ips細胞を用いた心筋再生医療実用化の現状と展望 - …tca cycle atp atp 核酸...
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慶應義塾大学循環器内科
福 田 恵 一
平成29年2月5日
iPS細胞を用いた心筋再生医療実用化の現状と展望
第11回日本心不全学会市民公開講座
未来の心不全治療を飛躍的に変えるために
正常の心臓と重症心不全(拡張型心筋症)の心臓
正常心臓 拡張型心筋症
き
器質的心疾患あり
心不全症状あり
器質的心疾患あり
心不全症状なし
難治性 心不全
器質的心疾患なし 心不全リスクあり A
B
C
D
ステージ別心不全患者数の推定
米国での推定 日本での推定
20万人
500万人
800-1000万人
5000- 6000万人
数万人
120万人
500万人
5000万人
NYHA分類
IV
III
II
I
Ammar et al. Circulation 2007 Okura Y, et al. Circulation J, 2008
iPS細胞を用いた重症心不全に対する治療法の開発
Oct3/4, Sox2 Klf4, c-myc
末梢血のリンパ球
ヒト心筋細胞
•オーダーメイド多能性幹細胞 •免疫拒絶反応がない •倫理的問題がない
心筋細胞へ分化
純化・精製
心筋細胞の移植 心不全治療
心移植待機中の患者 遺伝性心筋疾患
活動電位記録など
採血 センダイウイルス による4因子導入
TiPS細胞
大量培養
病態解明・創薬
心不全治療に向けた再生医療の課題
1.高品質で安全性の高いiPS細胞を効率的につくる
2. iPS細胞を大量にふやす
3. iPS細胞から効率的に成人の心室の心筋をつくる
4.心筋細胞を細胞分裂させて、細胞数をふやす
5.心筋細胞を純化・精製する
6.効率的な心筋細胞の移植法を開発する
血漿
全血からリンパ球層 を分離する
抗CD3抗体、IL-2 の存在下で培養
Tリンパ球が増殖
培養5日目 培養7日目
採血だけでiPS細胞を作れるか?
単核球
赤血球
(Seki, et al. Cell Stem Cell, 2010)
(Seki, et al. Nature Protocols, 2012)
増殖するリンパ球細胞を利用すれば大丈夫
遺伝子を壊さずにiPS細胞を作ることが重要!
転写
転写 翻訳
翻訳
逆転写
核
遺伝子の挿入
今までの方法 センダイウイルスを用いた新しい方法
Retrovirus Lentivirus AAV Adenovirus plasmid
センダイウイルスベクターとこれまでの方法の違い
RNA(-鎖)型 細胞質増殖型 広い宿主域・高発現
複製
リンパ球からiPS細胞が1ヶ月以内に出来た!
500 µm
500 µm
Nanog Oct 3/4 SSEA 3
SSEA 4 Tra-1-60 Tra-1-81
軟骨 脂肪組織 神経
筋肉 腸管 奇形腫形成
1.1ヶ月以内の短期間で血液からIPS細胞が出来た 2.ES細胞と同じ性質を持っていた 3.移植すると腸管・心筋・軟骨・脂肪・神経になった
(Seki, et al. Cell Stem Cell, 2010, Nature Protocols, 2012)
卵細胞から1,2細胞期に 発現している蛋白質に着目
ES細胞
内部細胞塊
卵子と精子 (受精)
1細胞期 2細胞期 4細胞期 桑実胚 胚盤胞
ES細胞で重要な 機能を持つ遺伝子
Oct4,Sox2,Klf4
iPS細胞
この時期に発現 している因子が重要
リンカーヒストン H1fooに着目
スーパーiPS細胞(ES細胞と同等の品質)を作る
H1fooにより高品質のiPS細胞が効率よく出来た!
Scale bar = 300 μm
キメラマウス作製によるiPS細胞の品質の評価
黒いマウスから作ったiPS細胞と白いマウスの受精卵を混ぜることにより、白と黒のまだら(斑)のマウス(キメラマウス)を作製する →→→黒いマウスから作ったiPS細胞の品質を評価する
黒いマウスから作ったiPS細胞
白いマウスの受精卵 混合して仮母親の子宮に移植
キメラマウス作製
iPS細胞作製
10% chimera 30% chimera
60% chimera 100% chimera
キメラ寄与率の目安
従来のiPSによるキメラ スーパーiPSによるキメラ
スーパーiPS細胞はES細胞と同等のキメラ動物が出来る
スーパーiPS細胞はES細胞と同等の キメラマウスを作ることに成功
心臓再生医療への治療戦略
ヒトES細胞
前方中胚葉誘導
心筋細胞 (心筋の双葉)
iPS細胞から心筋細胞への道筋は解明できた!
心筋誘導
心筋前駆細胞 (心筋の種)
心筋増殖
大量の心筋
ヒトiPS細胞
アクチビン、BMP4 Wnt inhibitor
Noggin Wnt G-CSF
(Yuasa, Nature Biotech, 2005) (Shimoji, Cell Stem Cell, 2010)
(Onitsuka, JMCC, 2012)
慶應大学チームが3つを解明
成熟した心室筋細胞の作製に成功
(Tohyama, et al. Cell Metabolism, 2016)
心房
心室
刺激伝導系
分化
後D
ay 3
5 (純
化精
製後
Day
15)
分化
後D
ay 6
0 (純
化精
製後
Day
40)
心房筋マーカー 心室筋マーカー MLC2a MLC2v
胎児心房 +
成人心房 +
胎児心室 + +
新生児心室 +
成人心室 +
心房筋・心室筋 マーカー遺伝子の発現
心室と心房では性質が大きく異なる 必要なのは心室筋
ヒトES細胞、iPS細胞からの心筋細胞の誘導
ヒトiPS細胞由来心筋細胞 ヒトES細胞由来心筋細胞
未分化細胞
胚様体
未分化iPS細胞
心筋細胞
心筋以外の細胞
腫瘍形成 心室筋
左室内腔
未純化のiPS細胞が残っていると腫瘍を形成してしまう
理想的な心筋の純化精製の戦略
未分化iPS細胞 心筋細胞 心筋以外の細胞
胚様体の形成 (EBs)
ES/iPS細胞と心筋細胞のエネルギー代謝の相違
13C-Glucose
13C-Glucose
ES細胞 心筋細胞
遺伝子解析 + 代謝解析
ES細胞と心筋細胞における代謝のちがい
ATP
ATP
ブドウ糖
ES/iPS細胞 高い増殖性
TCA回路 乏しい
ATP
核酸
ATP
乳酸
アミノ酸
ブドウ糖
TCA cycle ATP
ATP
核酸
アミノ酸
乳酸
心筋細胞 増殖性乏しい
(Tohyama S,et al. Cell Stem Cell,2012)
ピルビン酸
ミトコンドリア
乳酸は 排泄しない
代謝の違いを利用した心筋細胞の純化精製
ATP
ATP
ブドウ糖
ES/iPS細胞 高い増殖性
乏しい クエン酸回路
ATP
核酸
ATP
Lactate
アミノ酸
ブドウ糖
TCA cycle ATP
ATP
核酸
アミノ酸
心筋細胞 低い増殖性
発達した クエン酸回路
乳酸を 排泄
乳酸を 投与
乳酸は 排泄せず
乳酸を 投与
ミトコンドリア ミトコンドリア
(Tohyama S,et al. Cell Stem Cell,2012)
ブドウ糖(-) 乳酸(+)培養下での細胞の生存率 Card
iom
yocy
tes
ESCs
Live/Dead Viability kit
心筋
細胞
ES細
胞
心筋細胞
ES細胞
MEF細胞
生存率
無ブドウ糖・乳酸添加培地で培養
(Tohyama S,et al. Cell Stem Cell,2012)
純化精製前のiPS細胞由来の心筋細胞と非心筋細胞
ブドウ糖 (-) グルタミン(-) 乳酸(+)培地を開発
純化精製後のiPS細胞由来心筋細胞 (未分化iPS細胞を含む非心筋細胞は脱落)
心筋細胞への分化誘導(動画)
AS101培地
iPS細胞を増やす 心筋へ分化 純化精製
心筋純化培地
純化したヒト再生心筋は腫瘍形成しない
N=10
奇形腫の発症率 (%)
N=20
心筋細胞の移植は心筋の中に移植しなければ効果がない
ヒトの心臓の周囲には大量の脂肪が付着している!
手術時の心臓の表面写真 ヒト心臓の断面写真
純化精製心筋 心筋細胞移植
再生心筋細胞をどのように移植するか?
細胞移植法の問題点 浮遊細胞の直接注入法
移植心筋の生着は 最大3%程度に留まる
(Hattan, et al. Cardiovasc Res 2005)
微小心筋組織(心筋球)の開発で生着率が飛躍的に改善 マウス再生心筋球 マウス心臓へ移植
ヒト再生心筋球 免疫不全マウスに移植
(Hattori, et al., Nature Methods, 2010)
ヒトES由来心筋球
90%の心筋細胞が生着
細胞接着・心筋の伸展 オートクリン細胞増殖因子
サル再生心筋細胞のサル心臓への移植
赤い色素で 再生心筋を標識 緑色は心筋細胞 Merge
Cyclosporine A: 8 mg/kg・day
移植されたサル再生心筋による心筋球
移植1ヶ月後
ヒト再生心筋細胞はサルの心臓に移植できた
ヒト特異的 ミトコンドリア
Merge
GFP
ヒトiPS心筋
サルの心臓に 移植
ヒトiPS再生心筋はマーモセットの心臓で長期間生着出来る
マイクロミニブタ心臓への ヒトiPS細胞由来心筋細胞球の移植
マイクロミニブタ マイクロミニブタへの心筋細胞移植
慶應大学:小林英司教授の協力により実施
高密度かつ均一に細胞を移植する器具を開発
一定量の細胞を一定速度で均一に 6箇所同時に移植することが可能
外部コントローラーで移植の速度・量を自在に調節
一定間隔で高密度に移植
高密度移植針
インジェクター
• 心外膜側から心筋層に向かって移植穿刺針を刺入 • 一定間隔で均一量の細胞を移植することが出来る • 心筋内層から外層に向かって全層に均一に移植 • 冠動静脈を損傷しない • 心筋組織の障害を最小限にする
10mm 14mm
ヒトの心臓に再生心筋細胞を田植えする
←心外膜側
←心内膜側
心筋球移植用の注射針の開発
合計6か所の全周性側孔タイプの 移植針の開発
ブタ心筋への注入テスト:ヒトiPS心筋球および色素注入による細胞分布の評価
通常針(市販品) 側孔加工針
開発した移植針では 心筋全層に移植可能
3方向に6-9箇所の注入口 先端はメス構造にはせず
独自開発した移植器具による心筋細胞移植の実例
本日の内容の一部がNHKで放送されます
• NHK教育テレビ (Eテレ)サイエンスゼロ 『iPS細胞10年 医療応用へ!進む技術革新』
• 2017年2月 5日(日) 午後11時30分-12時 • 2017年2月11日(土) 午後0時30分-1時 (再放送)