医療経済学⑤ -...

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医療経済学⑤ 医療を支える人:医師と看護師の労働経済学 近大姫路大学2015.07.04 担当 安川文朗

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  • 医療経済学⑤ 医療を支える人:医師と看護師の労働経済学

    近大姫路大学2015.07.04

    担当 安川文朗

  • わが国における医療労働の実態:医師不足、看護師不足

  • 0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    57 59 61 63 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24

    41

    (万人)

    病院(医育機関附属の病院を除く)

    診療所

    137,902人

    各年12月31日現在

    100,544人

    50,404人医育機関附属の病院

    昭和・・年 平成・年

    (1982) (2000) (2012)

    医師は本当に不足しているのか?

    平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査

  • 0.0

    50.0

    100.0

    150.0

    200.0

    250.0

    300.0

    北海道

    神奈川

    和歌山

    鹿児島

    (人)

    全国

    226.5人

    182.1人

    44.5人

    医師数の偏在①

    都道府県(従業地)別にみた医療施設(病院・診療所)に従事する人口10万対医師数

    平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査

  • 2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    平成6年 8年 10年 12年 14年 16年 18年 20年 22年 24年

    70歳以上

    60~69

    50~59

    40~49

    30~39

    29歳以下

    13,781 14,15613,989

    15,236

    14,70014,481 14,677

    (千人)

    15,870 16,340

    (1994) (2000) (2012)

    各年12月31日現在

    0

    13,346

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    平成6年 8年 10年 12年 14年 16年 18年 20年 22年 24年

    70歳以上

    60~69

    50~59

    40~49

    30~39

    29歳以下

    (千人)

    (1994) (2000) (2012)

    11,264 11,269 11,059 11,03410.594

    10,07410,389

    10,652 10,868

    各年12月31日現在

    0

    11,391

    小児科医師数の推移

    産婦人科・産科医師数の推移

  • 5

    10

    15

    20

    25

    30

    平成6年 8年 10年 12年 14年 16年 18年 20年 22年 24年

    不詳

    70歳以上

    60~69

    50~59

    40~49

    30~39

    29歳以下

    (千人)

    (1994) (2000) (2012)

    28,651 28,871 28,73228,396 28,097

    26,47027,525 27,820 28,055

    各年12月31日現在

    0

    28,233

    外科医師数の推移

    ①医師の絶対数は増加しているが、産科医、外科医の人数は相対的に低下 ②医師数の地域差の要因は、病床数と医師数とのアンバランスに起因

    看護はどうだろう?

  • 平成23年 平成27年

    需要数 供給数 差 充足率 需要数 供給数 差 充足率

    常勤換算 1,404,300 1,348,400 56,000 96.00% 1,500,900 1,486,000 14,900 99.00%

    実人員 1,541,000 1,481,200 59,800 96.10% 1,650,200 1,639,700 10,500 99.40%

    第7次看護需給見通し

    *毎回看護需給見通しの最終年にはほぼ需給が均衡することになっているにもかかわらず、新たな需給見通しでは常に超過需要が見込まれている

    まさに「政策的」見通し

  • 0

    200000

    400000

    600000

    800000

    1000000

    1200000

    1400000

    1600000

    2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

    日本の就業看護師数推移

    総数 病院 診療所 その他

    厚生労働省医政局看護課資料より安川作成

    日本の看護師はどこで働いているか

  • 看護師のワーク=ライフ・バランスに対する関心

    %

    61.2

    60.9

    31.5

    30.1

    11.55.4 5.7

    仕事が身体的にきつくなった

    仕事が精神的にきつくなった

    生活バランスが悪くなった

    仕事中の休憩が不足するようになった

    夜勤時間が長くなった

    以前より働きやすくなった

    その他

    73.2

    21.6

    5.2

    ある

    ない

    わからない

    52.9

    29.3

    9.7

    17.3

    31.7

    49.9

    30.4

    17.4

    16.43.2

    人員増加

    時間外労働の削減

    夜勤時間短縮

    夜勤回数制限

    休憩時間の確保

    給与の改善

    業務分担見直し

    コミュニケーション改善

    教育研修の充実

    その他

    64.8

    18.5

    21.1

    5.9

    33.6

    57.8

    21.3

    46

    1.8

    睡眠時間

    食事時間

    子育て時間

    介護時間

    交際時間

    趣味の時間

    勉強時間

    家族との団欒

    その他

    仕事上の変化 悩みやストレス

    必要な業務改善 必要な時間

    労働科学研究所(2009) 未公開

  • 看護労働と専門性について考える

    看護の仕事 ⇒ 非定型業務、 チームによる業務

    シャドウプライスによる評価

    法的に規定された看護業務

    傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助 (保助看法第5条)

    *実際には、日本看護協会の「看護業務基準(1995)」によって具体的に規定

  • 1) 看護を必要とする人に身体的、構神的、社会的側面からの手助けを行う。 看護を必要とする個人、家族、集団を身体的、精神的、社会的側面から捉え、 健康な日常生活を送ってい

    くうえで、身体的、精神的、社会的に自分のことが自分で行えない状態にある人に、その人なりの日常生活が自分でできるよう援助を行う。

    2) 看護を必要とする人が変化によりよく適応できるように支援する。

    現在行われている治療や検査、訓練などについて本人が安心して、さらに積極的に参加できるように援助し、さらに、健康レベルの変化に応じたライフスタイルを創造するために調整し、情緒的、情報提供的支援を行う。

    3) 看護を必要とする人を継続的に観察、判断して問題を予知し対処する。

    看護を必要とする個人・家族・集団を継続的に観察し、健康状態や生活状況を判断することによって重大な徴候を識別し、適切な対策を講じる。

    4) 緊急事態に対する効果的な対応を行う。 緊急事態とは、極度に生命が危機にさらされている状態で、予測・不測の両方の事態が含まれる。 効果的な対応とは、直面している状況をすばやく把握し、必要な人的物的資源を整え、的確な救命救急 活動を行い、危機状況を管理し、安定化をはかる。

    5) 医師の指示に基づき、医療行為を行い、その反応を観察する。 医療行為とは、保健師助産師看護師法第37条が定めるところに基づき医師の指示が必要であるが、医師の指示の実施に際しては以下の点について看護独自の判断が必要である。 1.医療行為の理論的根拠と倫理性 2.患者にとっての適切な手順 3.医療行為による患者の反応の観察と対応

  • より広範な医学処置がおこなえるか=医師との一部代替的専門性

    ⇒ 特定看護師、NP

    高度な看護(ケア)がおこなえるかどうか=補完的専門性

    ⇒ 専門看護師

    看護の専門性をどう考えるか

    異なる議論が必要となる

  • 看護の技術(K)

    看護提供時間(T)

    K1 K2

    T1

    T2

    看護の技術が高まることの経済学的効果

    期待される技術と期待される提供量との効率的な関係

    看護必要度の基本的考え方

  • 医師

    看護師

    ● ●

    医師と看護師の代替関係

    医師の技術に対して相対的に看護の技術力が高まる場合、●のような代替関係が実現する可能性がある

  • 医師

    看護師

    医師配置型医療の予算線

    特定看護師配置型医療の予算線

    医療機関の効用曲線(=サービスの等量生産曲線)

    相対的に代替価値が高まるということは、医療機関にとっては同じ効用水準(=サービス生産水準)の医療をより少ない医師数(予算)で実現できるということ

  • もし医療機関の効用と社会(国民)の効用が等しいなら

    医師と一部代替的な技術をもつ専門看護師を多く配置する

    ことで、医療機関の効率性=社会の効率性が改善する

    特定看護師を医療機関が積極的に採用することが望ましい

    しかし・・・・・

  • 看護の専門性が、医師の技術の一部代替ではない場合

    経験豊富でしかも明確な看護理論に裏打ちされた高度な看護ケア技術

    を、医師の技術とは別のものとして発揮する場合

    医師との代替的要素ではなく、補完的要素としての価値をどう評価するか

    が課題となる

  • 医師

    看護師

    医師配置型医療の予算線

    特定看護師配置型医療の予算線

    医療機関の効用曲線(=サービスの等量生産曲線)

    看護師の技術が医師の補完的技術とすれば、医師数との代替ではなく、看護技術の追加が、医療機関のサービス全体を豊かにする

  • の意味するところ

    ▪ 医師がいなくても看護特有のサービスに対する社会の需要がある場合、この需要に応えられるだけの専門性の高い看護を供給する必要がある

    *しかし、医療機関の予算制約より右側ではサービスを提供できない ⇒ だれがこのコストを負担すべきか

    どんなサービス?

    *患者の不安を取り除く、わかりやすく前向きな病気の説明

    *患者や家族の現実をふまえた、適切な療養環境づくりと支援

    *不安や疑問があれば、チーム医療の代表としていつでも相談ができる体制 医療システム設計の具体的課題

  • 0

    100,000

    200,000

    300,000

    400,000

    500,000

    600,000

    20~24 24~28 28~32 32~36 36~40 40~44 44~48 48~52 52~56 56~ 歳

    円(月額)

    薬剤師 看護師 准看護師

    放射線技師 栄養士

    技能と賃金は一致しているか

    平成18年「職種別民間給与実態調査」

  • 看護師の賃金、給与は看護師という専門医療者の「評価」のはず

    しかし実際には、多くの看護師が「評価されている」とは思っていない?

    看護師の賃金に関して通常いわれていること

    1.賃金上昇率が低い

    2.昇給の機会が少ない

    3.手当部分の割合が大きく、基本給の割合が少ない

    4.看護サービスの質や成果に対する評価が少ない

    看護の賃金問題

  • 看護師の賃金をめぐる議論

    出所:http://www.kango-roo.com/sn/a/view/306

  • 出所:http://www.kango-roo.com/sn/a/view/306

  • 年齢階層

    平成25年4月分平均支給額

    職種

    決って支給する給与

    (A-B)

    う ち 時 間 う ち

    外 手 当 通勤手当

    (B)

    歳以上 歳未満 円 円 円 円

    総看護師長

    ~20 - - - -

    20~24 - - - -

    24~28 - - - -

    28~32 x x x x

    32~36 - - - -

    36~40 460,101 0 460,101 12,820

    40~44 480,305 11,695 468,610 6,628

    44~48 488,693 1,833 486,860 6,459

    48~52 519,328 8,044 511,284 11,297

    52~56 499,093 8,843 490,250 9,121

    56~ 527,928 3,865 524,063 12,731

    計 (54.5歳) 511,626 5,968 505,658 10,887

    歳以上 歳未満 円 円 円 円

    看護師長

    ~20 - - - -

    20~24 - - - -

    24~28 x x x x

    28~32 356,757 55,747 301,010 5,945

    32~36 380,204 47,198 333,006 12,946

    36~40 398,048 44,269 353,779 8,434

    40~44 412,778 37,782 374,996 8,427

    44~48 431,569 33,081 398,488 10,472

    48~52 434,678 28,455 406,223 9,768

    52~56 441,763 27,454 414,309 9,839

    56~ 448,481 23,591 424,890 9,324

    計 (46.9歳) 424,300 33,579 390,721 9,657

    歳以上 歳未満 円 円 円 円

    看護師

    ~20 - - - -

    20~24 273,139 34,330 238,809 5,359

    24~28 307,703 50,098 257,605 6,622

    28~32 332,947 47,970 284,977 10,790

    32~36 339,280 44,633 294,647 9,369

    36~40 342,733 41,173 301,560 9,120

    40~44 358,310 45,526 312,784 8,688

    44~48 361,618 42,747 318,871 8,818

    48~52 367,285 40,991 326,294 7,908

    52~56 367,582 40,247 327,335 7,828

    56~ 373,947 36,104 337,843 8,140

    計 (36.9歳) 338,790 44,021 294,769 8,630

    歳以上 歳未満 円 円 円 円

    栄養士

    ~20 - - - -

    20~24 205,892 8,580 197,312 11,393

    24~28 221,483 13,053 208,430 8,754

    28~32 239,117 13,657 225,460 9,034

    32~36 257,731 10,083 247,648 12,763

    36~40 276,982 11,233 265,749 12,738

    40~44 309,603 20,196 289,407 12,641

    44~48 314,690 18,191 296,499 9,012

    48~52 350,079 12,556 337,523 13,090

    52~56 398,585 20,848 377,737 22,772

    56~ 370,795 14,007 356,788 10,716

    計 (36.4歳) 274,017 13,778 260,239 11,268

    人事院『民間給与実態調査H25年度』データから

  • 職種別時間あたり賃金水準 日本:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2003年)より アメリカ:Bureau of Labor Statistics "National Compensation Survey" 2002年 イギリス:Office for National Statistics "New Earnings Survey" 2003年より

  • 要因1 一旦やめると給与が下がる?!

    出所:http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/shuroanzen/chingin/01/06.html

  • 出所:http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/shuroanzen/chingin/01/06.html

  • 賃金の決まり方

    物価 ⇒ コスト・プラス法

    原価にもとづく価格

    価格=直接コスト+間接コスト+利幅

    賃金 ⇒ 市場価格法

    市場で取引される同種の財・サービス

    にならった価格づけ(参照価格)

    同種の財・サービスの価格を決めるもの ⇒ 労使交渉

  • 医療従事者の賃金決定メカニズム

    ふたつの議論

    ①社会における医療職種の賃金決定の議論

    ②医療従事者個人の賃金水準の妥当性の議論

    (マクロの)賃金決定メカニズム

    (ミクロの)賃金決定メカニズム

  • マクロ賃金決定メカニズム

    市場の医療従事者に対する需要と供給の関係

    労働供給曲線S

    労働需要曲線D

    市場全体の医療従事者必要数

    価格

    (RP)

  • ミクロ賃金決定メカニズム

    (1)医療技術者の保有する技能、生産性に対する評価

    技術の高い医療者には高い賃金が支払われる?

    (2)仕事の価値に対する評価

    同一労働・同一賃金の原則(米国、EPA(1963))

    価値を規定する要因は何か?

    医師 ⇒

    看護師 ⇒

    難しい手術をする外科医ほど高賃金?

    看護師の技術は測定できない(シャドウ・プライス)

  • QUESTION

    技術も高まり、看護師としての総合的能力も高まると思われる看護師が、なぜ30代前半から他職種に比べ賃金水準が上らなくなるのか?

    *他職種のほうが技術水準が高い?

    *看護師の技術が30代から劣化する?

    *それ以外の要因?

  • 技能に対する報酬

    医療技術者の保有する技能、生産性に対する評価

    技術の高い医療者には高い賃金が支払われる

    労働者の技能

    一般的技能

    企業特殊的技能

    どこでも役に立つ技能(一般教育投資)

    技能に対する投資あり方が賃金を決定=人的投資理論

    職種に特異的な技能(専門教育投資)

  • 成果による報酬

    出来高報酬

    生産量に応じた報酬制度

    ⇒ 看護には馴染まない?

    インセンティブ報酬

    組織の目標達成や経営成果に応じて、管理者に支払われる報酬

    ⇒ 管理者の職能を引き出す可能性

  • 看護の品質が個別に評価されない報酬体系

    価格/賃金/労働需要量

    品質/サービス供給量

    理想的な報酬プロファイル 現実の報酬

    プロファイル

    患者・社会のロス+賃金の非効率配分

  • 病院レベルでの賃金決定メカニズム

    病院の直面する労働市場

    労働供給曲線S

    労働需要曲線D

    医療従事者必要数

    価格

    (RP)

    看護師雇用のための限界費用

    賃金

    雇用量

    不足

  • 賃金に関する経済理論仮説

    1.Marginal products hypothesis (限界生産力仮説) 2.Compensation wage hypothesis(補償賃金仮説) 3.Efficiency wage hypothesis(効率賃金仮説)

  • 1.Marginal products hypothesis (限界生産力仮説)

    実質賃金率は限界生産力に一致する

    生産曲線

    生産高Q

    売上高P

    報酬曲線(=労働者のエフォート)

    企業の利潤が最大になるためには、報酬曲線と限界生産性が一致する(生産曲線の接線の傾きが報酬曲線の傾きと一致する)ようにすればよい

  • 2.Compensation wage hypothesis(補償賃金仮説)

    1、労働者は効用最大化を追求する 2、労働者は彼らにとって重要な仕事上の特性を知っている 3、労働者は複数の仕事のオファーの中から選ぶことができる という仮定のもとで、

    ①労働者は安全を好むため,危険を伴う仕事に対して賃金プレミアム(割増賃金)を求め

    ②企業は致命的な危険を減らすにはコストがかかることがわかっているなら

    ③仕事の特性に応じて、危険な仕事ほど賃金が高く、安全志向の労働者は低い賃金を受諾する という仮説 Ehrenberg and Smith(2003)

    仕事の特性に応じて賃金率は調整されている(はず)!

  • 賃金率W

    リスクの大きさR

    Rax Rby

    Wby

    Wax

    Y

    Y

    b

    b

    a

    a

    x

    x

    補償賃金仮説によれば、福祉の仕事(3K)の賃金率は最も高くなるはず・・・・・

  • 看護師が納得できる賃金体系とは何か、どう設計するか

    1)看護の労働特性をどう定義するか 2)看護師の「労働生産性」をどう測るか 3)看護師の労働規範とは何か 4)看護師が「納得できる」とはどういう状況か

  • 1)看護の労働特性をどう定義するか

    2)看護師の「労働生産性」をどう測るか

    看護の労働特性

    ・非定形、非個別性労働⇒客観的に識別可能な労働ではない ・看護に対する報酬評価は「シャドウ・プライス」

    看護の労働生産性

    ・看護師の労働生産性は医師に比べて低い? ・肉体労働生産性と知識労働生産性⇒看護はどこに特化?

  • 看護師のスタッフィングの改善は、何をもたらすのか?

    1

    1.2

    1.4

    1.6

    1.8

    2

    2.2

    2.4

    2.6

    2.8

    Lowest Low middle High middle Highest

    対患者看護配置が多い

    対患者看護配置が少ない

    外科術後患者 118,752 人の術後死亡率と、患者:看護師比率との関係 in 30 U.K. Hospital Trusts Linda H. Aiken(2005)より

  • 看護婦の評価結果 ( )内は標準偏差

    医師の評価結果 ( )内は標準偏差

    看護婦と医師のリスク評価差 P値

    患者移動 5.84(2.18) 4.66(2.25)

    4.60(2.25) 4.02(2.17)

    0.000 **** 0.017 **

    導尿 4.69(2.10) 3.99(1.96)

    3.91(1.94) 3.65(1.93)

    0.001 **** 0.091 *

    薬剤処方 6.77(2.05) 5.52(2.32)

    5.44(2.18) 4.48(2.20)

    0.000 **** 0.000 ****

    内服薬投与 7.38(1.95) 5.84(2.41)

    5.58(2.15) 4.50(2.11)

    0.000 **** 0.000 ****

    注射 7.88(1.99) 6.47(2.50)

    6.63(2.18) 5.31(2.30)

    0.000 **** 0.000 ****

    輸液 7.99(1.88) 6.55(2.42)

    6.42(2.30) 5.28(2.34)

    0.000 **** 0.000 ****

    輸血 8.27(2.09) 6.95(2.65)

    7.02(2.40) 5.68(2.53)

    0.000 **** 0.000 ****

    創傷処置 5.48(2.02) 4.68(2.01)

    4.79(2.22) 4.39(2.24)

    0.005 *** 0.236

    医師と看護師のリスク認知差の例

    安川他(2000)

  • 連続1カ月以上休職したものがいない企業の比率

    農業林業 96.9 鉱業採石 95.3 建設業 93 製造業 89.8 電気ガス 71.8 情報通信 68.6 運輸郵便業 92.6 卸売小売 94.1 金融保険業 84.2 不動産業 91 研究専門技術 96 宿泊業飲食 96.5 生活関連娯楽 97.1 教育学習 91.8 医療福祉 92.8 複合サービス 84.8 その他のサービス業 88.8

    医療(看護)は危険度の高い職業か?

    厚生労働省『労働者健康状況調査H24』より安川作成

  • 3)看護師の労働規範とは何か

    賃金水準によって看護師の労働規範は変化しているのか?

    看護労働の特性について、医療社会学と医療倫理学では 異なる見解 医療社会学 ⇒ 看護の仕事は「感情労働」 医療倫理学 ⇒ 看護の仕事は「ケア倫理」

  • 感情労働 ⇒ 看護師の主体的な行動原理 ケア倫理 ⇒ 職能としての基本的な行為規範

    もし感情労働としての労働規範が重視されるのであれば、賃金は個別の看護師の感情水準に従って個別に測定され、決定されるべき(ただし、所属、職場環境、経験年数等によって大きな影響を受ける)

    もしケア倫理としての労働規範が重視されるのであれば、賃金は個別ではなく職能の標準的水準に対して決定されるべき

  • 4)看護師が「納得できる」とはどういう状況か

    看護師が納得できる賃金体系とは、賃金が何にもとづいて支払われた時なのだろうか?

    ①経験年数に見合った賃金上昇 経験年数が増すとともに、自分にはそれなりの看護技術が備わっている (=留保賃金水準がある) ⇒ 留保賃金でしか働かない人と、どの水準の賃金でも働きた い人がいる場合は、前者と後者で完全に業務を分ける

    ②取得している専門性に見合った賃金水準 専門性が労働生産性と整合的かどうかを、雇用者は専門的に見極める 必要がある ⇒ 限界労働生産性に応じた賃金水準を提供する