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Lithography Spring 2006 www.kla-tencor.com/magazine 25 R E T I C L E I N S P E C T I O N 警告を出すタイミングを見極める 危険マスクを適切に判別するには Jerry Huang, Lan-Hsin Peng, and Chih-Wei Chu, ProMOS Technologies Kaustuve Bhattacharyya, Ben Eynon, Farzin Mirzaagha, Tony Dibiase, Kong Son, Jackie Cheng, Ellison Chen, Den Wang, KLA-Tencor マスクの進行性欠陥は、マスクの信頼性に関わる業界全体の深刻な問題です。このような問題は、遠紫外線 (DUV) リソグラフィを実施している高コストのハイエンドマスクでは特に深刻です。そのような場合でも、工場 では、問題のマスクがプロセスウィンドウに影響を及ぼし始める直前まで使い続けることを望んでいます。この 研究によって、微小な進行性欠陥はフォーカス/露光条件が適切であればウェーハに転写されることはないが、 それでもプロセスウィンドウに影響を与え、プロセスウィンドウを大幅に狭めるということが明らかになりまし た。高解像度でのレチクルの直接検査により、これらの欠陥を早期に発見することはできますが、いまだに欠陥 マスクの効果的な判定方法を模索している工場が多いことも事実です。本文では、あるリソグラフィ欠陥検出ツ ールを評価して、このような進行性のマスク欠陥の致命度の予測可能性を考察した結果を報告します。 マスク欠陥の増大要因を調査する 一般的なウエハファブでは、多くのマス クは継続した使用後も異物問題と無縁で す。つまり、クリーンな状態を保ってい ます。平均では、波長365 nmリソグラフ ィによるバイナリマスクの約1%、また DUVリソグラフィによるハーフトーン位 相シフトマスク (EPSM) の約6~15%で、 製造工程でマスクを使用している間に欠 陥が増大する問題が発生しています1,2マスクを高解像度で直接検査すれば、こ のような欠陥マスクを適切に検出できま す。しかし、この欠陥増大の度合いは、 マスクによっては深刻なものになり、マ スクのパターン面に数千もの結晶成長型 の実欠陥が発生します。その結果、この ような問題マスクの欠陥レビューセッションは非常 に難しくなります。KLA-TencorSTARlight マスク 検査ツールは、欠陥のサイズやマスクのタイプ (遮 光部、透過部、ハーフトーンなど) 別に欠陥をビニ ングする機能があります。欠陥数がある程度であれ ば、この機能を使って効果的にマスクの良否判定を 行うことができます。しかし、総欠陥数が多い場 合、従来のレビュー技術によるレビューセッション は非常に長い時間を要します。今回、新登場のTer- aScan STARlight (以下、“SL2) のマスク誤差増大要 (MEEF) をベースとした検出ツールを評価して、 SL2で捕捉された数千単位の総欠陥数から重要な対 象欠陥のみを抽出できるかどうかを検証することに しました。 次の図1は、入荷時の検査ではクリーンな状態のマスク が、量産環境でマスクを20日間使用した後で、深刻な欠

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Lithography

Spring 2006 www.kla-tencor.com/magazine 25

r e t i c l e i n s p e c t i o n

警告を出すタイミングを見極める 危険マスクを適切に判別するには

Jerry Huang, Lan-Hsin Peng, and Chih-Wei Chu, ProMOS Technologies

Kaustuve Bhattacharyya, Ben Eynon, Farzin Mirzaagha, Tony Dibiase, Kong Son, Jackie Cheng, Ellison Chen, Den Wang, KLA-Tencor 社

マスクの進行性欠陥は、マスクの信頼性に関わる業界全体の深刻な問題です。このような問題は、遠紫外線 (DUV) リソグラフィを実施している高コストのハイエンドマスクでは特に深刻です。そのような場合でも、工場

では、問題のマスクがプロセスウィンドウに影響を及ぼし始める直前まで使い続けることを望んでいます。この

研究によって、微小な進行性欠陥はフォーカス/露光条件が適切であればウェーハに転写されることはないが、

それでもプロセスウィンドウに影響を与え、プロセスウィンドウを大幅に狭めるということが明らかになりまし

た。高解像度でのレチクルの直接検査により、これらの欠陥を早期に発見することはできますが、いまだに欠陥

マスクの効果的な判定方法を模索している工場が多いことも事実です。本文では、あるリソグラフィ欠陥検出ツ

ールを評価して、このような進行性のマスク欠陥の致命度の予測可能性を考察した結果を報告します。

マスク欠陥の増大要因を調査する

一般的なウエハファブでは、多くのマスクは継続した使用後も異物問題と無縁です。つまり、クリーンな状態を保っています。平均では、波長365 nmリソグラフィによるバイナリマスクの約1%、またDUVリソグラフィによるハーフトーン位相シフトマスク (EPSM) の約6~15%で、製造工程でマスクを使用している間に欠陥が増大する問題が発生しています1,2。マスクを高解像度で直接検査すれば、このような欠陥マスクを適切に検出できます。しかし、この欠陥増大の度合いは、マスクによっては深刻なものになり、マスクのパターン面に数千もの結晶成長型の実欠陥が発生します。その結果、この

ような問題マスクの欠陥レビューセッションは非常に難しくなります。KLA-TencorのSTARlight マスク検査ツールは、欠陥のサイズやマスクのタイプ(遮光部、透過部、ハーフトーンなど)別に欠陥をビニングする機能があります。欠陥数がある程度であれば、この機能を使って効果的にマスクの良否判定を行うことができます。しかし、総欠陥数が多い場合、従来のレビュー技術によるレビューセッションは非常に長い時間を要します。今回、新登場のTer-aScan STARlight (以下、“SL2”) のマスク誤差増大要因 (MEEF) をベースとした検出ツールを評価して、SL2で捕捉された数千単位の総欠陥数から重要な対象欠陥のみを抽出できるかどうかを検証することにしました。

次の図1は、入荷時の検査ではクリーンな状態のマスクが、量産環境でマスクを20日間使用した後で、深刻な欠

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陥増大が発生したことを示しています。左側にあるマスク画像の欠陥は容易にひとつひとつレビューできますが、右側のマスク画像の総欠陥数は膨大で、人による個々のレビューはほぼ不可能です。したがって、より自動的に欠陥をレビューする方法が必要です。

プロセスウィンドウへの影響

プロセスウィンドウ内の微小な進行性欠陥の影響を把握することは特別重要です。ウェーハに転写される(プロセスウィンドウを消滅させる) 重大なマスク欠陥もあれば、まったく影響を与えない欠陥もあります。しかし、このように欠陥の多いマスクでは、その多くが中間に属しています。このようなどちらともつかない欠陥はプロセスウィンドウを完全に消滅させないまでも、狭める可能性があります。少しのプロセスウィンドウの縮小も潜在的な問題を抱えるため、この視点からマスク欠陥の致命度を検証する必要があります。

また、異物欠陥の中には透明なものがあり、この場合は位相欠陥と解釈されるため、純粋にサイズの点から欠陥を検証するだけでは不十分です。欠陥サイズ、透過損失、および欠陥の発生場所を考慮して初めて欠陥の致命度を正確に把握できることを念頭に置く必要があります。それが、MEEF測定ベースのビニング機能が必須である理由です。

図2のシミュレーション画像を見ると、マスクおよび欠陥の発生場所のハーフピッチが大きな影響を与えている

ことがわかります。欠陥の発生場所とサイズが同じでもマスクのハーフピッチが小さいと、欠陥がウェーハ上にブリッジを引き起こす確率は高くなります。これは、旧デザインノード(135 nmハーフピッチプロセスなど) では問題を発生しなかったマスク欠陥 (図2の欠陥サイズ120 nmに注目)が、プロセスパターンの微細化とMEEF値の増加によって、先端デザインノード(90 nmハーフピッチ)のプロセスウィンドウに影響を与えるかもしれないことを意味します。欠陥サイズが200 nmになると、プロセスウィンドウは完全に消滅してしまいます。

波長193nm露光とNA0.75によるシミュレーション結果図3および4は、マスク上の120 nm欠陥がプロセスウィンドウに与える影響を示しています。デザインルールの高集積化によって、欠陥の致命度は増大します。

次の図では、マスク欠陥のサイズが200 nmまで大きくなると、ハーフピッチ90 nmのプロセスではプロセスウィンドウが完全に消滅することがわかります。

Half pitch

Mask defect

Defect size (on mask)

K1factor

Waferimage

135nm

135nm

135nm

90nm

90nm

200nm

320nm

120nm

200nm

120nm 0.52

0.52

0.52

0.35

0.35

図2:ウェーハ上でシミュレーションしたマスク欠陥–MEEF値と欠陥サイズの影響

焦点露光

Focus

Expo

sure

図3:ハーフピッチ135nmプロセスでは、120nmマスク欠陥はプロセスウィンド

ウに影響を与えない

図4:ハーフピッチ90nmのプロセスでは、120nmマスク欠陥がプロセスウ

ィンドウを大幅に縮小

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マスク欠陥の転写とプロセスウィンドウ110 nmノードによる波長193 nmのEPSMを検査し、露光量マトリックスに従ってマスクを露光しました。露光量は±20%変化させました。結果は次のとおりです。

露光量マトリックスに従ってこのマスクを露光した結果、微細な欠陥でもプロセスウィンドウに影響を及ぼすことが判明しました。露光量が少しでも不足すると、マスク欠陥の転写が認められます。つまり、最適な露光条件の露光量からわずか5%減少しても、欠陥の転写性が増加しました。

異物欠陥の転写性を予測するには、今後も継続的な調査が必要です。本研究において筆者らが目的としているのは、マスク欠陥の適切な判断方法を確立する、つまり、マスクが量産に適しているかどうかの判断の目安となる基準を設定することでした。本研究では、TeraScan検査装置から得られたマスクの光学画像を使用し、処理能力の高い欠陥検出およびレビュー機能を開発することを目的としました。

欠陥検出ディテクターを開発する

今回の研究で評価対象としたのはKLA-TencorのTer-aScanマスク検査ツールの、Litho3およびReviewSmartという機能です。本文では、新しいTeraScan STARlight (SL2) を使用した暫定的な結果を報告します。本格的な評価は本研究の範囲外であり、多様なマスクレイヤおよびノードに対する同検出ツールの効果を把握するには、今後も広範囲な評価が必要になると思われます。

Litho3欠陥サイズ、透過損失、および欠陥の発生場所という情報が揃わないと、欠陥の致命度を正確に予測することはできません。そのため、検査時に自動的にMEEF値に連動して実行するリソグラフィタイプ検出ディテクター(Litho3) を開発しました。Litho3は、適切にセットアップすることによって、重大欠陥を1つのビンに集約することができます。Litho3は、次のコンセプトに基づいて開発されています。

a. マスクパターンおよびリソグラフィのコンテキストに連動して検査実行時に動作する専用ディテクターを有すること。

b. 同じサイズおよび強度の欠陥でも、欠陥の発生場所のMEEF値に基づいてそれぞれ異なるビンに分類すること。つまり、MEEF値が高い領域にある欠陥を専用リソグラフィビンに分類し、サイズと信号強度は同じでもMEEF値が低い領域にある欠陥はこの専用ビンには分類しない。

Litho3を正しくセットアップすれば、重要な欠陥はこの専用ビンに分類されます。このビンを制御するしきい値はセットアップ時にユーザが定義できます。初期評価では期待の持てる結果が出ました。

次の図に示すマスクには約700の欠陥があります。Litho3を実行することにより、これらの欠陥の一部を専

図5:90nmハーフピッチプロセスでは、200nmマスク欠陥がプロセスウィ

ンドウが完全に消滅させる

図7:プロセスウィンドウに影響を与えるマスク欠陥–CDSEMツールによる

ウェーハ画像

図6:ウェーハにマスク欠陥が転写

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用ビンに分類することができました。この専用ビンに分類された欠陥は現実に重大であり、次の図のように表出しました。重大欠陥はわかりやすいように赤で示してあります。重大欠陥以外の欠陥は黄色と緑色で示しています。専用ビン基準を厳しく設定して赤いビンに分類する欠陥を少なくすることもできますが、その際は設定を慎重に行う必要があります。

ReviewSmartReviewSmart検出ツールは、類似する欠陥をさらに効果的にビニングする目的で開発されました3。Re-viewSmartは、オペレータが指定したしきい値を使用することによって、リソグラフィの観点からどの欠陥が類似しているかを特定します。さらに、これらの類似欠陥は同グループにビニングされます。多数の欠陥でもわずか数個のグループにビニングされ、各グループに分類された欠陥は重大度別にランク付けされます。これらはすべて、検査実行時並行して実行され、しかも検査時間にほとんど影響がありません。検査終了後、オペレータはグループ分けされた欠陥をグループごとに分類していきます。以下は欠陥の多いマスクのサンプルです。このサンプルでRe-viewSmartは、重要度の低いオープンエリア上の微小な結晶成長型欠陥と、高集積度パターン上の欠陥を効果的にビニングし、それぞれの欠陥を別個のグループに分類しています。

結論

結晶成長やヘイズなどの進行性のマスク欠陥は引き続き業界にとって脅威となっています。解像度要求が厳しくなり、IC業界は非常に低いK1係数を持つリソグラフィプロセスを導入しようとしています。その結果、マスク上の誤差がウエハ上のパターンに与える影響が大きくなっています(MEEF値の増大)。波長193 nmのEPSMに関するシミュレーションデータや実際の転写テストによって、マスク上の欠陥によってはウェーハに転写されてプロセスウィンドウを消滅させるものと、まったく影響を及ぼさないものが

あることが判明しました。しかし、これらの中間に属する欠陥でも、露光量が少しでも不足するとプロセスウィンドウへの影響があることも明らかになっています。このような欠陥はプロセスウィンドウを完全に消滅させないまでも縮小させます。プロセスウィンドウの縮小が問題を引き起こすという可能性を考慮し、この観点からマスク欠陥の致命度を検証する必要があります。

進行性欠陥の問題は、マスクの特定の割合 (1~15%)で認められます。高解像度によるマスク検査を実施すれば、このような欠陥問題を検出することは可能ですが、初期段階では欠陥が形成途上にあり、光を通してしまいます。マスク検査ツールによる欠陥レビューにおいて、このような初期段階にある大

図8:TeraScanSL2システムのLitho3ディテクターによる重大欠陥のビニン

グ(赤色)

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量の欠陥から重大欠陥を識別することは容易ではありません。マスク上に多数の欠陥(基本的に進行性欠陥)が発生している場合、マスク欠陥の分類作業は非常に長い時間を要します。欠陥の多いマスクを適切に判断するには、マスクが量産に適しているかどうかの判断の目安となる基準を慎重に設定する必要があります。

本研究で開発して試験を実施した新しい“Litho3”リソグラフィ欠陥検出ディテクターは、異物欠陥のみを検査対象としています。量産環境にこのツールを導入するには、同ツールの微調整のために初期評価が必要となるでしょう。本研究により、製造工場でのマスクの良否判断に役立つツールの開発に明るい前途を見出すことができました。ただし、理想的なディテクターセッティングを開発して用途を体系化するために、今後数ヶ月で取り組む予定です。

謝辞

本研究に取り組むにあたり、次の方々から支援、協力をいただきました。この場を借りて感謝の意を表します。

KLA-TencorのWilliam Volk氏、Qiang Li氏、Steven Labovitz氏、Ching Yun Hsiang氏、Paul Yu氏、Amir Azordegan氏、Zhian Guo氏。

Jerry Huang氏、Lan-Hsin Peng氏 および Chih-Wei Chu氏、Kaustuve Bhattacharyya氏、 Ben Eynon氏、

Farzin Mirzaagha氏、Tony Dibiase氏、 Kong Son氏、 Jackie Cheng氏、Ellison Chen氏およびDen Wang氏、第25回フォトマスク技術に関する年次BACUSシンポジウムにおける、写真・光化学計測技術者協会事務弁護士Patrick M. Martin氏、J. Tracy Weed氏編纂危険マスクの判別 Vol. 5992, 59921X, (2005) CID# 599206

参考文献

1. K. Bhattacharyya, M. Eickhoff, Mark Ma, Sylvia Pas,A Reticle Quality Management Strategy in Wafer FabsAddressingProgressiveMaskDefectGrowthProblematlowk1Lithography,PhotomaskJapan,2005

2. K. Bhattacharyya, K. Son, B. Eynon, D. Gudmundsson,C.Jaehnert,D.Uhlig,AReticleQualityManagementStrategyinWaferFabsAddressingProgressiveMaskDefectGrowthProblematlowk1Lithography,BACUSSymposiumonPhoto-maskTechnology,2004

3.P.Yu,V.Hsu,E.Chen,R. Lai,K.Son,W.Ma,P.Chang,J.Chen, ImplementationofanEfficientDefectClassificationMethodology for Advanced Reticle Inspection, PhotomaskJapan,2005

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