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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 大学における応答型講義づくりの試み 一学生の発達保障と大学教育の あり方一(Trials to create a responsive lecture in the university : How does the university education guarantee the students' right to development and democracy?) 著者 Author(s) 渡部, 昭男 掲載誌・巻号・ページ Citation 大学評価学会年報『現代社会と大学評価』,9-10:203-220 刊行日 Issue date 2014-08-30 資源タイプ Resource Type Journal Article / 学術雑誌論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002862 PDF issue: 2021-03-10

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

大学における応答型講義づくりの試み 一学生の発達保障と大学教育のあり方一(Trials to create a responsive lecture in the university : Howdoes the university educat ion guarantee the students' right todevelopment and democracy?)

著者Author(s) 渡部, 昭男

掲載誌・巻号・ページCitat ion 大学評価学会年報『現代社会と大学評価』,9-10:203-220

刊行日Issue date 2014-08-30

資源タイプResource Type Journal Art icle / 学術雑誌論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002862

PDF issue: 2021-03-10

はじめに

大学における応答型講義づくりの試み一学生の発達保障と大学教育のあり方一

渡部昭男(神戸大学)

「一方的に教授する講義がどうも楽しくないjと悩みながら、しかし 11橋

本メソッドωjや「白熱教室スタイル(汁を導入する技量も勇気もない」と

いう大学教員は、少なくないと思う。本稿では、従来型の「教員が講ずる講

義スタイル」をベースにした上で少しだけ改善する方策(すなわち「楽しく

やり甲斐のある講義」への少しの工夫)を、筆者のこれまでの講義実践を振

り返りつつ紹介する形で提案したい。その上で、学生の発達保障のための大

学教育のあり方を考察する。

I.鳥取大学での試み (2007年度-)

1. 1個人カードJの導入 (2007年度)

前任校の鳥取大学において、筆者は、 2007年度(3)、地域学部地域教育学科

のl年次必修科目「地域教育学入門J(約50名)において、「感想カード」を

導入した。青木久子・磯部裕子・大豆生田啓友『新しい教育原理 教育学へ

の視座(第2版)教育へのまなざしの転換を求めてJ(萌文書林、 2005) を

テキストに、渡部をチーフに数名が担当するリレー式の科目である。

「個人カードjはB5判 1枚(表面のみ)で、講義の月日、学籍番号、氏

名、 IA 前時の復習事項/B 次時の予習事項/C 講義の感想、や意見/

D 来週までに復習・再確認したり発展的に調べてみたい事項Jという欄を

設けた。受講生は講義前にA.B欄を必ず記入して持参し、講義終了後にC

.D欄に書き込み、渡部研究室のカゴに毎回提出する。提出された「個人カ

ード」により、チーフの渡部は受講生の出欠状況、予習・復習の様子、講義

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はじめに

大学における応答型講義づくりの試み一学生の発達保障と大学教育のあり方一

渡部昭男(神戸大学)

「一方的に教授する講義がどうも楽しくないjと悩みながら、しかし 11橋

本メソッドωjや「白熱教室スタイル(汁を導入する技量も勇気もない」と

いう大学教員は、少なくないと思う。本稿では、従来型の「教員が講ずる講

義スタイル」をベースにした上で少しだけ改善する方策(すなわち「楽しく

やり甲斐のある講義」への少しの工夫)を、筆者のこれまでの講義実践を振

り返りつつ紹介する形で提案したい。その上で、学生の発達保障のための大

学教育のあり方を考察する。

I.鳥取大学での試み (2007年度-)

1. 1個人カードJの導入 (2007年度)

前任校の鳥取大学において、筆者は、 2007年度(3)、地域学部地域教育学科

のl年次必修科目「地域教育学入門J(約50名)において、「感想カード」を

導入した。青木久子・磯部裕子・大豆生田啓友『新しい教育原理 教育学へ

の視座(第2版)教育へのまなざしの転換を求めてJ(萌文書林、 2005) を

テキストに、渡部をチーフに数名が担当するリレー式の科目である。

「個人カードjはB5判 1枚(表面のみ)で、講義の月日、学籍番号、氏

名、 IA 前時の復習事項/B 次時の予習事項/C 講義の感想、や意見/

D 来週までに復習・再確認したり発展的に調べてみたい事項Jという欄を

設けた。受講生は講義前にA.B欄を必ず記入して持参し、講義終了後にC

.D欄に書き込み、渡部研究室のカゴに毎回提出する。提出された「個人カ

ード」により、チーフの渡部は受講生の出欠状況、予習・復習の様子、講義

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への感想や意見などを、 15回全体を通じて把握することができた。必要な場

合には次時に、質問に回答し、理解不足や誤解事項には説明を補うなどした。

ただし、記入して持参する方式は、記入してこなかったり、講義前に適当に

記入したり、忘れてきたりする学生も少なくなく、予習復習の効果は疑問符

付きであった。なお、「個人カード」は講義担当者には必ず読んでもらうと

ともに、反響が大きかった回に関しては担当者全員に回覧した。

この時点でのカード導入の「ねらいjは、応答よりも、主に「出欠管理」

及ぴ「リレー式の諸講師聞の連携・情報交換jにあった。

2. r個人カード」及び学生発表・討論による応答 (2009・2010年度)

続いて、筆者は、 2009年度(4)・2010年度(日、階段状の大講義室で行われる

鳥取大学地域学部の 1年次必修科目「地域学入門J(約190名)において、「個

人カードJとともに学生発表や討論も試みた。

渡部をチーフに 4学科から代表を選出してチームで実施する方式で、 15回

を「第 l部:r地域学jとは何か/第 2部:地域の課題と地域連携/第3部:

「地域づくり」の実践」の 3つのパートから構成した。 90分の授業を、 r15

分[受講者代表による当日テーマ・講師に係る事前調査の発表]-60分[講

師による特別講義]-15分[質疑応答&感想カードの記入]Jに構造化し、

受講者全員による討論を 2回(中間討論・総括討論)設けた。

学生の感想には手応えがあり、応答方式は青年の学習要求に合致するので

はないかとの感触を得た。ただし、発表・討論の導入は、共同担当科目で協

力してもらえるスタッフがいたから実現できた感が強い。単独担当科目の際

に、試みたことはない(この点に関しては後述)。

n.神戸大学での試み (2011年度-)

1. TA参画による応答型講義づくり (TAのいる科目)

神戸大学に異動した2011年度(目、教職科目の前期「教育政策J(発達科学

部を主に全学の 2年次以上、約250名)及び後期「道徳教育論J(発達科学部

人間形成学科の 2年次必修を兼ね、約180名)において、大学院博士課程後

204

への感想や意見などを、 15回全体を通じて把握することができた。必要な場

合には次時に、質問に回答し、理解不足や誤解事項には説明を補うなどした。

ただし、記入して持参する方式は、記入してこなかったり、講義前に適当に

記入したり、忘れてきたりする学生も少なくなく、予習復習の効果は疑問符

付きであった。なお、「個人カード」は講義担当者には必ず読んでもらうと

ともに、反響が大きかった回に関しては担当者全員に回覧した。

この時点でのカード導入の「ねらいjは、応答よりも、主に「出欠管理」

及ぴ「リレー式の諸講師聞の連携・情報交換jにあった。

2. r個人カード」及び学生発表・討論による応答 (2009・2010年度)

続いて、筆者は、 2009年度(4)・2010年度(日、階段状の大講義室で行われる

鳥取大学地域学部の 1年次必修科目「地域学入門J(約190名)において、「個

人カードJとともに学生発表や討論も試みた。

渡部をチーフに 4学科から代表を選出してチームで実施する方式で、 15回

を「第 l部:r地域学jとは何か/第 2部:地域の課題と地域連携/第3部:

「地域づくり」の実践」の 3つのパートから構成した。 90分の授業を、 r15

分[受講者代表による当日テーマ・講師に係る事前調査の発表]-60分[講

師による特別講義]-15分[質疑応答&感想カードの記入]Jに構造化し、

受講者全員による討論を 2回(中間討論・総括討論)設けた。

学生の感想には手応えがあり、応答方式は青年の学習要求に合致するので

はないかとの感触を得た。ただし、発表・討論の導入は、共同担当科目で協

力してもらえるスタッフがいたから実現できた感が強い。単独担当科目の際

に、試みたことはない(この点に関しては後述)。

n.神戸大学での試み (2011年度-)

1. TA参画による応答型講義づくり (TAのいる科目)

神戸大学に異動した2011年度(目、教職科目の前期「教育政策J(発達科学

部を主に全学の 2年次以上、約250名)及び後期「道徳教育論J(発達科学部

人間形成学科の 2年次必修を兼ね、約180名)において、大学院博士課程後

大学における応答型講義づくりの試み

期課程の大学院生に TAとして「応答型講義づくり」に参画してもらう中

で、事前の FD開発を進める大学教員準備 preparingfuture facultyを試み

た。

受講生が100名を越える科目では担当教員一人で「カード」に目を通して

毎回応答する時間的余裕がない。そこで、応答型講義の醍醐味を TA院生

に体験してもらう中でプレ FDも進めようという意図である O

TA院生の成長が確実にみられるとともに、多人数の受講生との応答も進

むことを確信した。

2. Iカード」を用いた応答型講義づくり (TAのいない科目)

加えて、全学共通教育科目「教養原論・教育学J(受講定員100名、 TAの

配置なし)でも、「カードjを用いた応答型講義づくりを試みたヘ「従来型

の「教員が講ずる講義スタイルjをベースにした上で少しだけ改善する方策」

として、この実践を少し丁寧に紹介したい。この程度の工夫であれば、研究

活動や学内運営、地域貢献や社会的活動を様々に進めながらの教育活動エフ

オート(業務時間配分)内で行えよう。また、職人芸も特に要しない。

(1)シラパスの概要

[到達目標1

1)自らの個人的な教育体験を、テキストに基づく 15テーマで振り返り、

共に共有しうる共通教養として新たに組み直す。

2 )日本の教育をめぐる論争点について知り、理解する。

3) 日本国憲法が教育に関してどのような考え方を採っているのかを理

解し、自らの立ち位置を再確認する O

4 )受講後には、マスコミで報じられる教育問題に関して、その憲法学

的な背景を含めて理解できるようになる。

5)教育問題を手がりにして、少しでもリーガルマインドを身につける。

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大学における応答型講義づくりの試み

期課程の大学院生に TAとして「応答型講義づくり」に参画してもらう中

で、事前の FD開発を進める大学教員準備 preparingfuture facultyを試み

た。

受講生が100名を越える科目では担当教員一人で「カード」に目を通して

毎回応答する時間的余裕がない。そこで、応答型講義の醍醐味を TA院生

に体験してもらう中でプレ FDも進めようという意図である O

TA院生の成長が確実にみられるとともに、多人数の受講生との応答も進

むことを確信した。

2. Iカード」を用いた応答型講義づくり (TAのいない科目)

加えて、全学共通教育科目「教養原論・教育学J(受講定員100名、 TAの

配置なし)でも、「カードjを用いた応答型講義づくりを試みたヘ「従来型

の「教員が講ずる講義スタイルjをベースにした上で少しだけ改善する方策」

として、この実践を少し丁寧に紹介したい。この程度の工夫であれば、研究

活動や学内運営、地域貢献や社会的活動を様々に進めながらの教育活動エフ

オート(業務時間配分)内で行えよう。また、職人芸も特に要しない。

(1)シラパスの概要

[到達目標1

1)自らの個人的な教育体験を、テキストに基づく 15テーマで振り返り、

共に共有しうる共通教養として新たに組み直す。

2 )日本の教育をめぐる論争点について知り、理解する。

3) 日本国憲法が教育に関してどのような考え方を採っているのかを理

解し、自らの立ち位置を再確認する O

4 )受講後には、マスコミで報じられる教育問題に関して、その憲法学

的な背景を含めて理解できるようになる。

5)教育問題を手がりにして、少しでもリーガルマインドを身につける。

205

206

【教科書]

①米沢広一 (2011)r憲法と教育15講(三訂版H北樹出版

②渡部昭男 (2006)r格差問題と「教育の機会均等J.I日本標準

[授業の概要と計画]

第1回:ガイダンス、教育権論争(第①テキスト第 l講)

第2回:未成年者の人権享有主体性(第 2講)、児童の権利条約(第15

講)

第3回:生徒の自己決定権(第3講)

第4回:日の丸・君が代と学校(第4講)

第5回:宗教と公立学校(第5講)

第6回:生徒と政治(第 6講)

第7回:教育情報の本人開示と公開(第 7講)

第8回:格差問題と「教育の機会均等J(第②テキスト)

第9回:中間レポートの書き方

第10回:教科書の検定・採択・給付・使用(第 8講)

第11回:学校事故の賠償と防止(第 9講)

第12回:親の教育の自由(第12講)

第13回:教師の「教育の自由J(第13講)

第14回:私立学校と憲法(第14講)

第15回:アンケート、期末試験

*2012年度には、第①テキストの第10講(障害児の教育を受ける権利)

と第11講(外国人の子どもの教育を受ける権利)は他講に含めて進めた。

(2)テキストの選定意図と対面授業90分の構造化

テキスト指定した『憲法と教育15講』は、憲法学者である米沢広一氏(大

阪市立大学教授)が著した憲法学教科書であり、入門書でも一般書でもない。

しかし、教育に関わる諸問題を15の切り口から体系的・多面的に説明してく

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【教科書]

①米沢広一 (2011)r憲法と教育15講(三訂版H北樹出版

②渡部昭男 (2006)r格差問題と「教育の機会均等J.I日本標準

[授業の概要と計画]

第1回:ガイダンス、教育権論争(第①テキスト第 l講)

第2回:未成年者の人権享有主体性(第 2講)、児童の権利条約(第15

講)

第3回:生徒の自己決定権(第3講)

第4回:日の丸・君が代と学校(第4講)

第5回:宗教と公立学校(第5講)

第6回:生徒と政治(第 6講)

第7回:教育情報の本人開示と公開(第 7講)

第8回:格差問題と「教育の機会均等J(第②テキスト)

第9回:中間レポートの書き方

第10回:教科書の検定・採択・給付・使用(第 8講)

第11回:学校事故の賠償と防止(第 9講)

第12回:親の教育の自由(第12講)

第13回:教師の「教育の自由J(第13講)

第14回:私立学校と憲法(第14講)

第15回:アンケート、期末試験

*2012年度には、第①テキストの第10講(障害児の教育を受ける権利)

と第11講(外国人の子どもの教育を受ける権利)は他講に含めて進めた。

(2)テキストの選定意図と対面授業90分の構造化

テキスト指定した『憲法と教育15講』は、憲法学者である米沢広一氏(大

阪市立大学教授)が著した憲法学教科書であり、入門書でも一般書でもない。

しかし、教育に関わる諸問題を15の切り口から体系的・多面的に説明してく

大学における応答型講義づくりの試み

れており、難しい専門用語は理解できなくても、憲法・条約・法令の変遷や

解釈、様々な問題現象や裁判事例、それらに係る著者の見解などが示されて

おり、素人が読んでも面白い。シラパスに示した 5つの到達目標に照らして、

手応えのある書物である。また、初版2005年、改定版2008年、第 3版2011年

と、 3年おきに記載内容も更新されている。ちなみに、筆者は鳥取大学時代

から本書をテキストに教養科目を担当した経験を持つ。

第 1~3 回目の早い段階で一定の講義スタイルを確立し、筆者なりの講義

文化を浸透させることを心がけている。すなわち、講義といえども一方的に

講ずるのではなく、受講生も巻き込み、参画する楽しさと責任を共有すると

いう講義文化である。

具体的には、 l回の対面授業90分を「前回のカード紹介15分、講話60分、

ビデオ視聴15分(視聴中にカード記入)Jというように配分し、「カードJを

媒介にして「講話&ビデオ視聴→カード記入(意見・質問・感想)→受講生

への応答jというサイクルを創った。

まず、始業前の 5分程度を使って、当日の学習予定についてあらかじめ板

書を行っておく。右端に「前時 第O講タイトル/カード紹介j、中央に「本

時 第O講タイトル/章節項目の箇条書き/視聴予定ビデオのタイトルj、

左端に「次時 第O講タイトル」という様式である。

「前回のカード紹介15分」に関しては、後述する。「講話60分」は、基本

的にテキストを一講ずつ読み進める形である。該当の講を輪読(前から座席

順にワイアレスマイクを回して重要部分を読み上げてもらう)しつつ、難し

い用語や条文解釈を分かりやすく説明し、マスコミの教育関連報道や筆者自

身の校長職体験などをまじえて解説する。「ビデオ視聴15分Jでは、筆者保

存の選りすぐり録画を上映する(例えば、 30分ものなら 2団連続、 60分もの

なら 4回連続となる)。

憲法学及び教育学に馴染みのない受講生にとって、新しい知見が毎回必ず

あり、驚きゃ共感、意見や疑問が生まれる。学説や判例、価値観や現場の抱

える問題の多様性を知ると、自らの憲法観・教育観の立ち位置を確認でき、

教育体験(学校教育・家庭教育)を振り返る契機にもなる。なお、参考書や

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大学における応答型講義づくりの試み

れており、難しい専門用語は理解できなくても、憲法・条約・法令の変遷や

解釈、様々な問題現象や裁判事例、それらに係る著者の見解などが示されて

おり、素人が読んでも面白い。シラパスに示した 5つの到達目標に照らして、

手応えのある書物である。また、初版2005年、改定版2008年、第 3版2011年

と、 3年おきに記載内容も更新されている。ちなみに、筆者は鳥取大学時代

から本書をテキストに教養科目を担当した経験を持つ。

第 1~3 回目の早い段階で一定の講義スタイルを確立し、筆者なりの講義

文化を浸透させることを心がけている。すなわち、講義といえども一方的に

講ずるのではなく、受講生も巻き込み、参画する楽しさと責任を共有すると

いう講義文化である。

具体的には、 l回の対面授業90分を「前回のカード紹介15分、講話60分、

ビデオ視聴15分(視聴中にカード記入)Jというように配分し、「カードJを

媒介にして「講話&ビデオ視聴→カード記入(意見・質問・感想)→受講生

への応答jというサイクルを創った。

まず、始業前の 5分程度を使って、当日の学習予定についてあらかじめ板

書を行っておく。右端に「前時 第O講タイトル/カード紹介j、中央に「本

時 第O講タイトル/章節項目の箇条書き/視聴予定ビデオのタイトルj、

左端に「次時 第O講タイトル」という様式である。

「前回のカード紹介15分」に関しては、後述する。「講話60分」は、基本

的にテキストを一講ずつ読み進める形である。該当の講を輪読(前から座席

順にワイアレスマイクを回して重要部分を読み上げてもらう)しつつ、難し

い用語や条文解釈を分かりやすく説明し、マスコミの教育関連報道や筆者自

身の校長職体験などをまじえて解説する。「ビデオ視聴15分Jでは、筆者保

存の選りすぐり録画を上映する(例えば、 30分ものなら 2団連続、 60分もの

なら 4回連続となる)。

憲法学及び教育学に馴染みのない受講生にとって、新しい知見が毎回必ず

あり、驚きゃ共感、意見や疑問が生まれる。学説や判例、価値観や現場の抱

える問題の多様性を知ると、自らの憲法観・教育観の立ち位置を確認でき、

教育体験(学校教育・家庭教育)を振り返る契機にもなる。なお、参考書や

207

関連URLを紹介し、レポート課題を課すなどして、対面授業に加えて各自

の自修が進むように配慮した。

(3) rカード」の書式と活用

資料 Iは、 2012年度に用いた「カードJ(B 5判)である O 大きく A・B.

Cの3欄に分かれている。

r A :導入時の「意見・感想」紹介について」は、冒頭15分程度で行われ

る前回カードの紹介に関するコメント欄である。つづいて設けられている「今

日の鍵用語 ]Jは、「本時の

講義についてキーワードに一言で

落とせばこの鍵用語になるので

はjという、筆者なりの導入時の

揺さぶり作戦である。例えば、第

5講「宗教と公立学校」では、第

5講のテーマを最もよく表現した

鍵用語として、「寛容jの二文字

をまず示した。第5講では、日本

国憲法の「信教の自由jとは「信

仰をもっ自由ともたない自由jを

含んだ概念であること、教育基本

法の「宗教に関する」が「宗教を

信じる者への寛容だけでなく、信

じない者への寛容も合意するJこ

と、子どもには校外はもちろん課

外活動時など校内でも宗教活動の自由があること、しかし一方、表明したく

ない、知られたくないという他の子どもの「消極的自由jや「宗教的プライ

資料 1.応答用の「カード」

吋咋Ir~ill;~~~~~~:uf:..~1時計A 重主堕金l.U.ニ量皇よ卑企について 今宿の鑑用謄【

町四

【,~,ド仰の割陣織への.""111聞をーっ以上】

【③*脚の~,農.震習1修司貨や他科目と置温三盟てみよう】

C 皇ゐ玄主量盤工盆生支盆翠盟問ヂオ拠噌μ.<,を禽む)

if鷲詩歌J425罫iLtibhpJfdTJv恥JJM5.

パシー」を守らねばならないこと、等を学ぶ。導入時には「宗教Jと「寛容j

がどう繋がるのかよく分からないのであるが、 60分の講話が終わるころには

蹄に落ちたという表情に変わっている。

208

関連URLを紹介し、レポート課題を課すなどして、対面授業に加えて各自

の自修が進むように配慮した。

(3) rカード」の書式と活用

資料 Iは、 2012年度に用いた「カードJ(B 5判)である O 大きく A・B.

Cの3欄に分かれている。

r A :導入時の「意見・感想」紹介について」は、冒頭15分程度で行われ

る前回カードの紹介に関するコメント欄である。つづいて設けられている「今

日の鍵用語 ]Jは、「本時の

講義についてキーワードに一言で

落とせばこの鍵用語になるので

はjという、筆者なりの導入時の

揺さぶり作戦である。例えば、第

5講「宗教と公立学校」では、第

5講のテーマを最もよく表現した

鍵用語として、「寛容jの二文字

をまず示した。第5講では、日本

国憲法の「信教の自由jとは「信

仰をもっ自由ともたない自由jを

含んだ概念であること、教育基本

法の「宗教に関する」が「宗教を

信じる者への寛容だけでなく、信

じない者への寛容も合意するJこ

と、子どもには校外はもちろん課

外活動時など校内でも宗教活動の自由があること、しかし一方、表明したく

ない、知られたくないという他の子どもの「消極的自由jや「宗教的プライ

資料 1.応答用の「カード」

吋咋Ir~ill;~~~~~~:uf:..~1時計A 重主堕金l.U.ニ量皇よ卑企について 今宿の鑑用謄【

町四

【,~,ド仰の割陣織への.""111聞をーっ以上】

【③*脚の~,農.震習1修司貨や他科目と置温三盟てみよう】

C 皇ゐ玄主量盤工盆生支盆翠盟問ヂオ拠噌μ.<,を禽む)

if鷲詩歌J425罫iLtibhpJfdTJv恥JJM5.

パシー」を守らねばならないこと、等を学ぶ。導入時には「宗教Jと「寛容j

がどう繋がるのかよく分からないのであるが、 60分の講話が終わるころには

蹄に落ちたという表情に変わっている。

208

大学における応答型講義づくりの試み

rB :本時の講義についてjでは、「①本時の講義で得た新たな知見を一

つ以上Jr②本時の講義への意見や疑問を一つ以上Jr③本時の講義を既習事

項や他科目と関連づけてみようJを、それぞれ記入する。受講生に尋ねると、

意外に難しいのが「③」とのことである。最後の rc:なんでも感想・なん

でも質問」は、視聴ビデオに関する感想、・質問を書く者がほとんどである。

カード紹介を幾度か繰り返すうちに、受講生も「カードjがどのように活

用されるのかというイメージを掴み、講話&ビデオ視聴中に書き込む要領を

覚えて記載もスムーズになる。そして、応答の醍醐味が感じとれるようにな

ると、記載内容も良く考えられたもの、責任あるものへと変わっていく。回

収後に講師控室にてさっそく出欠をチェックし、次回に採り上げる特徴的な

カードをおよそ20件選んだ(毎回の出席約80名の 4分の1)。手早く読めば、

15分程度で紹介できる分量である。

(4)受講生アンケート

受講生アンケート(5件法)によると、「応答型の講義jに関しては、 r1)満足Jr 2 )ある程度満足」の小計が89%に上った。自由記述を要約すると、

以下のようである。

カード記入で思考の整理になった、自分の考えをまとめる練習ができた、

他の人の考え・異なる意見・気づかない視点からの意見・考えが及ばなかっ

た意見・色々な意見(感想)が聞けた、多様な考え方・新しい見方ができる

ようになった、考えが広がる、疑問が解決される、復習ができる、意欲的に

なった、やる気になった、嬉しい、刺激的だ、った、新鮮だ、った、等々

このように、肯定的な記載が多かった。また、「理解が深まるJr分かりや

すいJr質問がしやすいJr授業に参加できている感じがするJr自分の意見

がしっかり読まれていることを確認できるj等々は、地味で、はあるが、カー

ド活用による応答型講義づくりのベーシックな意義といえよう。なお、「紹

介されないと・・・不安に思ってしまうJr書く事項が多くてまとめにくかったj

といった指摘もあった。

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大学における応答型講義づくりの試み

rB :本時の講義についてjでは、「①本時の講義で得た新たな知見を一

つ以上Jr②本時の講義への意見や疑問を一つ以上Jr③本時の講義を既習事

項や他科目と関連づけてみようJを、それぞれ記入する。受講生に尋ねると、

意外に難しいのが「③」とのことである。最後の rc:なんでも感想・なん

でも質問」は、視聴ビデオに関する感想、・質問を書く者がほとんどである。

カード紹介を幾度か繰り返すうちに、受講生も「カードjがどのように活

用されるのかというイメージを掴み、講話&ビデオ視聴中に書き込む要領を

覚えて記載もスムーズになる。そして、応答の醍醐味が感じとれるようにな

ると、記載内容も良く考えられたもの、責任あるものへと変わっていく。回

収後に講師控室にてさっそく出欠をチェックし、次回に採り上げる特徴的な

カードをおよそ20件選んだ(毎回の出席約80名の 4分の1)。手早く読めば、

15分程度で紹介できる分量である。

(4)受講生アンケート

受講生アンケート(5件法)によると、「応答型の講義jに関しては、 r1)満足Jr 2 )ある程度満足」の小計が89%に上った。自由記述を要約すると、

以下のようである。

カード記入で思考の整理になった、自分の考えをまとめる練習ができた、

他の人の考え・異なる意見・気づかない視点からの意見・考えが及ばなかっ

た意見・色々な意見(感想)が聞けた、多様な考え方・新しい見方ができる

ようになった、考えが広がる、疑問が解決される、復習ができる、意欲的に

なった、やる気になった、嬉しい、刺激的だ、った、新鮮だ、った、等々

このように、肯定的な記載が多かった。また、「理解が深まるJr分かりや

すいJr質問がしやすいJr授業に参加できている感じがするJr自分の意見

がしっかり読まれていることを確認できるj等々は、地味で、はあるが、カー

ド活用による応答型講義づくりのベーシックな意義といえよう。なお、「紹

介されないと・・・不安に思ってしまうJr書く事項が多くてまとめにくかったj

といった指摘もあった。

209

210

(5) rカード」活用上の留意点

「カードj活用において筆者が留意していることは、第一に(先に述べた

ことの繰り返しになるが)、単なる感想提出や出欠チェックにとどめず、本

時の講義について「①新たな知見、②意見や疑問、③関連づけ」という 3点

でしっかりと考え、記入してもらうことである。

第二に、講義形式の科目において、応答は個別には行わず、必ず全体に返

し共有することである。それは、「自らの個人的な教育体験を、テキストに

基づく 15テーマで振り返り、共に共有しうる共通教養として新たに組み直すJ

「自らの立ち位置を再確認する」という目標に照らしての判断である。もち

ろん、カードの紹介は匿名であるとともに、個人が特定できないよう場合に

よっては幾つかの記載事項を合わせ、アレンジすることもある。

第三に、効果が大きいと思われでもグループ発表・討議などはあえて導入

せず、講義形式のこの科目においては「カードj活用の応答レベルに抑えて

いることである。先に述べた第 5講「宗教と公立学校」での学習内容にもか

かわるが、大学を含めて教育現場では、表明しない・表明したくないという

消極的自由の尊重も考慮されなければならない。表明しない・表明したくは

ないが、紹介される他者の体験・意見・感想には耳を傾けるという講義受講

者は恐らくいるだろう。筆者の場合、カードで出欠チェックはするが、カー

ドの記載内容を成績評価に連動させていない。

なお、第二・第三の点に関しては、科目の形式や目標、実践者の考えによ

ってィ見解の分かれるところであろう。学会内外で意見交換してみたい論点

である。

ffi. r学生の発達保障」と大学教育のあり方

1.田中昌人(初代共同代表)による「学生の発達保障」の提起

大学評価学会の初代共同代表の一人でもある故・田中昌人(1932-2005)

は、設立準備過程から一貫して、「学生の発達保障を可能にするような教育

・研究のありようについての研究を重視する」ことを意識していた。

設立大会 (2004年3月28日)のシンポジウムにおける田中報告のタイトル

210

(5) rカード」活用上の留意点

「カードj活用において筆者が留意していることは、第一に(先に述べた

ことの繰り返しになるが)、単なる感想提出や出欠チェックにとどめず、本

時の講義について「①新たな知見、②意見や疑問、③関連づけ」という 3点

でしっかりと考え、記入してもらうことである。

第二に、講義形式の科目において、応答は個別には行わず、必ず全体に返

し共有することである。それは、「自らの個人的な教育体験を、テキストに

基づく 15テーマで振り返り、共に共有しうる共通教養として新たに組み直すJ

「自らの立ち位置を再確認する」という目標に照らしての判断である。もち

ろん、カードの紹介は匿名であるとともに、個人が特定できないよう場合に

よっては幾つかの記載事項を合わせ、アレンジすることもある。

第三に、効果が大きいと思われでもグループ発表・討議などはあえて導入

せず、講義形式のこの科目においては「カードj活用の応答レベルに抑えて

いることである。先に述べた第 5講「宗教と公立学校」での学習内容にもか

かわるが、大学を含めて教育現場では、表明しない・表明したくないという

消極的自由の尊重も考慮されなければならない。表明しない・表明したくは

ないが、紹介される他者の体験・意見・感想には耳を傾けるという講義受講

者は恐らくいるだろう。筆者の場合、カードで出欠チェックはするが、カー

ドの記載内容を成績評価に連動させていない。

なお、第二・第三の点に関しては、科目の形式や目標、実践者の考えによ

ってィ見解の分かれるところであろう。学会内外で意見交換してみたい論点

である。

ffi. r学生の発達保障」と大学教育のあり方

1.田中昌人(初代共同代表)による「学生の発達保障」の提起

大学評価学会の初代共同代表の一人でもある故・田中昌人(1932-2005)

は、設立準備過程から一貫して、「学生の発達保障を可能にするような教育

・研究のありようについての研究を重視する」ことを意識していた。

設立大会 (2004年3月28日)のシンポジウムにおける田中報告のタイトル

大学における応答型講義づくりの試み

は「学生の発達保障と大学評価J(8)であり、①「無償教育の漸進的導入」の

視点、②「青少年期のトランジション保障Jの視点、の二つを提起していた。

前者は、学会内に特別委員会を設けて取り組まれ、田中自身も亡くなる直前

に『日本の高学費をどうするかj(新日本出版社、 2005)をまとめ上げてい

る。一方、後者は提起されたものの、その後十分に深められたとはいえない。

後者の提起の要点は、 10歳代の半ばから20歳代の半ばまでのおよそ十年間

を「青少年期のトランジション保障Jという視点でとらえ、さらにデイ一セ

ントワークなどに継続したものとして、大学教育を位置づけなおそうという

のである。大学教育そのものに関しては、「連帯した価値を深く識っていく

力jの発生を基盤にして、同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力、

個性を表す、経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程、他者に教える体

験、などをキーワードにしつつ、「創造的な価値をっくり出す力」を伸ばす、

「歴史的、社会的、創造的で、民主的な第一期の社会的自己Jを形成すると

いう方向性が見えてくる。

2. 1教養原論・教育学」と「学生の発達保障」

「創造的な価値をつくり出す力Jは推定できるとして、田中の言う「歴史

的、社会的、創造的で、民主的な第一期の社会的自己」が何かについては、

なかなか捉えづらい。そこで、先にも紹介した筆者担当「教養原論・教育学」

の、 2013年度における応答型講義づくりの試みを素材に、私見を述べたい。

(1)1緊急事態に対応する諸問題」のーっとしての憲法問題・教育問題

亡くなる直前の講演(9)において、田中は「大学における初年次教育」に関

わって以下のように述べている。

・・大学で l年次教育をおこなうのであれば、これから50年先に向けて何

を学ばなければいけないのかを考えなければなりません。これから50年後

に・・・(中略)・・・人口問題や貧困問題、あるいは環境汚染問題など、緊急

事態に対応する諸問題について、少なくともこれだけのことは解決できる

ための知識と見識をもってどう学んだらいいかがわかることを学ぶことが

211

大学における応答型講義づくりの試み

は「学生の発達保障と大学評価J(8)であり、①「無償教育の漸進的導入」の

視点、②「青少年期のトランジション保障Jの視点、の二つを提起していた。

前者は、学会内に特別委員会を設けて取り組まれ、田中自身も亡くなる直前

に『日本の高学費をどうするかj(新日本出版社、 2005)をまとめ上げてい

る。一方、後者は提起されたものの、その後十分に深められたとはいえない。

後者の提起の要点は、 10歳代の半ばから20歳代の半ばまでのおよそ十年間

を「青少年期のトランジション保障Jという視点でとらえ、さらにデイ一セ

ントワークなどに継続したものとして、大学教育を位置づけなおそうという

のである。大学教育そのものに関しては、「連帯した価値を深く識っていく

力jの発生を基盤にして、同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力、

個性を表す、経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程、他者に教える体

験、などをキーワードにしつつ、「創造的な価値をっくり出す力」を伸ばす、

「歴史的、社会的、創造的で、民主的な第一期の社会的自己Jを形成すると

いう方向性が見えてくる。

2. 1教養原論・教育学」と「学生の発達保障」

「創造的な価値をつくり出す力Jは推定できるとして、田中の言う「歴史

的、社会的、創造的で、民主的な第一期の社会的自己」が何かについては、

なかなか捉えづらい。そこで、先にも紹介した筆者担当「教養原論・教育学」

の、 2013年度における応答型講義づくりの試みを素材に、私見を述べたい。

(1)1緊急事態に対応する諸問題」のーっとしての憲法問題・教育問題

亡くなる直前の講演(9)において、田中は「大学における初年次教育」に関

わって以下のように述べている。

・・大学で l年次教育をおこなうのであれば、これから50年先に向けて何

を学ばなければいけないのかを考えなければなりません。これから50年後

に・・・(中略)・・・人口問題や貧困問題、あるいは環境汚染問題など、緊急

事態に対応する諸問題について、少なくともこれだけのことは解決できる

ための知識と見識をもってどう学んだらいいかがわかることを学ぶことが

211

212

必要です。そういう大学生の迎え方をして, rこれからの 4年間、君たち

と一緒にやろうJということが行われる必要があるのではないかと思いま

す。 [p.3oJ

少し大袈裟に聞こえるかも知れないが、「教養原論・教育学Jにおける先

述のテキストの選定意図及び5つの目標設定については、「緊急事態に対応

する諸問題jの一つに「憲法問題Jr教育問題jを位置づけたいとの筆者の

思いがある。

(2) r同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力・・・」など

また、田中の言う「同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力、個性

を表す、経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程、他者に教える体験」

などに関連して、まず、憲法学を専門とする米沢氏(プロの人)の著作をテ

キストに、教育学を専門とする筆者(プロの人)を解説担当者とした科目は、

ささやかながら、学びにおける「プロの人たちとの連帯・協力」と言ってよ

かろう。

次に、「教養原論・教育学Jは、まさに同年齢・異年齢の学生がともに受

講している。本科目の登録定員は、 2012年度までは100名であったが、 2013

年度からは150名となった。 2013年度は、定員のうちの50名枠がまず自動的

に経営学部新入生に割り振られ、残り 100名枠は 2年次生以上が自由に選択

登録する。 2013年度の履修登録者は137名(当初は150名であったが13名の履

修変更があった)で、 1年次生が46名 (34%、経営学部のみ)、 2年次生以

上が91名 (66%、経営学部、経済学部、法学部、文学部、発達科学部、工学

部、理学部、医学部、海事科学部の 9学部にわたる)である。自由選択した

2年次生以上は当初から意欲的であるが、自動割り振りの l年次生は受け身

状態からスタートして変容していく(なお、最終の期末試験受験者は118名

であった)。

最後に、「自らの個人的な教育体験を、テキストに基づく 15テーマで振り

返り、共に共有しうる共通教養として新たに組み直す。jという目標を掲げ

ての応答型講義づくりは、「経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程jに、

少しはオーバーラップしている。

212

必要です。そういう大学生の迎え方をして, rこれからの 4年間、君たち

と一緒にやろうJということが行われる必要があるのではないかと思いま

す。 [p.3oJ

少し大袈裟に聞こえるかも知れないが、「教養原論・教育学Jにおける先

述のテキストの選定意図及び5つの目標設定については、「緊急事態に対応

する諸問題jの一つに「憲法問題Jr教育問題jを位置づけたいとの筆者の

思いがある。

(2) r同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力・・・」など

また、田中の言う「同年齢、異年齢、プロの人たちとの連帯・協力、個性

を表す、経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程、他者に教える体験」

などに関連して、まず、憲法学を専門とする米沢氏(プロの人)の著作をテ

キストに、教育学を専門とする筆者(プロの人)を解説担当者とした科目は、

ささやかながら、学びにおける「プロの人たちとの連帯・協力」と言ってよ

かろう。

次に、「教養原論・教育学Jは、まさに同年齢・異年齢の学生がともに受

講している。本科目の登録定員は、 2012年度までは100名であったが、 2013

年度からは150名となった。 2013年度は、定員のうちの50名枠がまず自動的

に経営学部新入生に割り振られ、残り 100名枠は 2年次生以上が自由に選択

登録する。 2013年度の履修登録者は137名(当初は150名であったが13名の履

修変更があった)で、 1年次生が46名 (34%、経営学部のみ)、 2年次生以

上が91名 (66%、経営学部、経済学部、法学部、文学部、発達科学部、工学

部、理学部、医学部、海事科学部の 9学部にわたる)である。自由選択した

2年次生以上は当初から意欲的であるが、自動割り振りの l年次生は受け身

状態からスタートして変容していく(なお、最終の期末試験受験者は118名

であった)。

最後に、「自らの個人的な教育体験を、テキストに基づく 15テーマで振り

返り、共に共有しうる共通教養として新たに組み直す。jという目標を掲げ

ての応答型講義づくりは、「経験を教訓として育ちゆく、さまざまな過程jに、

少しはオーバーラップしている。

大学における応答型講義づくりの試み

(3)青年は何を知りたがり論じたがっているのか

2013年度においては、 3回にわたり小レポート(関心のあるー講を選んで、

新しく得た知見の整理とそれをベースにした自分なりのマスコミ教育関連報

道の読み解き/A4判1枚、両面印刷)を課した。そのテーマ選定の状況か

ら、受講生である青年(10)の志向、すなわち、青年は憲法問題・教育問題にお

いて何を知りたがり論じたがっているのかをある程度推測しうる。

[第 1-4講:教育権論争、未成年者、自己決定権、日の丸・君が代]

初回は、第 1~4 講から一つを選んでもらった。その結果、レポートを提

出した111名のうち、第 l講「日本国憲法下での教育権論争と現在の課題jが

3名 (3%)、第2講「未成年者の人権享有主体性」が14名(13%)、第3講

「生徒の自己決定権jが57名 (51%)、第4講「日の丸・君が代と学校」が

37名 (33%)であった。

米沢氏は、第 l講で、国民の教育権説と国家の教育権説との論争の意義と

問題点を踏まえて、「主体としての子どもjから出発することを提示してい

る。教育権に関わって永らく論争がなされてきたということ自体が、受講生

には新鮮らしい。

第2講では、未成年者(子ども)に関する「保護と自律」の二面性が統一

的に述べられている。子どもは心身ともに未成熟であるが故に保護を必要と

するが、一方で権利の自律的行使は成長途上にある子どもにとっても大きな

意義がある。国家による過度の介入を避け、子ども本人や親に判断を委ねる

ことによって社会の多元性が維持されることになる、との著者の主張にうな

づく者は多い。日本国憲法が成年年齢を定めていないこと、を初めて知る者

も少なくない。成年年齢を何歳にすべか、単純に年齢で判断してよいのか、

年齢にかわる基準・指標がありうるのか、開講時にまさに裁判にもなってい

た被成年後見者の選挙権など、受講生の関心は様々に広がっていく。

第3講では、日本国憲法に明記されてはいないが、プライパシーの権利、

名誉権、環境権等と同様に、自己決定権も第13条の幸福追求権から導かれる

ことを学ぶ。生徒も有する自己決定権が、校則・生徒心得等の学校内規とど

のような緊張関係や整合性を持つのであろうか。米沢氏は、婚姻、中絶、性

213

大学における応答型講義づくりの試み

(3)青年は何を知りたがり論じたがっているのか

2013年度においては、 3回にわたり小レポート(関心のあるー講を選んで、

新しく得た知見の整理とそれをベースにした自分なりのマスコミ教育関連報

道の読み解き/A4判1枚、両面印刷)を課した。そのテーマ選定の状況か

ら、受講生である青年(10)の志向、すなわち、青年は憲法問題・教育問題にお

いて何を知りたがり論じたがっているのかをある程度推測しうる。

[第 1-4講:教育権論争、未成年者、自己決定権、日の丸・君が代]

初回は、第 1~4 講から一つを選んでもらった。その結果、レポートを提

出した111名のうち、第 l講「日本国憲法下での教育権論争と現在の課題jが

3名 (3%)、第2講「未成年者の人権享有主体性」が14名(13%)、第3講

「生徒の自己決定権jが57名 (51%)、第4講「日の丸・君が代と学校」が

37名 (33%)であった。

米沢氏は、第 l講で、国民の教育権説と国家の教育権説との論争の意義と

問題点を踏まえて、「主体としての子どもjから出発することを提示してい

る。教育権に関わって永らく論争がなされてきたということ自体が、受講生

には新鮮らしい。

第2講では、未成年者(子ども)に関する「保護と自律」の二面性が統一

的に述べられている。子どもは心身ともに未成熟であるが故に保護を必要と

するが、一方で権利の自律的行使は成長途上にある子どもにとっても大きな

意義がある。国家による過度の介入を避け、子ども本人や親に判断を委ねる

ことによって社会の多元性が維持されることになる、との著者の主張にうな

づく者は多い。日本国憲法が成年年齢を定めていないこと、を初めて知る者

も少なくない。成年年齢を何歳にすべか、単純に年齢で判断してよいのか、

年齢にかわる基準・指標がありうるのか、開講時にまさに裁判にもなってい

た被成年後見者の選挙権など、受講生の関心は様々に広がっていく。

第3講では、日本国憲法に明記されてはいないが、プライパシーの権利、

名誉権、環境権等と同様に、自己決定権も第13条の幸福追求権から導かれる

ことを学ぶ。生徒も有する自己決定権が、校則・生徒心得等の学校内規とど

のような緊張関係や整合性を持つのであろうか。米沢氏は、婚姻、中絶、性

213

214

交、髪型、服装、オートパイ、喫煙・飲酒なとεについて、個別に検討を加え

ている。第 3講のレポート選択率が51%と最も高かった理由が、推し量れよ

つ。

第4講では、日の丸・君が代が、特定の者にとっては思想・良心・信教の

自由等の侵害にあたる場合が生じうることを学ぶ。教師、生徒(親)の場合

などを検討した上で、米沢氏は、生徒には日の丸・君が代を強制することは

許されず拒否権が認められなければならないとする。学校現場で生じている

日の丸・君が代の問題は、憲法や法律レベルの問題ではなく、告示「学習指

導要領Jの規定の変遷、「学習指導要領jが及ぶ学校種内(例えば大学には

及ばない)に限られることを知って、驚く受講生は少なくない。また、公立

校の場合になぜ、設置主体である自治体の旗や歌でなく一気に国家レベルに駆

け上がるのか、素朴な問題提起に受講生は答えられない。偶像崇拝にあたる

のでいずれの国(自治体)の旗・歌も拒否する場合、国旗・国歌は拒否しな

いが日の丸・君が代は拒否する場合など、拒否と言ってもその理由や背景に

違いがあることも理解する。「日の丸・君が代Jや、次に見る「宗教jゃ「政

治Jといった固いテーマにも、受講生の関心は高い。

[第 5-8講:宗教、政治、教育情報、教科書/第14講:私学]

レポートの第 2 回目は、第 5~8 講及び第14講から一つを選んでもらった。

その結果、レポートを提出した118名のうち、第 5講「宗教と公立学校jが

29名 (25%)、第 6講「生徒と政治」が26名 (22%)、第 7講「教育情報の本

人開示と公開jが19名 (16%)、第8講「教科書の検定、採択、給付、使用J

が同じく 19名(16%)、第14講「私立学校と憲法」が15名(13%)であった。

第5講では、私立学校は宗教教育をなしうるが、「政教分離j原則から公

立学校では宗教教育を禁じられていることを学ぶ。シラパスの項で先述した

ように、 i(信仰をもたない自由を含む)信教の自由Ji消極的自由Ji宗教

的プライパシーjを知って、日本国憲法の下での「寛容jに思いを馳せる。

剣道実技拒否訴訟について、宗教を理由として公教育を一部拒否し代替でき

るとの判例に驚く。武道場の神棚、構内の忠魂碑、行事での神社参拝、宗教

団体による学校施設利用など、実際の訴訟例で身近な問題事例も学ぶ。線引

214

交、髪型、服装、オートパイ、喫煙・飲酒なとεについて、個別に検討を加え

ている。第 3講のレポート選択率が51%と最も高かった理由が、推し量れよ

つ。

第4講では、日の丸・君が代が、特定の者にとっては思想・良心・信教の

自由等の侵害にあたる場合が生じうることを学ぶ。教師、生徒(親)の場合

などを検討した上で、米沢氏は、生徒には日の丸・君が代を強制することは

許されず拒否権が認められなければならないとする。学校現場で生じている

日の丸・君が代の問題は、憲法や法律レベルの問題ではなく、告示「学習指

導要領Jの規定の変遷、「学習指導要領jが及ぶ学校種内(例えば大学には

及ばない)に限られることを知って、驚く受講生は少なくない。また、公立

校の場合になぜ、設置主体である自治体の旗や歌でなく一気に国家レベルに駆

け上がるのか、素朴な問題提起に受講生は答えられない。偶像崇拝にあたる

のでいずれの国(自治体)の旗・歌も拒否する場合、国旗・国歌は拒否しな

いが日の丸・君が代は拒否する場合など、拒否と言ってもその理由や背景に

違いがあることも理解する。「日の丸・君が代Jや、次に見る「宗教jゃ「政

治Jといった固いテーマにも、受講生の関心は高い。

[第 5-8講:宗教、政治、教育情報、教科書/第14講:私学]

レポートの第 2 回目は、第 5~8 講及び第14講から一つを選んでもらった。

その結果、レポートを提出した118名のうち、第 5講「宗教と公立学校jが

29名 (25%)、第 6講「生徒と政治」が26名 (22%)、第 7講「教育情報の本

人開示と公開jが19名 (16%)、第8講「教科書の検定、採択、給付、使用J

が同じく 19名(16%)、第14講「私立学校と憲法」が15名(13%)であった。

第5講では、私立学校は宗教教育をなしうるが、「政教分離j原則から公

立学校では宗教教育を禁じられていることを学ぶ。シラパスの項で先述した

ように、 i(信仰をもたない自由を含む)信教の自由Ji消極的自由Ji宗教

的プライパシーjを知って、日本国憲法の下での「寛容jに思いを馳せる。

剣道実技拒否訴訟について、宗教を理由として公教育を一部拒否し代替でき

るとの判例に驚く。武道場の神棚、構内の忠魂碑、行事での神社参拝、宗教

団体による学校施設利用など、実際の訴訟例で身近な問題事例も学ぶ。線引

大学における応答型講義づくりの試み

きは「世俗Jであるとまとめると、「世俗とは何 ?Jという新たな疑問が湧

くようだ。第 5講の選択率は25%であり、動きの激しいイスラム諸国関連の

報道も溢れており、「宗教jのことをもっときちんと知りたい、学びたいと

いう受講生のニーズは強い。

第6講では、宗教教育とともに政治教育も、基本的には親による家庭教育

の範障であることを学ぶ。米沢氏は、選挙権はなくても一定の範囲で政治に

参加することの有用性から、「未成年者にも実践的政治教育の場が必要であ

る」との考えを示し、諮問型住民投票や生徒の政治活動の意味に触れている。

教育基本法にある「良識ある公民として必要な政治的教養J(改定第14条)と

は何かを知りたくなり、そのような教育(家庭教育、学校教育)を受けてき

たのだろうかと振り返る受講生は少なくない。第 6講の選択率も、 22%と2

割を越えている。

第7講では、教育情報の本人への開示、訂正・削除を請求しうる権利は、

日本国憲法第13条の保障する「自己情報コントロール権」から生じ、教育情

報の住民への公聞を請求しうる権利は第21条の「積極的情報収集権jから導

かれることを学ぶ。指導要録や入試成績の開示・非開示問題には、受講生の

関心も高い。カードの感想で驚かされるのでは、大学からの封書などにある

「親展jとは、宛名人(すなわち学生)本人が聞くことではなく、「親が開

封するj意味であると誤解していた者が少なくないことである。

第8講では、広く世界をみると教科書には固定制から自由制まであり、日

本の小中学校・高校では検定・採択制を採っていることを学ぶ。カードをみ

ると、小中学校では固から無償配布されるので、固定制だとずっと思ってい

た者もいた。毎年必ず出される質問は、高校ではなぜ教科書を購入するのに

ほとんど使用しないのか、高校段階では教科書は自由制でよいのではないか、

である。また、参考書中心の高校だった、教科書中心の高校だ、った、未履修

問題で騒ぎになったことがある、等の体験談を次時に紹介すると盛り上がる。

履修者の数割が私学の出身者・体験者であるので、第14講をこのタイミン

グで先に済ませる。第14講では、親は教育の自由の一環として私立学校を選

択する自由を、日本国憲法第13条によって保障されていることを学ぶ。小中

215

大学における応答型講義づくりの試み

きは「世俗Jであるとまとめると、「世俗とは何 ?Jという新たな疑問が湧

くようだ。第 5講の選択率は25%であり、動きの激しいイスラム諸国関連の

報道も溢れており、「宗教jのことをもっときちんと知りたい、学びたいと

いう受講生のニーズは強い。

第6講では、宗教教育とともに政治教育も、基本的には親による家庭教育

の範障であることを学ぶ。米沢氏は、選挙権はなくても一定の範囲で政治に

参加することの有用性から、「未成年者にも実践的政治教育の場が必要であ

る」との考えを示し、諮問型住民投票や生徒の政治活動の意味に触れている。

教育基本法にある「良識ある公民として必要な政治的教養J(改定第14条)と

は何かを知りたくなり、そのような教育(家庭教育、学校教育)を受けてき

たのだろうかと振り返る受講生は少なくない。第 6講の選択率も、 22%と2

割を越えている。

第7講では、教育情報の本人への開示、訂正・削除を請求しうる権利は、

日本国憲法第13条の保障する「自己情報コントロール権」から生じ、教育情

報の住民への公聞を請求しうる権利は第21条の「積極的情報収集権jから導

かれることを学ぶ。指導要録や入試成績の開示・非開示問題には、受講生の

関心も高い。カードの感想で驚かされるのでは、大学からの封書などにある

「親展jとは、宛名人(すなわち学生)本人が聞くことではなく、「親が開

封するj意味であると誤解していた者が少なくないことである。

第8講では、広く世界をみると教科書には固定制から自由制まであり、日

本の小中学校・高校では検定・採択制を採っていることを学ぶ。カードをみ

ると、小中学校では固から無償配布されるので、固定制だとずっと思ってい

た者もいた。毎年必ず出される質問は、高校ではなぜ教科書を購入するのに

ほとんど使用しないのか、高校段階では教科書は自由制でよいのではないか、

である。また、参考書中心の高校だった、教科書中心の高校だ、った、未履修

問題で騒ぎになったことがある、等の体験談を次時に紹介すると盛り上がる。

履修者の数割が私学の出身者・体験者であるので、第14講をこのタイミン

グで先に済ませる。第14講では、親は教育の自由の一環として私立学校を選

択する自由を、日本国憲法第13条によって保障されていることを学ぶ。小中

215

216

学校の社会科や高校の公民で学習した日本国憲法第13条から、私立学校選択

の自由を含む「親の教育の自由jの保障が導かれるという解釈に、受講生は

驚く。そして、「私立学校の自由は教育の国家的独占を排し多元主義的社会

の維持に仕えるという意義を有していることに鑑みれば、私立学校の自由の

憲法上の根拠は、基本的には憲法21条の結社の自由に求められることになろ

うJ(p.l98)という記述にはさらに驚き、 II結社の自由jと来ましたか!J

と憲法学の面白さに魅かれる。なお、私学はエリートが進学競争に勝ち残る

ために行くのだから高学費で当然だと思っていた受講生が、地域によっては

公立校に進学できない受け皿として私学が機能していることを知り、また「多

元主義的社会の維持に仕える」という視点から捉えなおし、さらに国際人権

A規約の「無償教育の漸進的導入j規定を学ぶことを通して、変容していく

姿も興味深い。

[第 9-13講:学校事故、障害児、外国人の子ども、親、教師】

レポートの第3回目は、第 9~13講から一つを選んでもらった。その結果、

レポートを提出した110名のうち、第9講「学校事故の賠償と防止jが30名

(27%)、第10講「障害児の教育を受ける権利Jが22名 (20%)、第11講「外

国人の子どもの教育を受ける権利jが21名 (19%)、第12講「親の教育の自

由jが28名 (25%)、第13講「教師の「教育の自由JJが9名 (8%)であっ

た。

第9講では、学校事故については事前防止と事後救済の問題があり、後者

として損害賠償制度と災害共済制度が設けられていることを学ぶ。米沢氏は、

学校事故の類型に応じて、授業中、校外活動中、クラブ活動中の事故、学校

給食、教師の体罰、生徒のいじめ、学校施設設備の不備による事故、障害児

の事故、親への通知義務などに検討を加えていく。緊急時対応マニュアル、

火災・防犯・避難訓練、不審者対応など、筆者の校長体験談もまじえると、

カードには沢山の質問が寄せられ、具体的な学校事故の経験例が紹介される O

「いじめ自殺JIアレルギー児の給食事故」などの報道もあって、第 9講の

選択率は27%に上った。

第10講と第11講は、特別ニーズのある子の問題としてセットで、扱った。第

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学校の社会科や高校の公民で学習した日本国憲法第13条から、私立学校選択

の自由を含む「親の教育の自由jの保障が導かれるという解釈に、受講生は

驚く。そして、「私立学校の自由は教育の国家的独占を排し多元主義的社会

の維持に仕えるという意義を有していることに鑑みれば、私立学校の自由の

憲法上の根拠は、基本的には憲法21条の結社の自由に求められることになろ

うJ(p.l98)という記述にはさらに驚き、 II結社の自由jと来ましたか!J

と憲法学の面白さに魅かれる。なお、私学はエリートが進学競争に勝ち残る

ために行くのだから高学費で当然だと思っていた受講生が、地域によっては

公立校に進学できない受け皿として私学が機能していることを知り、また「多

元主義的社会の維持に仕える」という視点から捉えなおし、さらに国際人権

A規約の「無償教育の漸進的導入j規定を学ぶことを通して、変容していく

姿も興味深い。

[第 9-13講:学校事故、障害児、外国人の子ども、親、教師】

レポートの第3回目は、第 9~13講から一つを選んでもらった。その結果、

レポートを提出した110名のうち、第9講「学校事故の賠償と防止jが30名

(27%)、第10講「障害児の教育を受ける権利Jが22名 (20%)、第11講「外

国人の子どもの教育を受ける権利jが21名 (19%)、第12講「親の教育の自

由jが28名 (25%)、第13講「教師の「教育の自由JJが9名 (8%)であっ

た。

第9講では、学校事故については事前防止と事後救済の問題があり、後者

として損害賠償制度と災害共済制度が設けられていることを学ぶ。米沢氏は、

学校事故の類型に応じて、授業中、校外活動中、クラブ活動中の事故、学校

給食、教師の体罰、生徒のいじめ、学校施設設備の不備による事故、障害児

の事故、親への通知義務などに検討を加えていく。緊急時対応マニュアル、

火災・防犯・避難訓練、不審者対応など、筆者の校長体験談もまじえると、

カードには沢山の質問が寄せられ、具体的な学校事故の経験例が紹介される O

「いじめ自殺JIアレルギー児の給食事故」などの報道もあって、第 9講の

選択率は27%に上った。

第10講と第11講は、特別ニーズのある子の問題としてセットで、扱った。第

大学における応答型講義づくりの試み

10講では、障害児の教育を受ける権利について、日本国憲法第26条の「能力

に応じて、ひとしく jが能力程度主義の解釈から「学習権・発達権的解釈」

(能力発達上の必要に応じて)に変わる経緯と、学校・学級選択の現状を学

ぶ。奈良県下市町の車イス生徒の裁判(仮の義務付け)を扱ったNHKニユ

ースの録画や、担任教師の自作教材で漢字を楽しく学ぶクラスを追った横浜

市立盲学校のドキュメンタリ一番組で視覚的に情報を補ったこともあってか、

第10講の選択率は20%であった。外国人の子どもを扱った第11講も、 19%と

ほぼ同じ選択率であった。第11講では、「人権の前国家的性格と日本国憲法

のとる国際協調主義を理由として、我が国に在留する外国人にも日本国憲法

の保障が及ぶJ(p.l56) ことを学ぶ。米沢氏は、外国人と平等保障、民族教

育の自由、不利益扱い、民族学級、精神的自由などに検討を加えていく。在

日韓国・朝鮮人の子どもを対象とする民族学級が最初に大阪府内で開設され、

大阪市では現在、小中学校の約1/4に民族学級が開級されていることに驚く

受講生は少なくない。「ヘイトスピーチJ問題のマスコミ報道なども関連し

て、受講生には関心のあるテーマと言えよう。このタイミングで、日本国憲

法を補うものとして、第15講「児童の権利条約jも簡単に触れた。

第12講(親)と第13講(教師)は、対の関係で扱っている。第12講では、

親の教育の自由は明示されていないが憲法上の権利であり、家庭教育だけで

なく、学校教育についても一定の場合には選択権・拒否権・参加権が認めら

れることを学ぶ。ただし、子ども権益保護の視点から、子どもの最善の利益

と年長の子どもの意向尊重が重要であること、学校教育は集団的営みである

ことへの配慮が必要であること等を踏まえ、テキストから学んだ知見に立っ

て受講生は「モンスターベアレント」報道などを読み解いていく。第12講の

選択率は25%に上った。

第13講では、教師が憲法上の権利として「教育の自由Jを持つという説に

は、 23条(学問の自由)説、 26条(教育を受ける権利)説、 23条+26条説、

21条(表現の自由)説、 13条(一般的自由)説に大別されるが、権利という

よりは「権限jであるいう説も強いことを学ぶ。米沢氏は、「個々の生徒と

教師との人格的接触を通じて当該生徒の発達段階に応じた教育を行うことに

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大学における応答型講義づくりの試み

10講では、障害児の教育を受ける権利について、日本国憲法第26条の「能力

に応じて、ひとしく jが能力程度主義の解釈から「学習権・発達権的解釈」

(能力発達上の必要に応じて)に変わる経緯と、学校・学級選択の現状を学

ぶ。奈良県下市町の車イス生徒の裁判(仮の義務付け)を扱ったNHKニユ

ースの録画や、担任教師の自作教材で漢字を楽しく学ぶクラスを追った横浜

市立盲学校のドキュメンタリ一番組で視覚的に情報を補ったこともあってか、

第10講の選択率は20%であった。外国人の子どもを扱った第11講も、 19%と

ほぼ同じ選択率であった。第11講では、「人権の前国家的性格と日本国憲法

のとる国際協調主義を理由として、我が国に在留する外国人にも日本国憲法

の保障が及ぶJ(p.l56) ことを学ぶ。米沢氏は、外国人と平等保障、民族教

育の自由、不利益扱い、民族学級、精神的自由などに検討を加えていく。在

日韓国・朝鮮人の子どもを対象とする民族学級が最初に大阪府内で開設され、

大阪市では現在、小中学校の約1/4に民族学級が開級されていることに驚く

受講生は少なくない。「ヘイトスピーチJ問題のマスコミ報道なども関連し

て、受講生には関心のあるテーマと言えよう。このタイミングで、日本国憲

法を補うものとして、第15講「児童の権利条約jも簡単に触れた。

第12講(親)と第13講(教師)は、対の関係で扱っている。第12講では、

親の教育の自由は明示されていないが憲法上の権利であり、家庭教育だけで

なく、学校教育についても一定の場合には選択権・拒否権・参加権が認めら

れることを学ぶ。ただし、子ども権益保護の視点から、子どもの最善の利益

と年長の子どもの意向尊重が重要であること、学校教育は集団的営みである

ことへの配慮が必要であること等を踏まえ、テキストから学んだ知見に立っ

て受講生は「モンスターベアレント」報道などを読み解いていく。第12講の

選択率は25%に上った。

第13講では、教師が憲法上の権利として「教育の自由Jを持つという説に

は、 23条(学問の自由)説、 26条(教育を受ける権利)説、 23条+26条説、

21条(表現の自由)説、 13条(一般的自由)説に大別されるが、権利という

よりは「権限jであるいう説も強いことを学ぶ。米沢氏は、「個々の生徒と

教師との人格的接触を通じて当該生徒の発達段階に応じた教育を行うことに

217

218

よって、生徒の潜在的能力を引き出すという学校教育の特質に照らして、個々

の教師に教育方法・内容の「教育裁量」が認められなければならない。J(p.

188) としている。近年のマスコミ報道では、教師に対する世間の眼差しは

厳しく、子どもの選ぶ職業ランキングでも順位を相当に落としているが、受

講生の家族には教師もおり、本テキストや第13講の学びを通じて、教職を見

つめ直したレポートもあった。

(4) I学生の発達保障」に照らして科目の目標・内容及び形式・方法を吟味しよう

FDの義務づけや学生による授業評価ブームの中で、受講生に評判(受け)

の良い講義づくりの傾向がある。また、機関別認証評価との関連で、講義 1

回に対する自修4時間の確保、成績評価基準の明示、成績評価に対する申し

立て手続きの整備、等々が強調されている。重要なことではあるが、その方

向づけのみで良いのであろうか。

例えば、筆者が紹介した「カードj活用や応答型講義づくりが、単に手法

として独り歩きしたのではつまらない。筆者の「教養原論・教育学」におい

て、応答型講義づくりは科目の掲げる 5つの目標を達成する上で必要であり、

かつ相応しい手法という位置づけなのである。筆者自身の課題としても、「学

生の発達保障」に照らして科目の目標・内容及び形式・方法を吟味する視点

を大切にし、その気風を学会内外に広げたいと思う。

おわりに

大学評価学会における田中昌人による「学生の発達保障J及びその一視点

である「青少年期のトランジション保障jの提起は、十年前のものである。

時代の進展に応じて、捉えなおし、深める必要を痛感する。その際に、日本

学術会議が2010年に公表した回答「大学教育における分野別質保証の在り方

についてjl川土、「第一部分野別の質保証の枠組みについてJI第二部学

士課程の教養教育の在り方についてJI第三部 大学と職業との接続の在り

方についてJI結語 21世紀の「協働する知性」を求めて」で構成されてお

り、手がかりとなろう。学会内外において、ともに深めたい。

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よって、生徒の潜在的能力を引き出すという学校教育の特質に照らして、個々

の教師に教育方法・内容の「教育裁量」が認められなければならない。J(p.

188) としている。近年のマスコミ報道では、教師に対する世間の眼差しは

厳しく、子どもの選ぶ職業ランキングでも順位を相当に落としているが、受

講生の家族には教師もおり、本テキストや第13講の学びを通じて、教職を見

つめ直したレポートもあった。

(4) I学生の発達保障」に照らして科目の目標・内容及び形式・方法を吟味しよう

FDの義務づけや学生による授業評価ブームの中で、受講生に評判(受け)

の良い講義づくりの傾向がある。また、機関別認証評価との関連で、講義 1

回に対する自修4時間の確保、成績評価基準の明示、成績評価に対する申し

立て手続きの整備、等々が強調されている。重要なことではあるが、その方

向づけのみで良いのであろうか。

例えば、筆者が紹介した「カードj活用や応答型講義づくりが、単に手法

として独り歩きしたのではつまらない。筆者の「教養原論・教育学」におい

て、応答型講義づくりは科目の掲げる 5つの目標を達成する上で必要であり、

かつ相応しい手法という位置づけなのである。筆者自身の課題としても、「学

生の発達保障」に照らして科目の目標・内容及び形式・方法を吟味する視点

を大切にし、その気風を学会内外に広げたいと思う。

おわりに

大学評価学会における田中昌人による「学生の発達保障J及びその一視点

である「青少年期のトランジション保障jの提起は、十年前のものである。

時代の進展に応じて、捉えなおし、深める必要を痛感する。その際に、日本

学術会議が2010年に公表した回答「大学教育における分野別質保証の在り方

についてjl川土、「第一部分野別の質保証の枠組みについてJI第二部学

士課程の教養教育の在り方についてJI第三部 大学と職業との接続の在り

方についてJI結語 21世紀の「協働する知性」を求めて」で構成されてお

り、手がかりとなろう。学会内外において、ともに深めたい。

大学における応答型講義づくりの試み

[本稿は、大学評価学会第10回大会(於:龍谷大学)の「発達保障j分科会

(2013年3月10日)における報告を加筆修正したものである。 1. IIの実践

は別途発表したものであるが、皿には未発表の2013年度実践を含めた。]

(1)大学評価学会の橋本勝副代表理事が提唱する授業改善メソッドで、多人数の科目において斑分け・討議な

どをまじえて進める「多人数ゼミ JoI橋本メソッドjでネット検索すると Yahoo、Googleともに約27万件

がヒットし、「教授技術「匠の技J伝承プロジェクトJ(https・//www.facebook.com/TAKUMlnoWAZA)な

ども閲覧できる (2013年7月23日閲覧)。参考文献としては、清水亮・橋本勝・松本美奈 (2∞9)r学生と変

える大学教育jナカニシヤ出版、清水亮・橋本勝 (2012)r学生・職員とつくる大学教育』ナカニシヤ出版、

など。

(2)ハーバード大学(米国)のマイケル・サンデル教授の「政治哲学」講義に代表される講義スタイル。 NHK

教育テレピが、 2010年、「ハーバード白熱教室」のタイトルで連続放映して反響を呼び、講義録の書籍や DVD

も発売されている。「白熱教室」でネット検索すると Yahooで約145万件、 Googleで約208万件もヒットす

る (2013年7月23日閲覧)。

(3)渡部昭男・山根俊喜・田丸敏高・奥野隆一・一盛真・小林勝年・太田美幸 (2008)I学びへの導入科目と

しての「地域教育学入門jの取り組み:2∞7年度における授業実践のまとめJr2∞7年度科学研究費補助金

(基礎研究B 課題番号17330167)研究報告 地域の教育福祉諸関連の連携に関する総合的研究一一新しい

専門性の形成をめざして一一』、 pp.42・680 鳥取大学附属図書館HPの[研究成果リポジトリ」のサイトか

ら入手可能である(以下同様)。

(4)渡部昭男・竹川俊夫・土井康作・野田邦弘 岡田昭明 (2009)I初年次必修科目「地域学入門jにおける

地域学部新入生の変容一-2009年度における授業実践のまとめ一一Jr地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)j

6 (2)、pp.69-1ω。

(5)渡部昭男・竹川俊夫・足立和美・鶴崎展巨 (2010)I初年次必修科目「地域学入門Jにおける地域学部新

入生の変容(第2報)-2010年度における授業実践のまとめ Jr地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)J

7 (2)、pp.157-1960

(6)渡部昭男・可児みづき・亀淳朋恵 (2012)ITA参加による応答型の講義づくり一一博土課程院生へのプ

レFDの試み一一Jr教育科学論集J(15)、pp.25-360神戸大学附属図書館HPの「学術成果リポジト 1)Jサ

イトから入手可能である(以下同様)。なお、 2012年度の「道徳教育論jに関する続報は、榎景子・渡部昭

男 (2013)I博士課程後期課程におけるプレ FD一一2012年度後期「道徳教育論」の TA経験から一一Jr教

育科学論集J(16)、pp.l3-220

(7)渡部昭男 (2012)I全学共通教育における応答型講義づくりの試み 教養原論「教育学J(2012年度前期)

の授業実践一一一Jr大学教育研究J(21)、pp.l07-122。

(8)田中昌人 (2005)I学生の発達保障と大学評価Jr21世紀の教育・研究と大学評価一ーもう一つの大学評価

宣言一一J(シリーズ「大学評価を考える」第 l巻)、晃洋書房、 pp.30-40。

(9)田中昌人 (2∞7)I新しい大学連合「関西圏jを考え、創出にあたる際のいくつかの基本視点 (2005年10

/22講演録)J r土割の刻』クリエイツかもがわ、 pp.巻末22-37。

(10) I青年(期)Jの定義については諸説がある。田中昌人が「青少年期のトランジション保障Jについて、

10歳代半ばから20歳代半ばまでのおよそ十年間を想定していることから、ここでは便宜的に20歳代半ばまで

を「青年(期)Jとする。なお、障害のある者を含めた「青年(期)JI自分づくりJI青年期教育JI移行支

援jに関しては、渡部昭男 (2∞9)r障がい青年の自分づくり一一青年期教育と二重の移行支援一一j日本

219

大学における応答型講義づくりの試み

[本稿は、大学評価学会第10回大会(於:龍谷大学)の「発達保障j分科会

(2013年3月10日)における報告を加筆修正したものである。 1. IIの実践

は別途発表したものであるが、皿には未発表の2013年度実践を含めた。]

(1)大学評価学会の橋本勝副代表理事が提唱する授業改善メソッドで、多人数の科目において斑分け・討議な

どをまじえて進める「多人数ゼミ JoI橋本メソッドjでネット検索すると Yahoo、Googleともに約27万件

がヒットし、「教授技術「匠の技J伝承プロジェクトJ(https・//www.facebook.com/TAKUMlnoWAZA)な

ども閲覧できる (2013年7月23日閲覧)。参考文献としては、清水亮・橋本勝・松本美奈 (2∞9)r学生と変

える大学教育jナカニシヤ出版、清水亮・橋本勝 (2012)r学生・職員とつくる大学教育』ナカニシヤ出版、

など。

(2)ハーバード大学(米国)のマイケル・サンデル教授の「政治哲学」講義に代表される講義スタイル。 NHK

教育テレピが、 2010年、「ハーバード白熱教室」のタイトルで連続放映して反響を呼び、講義録の書籍や DVD

も発売されている。「白熱教室」でネット検索すると Yahooで約145万件、 Googleで約208万件もヒットす

る (2013年7月23日閲覧)。

(3)渡部昭男・山根俊喜・田丸敏高・奥野隆一・一盛真・小林勝年・太田美幸 (2008)I学びへの導入科目と

しての「地域教育学入門jの取り組み:2∞7年度における授業実践のまとめJr2∞7年度科学研究費補助金

(基礎研究B 課題番号17330167)研究報告 地域の教育福祉諸関連の連携に関する総合的研究一一新しい

専門性の形成をめざして一一』、 pp.42・680 鳥取大学附属図書館HPの[研究成果リポジトリ」のサイトか

ら入手可能である(以下同様)。

(4)渡部昭男・竹川俊夫・土井康作・野田邦弘 岡田昭明 (2009)I初年次必修科目「地域学入門jにおける

地域学部新入生の変容一-2009年度における授業実践のまとめ一一Jr地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)j

6 (2)、pp.69-1ω。

(5)渡部昭男・竹川俊夫・足立和美・鶴崎展巨 (2010)I初年次必修科目「地域学入門Jにおける地域学部新

入生の変容(第2報)-2010年度における授業実践のまとめ Jr地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)J

7 (2)、pp.157-1960

(6)渡部昭男・可児みづき・亀淳朋恵 (2012)ITA参加による応答型の講義づくり一一博土課程院生へのプ

レFDの試み一一Jr教育科学論集J(15)、pp.25-360神戸大学附属図書館HPの「学術成果リポジト 1)Jサ

イトから入手可能である(以下同様)。なお、 2012年度の「道徳教育論jに関する続報は、榎景子・渡部昭

男 (2013)I博士課程後期課程におけるプレ FD一一2012年度後期「道徳教育論」の TA経験から一一Jr教

育科学論集J(16)、pp.l3-220

(7)渡部昭男 (2012)I全学共通教育における応答型講義づくりの試み 教養原論「教育学J(2012年度前期)

の授業実践一一一Jr大学教育研究J(21)、pp.l07-122。

(8)田中昌人 (2005)I学生の発達保障と大学評価Jr21世紀の教育・研究と大学評価一ーもう一つの大学評価

宣言一一J(シリーズ「大学評価を考える」第 l巻)、晃洋書房、 pp.30-40。

(9)田中昌人 (2∞7)I新しい大学連合「関西圏jを考え、創出にあたる際のいくつかの基本視点 (2005年10

/22講演録)J r土割の刻』クリエイツかもがわ、 pp.巻末22-37。

(10) I青年(期)Jの定義については諸説がある。田中昌人が「青少年期のトランジション保障Jについて、

10歳代半ばから20歳代半ばまでのおよそ十年間を想定していることから、ここでは便宜的に20歳代半ばまで

を「青年(期)Jとする。なお、障害のある者を含めた「青年(期)JI自分づくりJI青年期教育JI移行支

援jに関しては、渡部昭男 (2∞9)r障がい青年の自分づくり一一青年期教育と二重の移行支援一一j日本

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220

標準、渡部昭男 (2013)I障がい青年の自分づくりと二重の移行支援H福祉事業型「専攻科Jエコール KOBE

の挑戦jクリエイツかもがわ、 pp.l81-209、を参照されたい。

(11)日本学術会議のホームページ (http://www.scj.go.jp/)で入手できる (2013年7月25日閲覧)。この回答

を踏まえて、日本学術会議では、例えば「教養教育は何の役に立つのか? ジェンダー視点からの問いかけJ(2013年6月29日)と題した学術フォーラム等が開催されている。回答の中には、「教育理念と科目区分と

の関係についての概念図J(p.25)なども示されており、本稿との関連でいえば、「教養教育の目標・理念(市

民性の溺養)Jと「各分野の教育の理念・目標(職業能力の形成など)Jとの区分と組み合せが試論的に示さ

れている。

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標準、渡部昭男 (2013)I障がい青年の自分づくりと二重の移行支援H福祉事業型「専攻科Jエコール KOBE

の挑戦jクリエイツかもがわ、 pp.l81-209、を参照されたい。

(11)日本学術会議のホームページ (http://www.scj.go.jp/)で入手できる (2013年7月25日閲覧)。この回答

を踏まえて、日本学術会議では、例えば「教養教育は何の役に立つのか? ジェンダー視点からの問いかけJ(2013年6月29日)と題した学術フォーラム等が開催されている。回答の中には、「教育理念と科目区分と

の関係についての概念図J(p.25)なども示されており、本稿との関連でいえば、「教養教育の目標・理念(市

民性の溺養)Jと「各分野の教育の理念・目標(職業能力の形成など)Jとの区分と組み合せが試論的に示さ

れている。