地盤変状調査における簡易動的コーン貫入試験の適用全地連「技術フォーラム2013」長野...

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全地連「技術フォーラム2013」長野 地盤変状調査における簡易動的コーン貫入試験の適用 ()サクセン ○高瀬 晶弘 ()サクセン 笹田 麻純 1.はじめに 関東地方の火山地域内の造成地において,地盤変状が 発生した。先行の地盤調査により,変状の原因は圧密沈 下及び細粒分流出などであることが確認された。 さらに詳細な地盤変状状況をできるだけ安価で広範囲 に把握するため,オールコアボーリングを減らし,サウ ンディング試験を数多く実施した。サウンディング試験 は,経済性の他,1)調査地は軽石や火山礫主体の地盤 に対応する試験であること,2)調査地は障害物が多い ため機動性に富む方法であることが求められたため,簡 易動的コーン貫入試験を選定した。 しかし,簡易動的コーン貫入試験の Nd と標準貫入試 験の N 値の関係において,一般的に用いられている相関 式が,火山地域の礫質土地盤でも問題なく適用可能か懸 念された。 そこで,地盤調査の基本に戻り,調査地における Nd N 値の相関を求め,一般式と比較するとともに,得ら れた調査地の Nd N 値の相関式により,土質性状の把 握を試みた。ここにその事例を報告する。 2.調査概要 ボーリングは,目視にて確認された4箇所の地盤変状 部における各々の最大沈下地点にて実施した。 また,簡易動的コーン 貫入試験18箇所の内4所は,Nd N 値の関係 を求めるために,-1ように各ボーリング地点 の横0.5m で実施した。な お,測定間隔は,詳細に 土質状況を把握するた め,基本的に5cm ピッチ とし,得られた5cm ピッ チの打撃回数を10cm 算して,換算 Nd とした。 3.一般的な Nd N 値の相関式 提案されている一般的な Nd N 値の相関式 1は, -1に示した。 大久保らの式は,地層の種類とその硬軟に関わらず, ほぼ適用できる一般式 1とされている。 新の式は,大久保らの式に凝灰岩と凝灰角礫岩の風化 した崩積土を対象とした土質を適用した相関式である。 岡田らの式は,式の導出過程において,Nd N 値の 間に,スウェーデン式サウンディング試験との相関性を 介在し,Nd N 値の相関式を導き出したものである。 このように,複数の相関式が提案されているものの, 本調査地は,今まで事例のない軽石や火山礫を主体とす る礫質土が分布し,堆積環境や礫の硬軟などにより同じ 土質区分であっても土質性状が異なることがあり,一般 式と相関が異なる可能性が考えられた。 -1 Nd N 値の相関関係を表す一般式 提案式 対象 Nd N 値の 相関関係 適用範囲 ばらつき範囲 大久保らの式 2N=(1/31)Nd 新の式 3崩積土 N=2/3Nd Nd 20 N=1/21Nd 岡田らの式 4礫粒土 N=0.7+0.30Nd Nd =4以上 砂質土 N=1.1+0.30Nd 粘性土 N=1.7+0.34Nd 礫粒土 N=0.50Nd Nd =4以下 砂質土 N=0.66Nd 粘性土 N=0.75Nd 4.調査結果 (1)調査地の地盤状況 ボーリングコア及び標準貫入試験の試料観察, Nd N 値の分布,後述する相関式などの結果より,-2に示し たような地盤構成を把握した。すなわち,調査地には, 表層部に N =131Nd4を示す砂礫による盛土,盛 土の下位には N =113Nd4を示す有機質土,及び N =150以上,Nd4を示す火山砂礫(軽石流堆積物) が分布することが判明した。 また,これらの地盤構成及び地盤変状の状況などから, 地表面で確認された地盤変状の原因を推定した。 -2 調査地の模式断面図 6.00 5.00 4.00 3.00 1.00 換算 N値 50 0 10 20 30 40 換算 N値 50 0 10 20 30 40 換算 N値 50 0 10 20 30 40 換算 N値 50 0 10 20 30 40 換算 N値 50 0 10 20 30 40 N値 0 10 20 30 40 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 6.00 5.00 4.00 2.00 1.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 2.00 3/32 6 6 2 3 15 23 26 5 6 16 11 12 20 Ap Bg1 Bg2 Bg3 Ap Ag2 c Ag2 3.00 Bg3 Ag3 Ag4 s 簡易貫入 No.3-5 簡易貫入 No.3-2 簡易貫入 No.3-3 簡易貫入 No.3-1 簡易貫入 No.3-4 ボーリング No.3 Bg1 Ag2 Ap Bg3 Bg2 凡 例 盛土層 (礫質土) 沖積第 2 礫質土層 沖積有機質土層 Ac As 沖積粘性土層 沖積砂質土層 Ag3 沖積第 3 礫質土層 Ag4 沖積第 4 礫質土層 -1 簡易動的コーン貫入試験 の実施位置概略図 換算Nd 0.5 m N値 ボーリング 簡易貫入 (m) 深度 10 5 0 (m) 深度 10 5 0 0 0 20 50 40 30 10 20 504030 10 70 1009080 60 64

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全地連「技術フォーラム2013」長野

地盤変状調査における簡易動的コーン貫入試験の適用

(株)サクセン ○高瀬 晶弘 (株)サクセン 笹田 麻純

1.はじめに

関東地方の火山地域内の造成地において,地盤変状が

発生した。先行の地盤調査により,変状の原因は圧密沈

下及び細粒分流出などであることが確認された。 さらに詳細な地盤変状状況をできるだけ安価で広範囲

に把握するため,オールコアボーリングを減らし,サウ

ンディング試験を数多く実施した。サウンディング試験

は,経済性の他,1)調査地は軽石や火山礫主体の地盤

に対応する試験であること,2)調査地は障害物が多い

ため機動性に富む方法であることが求められたため,簡

易動的コーン貫入試験を選定した。 しかし,簡易動的コーン貫入試験の Ndと標準貫入試

験の N 値の関係において,一般的に用いられている相関

式が,火山地域の礫質土地盤でも問題なく適用可能か懸

念された。 そこで,地盤調査の基本に戻り,調査地における Nd

と N 値の相関を求め,一般式と比較するとともに,得ら

れた調査地の Ndと N 値の相関式により,土質性状の把

握を試みた。ここにその事例を報告する。

2.調査概要

ボーリングは,目視にて確認された4箇所の地盤変状

部における各々の最大沈下地点にて実施した。 また,簡易動的コーン

貫入試験18箇所の内4箇所は,Ndと N 値の関係

を求めるために,図-1の

ように各ボーリング地点

の横0.5m で実施した。な

お,測定間隔は,詳細に

土質状況を把握するた

め,基本的に5cm ピッチ

とし,得られた5cm ピッ

チの打撃回数を10cm 換

算して,換算 Ndとした。

3.一般的な Ndと N 値の相関式

提案されている一般的な Ndと N 値の相関式 1)は,表

-1に示した。

大久保らの式は,地層の種類とその硬軟に関わらず,

ほぼ適用できる一般式 1)とされている。

新の式は,大久保らの式に凝灰岩と凝灰角礫岩の風化

した崩積土を対象とした土質を適用した相関式である。

岡田らの式は,式の導出過程において,Ndと N 値の

間に,スウェーデン式サウンディング試験との相関性を

介在し,Ndと N 値の相関式を導き出したものである。 このように,複数の相関式が提案されているものの,

本調査地は,今まで事例のない軽石や火山礫を主体とす

る礫質土が分布し,堆積環境や礫の硬軟などにより同じ

土質区分であっても土質性状が異なることがあり,一般

式と相関が異なる可能性が考えられた。

表-1 Ndと N 値の相関関係を表す一般式 提案式 対象 Ndと N 値の

相関関係 適用範囲 ばらつき範囲

大久保らの式 2) N=(1/3~1)Nd 新の式 3) 崩積土 N=2/3Nd Nd<20 N=1/2~1Nd

岡田らの式 4)

礫粒土 N=0.7+0.30Nd Nd =4以上 砂質土 N=1.1+0.30Nd

粘性土 N=1.7+0.34Nd 礫粒土 N=0.50Nd

Nd =4以下 砂質土 N=0.66Nd 粘性土 N=0.75Nd

4.調査結果

(1)調査地の地盤状況

ボーリングコア及び標準貫入試験の試料観察,Ndと N値の分布,後述する相関式などの結果より,図-2に示し

たような地盤構成を把握した。すなわち,調査地には,

表層部に N =1~31,Nd>4を示す砂礫による盛土,盛

土の下位には N =1~13,Nd≦4を示す有機質土,及び

N =1~50以上,Nd>4を示す火山砂礫(軽石流堆積物)

が分布することが判明した。 また,これらの地盤構成及び地盤変状の状況などから,

地表面で確認された地盤変状の原因を推定した。

図-2 調査地の模式断面図

6.00

5.00

4.00

3.00

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換算N値500 10 20 30 40

換算N値500 10 20 30 40

換算N値500 10 20 30 40

換算N値500 10 20 30 40

換算N値500 10 20 30 40

N値0 10 20 30 40

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6

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Ap

Bg1Bg2Bg3

Ap

Ag2

Ac

Ag23.00 Bg3

Ag3

Ag4

As

簡易貫入No.3-5

簡易貫入No.3-2

簡易貫入No.3-3

簡易貫入No.3-1

簡易貫入No.3-4

ボーリングNo.3

Bg1

Ag2

Ap

Bg3

Bg2

凡 例

盛土層

(礫質土)

沖積第 2礫質土層

沖積有機質土層

Ac

As

沖積粘性土層

沖積砂質土層

Ag3 沖積第 3礫質土層

Ag4 沖積第 4礫質土層

図-1 簡易動的コーン貫入試験

の実施位置概略図

換算Nd

0.5 m

N 値

ボーリング簡易貫入

(m)深度

10

5

0

(m)深度

10

5

000 20 5040301020504030 1070100 9080 60

【64】

全地連「技術フォーラム2013」長野

(2)Ndと N 値の相関式

換算 Ndと標準貫入試験により得られた10cm 毎の打

撃回数を基に,これらの関係を図-3に示した。その結果,

両者の間には,強い相関(R2 ≒0.9)が得られた。 そこで,図-3に示した相関式を基に,10cm 毎の打撃

回数を30cm 換算し,Ndと N 値の相関式を算出した。算

出した相関式は,以下のとおりである。

N =1.2+0.3Nd(σ=±3)… ① N :換算 N 値 σ:Ndのばらつき範囲(標準偏差)

図-3 換算 Ndと標準貫入試験時に得られた10cm 毎の

打撃回数の相関関係

(3)Ndと N 値の相関式における一般式の比較検討

本調査において,①式と表-1にある各々の一般式を比

較した結果を図-4に示す。 ①式は,図-4(b)で示されるように,大久保らの式の

下限値(N =1/3Nd)と近い傾向を示した。一方,図-4

(c)で示されるように,Nd>4の礫質土における岡田ら

の式と概ね一致する結果が得られた。 岡田らの式は,簡易動的コーン貫入試験範囲の地質が

Nd>4の礫粒土(礫質土)主体であったことに起因する

と考えられる。 しかし,Nd>4の砂質土や粘性土において,大久保ら

の式と相関が高く,粘性土では N =(1/2~1)Nd,砂質土

では N =(1/3~1/2)Ndの関係を示す事例が報告されてい

る 5)。 これらを考慮すると,調査地の土質や堆積環境などが

異なる場合,適用できる Ndと N 値の相関関係も異なる

ことが推測される。

図-4 ①式と一般式の比較

5.おわりに

本調査では,粘性土と Nd<4に関する標本数が少なか

った。今後の機会を捉えて,多くの場所や土質において

データを蓄積し,更なる Ndと N 値の相関について考察

を進めたいと考えている。 今回は,地盤調査の基本に立ち戻り,少しの手間を惜

しまないことで,調査精度の向上を図ることができた。

改めて,調査地周辺の地形・地質を考慮すること,デー

タの相関性を見直すことの重要性を感じる現場であっ

た。

引用・参考文献

1) (社)地盤工学会:地盤調査の方法と解説,pp.274~279,2004

2)大久保駿・上坂利幸:簡易貫入試験機による地盤調

査,土木技術資料,Vol.13,No.2,1971 3)新任修:既存資料の重要性と面的調査,地質と調査,

1986年,第1号,pp.73~76,1986 4)岡田勝也・杉山友康・野口達雄・村石尚:盛土表層

部の土質強度に関する異種のサウンディング試験結

果の相関性,土と基礎,Vol.40,No.411,pp.11~16,1992

5)小林豊・谷内江敬太・石尾政男・小島一宏・森本崇:

簡易動的コーン貫入試験の適用性について(その2),全地連「技術フォーラム2012」新潟

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 550

2

4

6

10 c

m毎

の打

撃回

実測データ(礫質土)

実測データ(粘性土)

相関式

y = 0.3854 + 0.1014 x

R2 = 0.8731

換算Nd

0

2

4

6

8

10

12

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16

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 550

2

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10

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160

2

4

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10

12

14

16

Nd

実測データ(礫質土)

実測データ(粘性土)

①式

①式のばらつき範囲

算N

(a)Nd値とN 値の相関式(①式)

(c)①式と岡田らの式の比較

①式

岡田らの式(礫粒土)

岡田らの式(粘性土)

(b)①式と大久保ら,新の式の比較

①式

大久保ら,新の式(N =1Nd)

大久保ら(N =1/3Nd )

新の式(N =2/3Nd)

新の式(N =1/2Nd )

全地連「技術フォーラム2013」長野

影響を考慮した地下水開発および影響調査について

佐久水道企業団 小林 団 上原紀之

(株)小宮山土木 今井秀樹

(株)サクセン 鴨田知幸 ○宮澤育江

1. はじめに

上水道が整備された現在でも農業や工場,水道施設な

どで井戸水や湧水として地下水が利用されている。地下

水利用の多い地域で新規地下水開発を行う場合,周辺の

井戸や湧泉に水位低下や水量の減少,濁りなどが発生す

る可能性がある。そのため,周辺環境への影響を考慮し

た地下水開発の計画,設計,施工が求められる。

ここでは,水道水源として計画水量1000m

3

/day の地下

水開発を実施する際に影響を考慮した井戸の設計から施

工,影響調査まで一貫して行った事例について報告する。

2. 地形・地質

調査地は長野県南佐久郡佐久穂町上地区であり,八ヶ

岳火山の東麓地域に位置する(図-1)。調査地は先第四系

を基盤岩とし,主に八ヶ岳起源の火山噴出物とそれらを

含む水成層が厚く堆積している。調査地は主に下部更新

統の中部八千穂累層及び最上部八千穂累層からなる。

図-1 地質図

1)

3. 水理地質

調査地における主要な帯水層は火山山麓に堆積した火

山砂礫や凝灰角礫岩などで地下水は層状水として賦存さ

れている。

調査地には既設深井戸が分布し,中部八千穂累層を採

水層としている。それらの井戸は掘削位置や掘削深度の

違いにより井戸能力が異なる。例えば,標高の高い地域

では自然水位が深く,地下水を得るために200m以深の掘

削を行っているが,標高の低い地域では掘削深度80m以

浅でも地下水を得ている。

4. 調査

調査地周辺の地下構造を調査するために垂直電気探

査を実施した。

(1) 方法

電気探査の電極配置はウェンナー四極法を用いた。探

査深度は300mとし,4測点の探査を実施した(図-2)。

電気探査により得られた見掛比抵抗曲線はズンドベル

グの標準曲線法及び直視法により解析した。

図-2 調査位置図

3)

(2) 結果

電気探査の解析結果は,地表地質踏査及び既存資料と

比較検討し,比抵抗層を区分した(表-1)。また,探査測

点及び既設井戸を対比し,地質断面図(図-3,4)を作成

した。断面位置は図-2に併記した。

表-1 比抵抗区分一覧表

層区分

比抵抗値

(Ω-m)

主な地層 地層区分 水理地質

第1層 70-150 礫、砂、粘土 沖積層 浅層の地下水を賦存

第2層 - 火山砂礫、ローム 最上部八千穂累層 非帯水層

第3層 80-330

火山砂礫、シルト、スコ

リア

中部八千穂累層A 非帯水層

第4層 100-980 凝灰角礫岩、火山砂礫 中部八千穂累層A

下流部帯水層

上流部非帯水層

第5層 100-300

凝灰岩、礫混り火山砂、

粘土混り火山砂礫

中部八千穂累層A

帯水層(賦存量少ない)

上流部非帯水層

第6層 150-1100 凝灰角礫岩、火山砂礫 中部八千穂累層A 帯水層

第7層 80-130

ローム混り火山砂、火山

砂礫

中部八千穂累層A 帯水層

第8層 Low 礫混り凝灰岩 中部八千穂累層A 難透水層

図-3 地質断面図(E-W)

図-4 地質断面図(N-S)

【92】

全地連「技術フォーラム2013」長野

電気探査結果から調査地の主要帯水層である中部八千

穂累層は,第3層~第8層の6つに細分される。このうち採

水対象となる比抵抗層は第4層,第6層,第7層である。第

4層は既設井戸の多くが採水層とし,第6層及び第7層は上

流に位置する既設井 W-1の採水層となっている。

5. 井戸設計

近隣の既設井戸の多くは第4層及び第5層から地下水を

得ていることが判明した。したがって,周辺への影響を

考慮し,調査地では未開発の地層であるさらに下位の第6

層及び第7層を採水対象とする掘削深度190mの井戸を設

計した。

第6層及び第7層は既設井 W-1の採水層であるが,距離

が2km 以上離れているため,影響は少ないものと判断し

た。井戸設計を図-5 比較図に併記する。

6. 掘削

設計に基づき,ロータリー工法を用いて深度190mの掘

削を行った。電気探査による想定地質柱状図と掘削時の

さく井地質柱状図を図-5 比較図に示す。

図-5 比較図

図-5において想定地質柱状図とさく井地質柱状図では

第5層の分布深度に最大20mの差があるが,想定した帯水

層(第6層,第7層)の分布が確認された。検層の結果を

もとに第6層及び第7層にスクリーンを設置し,連続揚水

試験において2500m

3

/day の揚水が可能であった。

7. 観測

新規井戸掘削に伴い,周辺井戸の観測を実施した。観

測井の位置は図-2に併記する。新規井戸施工中の観測結

果を図-6に,揚水試験中の観測結果を図-7に示す。

図中の観測井1及び観測井2は家庭用の浅井戸であり,

散水に使用されている。水道水源(W-2)は深度81mの既

設深井戸であり,第4層及び第5層を採水層としている。

図-6によると,新規井戸の施工中に周辺井戸への影響

は確認されない。浅井戸では降水による影響が大きく,

最大1m程度の水位変動が観測された。

図-6 施工中水位観測結果図

図-7によると新設井戸の揚水試験による周辺井戸への

影響は確認されない。

なお,水道水源(W-2)に観測された水位変動は水道水

源のポンプ稼働による水位低下と既設井 W-5の揚水によ

る影響である。

図-7 揚水試験中水位観測結果

8. まとめ

① 深度300mの電気探査を4測点実施し,帯水層の分

布深度及び地質構造を調査した。

② 探査結果をもとに影響を考慮し,隣接する井戸と

は異なる帯水層を採水対象とする新規井戸の設計

を行った。

③ 設計をもとに深度190mの掘削を行い,想定した未

開発の帯水層の分布を確認した。

④ 新規井戸掘削の結果,計画水量(1000m

3

/day)以

上の地下水を得た。

⑤ 新規井戸施工中及び揚水試験中は周辺井戸の水位

を連続観測し,周辺井戸への影響は確認されなか

った。

《引用・参考文献》

1) 八ヶ岳団体研究グループ編;八ヶ岳山麓の第四系,

付図 八ヶ岳山麓の地質図,1988.5

2) 八ヶ岳団体研究グループ編:八ヶ岳山麓の第四系,

pp.1~52,1988.5

3) 長野県佐久穂町:佐久穂町地形図,2009