led jis制定分科会主査 鈴木 篤 (日立ライティング株式会社 ... ·...

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1.はじめに 近年、一般照明用として実用レベルでの技術革新、 普及が著しいLED照明の規格・試験評価方法を整理 していく前段としては、類似する用途・形態の既成 製品の規格を大きな参考として活用するのが通常で ある。しかし、LED照明に関する標準化の取り組み は、これまで照明とは関係の少なかった半導体・電 子部品分野の事業者からの照明分野への参入に伴 い、照明分野の既成の標準類活用が十分なされず、 ガイドライン的な色合いを強く持った規格化、試験 方法の基準化が要請されている部分がある。 別な見方をすると、新しい多くの社会的課題に対 応できることが期待されるLED照明は、 1)消費者の意識、認識の進展 2)実態としての性能の向上 3)応用範囲、用途など事例の拡大 があり、普及が急速に進んでいる。しかし、普及に 阻害的な側面として次のような問題が生じている。 1)LEDの特性を誤解した設計仕様と要求事項の ミスリードによる使用条件とのアンマッチで 生じた、明るさ寿命などの性能不足 2)製品間の比較、ベンチマークの困難さ などがあげられる。例えば『消費エネルギーが非常 に小さい』、『発熱しない』、『永久に使用できる』と いうような過大な期待と、「光色」、「明るさ(全光 束)」、「配光」などに配慮すれば直ちに白熱電球と 置き換えられるかのような誤解である。この対応と して関係者の情報の共有化が、規格化に望まれる大 きな一面と考えられる。 また、その規格内容の運用、つまり測定を実施し、 それらの情報を公開していくような活動も重要であ る。このような取り組みの一つがDOE(Department of Energy 米国エネルギー省)が取り組んでいる 「CALiPERプログラム」、「次世代照明器具SSLデザ インコンペ」である。米国では、このプロジェクト の推進に伴い不可欠となる測定規格の整備が急速に 進められ、さらにベンチマークの評価の検討による ブラッシュアップが繰り返されている。 このような情報も含めてIEC(国際電気標準会議) を中心とした国際的な規格化・標準化の動向に対応 したJIS(日本工業標準)化活動に対して(社)日本電 球工業会が取り組んできている内容を主に以下、報 告する。 2.JIS規格(一部計画)と対応国際規格(IECなど)の 状況 現在、(社)日本電球工業会及び関連する団体で制 定されたJIS規格及び規格化が計画されている案件 (9規格)を表1に示す。また、それらのポイントに ついて順に説明する。 2.1 TS C0038ランプ及びランプシステムの光生物 的安全性 紫外線に起因する傷害の発生は、以前から知られ 防止・抑制にも取り組まれている。そのような光に 起因する眼及び皮膚に対する傷害は、紫外線による ものを含め、以下の8種類あるとされている。 1)眼及び皮膚に対する紫外線による傷害 2)眼に対する近紫外線による傷害 3)青色光による網膜傷害 2009.10 電球工業会報 27 Technical Trends LED JIS制定分科会主査 鈴木 篤 (日立ライティング株式会社) 照明用LED光源の規格、試験方法について Approach to the standardization for LEDs for general lighting service Chairman of the LED working session on JIS Atsushi Suzuki Hitachi Lighting, Ltd. 『電設技術』平成21年9月号 照明用LED光源の規格、試験方法について(LEDの照明技術特集)より転載・加筆修正

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1.はじめに

近年、一般照明用として実用レベルでの技術革新、普及が著しいLED照明の規格・試験評価方法を整理していく前段としては、類似する用途・形態の既成製品の規格を大きな参考として活用するのが通常である。しかし、LED照明に関する標準化の取り組みは、これまで照明とは関係の少なかった半導体・電子部品分野の事業者からの照明分野への参入に伴い、照明分野の既成の標準類活用が十分なされず、ガイドライン的な色合いを強く持った規格化、試験方法の基準化が要請されている部分がある。別な見方をすると、新しい多くの社会的課題に対

応できることが期待されるLED照明は、(1)消費者の意識、認識の進展(2)実態としての性能の向上(3)応用範囲、用途など事例の拡大があり、普及が急速に進んでいる。しかし、普及に阻害的な側面として次のような問題が生じている。(1)LEDの特性を誤解した設計仕様と要求事項の

ミスリードによる使用条件とのアンマッチで生じた、明るさ寿命などの性能不足

(2)製品間の比較、ベンチマークの困難さなどがあげられる。例えば『消費エネルギーが非常に小さい』、『発熱しない』、『永久に使用できる』というような過大な期待と、「光色」、「明るさ(全光束)」、「配光」などに配慮すれば直ちに白熱電球と置き換えられるかのような誤解である。この対応として関係者の情報の共有化が、規格化に望まれる大きな一面と考えられる。また、その規格内容の運用、つまり測定を実施し、

それらの情報を公開していくような活動も重要である。このような取り組みの一つがDOE(Departmentof Energy 米国エネルギー省)が取り組んでいる「CALiPERプログラム」、「次世代照明器具SSLデザインコンペ」である。米国では、このプロジェクトの推進に伴い不可欠となる測定規格の整備が急速に進められ、さらにベンチマークの評価の検討によるブラッシュアップが繰り返されている。このような情報も含めてIEC(国際電気標準会議)

を中心とした国際的な規格化・標準化の動向に対応したJIS(日本工業標準)化活動に対して(社)日本電球工業会が取り組んできている内容を主に以下、報告する。

2.JIS規格(一部計画)と対応国際規格(IECなど)の

状況

現在、(社)日本電球工業会及び関連する団体で制定されたJIS規格及び規格化が計画されている案件(9規格)を表1に示す。また、それらのポイントについて順に説明する。

2.1 TS C0038ランプ及びランプシステムの光生物的安全性

紫外線に起因する傷害の発生は、以前から知られ防止・抑制にも取り組まれている。そのような光に起因する眼及び皮膚に対する傷害は、紫外線によるものを含め、以下の8種類あるとされている。(1)眼及び皮膚に対する紫外線による傷害(2)眼に対する近紫外線による傷害(3)青色光による網膜傷害

2009.10 電球工業会報 27

Technical TrendsLED JIS制定分科会主査

鈴木 篤(日立ライティング株式会社)

照明用LED光源の規格、試験方法についてApproach to the standardization for LEDs for general lighting service

Chairman of the LED working session on JISAtsushi Suzuki

Hitachi Lighting, Ltd.

技 動術 向

『電設技術』平成21年9月号照明用LED光源の規格、試験方法について(LEDの照明技術特集)より転載・加筆修正

(4)(小形の光源の)青色光による網膜傷害(5)網膜の熱傷害*1

(6)網膜の熱傷害(低可視光)*2

(7)眼の赤外線による傷害(8)皮膚の熱傷害有害性は、測定波長範囲を200~3,000nmとした

国際規格対応に対して、JIS化検討において①関係者の尽力で200~250nmの紫外線域は対応できることとなったが2,500~3,000nmの測定がトレーサブルでないこと、②光源の発光面積の測定法と算出法が明確となっておらず放射輝度測定が確立できていない。そのため、特にLED光源で問題となる可能性があるとされている上記(2)(4)(6)(7)の4項目が評価できない状況である。*3

この規格に関連して新しくLEDも適用範囲に加えたIEC 62471-1及び-2も検討されているが多くの課

題の解決が待たれている状況で、JIS規格として整備していく条件が整っていない。*1:一般の光源

*2:赤外線電球のような可視光が少なく、赤外線量が

多いもの

*3:(6)(7)は、赤外LEDについてのみ適用される

2.2 JIS C8121-2-2 ランプソケット類-第2-2

部:プリント回路板ベースLEDモジュール用コネ

クタに関する安全性要求事項

この規格は、タイトルの通りプリント基板上に設置したタイプのLEDモジュールコネクターの性能に関する内容である。特に形状等を具体的に規定したものとはなっていない。対応IEC規格に基本的に整合させたJISである。ただし、電気用品安全法で規定されている絶縁距

28 電球工業会報 No.507

表1 LED照明に関連するJIS規格の現状と計画及び対応する国際規格

No. JIS規格及び計画 JISに対応する国際標準(IEC,CIE)1

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6

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9

Table 1 JIS standard for SSL published and planned and related international standards

TS C 0038(2004/11/20公表 2008/05/20継続 2011/05/19期限)ランプ及びランプシステムの光生物的安全性

JIS C 8121-2-2(2009/03/20制定)ランプソケット類-第2-2部:プリント回路板ベースLEDモジュール用コネクタに関する安全性要求事項JlS C 8152(2007/07/20制定)照明用白色発光ダイオード(LED)の測光方法JIS C 8153(2009/03/20制定)LEDモジュ-ル用制御装置-性能要求事項

JIS C 8147-2-13(2008/10/20制定)ランプ制御装置-第2-13部:直流又は交流電源用LEDモジュール用制御装置の個別要求事項JIS C 8154(2009/03/20制定)一般照明用LEDモジュール-安全仕様JIS C XXXX(2009計画)2009年12月発行予定一般照明用LEDモジュール-性能要求事項-------------------------TS C 8153(2007/07/20制定 2010/07/19期限)照明用白色LED装置性能要求事項JIS C XXXX(2009計画)2010年04月発行予定一般照明用電球形LEDランプ(電源電圧50V超)-安全仕様

JIS C XXXX(2010計画)2011年04月発行予定一般照明用電球形LEDランプ(電源電圧50V超)-性能要求事項

CIE S 009 / E(2002)Photobiological safety of lamps and lamp systemsIEC 62471(2006-07-26)Photobiological safety of lamps and lamp systemsIEC 60838-2-2(2006-05-05)Miscellaneous lampholders-Part 2-2 : Particular require-ments for LED-modulesCIE 127(1997+2007)Measurement of LEDsIEC 62384(2006-08-31)DC or AC supplied electronic control gear for LED modules-Performance requirementsIEC 61347-2-13(2006-05-05)Lamp controlgear-Part 2-13:Particular requirements ford.c. or a.c. supplied electronic controlgear for LED modulesIEC 62031(2008-01-15)LED modules for general lighting-Safety specifications該当なし

IEC 62560(FDIS plan 2009-08)Self-ballasted LED-lamps for general lighting services byvoltage >50V-Safety specificationsIEC 62612(FDIS plan-2011-06)Self-ballasted LED-lamps for general lighting services byvoltage >50 V-Performance requirements

離、沿面距離に関してデビエーション対応が図られている。

2.3 JlS C 8152 照明用白色発光ダイオード(LED)

の測光方法

国際規格CIE(国際照明委員会)127を基に、原案検討時のCIE TC2-45、TC2-46技術委員会の状況も盛り込んだJISである。基本的にLED単体及びそれに類する小形のLEDモジュールなどのCIE平均化光度と部分光束の測定、球形光束計を用いた全光束測定方法で、LEDが光束絶対値が少ない点と、鋭い配光となっている点が既存の照明用光源と異なることに配慮している。そのため光束、光度の基準となる「標準LED」を同

じ形態の「試料」と直流定電流で点灯(駆動)し、比較測定とすることで測定精度を確保する方法として規定されている。そして、LEDの発光は、素子の温度にも大きく依存するため温度を一定に管理制御する「温度制御ソケット」を附属書で明確にしている。また、引用規格であるCIE 127も2007年に改正版

が発行されているため、新しい内容に対応する改正の検討が必要と考えられる。その際に進歩普及の著しいHB(ハイブライトネス)及びHP(ハイパワー)と称されるものやマルチチップタイプのようなLED(単体)製品にまで適用範囲を拡大できるかが課題と考えられる。

2.4 JIS C 8153 LEDモジュ-ル用制御装置-性能要求事項

このJISは、基本的に対応国際規格に整合させた規格である。電源電圧範囲については、日本での一般的な機器では、94~106%Vとしているのに対して、配電回路網に存在する容量性の負荷に配慮したIECと整合させて92~106%Vを採用している。また、制御装置を評価する際、負荷であるLED(モジュール)の順方向電圧Vfのバラツキによる測定結果の不安定さを低減するため、試験用の負荷として電気特性が定格の100~106%の範囲にある試験用LEDモジュールを選定し使用することとしている。そして、制御装置の出力電圧及び電流(つまりLEDモジュールへの入力)の許容範囲は、±20%とした。

2.5 JIS C 8147-2-13ランプ制御装置-第2‐13部:直流又は交流電源用LEDモジュール用制御装置

の個別要求事項

LEDモジュールの制御装置における安全仕様の基本的な構成は、低電圧ハロゲン電球用の電子トランスに類似している。JIS化に際して技術的な内容は、IEC整合といえるが、感電に対する保護の関連で、すでに照明器具、制御装置(電子安定器,電子トランス)のJISで採用しているクラス0の分類を、対応IEC規格にあるSELV、クラスⅠ、クラスⅡに加えている。さらに多くの安全性能の要求事項は、JIS C 8147-

1「ランプ制御装置-第1部:一般及び安全性要求事項」を共通事項として引用する形となっている。また、附属書JBとして口出し線を持つ制御装置に

ついても既存の照明器具と同様な形態を想定して規定している。

2.6 JIS C 8154 一般照明用LEDモジュール-安全

仕様

この安全仕様は、IEC完全整合に近い形で規格化が図られており、製品の構成と絶縁性能のレベルに応じて以下のように7つに区分されている。(1)制御装置内形①電球口金付き独立形(電球形)②電源コネクタ経由独立形③電源コネクタ経由器具一体形④電源コネクタ経由器具組込み形

(2)制御装置別置形①制御装置との接続コネクタ経由独立形②制御装置との接続コネクタ経由器具一体形③制御装置との接続コネクタ経由器具組込み形LEDモジュールの使用方法,形態などからLEDモ

ジュールのわかりやすい定義、LED照明器具との区分は難しい点がある。独立形、器具一体形、器具組込み形の区分での基本的な安全仕様の考え方は、照明器具に搭載される制御装置(電子安定器など)の扱いと同じで、製造業者の意図によるところが大きい。そのため、要求事項の詳細は、JIS C 8105-1「照明器具-第1部:安全性要求事項通則」に従うところが非常に多い。その他の変更のポイントは、故障状態の評価に関

連する安定を判定する温度を厳しくすることで、誤使用、過酷な状態での安全性の向上を図っている。

2009.10 電球工業会報 29

2.7 JIS C XXXX一般照明用LEDモジュール‐性能

要求事項(計画進行中)

この規格は、JIS規格化に先立ち製品規格情報を積極的に公開していくことを目的として制定された技術仕様書 TS C 8153(2007年7月20日に制定)を基としている。その技術仕様書の有効期限に向け、現在 JIS原案の検討を進めている。対応するIEC規格は、現在検討されておらず日本独自の規格であり、完成後には国際規格としての提案を見込むものである。規格構成面の特長として、これまでの光源類の

JISが安全仕様と性能要求事項で同様の製品分類が採用されているが、このLEDモジュールの性能要求事項は、前項で説明したJIS C 8154が安全性の面から電気的特性で7分類していたのに対して、使用者の使用面を配慮した光学的な測定方法で大きく以下の3分類とする形で検討を進めている。その概要は、(1)分類1:基本的に単体及びそれに類するLED(2)分類2:主に照明器具に組込み一体とすることを意図した光源部品に相当するモジュール(器具組込み形、器具一体形が相当する)(3)分類3:使用者が交換することを想定した構成でランプと照明器具のランプに相当するモジュール*4

である。*4:これは更に現在の光源だけと直接交換可能なもの3a

(レトロフィット)と器具全体の取り替えも伴う接続

システムの3bに分類される。

(1)分類1は、JIS C 8152により全光束CIE平均化光度などを評価する。

(2)分類2は、照明器具として球形光束計及びJISC 8105-3「照明器具-第3部:性能要求事項通則」を基本に全光束や配光特性で性能評価する。

(3)分類3は、既存の光源の評価方法が確立しているため主にJIS C 7801「一般照明用光源の測光方法」および該当するランプのJISで評価する。性能の水準に関しては、既存の光源との代替とな

る(3)分類3の一部製品は,照明の互換性を保つためにも代替対象のランプと同等の性能を要求する。分類1、分類2に相当するものは、市場での実用水準などが十分に特定できず、発展途上であるものも多く、今後の性能向上も大きいことが期待されるため、製造業者の設計・開発の意図(カタログ公表値など)を基準とし、許容範囲は電気的性能を「±20%(暫定値)でなければならない」、光学特性

は光束測定の難易度も考慮して「80%(暫定値)以上でなければならない」を基本的な案としている。寿命評価に関しても設計・開発の意図による製造

業者が設定する点灯条件(特にモジュール外表面温度と性能に大きな影響を与えるジャンクション温度との関連性など)とLED素子メーカの点灯条件、温度条件などからの論理的な推定を認めることを考えている。

2.8 JIS C XXXX 一般照明用電球形LEDランプ(電

源電圧50V超)-安全仕様(計画中)照明におけるCO2削減推進に関連する脱白熱電球

の活動により普及が一段と拡大している電球形蛍光ランプに相当するものである。用途が基本的に同じである事からJIS C 7620-1「一般照明用電球形蛍光ランプ-第1部:安全性要求事項」と多くの共通点をもち、対応の国際規格も検討が進んでいる。適用範囲として口金を電球形蛍光ランプで普及し

ているE26、E17に加えてB22d、E11、E12を含め、GX53も加えている。さらに外郭形状の要求も代替電球などと同等とすることで照明器具との適合を確保すると共に、品種及び普及の拡大を目指している。安全性に関する最も大きな特長は、口金温度上昇限度である。IEC案では白熱電球と同じ口金温度上昇値120Kが限度となっているが、白熱電球類の国内での不具合事例等から安全性を優先して最低水準の60Kを基本とすることで検討を進めている。逆に上昇分が60Kに整合した器具の安全を確保す

るため従来の白熱電球装着時の最大120Kにも配慮するような情報提供を附属書としても設けることを検討している。

2.9 JIS C XXXX 一般照明用電球形LEDランプ(電

源電圧50V超)-性能要求事項(計画中)前項2.8で解説した安全仕様に対応する性能要求

事項であるが、JIS C 7620-2「電球形蛍光ランプ-第2部:性能規定」とは異なる点が多い。この背景には、米国・欧州ではこれまでの電球形蛍光ランプで、仕様の不十分さから使い勝手の不具合を発生させ、普及拡大に長い時間を要してきたために、その反省を含んで、対応する国際規格も、白熱電球類への代替が容易で普及が進むように、議論・検討が急ピッチで進められている。IECで検討中の案の特長は、次の点である。(1)寿命の定義を光束維持率70%までの点灯時間

30 電球工業会報 No.507

(2)光束維持率を最低6,000時間で評価確認する。(3)色の範囲と光束維持率をカテゴリー分けして表示する。上記のような高いレベルでの標準化推進は、低い

性能の製品を排除していくEUP規制等での活用も視野に置かれていると考えられる

3.ヨーロッパ(EU)での標準化

EUにおける標準化の動向は、IECが中心になっている。その内容は、表1のJISに対応する国際標準(IEC、CIE)に示した通りである。他に関連する基準として一般的にEUPと称されて

いるDirective on the Ecodesign of Energy-usingProducts(2005/32/EC)(エネルギー使用製品の環境配慮設計指令)とその下位規格となる委員会規則のEcodesign requirements for non-directionalhousehold lamps(家庭用の全般照明ランプの環境配慮設計要求事項)が2009年3月20日に交付され、白熱電球及びその代替えの一つとして電球形LEDラン

プの性能規定が計画に従って施行されていく。

4.アメリカ(US)での標準化

アメリカでのLED照明普及に関連した標準化活動は、DOE(エネルギー省)がリーダーシップを取り、次世代高効率一般照明用光源の開発として①基礎研究②製品開発③製造④商業化を推進して、市場での普及実現に向け取り組んでいる。この活動には、製品実現のためのSSL(Solid State Lighting 固体照明)パートナーシップと標準制定のためのグループがそれぞれ連携して参加している。SSLパートナーシップは、DOEの他に主要照明光源メーカー、LEDメーカー、素材メーカーがメンバーとなっているNGLIA( Next Generation Lighting IndustryAll iance:次世代照明産業アライアンス)、IES( Illuminating Engineering Society of NorthAmerica:北米照明学会)、IALD(InternationalAssociation of Lighting Designers:国際照明デザイナー協会)で連携している。

2009.10 電球工業会報 31

表2 アメリカにおけるLED照明に関連する規格類

光学測定・IES LM-79 IESNA Electrical and Photometric Measurements of SSL Products(SSL製品の電気的及び光学的測定)・IESNA LM-80 Approved Method for Measuring Lumen Maintenance of LED Light Source(LED光源の光束維持率測定方法)測色・ANSI C78.377-2008 Chromaticity of SSL Products(SSL製品の色)目に対する安全・IES RP-27 Photobiological Safety(光生物学的安全性)・IEEE P1789 Recommended Practices of Modulating Current in High Brightness LEDs for Mitigating Health Risks to Viewers(観測者に対する健康傷害を緩和する高輝度LEDにおける調光動作電流の事例)製品安全・ANSI C82.SSL1 Power Supply(電源)・ANSI C78.09-82 Fixture Safety Specification(照明器具の安全仕様)・FCC 47 CFR Part 15 Radio Frequency Devices(高周波機器)・UL8750 LED Light Sources for Use in Lighting Products(照明製品に使用するLED光源)専門用語・IES RP-16 Nomenclature and Definitions-Addendum A:SSL Definition(用語と定義-追捕A:SSL定義)取り付け・互換・ANSI SSL2 LSD-45 Sockets & Interconnects(ソケットとコネクタ)・ANSI C82.04 Driver Safety Circuitry(制御装置の安全)準備中の標準・IES TM-21 a method for extrapolating longer-term LED performance based on LM-80 test results(LM-80の維持率試験結果を基としたLED長期性能の推定方法)製品仕様(Energy Star)Residential light fixture(RLF)Ver.4.3(家庭用照明器具)LED Luminaire Ver.1.1(LED照明器具)Integral LED lamps Draft 2(電球形LEDランプ)

Table 2 Standards for SSL in USA

そして、標準化に関しては、ANSI(AmericanNational Standard Institute:米国規格協会)の他、UL、NEMA(National Electrical ManufacturerAssociation:米国電機工業会)(ANSI、IEC、IESと連携)、NIST(National Institute of Standard andTechnology 米国標準技術研究所)(CIEと連携)が活動を展開している。米国では、1990年代の電球形蛍光ランプの普及拡

大推進時にリベートプログラムを積極的に推進したが使用条件などの不適切な品質設計による短寿命を中心とした問題で普及拡大に挫折した経験があり、その失敗を繰り返さないため、単純な促進策でなく産業技術、品質管理の両面からSSL照明全体を総合的にサポートする形で推進されている。具体的な例として、屋内用照明のCALiPER

(Commercially Available LED Product Evaluationand Reporting:商業的に実用可能なLED製品の評価と報告)プログラム、Gatewayプログラム、カリフォルニア州のTitle24、建築物評価基準のLEEDや省エネ製品基準のEnergy Starなどで、(a)省エネ性を軸とした製品性能・技術、(b)建築物の設備基準とその格付け評価という側面がある。それらの評価は、(1)測光 (2)測色 (3)安全 (4)性能全般 (5)用語 (6)EMC (7)互換性 (8)性能測定に区分でき、国際標準より広い分野で展開されていると考えられる。その分野毎の規格名称を表2に示す。内容に関しては、インターネット経由で入手できるものも多く、個々に確認できる。特にLED照明製品にとって重要な測光は、先の

JISの際にも触れたが光源の大きさ、形態により(a)指向性の少ないLEDモジュール(図1 4π配光における測光)、(b)半球側にのみ配光のあるLEDモジュール(図2 2π配光における測光)、(c)球形光束計で対応できないサイズのモジュール(照明器具)(図3 ゴニオメータによる測光)を使い分けることになる。ただし、その測定方法によっても測定精度が大き

な影響を受けるため的確な比較測定を考慮することが重要である。この点に関してLM-79(SSL製品の電気的及び光学的測定)とCALiPERプログラムは、連携して製品評価だけでなく測定精度の巡回試験も兼ねたものとなっている。

5.日本以外のアジア地域での動向

日本以外のアジア地域のLED照明に関する動向に

32 電球工業会報 No.507

図1 4π配光球形測光システムの概要Fig.1 Schematics of the integrating sphere photometry system

for light sources having 4πluminous intensity distribution

図2 2π配光球形測光システムの概要Fig.2 Schematics of the integrating sphere photometry system

for light sources having 2πluminous intensity distribution

図3 ゴニオメータ測光システムの概要Fig.3 Schematics of the photometry system with the

Goniophotometer

おいては、韓国、中国、台湾が代表している。予てより多くの展示会などで中国は、社会的なインフラの関係で現時点で膨大なエネルギーを消費する白熱電球に代替する次世代照明光源として政府を中心とした大規模なSSL産業育成、活用のプログラムが展開されている。一方で台湾は、活況で大きな国際的な勢力を確立した半導体産業の更なる発展をめざしての展開が図られている。やや、異なるスタンスで韓国も国家的なプロジェクトとしてLED生産、LED応用製品等LED照明分野を含む広い範囲での振興が推進されている。中国・台湾に関しては独自の標準化活動の情報が

入手できていないが韓国においては活発にKS規格の検討が推進されているとの情報(表3)である。しかし、短期間での規格制定を図ったようで、内容の情報が明確となっていないため国際的標準活動として整合しているのか今後も情報の整理を図る必要がある。

6.電気用品安全法 技術基準

電気用品安全法では光源や照明器具は、(1)定格電圧が、100V以上300V以下のもの(2)定格周波数が50Hz又は60Hzの交流の電路に使用されるもの

(3)施行令で定められた「電気用品」に該当するもの

さらに、「電気用品」は、表4に示す光源の種類が明確となっているものと、表5のように器具の種類だけが示されているものがある。

したがって、現状の電気用品安全法では、表5の6種類に関してはLED応用製品も対象品目に含まれることになり、該当する技術基準を満たすことが法律的にも義務付けられている。したがって、安全に関して該当する基準を確保できており、事業者の登録から品質の保証も確保できると考えられる。それに対して表4に類するようなLED光源応用製品には、該当する技術基準がないため、安全の水準及び品質を確保できない問題がある。これに関して消費者側からは、「電気用品」とし

て安全確保の要望、製造業者サイドからは、安全設計のための基準制定を求められている状況があり、関係機関などで検討が鋭意進められている。

7.おわりに

これまでに報告してきた規格類のポイントは、使用者側の交換や取替え、各製造者の意図した製品間の取り替えに対応する互換性(交換使用での安全性の同等性、取り付け取り外しの同等性)を第一優先とする点である。今回報告した性能に関する規格水準は、従来光源

の延長線での内容にとどまっている部分が多い。つまり、今後、更に革新的で、次世代光源の主力として期待されるSSLの特長を十分に反映して、これまで以上の積極的な製品開発、製品先行でデファクト的に性能評価規格の導入を期待する。

2009.10 電球工業会報 33

表3 韓国KS規格の情報

規格番号 規格名称KS C 7651

KS C 7652

KS C 7653KS C 7655KS C 7656KS C 7657KS C 7658KS C 7659KS C 7660今後の計画

Table 3 Information of SSL standards in Korea

コンバータ内蔵型 LEDランプ(器具内蔵型の白熱電球の代替用)コンバータ外装型 LEDランプ(ハロゲン・ランプの代替用)埋め込み型LED灯器具固定型 LED灯器具移動型 LED灯器具センサー搭載LED灯器具LED街路灯文字看板用 LEDモジュールLEDモジュール駆動用 AC-DCコンバータLED集魚灯、LEDトンネル灯、LED 投光器、LED滑走路誘導灯、LED鉄道信号灯、LED航空障害灯

表4 光源の種類が明確な「電気用品」

電気用品名1 白熱電球2 蛍光ランプ3 家庭用つり下げ形蛍光灯器具4 その他の白熱電灯器具5 その他の放電灯器具

Table 4 Electric and electrical equipments with specified lightsources

表5 器具の種類だけが示された「電気用品」

電気用品名1 電気スタンド2 装飾用電灯器具3 広告灯4 ハンドランプ5 庭園灯6 充電式携帯電灯

Table 5 Electric and electrical equipments without specifiedlight sources

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34 電球工業会報 No.507