「福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に ... · 2019. 6....

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「福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会」 報告書概要 地域の就労支援のネットワークの構 ○ 障害者の希望・ニーズに応じた就職を実現し、働く障害者を支えていくためには、 雇用、福祉、教育等の各分野の連携が不可欠であり、各支援機関の役割分担の下、 個々の障害者のニーズに対応した長期的な支援を総合的に行うためのネットワーク を地域ごとに構築することが必要。 ○ 就労支援のネットワークは、障害者の身近な地域に設置される就労支援機関が中 心となって構成されるものであり、支援ニーズに応じて、地域ごとに、各支援機関 の強みを活かした効果的な役割分担やネットワークの構成を検討することが重要。 また、都道府県レベルで設置される機関は、相互の連携を密接に図りつつ、地域 のネットワークを支える役割を果たすことが必要。 地域における各分野の就労支援機関の役割と今後の在り (ハローワーケ) ○ 全国の各地域に設置されている第一線の労働行政機関として、職業相談・職業紹 介や企業指導等を通じ、障害者の雇用機会の確保というセーフティネット機能を十 分に発揮すべき。また、就労支援のプロセスの中でも特に重要なマッチングを担う 機関として、ネットワークの構築に中核的な役割を果たすべき。 ○ ハロー ワークのみでは支援の完結しない求職者や、福祉・教育から雇用への移行 を希望する者等に対してきめ細かな支援を効果的に行うために、ハロー ワークが中 心となり地域の支援機関と連携して個別支援を行う「チーム支援」をハローワーク の業務として明確に位置づけるとともに、地域の支援機関の機能に応じた役割の調 整を行い、一貫した効果的な支援となるよう、関係機関に対するコーディネートカ を高めることが必要。 ○ 知的障害者、精神障害者等のよりきめ細かな支援を必要とする求職者の増加を踏 まえ、質の高い職業紹介を行うことが求められ、職員研修の充実等を通じて障害者 担当の専門性を高めるとともに、十分な実施体制を確保することが必要。 (地域障害者職業センター) ○ 中核的な職業リハビリテーション機関として設置され、障害者職業総合センター を中心に全国ネットワークを形成し、豊富な支援実績に基づくノウハウを集約して 蓄積しており、地域の就労支援の広がりの中で、その高度な専門性とノウハウの蓄 積を活かした業務の展開を図るべき。 ○ 地域の支援機関による質の高い就労支援が、どの地域においても提供されるよう にするためには、今後は、 (丑 地域において就労支援を担う専門的な人材の育成 ② 地域の支援機関に対する助言・援助 の業務を同センターの基幹業務の-1一つとして位置づけ、地域の就労支援力の底上げ

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「福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会」

報告書概要

地域の就労支援のネットワークの構

○ 障害者の希望・ニーズに応じた就職を実現し、働く障害者を支えていくためには、

雇用、福祉、教育等の各分野の連携が不可欠であり、各支援機関の役割分担の下、

個々の障害者のニーズに対応した長期的な支援を総合的に行うためのネットワーク

を地域ごとに構築することが必要。

○ 就労支援のネットワークは、障害者の身近な地域に設置される就労支援機関が中

心となって構成されるものであり、支援ニーズに応じて、地域ごとに、各支援機関

の強みを活かした効果的な役割分担やネットワークの構成を検討することが重要。

また、都道府県レベルで設置される機関は、相互の連携を密接に図りつつ、地域

のネットワークを支える役割を果たすことが必要。

地域における各分野の就労支援機関の役割と今後の在り

(ハローワーケ)

○ 全国の各地域に設置されている第一線の労働行政機関として、職業相談・職業紹

介や企業指導等を通じ、障害者の雇用機会の確保というセーフティネット機能を十

分に発揮すべき。また、就労支援のプロセスの中でも特に重要なマッチングを担う

機関として、ネットワークの構築に中核的な役割を果たすべき。

○ ハロー ワークのみでは支援の完結しない求職者や、福祉・教育から雇用への移行

を希望する者等に対してきめ細かな支援を効果的に行うために、ハロー ワークが中

心となり地域の支援機関と連携して個別支援を行う「チーム支援」をハローワーク

の業務として明確に位置づけるとともに、地域の支援機関の機能に応じた役割の調

整を行い、一貫した効果的な支援となるよう、関係機関に対するコーディネートカ

を高めることが必要。

○ 知的障害者、精神障害者等のよりきめ細かな支援を必要とする求職者の増加を踏

まえ、質の高い職業紹介を行うことが求められ、職員研修の充実等を通じて障害者

担当の専門性を高めるとともに、十分な実施体制を確保することが必要。

(地域障害者職業センター)

○ 中核的な職業リハビリテーション機関として設置され、障害者職業総合センター

を中心に全国ネットワークを形成し、豊富な支援実績に基づくノウハウを集約して

蓄積しており、地域の就労支援の広がりの中で、その高度な専門性とノウハウの蓄

積を活かした業務の展開を図るべき。

○ 地域の支援機関による質の高い就労支援が、どの地域においても提供されるよう

にするためには、今後は、

(丑 地域において就労支援を担う専門的な人材の育成

② 地域の支援機関に対する助言・援助

の業務を同センターの基幹業務の-1一つとして位置づけ、地域の就労支援力の底上げ

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を図ることが必要。

○ また、地域の就労移行支援事業等の支援機関との役割分担を明確にし、地域セン

ターにおいては、就職等の困難性の高い障害者(精神障害者、発達障害者等)に対

する専門的支援を自ら実施することとすべき。

○ 地域センターの業務の新たな方向性を踏まえ、実施体制の充実や障害者職業カウ

ンセラーの資質の一層の向上を図ることが必要。

(障害者就業・生活支援センター)

○ 就業面と生活面の一体的な支援を行う身近な地域の職業リハビリテーション機関

として、着実に実績をあげている。

○ 地域の関係機関と連携しながら、相談から就職準備、職場定着に至るまで、障害

者に必要な支援をコーディネートする役割が求められ、地域のネットワークの一員

として不可欠な存在であることから、すべての障害保健福祉圏域への設置を、計画

的かつ早急に進めることが必要。

○ また、様々なニーズを有する障害者に対する支援をコーディネートする機能を十

分に発揮していくためには、専門性の高い人材の育成・確保を図ることが重要であ

り、事業の委託の在り方を見直すとともに、支援担当者の専門性を高めるための研

修の充実を図ることが必要。

○ さらに、センターの支援により就職を実現した利用者をはじめ、支援対象者が増

大していることを踏まえ、地域のニーズ及び支援実績等を勘案しつつ実施体制の充

実を図ることが必要。また、定着支援に果たす役割をセンターの業務としてあらた

めて明確に位置づけるとともに、定着支援機能の強化を図ることが重要。

(障害者雇用支援センター)

○ 就職が特に困難な知的障害者等に対する長期的な職業準備訓練の場として、全国

14カ所に設置され、地域において就労支援の実績をあげてきたところ。

○ 障害者自立支援法の施行により、目的・機能が雇用支援センターときわめて類似

する就労移行支援事業が創設され、全国に展開されつつあることから、センターの

制度的な位置づけを見直す必要が生じており、地域の実情を踏まえつつ、就労移行

支援事業に移行することが適当であると考えられる。

(就労移行支援事業者)

○ 新たに就労移行支援に取り組む事業者が相当数見込まれており、各事業者が支援

の質を確保し、良質なサービスを提供するためには、事業者自ら就労支援に関する

専門性の向上等に取り組むことが必要であるとともに、地域センターが技術的・専

門的な観点から助言・援助を行うことも有効。

○ 利用者の訓練終了後の就職を円滑に進めるためには、ハローワーク等の労働関係

機関との連携を図ることが重要であるとともに、就職後の定着支援については、障

害者就業・生活支援センター等と連携してサポートしていくことが重要。

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(特別支援学校)

○ 学校卒業後の成人期における職業生活の充実に向けて、職業教育の充実、指導内

容・方法の改善、職場実習の拡充等を、地域の関係機関と連携しながら進めること

が必要。また、進路指導担当教員の専門性の向上や進路指導体制を充実することも

重要。

○ 卒業後も継続して必要な支援が受けられるよう、「個別の教育支援計画」の策定段

階から関係機関との連携を図り、卒業後の支援体制の構築につなげていくことが重

要。

就労支援を担う人材の分野横断的な育成・確保の在り

○ 就労支援の強化が求められる中で、支援の担い手の育成と専門性の確保が追いっ

いていないことから、人材育成の取組を強化することが不可欠。

○ 人材育成に当たっては、就労支援の裾野を広げること、専門性を高めることの双

方から育成を進めることが必要であり、そのためには、専門的支援を行うジョブコ

ーチを含め、就労支援を担う人材に必要なスキル・能力をレベルごとに明確化する

とともに、育成方法についても体系化することが重要。

○ 人材育成方策の具体化に当たっては、必要な知識・スキル等の能力要件、研修カ

リキュラム、一定の資質・水準を確保するための能力評価の仕組み等について、今

後、幅広い見地から検討していくことが必要。

○ 支援機関と雇用の現場をつなぐジョブコーチの育成・確保が重要であり、全国で

養成研修が受けられる体制をつくることが求められるとともに、養成研修について

は一定の水準を確保することも重要。

連携による就労支援を効果的に実施するためのツールの整

○ ネットワークの支援機関の間の共通理解を促進し、雇用、福祉、教育等の各分野

の連携による支援を効果的に進めるため、支援に当たって必要な情報や支援ツール

(個別の支援計画等)を共有できるようにすることが重要である。

:う

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福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会報告書(抜粋)

- ネットワークの構築と就労支援の充実をめざして -

平成19年8月

Ⅰ福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の現状

第2 就労支援を担う

1.就労支援を担う人材の育成

○ 就労支援を担う人材の育成については、国の施策として、高齢・障害者雇用支援

機構(障害者職業総合センター)において取り組むとともに、ジョブコーチ(職場

適応援助者)の養成については、民間機関においても実施されている。

○ 障害者職業総合センターにおいては、職業リハビリテーションの専門的な知識を

有する人材を育成するため、機構職員である障害者職業カウンセラーの養成・研修

及び福祉、医療・保健、教育等の関係職員を対象とした職種別・課題別の専門的・

技術的研修(ジョブコーチ養成研修を含む。)を実施している。

また、地域障害者職業センターにおいても、ジョブコーチ養成研修を行うととも

に、地域の職業リハビリテ ーションネットワークの育成を図るため、職業リハビリ

テーションに関する基礎的知識を提供する基礎講座、就労支援に関する情報交換や

意見交換を行うフォーラムを実施している。さらに、地域の関係機関や企業に対す

る日常的な支援として、ケース会議を通じた支援ノウハウの提供、関係機関が主催

する研修会への講師の派遣等を行っている。

○ 就労支援に関する研修ニーズが高まる中、就労支援担当者等を対象とした研修や

セミナー等に取り組む地方自治体や民間機関が増えつつある。

2.ジョブコーチ(職場適応援助者)の育成

○ ジョブコーチ養成研修(職場適応援助者養成研修)については、平成14年のジョ

ブコーチ事業の創設以降、高齢・障害者雇用支援機構において実施してきたところ

である。

○ 平成17年の障害者雇用促進法の改正により、ジョブコーチ助成金(職場適応援助

者助成金)を創設したことに伴い、民間機関のノウハウを活用してジョブコーチの

裾野を広げることとし、助成金の支給対象となるジョブコーチ養成研修について、

厚生労働大臣が定める仕組みを創設した。

○ 厚生労働大臣が定める基準に基づき指定された研修は、平成19年4月現在、第1

号ジョブコー チ養成研修、第2号ジョブコーチ養成研修ともに3機関となっており、

いずれも、これまで就労支援を担う人材の育成に関わってきた民間機関が、蓄積し

たノウハウを活かしてジョブコーチ養成研修の実施に取り組んでいる。

ー1

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Ⅲ 福祉、教育等との連携による障害者の就労支援策の今後の在り方

第3 就労支援を担う人材の分野横断的な育成・確保の在り

1.就労支援を担う人材の育成・確保

(人材育成の必要性)

○ 就労支援の強化が求められる中で、就労支援の知識・ノウハウを習得するための

基礎的な研修やスキルアップの機会等が不足しており、支援の担い手の育成と専門

性の確保が追いっいていないことから、人材育成の取組を強化することが不可欠で

ある。

○ 人材の育成に当たっては、就労支援の裾野を広げるための育成と、専門性を高め

るための育成の双方を進めることが必要であり、そのためには、専門的支援を行う

ジョブコーチを含め、就労支援を担う人材に必要なスキル・能力をレベルごとに明

確化するとともに、育成方法についても体系化することが重要である。

○ 人材育成方策の具体化に当たっては、必要な知識・スキル等の能力要件、研修カ

リキュラム、一定の資質・水準を確保するための能力評価の仕組み等について、今

後、幅広い見地から検討していくことが必要である。

(レベルに応じた段階的な育成)

q 就労支援に必要なスキル・能力のレベルは、求められる役割や専門性の水準、ス

テップアップ等を考慮すると、概ね次のように整理できると考えられる。

・初級レベル:上級者の指示の下、上級者の策定する支援計画に基づき、基本的

な就労支援業務を行えるレベル

・ 中級レベル:アセスメントや支援計画の策定、関係機関との調整等を自らでき

るレベル

・上級レベル:専門知識と豊富な実践経験に基づき、就労支援業務について担当

者を指導(スーパーバイズ)するとともに、地域のネットワークを

踏まえた就労支援業務をマネジメントできるレベル

なお、これらには、障害者への支援に係るスキルだけではなく、ジョブコー チが

行うような企業への支援に係るスキルも含まれる。

○ 質の高い人材を確保するためには、キャリア形成に配慮しつつ、上記のような就

労支援に必要なスキル・能力のレベルに応じた段階的な育成を図ることが重要であ

り、将来的には、専門職として社会に認知されるような制度を検討することも必要

である。

(育成の視点)

○ 研修の企画・実施に当たっては、座学だけではなく、ケーススタディ等の演習や

就労支援の現場での実習等を取り入れ、実践的なノウハウを学べるようにすること

が重要である。

○ 障害者の支援に携わる者の多くは企業で働いた経験がないために、-一般雇用に関

する理解が十分でないことが多い。このため、特例子会社など障害者雇用の経験豊

富な企業の積極的な活用を図り(企業人材の活用、研修における企業の現場の活用

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等)、企業風土の理解や支援ノウハウの習得を図ることも有効である。

○ 障害のある従業員を支えるためには、外部機関の支援を活用することも有効であ

るが、ナチュラルサポートという観点から、企業自身が恒常的にサポートする力を

つけることが必要である。職場で教育・指導に当たる立場の人材が、障害特性に関

する知識、雇用管理ノウハウを習得することが重要である。

○ 就労支援に関する基本的な知識・ノウハウについて体系的に学べるテキストは限

られていることから、例えば、障害者職業総合センターが作成してきたテキスト等

を活用し、職業リハビリテーションに関する基本テキストとして普及を図ることも、

有効であると考えられる。

(育成の担い手)

○ 全国各地で研修の機会が求められていることから、全国的なネットワークとノウ

ハウを有する高齢・障害者雇用支援機構が、障害者職業総合センターや地域障害者

職業センターを拠点として、率先して専門的な人材の育成に取り組むことが必要で

ある。

○ 地域によっては、地方自治体やノウハウを有する民間機関が、ジョブコーチや就

労支援担当者等を対象とした研修やセミナー等を企画・実施しており、就労支援を

担う人材の裾野を広げる上で、こうした取組を進めることは重要である。

また、地方自治体や民間機関によるこうした取組をより効果的に推進していくた

めには、必要に応じて、高齢・障害者雇用支援機構が講師の派遣やノウハウの提供

を行うなど、研修等に取り組む機関と連携・協力することも有効であると考えられ

る。

(大学等におiナる取組への期待)

○ 生活支援を含む支援の様々な場面において、 障害者の支援に携わる者が「一般雇

用」を意識して支援に当たることは、一般雇用を希望する障害者がその実現の可能

性を高めていくためにも、重要であることから、福祉系人材や教員を輩出する大学

の課程や、社会福祉士等の福祉分野の専門資格の取得に必要なカリキュラム等にお

いて、職業リハビリテーションに関する講座や内容が盛り込まれることが重要であ

る。

○ また、大学において、地域の就労支援担当者を対象とした公開講座の一つとして、

就労支援に関する専門講座を開講することも有効であり、こうした取組が広がって

いくことが重要である。

2.ジョブコーチ(職場適応援助者)の育成・確保

(ジョブコーチの育成の必要性)

○ ジョブコーチ(職場適応援助者)は、直接職場に出向いて、障害者及び事業主双

方に対し、仕事の進め方やコミュニケーション等の職場で生じる様々な課題や職場

の状況に応じて、課題の改善を図るための支援を一定期間で集中的に行っている。

このようなジョブコーチ支援は、障害者の円滑な就職と職場への適応を進める上で、

きわめて有効な方策であるし)

3 ▼

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○ 地域の支援機関が就労支援の力をつけ、連携による支援を効果的に進めるために

は、支援機関と雇用の現場をつなぐ重要な役割を担うジョブコーチの育成と専門性

の確保が重要である。

ジョブコーチ支援のスキルの習得に対するニーズは相当に高く、全国各地で養成

研修が受けられる体制をつくることが求められるが、あわせて、養成研修について

は一定の水準を確保することも重要であり、養成研修の指定基準を明確にするとと

もに、基準を踏まえた的確な運用が求められる。

(育成の視点)

○ ジョブ コーチとしての支援力を身につけるには、養成研修の受講だけでは十分と

言えず、研修受講後も、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、

就労移行支援事業者等の組織的に就労支援に取り組む機関において就労支援に携わ

りながら、実践経験の豊富なジョブコー チとのペア支援によるOJT、経験の積み

重ね、ケーススタディ等を通じて、様々な課題に対応できる力をつけていくことが

必要である。

さらに、アセスメントや支援計画の策定、経験の少ないジョブコーチへの支援技

術の伝‡受、指導(スーパーバイズ)をできるようになることが求められ、そのため

のスキルアップを図る仕組みを検討することが必要である。

○ 実践経験の豊富な高いスキルを有するジョブコーチを配置・活用する方策の検討

に当たっては、職場適応援助者助成金制度の在り方と絡めて検討することが必要で

ある。

(所属する機関の特性を活かした効果的な支援の実施)

○ ジョブコーチは、地域障害者職業センターの配置型ジョブコーチ、障害者の就労

支援を行う社会福祉法人やNPO法人等が配置する第1号ジョブコーチ、企業が配

置する第2:号ジョブコーチと、その配置先によって3種類に分類されているが、そ

れぞれの所属する機関の特性を活かした効果的な支援を行うことが求められる。

○ 配置型ジョブコーチについては、就職等の困難性の高い障害者(精神障害者、発

達障害者、難病者等)に対する専門的な支援を担うとともに、第1号ジョブコーチ

を幅広く育成していく中で、ペア支援等を通じた第1号ジョブコーチの支援のスキ

ルアップにそのノウハウが活用されるべきである。

第1号ジョブコーチについては、主として、障害者本人をよく理解している身近

な支援者としての支援を行うことや、所属する機関が得意とする分野(障害の種類

等)のノウハウを活かした支援を担うことが期待される。

障害者雇用の経験豊富な企業においては、自社の職場環境や職務内容、人間関係

等に精通する者を、第2号ジョブコーチとして積極的に配置・活用することが効果

的である。また、障害者雇用の経験やノウハウが少ない企業については、配置型ジ

ョブコーチ及び第1号ジョブコーチが支援ノウハウを伝え、企業自身でナチュラル

サポートができるように援助する必要がある。

・一l

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社会福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて

1.社会福祉士制度の施行から現在に至るまでの間に、介護保険制度の施行等による

措置制度から契約制度への転換など、社会福祉士を取り巻く状況は大きく変化して

おり、今後の社会福祉士に求められる役割としては、

① 福祉課題を抱えた者からの相談に応じ、必要に応じてサービス利用を支援する

など、その解決を自ら支援する役割

② 利用者がその有する能力に応じて、尊厳を持った自立生活を営むことができる

よう、関係する様々な専門職や事業者、ボランティア等との連携を図り、自ら解

決することのできない課題については当該担当者への橋渡しを行い、総合的かつ

包括的に援助していく役割

(∋ 地域の福祉課題の把握や社会資源の調整・開発、ネットワークの形成を図るな

ど、地域福祉の増進に働きかける役割

等を適切に果たしていくことが求められている。

2.今後の社会福祉士の養成課程においては、これらの役割を国民の福祉ニーズに応

じて適切に果たしていくことができるような知識及び技術が身に付けられるよう

にすることが求められており、具体的には、

① 福祉課題を抱えた者からの相談への対応や、これを受けて総合的かつ包括的に

サービスを提供することの必要性、その在り方等に係る専門的知識

② 虐待防止、就労支援、権利擁護、孤立防止、生きがい創出、健康維持等に関わ

る関連サービスに関わる基礎的知識

③ 福祉課題を抱えた者からの相談に応じ、利用者の自立支援の観点から地域にお

いて適切なサービスの選択を支援する技術

④ サービス提供者間のネットワークの形成を図る技術

⑤ 地域の福祉ニーズを把握し、不足するサービスの創出を働きかける技術

⑥ 専門職としての高い自覚と倫理の確立や利用者本位の立場に立った活動の実

践等を実践的に教育していく必要がある。

3.以上を踏まえ、実践力の高い社会福祉士を養成する観点から以下のような視点で、

教育力リキュラムの見直しを行うこととする。

【時間数】

○ 一般養成施設については、現行の1年以上という修業年限を前提としつつ、新

たな分野の追加等により、1,200時間まで充実を図る。

○ 短期養成施設については、現行の6月以上という修業年限を前提としつつ、教

育時間数は一般養成施設の教育カリキュラムの見直しを踏まえて、660時間まで

充実を図る。

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社会福祉士養成課程における教育内容等の見直し(就労支援関連部分抜粋)

社会福祉士介護福祉士学校指定規則

(平成二十年三月二十四日文部科学省・厚生労働省令第二号)

(社会福祉士の養成に係る学校の指定基準)

第三条 法第七条第二号に規定する学校(別表第一及び別表第三において「社会福

祉士短期養成学校」という。)に係る令第二条に規定する主務省令で定める基準は、

次のとおりとする。 一 昼間課程及び夜間課程に係る基準

ハ 教育の内容は、別表第一に定めるもの以上であること。

別表第一(第三条、第四条関係)

時間数

科目 社会福祉士短期養成学 社会福祉士一般養成学

校 校

人体の構造と機能及び疾病 三○

心理学理論と心理的支援 三○

社会理論と社会システム 三(⊃

現代社会と福祉 六○ 六○

社会調査の基礎 三(⊃

相談援助の基盤と専門職 六○

相談援助の理論と方法 一二⊂) 一二○

地域福祉の理論と方法 六○ 六○

福祉行財政と福祉計画 三(⊃

福祉サービスの組織と経営 三○

社会保障 六○

高齢者に対する支援と介護保険制度 六(⊃

障害者に対する支援と障害者自立支援制度 三○

児童や家庭に対する支援と児毒・家庭福祉制度 三○

低所得者に対する支援と/l三活保護制度 三⊂)

保健医療サービス 三(⊃

就労支援サービス 一斉二

三(⊃

更生保護制度 一五

相談援助演習 一五(⊃ 一五C)

相談援助実習指導 九⊂) 九○

一八〔〕 一一八○ 権利擁護と成年後見制度 相談援助実習 合計 六六〔〕 、二00

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社会福祉士養成施設の設置及び運営に係る指針

(平成20年:;月28日付け厚生労働省社援発第0328001号)

8 教育に関する事項

(1)養成施設指定規則別表第1に定める科目の教育内容は、別表第1の内容以上で あること。

別表1

教育内容

ねらい 教育に含むべき事項

サービス (D 相談援助活動におい (∋ 雇用・就労の動向と労

て必要となる各種の就労 働施策の概要

支援制度について理解す ② 就労支援制度の概要

る。 (∋就労支援に係る組織、団

(∋ 就労支援に係る組織、 体の役割と実際

団体及び専門職について ④ 就労支援に係る専門

理解する。 職の役割と実際

③就労支援分野との連携 (9 就労支援分野との連

について理解する。 携と実際

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(新たな教育力リキュラムの全休像)

大学等においては三

大学等においては三

科目のうち、一科目

科目のうち、一科目

「し′」

「・ト」

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新たな教育力リキュラム「就労支援サービス(15時間)」

シラバスの内容

ねらい 含まれるべき 想定される教育内容の例

事項

・相談援助 (D 雇用・就 ○ 雇用・就労の動向 ・労働市場の動向

活動において 労の動向と労 ・ライフスタイルに応じた多様な働き方

必要となる各 働施策の概 ・障害者の雇用・就労を取り巻く情勢

種の就労支 ・その他

援制度につい ○ 労働法規の概要

て理解する。

制度の概要 労 支援制度 ・社会適応訓練事業 ・就労支援 ・自立支援プログラム

に係る組織、 ・ハローワークの取組

団体及び専 ・その他 門職について ○ 障害者福祉施策における ・就労移行支援事業 理解する。 就労支援制度 ・就労継続支援事業A型

・就労継続支援事業B型 ・就労支援 ・その他 分野との連携 ○ 障害者雇用施策の概要 ・障害者雇用率制度、職業リハビリテーション について理解 の実施体制等 する。 ・その他

(卦就労支援

に係る組織、

団体の役割と

実際 ○ 都道府県の役割

○ハローワークの役割と活

動の実際

○ 職業リハビリテーション機 ・ハローワークにおける障害者の職業相談・

関 の役割と活動の実際 職業紹介

・地域障害者職業センターにおける職業リハ ビリテーション

・障害者就業・生活支援センターの取組

・その他

○障害福祉サービス事業

所■障害者支援施設の役割

④ 就労支援 ○ 生活保護制度に係る専門 ・現業員の役割

に係る専門職 ・その他

の役割と実際

門職の役割 ・就労支援員の役割

・その他

○ 職業リハビリテーションに ・職場適応援助者(ジョブコーチ)

係る専門職の役割 ・障害者職業カウンセラー

・その他

(9 就労支援 ○ ハローワークとの連携(生 ・生活保護制度におけるハローワークとの連

分野との連携 活保護制度関係) 携の方法、連携の実際

と実際 ・その他

○ 障害者雇用施策との連携 ■職業リハビリテーション機関との連携の方

法、連携の実際

・その他

○ 障害者福祉施策との連携 ・障害福祉サービス事業所・障害者支援施設

との連携の方法、連携の実際

・その他

○ 教育施策との連携 ・特別支援学校との連携の方法、連携の実

・その他