未病社会の診断技術講演会 - mibyo-shindan.org · デキサメサゾン抑制試験 "...
TRANSCRIPT
-
未病社会の診断技術講演会
2013/12/13
-
④ 講演料料など 旭化成ファーマ株式会社 ⼤大塚製薬株式会社協和発酵キリン株式会社 グラクソ・スミスクライン株式会社⼤大⽇日本住友製薬株式会社 中外製薬株式会社⽇日本イーライリリー株式会社 ノバルティスファーマ株式会社ファイザー株式会社 ブリストル・マイヤーズ株式会社 Meiji Seikaファルマ株式会社 ヤンセンファーマ株式会社⑥ 受託研究・共同研究費 アボットジャパン株式会社 ⼤大塚製薬株式会社 ⼤大⽇日本住友製薬株式会社 ⽥田辺三菱菱製薬株式会社 中外製薬株式会社 ファイザー株式会社
Meiji Seikaファルマ株式会社 ヤンセンファーマ株式会社
発表に関連し、開⽰示すべきCOI 関係にある企業等は以下のとおりである。(2012年年4⽉月〜~2013年年3⽉月):
-
精神神経疾患の社会負担
• WHOのGlobal Burden of Disease(GBD)研究では、2004年年版(2009年年発表)から、国別のDALY(Disability Adjusted Life Years)値を発表
• 精神神経疾患が⽇日本国⺠民の死亡を含めたQOL損失の最⼤大の原因
• ⻑⾧長期休職の最⼤大の原因はうつ病
WHO World Health Report 2004, published February 2009 (h;p://www.who.int/healthinfo/global_burden_disease/esDmates_country/en/index.html)
順位 疾患日本におけるDALY%
1 精神神経疾患 20.72 悪性新生物 18.53 心血管疾患 15.24 感覚器官疾患 7.55 筋骨格疾患 5.76 呼吸器疾患 5.57 意図せぬ怪我 5.08 意図的な怪我 4.59 消化器疾患 4.110 呼吸器感染症 2.511 糖尿病 2.4
-
精神疾患の現状
Ø ⽇日本国⺠民の死亡を含めたQOL損失の最⼤大の原因は 精神神経疾患Ø 世界的にがん、循環器疾患、精神疾患が3⼤大疾患Ø 2011年年厚労省省は精神疾患を5⼤大疾病に位置づけØ 国⺠民の40⼈人に1⼈人が現在、精神疾患で治療療中Ø ⼊入院患者数の最⼤大は統合失調症(20万⼈人、13.5%)Ø ⻑⾧長期休職の最⼤大の原因はうつ病Ø ⾃自殺者3万⼈人(40⼈人に1⼈人以上)→半数以上がうつ病
-
5
精神疾患の研究は喫緊の課題脳科学が進歩した今、解明の機運「精神疾患解明の10年年」精神疾患の理理解と治療療を⼤大きく改善するため、精神医学、⽣生物学などが協調して取り組みを進めるべき時だ
-
想像される“新型うつ“問題の構図
1. 未熟な若若者が職場に不不適応を起こす2. メンタル問題は専⾨門家へ、と精神科受診を促す3. うつ病ではないが症状がないわけではない、として、“うつ状態”等の曖昧な診断書を発⾏行行
→ 診断も対策も曖昧な“患者”ができあがる
(森健 週刊⽂文春 2012年年6⽉月21⽇日 p48-‐‑‒51)
-
問題克服に必要なこと
うつ病を、症状でなく脳病態に基づいて分類– 症状だけでは“悩み(不不適応)”と”病気(うつ病)“の鑑別は困難。
– 脳に病変がないとは⾔言えても、精神的に”正常“との診断は困難)
検査法の開発 ⾎血液検査 脳画像診断
-
うつ病は単⼀一の原因によるものではない
うつ病
メランコリー型 (性格、ストレス)
非定型うつ病 (パーソナリティー、
不安障害)血管性うつ病
季節性うつ病
神経変性疾患に よるうつ病
双極スペクトラム うつ病
実際には鑑別は困難→最大公約数的な診断 =「うつ病問題」の根源 脳病態に基づいた分類・診療が必要
-
うつ病の研究ポイント
ストレス
うつ病
遺伝子
神経回路の障害
身体疾患・薬
環境 栄養
DNAの変化養育
ストレス脆弱性
-
うつ病研究の⽅方法
分⼦子DNA遺伝学
細胞 神経回路路
動物モデル死後脳研究
脳
脳画像
-
うつ病とセロトニン
抗うつ薬はセロトニンを増やすセロトニン⽋欠乏は再発を招く →うつ病=セロトニン⽋欠乏?セロトニンの増加は投与1時間で⽣生じる抗うつ薬の効果が現れるのには1〜~2週間セロトニンだけでは説明できない →抗うつ薬⻑⾧長期服⽤用後に何が起きる?
抗うつ薬は脳由来神経栄養因⼦子(BDNF)を増やす
(丹丹⽣生⾕谷、森信、Duman、J Neurosci 1995)
-
突起を伸ばす
(週刊東洋経済 20107月24日号より)
-
うつ病の発症メカニズム
抗うつ薬はセロトニンを介してBDNFを増やすBDNFは神経細胞を成⻑⾧長させる因⼦子ストレスで神経細胞が萎縮うつ病=神経細胞が萎縮する病気?
14
健康な状態ストレス 抗うつ薬
海馬歯状回
海馬アンモン角
• 動物でストレスによる神経細胞変化の研究
• 患者死後脳の研究 (週刊東洋経済 2010年7月24日号より)
-
デキサメサゾン抑制試験とは
夜間にデキサメサゾン(人工コルチゾール) を投与
翌日血漿コルチゾール測定
低値 高値
抑制 非抑制
うつ病
-
1968年
患者24名中17名が非抑制 (Br Med J. 3: 285–287, 1968)
-
うつ病におけるHPA系の異異常
コルチゾールの過剰分泌泌¤ 尿尿中遊離離コルチゾール値の上昇¤ ⾎血中レベルの上昇¤ 脳脊髄液中の濃度度上昇
コルチゾール分泌泌リズムの異異常=⽇日内変動 の振幅の低下デキサメサゾンによる、負のフィードバック 反応の⽋欠如
¤ Dexamethasone suppression test (DST)で⾮非抑制¤ DEX/CRH testで⾼高反応
脳脊髄液中のCRH⾼高値リンパ球のグルココルチコイド受容体数の 減少CRH負荷テストでACTH反応が低下
¤ メチラポン投与により正常化するため コルチゾール⾼高値が原因と考えられてい る。
⾃自殺者死後脳での、CRH受容体結合数の減少副腎肥⼤大、下垂体肥⼤大
-
h-‐‑‒CRH100μg静注
前⽇日 当⽇日デキサメサゾン(合成グルココルチコイド)1.5mg内服
23:00 14:30 15:00 15:30 15:45 16:00 16:15
静脈確保
採⾎血⇒ACTHとコルチゾール測定
DEX/CRHテスト -HPA系異異常を検出するより鋭敏な検査-
簡便便法(Kunugi et al, 2006)では、15:00と16:00の2回のみ採⾎血。ACTHの測定は省省略略する(コルチゾールとの相関が⾮非常に強いため)。
-
Main results:・DEX/CRHテストでみら れたHPA系の機能亢進は、 治療療によって著明に改善・特に、薬物療療法に加えて 通電療療法を⾏行行った患者で は著明に改善。・状態依存的指標
治療療前後におけるDEX/CRH テスト所⾒見見の変化
-
うつ病における視床下部-下垂体-副腎⽪皮質系のフィードバック抑制障害
20
ストレス
視床下部
CRH 下垂体
ACTH
副腎皮質
コルチゾール
海馬
ステロイド受容体
抑制
-
デキサメサゾン抑制試験
l 特に「内因性」(メランコリー型)うつ病患者で⾮非抑制率率率が⾼高い
l うつ病が改善すると正常化するl 退院時も異異常だと再発率率率が⾼高いl うつ病以外の精神疾患でも⾮非抑制(統合失調症、双極性障害、摂⾷食障害等)
l ⾮非定型うつ病では逆に過抑制l (直接⽐比較した研究はない)
21
-
検査実⽤用化に向けての課題
●⼤大規模臨臨床研究が⾏行行われていないØ 精神科医は診療療で⼿手⼀一杯?Ø 研究者⼈人⼝口が少なく⼤大規模研究費も少なかった(2011年年より「脳科学研究戦略略推進 プログラム開始)
●精神疾患の臨臨床研究の推進が必要
-
TrkA TrkB TrkC p75
Death domainTyrosinekinase domain
NGF ProBDNF NT4/5 NT3
Proprotein
Matureprotein
High affinity
栄養因⼦子の効果
Low affinity
Higher affinity
Apoptosis
• Proliferation(増殖) ・ differentiation(分化)• survival(⽣生存) ・plasticity(可塑性)
神経栄養因⼦子と受容体
BDNF
-
Plasma proBDNF
(国⽴立立精神・神経センターと産総研⼩小島先⽣生)
-
うつ病の認知パターンと認知療療法
うつ病における認知の歪み 全てか無か思考、過剰な⼀一般化等3つのコラム法等を⽤用いて認知の歪みに気づき、修正していく
⾃自動思考 認知の歪み 合理理的思考アンケートで批判されたからこの五⽉月祭企画は完全な失敗だ
全てか無か思考 少なくとも皆楽しんでやった友達は良良かったと⾔言ってくれた満点ではないが80点は取れた
試験に落落ちた⾃自分は無能な⼈人間だ
過剰な⼀一般化 良良い点を取れた試験もあるこの試験は多くの⼈人が追試だ両極端な判断→「情動」の特徴
(闘争 or 逃走, Fight or Flight)
-
うつ病では扁桃体が過活動
(Roberson-‐Nay R, Biol Psychiatry 2006)
-
うつ病では扁桃体を抑制する部位(内側前頭前野)の活動が低下
-
うつ病のニューロフィードバック療法の可能性
-
NIRS波形パターン
oxy-Hb deoxy-Hb
-
CH35, 36, 37, 38, 39, 46, 47, 48, 49(前頭部)のROI平均波形
⾔言語流流暢性課題-0.5
0.5 oxy-‐‑‒Hb deoxy-‐‑‒Hb
-
統合失調症うつ病 躁うつ病健常者
健常者、うつ病、躁うつ病、統合失調症の前頭部平均波形
⾔言語流流暢性課題oxy-‐‑‒Hb deoxy-‐‑‒Hb
-
精神疾患研究のストラテジー
ゲノム研究でまれな原因遺伝⼦子発⾒見見 動物モデル作成
モデルの妥当性の確認
死後脳研究で確認
脳病態診断法の開発脳病態診断法の確⽴立立
臨臨床単位として確⽴立立
根本的治療療法・予防法の開発
脳病態の解明
臨臨床試験
エンドフェノタイプ研究
-
問題克服に必要なこと
●うつ病を、症状でなく脳病態に基づいて分類-症状だけでは“悩み(不不適応)”と”病気(うつ 病)“の鑑別は困難。-脳に病変がないとは⾔言えても、精神的に”正常” との診断は困難)
●検査法の開発 ⾎血液検査 脳画像診断
-
未病社会の診断技術講演会
-
④ 講演料料など グラクソ・スミスクライン株式会社ファイザー株式会社 Meiji Seikaファルマ株式会社 ⑥ 受託研究・共同研究費 ⼤大塚製薬株式会社 ⼤大⽇日本住友製薬株式会社 ⽥田辺三菱菱製薬株式会社 中外製薬株式会社
発表に関連し、開⽰示すべきCOI 関係にある企業等は以下のとおりである。(2012年年4⽉月〜~2013年年3⽉月):
-
④ 講演料料など 旭化成ファーマ株式会社 ⼤大塚製薬株式会社協和発酵キリン株式会社 グラクソ・スミスクライン株式会社⼤大⽇日本住友製薬株式会社 中外製薬株式会社⽇日本イーライリリー株式会社 ノバルティスファーマ株式会社ファイザー株式会社 ブリストル・マイヤーズ株式会社 Meiji Seikaファルマ株式会社 ヤンセンファーマ株式会社⑥ 受託研究・共同研究費 アボットジャパン株式会社 ⼤大塚製薬株式会社 ⼤大⽇日本住友製薬株式会社 ⽥田辺三菱菱製薬株式会社 中外製薬株式会社 ファイザー株式会社
Meiji Seikaファルマ株式会社 ヤンセンファーマ株式会社
発表に関連し、開⽰示すべきCOI 関係にある企業等は以下のとおりである。(2012年年4⽉月〜~2013年年3⽉月):
-
⾝身体的ストレスは瞬時に起こる反応、ストレスから逃れるために必要、きわめて適応的逃避⾏行行動はエネルギー代謝の変化を必要とするが、いったんその⾏行行動が終われば⽣生理理的反応は基準値に戻る
⾝身体的ストレス
-
⼼心理理的ストレスは多くの場合慢性的
通常は短い時間経過で停⽌止すべき内分泌泌や免疫系の反応が⻑⾧長期にわたり活性化ストレスに対する⾝身体の応答が永続的に変化(病気が始まる?)
-
(ウォーレンシュタイン G著、功⼑刀浩訳:ストレスと⼼心の健康, 2005より)
視床下部延髄
ノルアドレナリン神経核
扁桃核
⻘青斑核下垂体前葉葉
副 腎
ノルアドレナリン
ノルアドレナリン
ノルアドレナリンとアドレナリン
ノルアドレナリン ノルアドレナリン
グルココルチコイド
ストレスへのホルモンの反応
ストレスへの⾃自律律神経系の反応
CRH
ACTH CRH
-
(中村彰治ら:脳21 9-‐‑‒12, 2006)
-
ストレスと脳(動物実験の結果)
⼈人⽣生早期のトラウマは成⼈人期のストレス応答を変化させる ・ハーロー(1950年年代から20年年間の研究) ⺟母⼦子分離離のアカゲザル(⽣生後6カ⽉月) 成⻑⾧長後、ストレスに対処できない
-
幼少時のトラウマはストレス応答を変化させる
児童期に虐待を受けたことのある⼤大⼈人は、⼼心理理的ストレスに対する⽣生理理的反応が有意に増⼤大している ・HPA系の反応増強 ・⾃自律律神経系の反応増⼤大
-
遺伝と環境の相互作⽤用
エピジェネティクス研究への期待 精神疾患の多くは遺伝環境相互作⽤用により、ストレス脆弱性が形成され、ストレスに曝されて発症すると考えられる。 エピジェネティクス研究は、このような遺伝環境相互作⽤用の結果、細胞・組織に封印された変化を検出する。 エピジェネティクス研究な⽬目印として、DNAメチル化やヒストン修飾が知られている。 例例) 良良好な養育環境で育った(出⽣生直後に⼗十分な⺟母性⾏行行動を受けた) 仔ラットはGRに関係する遺伝⼦子のメチル化を免れGRの発現量量が 保たれるが、環境不不良良の場合、メチル化を受けて、GRの発現が 低下し、うつ病類似の⾏行行動を⽰示す。
-
ストレス関連疾患
・ うつ病(気分障害) ・ 不不安障害 パニック障害 社会不不安障害 PTSD ・ ⼼心⾝身症 過敏性腸症候群 緊張型頭痛 ・ 摂⾷食障害
-
⽇日本におけるうつ病の有病率率率
10
8
6
4
2
0全体 男性
⽣生涯有病率率率12ヵ⽉月期間有病率率率
⼥女女性 20〜~34歳35〜~44歳45〜~54歳55〜~64歳 65歳以上
性別 年年齢
地域住⺠民におけるうつ病の頻度度(DSM-‐‑‒Ⅳ診断基準による「⼤大うつ病」)
調査⽅方法:岡⼭山市、⻑⾧長崎市および⿅鹿鹿児島県の2市町の20歳以上の住⺠民1664⼈人を対象に⾯面接調査を実施川上憲⼈人他:⼼心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究、平成14年年度度厚⽣生労働科学研究費補助⾦金金厚⽣生労働科学特別研究事業総括研究報告書
6.5
2.2
4.2
1.5
8.3
2.7
8.8
5.6
8.07.2
3.93.7
1.1
3.6
2.2
0.7
-
うつ病の健康⽣生活⽀支障度度うつ病は、2020年年には健康な⽣生活を障害する疾患の第2位になると予測されています。
Disability Adjusted Life Year (DALY) :WHOでは単に寿命の延⻑⾧長でなく、健康に⽣生活できる期間が重要と提唱されています
DALYsの健康な⽣生活を障害する疾患(1995年年)
rank cause1 下気道疾患2 下痢痢性疾患3 周産期の状態4 単極性⼤大うつ病5 虚⾎血性⼼心疾患6 エイズ(後天性免疫不不全症候群)7 脳⾎血管障害8 交通事故9 マラリア10結核
DALYsの健康な⽣生活を障害する疾患(2020年年)
rank cause1 虚⾎血性⼼心疾患2 単極性⼤大うつ病3 交通事故4 脳⾎血管障害5 慢性閉塞塞性肺疾患(COPD)6 下気道疾患7 結核8 戦争9 下痢痢性疾患10エイズ(後天性免疫不不全症候群)
World Health Report in 1999
-
でも侮ることのできない病気
● 「こころの⾵風邪」: 誰でも罹罹る病気という意味では正しいメッセージ
しかし、早期発⾒見見・早期治療療しないと「こころの肺炎」にもなりうる⾃自殺はうつ病の15%に⾒見見られることは⾒見見逃せない
-
脆弱性-ストレスモデル
脆弱性脳の神経伝達系の脆弱性ストレス ⼀一概に⾔言えないストレスの種類や程度度
うつ病の病因仮説
-
うつ病の「素因⼀一ストレスモデル」の概略略図[精神医学オンライン版のうつ病の神経⽣生物学の最新情報より改変]
⾏行行動的・情緒的変化
遺伝的罹罹病性 幼児期の外傷体験
障害を受けやすい表現型 ・ HPA系/CRFの機能亢進 ・ ノルアドレナリン系の機能亢進 ・ 海⾺馬における神経新⽣生の減少 ・ 海⾺馬における興奮毒性
ストレスのある⼈人⽣生上の出来事への感受性の増⼤大
⽣生物学的異異常
成⼈人期における外傷体験や⼈人⽣生上の出来事
(ウォーレンシュタイン G著、功⼑刀浩訳:ストレスと⼼心の健康, 2005より)
-
M. I. N. I.わかりやすい診断基準
-
A1 過去2週間の間、ほとんど毎⽇日持続して気分の NO Yes 1落落ち込み(抑うつ気分)が存在した。
A2 過去2週間の間、何事にも興味がわかない、あるいは NO Yes 2以前には楽しむことができたことも楽しめなくなった。⇒A1あるいはA2のいずれかがYesか? NO Yes
(⇒はただちに診断ボックスに進み、NOに○をつけて次に進む)
A. MAJOR DEPRESSIVE EPISODE
-
A3 A1あるいはA2が該当する場合 :a ほとんど毎⽇日の⾷食欲減退または増加。または1ヶ⽉月で NO Yes 3 体重が±5%以上変化(ダイエットや⾷食事療療法はしていない)
いずれかが該当すればYESb ほとんど毎晩の睡眠障害(寝つきの悪さ、中途覚醒、 NO Yes 4
早朝覚醒、過眠のいずれか)。c 話すテンポや体の動きが遅くなった、あるいはそわそわ NO Yes 5してじっとしていられない。
d ほとんど毎⽇日疲労感がある、あるいは気⼒力力が湧かない。 NO Yes 6e ほとんど毎⽇日、⾃自分には価値がない、あるいは罪責感 NO Yes 7
をいだく。f 集中⼒力力の低下、あるいは決断困難(ほとんど毎⽇日)。 NO Yes 8g 繰り返し⾃自分を傷つける、あるいは⾃自殺を考える、 NO Yes 9
死んでいれば良良かったと思う。
NO YES
MAJOR DEPRESSIVEEPISODE CURRENT
A4 A3が3項⽬目以上YESの場合YESに○。(A1あるいはA2がNOの場合には4項⽬目以上でYES)
-
※上の 1 から 9 の問題によって、仕事をしたり、家事をしたり、他の人と仲良くやっていくことがどのくらい困難になっていますか?
PHQ-9 Copyright © 1999 Pfizer Inc.
赤枠内で5つ該当した場合、「大うつ病性障害」の疑いあり
*5つのうち1つは、質問1または2が該当していること
点点点点
1 9
物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
気分が落ち込む、憂うつになる、または絶望的な気持ちになる
寝付きが悪い、途中で目がさめる、または逆に眠り過ぎる
疲れた感じがする、または気力がない
あまり食欲がない、または食べ過ぎる
自分はダメな人間だ、人生の敗北者だと気に病む、 または自分自身あるいは家族に申し訳がないと感じる
新聞を読む、またはテレビを見ることなどに集中することが 難しい
他人が気づくぐらいに動きや話し方が遅くなる、あるいはこれと 反対に、そわそわしたり、落ちつかず、ふだんよりも動き回る ことがある
死んだ方がましだ、あるいは自分を何らかの方法で 傷つけようと思ったことがある
1
2
3
4
5
6
7
8
9
全く困難でない やや困難 困難 極端に困難
1~ 4点 軽 微
5~ 9点 軽 度
10~14点 中等度
15~19点 中等度~重度
20~27点 重度
合計点 症状レベル
全
数日
半分以上 毎日
合計点:症状評価のための目安
-
うつ病の症状
監修:昭和⼤大学医学部精神医学教室教授 上島 国利利
うつ病の⾝身体状態
①睡眠障害⼊入眠障害熟眠障害早朝覚醒
②⾷食欲減退味覚異異常
③性欲減退ED(勃起不不全)不不感症⽉月経異異常
④その他易易疲労感脱⼒力力感無⼒力力感疼痛便便秘⼼心悸亢進
①気分・感情の異異常気分の抑うつ
②思考の異異常考えがまとまらない集中できない判断⼒力力・決断⼒力力が鈍る絶望感・劣劣等感
③意欲・⾏行行動の異異常⾏行行動量量の低下表情・⾝身振りの減少⽣生気に乏しい
④その他不不安・焦燥感
うつ病の精神状態
-
うつ病の⾝身体症状
川上富美郎郎:Clin Neurosci 15(9):1020, 1997より改変
症状 出現率率率(%)睡眠障害 82〜~100疲労・倦怠感 54〜~92⾷食欲不不振 53〜~94頭痛・頭重感 48〜~89性欲減退 61〜~78便便秘・下痢痢 42〜~76体重減少 58〜~74
-
うつ病にみられる症状患者さんは、⾃自分の症状をうまく伝えられません
睡眠障害
プライマリケアのためのうつ病診断Q&A, 北北原出版: 1997
0 20 40 60 80 100%
26% 94%
58% 89%
22% 84%
23% 66%
91%
85%
70%
58%
うつ病の主要な症状 は患者さん⾃自ら訴えた% は医師が聞き出した%
⾝身体症状
精神症状
不不安・取り越し苦労
抑うつ気分
仕事能⼒力力の低下
意欲・興味の減退
頭重・頭痛
⾸首・肩のコリ
疲労感・倦怠感
4%
3%
3%
3%
-
うつ病の診断の問題点
① 原因が明らかでないので、原因診断が できない② 臨臨床症状の組み合わせによる診断③ どうしてもバラつきが⽣生じる④ 診断に有⽤用なマーカー(指標)が必要
-
うつ病専⾨門外来で⾏行行っていること 開設:2005年年 診断:DSM-Ⅳ、SCID 重症度度評価:HAMD ⼀一般検査:⾎血算、⾎血液⽣生化学、ECG、brain CT 研究的検査 ① MRI② NIRS(near-‐‑‒infrared spectroscopy)③ PIP (Prepulse Inhibition)④ DEX-‐‑‒CRH テスト⑤ 遺伝⼦子解析
-
⼊入射光
検出光
⼤大脳⽪皮質深さ2〜~3cm
近⾚赤外光=650〜~1000mmの帯域近⾚赤外光を、頭⽪皮に設置した光ファイバーから照射→⼤大脳⽪皮質で散乱・反射し、バナナ型の経路路で頭⽪皮に戻ってくる光を検出・分析
NIRSによる脳⾎血流流の測定とは?
-
⼊入射光
ヘモグロビン濃度度増 減
検出光減 検出光増
(注) ヘモグロビンは光を吸収するため、脳⾎血量量(ヘモグロビン濃度度)の増減と検出光の増減は 反⽐比例例の傾向を⽰示します。
近⾚赤外光の波⻑⾧長によって、⽣生体組織での酸素化・脱酸素化ヘモグロビンによる吸収が異異なる→2波⻑⾧長以上で同時計測することで、⽣生体組織での酸素化・脱酸素化ヘモグロビン濃度度をそれぞれ算出できる
近⾚赤外光による脳機能計測原理理 (ヘモグロビン計測)
-
30秒 60秒 70秒
⾔言語流流暢課題例例:「え」で始まる
⾔言葉葉
160秒
統制課題 統制課題
測定課題
-
NIRS波形パターン
oxy-Hb deoxy-Hb
-
CH35, 36, 37, 38, 39, 46, 47, 48, 49(前頭部)のROI平均波形
⾔言語流流暢性課題-0.5
0.5
oxy-‐‑‒Hb deoxy-‐‑‒Hb
-
統合失調症うつ病 躁うつ病健常者
健常者、うつ病、躁うつ病、統合失調症の前頭部平均波形
⾔言語流流暢性課題oxy-‐‑‒Hb deoxy-‐‑‒Hb
-
うつ病におけるHPA系の異異常 コルチゾールの過剰分泌泌
¡ 尿尿中遊離離コルチゾール値の上昇¡ ⾎血中レベルの上昇¡ 脳脊髄液中の濃度度上昇
コルチゾール分泌泌リズムの異異常=⽇日内変動 の振幅の低下 デキサメサゾンによる、負のフィードバック 反応の⽋欠如
¡ Dexamethasone suppression test (DST)で⾮非抑制¡ DEX/CRH testで⾼高反応
脳脊髄液中のCRH⾼高値 リンパ球のグルココルチコイド受容体数の 減少 CRH負荷テストでACTH反応が低下
¡ メチラポン投与により正常化するため コルチゾール⾼高値が原因と考えられてい る。
⾃自殺者死後脳での、CRH受容体結合数の減少 副腎肥⼤大、下垂体肥⼤大
-
h-‐‑‒CRH100μg静注
前⽇日 当⽇日デキサメサゾン(合成グルココルチコイド)1.5mg内服
23:00 14:30 15:00 15:30 15:45 16:00 16:15
静脈確保
採⾎血⇒ACTHとコルチゾール測定
DEX/CRHテスト -HPA系異異常を検出するより鋭敏な検査-
簡便便法(Kunugi et al, 2006)では、15:00と16:00の2回のみ採⾎血。ACTHの測定は省省略略する(コルチゾールとの相関が⾮非常に強いため)。
-
Main results:・DEX/CRHテストでみられたHPA系の機能亢進は、治療療によって著明に改善・特に、薬物療療法に加えて通電療療法を⾏行行った患者では著明に改善。・状態依存的指標
治療療前後におけるDEX/CRH テスト所⾒見見の変化
-
TrkA TrkB TrkC p75
Death domainTyrosinekinase domain
NGF ProBDNF NT4/5 NT3
Proprotein
Matureprotein
High affinity
栄養因⼦子の効果
Low affinity
Higher affinity
Apoptosis• Proliferation(増殖) ・ differentiation(分化)• survival(⽣生存) ・plasticity(可塑性)
神経栄養因⼦子と受容体
BDNF
-
Plasma proBDNF
(国⽴立立精神・神経センターと産総研⼩小島先⽣生)
-
うつ病の治療療はどのように⾏行行われるか?
●7割⽅方のうつ病は抗うつ薬と休養、⽀支持的精神療療法で良良くなる●慢性化、難治化するものが3割ある●再燃・再発が多いので予防が⼤大切切
-
治療療の⽅方法は?
1) 薬物療療法(Bio) 抗うつ薬;SSRI, SNRIの役割
副作⽤用の点で他を凌凌ぐが効果の点で他を凌凌駕するものではない
2) ⼼心理理療療法(Psycho) 認知療療法に関⼼心が集まっている3) 環境調整(Social)
-
うつ病治療療の歴史(近代以後)
l 持続睡眠療療法(1922) スルフォナール使⽤用による持続睡眠 (下⽥田光造)l インスリン・ショック療療法(1933)インスリンによる低⾎血糖(意識識レベル)
l カルジアゾールけいれん療療法(1935)ハンガリーMeduna けいれんに治療療効果l 電気ショック療療法(1939) イタリア Cerletti 薬物療療法以前 には主な治療療法であったl 薬物療療法の登場(1950年年代)
-
うつ病薬物療療法の変遷○精神治療療薬の出現(1950年年代) 初めての抗精神病薬 クロルプロマジン(R:コントミン) 1952 Delay初めての抗うつ薬 イミプラミン(R:トフラニール)1957 Kuhn抗躁薬 リチウム(リーマス)1949 Cade
○うつ病治療療薬のその後 三環系抗うつ薬(イミプラミンが原型)の発展(1960〜~1970年年代)
四環系抗うつ薬(1980年年代)○新規抗うつ薬の登場(2000年年代〜~)SSRISNRI その他
-
抗うつ薬の改良良過程
ノルアドレナリン セロトニン 抗コリン 鎮静 起⽴立立性低⾎血圧 ⼼心毒性 けいれん消化器症状
三環系 (イミプラミン) ++ +++ ++++ +++ ++ +++ ++ -
四環系(ミアンセリン) ++ - +- ++++ + +- + -
SSRI (セルトラリン) - ++++ + ++ - - - ++
SNRI ++++ ++++ +- + - - - ++
-
三環系の時代とSSRIの時代でどううつ病の治療療は変わったか?
u 効果の点ではほとんど違いがない OR ⼊入院を必要とするような重症うつ病には「三環系」の ⽅方が効果があるu 「服⽤用しにくい」「多量量服⽤用で命にかかわる」「⽇日常 ⽣生活に影響⼤大」(⼝口渇、便便秘、排尿尿障害、⽬目のかすみ、 ⽴立立ちくらみ、眠気など)などu 三環系、四環系には多くの副作⽤用や安全性の問題が あったu SSRI、SNRIは「⼼心毒性がない」、「⽇日常⽣生活への影 響が少ない」など安全性と副作⽤用の点で改良良が進んだu それでも、いくつかまだ克服すべき副作⽤用があるのも 事実u ⼿手放しで喜べる状況とは⾔言えない
-
うつ病の薬物療療法の問題点
1.治療療に反応しないうつ病が3割程度度存在する(難治性)
2.完全寛解に⾄至らない例例がある(不不完全寛解)3.早期に改善が得られない (即効性の問題)4.再発防⽌止5. コモビディティの問題
NCNP
-
ま と め1. うつ病の病因は不不明であるが、仮説としては ストレス-脆弱性モデルが提唱される2. うつ病は健康⽣生活⽀支障度度において将来全疾患の 1位ないしは2位に位置すると推計される3. 原因は不不明であるため、原因究明とまではいか ないが、およそ7割⽅方のうつ病は薬物療療法と 精神療療法、環境調整で治る4. 客観的診断法の確⽴立立が急がれる5. マーカーとしてNIRS、DEX-‐‑‒CRH、⾎血中 proBDNF が検討されている