令和3年 新年を迎えて...2021/01/01  · vol.27no.1 会報jamt ホームページ掲載...

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P1 令和3年 新年を迎えて P2~P4 PCR検査拡充に向けた各地での取組 [三重県][富山県] Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和311日号 深澤恵治 https://www.jamt.or.jp 会員の皆様に対し、謹んで新春のお慶びを申し上げます。 昨年は、新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行となり、8,000万人を超える 感染者が発生し、社会・経済活動にも甚大な影響を及ぼす事態となりました。我が 国では欧米などの主要国に比べ、流行の規模は極めて小さいものの予断を許さない 状況が現在も続いています。 一日も早いワクチン接種など感染予防対策の確立が望まれますが、この間、保健所・検疫所・医療機 関・検査機関などで、検体採取やPCR検査などに従事した会員皆様に深く敬意と感謝を申し上げます。 今回の新型コロナウイルス感染症の流行に関して、昨年2月に厚生労働省から当会に支援要請を受け て以来、何度も検体採取やPCR検査など、現場で臨床検査技師が活躍できるような体制づくりを政府・ 与党に要請してきました。 その結果、都道府県などへの新型コロナウイルス感染対策に関する臨時交付金など政府の財政出動 で、全国各地の官民の医療・検査機関に検査機器などの配備が進み、従事者である臨床検査技師の研修 も進んでいます。 また、PCR検査など病原体検査の重要性とそこで働く臨床検査技師の姿もクローズアップされ、社会 的な認知度も高まりました。改めて、都道府県技師会及び関係者の皆様に御礼申し上げます。 さて、我が国は中長期的な課題である少子高齢化の進行、人口減少など、今回の新型コロナウイルス 感染症拡大が拍車をかける様相となっています。まさに我が国は今までに経験したことのない国難と直 面しており、全世代型社会保障制度改革として「人づくり革命」「働き方改革」を着実に推進していか なければなりません。 今年は医療保険制度改革や医療提供体制の見直し、医師の働き方改革を実践するための作業が進んで います。臨床検査技師についてもタスクシフト・シェアでは8行為の法改正が予定されているととも に、臨床検査技師卒前教育の改正も見込まれています。 この動きを受けて、当会においては、厚生労働省と連携する中で既卒者の講習など一層の卒後教育研 修の充実を図って参ります。 また、昨年、中止や延期した当会の事業については、感染状況を鑑み再開し、ウィズ・コロナ時代に 相応しい「新たな生活様式」に基づいたオンラインでの研修会や会議なども採用して開催して参りま す。 本年も臨床検査技師の職域拡大と地位の向上を目指して厚生労働省を始め関係学会と迅速且つ緊密な 連携を図るなど職能団体として責任を持って果たし「日臨技を新生させ未来を拓く」をスローガンに、 昨年同様に役員共々、誠心誠意、各種事業の遂行に努めてまいりますので、会員の皆様の温かいご支援 と一層のご協力を賜りたくお願い申し上げます。 令和3年 元旦 代表理事会長 宮島 喜文 他 役員一同 令和3年 新年を迎えて

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Page 1: 令和3年 新年を迎えて...2021/01/01  · Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号 新型コロナウイルスの全国新規感染者が過去最多

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P1 令和3年 新年を迎えて

P2~P4 PCR検査拡充に向けた各地での取組 [三重県][富山県]

Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号

深澤恵治

https://www.jamt.or.jp

会員の皆様に対し、謹んで新春のお慶びを申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行となり、8,000万人を超える

感染者が発生し、社会・経済活動にも甚大な影響を及ぼす事態となりました。我が

国では欧米などの主要国に比べ、流行の規模は極めて小さいものの予断を許さない

状況が現在も続いています。

一日も早いワクチン接種など感染予防対策の確立が望まれますが、この間、保健所・検疫所・医療機

関・検査機関などで、検体採取やPCR検査などに従事した会員皆様に深く敬意と感謝を申し上げます。

今回の新型コロナウイルス感染症の流行に関して、昨年2月に厚生労働省から当会に支援要請を受け

て以来、何度も検体採取やPCR検査など、現場で臨床検査技師が活躍できるような体制づくりを政府・

与党に要請してきました。

その結果、都道府県などへの新型コロナウイルス感染対策に関する臨時交付金など政府の財政出動

で、全国各地の官民の医療・検査機関に検査機器などの配備が進み、従事者である臨床検査技師の研修

も進んでいます。

また、PCR検査など病原体検査の重要性とそこで働く臨床検査技師の姿もクローズアップされ、社会

的な認知度も高まりました。改めて、都道府県技師会及び関係者の皆様に御礼申し上げます。

さて、我が国は中長期的な課題である少子高齢化の進行、人口減少など、今回の新型コロナウイルス

感染症拡大が拍車をかける様相となっています。まさに我が国は今までに経験したことのない国難と直

面しており、全世代型社会保障制度改革として「人づくり革命」「働き方改革」を着実に推進していか

なければなりません。

今年は医療保険制度改革や医療提供体制の見直し、医師の働き方改革を実践するための作業が進んで

います。臨床検査技師についてもタスクシフト・シェアでは8行為の法改正が予定されているととも

に、臨床検査技師卒前教育の改正も見込まれています。

この動きを受けて、当会においては、厚生労働省と連携する中で既卒者の講習など一層の卒後教育研

修の充実を図って参ります。

また、昨年、中止や延期した当会の事業については、感染状況を鑑み再開し、ウィズ・コロナ時代に

相応しい「新たな生活様式」に基づいたオンラインでの研修会や会議なども採用して開催して参りま

す。

本年も臨床検査技師の職域拡大と地位の向上を目指して厚生労働省を始め関係学会と迅速且つ緊密な

連携を図るなど職能団体として責任を持って果たし「日臨技を新生させ未来を拓く」をスローガンに、

昨年同様に役員共々、誠心誠意、各種事業の遂行に努めてまいりますので、会員の皆様の温かいご支援

と一層のご協力を賜りたくお願い申し上げます。

令和3年 元旦

代表理事会長 宮島 喜文

他 役員一同

令和3年 新年を迎えて

Page 2: 令和3年 新年を迎えて...2021/01/01  · Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号 新型コロナウイルスの全国新規感染者が過去最多

~ 『新型コロナウイルス感染症の診断を

目的としたPCR検査において採取した

検体の検査手技の研修』を終えて ~

三重県臨床検査技師会 政策的理事 小林 千明

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりPCR検査等の検査体制の強化、拡充が求められています。そ

のような要請に応えるため、各都道府県技師会でも自治体・行政と連携して検査体制の強化、情報共有に

取り組んでいます。都道府県技師会での好事例を紹介しています。

Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号

新型コロナウイルスの全国新規感染者が過去最多

を更新し、第3波への突入が危惧されつつあった11月

15日に三重大学医学部附属病院にてPCR実技研修会を

開催しました。この研修会は三重県での新型コロナウ

イルス検査体制拡充を目的として、三重県から委託を

受けて計画しました。WEBによる核酸増幅検査(PCR

等)基礎研修会修了者93名に対し、当初は県内技師か

ら35名以上の申し込みがありましたが感染対策を考慮

し、参加は定員14名(午前7名、午後7名)を限定と

して研修を実施しました。

まず、山本会長の挨拶に始まり、行政担当者の挨拶

として三重県医療保健部薬務感染症対策課 中村昌司

課長より日頃のCOVID-19対応の感謝の意と県の検査体

制の充実へのお願いがありました。次に池尻誠技師よ

りスライドを用いてCOVID-19の遺伝子検査の基礎につ

いて約40分間講義が行われました。その後、遺伝子検

査室に移動し、前処理不要な方法でRT-PCRの実習を行

い、試薬調整、核酸抽出、増幅工程、結果判定の見方

などを実際に体験し学ぶことができました。実際に

PCRを行っている検査室内でコンタミを防ぐための注

意点、エリア分けの重要性、安全キャビネットの使い

方、機器の保守管理などPCR検査を安全に精度よく行

うための作業手順を動線も含め学習しました。また、

結果の待ち時間を利用し、感染防御に必要なPPEの着

脱や検体採取の方法・検体保存の講義があり、また

ディスカッションの機会を設け、各施設の検査の運用

や導入に向けての疑問点など活発な討議が繰り広げら

れました。

11月の三臨技でのアンケート調査では県内92施設

中18施設がすでにPCR検査を実施しており抗原検査・

LAMP法などを含めると55施設が検査を行っています。

今回の参加者の施設はPCR検査の導入が間近であった

り、検討中である施設が多く、今回の研修でPCR検査

の一連の流れを一人一人が実践でき、導入に向けて不

安が払拭できたり、自信がついたとの声が聞かれ小規

模ながら充実した研修会であったと思います。これを

機会に三重県内の多くの施設でPCR検査が導入され検

査拡充が進むこと望みます。最後に研修会開催にご尽

力賜った三重大学医学部附属病院の皆様、会長、副会

長、理事の方々にお礼申し上げます。

写真左:一人一人が

プレートへのサンプ

リングを実践

写真右:PCR分析装置へ

セット

【研修スケジュール】

1)オリエンテーション 会長挨拶 行政挨拶

2)新型コロナウイルスに関する遺伝子検査の基礎につ

いて

3) 個人防護具の正しい着脱方法

4) 検体の採取と保存方法

5)RT-PCRの実際

・材料、機器、器具および試薬、操作上の注意点など

・核酸増幅検査、安全キャビネットの使用方法

・遺伝子検査における核酸抽出(RNA抽出)、判定など

・精度管理

・検査を進めていくための注意点など

6)各メーカーの試薬・機器の概要を説明

7)終了証書授与

地元新聞にも掲載されました(2紙)

掲載:中日新聞 三重版 2020年11月16日/12面

この記事は中日新聞社の許諾を得て転載しています。

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Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号

~ 新型コロナウイルス感染症に

関する研修会報告 ~

富山県臨床検査技師会 副会長 澤井 真史

日臨技によるWEB基礎研修を修了した11名と厚生労

働省指定研修会を既に修了している特別参加希望者7

名の計18名を受講対象者として、富山県からの委託に

よる検体採取およびPPE脱着実技研修会を開催しまし

た。

富山大学附属病院感染症科から宮嶋先生を講師に招

き、最近の新型コロナウイルスについての状況等を簡

単に説明された後、PPE脱着の際の正しい順序から注

意事項、重要性などの説明をされ、実習を行いまし

た。PPEの脱着の順番については感染防御のうえでも

非常に重要であることや、袖にゴムがついていない防

護衣については、袖に少し穴をあけ、そこに親指を入

れると固定されて袖がまくりにくくなるなど、宮嶋先

生からの細かいアドバイスなどについて、参加者は真

剣に耳を傾けていました。引き続き検体採取について

の講義へ移り、正しい採取法、感染リスクを減らすた

めのコツなどのお話がありました。感染防止のため、

患者の正面からの採取は避け、採取後は患者さんには

すぐマスクをしてもらうことなど、細かなポイントに

ついて説明されました。参加者同士で実際に鼻腔から

の検体採取を中心に実習を行い、参加者たちは、お互

い照れながらも正確な採取法の基礎技術を身に付けよ

うと、この研修に臨んでいました。全国的にマスク、

手袋、感染防護衣などが品薄状態となり、入荷が研修

検体採取・PPE脱着実技研修会

【研修日程】

令和2年11月28日(土)13:00~14:00

【開催場所】

富山県医師会館 4階大会議室

【講師】

富山大学附属病院 感染症科/感染制御部

宮嶋 友希 医師

【研修プログラム】

1.開催の挨拶

富山県臨床検査技師会 副会長 澤井 真史

(富山県リハビリ病院・こども支援センター)

2.新型コロナウイルスの基礎知識

3.PPEの重要性等についての基礎知識

4.実際のPPE脱着実習

5.検体採取時の基礎知識

PCR実技研修会

【研修日程】

令和2年10月16日(金)17:30~20:30

令和2年10月17日(土)13:00~16:00

令和2年10月23日(金)13:00~16:00

令和2年10月23日(金)17:30~20:30

令和2年10月24日(土)13:00~16:00

令和2年11月14日(土)13:00~16:00

【開催場所】

富山大学附属病院 検査・輸血細胞治療部

【研修プログラム】

1.開催の挨拶

富山県臨床検査技師会 副会長 上野 智浩

(富山大学附属病院 臨床検査技師長)

2.核酸抽出についての基礎知識

3.核酸抽出における注意事項

4.RNA抽出、RT-PCR実習

5.質疑・応答

までに間に合わないかも、と心配しておりましたが、

予想以上に早く入荷し、無事研修を終えることができ

て胸をなでおろしているところです。

この日、富山県内でも今後感染拡大が危惧される新

型コロナウイルス感染の、正にその前線に立とうとす

る「戦士」たちが育成されていく姿を、県内新聞社2

社が取材に訪れ、「検査技師が検体採取学ぶ 県内の

感染拡大に備え」(富山新聞)、「PCR検体採取学ぶ

県内臨床検査技師 第3波に備え」(北日本新聞)と

いう記事で紹介されました。

写真上:検体採取法についての基礎講義

写真下:PPE脱着実習

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(編集後記)新年あけましておめでとうございます。昨年は新型コロナウイルス感染症の発生、急速な感染

拡大に多くの会員が検体採取、検査に携わられ、「臨床検査技師の皆さん」と内閣総理大臣から国民を前に

その仕事ぶりを労っていただく機会にも恵まれました。この号が皆さんの手元につく頃には第3波が落ち着

いていることを願っております。さあ、新しい1年がスタートします。今年も頑張っていきましょう!福岡

で開催される第70回日本医学検査学会には皆さんとお会いできますように願っています。 (桑原)

Vol.27No.1 会報JAMT ホームページ掲載 令和3年1月1日号

日臨技のWEB基礎研修修了者のうち、各施設2名ま

での参加を原則とし、25名を受講対象者として、富山

県厚生部からの委託による実技研修会を実施いたしま

した。PCR検査の経験が豊富な富山大学附属病院を会

場に、3密をできるだけ回避すること、理解をより深

めてもらうことを目的に、10月16日(金)から11月14

写真上:核酸抽出についての基礎知識・注意事項 説明

写真下:キットを用いた試薬調製と核酸増幅

日(土)までの6回に分け、それそれ少人数で行うこ

ととしました。まず、患者検体を提出してもらう際に

使用する器材についての詳細な説明、感染防止などの

注意事項の説明の後、「QIAGEN(キアゲン)RNA抽出

キットを用いたRNA抽出の実演」と、「島津製作所リ

アルタイムRT-PCRキットを用いた遺伝子検査と測定結

果の判定」についての実習を中心に行いました。実習

指導をしていただいた3名の技師たちの流れるような

「手さばき」に、参加者たちは目を丸くしながら検査

技術、注意事項、ノウハウ、機器の特徴などについて

懸命にメモを走らせ、自施設で実施するうえでの参考

にすべき多くの情報を得ようと真剣に取り組んでいま

した。質疑・応答では、終了予定時刻を過ぎても各施

設における検査手技、判定方法、報告方法などの問題

点について多くの意見が交わされました。そこでは自

施設でも今後増えるであろうPCR検査に臨んでいく強

い意思と、新型コロナウイルスに打ち勝つ姿勢を互い

に確認していました。富山県内では既に国からの予算

で約20施設にPCRの機器が導入されています。全国と

比較しても、今のところ県内の感染者数はまだ少なめ

ですが、当然襲ってくる感染拡大にも迅速かつ冷静に

対応できるよう、富山県の「勇者」たちは常に万全の

体制を整えています。