我が国の産業競争力強化に 向けて - jsme.or.jp...日本機械学会特別講演...

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日本機械学会特別講演 「我が国の成長戦略とイノベーション」 我が国の産業競争力強化に 向けて 平成26年7月 経済産業省 製造産業局 産業機械課 今里 和之

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日本機械学会特別講演「我が国の成長戦略とイノベーション」

我が国の産業競争力強化に向けて

平成26年7月経済産業省 製造産業局産業機械課 今里和之

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(目次)

1.我が国製造業の現状

2.日本再興戦略改定版の骨子

3.ロボットによる新たな産業革命の実現に向けて

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1.我が国製造業の現状

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Ⅰ. 我が国製造業の足下の状況

2012年と比較すると、株価の上昇、収益の改善が見られ、さらには賃金引上げの動きが広がる(「経済の好循環」に向けた動き)(図表1)。

景気の回復に伴い、生産は拡大。また中小企業についても業況改善の兆し(図表2)。我が国製造業は、長らく厳しい競争を強いられてきたが、アベノミクス効果が着実に浸透。

①我が国製造業企業の業績改善

【図表1 主要企業の営業利益】

【図表2 企業規模別業況の推移】

【コラム】 小規模企業まで広がる「賃上げの風」

栄光技研(株)(大阪府門真市)は従業員11人の小規模事業者(ばね製造)。

自動車メーカーにも販路を開拓し、業績を伸ばした。

足下では自動車向け売上が好調。従業員にも適切に還元するため昨年末に給与アップを決定。

3

12年4-12月期

13年4-12月期

増減 ベア 一時金

自動車7社

16,329 32,30215,973

(97.8%増)2,000円 5.7ヶ月

電機4社

4,165 7,2133,048

(73.1%増)2,000円

基本的には業績連動

連結営業利益(単位:億円) 賃金引き上げ

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一方で、経常収支は3年連続で黒字縮小(図表1)。特に、貿易収支については鉱物性燃料の輸入増加等を背景に過去最大の貿易赤字を計上(図表2)。

②経常収支の悪化と少子化・人口減少の中で求められる製造業の役割

【図表1 経常収支構造の内訳(2013年)】 【図表2 日本の貿易収支の推移】

経常収支

サービス収支第一次所得収支

第二次所得収支

= +

++

輸出額-輸入額

政府の食糧援助輸送・旅行・特許等使用料

貿易収支

3.2兆円 ▲8.8兆円

▲3.5兆円 16.5兆円 ▲1.0兆円

直接投資収益等

(出典)財務省「国際収支統計」

67.8兆円 76.6兆円

2010年19.1兆円の黒字から約8割減。

サービス収支は赤字縮小、第一次所得収支は黒字拡大。しかし、貿易収支の赤字拡大を埋めるには至っていない。

電気機器の黒字額は2005年比で約8割縮小

過去最大の貿易赤字を継続中

(※)

国際収支統計の貿易収支額との違いは集計方法の違いによるもの。

(出典)財務省「貿易統計」

2.1 2.1 2.01.1

1.6 1.2

-0.1 -0.1

0.2 0.3

0.3

0.3

0.1

-0.2-0.6

-2.1

0.70.7

0.7

0.8

2.5 2.6

2.2

1.8

7.1 6.7

4.5

1.7

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

2005 2008 2010 2013

その他

電気計測機器

通信機

重電機器

音響映像機器(含部品)

半導体等電子部品

電気機器

(兆円)【図表3 「電気機器」の貿易収支の推移】 【図表4 携帯電話の貿易収支の推移】

「電気機器」(いわゆるエレクトロニクス産業)の貿易黒字額は2005年比で約8割縮小。特に通信機(主に携帯電話)や太陽電池の輸入拡大が主因(図表3、4)。

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【図表2 輸出数量と価格の推移(自動車)】

9.0

13.0

8.6 9.3

2.4

2.4

2.62.8

1.3

2.0

2.2 1.4

-0.4 -0.3 -0.1 -0.3

0.9

0.7

0.30.3

13.1

17.8

13.6 13.5

-5

0

5

10

15

20

2005 2008 2010 2013

その他

航空機類

船舶

自動車の部分品

自動車

輸送用機器

(兆円)【図表1 「輸送用機器」の貿易収支の推移】

18.9 19.5 21.2 19.3 20.6 20.6

28.4 29.031.9

30.6 25.630.4

27.229.6

30.7 34.6 40.338.0

22.0 18.614.1 14.1 12.7 10.7

3.6 3.2 2.1 1.4 0.8 0.4

0

20

40

60

80

100

2008 2009 2010 2011 2012 2013

排気量1.0ℓ以下

排気量1.0ℓ超~1.5ℓ以下

排気量1.5ℓ超~2.0ℓ以下

排気量2.0ℓ超~3.0ℓ以下

排気量3.0ℓ超

(%)

【図表3 自動車の排気量別輸出比率の推移】

「輸送用機器(自動車等)」は約14兆円の貿易黒字を維持しているものの、電気機器の黒字縮小やエネルギーの赤字拡大をカバーできず(図表1)。

円安が進行したが、価格引き下げや、輸出数量の伸びは大きくは見られない(図表2)。むしろ、価格水準によらず販売量の維持が期待できる高価格帯の車種は輸出価格を据え置き、利益を確保している可能性。

低価格帯の車種は地産地消が進み生産拠点も海外移転。輸出台数は減少する可能性。一方、中価格帯は横ばいで推移。高価格帯は日本で生産し、先進国市場へ輸出拡大することを期待(図表3)。

排気量の小さい自動車(低価格帯の車種が中心)の輸出量が減少。

5

90

92

94

96

98

100

102

104

106

108

110

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

(万台)

契約通貨建て価格(右軸)

輸出台数(左軸)

(2010年=100)

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少子化・人口減少に伴う国内市場の縮小と、生産年齢人口の減少、労働力の不足(図表3)が一層懸念されるところ、製造業が国内に基盤を維持し、一人当たりの生産性を高め、付加価値の高い製品を生産することを通じ、域内外から稼ぐ必要がある。

55.9 50.844.4 42.1 50.4

37.1 39.340.7 42.1

39.1

7.0 9.9 14.8 15.8 10.4

0

20

40

60

80

100

一般機械

電気機械

輸送用

機械器具

鉄鋼業

化学工業

(n=345) (n=262) (n=189) (n=38) (n=115)

(%)減少

横ばい

増加

【図表2 輸出の今後3年間の見通し】

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1994 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

製造業 建設業

卸売・小売業 サービス業

(万円)

(暦年)

【図表3 主な産業の労働生産性の推移】

リーマンショック直後、一時的に後退した時期はあるものの、海外展開は年々進行。

【図表1 海外設備投資比率の推移】

生産拠点の海外移転による影響もあり(図表1)、円安下においても直ちに輸出の伸びに繋がりにくくなっている可能性。

一方で今後の輸出は、海外需要の回復や新規顧客の開拓等を理由に増加見通しが強い傾向。(図表2)。

6

※就業者一人当たりの産業別GDP

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Ⅱ. 我が国製造業の競争力強化に向けて

(ア)輸出を支える国内生産基盤の維持・強化 一部新興国(中国・タイなど)における人件費の上昇(図表1)等を契機に、国内でのもの

づくりを再評価する動きあり。 今後は能力増強を中心に国内投資を拡大しようとする兆しがうかがえる(図表2)。

国内生産基盤・輸出力の強化と海外で稼ぐためのインフラ整備

【図表2 国内設備投資の今後3年間の見通し】【図表1 中国における事業の課題や懸念事項】

0

20

40

60

80

100

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

( n=325 ) ( n=285 ) ( n=336 ) ( n=377 ) ( n=339 ) ( n=300 ) ( n=179 )

労働コストの上昇 他社との厳しい競争

法制の運用が不透明 知的財産権の保護が不十分

治安・社会情勢が不安

(%)

7

23.2

42.8

17.7

39.3

17.9 32.9 16.7

43.2 43.850.8

47.5

48.2

44.1

43.7

39.7

45.9

41.7

47.238.2

38.5

29.3

9.0

38.2

17.0

42.3

21.2

41.7

9.618.0

10.8

0

20

40

60

80

100

昨年度

今年度

(n=478) (n=556) (n=503) (n=524) (n=390) (n=444) (n=108) (n=125) (n=178) (n=195)

一般機械 電気機械 輸送用

機械器具

鉄鋼業 化学工業

(%)

減少

横ばい

増加

昨年度

今年度

昨年度

今年度

昨年度

今年度

昨年度

今年度

※昨年度:2013年1月時点今年度:2014年1月時点

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3.5

69.4 72.5

16.8

52.0

43.744.2

75.178.677.9

48.0

30.1

4.9 3.9 3.9

0

20

40

60

80

100

海外拠点の

新設・増強前

海外拠点の

新設・増強後

過去5年間に新設・

増強された

海外拠点の役割

国内拠点の役割

高付加価値品の研究開発

汎用品の研究開発

高付加価値品の生産

汎用品の生産

その他

(%)

(n=226)

(n=229)

【図表1 海外拠点の新設・増強に伴う国内拠点の役割変化】

汎用品を中心に海外展開が進む中で、国内拠点は高付加価値品の開発・生産、海外拠点は汎用品の開発・生産という国際分業の流れ(図表1、2)。

国内拠点では①人と最先端設備(ロボットなど)の最適な棲み分け・協調、②国内産業集積の厚みの活用、③最先端の研究開発機能との隣接性、④顧客の多様なニーズに対する短納期対応などにより、高付加価値製品の生産と圧倒的な生産性を実現(国内拠点の高度化)(図表3:次ページ)。

ホンダ:「最も環境負荷の小さい製品を最も環境負荷の小さい工場で作り出す」世界トップクラスの省エネルギー工場を設立(埼玉県大里郡寄居町)。2013年7月に稼動開始。

オリンパス:2016年度までに約197億円を投じ、既存工場を増設し、世界シェアナンバーワンである内視鏡の生産能力を3割増加することを2013年12月に決定。

ジャパンディスプレイ:約2000億円となる設備投資を行い、普及拡大するスマートフォンやタブレット用の高性能・高品質なディスプレイ生産のため、主力の茂原工場(千葉県茂原市)の能力倍増に取り組んでいる。

東芝:四日市工場(三重県四日市市)において、スマートフォンやタブレット用のNAND型

フラッシュメモリ関連製品の生産を増加させるため工場を拡大予定。

【図表2 最近の国内生産拠点への投資(例)】

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多様な顧客ニーズへの短納期対応

【図表3 国内生産拠点の高度化(例)】

国内外拠点への波及効果を期待できる研究開発拠点

周辺業種サプライヤーと一丸となったものづくり

<グローリー(株)> ※通貨処理機製造

人とコンパクトな人型ロボットが協調し、自動化率80%、労働生産性約5倍の多品種少量生産システムを構築。

「多能工化」という形で動作の遅さを問題としない多品種少量の組立工程に適用。

プロセス革新により圧倒的な生産性を誇る拠点

<ダイキン工業(株)>

国内生産が難しくなりつつあるエアコン業界において、海外市場開拓を視野に、国内の産業集積の厚みを活かし、他業種のサプライヤーを巻き込みながら、製品の高付加価値化と低コスト生産を両立。結露防止のため、断熱材を挟み込んでいた 完全密封型中空成形により、小物パーツでのみ実績のあった成型技術を

大型部品でも実用化し、空気層による断熱層の確保を実現しました。

従来モデル 新モデル

材料費と、組立コストが高かった

従来の水平羽根(断面図)

●断熱材分の材料費削減、省資源化

●軽量化により駆動モータ小型化 (コストダウン)

●単一材利用によるリサイクル性向上

【図4】 部品メーカーとの協業で大物最新樹脂加工技術を実用化

従来課題

断熱材

断熱材

新しい水平羽根(断面図)

空気層

射出シーリング

効果

空気層

RP東プラ株式会社協業先

完全密封成形で空気断熱層生成

結露防止のため、断熱材を挟み込んでいた 完全密封型中空成形により、小物パーツでのみ実績のあった成型技術を大型部品でも実用化し、空気層による断熱層の確保を実現しました。

従来モデル 新モデル

材料費と、組立コストが高かった

従来の水平羽根(断面図)

●断熱材分の材料費削減、省資源化

●軽量化により駆動モータ小型化 (コストダウン)

●単一材利用によるリサイクル性向上

【図4】 部品メーカーとの協業で大物最新樹脂加工技術を実用化

従来課題

断熱材

断熱材

新しい水平羽根(断面図)

空気層

射出シーリング

効果

空気層

RP東プラ株式会社協業先

完全密封成形で空気断熱層生成

<コマツ>

昨年10月、大阪工場に「生産技術開発センタ」を併設。隣接した設計部門・生産現場と連携しながら、機械と人との最適分業を前提にした生産技術を開発・向上させ、国内外の拠点に展開することが狙い。

コストや時間の削減に寄与する、溶接ロボットや、熱処理や加工のシミュレ-ション技術の開発に取り組んでいる。

<富士通(株)>

年間200万台のPCを生産する島根富士通では高い生産性、高品質や短納期を武器に、顧客の様々なニーズに応えられるよう、多品種少量生産に対応。

人と機械の協調を目指し、汎用ロボットを活用して自働化を推進。中国と比較して10分の1の人員で生産。

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投資の拡大、国内拠点の高度化の兆しを確実なものとするためにも、新市場の創出(産業、医療・介護など幅広い分野での活用が期待されるロボット、実用化が期待される再生医療など)や、国内の「立地競争力」の強化が求められる。

また、①エネルギーコスト対策や②経済連携の促進、③法人実効税率の在り方の検討(図表1)が求められる。

【図表1 法人実効税率の国際水準】

【コラム】ものづくりの屋台骨を支えてきたエネルギー多消費型企業に対する支援

(株)興国鋳鋼所(大阪府淀川区)は1941年創業の鋳鋼製造の専業メーカー。多様で複雑な形状と強靭性を実現する鋳鋼品を短納期で製造し信頼を得ている。

10

◆成長戦略進化のための今後の検討方針(2014年1月20日産業競争力会議)(抜粋)

「平成26年度与党税制改正大綱(2013年12月12日)を踏まえ、我が国経

済の競争力向上のための対応の一環として、税制の中立性や財政の健全化の観点から、課税ベースの拡大や他税目での増収策による財源確保の検討や、産業構造や事業環境の変化の中での法人実効税率引下げと企業行動の関係などの政策効果の検証を行いつつ、政府税制調査会と連携して法人実効税率の在り方を検討する。」

現在の悩みは電気料金。売上高に占めるその割合は優に10%以上。

長きに渡ってものづくりの屋台骨を支えてきた同社のような豊富な技能を有する中小企業を支援するため、エネルギーコストを低減するような支援が必要。

◆ 中小企業が、積極的に省エネ設備への投資を行えるよう、投資額は小さくても省エネ効果の高い案件についても支援していく。

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【コラム】世界のニッチ市場で勝負する家電ベンチャー◆ (株)Cerevoは従業員数13人の小規模

事業者であり家電ベンチャー企業。汎用的な部品は他社から調達し、顧客ニーズのコアとなる部品は自社で開発。

◆ SNSにより世界のニッチなマーケットを把握。多数の国のニッチに向けた、機能を絞った製品を迅速に投入。

(イ)新たな輸出の担い手の育成 ドイツでは非大企業が輸出に大きく貢献(輸出を行う中小企業は日本、約3%、ドイツ、約

19%)。我が国も大企業のみによらず裾野広く輸出で稼いでいくことが必要。 そのため、輸出に力を入れ国内サプライチェーンに広がりもあるグローバルニッチトップ企

業(図表1)の支援や製造業ベンチャー企業(図表2)の創出・育成を、小規模事業者、中堅・中小企業も対象に地域経済も含めた日本全体で行っていくことが必要。

【図表1 新たな輸出の担い手①(グローバルニッチトップ企業)】

<スパイバー(株)(山形県鶴岡市)>慶応大学先端生命科学研究所発のバイオベンチャー。

【図表2 新たな輸出の担い手②(製造業ベンチャー企業)】

「人材」:企業にチャレンジする人材、リスク管理や経営判断を行うマネジメント人材の不足

「資金」:中長期でリスクを取る直接金融の不足 「連携」:知名度等をカバーするため大企業等との連携が必要

製造業ベンチャー企業の課題

販路開拓の「人材」、研究開発用の「資金調達」、「模倣品対策」

試作された「人工合成クモ糸」

クモ糸の組成にヒントを得た合成繊維の活用に向けて、域外の自動車部品メーカーとも連携。

新素材は、軽量でありながら、高い強度とナイロンを上回る伸縮性を持つ。

11

グローバルニッチトップ企業の課題

パワーショベル用シリンダブロック大手建機メーカーと共同で複合材を開発。

高速、高圧に対応したシリンダブロックの供給という顧客ニーズを充足し、パワーショベルの基幹部品として5割以上の世界シェアを獲得。

<(株)明石合銅(石川県白山市)>

<向陽技研(株)(大阪府堺市)>

【グローバルニッチトップ企業の特徴】① 特定分野で高い世界シェア:平均59.6%の世

界シェア② 収益性:売上高営業利益率は平均10.7%(製

造業平均2.9%)③ 戦略性:顧客との共同開発でニーズ情報を囲

い込み、特許などの知的財産を戦略的に活用④ 国際性:海外売上比率は平均45.1%。

座椅子・ソファー用ラチェットギア

座椅子・ソファーの背もたれの角度を自由に調節できるラェットギアを製造(世界シェア3割)。コア技術で国際特許を取得、海外の模倣品による特許権侵害に対して徹底的に対抗。

スマートフォンで制御する「見せる」電源タップ

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(ウ)グローバル需要の取り込み、経常収支維持のための海外収益還元促進 新興国市場を取り込む上で、ボリュームゾーン向けの大量生産型製品(汎用的家電や二輪車

など)を中心に海外での投資・生産は不可逆な流れ。 製造業の海外展開に伴い黒字が拡大する所得収支(図表1)や、ロイヤリティ収入増加(図

表2)などにより赤字が縮小するサービス収支を通じて、経常収支の黒字拡大を図ることも必要。

【図表1 所得収支の推移】 【図表2 知的財産権等使用料収支の推移】海外での事業投資が拡大。

【コラム】海外事業に伴うリスク

中小企業の海外展開も拡大。人件費の高騰や 模倣品の発生など海外特有のリスクがあるという認識も必要。

進出時にはあまり意識されない「撤退」といったリスク。例えば、撤退条件を明確にした事業計画を事前に策定し、継続的に見直すことが重要。

<撤退に伴う多額の費用が発生した事例>

工場閉鎖をきっかけに、従業員がストを起こし、多額の退職金を支払うことになった上、税務署からも残業代や税金の調査を強いられた結果、撤退から1年かかった。

<多額の譲渡代金のために撤退を断念した事例>

子会社を第三者に譲渡しようとしたところ、子会社の内部留保が多額であったため譲渡価格が高額になり、買い手がつかなかった。

【図表3 利益還流の障壁】

海外展開の加速に伴う富を確実に国内に環流させるために、規制、税制といった障壁を官民一体で取り除いていくことが必要。(図表3)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

その他投資収益 証券投資収益

直接投資収益 雇用者報酬

第一次所得収支 第一次所得収支に占める

直接投資収益の比率(右軸)

(兆円) (%)

(暦年)

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

著作権等使用料 産業財産権等使用料 知的財産権等使用料(兆円)

(暦年)

12

中国、タイが利益還流が困難な国の代表例。

利益還流が困難な理由は、送金規制、ロイヤリティ規制が多い。

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(ア)稼げるビジネスモデルの構築 デジタルものづくり(3Dプリンタなど)、モジュール化など、サプライチェーンが変化する可能性。付加価値が高い領域と低い領域に二極化。また、サプライチェーンの企業間の繋がりをより容易にさせる動きあり。

デジタルものづくり(図表1)の台頭。現時点ではサンプル等の試作開発が中心であるが、将来的には医療や航空機分野等での活用拡大を期待。

①試作期間の短縮(プロセスの革新)と複雑な造形物の作成(プロダクトの革新)をもたらし、②個人も含めた幅広い主体にものづくりを広げる可能性あり。

ただし、現状では、我が国は欧米に比べて立ち後れ(図表2)。装置・ソフト・材料一体の基盤技術開発や人材育成などが課題。

【図表1 デジタルものづくり(3Dプリンタ等)による経済波及効果】

装置・材料等の直接市場[1.0兆円]

関連市場 [10.7兆円]付加製造技術で製造した製品市場

生産性の革新[10.1兆円]付加製造技術による製造等の効率化

経済波及効果~2020年で約21.8兆円~

(全世界)

【図表2 世界の3Dプリンタ累積出荷台数シェア】

【コラム】3Dプリンタを活用し複雑な造形物(心臓シミュレーター) (株)クロスエフェクト(京都府京都市)は医工連携の下、質感・強度などリアルな精密心臓シミュレーターを開発。

3Dプリンタによって作成した心臓の3次元モデルは超軟質の樹脂でできており、心臓外科医の手術訓練教材として利用することが可能。精度の高い術前シミュレーションにより高難易度手術の成功に大きく寄与。

3Dプリンタを活用した中小企業による高付加価値な医療分野への進出という理想的な事例。

13

Ⅲ. 事業環境が変化する中での「稼ぐ力」向上

米国71.2%

イスラエル

10.0%

欧州

11.5%

中国

3.5%

日本3.3%

その他

0.5%

世界の3Dプリンター累積出荷台数シェア

1988年~2012年累計の3Dプリンター出荷台数シェア販売価格USD5,000以上が対象(出所)Wohlers Report 2013

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また、自動車産業を中心に起きている事業変化は、ブランド価値に結びつかない分野での「モジュール化」の進展。その背景はグローバル競争の激化に伴う「車種の多様化」と「コスト低減」の両立、電子部品比率の高まり(図表1)。サプライチェーン構造に変化をもたらす可能性。

部品メーカーにおいては、モジュール化される領域においては、部品の発注ロットが増加するため、メガサプライヤーの登場が促進される可能性があり、投資リスク等を見極めつつ、非モジュール領域とモジュール領域の選択を適切に行う必要性(図表2)。

【図表1 電子部品比率の高まり】 【図表2 自動車産業におけるモジュール化の進展による影響】

モジュール化のメリット① 部品の種類数が減少し、ブランドやクラスを超えての多品

種生産が効率的に。

② 部品が共有化されているため工場のライン/治具等も共有できる。

モジュール化のデメリット① 部品の共通化により発注ロットが増加、メガサプライヤーに受

注が集中。サプライヤー間の価格競争が激化する可能性。

② 特定部品に不具合があった場合、リコール対象のモデル数も増大。

③ 製品の差別化が困難になる可能性。14

2004年 2015年19% 40%

●電子制御化に伴い、電子部品やソフトウェアの割合は増加。

●サプライチェーンの構造変化に拍車をかける。

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<組込みソフトウェア技術コンソーシアム(静岡県浜松市)>

輸送用機械におけるソフトウェア制御の付加価値が一層高まると見込んで、静岡大学や浜松市が連携して、小規模事業者も含め地元企業の社員に対してソフトウェア工学や制御工学を教育し技術者を輩出。

川下企業ニーズを汲み取る産学官連携の研究開発支援

<ひろしま産業振興機構>

自動車のエレクトロニクス化が進展する中で、広島県が主導して、中核となるTier1(1次下請け)を育成しつつ、Tier2(2次下請け)以下や大学との

マッチング等を支援。さらには、広島以外、自動車産業以外への事業展開も後押し。

大企業人材を活用し「新たに求められる人材」を育成

川下産業依存ではない「試作産業」という新たな活路を構築

<京都試作プラットフォーム>

中小企業が集まり、プレス板金、樹脂加工、表面処理など、各企業が有する加工技術を駆使し圧倒的なスピードで試作サービスを提供。小規模事業者も参加し医療機器部品を手がけ販路拡大に成功。

直面した環境変化 変化への対応

大手セットメーカーの海外進出や

製品仕様の変化

異業種産業・新分野への移行・形成

環境変化に対応できるよう進化

国内製品の需要低下

高付加価値化

<四国タオル工業組合、今治商工会議所>中国からの安価なタオル流入に直面し、品質規格の策定、メディアプロモーション、消費者に品質の良さをPRできる人材の育成など「今治タオルプロジェクト」を展開。欧州など海外にも販路を開拓。

国際的にも通用するブランドを構築

サプライチェーン構造の変化に直面する中で、国内生産基盤の強みである中小・中堅企業の厚みを維持しつつ、稼げるサプライチェーンへと変革が求められる。

そのためにも、支援インフラの整備(サプライチェーン内の連携強化、輸出力強化を念頭に置いた海外展開支援)が必要。これまでの川下産業・大企業がサプライチェーン内の企業を育成し、手の届かないところに対して公的な支援機関が底上げを図ってきた方法からの変革が必要。

【図表1 サプライチェーン構造の変化への対応】

15

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製品自体の付加価値が下がる中(図表1)、単なるものづくりでは限界。

価値創造の源泉を獲得するためには、サービスとの組み合わせ、顧客との共同開発などによるサプライチェーン内対応と消費者対応の両面からの高収益のビジネスモデルの確立(図表2)が必要。

また、ビジネスモデルの工夫の上で、知的財産の公開(オープン化)と秘匿・権利化(クローズ化)を使い分ける「オープン・クローズ戦略」など、知財戦略も重要(図表3)。

【図表2 ビジネスモデルの分類事例】

【図表1 製造段階の競争力指数】

アジア企業が追い上げる中で先進国企業の競争力は相対的に低下

※利益率と売上高シェアとともに算出(出展)日本機械輸出組合

<オリンパスメディカルシステムズ(株)>

手術時の患者負担が少ない内視鏡を国内で生産し、新興国に展開させるため、北京や上海に現地の医師・技士のためのトレーニングセンターを設立し、機器とサービスを一体的に展開。

新興国でのシステム化・パッケージ化

<福田金属箔粉工業(株)>

1700年に金銀箔粉問屋として創業。伝統工芸で培った製造技術を現代の新分野に活かし、発展を遂げてきた。現在、同社の金属粉や箔は、機能材料として、電子機器や蓄電池等幅広い産業で欠かせない存在となっている。

ブランド戦略

<(株)ワイエスピー>従業員数12人の小規模事業者ながら、製造時間を1/20以下

の20分に短縮しつつ、高付加価値製品の生産を可能とする画期的な豆乳・豆腐製造機械を開発。

市場ニーズに応える画期的生産方法

設計プロセスの改革を通じた市場ニーズ・技術シーズ取り込み

新しい技術領域の取り込みによる製品の高度化

新たなプラットフォームの提供

顧客ターゲットの拡大、販売形態の変革、ブランド戦略

従来製品を高付加価値化

売り方で高付加価値化

【図表3 オープン・クローズ戦略】

デジタルカメラメーカーが、ファイルフォーマット等の標準化により消費者の利便性を向上させるとともに、画像処理回路やレンズ等、技術優位な部分をブラック・ボックス化することによって世界生産台数の拡大とシェアの維持を実現。

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(イ)事業環境の変化に対応した人材育成と少子高齢化に直面する中での全員参加のものづくり 関係省庁が連携して従来のものづくりの現場を越えて、幅広い形で人材育成を行っていくこ

とが必須。 各人の適性に合わせて、①生産技術、市場戦略を含めたイノベーション人材、②機械と人の

適切な棲み分けを踏まえた現場の技能工、③海外展開、M&A対応など企業価値向上につなげていくマネジメント人材(高度人材)の育成と確保が必要。

【図表1 関係省庁が一体となりものづくりに携わる人材を育成】

17

技能検定

• 労働者が有する技能を一定の基準に基づき検定し公証する制度で、ものづくり分野をはじめとする労働者の技能習得意欲を増進。

厚労省

小・中学校

•「理科」「図画工作」「技術・家庭」など関係の深い教科を中心に各教科の特性を踏まえ、ものづくりに関する教育を実施。

専門高校

•ものづくり教育の研究や技術・技能の習得等を取り入れた特色ある取組等により、地域産業を担う専門的職業人を育成。

社会人の学び直し• 大学、大学院、専門学校等が産業界と協働して、高度な人材や中核的な人材の育成等を行うオーダーメード型の職業教育プログラムを開発・実施。

• 若者等の学び直しの支援のための奨学金制度の弾力的運用を実施。

• 非正規労働者である若者をはじめとした労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練について、拡充された教育訓練給付金を支給(平成26年10月~)

文科省

大学(工学系)

• 産業界と連携した実践的な工学教育を実施。

高等専門学校

•実験・実習を重視した5年間一貫の専門的・実践的な技術教育を実施。

専修学校

• 地域の産業界等と連携した実践的で専門的な知識・技術を向上させる取組を実施。

文科省 文科省

文科省

文科省

文科省 厚労省

キャリア教育

•一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育。

職業教育

•一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育。

文科省

学卒者訓練(ポリテクカレッジ等)

•技術革新に対応できる高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技能者(テクニシャン・エンジニア)の育成。

•新製品の開発、生産工程の構築等に対応できる将来の生産技術・生産管理部門のリーダーの育成。

厚労省

ものづくりマイスター

•中小企業や学校(中学校、工業高校等)で若年技能者や学生生徒への実践的な実技指導等を行い、効果的な技能の継承や後継者の育成を図る。

ものづくりの魅力発信(技能の振興)

•広く社会一般に技能尊重の気運を高めるため、卓越した技能者の表彰や各種技能競技大会を開催。

厚労省

公共職業訓練(ポリテクセンター等)• 離職者に対し、再就職に資するようなものづくり分野の訓練を実施。

• 在職者に対し、職務の多様化・高度化に対応した専門的知識及び技能・技術を習得させる高度なものづくり分野の訓練を実施。

厚労省

認定職業訓練• 一定の基準に適合し、都道府県知事からの認定を受けた認定職業訓練を実施する中小企業事業主が、一定の要件を満たす訓練を実施した場合に補助を実施。

厚労省

キャリア形成促進助成金(Ⅴ政策課題対応型訓練熟練技能育成・承継コース)

• 熟練技能者の指導力強化や技能承継のための職業訓練、認定職業訓練を助成。

厚労省

3省が連携をとり、

3類型の人材育成

と確保を行っていく

ことを目指す。

経産省

文科省 厚労省

①イノベーション人材

• 市場ニーズを踏まえた製品を開発し、ものづくり機能の大胆な高度化を可能とする人材(研究開発人材、生産技術分野のエンジニア)

②技能工

• 機械との棲み分けを前提に最適領域で活躍する人材

③高度人材

• 企業価値向上につなげていくマネジメント人材

ものづくり日本大賞

•製造・生産現場の中核を担う中核人材や伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、「ものづくり」に携わっている各世代の人材のうち、特に優秀と認められる人材を顕彰。

経産省 文科省 厚労省

厚労省

初等中等教育 高等教育 社会人

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【コラム】女性が働きやすい役割作り

【コラム】IT化・標準化の工夫により専門知識を有しない女性従業員が活躍 OA機器の部品の加工を手がける(株)井口一世(東京都千代田区)は

IT化・標準化した生産システムを確立。

【コラム】海外進出する中小企業でのOB人材の活躍 新興国進出プランを持つ中小企業

に対し、ジェトロが大企業のOBなど経験豊富な人材を専門家として派遣し、現地での拠点設立等を支援。

製造業出身者を中心に、経験や人脈を有するOBが主にタイ、ベトナム、インドネシアなどに進出を考えている企業に派遣。(2012年度の実績は165名派遣)。

少子高齢化が着実に進行し、今後も生産年齢人口の減少が見込まれる中、女性や高齢者の活用が重要。

特殊鋼の加工販売を手がける(株)天彦産業(大阪市住之江区)は従業員数は39人の中小企業。

英語が堪能な女性社員に育休からの復帰後も活躍してもらうため、海外向けの女性ウェブ販売チーム「天彦ウェブセールス(TWS)」を結成したところ、およそ2年で海外売上高が倍増。

営業経験のない女性社員に対し、商取引上のルールや特殊鋼の知識を男性社員がフルサポート。

18

例えば、熟練技術者の持つ暗黙知を顕在化させるとともに、これまでの加工技術の蓄積から、材料物性等のデータベースを構築。これにより、専門知識を有しない女性従業員でも加工機械を操作することが可能となった。

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(ウ)ITと外部資源の活用を通じた経営基盤の強化 グローバル競争が激化する中で、我が国の経済社会全体における経営資源の有効活用を通じ、

我が国産業における生産性の向上を高めることが必要。 これらの課題に機動的に取り組むためには、バリューチェーン(開発・製造・販売・サービス

といった付加価値を生む一連の流れ)の変化の可視化、限られた経営資源の機動的な組換えを可能とするインフラの整備が必須。

ITは企業の経営資源を効率化するだけでなく、効果を最大化するもの(図表1)。また、再編は企業間で経営資源の有効活用を図るもの(図表2)。

【図表1 IT投資の目的】

目的はコスト削減や効率化が中心。付加価値の高い製品提供などに活用するなどの意識は相対的に低い状況。

【コラム】互いの強みを持ち寄る事業再編 三菱重工(株)と(株)日立製作所は2014年2月にそれぞれ売上高の8割強、6割を占め

る主力部門である火力発電関連の事業を統合し、新会社を設立。

三菱重工の「大型タービン東南アジアでの販路」、日立の「中小型タービン欧州等での販路」といったそれぞれの強みを持ち寄る。

再編に際して「事業再編促進税制」を利用。

19

実施前の課題・経営トップによる意思決定や経営判断・M&Aにかかるビジョンや戦略の策定・M&Aを推進するための人材・組織体制の不足

実施後の課題・企業風土の統合・人事・給与・組織体系等の統合・M&Aによる効果の測定・評価

【図表2 M&A実施前後の課題】

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2.日本再興戦略改定版の骨子

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3.ロボットによる新たな産業革命の実現に向けて

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ロボットによる新たな「産業革命」

5月6日 OECD閣僚理事会 安倍総理大臣基調演説

• サービス部門の生産性の低さは、世界共通の課題。ロボット技術のさらなる進歩と普及は、こうした課題を一挙に解決する、大きな切り札となるはずです。

• ものづくりの現場でも、ロボットは、製造ラインの生産性を劇的に引き上げる「可能性」を秘めています。

• ロボットによる「新たな産業革命」を起こす。そのためのマスタープランを早急につくり、成長戦略に盛り込んでまいります。

• 日本では、すでに、介護をはじめ様々な分野で、ロボットを活用する試みが、始まっています。日本は、世界に先駆けて、ロボット活用の「ショーケース」となりたいと考えています。

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ロボット産業の現状

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・自動車工場を中心としたロボット導入(溶接、塗装)で世界をリード・ホンダのアシモをはじめとした、世界最先端のロボット技術

<かつては、ロボット先進国>

・大企業の生産ライン専用にカスタマイズ・技術の優位性を巡る開発者本位の競争

○中小企業の現場で「使える」ロボット不在○実用化に結びつく技術開発が限定的

中小企業やサービス分野などの幅広いユーザーへの広がりがない

・米国やドイツに対する優位性の縮小・中国や韓国による激しい追い上げ

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ロボット開発に係る課題

関連技術(センサ等)、ソフトウェアなどを巻き込んだ技術開発の広がりがない

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単純・安価だから「使える」10万円程度

高性能化・多機能化ロボット2000万円程度

(市場:研究用、10台程度) (潜在市場:100万台以上)

課題1:現場ニーズからの乖離

課題2:研究開発の広がり

1980年 2010年

30年間基本構造に変化なし

大型、個別ライン専用ロボット

【介護ロボットの例】

【産業用ロボットの例】

小型、汎用中小企業にも使いやすいロボット

(市場:大企業、限られた業種のみ) (潜在市場:中小企業、サービス業も)

<現場ニーズ>

市場化に向けて低価格・できることを確実に → 導入の敷居を下げる効果

ロボットの構造・制御方法・ソフトウエアなどの要素技術の見直し

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現場ニーズに合致したロボット開発(具体例)

人とロボットの協調作業 介護負担の軽減 農作業負担の軽減

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墨田区の介護施設での活用を検討中。来年から、福島・南相馬で生産開始予定。

グローリー(株)埼玉工場で稼働中。中国からの生産ライン回帰を実現。

サービス業・農業での生産性向上

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ロボット介護機器の開発・導入促進体制

民間企業・研究機関等

○日本の高度な水準の工学技術を活用し、高齢者や介護現場の具体的なニーズを踏まえた機器の開発支援

介護現場

○開発の早い段階から、現場のニーズの伝達や試作機器について介護現場での実証(モニター調査・評価)

・モニター調査の依頼等

・試作機器の評価等

機器の開発 介護現場での実証等

【経産省中心】 【厚労省中心】開発現場と介護現場との意見交換の場の提供等

ロボット技術の介護利用における重点分野(平成26年2月3日 経産省・厚労省改定)経済産業省と厚生労働省において、重点的に開発支援する分野を特定(平成25年度から開発支援)

○移乗介助・ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器

・ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

○移動支援

・高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器

○排泄支援・排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置調節可能なトイレ

○認知症の方の見守り

・介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム

38

・高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器

・ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

・在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム

○入浴支援

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ロボット介護機器導入実証チーム

○ロボット介護機器については、現場とのコミュニケーションの不足や先行事例が乏しいこと等、市場の不確実性が高く、優れたアイディアを持ちつつも量産化に踏み切れていません。

○本事業は、量産化への道筋をつけることを目的として、製造事業者と仲介者と介護施設がチームを組んで、実際に現場で活用しながら、ロボット介護機器の大規模な効果検証や改良を行います。

○さらに、検証結果に基づく効果のPR、普及啓発、教育活動を通じて、ロボット介護機器導入の土壌を醸成します。

事業イメージ

事業の概要・目的

条件(対象者、対象行為、補助率等)

事業の内容

民間企業、仲介者、介護施設から構成されるチーム

補助製品製造・設置費用の1/2(※)、2/3

講習・効果測定費用の1/1

※製造事業者等が大企業の場合は1/2

民間企業等

ロボット技術の介護利用における重点分野(平成24年11月22日 経産省・厚労省公表)

移乗介助 移乗介助 移動支援 排泄支援 見守り

補助

製造事業者

仲介者

•ロボット介護機器の製造•導入講習計画の作成•効果検証計画の作成

•導入講習の実施•効果検証の実施•改良点のフィードバック

介護施設•ロボット介護機器の継続活用•効果検証への協力

•製造事業者、仲介者、介護施設のマッチング支援•効果検証結果の集約•効果PR・普及啓発・教育活動

介護現場におけるロボット介護機器の大規模な導入実証を実施

39

ロボット介護機器の導入実証

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民間企業・研究機関等

○日本の高度な水準の工学技術を活用し、インフラ維持管理や災害現場の具体的なニーズを踏まえた機器の開発支援

インフラ・災害現場

○開発の早い段階から、現場のニーズの伝達や試作機器についてインフラ・災害現場での実証(ニーズ調査・評価)

・ニーズ調査の依頼等

・試作機器の評価等

機器の開発 現場での実証等

【経産省中心】 【国交省中心】ロボットの開発~検証~評価までの

一体化した道筋をつくる

『次世代社会インフラ用ロボット開発・導入重点分野』(平成25年12月25日 国交省・経産省公表)国土交通省と経済産業省において、重点的に開発支援する分野を特定(平成26年度から開発支援)

○橋梁・近接目視の代替ができる装置・打音検査の代替ができる装置・点検者を点検箇所に近づける作業台車

○トンネル

○河川及びダムの水中箇所・堆積物の状況を全体像として効率的に把握できる装置・近接目視の代替ができる装置

○災害状況調査(土砂崩落、火山災害、トンネル崩落)

・土砂崩落及び火山災害現場において、高精細な画像・映像や地形データ等の取得ができる装置

・土砂崩落及び火山災害現場において、含水比や透水性等の計測等ができる装置

・トンネル崩落において、引火性ガス等に係る情報の取得ができる装置

・トンネル崩落において、崩落状態や規模を把握するための高精細な画像・映像等の取得ができる装置

○応急復旧(土砂崩落、火山災害)

・近接目視の代替ができる装置・打音検査の代替ができる装置・点検者を点検箇所に近づける作業台車

(1)維持管理 (2)災害対応

・応急復旧ができる技術・排水作業の応急対応ができる技術・遠隔・自律制御にかかる情報伝達ができる技術

次世代社会インフラ用ロボット開発・導入促進体制

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2013年2月、サイバーダインのロボットスーツHAL福祉用が国際安全規格原案ISO13482DISに準拠した安全認証を世界で初めて取得。

2014年2月、パナソニックのリショーネ、ダイフクのエリア管理システムが国際安全規格ISO13482に準拠した安全認証を世界で初めて取得。

これらのロボットには十分な危険回避策が施され、安全が確保されていることが証明された。 生活支援ロボット安全検証センターと(一財)日本品質保証機構(JQA)に、国際標準に基づく生活支援ロボットの安全検証試験及び安全認証のノウハウと実績があることが世界に示された。

生活支援ロボット安全認証マーク(JQA)

ロボットスーツHAL福祉用(サイバーダイン)

生活支援ロボットの安全認証

生活支援ロボット安全検証センター(茨城県つくば市)

41

高速ビークル管理システム「エリア管理システム」(ダイフク)

ロボット介護機器「リショーネ」(パナソニック)

認証依頼

試験依頼

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中国:産業用ロボットの積極的導入

• 国家計画(目標):産業用ロボットの国内年間売上を2020年までに10倍(3兆元)

• 年間導入台数が4千台 (2005) → 3万7千台 (2013)へ急拡大(世界全体の約2割)。日本を抜いて初めて世界一に。

ドイツ:インダストリー4.0構想

• 独政府が「ハイテク戦略2020年アクションプラン(2012)」の中で本構想を提示。

• ロボットとITの連携により、個々の工場を高度に自動化。さらに、物流まで含めた独生産システム全体をITによる最適管理。(国全体を「スマート工場」化)

• BMW、シーメンスなど独主要企業57社の協議会を形成。本構想を推進。

(参考)諸外国におけるロボット活用の新たな動き

42

米国:グーグルのロボットへの進出

• 米政府が2011年「国家ロボットイニシアティブ」を発表。2012年から国防総省高等研究計画局の主催による国際ロボットチャレンジを開催。

• グーグルは、米国内ベンチャー7社と東大発ベンチャー「シャフト」を買収。(総額約6千万ドル)

• 多数のロボットで収集した大量の情報を解析。ロボットの頭脳を高度化する方向へ。

「シャフト」の災害対応ロボット

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(参考)新たな生産技術の動き インダストリー4.0 (ドイツ)

• • •第1次産業革命蒸気機関による自動化

(18世紀後半)

第2次産業革命電力の活用(20世紀初頭)

第3次産業革命ロボットによる自動化(1980年代以降)

第4次産業革命IT+ロボット技術による新たな産業革命

・「部品」、「ロボット」「工作機械」が設計情報をITを活用して交換(「会話」)⇔標準化

・自律的に加工方法等を判断し、自動生産

))))((((

・中小企業にも開かれた柔軟かつオープンな(標準化された)受発注、物流システムを構築

・システム全体をITにより一括管理・自動化

・工場群全体の生産性・稼働効率の向上

地場中小工場

他地域工場

①②

指摘されている主な課題 工場内外における情報交換のため、通信規格等を全て標準化することが必要 工場群全体を一括管理するため、巨大かつ複雑なシステムを構築し管理することが必要

参加予定企業ABB、BMW、Bosch、Daimler、Siemens、TRUMPF(工作機械)等

43

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ロボットによる新たな産業革命の実現

ロボットによる人手不足の解消、過重な労働からの解放

①医療・介護現場 ②生産現場(特に中小企業) ③農業・建設など

ロボット国内生産市場開拓2020年の市場規模を、製造分野で2倍(6000億円から1.2兆円)、サービスなど非製造分野で20倍(600億円から1.2兆円)

製造業の労働生産性向上製造業の労働生産性(製造業の総生産額を総労働時間で割った値)の年間成長率を、足下の1%から2020年までに2%以上へ向上。

【~2014年12月】

①ロボット革命実現会議 ユーザー、関連技術者(IT、

センサ、システム統合)の

幅広い叡智を結集。

本格普及に向けた「5カ年

計画」を策定。

【2015~2019年】②5カ年計画の実施ロボット導入のボトルネックを解消する標準の整備や要素技術の開発。

日本主導のロボット国際安全規格改訂。ロボット導入の障害となる規制の緩和。サービス業や中小企業などの新分野へ本格普及。ロボットシステムを統合・最適化する専門家の育成。

【2020年】

③ロボットオリンピック(仮称)

日本全体をショーケース化し、世界発信。

目標

アクションプラン

ベッドが車椅子に早変わりするロボット

農作業を自動で行うロボット

抱え上げる際の腰への負担を軽減するロボット

食品を詰替えるなど、繰り返し単純作業を自動で行うロボット

手を上げたままの

農作業をサポートするロボット

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(参考)「日本再興戦略」改訂2014 における記載ぶり

(ロボットによる新たな産業革命の実現)

グローバルなコスト競争に晒されている製造業やサービス分野の競争力強化や、労働者の高齢化が進む中小

製造事業者や医療・介護サービス現場、農業・建設分野等の人材不足分野における働き手の確保、物流の効率

化などの課題解決を迫られている日本企業に対して、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の

収益力向上、賃金の上昇を図る。

このため、日本の叡智を結集し「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、現場ニーズを踏まえた具体策を検討し、ア

クションプランとして「5カ年計画」を策定する。また、技術開発や規制緩和、標準化により2020年までにロボット市

場を製造分野で現在の2倍、サービスなど非製造分野で20倍に拡大する。さらに、こうした取組を通じ、様々な分

野の生産性を向上させ、例えば製造業の労働生産性について年間2%を上回る向上を目指す。

さらに、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に合わせたロボットオリンピック(仮称)の開催を視野に

入れるなど、ロボットスーツや災害対応ロボットをはじめとした様々な分野のロボットやユニバーサルデザインな

どの日本の最先端技術を世界に発信する。

(社会的な課題解決に向けたロボット革命の実現)

日本がこれまで世界をリードし、そしてこれからも新たな市場を作り出すことができる、イノベーションの象徴とも言

える技術は、ロボット技術である。近年の飛躍的な技術進歩とITとの融合化の進展で、工場の製造ラインに限らず、

医療、介護、農業、交通など生活に密着した現場でも、ロボットが人の働きをサポートしたり、単純作業や過酷労働か

らの解放に役立つまでになっている。ロボットは、もはや先端的な機械ではなく我々の身近で活用される存在であり、

近い将来、私たちの生活や産業を革命的に変える可能性を秘めている。

少子高齢化の中での人手不足やサービス部門の生産性の向上という日本が抱える課題の解決の切り札にすると

同時に、世界市場を切り開いていく成長産業に育成していくための戦略を策定する「ロボット革命実現会議」を早急に

立ち上げ、2020年には、日本が世界に先駆けて、様々な分野でロボットが実用化されている「ショーケース」となるこ

とを目指す。

<鍵となる施策>②イノベーションの推進と社会的課題解決へのロボット革命

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