kanagawa industrial technology center news 産業技術センター … ·...

8
産業技術センター Topics 1 商品開発支援事例に見る事業成功のポイント ~産技センターによる商品開発支援事例~ 1 Topics 2 活動報告「神奈川R&D推進協議会」 3 ~産学公による高付加価値型産業の創出へ、神奈川R&Dネットワーク構想を推進しています~ Topics 3 高度技術活用研修(電子技術科)「フォトリソグラフィと薄膜作製」 ~新たなカリキュラムが加わりました~ 4 企業紹介 「第29回(平成24年度)神奈川工業技術開発大賞」受賞企業紹介 第2回 ~「地域環境技術賞」を受賞された2企業とその製品をご紹介します ~ 5 設備紹介 新規導入設備を詳しくご紹介します! 第3回 液体クロマトグラフ ― 質量分析装置 6 HOW TO! HOW TO! 知財入門 シリーズ④ 知財入門 「神奈川県知財活用促進支援事業」のご紹介(財)神奈川科学技術アカデミー 7 お知らせ 神奈川県産業技術センター「一般公開」 「神奈川工業技術開発大賞」応募企業等募集 / 「平成 25年度高度技術活用研修」受講生募集(機械技術科、材料化学科、電子技術科) 「神奈川県産業技術交流協会」会員募集 / スマートグリッド展 2013 8 1 はじめに 多種、多様なモノやサービスが溢れているわが国で、それらの「差別化」 は商品開発の重要な課題といえます。「看板商品」を世に送り出し、経営を 支える存在とするべく県内中小企業の皆様も日夜、努力を重ねておいでで す。当センターによる県内中小企業の商品開発事例を通して、事業成功の ポイントを探ります。 2 よいモノを作れば、売れる! ・・・・ ? 今回は、スチール家具などをはじめとした金属製品の製造に用いられる テーブルスポット溶接機の設計・製造・販売を営む株式会社向洋技研(相模 原市)の事例をご紹介します。当センター電子技術部での制御装置用ソフト ウェアの開発支援に際し、デザイン面からの商品化支援の要請がありました。 聞き取り調査の結果、技術力を強調する一方でマーケティングや販売力、 サービス等への注力の不足が見受けられました。そこで支援開始にあたり、 『よいモノであることは大前提だが、これに加えメーカーの技術や思想と ユーザーの利便性や満足感を両立させる商品づくりに励む姿勢がまず必要』 という点をご理解いただきました。 産業技術センターニュース Kanagawa Industrial Technology Center News vol.4 2012 Topics 1 商品開発支援事例に見る事業成功のポイント ~産技センターによる商品開発支援事例~ テーブルスポット溶接機 1 産業技術センターニュース 2012 vol.4

Upload: others

Post on 02-Aug-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

産業技術センター

Topics1 ● 商品開発支援事例に見る事業成功のポイント ~産技センターによる商品開発支援事例~ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1

Topics2 ● 活動報告「神奈川R&D推進協議会」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 ~産学公による高付加価値型産業の創出へ、神奈川R&Dネットワーク構想を推進しています~

Topics3 ● 高度技術活用研修(電子技術科)「フォトリソグラフィと薄膜作製」 ~新たなカリキュラムが加わりました~ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

企業紹介 ● 「第29回(平成24年度)神奈川工業技術開発大賞」受賞企業紹介 第2回   ~「地域環境技術賞」を受賞された2企業とその製品をご紹介します ~ . . . . . . . . . . . . 5

設備紹介 ● 新規導入設備を詳しくご紹介します! 第3回 液体クロマトグラフ ― 質量分析装置 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

HOWTO! ● HOW TO! 知財入門 シリーズ④ 知財入門   「神奈川県知財活用促進支援事業」のご紹介(財)神奈川科学技術アカデミー . . . . . . . 7

お知らせ ● 神奈川県産業技術センター「一般公開」 / 「神奈川工業技術開発大賞」応募企業等募集 / 「平成25年度高度技術活用研修」受講生募集(機械技術科、材料化学科、電子技術科) / 「神奈川県産業技術交流協会」会員募集 / スマートグリッド展2013 . . . . . . . . . . . . . . 8

●1 はじめに 多種、多様なモノやサービスが溢れているわが国で、それらの「差別化」は商品開発の重要な課題といえます。「看板商品」を世に送り出し、経営を支える存在とするべく県内中小企業の皆様も日夜、努力を重ねておいでです。当センターによる県内中小企業の商品開発事例を通して、事業成功のポイントを探ります。

●2 よいモノを作れば、売れる! ・・・・ ? 今回は、スチール家具などをはじめとした金属製品の製造に用いられるテーブルスポット溶接機の設計・製造・販売を営む株式会社向洋技研(相模原市)の事例をご紹介します。当センター電子技術部での制御装置用ソフトウェアの開発支援に際し、デザイン面からの商品化支援の要請がありました。 聞き取り調査の結果、技術力を強調する一方でマーケティングや販売力、サービス等への注力の不足が見受けられました。そこで支援開始にあたり、

『よいモノであることは大前提だが、これに加えメーカーの技術や思想とユーザーの利便性や満足感を両立させる商品づくりに励む姿勢がまず必要』という点をご理解いただきました。

産業技術センターニュースKanagawa Industrial Technology Center News

vol.42012contents

Topics 1商品開発支援事例に見る事業成功のポイント~産技センターによる商品開発支援事例~

テーブルスポット溶接機

1産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 2: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

●3 ものづくりのヒントは、現場(市場)から! 顧客側の情報を商品・サービスに活かす手段の一つに、市場調査(マーケティングリサーチ)があります。同社が販売実績を有する企業を規模別に3社選定し、訪問調査(経営者及び機器利用者への聞き取り)を行いました。 その結果、「操作性に不明点あり」「機能を使いこなしていない」「清掃しにくい形状」「アフターサービスの強化を要請」など技術レベルの高度化より、使い易さの追求を求める意見が多く寄せられました。 これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプトメイキングを行うなど『フロントソリューション』に充分な時間をかける」ことが効率的な商品開発に結び付くことをご理解いただきました。 その結果、操作画面の改良(ユーザーインターフェースの開発)に商品開発の主眼を置き、外部専門家の協力も得つつ社内で開発を進めることにしました。

ウェイト 大 小

市場ニーズ

の抽出

マーケティング

コンセプトの

構築

事業計画

の立案

試作品

の検証

商品化

発売

商品アイデア

の構築

●4 商品開発は、人材育成のチャンス! 開発担当には、社内の 30 歳代の若手技術者が選ばれました。正規の勤務時間外に取組み「専門書とパソコン漬け」の日々が続きましたが、ご本人は選ばれたことに発奮、期待にこたえたとのことです。また、社内外の調整の全てをこなし「人・モノ・金・情報ほか」を集約、開発を指揮した同社技術課長の役割も、今回のプロジェクトには欠かせませんでした。 その結果、「商品開発を進めることにより、必要な専門知識、専門技術に加え、創造性、企画力、問題解決能力、柔軟性を持つ人材の育成のみならず、構成員をとりまとめ、生産性・創造性を最大限に発揮せしめるリーダーシップを有するプロジェクトマネージャーの育成も可能である」ことが実感していただけたようです。

              既存「操作画面」                     改良版「操作画面」

●5 おわりに 今回解説した点は、特段目新しいことではありませんが、更に付け加えるなら「全社一丸となり ― 成功のためのポイントを踏まえつつ、何が何でもという気概を持ち ― 事業化に邁進できるか」が事業成功のポイントとなるのではないでしょうか。なお、今回支援した新商品は同社の新ブランドとして、販売実績をあげています。 当センターは、来年度も引き続き県内中小企業の皆様の商品開発のお手伝いをしてまいります。お気軽にお問い合わせください。

【問合せ】技術支援推進部 商品開発支援室 三輪茂樹

2 産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 3: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

活動報告「神奈川R&D推進協議会」~産学公による高付加価値型産業の創出へ、神奈川R&Dネットワーク構想を推進しています~

●1 はじめに 神奈川R&D推進協議会では、産業構造の変化に対応し、中小企業のものづくり技術の高度化や地球温暖化などの社会的課題を踏まえ、主に「展示会・マッチング」、「研究会」及び「オープンラボ」の3つの取組みを進めています。 今回は、このうち「展示会」と「研究会」について最近の取組みをご紹介します。

●2 「展示会」:技術展示商談会 in NISSAN 県内中小企業の新たなビジネスチャンス拡大を図るため、昨年 12 月5、6日の2日にわたり、日産自動車㈱テクニカルセンターにて技術展示商談会を開催しました。 県内中小企業を中心として77社に出展をいただき、優れた技術・アイデア等を日産自動車㈱をはじめ多くの企業等にアピールすることができました。 開催当日には 1,000 名を超える来場者があり、「大変参考になった」、「参考になった」と来場者の9割以上から好評価をいただきました。

●3 「研究会」:ノーベル賞受賞 特別講演会 2010 年にノーベル化学賞を受賞された根岸英一博士をお招きし、「触媒の不思議な力」と題して、昨年11月 22 日に神奈川県民ホールにて特別講演会を開催しました。研究内容などのわかりやすい解説に加え、学生時代のエピソードなどもお話いただきました。 更に、当日はノーベル賞研究家である北尾利夫氏からノーベル賞創設の経緯や裏話などもあわせて講演いただき、200 名を超える多くの皆様にご参加いただきました。

●4 おわりに 武田薬品工業㈱様に新たに参加をいただき、協議会参加団体は大企業(21 社)、大学(1 校)、研究機関(1 機関)と本県となりました。協議会は、今後もオープンイノベーションをさらに推進していきます。これからも当活動に対する多くの企業様の参加をお待ちしています。

Topics 2

技術展示商談会2012inNISSAN

根岸英一博士特別講演会

             神奈川 R&D 推進協議会参加機関 平成 24 年 11 月現在

【問合せ】 企画部 研究開発連携室 中沢雄一

旭硝子株式会社 味の素株式会社 アズビル株式会社 株式会社アルバックキヤノン株式会社 株式会社 資生堂 昭和シェル石油株式会社 ソニー株式会社

武田薬品工業株式会社 東京応化工業株式会社 東京ガス株式会社 東京電力株式会社株式会社 東芝 日産自動車株式会社 日本ゼオン株式会社 株式会社 日立製作所

富士ゼロックス株式会社 株式会社富士通研究所 富士フイルム株式会社 横河電機株式会社株式会社リコー 横浜国立大学 (財)神奈川科学技術アカデミー 神奈川県

3産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 4: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

●1 はじめに 当センターでは、企業に必要とされる優秀な技術者の育成を目的として、高度技術活用研修を3学科(機械技術科、材料化学科、電子技術科)の専攻別に開催しています。この研修は、全体で約 240 時間の講義と 70 時間程度の実習により行われます。 このうち、電子技術科では、電子部品の作製などに不可欠な微細加工の代表技術である「フォトリソグラフィ」と「薄膜作製」を習得できるカリキュラムを平成 24 年度から導入しました。

●2 電子技術科 新カリキュラムの内容 研修では、微細加工(μm サイズで出来上がる製品の加工法)と薄膜作製(基板上に真空中で蒸発させた物質をnm レベルの膜厚で堆積すること)について学びながら、試作品の評価までを一連の作業として行うことにより、初心者が理解しやすく、実用性のあるカリキュラムを目指しました。 試作の工程を左図に示します。マスク(表面の金属遮光膜にごく微細な形状を描いたガラス板)を通して感光性樹脂に紫外線を照射します。次に、現像により紫外線が照射されなかった箇所の感光性樹脂を除去します。 そして、金属の薄膜を作製した後、感光性樹脂を取り去ります。その結果、基板上の感光性樹脂のない箇所に金属パターンが残ります。

●3 おわりに 今年度の研修では、カリキュラムを「フォトリソグラフィ」と「薄膜作製」の2講座に分けて実施しました。

「フォトリソグラフィ」では、クリーン・ルーム ( 埃が少ない部屋 ) で感光性樹脂のパターンを作製し、「薄膜作製」では、アルミパターンを作製し、アルミの電気抵抗率を測定しました。 実習後、サンプルの持ち帰りを希望される方も多く、受講生の方々からは概ねご好評をいただきました。当センターでは、平成 25 年度も同様の内容で研修を実施する予定です。詳細は、当センターホームページ(http://www .kanagawa-iri .go .jp/)でお知らせしています。標記研修のページからご覧ください。

新たなカリキュラムが加わりました

高度技術活用研修(電子技術科)「フォトリソグラフィと薄膜作製」

Topics 3

拡大写真* μm( マイクロメートル ):1/1,000 mm、nm( ナノメートル ) :1/1,000,000 mm

作製した微細アルミパターン 作製した評価用アルミパターン

【問合せ】電子技術部 電子材料チーム 安井学

基板

感光性樹脂

現像

薄膜作製

リフトオフ(感光性樹脂剥離)

ガラスマスク金属遮光膜

紫外線照射

金属薄膜

UV

40μm

4 産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 5: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

― はじめに ― 神奈川県では、県内の中堅・中小企業の技術開発の奨励と技術力の向上をめざして、昭和 59 年度から毎年、優れた工業技術や製品を神奈川工業技術開発大賞として表彰しています。 平成 24 年度は、26 件の応募の中から7企業が受賞されました。前回に引き続き今回は、環境保全及び省資源等に優れた技術・製品に贈る地域環境技術賞を受賞された2企業の製品についてご紹介します。

地域環境技術賞 環境保全及び省資源等に優れた技術・製品に贈ります

お湯と水で作動する運搬可能な小型発電システムアルバック理工株式会社(横浜市)

 エネルギーの効率的な利用は、昨今の大きな課題ですが、200℃以上の高温排熱はごみ焼却炉などで蒸気発電に利用されているのに対し、工場廃熱、温泉熱、太陽熱などの低温廃熱によるエネルギー利用は進んでいないのが現状です。 同社は、75~100℃未満のお湯と5~30℃の水との温度差を利用した、高効率かつ低騒音で運搬可能な小型発電システムを開発しました。 システムのコアとなる発電機には、渦巻状の羽根を回転させるスクロール方式を採用しており、この方式は他の方式(スクリュー方式やタービン方式)に比べ、低振動・低騒音であることから、設置場所の制約が少ない利点があります。 工場廃熱の有効利用のほか、温泉熱、太陽熱、ディーゼル発電機、大型車や船舶の発熱など、これまで利用されてこなかったような分野への普及が期待されます。

大量のイオン風を発生する高性能な消臭機株式会社片野工業(横浜市)

 消臭機または空気清浄機には、現在、その方式にファン式、電気集塵式、イオン式などがあります。 同社は、独自に開発した効率の高い放電技術を採用して、従来比で3倍の風量のイオン風を発生させる消臭機を開発しました。 その独自技術とは、コロナ放電(※)の電極を複数のリングを同心円状に並べた構造とし、さらにこの構造を複数組並べて効率良くコロナ放電を起こす技術であり、特許にも登録されています。 また、この消臭機はファンとフィルターが不要であるため、他の方式と比べて小型、低騒音、低消費電力等の特徴があり、メンテナンスも容易な製品となっています。現在、医療施設での介護、家庭でのペット飼育等の幅広い用途に利用されています。 同社は、この製品を大企業にOEM供給し、 新製品として、より省スペースに対応した車載兼用消臭機も開発されました。

 ※コロナ放電: 尖った電極と対となる電極に高電圧を加えた場合に起こる放電現象。コロナ放電により空気中に電子が放出されると、オゾン等が発生する。

「地域環境技術賞」を受賞された2企業とその製品をご紹介します。「第29回(平成24年度)神奈川工業技術開発大賞」受賞企業紹介 第2回~明日をになう独創技術は神奈川から~

企業紹介

【問合せ】技術支援推進部 商品開発支援室 雜賀翔子

小型発電システム

小型消臭機

5産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 6: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

●1 はじめに 当センターでは、昨年3月から新たに「EMI 測定システム」( 本誌 2012vol .2 p .6)、「熱処理再現試験装置」( 同2012vol .3 p .6)、「液体クロマトグラフ - 質量分析装置(リチウムイオン電池電解液評価分析システム(LC/MS/MS))」を導入しました。今回は、この液体クロマトグラフ - 質量分析装置について詳しくご紹介します。

●2 導入の背景 当センターに寄せられる技術相談の中には、リチウムイオン電池の電解質のような、液体に溶けている物質の分析に関するものがあります。 このような場合には、溶解成分を分離しながら分析する「液体クロマトグラフ」という装置がよく用いられますが、この装置は、分離した成分が一体何であるかを直接示す情報を与えてくれません。そこで、このような課題に対応するため、当センターでは、液体クロマトグラフ - 質量分析装置を導入しました。

●3 装置の特徴 この装置は、溶解している有機成分を一つ一つ分離する「高速液体クロマトグラフ部」とそれぞれの成分の分子量を測定する「飛行時間型質量分析部」から構成されています。 高速液体クロマトグラフとしては、高圧型の仕様となっており、通常の HPLC に比べて数分の一の時間で分析を完了できます。また、飛行時間型質量分析装置により、高い精度で分子量を測定し、分析結果から成分の組成式(元素の構成)を推測する事が可能です。 さらに、測定する物質を分解しながら測定することにより、物質の部分的な化学構造に関する情報を得る事もできます。

●4 用途 この装置の特徴を生かした用途として次のようなものが挙げられます。

  ・リチウムイオン二次電池の電解質の劣化による成分の変化など化学反応過程の分析、評価  ・食品、化粧品分野における成分分析     市販のお茶を分析した例を当センター

「研究報告№18/2012」に掲載。    ( 「液体クロマトグラフ-質量分析を利用し

た緑茶飲料の分析」)  ・工業製品中にわずかに含まれる有害物質の分析     例として、生態系への影響が懸念される2種

類のフッ素化合物の分析結果を紹介します。通常の紫外可視検出器では分析できないこれらの化合物を感度良く検出できました(右図)。

●5 おわりに この装置は、依頼試験や受託研究でご利用いただけます。試験条件により料金は異なりますので、お気軽にお問い合わせください。

新規導入設備を詳しくご紹介します! 第 3 回液体クロマトグラフ-質量分析装置(日本ウォーターズ㈱XEVO G2 TOF)

設備紹介

・測定質量範囲 m/z 20 ~ 100,000 Da・測定質量精度 1ppm 以下・主な付属ソフトウェア フラグメント解析、多変量解析、リチウムイオン電池関連物質データベースなど

【問合せ】化学技術部 バイオ技術チーム 青木信義

液体クロマトグラフ―質量分析装置の主な仕様

装置外観

Time2.00 4.00 6.00 8.00 10.00

%

0

100 TIC4.35e7

7.45197

498.93056.58174

368.9749

図 2種類のフッ素化合物の分析結果

6 産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 7: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

1 はじめに 神奈川県知財活用促進支援事業は、県内企業等における知的財産等を活用した事業化・製品化の支援を目的とした本県独自の取組みです。支援条件に合致すれば、特許流通コーディネーターによる支援を無料で受けることができます。本事業は、県の委託を受けて(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)が実施しています。

2 知的財産の活用とは・・・・新規技術を権利化して保護(独占)し、他者による模倣を防ぐ

権利化した技術は公開され、公的に保護されます。独自技術を権利化せずに、ノウハウとして秘匿する方法もあります。

・自己保有技術(特許等)を他者へ実施許諾し、ライセンス収入を得るライセンス収入により、権利化費用の回収を図ることができます。また、事業分野や地域を限定してライセンスアウトすることも可能です。

・他者の技術(特許等)を導入し、開発期間を短縮する大手企業の技術を導入することで、大手のネームバリューや販路を利用できる場合もあります。

3 相談事例

 case1. 出願中の技術を元に製品の試作をしたい試作会社から技術が漏れないか → 秘密情報の取り扱いについて説明し、秘密保持契約書の作成アドバイスを行いました。 case2. 自社の特許を使いたいという企業が現れたどのようにライセンスすればよいか →  ライセンス契約の種類等について説明し、契約書の作成支援を行いました。更に必要に応じてライ

センス交渉の場に立ち会いました。 case3. 先方から共同研究契約書を提示されたが、見方がよくわからない → 契約書の不備や妥当性(一方的な内容でないか ) 等について確認し、修正案を提示しました。 case4. 新事業展開のため、新たな技術を探している →  相談者のニーズをヒアリングし、求める技術の探索方法を指導しました。加えて、県内企業や大学

等の該当するシーズ技術を紹介しました。

4 主な支援メニュー・技術供与・技術導入相談 ・技術移転先候補企業の調査 ・ライセンス条件調整・交渉支援・知的財産等に関わる各種契約のアドバイス ・マッチングイベント等の開催   *その他、知財活用に有効な各種支援を行います。

○ 支援の条件 *原則条件です。まずはお問い合わせください。 ・神奈川県内に本社または主要事業所を有する法人(企業、団体、教育・研究機関等)であること ・技術の供与者(ライセンサー)または導入者(ライセンシー)の いずれかが県内の企業等であること

HOW TO! 知財入門シリーズ④ 「神奈川県知財活用促進支援事業」のご紹介 (財)神奈川科学技術アカデミー

HOW TO ! 知財入門

【問合せ】企画部 企画調整室 鈴木典子

マッチングイベント(大手企業シーズ紹介 )

支援窓口 財団法人神奈川科学技術アカデミー(KAST) 神奈川県知的所有権センター支部  神奈川県川崎市高津区坂戸3-2-1 KSP 東棟308  受付時間 平日午前 9 時から午後 5 時まで  電話 (044)819 - 2100 FAX (044)819 - 2103  e-mail ipc @ newkast .or .jp(代表)

知的財産の活用方法はさまざまです。イノベーション意欲のある方からのご相談をお待ちしております。経営戦略の見直しに本事業をご利用ください!

7産業技術センターニュース 2012 vol.4

Page 8: Kanagawa Industrial Technology Center News 産業技術センター … · これらをもとに商品開発の方針を再検討し、ここで「商品化プロセスの初期段階でしっかりとしたコンセプト

各種見学ツアーを催行し、機器・設備をご案内します神奈川県産業技術センター「一般公開」(4/18・当センター) 科学技術週間行事の一環として、一般公開を開催します。所内の設備機器の公開等に加え、講演会もあわせて開催します。科学技術について理解と関心を深めていただくとともに、この機会に当センターをより多くの方に知っていただけたら幸いです。 参加費は無料です。皆様のお越しをお待ちしています。

【開催時間】午前9時 30 分から午後4時 30 分まで【内  容】 試験・研究機器の公開、技術支援事業の紹介、見学会(技術分野別見学ツアー)、講演会など      〔講 演 会〕 『iPS 細胞を用いた神経再生・神経疾患治療の試み』(午後1時~2時 45 分)

講師 慶應義塾大学教授 岡野 栄之(おかの ひでゆき)氏 定員 350 名(事前申込み不要)

      〔知的財産権に関するセミナー〕 4 月 18 日は「発明の日」です。これにちなんで、知的財産戦略に関するセミナーを開催します。

(詳細は、当センターホームページ〈「一般公開」のご案内〉をご覧ください)【そ の 他】伝統工芸品の展示等 【問合せ】技術支援推進部 交流相談支援室

「神奈川工業技術開発大賞」応募企業等募集(募集期間:4/1-4/30)【対  象】  県内に事業所を持つ中堅企業、中小企業及びそれらの企業で構成するグループによって開

発され、かつ開発が県内事業所で行われた技術や製品。 【受賞企業には…】  ・指定の展示会に出展(県が出展費用を負担)できます。

・神奈川工業技術開発大賞のロゴマークが使用できます。【募集要項】 当センターホームページに後日掲載します。 【問合せ】技術支援推進部 商品開発支援室

「平成25年度高度技術活用研修」受講生募集(機械技術科(定員25名)、材料化学科(定員18名)、電子技術科(定員25名)) 当センターでは、県内中小企業の技術人材育成を支援するため、高度技術活用研修の受講者を募集しています。基本から応用までを<講義+実習>により総合的に修得できます。実施期間は平成 25 年 6 月~26 年 3 月です。詳細は、当センターホームページ<「研修 ・ セミナーを受けたい」→「人材育成」>からご覧ください(応募締切は 5 月 17 日です)。 【問合せ】技術支援推進部 交流相談支援室

「神奈川県産業技術交流協会」会員募集 神奈川県産業技術交流協会(神産協)は、当センターを利用している県内製造関連企業を中心に約 460 事業所を会員とする団体です。 神産協では、会員が半額の受講料で参加できる品質管理講習会・生産管理講習会・マネジメントシステム研究会・ISO 内部監査員養成講座などの各種講習会や研究会に加え、企業・大学・研究機関への見学会、著名な講師を迎えての講演会も開催しており、これらの開催情報は、協会メールマガジンで会員に定期的にお届けしています。 新規ご入会の申込みは、随時受付けております。詳しくは事務局までお気軽にお問い合わせください。 【問合せ】神奈川県産業技術交流協会事務局(当センター技術支援推進部内)

スマートグリッド展 2013(5/29-31、東京ビッグサイト東ホール) 当センターでは、スマートコミュニティ Japan2013 の構成展「スマートグリッド展 2013」への出展を予定しています。当センターが平成 24 年度から県環境農政局と共に取り組んでいるスマートエネルギーシステム導入推進促進事業の概要や今後の予定、導入設備機器、県内中小企業との共同研究の成果に関する紹介を中心に展示を行います。 ご来場の際は、是非お立ち寄りください。 【問合せ】企画部 研究開発連携室

お知らせ

技術相談専用電話(直通)☎ 046-236-1510 当センターホームページhttp://www.kanagawa-iri.go.jp/産業技術センターニュース 2012 Vol .4 神奈川県産業技術センター 〒243-0435 海老名市下今泉705-1 TEL 046-236-1500(代表) FAX 046-236-1526平成25年3月発行   〃    工芸技術所 〒250-0055 小田原市久野621 TEL 0465-35-3557(代表) FAX 0465-35-3936通巻101号   〃    計量検定所 〒221-0062 横浜市神奈川区浦島丘4 TEL 045-421-3484(代表) FAX 045-402-6260   〃 尾上町駐在事務所 〒231-0015 横浜市中区尾上町5-80 TEL 045-633-5124(代表) FAX 045-633-5194 (複製を希望する場合は、当センター企画調整室までご連絡ください。) 印刷所 (株)相模プリント 〒252-0144 相模原市緑区東橋本1-14-17 TEL 042-772-1275(代表) FAX 042-774-1913

見やすいユニバーサルデザインフォントを採用しています。

8 産業技術センターニュース 2012 vol.4