な不服に該当しないものは、適切な標準的手続きに従

い、運営機関が解決すべきである。不服により指標決定に変更が生じた場合、運営機関の

算出方針の定めに従い、可及的速やかに利用者に対して情報を公表・入手可能にし、利害

関係者に対しても公表・入手可能にすべきである。

17.監査

運営機関は、運営機関により定められた基準及び原則に対する運営機関の遵守状況を定

期的にレビューし報告するための適切な経験と能力を有する独立する立場の内部又は外部

監査人を任命すべきである。監査の頻度は、運営機関の業務の規模と複雑性に見合ったも

のでなければならない。

運営機関が特定した既存又は潜在的な利益相反の程度に応じて、(関連する規制当局では

なく国内当局によって規制又は監督される指標を除いて)運営機関は、運営機関により定

められた算出方針に対する運営機関の遵守状況を定期的にレビューし報告するための適切

な経験と能力を有する独立する立場の外部監査人を任命すべきである。

監査の頻度は、運営機関の指標に関連する業務の規模と複雑性、利害関係者による指標

の利用の範囲と深度に適したものであるべきである。

18.監査証跡

以下の記録文書は、適用される国内法又は規制上の要件に従い、運営機関が 5 年間保存

すべきである。

a) 指標決定で依拠するすべての市場データ、呈示及びその他のデータや情報源

b) 指標決定における運営機関による専門家の判断の利用

c) 標準的な手続きや算出方針の変更又はそれらからの逸脱。これは、市場のストレ

29

ス時又は混乱時に実施されたものを含む。

d) 指標決定に関与した各担当者の身元

e) データに関連する問い合わせと回答

これらの記録が規制市場又は取引所によって保持されている場合、運営機関は、適切な

記録文書の共有に関する取決めに基づき、当該原則の遵守についてこれらの記録に依拠す

ることができる。

指標が呈示に基づく場合、以下の追加的な原則も適用される

呈示者は、適用される国内の法律又は規制の要件に従い、以下の記録を 5 年間保存すべ

きである。

a) データの呈示を管理する手続きと方法

b) 運営機関に提供されたデータや情報を呈示又は作成したその担当者の身元

c) 呈示及び呈示の監督の責任を担う担当者の名前と役割

d) 呈示者間の関連するコミュニケーション

e) 運営機関とのやりとり

f) 運営機関に呈示したデータや情報に関して受けた問合せ

g) 利益相反及び指標に関連した商品に対する自社全体のエクスポージャー

h) 監査や調査を促すための、指標に関連した商品に対する個々のトレーダー及びデス

クのエクスポージャー

i) 外部・内部監査の検出事項。(該当する場合)指標呈示の是正措置に関連する情報及

びそれらの措置の実施の進捗状況

19.規制当局との連携

これらの原則の対象となる関連文書、監査証跡及びその他の文書は、関連当事者により

関連する規制当局が規制上又は監督上の責務を遂行するうえで容易に利用できるようにし、

要請があった場合には迅速に提出する。

30

付属文書 A

主要な用語の定義

運営(Administration):指標の作成及び提供に関わる、以下のすべての段階やプロセス

を含む。

a) 指標を決定する目的で、情報を収集、分析、及び(又は)加工すること、あるい

は意見の表明を行うこと

b) ある計算式又は情報を計算する他の手法、あるいは、(指標を決定する目的で)意

見の表明を適用することにより指標を決定すること

c) 利用者への提供。プロセスの見直し、調整及び修正を含む。

運営機関(Administrator):指標運営プロセスの設定と運営を管理する組織又は法人。

指標に関連した知的所有権を所有しているかは問わない。具体的には、以下を含む指

標運営プロセスのすべての段階において責任を有する。

a) 指標の計算

b) 算出方針の決定及び適用

c) 指標の提供

独立当事者間取引(Arm’s-length Transaction):利益相反(関連会社間の取引等の関係

から生じる利益相反など)の影響を受けずに締結された二者間の取引

監査証跡(Audit Trail):指標設定プロセス上、対象期間において使用された関連データ、

呈示、その他の情報、判断(データを除外する根拠を含む)、分析、呈示者の身元につ

いての文書と保存された記録

指標(Benchmark):本報告書の対象となる指標は、以下の価格、見積り、レート、指数

又は価値である

a) 無料又は有料で利用者に入手可能であること

b) 一つ又は複数の基礎となる「価値」の値に対して、ある計算式又はその他の計算

方法を全体的ないし部分的に適用することによって、又は「価値」の値を評価す

ることによって、定期的に計算されるものであること

c) 以下の一つ又は複数の目的のために参照されること

融資契約又はその他の金融契約や金融商品に基づく支払利息、又はその他の

31

支払金額を決定すること

金融商品の売買、取引、又は償還の価格、あるいは金融商品の価値を決定す

ること

金融商品のパフォーマンスを測定すること

指標公表機関(Benchmark Publisher):指標の値を公表する法的主体。利用者が、当

該値をインターネットから、若しくはその他の手段で、無料又は有料で入手可能にす

ることを含む。

真正な(Bona Fide):データが、データを提示した当事者間において実行された、又は

実行の準備ができている取引に基づいて作成されており、かつ、当該取引が、独立当

事者間で行われている場合の当該データを指す。

算定機関(Calculation Agent):運営機関が設定した算出方針に従い、ある計算式又は

情報を計算するその他の方法又は指標を決定する目的で提供された意見の表明を適用

することにより指標を決定する責任を委譲されている法的主体。

専門家の判断(Expert Judgment):指標の決定におけるデータの使用に関して、運営機

関又は呈示者が裁量をもって判断することを指す。専門家の判断は、過去の取引又は

関連する取引からの推定、マーケット・イベントや買手又は売手の信用の質の低下な

ど、データの質に影響を及ぼす可能性のある要因のために値を調整すること、あるい

は実行した特定の取引よりもビッドやオファーを重視することなどを含む。

フロントオフィス機能(Front Office Function):この用語は、第三者、又は自己取引

のために、価格決定(リスク管理上の価格検証を除く)、トレーディング、販売、マー

ケティング、広告、勧誘、ストラクチャリング、及び仲介業務を実施する呈示者又は

その関連会社の部署、部門、グループ、担当者、あるいはこれらの行為について直接

的な監督権限を行使する者(そのように特定されているかは問わない。)を指す。

「価値」(Interest):現物のコモディティ、通貨、又はその他の有形商品、無形商品(持

分証券、債券、先物取引、スワップ又はオプション、金利やその他の指数(ルールベー

スのトレーディング戦略又は金融商品やその他の指数のボラティリティと連動する指

数を含む))等、指標によって計測されることが意図される「価値」を基礎とするあら

ゆる金融商品を指す。文脈によっては、「価値」という用語には、当該「価値」に係る

市場も含まれる場合がある。

市場当局(Market Authority):規制当局、自主規制機関、規制市場若しくは規制取引所、

又は(文脈に応じて)清算機関。

32

市場参加者(Market Participants):指標を利用し、又は指標を参照する、金融契約や金

融商品の開発、ストラクチャリング、使用、取引に関与する法的主体。

算出方針(Methodology):情報を収集し、指標を決定するに当たって従う文書化された

規則と手続書。

国内当局(National Authority):市場当局又は規制当局ではない場合もあるが、指標の

方針に対して責任を有する、あるいは行政上の関心を有する中央銀行等の関連する政

府機関を指す。

呈示行(Panel):指標の呈示者である一部の市場参加者。

公表・入手可能にする(Publish or Make Available):運営機関等の当事者が利害関係

者に文書又は通知を提供すべきであるという期待を指す。そのような通知が行われる

場合は、ベストエフォートベースで運営機関によって行われ、利害関係者による指標

の使用の範囲や深度に応じたものとすべきである。通常、運営機関のウェブサイトに

文書又は通知を掲載することでこの期待を満たすことができる。

規制市場又は取引所(Regulated Market or Exchange):規制当局により規制及び(又

は)監督されている市場又は取引所。

規制当局(Regulatory Authority):証券及び(又は)コモディティや先物の規制の責任

を有する政府機関又は法定機関(自主規制機関ではない)。

自主規制機関(SRO: Self-Regulatory Organisation):自らを規制する権限又は責任を

付与されている組織であり、その規則は証券市場や業界のあらゆる部分について有意

な制裁の対象となる。この権限は、非政府系エンティティへの法定の権限委譲、又は

政府当局が許可又は承認したSROとそのメンバーの間の契約を通じて生じる場合があ

る。「IOSCO のメソドロジー」の原則 9(50ページ)を参照。

http://www.iosco.org/library/pubdocs/pdf/IOSCOPD359.pdf

利害関係者(Stakeholder):指標を参照する契約又は金融商品を保有する利用者及びそ

の他の者やエンティティを指す。

呈示(Submission(s)):指標決定の目的で、呈示者から運営者に対して提供される価格、

見積り、価値、レート、又はその他の情報。取引後の透明性に係る要件が義務付けら

れている規制市場又は取引所を情報源とするデータは除外される。

呈示者(Submitter):指標の決定に関連して要求されている情報を運営機関又は算定機

関に提供する法人。

利用者(Subscriber):運営機関から指標決定サービスを購入する者又はエンティティ。