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農林水産省 委託事業
2019年3月 農林水産省(委託先:アクセンチュア株式会社)
「平成30年度品目別等輸出促進対策事業」
FDAの査察対応事例集
1
FDA査察対応事例① 飲料メーカー(1/6)
①査察通知受領
• 交渉官・プランナー・査察官の3名からそれぞれ役割に応じた連絡を英文メールで受領。規定通り、5日以内に査察受託の返信を行い、併せて会社・工場の概要資料を送付した
ホテルの手配・交通手段の問い合わせ等に対応
②事前準備
• JETROへの相談(岩手県内工場に訪問してもらい査察の対応策を具体的に検討)
• PCQI養成講座の受講(計6名)
• 食品安全計画の作成
取得済みのFSSC22000をベースに、CCPの安全性に係る箇所やハザード分析の書類に関してフォーマットを変える等して作成した
• FSMA施行前のFDAからの査察経験を持つ他社3社に対して、査察のポイント・留意すべき事項をヒアリング
【英訳資料】
• 会社概要、組織図、工場概要、対米輸出実績、査察対応者リスト、フローダイアグラム
資料の英訳は原則不要であるが、査察を円滑に進めるために輸出担当者が英訳
【原文資料】
• プロセス予防管理計画、ハザード分析、アレルゲンプログラム、サニテーションプログラム、リコールプラン、サプライチェーンプログラム(ベンダーリスト、倉庫管理基準)等
上記資料は専門性が高く、翻訳の難易度も高いことから原文のままで査察に臨んだ
③社内受入態勢
• 工場長、輸出担当部門、開発研究部長、品質保証部長、調合・滅菌・充填の各工程担当者の計8名で受入
査察先は当初岩手県の工場を指定されていた。その後、FDAから、輸出品を多数製造している別工場への査察対象の変更要望を受けたが、既に岩手県の工場での査察受入の準備をしていたため、当初予定の岩手県の工場視察を再打診し、岩手県の工場の査察に至った
• 査察の日数は事前通告されておらず、3日目になるまで通告されなかったため、査察対応人員の配置に憂慮した
④査察官受入態勢
• 岩手県内の工場周辺に飲食店やホテルが少ないため、当方にて案内をする等のフォローを行った
査察通知受領~準備 【査察通知受領日】2017年12月に受領。【日程調整等の開始時期】2018年2月頃から開始。
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FDA査察対応事例① 飲料メーカー(2/6)
査察当日① 【査察日】2018年4月(5日間)
• 査察の日数・時間に関しては、事前通告がなく、3日目に全5日である旨を伝えられた
• 1日目:ブリーフィング・工場査察・フローダイアグラムの確認等 (9:00-17:00)
【午前】
査察の対象品に関して、時間・工数の観点から査察対象の工場で製造されている全ての商品ではなく、特定の1つの商品に絞って行うことが通達された。査察官との協議の上でマンゴープリンの製造工程を査察対象とすることになった
マンゴープリン(当時米国向けの輸出は行っていない)は低酸性缶詰食品に該当するのではないかとの指摘があったが、米国では要冷蔵商品として販売していたため、低酸性缶詰食品に該当しないとの説明を実施
工場内の各施設を回り、問題がないかを確認。設備上では、水源となる井戸の施錠状況や洗浄剤の保管場所の施錠ができる人間の有無等の危害分析に係る確認が多かった
査察の対応者の名簿・役職・権限等を簡易に説明した
【午後】
フローダイアグラムの確認を実施した
特にペストコントロールに関する検査や、水質検査に関する質問を受けた。また、設備の洗浄剤の施錠権限を持つ人数を問われる等の安全管理面での質問が目立った
• 2日目:ハザード分析表・サプライチェーン・アレルゲン予防コントロールの確認等 (9:00-17:00)
【午前】
200工程にわたる原料から製品化までのハザード分析を行った。主に、ハザードに対する安全性への回答の妥当性を問われることが多く、異物混入を防ぐメッシュの目の大きさに関する安全性の根拠等を問われた
安全性の根拠として、一般的に異物混入が生じていないことに加え、メッシュのメーカーからの意見書を添えた
充填室の稼働の様子を重点室外から確認した
【午後】
サプライチェーンに関して、カロチンベースの色素等の原料の受入記録・規格書を確認した
通常、部外者立ち入り禁止の充填室内での査察の要求があり、応じた。特段の指摘はなく、半ば査察官の興味本位で確認を行っているようにも感じた
アレルゲンチェックに関して、米国では、日本の7分類と異なる8分類を採用していることを踏まえ、事前にアレルゲンとなりうる、原料20~30種類に関して、メーカー等に問い合わせを行い、米国の定めるアレルゲンとの対応関係を1か月程かけて精査した
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FDA査察対応事例① 飲料メーカー(3/6)
査察当日②
• 2日目(続き)【午後】
マンゴープリンの一部原料が輸入品であり、残留農薬のリスクを指摘された。当日中に輸入元に対して、残留農薬の検査状況を確認し、問題がないことが確認できたが、輸入製品のロットが検査済みのものであるかのトレーサビリティ改善の意見を受けた
その他の原料に関しても、カビ毒等のリスクを指摘されたが、過去事例・メーカーの見解書等を以って回答
• 3日目:アメリカ輸出実績・回収製品の処理方法・滅菌工程等の確認 (11:00-17:00)
【午前】
査察官が質問状をまとめる等の対応をしていたため、査察開始が11時からとなった。
対米輸出の実績に関して、同社の製品に関し、一部並行輸出が行われていたことが査察官のFDAへの確認により判明
国内流通用の常温保存していたマンゴープリンが並行輸出によって米国に輸出されていたことから、低酸性缶詰食品に該当すると判断され、低酸性缶詰食品に係る査察も同時実施することになった
回収製品・販売不可製品の処理方法に関して、当社では再利用を行っていないため、特段の問題はないと判断された
【午後】
滅菌工程のチェックは厳重に行われた。殺菌の温度・時間の設定数値等を確認していた
温度計の目盛に関して、当社で使用していた目盛りの単位が大きく、米国の基準に合致する小さい単位の目盛りを導入するように指摘を受けた
液体の逆流に関するリスクを指摘されたが、1.2倍の安全率を以って対応している旨を伝え対処した
• 4日目:工場視察・製造工程の確認(9:00-17:00)【午前】
工場視察を実施。無菌充填設備に加え、温度計・温度センサー・バルブ等の普段人が立ち入らない区画に入り、詳細に確認を行っていた
【午後】
食品の安全性に係る滅菌工程に関して重点的な確認が行われた。日報や滅菌機の作業手順書・従業員の教育記録を確認した。また、安全性の確認のため、過去のクレーム記録を確認し、安全性に関するクレームの有無を確認した。当該工場では、安全性に係るクレームは存在しなかったため、記録の有無のみで完了。4日目午後になって、翌日で査察が完了する旨を伝えられた
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FDA査察対応事例① 飲料メーカー(4/6)
査察当日③
• 5日目:クロージングミーティング(9:00-11:00)【午前のみ】
クロージングミーティングを実施し、指摘事項(Form483)を受領
原料に関しても、カビ毒等のリスクを指摘されたが、過去事例・メーカーの見解書等をもって回答したため、口頭指摘事項に留まった
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• 何を査察に来るのかが分からないため、十分な事前準備を行う必要があった
• FDAの危害分析のリストに関して、どの原料がどこに該当するかが分からず、資料作成の難易度が高かった。当該リストに関しても日本語訳を頂けるとありがたいと考えている
• 食品安全計画の作成には1.5~2か月かかった。FSSC22000を取得していたため、食品安全マニュアルは既に整備されていたが、それでも多大な業務負荷が発生した。特にアレルゲンコントロールはFDAの定める基準に適合するように差分を特定・記載する必要がある上、サプライチェーンを別資料として作成する必要があった
• 国内販売用と海外輸出用で、規制対応の求められる要件が異なるが、供給先のメーカー・商社に、理解してもらうのが難しいと考えている
FDA査察対応事例① 飲料メーカー(5/6)
①現場確認
• 水源となる井戸の施錠管理の確認
• 洗浄剤の施錠管理・施錠権限者の確認
• 原料・計量のアレルゲン管理(保管方法等)
• 滅菌パイプラインのレイアウト確認(パイプの角度による逆流リスク)
• 充填機のパック(テトラパック)の過酸化水素水の除去方法
• 温度管理・時間等のセンサー・モニタリング機器の精度(目盛り)
②文書確認
• 滅菌工程の温度管理・滅菌時間に関する記録の重点確認
• スタッフトレーニングプログラム・リコールプラン・ペストコントロール等の日本語文書に関しても、逐次通訳にて記録を確認していた
査察時の確認事項
査察後の対応
• Form483の指摘事項に対して2週間以内に全て対応し回答。FDAより回答受領の連絡を受けた
• 装置内の液体の温度計の目盛りを米国の基準に合うように細かくするように、と指示があり、目盛りの細かい温度計を導入し、導入前後の温度計測グラフを添付し、回答した
• 低酸性缶詰食品としての施設・商品登録の指摘があったが、常温流通させないことを徹底することを前提に、低酸性缶詰食品として登録しない旨を回答
査察対応者の声
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FDA査察対応事例① 飲料メーカー(6/6)
①PCQI(予防管理適格者)の所属・肩書
• 岩手県内工場担当
②食品安全管理に関する勤務経験または受講した研修
• PCQIの研修受講料を見積したところ、1人12万円と高額だったため、割安なグループ研修に切り替え、6名での受講を行った
• PCQIがサインしなければならない資料が多いため、PCQIを複数設置するため、PCQIの養成セミナーを複数人で受講した
③PCQIの決定経緯・理由
• PCQI(1工場に複数設置)はこれまでFSSC22000の対応等に従事しており、PCQIの養成セミナーを受講し、FSMA対応に関しても迅速に対応できるだけの知見と経験を兼ね備えていたため
PCQIの設置に関して
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FDA査察対応事例② 調味料メーカー(1/3)
①査察通知受領
• 海外営業部が通知を受領。5日以内に返信
• FDAの施設登録に関して、誤った情報が登録されており(農場を経営しているなど)、訂正を行った
②事前準備
• 査察通知受領後、4月にFSMAの外部コンサルタントに相談した
FSMA対応の講師をしている専門家と面識があったため、相談を行った
ギャップ分析を実施し、FDAの査察に向けて修正すべき点を事前に洗い出した
査察に向けて従業員への勉強会を実施
• 食品安全計画の作成
ISO22000をもとに、食品安全計画を作成
• PCQIの設置に向け、ペリー・ジョンソンのPCQI養成講座を2~3名で受講
2回目以降の受講の受講料割引を活用
• GMP、サプライヤー・ゾーニング関連資料を事前に送付
• 【英訳資料】
金額・出荷量・製品リスト・教育訓練・プログラムリコール・組織図・会社沿革・食品安全計画
• 【原文資料】
トレース資料
③社内受入態勢
• PCQI、工場長、品質保証部門、R&Dセンター、営業部門、外部コンサルタント
• 通訳は営業部門・外部コンサルタントが行った
④査察官受入態勢
• 営業部門・コンサルタントで査察官アテンドを行った
• 査察官の移動の補助及び食事の提供等を行った
査察通知受領~準備 【査察通知受領日】2018年2月に受領。【日程調整等の開始時期】2018年4月頃から開始。
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FDA査察対応事例② 調味料メーカー(2/3)
査察当日 【査察日】2018年6月(2日間)
• 査察の日数・所用時間が2日間である旨の通達を初日に受けた
• 1日目:
挨拶を行い、工場概要の解説等を実施。事前アンケートの内容説明を行った
当工場で製造している製品を紹介し、輸出メイン商品である生味噌を査察の対象とすることに決定。原料受入から発酵・製品化までの工程を一通り説明した
CCP(重要管理点)に関する質問は特段なし
工場内の水たまりやパレットの汚れ等を気にしており、製造ラインに関する質問は特段なかった
配管や機械の構造、大豆の選別、洗浄方法に関する質問を受けた。特に大豆の洗浄に関しては、洗剤・薬剤の使用有無等、詳細まで質問を受けた
工場内の視察時に、一部の天井部分の劣化やバルブのさびを指摘された
大豆・米処理の工程、混合、発酵、製品倉庫の視察を実施した
• 2日目:
工場長、R&D、品質管理部門にて対応を実施
食品安全に係わる項目として、水分活性、微生物の状態、塩分、pHに関する確認が行われた。特に水分活性に関する検査は行っていなかったため質問を受けた。製品の特性や経験則から水分活性の検査は不要である旨を説明したが、理解を得づらかった。
各種資料を見ながら、商品のトレースバック実施したが、特段の指摘はなかった
食品安全計画、アレルゲン物質、防虫対策、リコールプラン、トレース状況、対米輸出の出荷記録を確認した
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FDA査察対応事例② 調味料メーカー(3/3)
① 現場確認
• 原材料である大豆の洗浄
• 工場での薬剤使用状況や管理方法
• 原材料等の運搬を行うためのパレットの状態
• 建屋の状況(構造や材質)
• 設備(配管・機械の構造 等)
② 文書確認
• 食品安全計画等(その他関連書類に関しては軽微確認で完了)
• FDAの施設登録状況
• 水分活性・微生物・塩分・pHの状態 等
査察時の確認事項
査察後の対応
• 監査当日に受けたForm483での指摘事項に対して2週間以内に全て対応し回答。修繕箇所(施設・設備の老朽化など)に関して、修繕に係る見積書・及び修繕前後の写真を添付した資料を送付
• 9/21にFDAからの監査報告書(EIR)を受領し、査察完了となった
査察対応者の声・補足事項
• 間接輸出が中心で、FDAの施設登録に関しても商社が行っていた。当社が意図しない製品の輸出に対する対策が必要であると感じた。
• 新設の工場ではないため、今後、GMP等が求められるようになった場合の対応を検討する必要がある
• アレルゲン物質に関して、当社で出汁入り味噌にかつお節を使用しているが、かつお節は日本ではアレルゲン物質に該当せず、米国ではアレルゲン物質に該当するため、日本・米国で差分のある項目に注意する必要がある
• JETROが公開している食品安全計画のひな形に関して、「味噌」のひな形が整備されており、食品安全計画の作成時に参考になった。PCQI養成講座時にひな形の存在を知り、活用した
• ISO22000とFSMAの相互互換等が進むと、FSMAの対応が進めやすくなる
• 家族経営のような中小企業にとっては、FSMA対応が難しいと考えられる。委託製造先等がFSMA対応を十分に進めることができるかを憂慮している
対米輸出に向けたFSMA関連の課題認
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FDA査察対応事例③ 調味料メーカー(1/2)
①査察通知受領
• 査察の1ヵ月前に通知受領
• 査察官の宿泊場所の確保に向けて、宿泊場所を2~3カ所提示した他、資料のやり取りを行った
②事前準備
• FDA査察前より、自主基準を設けており、JASや保健所の査察にて、衛生管理が高評価であった
【英訳資料】
• 英文の会社概要パンフレット(査察通知前に作成済)
• 組織図、工程管理、フローチャート、CCP(査察通知後に作成)
③社内受入態勢
• 社長・アメリカ人通訳
社長自身も英語は堪能であるものの、FDAの査察官からの直接の質問を避け、回答を考えるための時間を確保するため、通訳を手配
④査察官受入態勢
• 査察官をホテルまで送迎
査察通知受領~準備
査察当日
【査察通知受領日】2012年10月に受領。【日程調整等の開始時期】2012年10月頃から開始。
【査察日】2012年11月(2日間)
• 会社概要・フローチャート等を確認。原料の受入から製造まで順番に査察を行った
• 修正対応を求められた箇所は、手洗用の給湯設備の設置、蛍光灯の飛散防止カバーの設置、ラー油製造工場のタンク底のテープの除去
• 原材料のゴマはアフリカ・アジア等から輸入されるものが中心で、通関前にサンプル検査が実施されるため、残留農薬(イミダクロプリド)やカビ毒(アフラトキシン)によるリスクは低い
• 査察官が責任問題となることを恐れている様子も垣間見え、慎重な対応を行っていた
※本事例はPCHF適用前に実施されたFDAの査察に関するヒアリング
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FDA査察対応事例③ 調味料メーカー(2/2)
①現場確認
• 原料受入~製造の各工程
• 手洗場の給湯器
• ラー油製造機のタンク(底面)
• 蛍光灯(飛散防止カバーの有無)
②書類確認
• 会社概要
• フローチャート 等
査察時の確認事項
査察後の対応
• 修正箇所(手洗用の給湯設備の設置、蛍光灯の飛散防止カバーの設置、ラー油製造工場のタンク底のテープの除去)に2週間以内に対応し、FDAに報告を行ったが、その後の返信はなかった
• FDAの施設登録に関して、商社等からの登録により7つの重複登録が行われていた。主要な取引先商社の登録番号を正式番号とし、他の商社に対しても、同一の番号を使用するように連携
査察対応者の声・補足事項
• FDAの査察後、ISOの認知度が高まったタイミングでISO22000を取得した
• 査察官が胡麻油という商品を理解しておらず、どのようなものであるかから説明が必要であった
• 胡麻油は通常、胡麻を200℃で焙煎し、高圧・高温の状態で搾油を行うため、安全性を担保しやすく、異物の混入に注意を払えばよいと認識している
• 外食店より小売店に対して、衛生管理・認証を求められることが多く、ISO22000の取得による訴求効果は高い。特に大手小売店に関してその傾向が強い
• 対米輸出に向けてはアメリカ系の小売(コストコ等)の衛生管理を参考にするのがよいと考えている。手洗に関して、ペーパー式か風乾式かを検討しているが、米国等ではペーパー式が一般的である。また手洗場の排水構造に関しても工夫しているように見受けられる