miltenyi biotec report...5. ichioka m, suganami t, tsuda n, et al.: ncreased expression of...

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Miltenyi Biotec Report www.miltenyibiotec.co.jp 肥満で生じる脂肪組織線維化は、マクロファージ に発現する C 型レクチン Mincle により制御される 著者プロフィール 田中 都 TANAKA Miyako, PhD:医学博士。名古屋大学環境医学研 究所分子代謝医学分野・助教。 菅波 孝祥 SUGANAMI Takayoshi, MD, PhD:医学博士。2011 年よ り東京医科歯科大学難治疾患研究所・准教授。2013 年より東京医 科歯科大学大学院医歯学総合研究科・特任教授、2015 年より名古 屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野・教授。糖尿病や肥満など の代謝性疾患の病態を慢性炎症という視点から解明する研究のほか、 医工連携による新規糖尿病治療戦略の開発にも取り組んでいる。 ご使用いただいた MACS 製品 gentleMACS™ Octo Dissociator with Heaters (オーダー番号 130-096-427Adipose Tissue Dissociation Kit(マウス,ラット)(オーダー番号 130-105-808• C Tubes(オーダー番号 130-093-237) • MiniMACSSeparator(オーダー番号 130-042-102) • ラージセルカラム(オーダー番号 130-042-202) • CD31 マイクロビーズ(マウス(オーダー番号 130-097-418) • CD45 マイクロビーズ(マウス(オーダー番号 130-052-301) • MACSQuant® Analyzer 10 メタボリックシンドロームでは、脂肪細胞とマクロファージが液性因子の産生を介して相互作用することにより脂肪組織の慢性炎症が増 悪するという負のスパイラルが生じ、それがさらには全身性のインスリン抵抗性や異所性脂肪蓄積の引き金となる。肥満の脂肪組織に 見られる特徴的な組織像(crown-like structure, CLS)では、脂肪細胞とマクロファージが近接してクロストークすることが知られている。 この分子メカニズムについて解析するため、脂肪細胞とマクロファージのin vitro 共培養系を確立し、マクロファージ選択的に発現誘導 される C 型レクチン Mincle に着目した。マクロファージにおいて Mincle が活性化すると脂肪組織の線維化が誘導され、インスリン抵 抗性や異所性脂肪蓄積がもたらされる。本稿では、我々の研究室で日常的に用いている脂肪組織の効率的な分散方法についても述べる。 菅波孝祥 名古屋大学 環境医学研究所 分子代謝医学分野 田 中  都

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Page 1: Miltenyi Biotec Report...5. Ichioka M, Suganami T, Tsuda N, et al.: ncreased expression of macrophage-induc-ible C-type lectin in adipose tissue of obese mice and humans. Diabetes

Miltenyi Biotec Report

NEX

www.miltenyibiotec.co.jp在庫・納期のお問い合せ

References 1. Ishikawa E, Ishikawa T, Morita YS, et al. : Direct recognition of the mycobacterial gly-

colipid, trehalose dimycolate, by C-type lectin Mincle. J Exp Med 2009; 206: 2879-28882

2. Yamasaki S, Matsumoto M, Takeuchi O, et al. : C-type lectin Mincle is an activating re-ceptor for pathogenic fungus, Malassezia. Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 1897-1902

3. Yamasaki S, Ishikawa E, Sakuma M, et al .: Mincle is an ITAM-coupled activating re-ceptor that senses damaged cells. Nat Immunol 2008; 9: 1179-1188

4. Tanaka M, Ikeda K, Suganami T, et al. : Macrophage-inducible C-type lectin underlies obesity-induced adipose tissue fibrosis. Nat Commun 2014; 5: 4982

5. Ichioka M, Suganami T, Tsuda N, et al. : ncreased expression of macrophage-induc-ible C-type lectin in adipose tissue of obese mice and humans. Diabetes 2011; 60: 819-826

種々のマクロファージ系細胞の分離に

autoMACS® Pro Separator

特にヒト、マウスでは、特定の組織から非標識のマクロファージを分離するキットや、種々の組織からポジティブセレクションするマイクロビーズがご利用いただけます。お好きな 1 次抗体での間接磁気標識による分離も可能です。 autoMACS® Pro Separator

マクロファージ系細胞のポジティブセレクションに

130-110-443 Anti-F4/80 マイクロビーズ UltraPure ( マウス )

130-096-354 CD115 マイクロビーズキット ( マウス )

130-049-601 CD11b マイクロビーズ ( ヒト , マウス )

130-093-634 CD11b (Microglia) マイクロビーズ ( ヒト , マウス )

130-050-201 CD14 マイクロビーズ ( ヒト )マクロファージ系細胞の非標識分離に

130-110-434 Macrophage アイソレーションキット (Peritoneum) ( マウス)

130-100-629 Monocyte アイソレーションキット (BM) ( マウス )

130-096-537 Pan Monocyte アイソレーションキット ( ヒト )

130-091-153 Monocyte アイソレーションキットⅡ ( ヒト )

組織からの間接標識分離におすすめの MicroBeads UltraPure

130-105-637 Anti-Biotin マイクロビーズ UltraPure

130-105-639 Anti-PE マイクロビーズ UltraPure

安定したマクロファージの分化・培養・活性化に サイトカイン(例)

M-CSF ( ヒト Res/Pre, マウス Res/Pre) IFN-g ( ヒト Res/Pre, マウス Res/Pre)

GM-CSF ( ヒト Res/Pre/GMP, マウス Res/Pre) IL-1b ( ヒト Res/Pre/GMP, マウス Res/Pre)

比活性が高く、低エンドトキシンのサイトカインをご利用いただけます。Research (Res), Premium (Pre), GMP の 3 種類のグレードを展開。Premium グレードは再構成後の生物活性 (IU) をロットごとにお知らせできます。

フローサイトメトリー解析に上清中のサイトカイン測定に MultiPlex

130-101-740 MACSPlex Cytokine 10 Kit( マウス)

マクロファージの染色に便利な抗体(例)

Anti-F4/80 抗体 (マウス) Anti-TNF-a 抗体(ヒト)(マウス)

Anti-CD11b 抗体(ヒト , マウス) CD14 抗体(ヒト)

CD68 抗体(ヒト)(マウス) CD115 抗体(マウス)

MACSQuant® Analyzer 10 MACSQuant® VYB

マルチパラメーター解析に強いMACSQuant® フローサイトメーター

MACSQuant® Analyzer 10 MACSQuant® VYB

弊社のリコンビナント抗体 REA は、FcR への非特異的結合がほとんどないため、マクロファージの解析に適しています。REA 抗体には現在700 以上のクローンがあり、今後もさらに拡充していく予定です。

MACS および autoMACS、MACSQuant は Miltenyi Biotec GmbH の登録商標です。また、gentleMACS は Miltenyi Biotec GmbH の商標です。特別な明示がない限り、Miltenyi Biotec 社の製品とサービスは研究目的のみに提供され、治療・診断・検査に用いることはできません。

肥満で生じる脂肪組織線維化は、マクロファージに発現する C 型レクチン Mincle により制御される

著者プロフィール

田中 都 TANAKA Miyako, PhD:医学博士。名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野・助教。

菅波 孝祥 SUGANAMI Takayoshi, MD, PhD:医学博士。2011 年より東京医科歯科大学難治疾患研究所・准教授。2013 年より東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・特任教授、2015 年より名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野・教授。糖尿病や肥満などの代謝性疾患の病態を慢性炎症という視点から解明する研究のほか、医工連携による新規糖尿病治療戦略の開発にも取り組んでいる。

ご使用いただいた MACS 製品

• gentleMACS™ Octo Dissociator with Heaters (オーダー番号 130-096-427)

• Adipose Tissue Dissociation Kit(マウス,ラット)(オーダー番号 130-105-808)

• C Tubes(オーダー番号 130-093-237)

• MiniMACS™ Separator(オーダー番号 130-042-102)

• ラージセルカラム(オーダー番号 130-042-202)

• CD31 マイクロビーズ(マウス)(オーダー番号 130-097-418)

• CD45 マイクロビーズ(マウス)(オーダー番号 130-052-301)

• MACSQuant® Analyzer 10

メタボリックシンドロームでは、脂肪細胞とマクロファージが液性因子の産生を介して相互作用することにより脂肪組織の慢性炎症が増

悪するという負のスパイラルが生じ、それがさらには全身性のインスリン抵抗性や異所性脂肪蓄積の引き金となる。肥満の脂肪組織に

見られる特徴的な組織像(crown-like structure, CLS)では、脂肪細胞とマクロファージが近接してクロストークすることが知られている。

この分子メカニズムについて解析するため、脂肪細胞とマクロファージのin vitro 共培養系を確立し、マクロファージ選択的に発現誘導

される C 型レクチン Mincle に着目した。マクロファージにおいて Mincle が活性化すると脂肪組織の線維化が誘導され、インスリン抵

抗性や異所性脂肪蓄積がもたらされる。本稿では、我々の研究室で日常的に用いている脂肪組織の効率的な分散方法についても述べる。

菅 波 孝 祥名古屋大学 環境医学研究所 分子代謝医学分野

田 中  都

製品の詳細およびフルラインナップは WEB でご確認ください。 ミルテニー

完全自動化が可能な再現性の高い組織分散が可能な酵素キット(例)

130-095-927 Lung Dissociation Kit(マウス)

130-097-410 Lamina Propria Dissociation Kit(マウス)

130-105-808 Adipose Tissue Dissociation Kit(マウス、ラット)

確実・簡単なサンプル調製に

組 織 か ら 生 存 率 の高 い 単 細 胞 懸 濁 液の 調 製 に も ホ モジ ネ ー ト の 調 製に も 使 用 で き るDissociators です。gentleMACS™ Octo

Dissociator with HeatersMACS SmartStrainersporesize 30, 70, 100 µm

ディソシエーター&ホモジナイザー15 & 50 ml チューブにフィットナイロンメッシュフィルター

採取した組織の短期保存に

130-100-008 MACS Tissue Storage Solution

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肥満で生じる脂肪組織線維化は、マクロファージに発現する C型レクチンMincle により制御される

Miltenyi Biotec Report

Figure 3. M i n c l e 刺 激 に よ り 筋 線 維 芽 細 胞 が 増 加 す る脂肪組織 SVF の線維芽細胞濃縮フラクションと、腹腔滲出マクロファージの共培養系を模式的に示した。共培養 3,5,7 日後のacta2 (a-SMA) およびCol1a1 (collagen I) mRNA 発現を real-time PCR にて調べた。** P<0.01

遺伝的肥満ob/ob マウス脂肪組織

CollagenaseDigestion

軽く切断してC-tube へ

共培養・TDM 刺激 線維化の指標となる mRNA 発現解析SVF の調製脂肪組織の採取・分散

コントロール

SVF 線維芽細胞の濃縮

TDM コーティング

脂肪細胞

SVF

CD31 マイクロビーズCD45 マイクロビーズによる直接標識

細胞分離:内皮細胞と白血球のディプリーション

マウスより腹腔滲出マクロファージ採取

BV421-F4/80

APC/

Cy7-

CD11

b

FITC-CD45

SSC-

A

MACSQuant Analyzer 10による SVF 表面抗原の解析

マウス脂肪組織

Adipose Tissue Dissociation Kit

gentleMACS Dissociator with Heaters にて分散

遠心して上清を除く

脂肪細胞

SVF

- -

Figure 1. CLS における Mincle 発現細胞のin situ Hybridization高脂肪食を継続的に与えて肥満を誘導した野生型マウスの脂肪組織をパラフィン包埋し、Mincle mRNA の発現を調べた。肥満の脂肪組織に特徴的な CLS(Crown-like structure, 脂肪細胞の周囲の王冠様構造)に▲印で示した Mincle 発現細胞が見られる。Scale bar: 25 µm

Figure 2. 肥満における組織線維化と Mincle の意義

肥満の脂肪組織において、Mincle は CLS を構成する M1 マクロファージ選択的に発現する。Mincle の内因性リガンドは、肥満の過程で代謝ストレスにより細胞死に陥った脂肪細胞に由来すると想定される。Mincle が活性化すると脂肪組織の線維化を惹起し、脂肪蓄積能が障害されて肝臓に異所性脂肪として蓄積する。

Introduction過去の数多くの報告において、「肥満の脂肪組織では慢性炎症が起きている」ことが示されてきた。他の慢性炎症性疾患と同様に、肥満の脂肪組織が線維化を呈することも驚くに当たらない。組織学的には、肥満の脂肪組織にはその初期より特徴的な CLS と呼ばれる構造が見られ、これは細胞死に陥った脂肪細胞を M1 マクロファージが取り囲み貪食する構造と考えられている(Figure 1)。一方、Macrophage-inducible C-type lectin (Mincle) は、LPS 刺激によりマクロファージに発現する Ca2+- 依存型レクチンであり、最近になって結核菌糖脂質 trehalose-6,6’-dimycolate (TDM) や病原性真菌の構成成分を認識して炎症性サイトカインやケモカインの産生を誘導することが報告された 1,2 )。さらに、病原体センサーとしてだけでなく、細胞死に対するセンサーとしても働くことが報告されている 3 )。しかしながら、Mincle の非感染性炎症における意義は全く不明であった。我々の研究室において、この “Mincle” が脂肪組織 CLS のマクロファージに発現すること、また CLS の形成のみならず組織線維化に関与する遺伝子の発現にも必須であることを見出した。さらに、Mincle ノックアウトマウスでは、脂肪組織の線維化が抑制され、脂肪肝やインスリン抵抗性も改善されるのに対し、TDM によりMincle を刺激したマウスでは、CLS の形成や脂肪組織の線維化が誘導されることを明らかにした 4,5 )。即ち、肥満の脂肪組織において、CLS は脂肪細胞とマクロファージの相互作用の場であり、脂肪細胞の細胞死を起点として Mincle が活性化することにより脂肪組織の線維化がもたらされる(Figure 2)。本稿では、脂肪組織の間質細胞とマクロファージのin vitro 共培養系、および、簡単で再現性の高い脂肪組織の分散方法の確立と得られた細胞のフローサイトメトリー解析について詳述する。

Materials & Methods脂肪組織本稿においては、特に明示しない限り「脂肪組織」は精巣上体脂肪組織を用いている。精巣上体脂肪組織は、最も良く解析されている腹腔内脂肪組織である。

TDM によるマクロファージ刺激TDM はクロロホルムに溶解し、1 mg/ml に調製した。用時イソプロパノールで希釈して、5 µg/well (12-well plate) もしくは 1.25 µg/well (48-well plate) となるよう培養プレートに添加し、溶媒を蒸発させることによって固層化した。この TDM 固層化プレートに、MACS 分離した脂肪組織 SVF 由来の CD31 CD45 細胞(1 × 105 cells/well)と腹腔滲出マクロファージ(5 × 104 cells/well)を蒔いて共培養し、3, 5, 7 日後に total RNA を抽出した。

定量的 Real-time PCR培 養 細 胞 から Sepasol reagent を 用 いて total RNA を 抽 出し、SYBER GREEN 検出プロトコールで定量的 real-time PCR を行った

(StepOne Plus, Applied Biosystems)。データは、36B4 レ ベルで補正し、comparative CT method を用いて解析した。

in situ Hybridization脂肪組織のパラフィン包埋ブロックを 8 µm 厚の切片にした。この切片を 4% パラホルムアルデヒドで 15 分間固定し、8 mg/ml pro-teinase K で 37℃ 30 分間処理した後、再度 4% パラホルムアルデヒドで固定し、アセチル化処理を行った。300 ng/ml probe で60℃ 16 時間ハイブリダイゼーションを行い、anti-DIG AP (Roche)にて標識し NBT/BCIP 溶液 (Roche) にて発色した。

Results & Discussion脂肪組織の間質細胞とマクロファージの in vitro 共培養系における解析種々の臓器において、活性化線維芽細胞(筋線維芽細胞)が組織線維化に中心的な役割を果たす。マクロファージに発現する Min-cle の活性化が脂肪組織の線維芽細胞に及ぼす影響を検討するため、in vitro 共培養系を確立した(Figure 3)。脂肪組織を酵素処理して分散した後に遠心すると、脂肪滴を含んで比重の軽い脂肪細胞とその他の間質血管細胞画分 (Stromal-vascular fraction, SVF) に分けることができる。遺伝性肥満ob/ob マウスより調製した SVF を CD31 マイクロビーズと CD45 マイクロビーズで同時に標識し、ラージセルカラムを通すことによって内皮細胞や白血球を除去した CD31-CD45- 細胞を得た。この CD31-CD45- 細胞には線維芽細胞が濃縮されていることを確認している (data not shown)。チオグリコレート培地誘導腹腔滲出マクロファージを用いて、マクロファージと CD31-CD45- 細胞との共培養を、Mincle 特異的刺激

分子である TDM 固層化プレートもしくはコントロールプレートにて行い、total RNA を抽出して線維化に関与する mRNA を real-time PCR にて定量した。培養 5 日目にはacta2 (αSMA, 筋線維芽細胞マーカー ) mRNA が、7 日目にはCol1a1 (collagen I) mRNA 発現が TDM 刺激群において有意に高くなっていた(Figure 3)。この結果は、論文 4 ) に記載の他の結果と合わせ、脂肪組織においてはマクロファージの Mincle 活性化により線維化に重要な筋線維芽細胞の数が増えることを強く示唆している。

Conclusion 肥満の脂肪組織において、CLS はマクロファージと組織の実質細胞の相互作用の場であり、Mincle シグナルが活性化することにより組織線維化の起点となる。「慢性炎症」は、種々の慢性疾患に共通の基盤病態であるため、その分子メカニズムが明らかになれば多くの疾患の病態生理の理解や新しい治療法の開発が可能になると期待される。

Cont Cont ContTDM TDM TDMDay 3 Day 5 Day 7

Cont Cont ContTDM TDM TDMDay 3 Day 5 Day 7

****

**

**

Acta2

Col1a1

0

1

4

2

3

5

0

1

4

2

3

5

mRN

A le

vels

(a.u

.)m

RNA

leve

ls (a

.u.)

試薬1. Adipose Tissue Dissociation Kit ( マウス、ラット )

2. 10 mM HEPES, 1% BSA/HBSS(+)

脂肪組織の分散と SVF 細胞表現型の解析

脂肪組織に限らず、生体由来サンプルを使用した実験で再現性の高い結果を得るには、サンプル調製に気を配る必要がある。現在、我々の研究室において採用している脂肪組織 SVF の調製方法を以下に紹介する。

プロトコール1. マウスより得た脂肪組織を軽く切断し、調製した buffer を 2 ml 入

れた C-tube に入れる

2. gentleMACS Octo Dissociator with Heaters のプログラム「37C_ATDK_2」で mixing 終了後、abort して buffer 3 ml を添加し、再度「37C_ATDK_2」を実施する

3. Buffer を 10 ml 添加し,180 µm のメッシュフィルターを通す

4. 300×g,4℃,10 分で遠心し、上清を除き、溶血処理後、70 µm のフィルターを通す

in situ hybridization

野生型マウス

高脂肪食負荷

肥満マウス 脂肪組織

: Mincle 陽性細胞

肥満末梢血単球

M1マクロファージ

線維芽細胞増殖・活性化

死細胞

細胞外マトリクス

Mincle死細胞に由来する内因性リガンド?

CLS

線維化 脂肪蓄積能の低下

遊離脂肪酸

脂肪肝インスリン抵抗性

CLS

CD11

b-AP

C/Cy

7

CD45-FITC F4/80-BV421

26.5%

SSC-

A 55.8%

CD45 陽性細胞にゲートをかけ、F4/80 と CD11b にて展開

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肥満で生じる脂肪組織線維化は、マクロファージに発現する C型レクチンMincle により制御される

Miltenyi Biotec Report

Figure 3. M i n c l e 刺 激 に よ り 筋 線 維 芽 細 胞 が 増 加 す る脂肪組織 SVF の線維芽細胞濃縮フラクションと、腹腔滲出マクロファージの共培養系を模式的に示した。共培養 3,5,7 日後のacta2 (a-SMA) およびCol1a1 (collagen I) mRNA 発現を real-time PCR にて調べた。** P<0.01

遺伝的肥満ob/ob マウス脂肪組織

CollagenaseDigestion

軽く切断してC-tube へ

共培養・TDM 刺激 線維化の指標となる mRNA 発現解析SVF の調製脂肪組織の採取・分散

コントロール

SVF 線維芽細胞の濃縮

TDM コーティング

脂肪細胞

SVF

CD31 マイクロビーズCD45 マイクロビーズによる直接標識

細胞分離:内皮細胞と白血球のディプリーション

マウスより腹腔滲出マクロファージ採取

BV421-F4/80

APC/

Cy7-

CD11

b

FITC-CD45

SSC-

A

MACSQuant Analyzer 10による SVF 表面抗原の解析

マウス脂肪組織

Adipose Tissue Dissociation Kit

gentleMACS Dissociator with Heaters にて分散

遠心して上清を除く

脂肪細胞

SVF

- -

Figure 1. CLS における Mincle 発現細胞のin situ Hybridization高脂肪食を継続的に与えて肥満を誘導した野生型マウスの脂肪組織をパラフィン包埋し、Mincle mRNA の発現を調べた。肥満の脂肪組織に特徴的な CLS(Crown-like structure, 脂肪細胞の周囲の王冠様構造)に▲印で示した Mincle 発現細胞が見られる。Scale bar: 25 µm

Figure 2. 肥満における組織線維化と Mincle の意義

肥満の脂肪組織において、Mincle は CLS を構成する M1 マクロファージ選択的に発現する。Mincle の内因性リガンドは、肥満の過程で代謝ストレスにより細胞死に陥った脂肪細胞に由来すると想定される。Mincle が活性化すると脂肪組織の線維化を惹起し、脂肪蓄積能が障害されて肝臓に異所性脂肪として蓄積する。

Introduction過去の数多くの報告において、「肥満の脂肪組織では慢性炎症が起きている」ことが示されてきた。他の慢性炎症性疾患と同様に、肥満の脂肪組織が線維化を呈することも驚くに当たらない。組織学的には、肥満の脂肪組織にはその初期より特徴的な CLS と呼ばれる構造が見られ、これは細胞死に陥った脂肪細胞を M1 マクロファージが取り囲み貪食する構造と考えられている(Figure 1)。一方、Macrophage-inducible C-type lectin (Mincle) は、LPS 刺激によりマクロファージに発現する Ca2+- 依存型レクチンであり、最近になって結核菌糖脂質 trehalose-6,6’-dimycolate (TDM) や病原性真菌の構成成分を認識して炎症性サイトカインやケモカインの産生を誘導することが報告された 1,2 )。さらに、病原体センサーとしてだけでなく、細胞死に対するセンサーとしても働くことが報告されている 3 )。しかしながら、Mincle の非感染性炎症における意義は全く不明であった。我々の研究室において、この “Mincle” が脂肪組織 CLS のマクロファージに発現すること、また CLS の形成のみならず組織線維化に関与する遺伝子の発現にも必須であることを見出した。さらに、Mincle ノックアウトマウスでは、脂肪組織の線維化が抑制され、脂肪肝やインスリン抵抗性も改善されるのに対し、TDM によりMincle を刺激したマウスでは、CLS の形成や脂肪組織の線維化が誘導されることを明らかにした 4,5 )。即ち、肥満の脂肪組織において、CLS は脂肪細胞とマクロファージの相互作用の場であり、脂肪細胞の細胞死を起点として Mincle が活性化することにより脂肪組織の線維化がもたらされる(Figure 2)。本稿では、脂肪組織の間質細胞とマクロファージのin vitro 共培養系、および、簡単で再現性の高い脂肪組織の分散方法の確立と得られた細胞のフローサイトメトリー解析について詳述する。

Materials & Methods脂肪組織本稿においては、特に明示しない限り「脂肪組織」は精巣上体脂肪組織を用いている。精巣上体脂肪組織は、最も良く解析されている腹腔内脂肪組織である。

TDM によるマクロファージ刺激TDM はクロロホルムに溶解し、1 mg/ml に調製した。用時イソプロパノールで希釈して、5 µg/well (12-well plate) もしくは 1.25 µg/well (48-well plate) となるよう培養プレートに添加し、溶媒を蒸発させることによって固層化した。この TDM 固層化プレートに、MACS 分離した脂肪組織 SVF 由来の CD31 CD45 細胞(1 × 105 cells/well)と腹腔滲出マクロファージ(5 × 104 cells/well)を蒔いて共培養し、3, 5, 7 日後に total RNA を抽出した。

定量的 Real-time PCR培 養 細 胞 から Sepasol reagent を 用 いて total RNA を 抽 出し、SYBER GREEN 検出プロトコールで定量的 real-time PCR を行った

(StepOne Plus, Applied Biosystems)。データは、36B4 レ ベルで補正し、comparative CT method を用いて解析した。

in situ Hybridization脂肪組織のパラフィン包埋ブロックを 8 µm 厚の切片にした。この切片を 4% パラホルムアルデヒドで 15 分間固定し、8 mg/ml pro-teinase K で 37℃ 30 分間処理した後、再度 4% パラホルムアルデヒドで固定し、アセチル化処理を行った。300 ng/ml probe で60℃ 16 時間ハイブリダイゼーションを行い、anti-DIG AP (Roche)にて標識し NBT/BCIP 溶液 (Roche) にて発色した。

Results & Discussion脂肪組織の間質細胞とマクロファージの in vitro 共培養系における解析種々の臓器において、活性化線維芽細胞(筋線維芽細胞)が組織線維化に中心的な役割を果たす。マクロファージに発現する Min-cle の活性化が脂肪組織の線維芽細胞に及ぼす影響を検討するため、in vitro 共培養系を確立した(Figure 3)。脂肪組織を酵素処理して分散した後に遠心すると、脂肪滴を含んで比重の軽い脂肪細胞とその他の間質血管細胞画分 (Stromal-vascular fraction, SVF) に分けることができる。遺伝性肥満ob/ob マウスより調製した SVF を CD31 マイクロビーズと CD45 マイクロビーズで同時に標識し、ラージセルカラムを通すことによって内皮細胞や白血球を除去した CD31-CD45- 細胞を得た。この CD31-CD45- 細胞には線維芽細胞が濃縮されていることを確認している (data not shown)。チオグリコレート培地誘導腹腔滲出マクロファージを用いて、マクロファージと CD31-CD45- 細胞との共培養を、Mincle 特異的刺激

分子である TDM 固層化プレートもしくはコントロールプレートにて行い、total RNA を抽出して線維化に関与する mRNA を real-time PCR にて定量した。培養 5 日目にはacta2 (αSMA, 筋線維芽細胞マーカー ) mRNA が、7 日目にはCol1a1 (collagen I) mRNA 発現が TDM 刺激群において有意に高くなっていた(Figure 3)。この結果は、論文 4 ) に記載の他の結果と合わせ、脂肪組織においてはマクロファージの Mincle 活性化により線維化に重要な筋線維芽細胞の数が増えることを強く示唆している。

Conclusion 肥満の脂肪組織において、CLS はマクロファージと組織の実質細胞の相互作用の場であり、Mincle シグナルが活性化することにより組織線維化の起点となる。「慢性炎症」は、種々の慢性疾患に共通の基盤病態であるため、その分子メカニズムが明らかになれば多くの疾患の病態生理の理解や新しい治療法の開発が可能になると期待される。

Cont Cont ContTDM TDM TDMDay 3 Day 5 Day 7

Cont Cont ContTDM TDM TDMDay 3 Day 5 Day 7

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**

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Acta2

Col1a1

0

1

4

2

3

5

0

1

4

2

3

5

mRN

A le

vels

(a.u

.)m

RNA

leve

ls (a

.u.)

試薬1. Adipose Tissue Dissociation Kit ( マウス、ラット )

2. 10 mM HEPES, 1% BSA/HBSS(+)

脂肪組織の分散と SVF 細胞表現型の解析

脂肪組織に限らず、生体由来サンプルを使用した実験で再現性の高い結果を得るには、サンプル調製に気を配る必要がある。現在、我々の研究室において採用している脂肪組織 SVF の調製方法を以下に紹介する。

プロトコール1. マウスより得た脂肪組織を軽く切断し、調製した buffer を 2 ml 入

れた C-tube に入れる

2. gentleMACS Octo Dissociator with Heaters のプログラム「37C_ATDK_2」で mixing 終了後、abort して buffer 3 ml を添加し、再度「37C_ATDK_2」を実施する

3. Buffer を 10 ml 添加し,180 µm のメッシュフィルターを通す

4. 300×g,4℃,10 分で遠心し、上清を除き、溶血処理後、70 µm のフィルターを通す

in situ hybridization

野生型マウス

高脂肪食負荷

肥満マウス 脂肪組織

: Mincle 陽性細胞

肥満末梢血単球

M1マクロファージ

線維芽細胞増殖・活性化

死細胞

細胞外マトリクス

Mincle死細胞に由来する内因性リガンド?

CLS

線維化 脂肪蓄積能の低下

遊離脂肪酸

脂肪肝インスリン抵抗性

CLS

CD11

b-AP

C/Cy

7

CD45-FITC F4/80-BV421

26.5%

SSC-

A 55.8%

CD45 陽性細胞にゲートをかけ、F4/80 と CD11b にて展開

Page 4: Miltenyi Biotec Report...5. Ichioka M, Suganami T, Tsuda N, et al.: ncreased expression of macrophage-induc-ible C-type lectin in adipose tissue of obese mice and humans. Diabetes

Miltenyi Biotec Report

NEX

www.miltenyibiotec.co.jp在庫・納期のお問い合せ

References 1. Ishikawa E, Ishikawa T, Morita YS, et al. : Direct recognition of the mycobacterial gly-

colipid, trehalose dimycolate, by C-type lectin Mincle. J Exp Med 2009; 206: 2879-28882

2. Yamasaki S, Matsumoto M, Takeuchi O, et al. : C-type lectin Mincle is an activating re-ceptor for pathogenic fungus, Malassezia. Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 1897-1902

3. Yamasaki S, Ishikawa E, Sakuma M, et al .: Mincle is an ITAM-coupled activating re-ceptor that senses damaged cells. Nat Immunol 2008; 9: 1179-1188

4. Tanaka M, Ikeda K, Suganami T, et al. : Macrophage-inducible C-type lectin underlies obesity-induced adipose tissue fibrosis. Nat Commun 2014; 5: 4982

5. Ichioka M, Suganami T, Tsuda N, et al. : ncreased expression of macrophage-induc-ible C-type lectin in adipose tissue of obese mice and humans. Diabetes 2011; 60: 819-826

種々のマクロファージ系細胞の分離に

autoMACS® Pro Separator

特にヒト、マウスでは、特定の組織から非標識のマクロファージを分離するキットや、種々の組織からポジティブセレクションするマイクロビーズがご利用いただけます。お好きな 1 次抗体での間接磁気標識による分離も可能です。 autoMACS® Pro Separator

マクロファージ系細胞のポジティブセレクションに

130-110-443 Anti-F4/80 マイクロビーズ UltraPure ( マウス )

130-096-354 CD115 マイクロビーズキット ( マウス )

130-049-601 CD11b マイクロビーズ ( ヒト , マウス )

130-093-634 CD11b (Microglia) マイクロビーズ ( ヒト , マウス )

130-050-201 CD14 マイクロビーズ ( ヒト )マクロファージ系細胞の非標識分離に

130-110-434 Macrophage アイソレーションキット (Peritoneum) ( マウス)

130-100-629 Monocyte アイソレーションキット (BM) ( マウス )

130-096-537 Pan Monocyte アイソレーションキット ( ヒト )

130-091-153 Monocyte アイソレーションキットⅡ ( ヒト )

組織からの間接標識分離におすすめの MicroBeads UltraPure

130-105-637 Anti-Biotin マイクロビーズ UltraPure

130-105-639 Anti-PE マイクロビーズ UltraPure

安定したマクロファージの分化・培養・活性化に サイトカイン(例)

M-CSF ( ヒト Res/Pre, マウス Res/Pre) IFN-g ( ヒト Res/Pre, マウス Res/Pre)

GM-CSF ( ヒト Res/Pre/GMP, マウス Res/Pre) IL-1b ( ヒト Res/Pre/GMP, マウス Res/Pre)

比活性が高く、低エンドトキシンのサイトカインをご利用いただけます。Research (Res), Premium (Pre), GMP の 3 種類のグレードを展開。Premium グレードは再構成後の生物活性 (IU) をロットごとにお知らせできます。

フローサイトメトリー解析に上清中のサイトカイン測定に MultiPlex

130-101-740 MACSPlex Cytokine 10 Kit( マウス)

マクロファージの染色に便利な抗体(例)

Anti-F4/80 抗体 (マウス) Anti-TNF-a 抗体(ヒト)(マウス)

Anti-CD11b 抗体(ヒト , マウス) CD14 抗体(ヒト)

CD68 抗体(ヒト)(マウス) CD115 抗体(マウス)

MACSQuant® Analyzer 10 MACSQuant® VYB

マルチパラメーター解析に強いMACSQuant® フローサイトメーター

MACSQuant® Analyzer 10 MACSQuant® VYB

弊社のリコンビナント抗体 REA は、FcR への非特異的結合がほとんどないため、マクロファージの解析に適しています。REA 抗体には現在700 以上のクローンがあり、今後もさらに拡充していく予定です。

MACS および autoMACS、MACSQuant は Miltenyi Biotec GmbH の登録商標です。また、gentleMACS は Miltenyi Biotec GmbH の商標です。特別な明示がない限り、Miltenyi Biotec 社の製品とサービスは研究目的のみに提供され、治療・診断・検査に用いることはできません。

肥満で生じる脂肪組織線維化は、マクロファージに発現する C 型レクチン Mincle により制御される

著者プロフィール

田中 都 TANAKA Miyako, PhD:医学博士。名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野・助教。

菅波 孝祥 SUGANAMI Takayoshi, MD, PhD:医学博士。2011 年より東京医科歯科大学難治疾患研究所・准教授。2013 年より東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・特任教授、2015 年より名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野・教授。糖尿病や肥満などの代謝性疾患の病態を慢性炎症という視点から解明する研究のほか、医工連携による新規糖尿病治療戦略の開発にも取り組んでいる。

ご使用いただいた MACS 製品

• gentleMACS™ Octo Dissociator with Heaters (オーダー番号 130-096-427)

• Adipose Tissue Dissociation Kit(マウス,ラット)(オーダー番号 130-105-808)

• C Tubes(オーダー番号 130-093-237)

• MiniMACS™ Separator(オーダー番号 130-042-102)

• ラージセルカラム(オーダー番号 130-042-202)

• CD31 マイクロビーズ(マウス)(オーダー番号 130-097-418)

• CD45 マイクロビーズ(マウス)(オーダー番号 130-052-301)

• MACSQuant® Analyzer 10

メタボリックシンドロームでは、脂肪細胞とマクロファージが液性因子の産生を介して相互作用することにより脂肪組織の慢性炎症が増

悪するという負のスパイラルが生じ、それがさらには全身性のインスリン抵抗性や異所性脂肪蓄積の引き金となる。肥満の脂肪組織に

見られる特徴的な組織像(crown-like structure, CLS)では、脂肪細胞とマクロファージが近接してクロストークすることが知られている。

この分子メカニズムについて解析するため、脂肪細胞とマクロファージのin vitro 共培養系を確立し、マクロファージ選択的に発現誘導

される C 型レクチン Mincle に着目した。マクロファージにおいて Mincle が活性化すると脂肪組織の線維化が誘導され、インスリン抵

抗性や異所性脂肪蓄積がもたらされる。本稿では、我々の研究室で日常的に用いている脂肪組織の効率的な分散方法についても述べる。

菅 波 孝 祥名古屋大学 環境医学研究所 分子代謝医学分野

田 中  都

製品の詳細およびフルラインナップは WEB でご確認ください。 ミルテニー

完全自動化が可能な再現性の高い組織分散が可能な酵素キット(例)

130-095-927 Lung Dissociation Kit(マウス)

130-097-410 Lamina Propria Dissociation Kit(マウス)

130-105-808 Adipose Tissue Dissociation Kit(マウス、ラット)

確実・簡単なサンプル調製に

組 織 か ら 生 存 率 の高 い 単 細 胞 懸 濁 液の 調 製 に も ホ モジ ネ ー ト の 調 製に も 使 用 で き るDissociators です。gentleMACS™ Octo

Dissociator with HeatersMACS SmartStrainersporesize 30, 70, 100 µm

ディソシエーター&ホモジナイザー15 & 50 ml チューブにフィットナイロンメッシュフィルター

採取した組織の短期保存に

130-100-008 MACS Tissue Storage Solution