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JPMA NEWS LETTER 2015 No. 165 Topicsトピックス CDISC実装の準備状況と課題に関する調査報告 1/7 2013年6月の「健康・医療戦略」の発表から1年後の2014年6月20日、「承認申請時の電子データ提出に関する基本的考 え方について(薬食審査発0620第6号) [1] 」(以下、「基本的考え方」)が厚生労働省から発出され、2016(平成28)年度 から医薬品の承認申請時には電子データの提出が義務化されることになりました。また、提出する電子データの形式と してCDISC標準が指定され、日本における製薬企業にとってCDISC標準の導入・実装が急務となりました。そのような 状況下において、製薬協 医薬品評価委員会 データサイエンス部会(以下、データサイエンス部会)では、日本におけ るCDISC標準の実装への準備状況を調査すべく、2014年6月23日から7月2日の期間で「CDISC実装の準備状況と課題 に関するアンケート」を実施しました。本ニューズレターでは、その調査結果を一部抜粋して報告します。 はじめに CDISCとは、Clinical Data Interchange Standards Consortiumの略で、臨床データの電子的取得、交換、申請、保管を 支援する団体の名称です。そこで策定されるCDISC標準は、承認申請時に提出する電子データの形式として、10年以上前 から、アメリカの薬事規制当局である食品医薬品局(Food and Drug Administration、以下 FDA)が推奨しています。 データサイエンス部会(前身の統計・DM部会も含む)においても、10年以上前から、CDISCについて情報を収集し、刊行 物などで日本の製薬業界におけるCDISC標準の普及活動を行ってきました。 今回の調査は、臨床評価部会、データサイエンス部会、電子化情報部会のいずれかに加盟する会社70社を対象に、「基 本的考え方」が発出した時点での日本におけるCDISC標準の実装準備状況を確認する目的で実施しました。 調査結果(1) アンケート回答状況 調査対象会社70社のうち66社から回答を得ました(回答率94%)。内訳は、国内資本(以下、内資)が49社(74%)、海外 資本(以下、外資)が17社(26%)でした。 [1]承認申請時の電子データ提出に関する基本的考え方について(薬食審査発0620第6号)http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/iyaku/jisedai/ file/140620-jizenmendan.pdf 17社) 2649社) 74内資 外資 内資、外資の 内訳 1 アンケート回答状況 Topics |トピックス 2015年1月号 No.165 J P M A N E W S L E T T E R CDISC実装の準備状況と課題に関する調査報告

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JPMA NEWS LETTER 2015 No. 165 Topics|トピックス CDISC実装の準備状況と課題に関する調査報告 1/7

2013年6月の「健康・医療戦略」の発表から1年後の2014年6月20日、「承認申請時の電子データ提出に関する基本的考え方について(薬食審査発0620第6号)[1] 」(以下、「基本的考え方」)が厚生労働省から発出され、2016(平成28)年度から医薬品の承認申請時には電子データの提出が義務化されることになりました。また、提出する電子データの形式としてCDISC標準が指定され、日本における製薬企業にとってCDISC標準の導入・実装が急務となりました。そのような状況下において、製薬協 医薬品評価委員会 データサイエンス部会(以下、データサイエンス部会)では、日本におけるCDISC標準の実装への準備状況を調査すべく、2014年6月23日から7月2日の期間で「CDISC実装の準備状況と課題に関するアンケート」を実施しました。本ニューズレターでは、その調査結果を一部抜粋して報告します。

はじめに CDISCとは、Clinical Data Interchange Standards Consortiumの略で、臨床データの電子的取得、交換、申請、保管を支援する団体の名称です。そこで策定されるCDISC標準は、承認申請時に提出する電子データの形式として、10年以上前から、アメリカの薬事規制当局である食品医薬品局(Food and Drug Administration、以下 FDA)が推奨しています。 データサイエンス部会(前身の統計・DM部会も含む)においても、10年以上前から、CDISCについて情報を収集し、刊行物などで日本の製薬業界におけるCDISC標準の普及活動を行ってきました。 今回の調査は、臨床評価部会、データサイエンス部会、電子化情報部会のいずれかに加盟する会社70社を対象に、「基本的考え方」が発出した時点での日本におけるCDISC標準の実装準備状況を確認する目的で実施しました。

調査結果(1) アンケート回答状況 調査対象会社70社のうち66社から回答を得ました(回答率94%)。内訳は、国内資本(以下、内資)が49社(74%)、海外資本(以下、外資)が17社(26%)でした。  

[1] 承認申請時の電子データ提出に関する基本的考え方について(薬食審査発0620第6号)http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/iyaku/jisedai/file/140620-jizenmendan.pdf

(17社)26%

(49社)74%

内資

外資

内資、外資の内訳

図1 アンケート回答状況

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2015年1月号 No.165J P M A N E W S L E T T E R

CDISC実装の準備状況と課題に関する調査報告

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J P M A N E W S L E T T E R 2015年1月号 No.165

調査結果(2) 背景情報 以下に、アンケートに回答した企業の背景情報を記しました。 CDISC標準を用いる作業に従事する可能性が高いと考えられる、国内在籍のデータマネジャー、解析担当者、統計担当者のリソース(日本国内の業務のために海外在籍のリソースも利用している場合は、それを含みます)の総数を質問しました。 1〜10名が最も多く33社(50%)でした。次いで、21〜50名が11社(17%)、11〜20名が10社(15%)、51名以上が9社(14%)でした。リソースなし(0名)の会社も3社(5%)存在しました。 内資・外資別の分析も行いました。内資では、全体の傾向とおおむね類似し、1〜10名が最も多く30社(61%)、次いで21〜50名が8社(16%)、11〜20名が7社(14%)、51名以上とリソースなし(0名)が同数で2社(4%)でした。対して外資では、51名以上が最も多く7社(41%)、次いで1〜10名、11〜20名、21〜50名が同数で3社(18%)でした。リソースなし(0名)の会社も1社(6%)存在しました。   

 この結果から、内資と外資ではCDISC標準に対応する社内体制が大きく異なることが示唆されました。全体の傾向は、アンケート回答総数で74%を占める内資の状況を強く反映しており、外資の状況とは異なる可能性があると推察しました。よって、以降の各種調査結果については、全体での結果と併せて、内資・外資別での結果も考察することにしました。

(10社)15%

(9社)14%

(33社)50%

(11社)17%

(3社) 5%

1~10名

51名以上

21~50名

11~20名

全 体

0名

図2 日本国内の業務に従事するデータマネジャー、   解析担当者、統計担当者のリソース

(2社) 4% (1社) 6%

(7社)41%

(7社)14%

(2社) 4%

(3社)18%

(3社)18%

(3社)18%

(30社)61%

(8社)16%

1~10名

51名以上

21~50名

11~20名

1~10名

51名以上

21~50名

11~20名内 資 外 資

0名 0名

図3 日本国内の業務に従事するデータマネジャー、解析担当者、統計担当者のリソース(内資、外資別)

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CDISC実装の準備状況と課題に関する調査報告

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2015年1月号 No.165J P M A N E W S L E T T E R

調査結果(3) SDTMおよびADaMの実装準備状況 「基本的考え方」において承認申請時の電子データ提出の対象として挙げられている、SDTMとADaMの実装準備状況について調査しました。 SDTMとは、Study Data Tabulation Modelの略で、臨床試験における個々の被験者データ(症例一覧データ)を薬事規制当局へ電子データ申請するために開発された標準仕様のことです。また、ADaMとは、Analysis Data Modelの略で、臨床試験データに基づく統計解析を実施するために必要な解析データセットと関連ファイルを薬事規制当局へ電子データ申請するために開発された標準仕様です。 SDTMおよびADaM の実装準備状況の指標として、SDTM仕様書などの関連ドキュメント類の作成状況、CDISCバリデーションの実施状況、社内の知識レベルおよび教育体制の状況を取り上げました。 SDTM仕様書をはじめとするCDISC関連ドキュメント類の作成状況およびCDISCバリデーションの実施状況については、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請予定あるいは申請済みの薬剤開発プロジェクトを対象に、作成もしくは実施した試験数について質問しました。 CDISC関連ドキュメント類の作成状況およびCDISCバリデーションの実施状況は、いずれも類似した傾向でしたので、代表としてSDTM/ADaM仕様書を取り上げ、以下に示しました。 SDTM仕様書は37社(全体の56%)、ADaM仕様書は41社(全体の62%)と半数以上が「経験なし(0試験)」と回答しました。作成経験ありの内訳としては、「1〜5試験」と経験が少ない会社と「16試験以上」と経験をかなり積んでいる会社に2極化していました。 内資・外資別では、SDTM仕様書作成状況は、外資では「16試験以上」が6社(35%)、「経験なし(0試験)」が5社(29%)、「1〜5試験」が4社(24%)の順でした。内資では、過半数が「経験なし(0試験)」で32社(65%)、次に「1〜5試験」が9社(18%)、

「16試験以上」が4社(8%)でした。ADaM 仕様書作成状況は、外資では、「経験なし(0試験)」と「1〜5試験」が5社(29%)、「16試験以上」が4社(23%)でした。内資では、SDTM仕様書と同様に「経験なし(0試験)」が大多数で36社(74%)、次に「1〜5試験」が8社(16%)でした。  

 また、社内(国外にも組織のある場合には国内法人)の専門家・担当者のSDTM・ADaMに関する知識レベルについて質問しました。 SDTMの知識レベルについては、「問題はない」と回答した会社が6社(9%)と一番少なく、「大きな問題はない」17社(26%)、

「やや問題がある」20社(30%)、「問題がある」23社(35%)がおおむね同じ割合でした。なお、「問題はない」と回答した会社はすべて外資でした。外資では、全体の約65%(11社)が「問題はない」、「大きな問題はない」と回答したのに対し、内資では、全体の約75%(37社)が「やや問題がある」、「問題がある」と回答していました。 ADaMの知識レベルについてもSDTMと類似した傾向でしたが、「問題はない」と回答した会社がさらに減り4社(6%)、対

0試験

37

13

42

10

41

13

3 2

7

1~5試験

6~10試験

11~15試験

16試験以上

0試験

1~5試験

6~10試験

11~15試験

16試験以上

0

10

20

30

40[社] [社]

0

10

20

30

40■ 会社数■ 会社数

SDTM仕様書

ADaM仕様書

図4 SDTM仕様書およびADaM仕様書の作成状況(作成試験数ごと)

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して、「問題がある」が26社となり全体の39%を占めていました。内資・外資別では、外資のうち、「問題はない」、「大きな問題はない」と回答した会社は10社(59%)と、SDTMの知識レベルと比較するとポジティブな回答の割合が低い傾向がみられました。内資では、「やや問題がある」、「問題がある」とネガティブな回答をした会社が8割近い39社(80%)となり、SDTMの知識レベルと比較するとネガティブな回答をした会社の割合がさらに高くなっていました。  

 教育体制については、社内全体の教育体制(必要なトレーニングマテリアル、インストラクターなど)が十分に整備されているか、質問しました。 SDTM、ADaMともに、「あまり整備されていない」、「整備されていない」と回答した会社が8割を占めていました。内資・外資別では、外資では、SDTM、ADaMともに、「十分に整備されている」、「ほぼ整備されている」が半数以上を占めていたのに対し、内資では、9割以上が「あまり整備されていない」、「整備されていない」という回答でした。    

調査結果(4) CDASHの導入状況 CDISCが推奨しているように、CDISC標準はデータ収集段階から利用されることが望ましく、製薬企業にとってのメリットも最大化できると考えられます。そのため、データ取得段階のCDISC標準であるCDASH(Clinical Data Acquisition Standards Harmonization)の導入状況についても、併せて調査しました。

(20社)30%

(20社)30%

(6社)9% (4社)6%

(26社)39%

(23社)35%

(16社)24%(17社)

26%

問題がある大きな問題はない

やや問題がある

SDTM知識レベル

問題がある大きな

問題はない

やや問題がある

ADaM知識レベル

問題はない 問題はない

図5 SDTMおよびADaMの知識レベル

(11社)17%(9社) 14%

(2社) 3% (2社) 3%

(22社)33%

(17社)26%

(36社)55%

(33社)50%

整備されていない

整備されていない

ほぼ整備されている

ほぼ整備されている

あまり整備されていない

あまり整備されていない

SDTM教育体制

ADaM教育体制

十分に整備されている

十分に整備されている

図6 SDTMおよびADaMの教育体制

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 導入状況については、「導入完了(いつでもCDASHに従って試験を開始できる)」はわずか5社(8%)でしたが、「導入中(社内ルールやテンプレート・カタログを作成中、2年程度以内には導入完了予定)」が12社(18%)、「導入予定あり」が29社(44%)であり、これらをあわせてポジティブな回答として合計すると、全体の70%を占めていました。内資・外資別では、全体の傾向と大きく変わりませんでした。なお、「導入完了」は、外資が3社(18%)、内資が2社(4%)でした。 CDASH導入の可能性として、PMDAの申請時電子データ提出の要求が社内標準としてCDASH導入を加速させると考えるかという質問に対しては、「非常にそう思う」、「そう思う」のポジティブな意見が半数以上(56%)を占めていました。内資・外資別では、外資では「そう思わない」、「全く思わない」のネガティブな回答が約25%を占めていましたが、内資では15%以下と外資より低い割合となっていました。  

調査結果(5) CDISCに対する関心・必要性に対する意識・今後の対応 「基本的考え方」の発出をきっかけとしたCDISCに対する関心や意識の変化についても調査を行いました。併せて、申請時電子データ提出に対する課題・懸念や、建設的な見解についても調査しました。 PMDAへの申請時電子データ提出対応を機に、社内でのCDISCに対する関心(CDISCに対する関心の向上)が顕著に上がったかどうか、また、社内でのCDISC標準の教育・トレーニング・情報収集の必要性に関する意識が顕著に上がったかどうか

(CDISCの必要性に対する意識の向上)を質問しました。その結果、いずれの質問に対しても「非常にそう思う」、「そう思う」のポジティブな回答が、全体の9割近くから得られており、内資・外資別では、外資では全体の8割弱、内資では9割以上でした。

(29社)44%

(20社)30% (12社)

18%

(30社)45%

(7社)11%

(18社)27%

(5社) 8%

(6社) 9%

(5社) 8%

導入予定あり

導入予定なし 導入中

そう思う

非常にそう思う

どちらとも言えない

CDASH導入状況

CDASH導入推進の可能性

そう思わない導入完了 全く思わない

図7 CDASHの導入状況およびCDASH導入推進の可能性

(45社)68%

(4社)6%

(43社)65%

(15社)23%

(14社)21%

(5社)8%

(2社) 3% (2社) 3%(1社) 2% (1社) 2%

そう思う

CDISCの必要性に対する

意識の向上

そう思う

非常にそう思う

非常にそう思う

どちらとも言えない

どちらとも言えない

そう思わない そう思わない全く思わない 全く思わない

CDISCに対する

関心の向上

図8 CDISCに対する関心およびCDISCの必要性に対する意識の向上

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 申請時電子データ提出対応に関する課題・懸念について、社内で当てはまると思うものを10の選択肢(複数選択可)から回答を得ました。 その結果、「体制(組織・役割、プロセス・ツール、メタデータのガバナンス、バージョンコントロール等)作り」51社、「人的リソースの確保」46社、「専門家の育成」45社、「申請・承認タイムラインへの影響」42社、「CDISC標準への適合性」41社、CDISCや電子申請に関するガイダンスなどに関する「タイムリーな情報収集」40社、「追加で発生する費用」39社、「日本語データの英訳」34社、「委託先との合意」20社と、多くの会社が多岐にわたって課題・懸念を選択していました。内資・外資別で傾向が異なった項目としては、「日本語データの英訳」(外資2社、内資32社)、「CDISC標準への適合性」(外資5社、内資36社)の2項目について、外資に比べて内資は圧倒的に多くの会社が課題・懸念として選択していました。  

 選択肢以外の「その他」の意見として14社から、過去の試験への対応(古い試験データのCDISC変換にかかる費用)、他部署との連携(ほかの電子申請資料を含むプロセスの確立)、データベースロックから主要解析結果提供までの期間の延長、薬事規制当局の対応への懸念(海外の薬事規制当局との相違、ガイドラインの明確さ)、情報交換の場の少なさ、業務委託先(CRO)のCDISC標準対応状況への懸念、申請時電子データ提出の戦略構築(優先順位付け、移行措置期間の利用、機構相談のタイミングなど)といった意見が挙がっていました。 PMDAのCDISC標準での電子データの提出要件がもたらした、またはもたらすと期待されるポジティブな側面に関しても意見を求めました。 身近なところでは、社内標準化の促進、業界標準の構築、社外および国外とのデータ交換が容易、データ品質向上といった標準化の促進により実務環境に及ぼす良い影響、審査期間の短縮や照会事項の軽減・対面助言でのより科学的で建設的な議論が可能になるなど、医薬品承認申請時におけるより効率的・効果的な意見が挙げられました。また、標準化データが生み出す可能性として、プロジェクト横断的解析・Benefit Risk Assessment・Safety Review・Modeling & Simulationなどの蓄積データを活用した戦略的なビジネス展開を期待する意見、製薬以外の業界(CRO、ITベンダー、コンサルタントビジネスなど)の活性化や産官学のより強固な協力体制により広く世界に影響を与えることができるのでは、といった意見が挙げられました。さらにはCDISC標準を理解する人材の重要性の認知度向上や臨床データを取り扱う人々のプレゼンス向上といった、この承認申請システムの変動期を積極的にチャンスに変えていこうという意欲的な意見など、建設的な意見が多数挙げられました。  

その他

委託先との合意

日本語データの英訳

追加で発生する費用

タイムリーな情報収集

CDISC標準への適合性

申請・承認タイムラインヘの影響

専門家の育成

人的リソースの確保

体制作り

0 10 20 30 40 50 60[社]

図9 申請時電子データ対応に関する課題・懸念(複数選択可)

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製薬協としての今後の活動 データサイエンス部会では、前述の通り、早くからCDISC標準について着目し、2006年に開催されたCDISCとの会議以降、CDISC標準の利用を推奨してきました。 刊行物としては、2003年に「臨床試験におけるデータベース構造とCRFの標準化—CDISC紹介—」がデータサイエンス部会の前身である統計・DM部会より発行されています。また、2011年には日本CRO協会、J3C(Japan CDISC Coordinating Committee)、CJUG(CDISC Japan User Group)との協業で「症例報告書のデータ項目を定めたCDASH標準の解説」を公表しました。さらに、2012年には、「CDISCが変える臨床試験」を発行しました。 CDISC関連の活動としては、2013年以降、J3Cにもメンバーを派遣しています。 本アンケートも、現在の日本の医薬品承認申請のシステムの変動期という時代の流れに沿って、タイムリーに実施されました。 今回のアンケート結果から、日本の製薬企業の実態は、すでにCDISC標準に対応できる企業と、これから対応を考える企業の2極化が生じていることが推察されました。また、多くの企業においてCDISC標準に対する社内の知識レベルや教育体制にはいまだ多くの問題を抱えていることがうかがえました。そのうえで、2014年6月の「基本的考え方」発出を機に、日本におけるCDISC標準への関心は高まり、今後予定されている実務的通知や技術的準拠ガイド(仮称)[2]の発出を経て、その取り組みは加速していくだろうと考えられます。 このような情勢を受け、データサイエンス部会では、2014~2015年度のタスクフォースとして、「CDISC標準の適正かつ効果的な利用の推進」を立ち上げました。本タスクフォースでは、承認申請時の電子データ提出に向け各社で直面している問題を解決するために、(1)緊急課題(緊急に対応すべき、CDISC標準の実装のための教育)、(2)短期的課題(電子データ申請が開始するまでに達成すべき、CDISC標準実装における「当たり前品質」の確保)、(3)長期的課題(近い将来の臨床試験の全体最適化を目指した、End-to-EndでのCDISC標準の利用による「魅力的品質」の実現)の3つの課題を掲げ、日本におけるCDISC標準利用を推進すべく、さまざまな提言や成果物の作成を行っています。

謝辞 アンケート調査にご協力いただいた多くの企業の皆様に深く感謝いたします。

(医薬品評価委員会 データサイエンス部会 小出 紀子、林 水紀、山田 大志)

[2] 「第13回レギュラトリーサイエンス学会シンポジウム〜新薬承認審査・相談への電子データの利用〜 新薬承認申請時の電子データ提出に関する検討状況」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 宇山佳明氏の発表資料より http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/iyaku/jisedai/file/140625-kouen-RS1.pdf

標準化の促進

▶ 社内の標準化促進▶ 業界全体を通じた業務の効率化▶ コミュニケーションの質およびスピードの向上▶ データ交換が容易、打ち合わせに係るリソースが解放▶ プロトコルやCRFの標準化が進み、 DM/解析業務の効率化促進▶ 治験を実施する医師の治験業務も効率化▶ データの品質安定・透明化、申請に係る時間の短縮

より効率的・効果的な意見

▶ 審査効率の改善、照会事項の軽減▶ データに基づいた科学的・建設的な議論が可能に

標準化データが生み出す可能性

▶ プロジェクト横断的な解析が可能に▶ Dynamic Integrated Databaseが 開発成功の可能性を高める期待

その他

▶ 種々の業界(CRO、ITベンダーなど)の活性化▶ CDISC標準を理解する人材の重要性の認識▶ 臨床データを取り扱う人のプレゼンス向上▶ グローバル化への加速▶ 産官学での協働への期待

表1 CDISC標準での電子データの提出要件がもたらすポジティブな意見

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