慢性期療養病棟における接遇への取り組み ·...

11
第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 7-9-1 癒し・療養環境(1) 慢性期療養病棟における接遇への取り組み 藤民病院 介護福祉士 いづつ あい ○井筒 愛(介護福祉士) 【 はじめに 】 当院は療養型医療施設であり、長期入院を必要としている患者様が入院されている。 入院が長期化すると患者様との心の距離が縮まり、親密度が増すと接遇に対する意識が低くなってしまう事が ある。当院でもそのような関係性が生じ、患者様への言葉遣いやスタッフ間の私語を指摘されていたが、具体 的な改善策を見いだせずにいた。今回、接遇に対する意識改革と共にチームとしての接遇強化を目指し改善に 取り組んだ。 【 実践期間 】 平成28年1月 ~ 4月 【 方法 】 まず、医療病棟全介護スタッフ17名に接遇に関する意識調査を行った。調査した結果をもとにスタッフ全 員で意見交換を行い、改善策として日勤リーダーが接遇リーダーを兼務し、1日の接遇目標を決め、終業時に 日勤スタッフの接遇を評価した。 3週間継続後、日々の目標に偏りが見られたため、患者様に寄り添った接遇目標をスタッフ間で話し合い、1ヶ 月の固定目標を作り詰所に掲示した。さらに、接遇チェック表も作成し、日勤リーダーが終業時に評価した。 【 結果 】 今回の取り組みでは、当院の患者層での客観的評価にはつながらなかったが、取り組む前に比べスタッフの 患者様に対する言葉遣いが改善され、さらに廊下などでのスタッフの私語も減少した。スタッフ間で注意し合 うのは難しいが、接遇リーダーを交代で務めたことにより、他のスタッフの接遇に関心を持て、自分の接遇を 客観視できたのではないかと考える。 【 おわりに 】 接遇は信頼関係を構築するために必要不可欠であり、病院という環境の中では一人一人の高い接遇が求めら れている。また、スタッフの接遇が病院の評価につながると言っても過言ではない。そのことを意識付けでき るようにスタッフ間で話し合う時間を繰り返し設け、接遇強化を実践しながら自分達の介護の質の向上を目指 したい。

Upload: others

Post on 16-Oct-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-9-1 癒し・療養環境(1)慢性期療養病棟における接遇への取り組み

藤民病院 介護福祉士

いづつ あい

○井筒 愛(介護福祉士)

【 はじめに 】 当院は療養型医療施設であり、長期入院を必要としている患者様が入院されている。入院が長期化すると患者様との心の距離が縮まり、親密度が増すと接遇に対する意識が低くなってしまう事がある。当院でもそのような関係性が生じ、患者様への言葉遣いやスタッフ間の私語を指摘されていたが、具体的な改善策を見いだせずにいた。今回、接遇に対する意識改革と共にチームとしての接遇強化を目指し改善に取り組んだ。

【 実践期間 】 平成28年1月 ~ 4月

【 方法 】 まず、医療病棟全介護スタッフ17名に接遇に関する意識調査を行った。調査した結果をもとにスタッフ全員で意見交換を行い、改善策として日勤リーダーが接遇リーダーを兼務し、1日の接遇目標を決め、終業時に日勤スタッフの接遇を評価した。3週間継続後、日々の目標に偏りが見られたため、患者様に寄り添った接遇目標をスタッフ間で話し合い、1ヶ月の固定目標を作り詰所に掲示した。さらに、接遇チェック表も作成し、日勤リーダーが終業時に評価した。

【 結果 】 今回の取り組みでは、当院の患者層での客観的評価にはつながらなかったが、取り組む前に比べスタッフの患者様に対する言葉遣いが改善され、さらに廊下などでのスタッフの私語も減少した。スタッフ間で注意し合うのは難しいが、接遇リーダーを交代で務めたことにより、他のスタッフの接遇に関心を持て、自分の接遇を客観視できたのではないかと考える。

【 おわりに 】 接遇は信頼関係を構築するために必要不可欠であり、病院という環境の中では一人一人の高い接遇が求められている。また、スタッフの接遇が病院の評価につながると言っても過言ではない。そのことを意識付けできるようにスタッフ間で話し合う時間を繰り返し設け、接遇強化を実践しながら自分達の介護の質の向上を目指したい。

Page 2: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-9-2 癒し・療養環境(1)ホットタオルを利用した入眠・安眠を目指した取り組みと評価

富家病院

あんどう ひろみ

○安藤 博美(介護福祉士),田島 慎也

【はじめに】 当病棟は、透析患者 9 名、長期療養目的患者 37 名の 46 床である。患者様は慢性腎不全で透析導入中の方、脳血管疾患術後の方が多くいます。そのうち睡眠障害を呈している患者様 3 名を対象として、足にホットタオルをあてた後の睡眠時間及び状態を観察してみた。入院患者様は、環境の変化などの理由で生活のリズムが乱れ、不穏になり、徘徊などすることもある。昼夜逆転し、深夜又は朝方までテレビを見続けたり、うとうとしたりの繰り返し時には日中もテレビを見ていて、いつ眠るのだろうと思う患者様もいる。そこで、足浴によるリラクゼーション効果の心理的効果について注目した。足浴は、鎮静、リラクゼーション、睡眠への導入など手軽な心身リラックス法として注目されている。足浴と睡眠の効果、関連があることが明らかになっている文献を参考に研究を行ってみた。足浴となると夜間はマンパワーも少なく、ベッド上で簡易に出来ることは何かないか検討し、ホットタオルで試してみた。期間 平成 28 年 2 月 7 日~ 21 日の 15 日間

【方法・対象者】・濡らしたタオルをビニール袋に入れ、レンジで温め足先に当てる。(この時、直接だと熱いので乾いたタオルを足先に巻いておく。)*時間 : 消灯時間 PM9:00 ~ AM2:00 の間1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。*対象者 : 84歳 女性     85歳 男性     86歳 男性

【結果・考察】 対象者の睡眠時間、状態を見ると、2名に関しては途中覚醒がほとんどなく眠れていたという結果が得られた。また、実施期間後、数日観察して見た所、覚醒していることが多くみられ、今後、不眠の看護援助、睡眠の改善・対処法として効果があり適切ではないかと思う。

Page 3: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-9-3 癒し・療養環境(1)認知症の患者とふれあう時間を確保するために ~生活動線・介護動線を見直して~

安来第一病院

ながしま としはる

○永島 寿晴(介護福祉士),島田 翔平

Ⅰ . はじめに  当病棟は認知症治療病棟である。介護福祉士やケアワーカーの業務として生活指導や環境整備の係はリネン類等の補充や準備等で患者とふれあう時間が少なかった為、動線を見直して工夫したことを報告する。

Ⅱ . 研究の目的  作業動線の無駄を改善し、患者様とふれあう時間を増やしたい

Ⅲ . 研究方法  生活動線・介護動線の見直し

Ⅳ . 過程 1.問題点  1)衣類は衣類庫に中央管理していて必要時取りに行っていた。  2)リネン類、病衣、オムツ、洗い替えのくつ、タオル、手袋、衣類等の保管場所が分散していた。  3)衣類庫に男女に区分けせず分散していた為探すのに時間がかかった。  4)ホールから遠い倉庫にくつ、クッション等を収納していた。  5)くつは男女に分けてあり探すのに時間がかかった。2.改善方法  1)キャスター付きのカートにリネン類、病衣、オムツ、衣類等を一つにまとめた。  2)分散していたリネン類等をキャスター付きのカートにまとめ、更衣が必要な患者様の場所に運び、迅速に対応できるようにした。  3)衣類を男女別に分けた。ご家族様持ち帰りと洗濯業者依頼者とに区別するシールを貼った。  4)くつや体交枕等をホールの空きスペースになった棚に収納した。  5)くつは数名ごとに収納ケースにいれ、名前の分かるシールを引き出しに貼った。

Ⅴ . 結果および考察 動線を見直した事で患者と回想法やレクリエーション等に参加し一緒にふれあえる時間が増えた。本来の介護職員としての役割に喜びを感じられるようになった。

Ⅵ . おわりに 今後も限られた職員で日々の業務を行う中、業務の改善を見直していく視点を持ちながら、介護職員としてやりがいのある職場作りに取り組み、全スタッフで穏やかな入院生活を提供できるように取り組んでいきたい。

Page 4: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-9-4 癒し・療養環境(1)当院における在宅復帰機能強化加算病棟での集団活動の取り組み

北九州湯川病院 リハビリテーション科

やました ともこ

○山下 知子(作業療法士),川原 瞳,緒方 直美,稲葉 孝二,阿部 真由美,甲斐 貴弘,立石 憲

【目的】 当院在宅支援病棟(以下、病棟)入院中患者様に対し、週 1 回集団活動を実施。症例を通してその有用性や今後の課題を検討する。

【対象】 平成 27 年 3 月~ 8 月に入院され、自宅退院もしくは自宅とみなされる施設へ転所された患者様 33 名より集団活動に参加された患者様 25 名。

【取り組み】 週1回、20 分程度。見当識の確認、体操、ゲーム、創作活動等をリハが担当。参加者 10 名程度。症例 1 男性、間質性肺炎後廃用症候群。リハ目的にて当院入院。妻と 2 人暮らし。耐久性、ADL 向上あるも、意識消失を繰り返し転倒のリスク残存。集団活動に参加する事で、施設生活のイメージが構築でき抵抗感軽減、デイサービス併設施設へ転所。症例 2 男性、腰椎圧迫骨折、認知症。当初より介護・リハ拒否。大声や粗暴行為あり。病棟職員協力の下、集団活動へ誘導。徐々に参加者と馴染みの関係構築され、活動性向上。次施設では抵抗なく、集団生活になじむ事ができた。

【まとめ】 患者様の通所サービス利用への抵抗感や、生活動作においての出来る能力としている状況の解離を上手く埋める事への課題等あり、集団活動開始。 習慣化するにつれ、患者様同士なじみの関係構築、役割獲得、集団生活に対する抵抗感軽減、自らの環境・現状を受容するきっかけとなった。また、サービス利用の疑似体験により、具体的な想像の一助となった。病棟ロビーを利用する事で、他職種にも新たな一面を見てもらう事が出来たこと、職員間で情報共有が容易になり、介助方法を再検討する場面にも繋がった。 一方、活動内容の偏りや生活状況の反映等に関する課題に対し、コミュニケーションをより促進していく必要性がある。また、活動の見直しや知識の吸収に努め、多様性ある対応に努めていきたい。

Page 5: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-9-5 癒し・療養環境(1)ナースコール回数減少への取り組み

ケアハウス山口エルベ

おおはし なつき

○大橋 菜津妃(看護師),兼俊 直美,宮本 菜都美,須崎 香織,谷平 里美,末松 則子,山崎 恵美子

[はじめに]介護者の介護をするにあたり心身の状態、心理状況、その方の本来の性格を理解すると共にそれぞれの個性や能力を支えていくことが必要である。今回 「腰が、ちぎれそう」「痛み止め下さい」等のナースコールが、1 日20 回程度あり酷い時には夜間 1 時間に5分間隔でのナースコールがある入居者様に目を向け、何か良い方法はないだろうかと検討したところ、音楽療法を始めとした周囲との関わりを見直す事により、心身の健康回復、情緒の安定に効果があるのではないかと思い実践した。その取り組みについて報告する。

【対象】 入居者 Fさん(女性)89歳 病名:変形性腰椎症、骨粗鬆症、抑うつ神経症、脊柱管狭窄症 寝たきり度 B1 認知度 Ⅱ a MMSE 27 点長男宅に同居していたが、自宅で何度か転倒し腰痛が悪化し入院。その後は老健に入所したが、自宅での生活は困難との事でエルベへ入居となった。

[方法]合唱クラブやナースコール対応の再検討、家族との関わりの支援、カラオケに参加してもらい好きな曲を唄ってもらう。日中、自室内での生活時間を減らし他者との交流や家人に面会して頂き活動の機会を増やす。

[結果]他入居者や職員との関わりが増え、会話や歌を唄ったり、1日平均20回のナースコールが取り組み開始3カ月後には、1 日約5回へと減少し「今日は、すごく調子がいい」と険しい表情から穏やかになっていった。

[考察]その人を取り巻く環境を考え直す事で他入居者様と触れ合う機会が増え高齢者が多く抱える感情の変化、心身の衰え、身体の不調や痛みが緩和できナースコールの減少に繋がったと考えられる。今回の結果から音楽療法などを通して人間関係の交流、リハビリ、QOLの向上と様々な効果が得られた。引き続き個人的な「生きがい」となるように継続していきたい。

Page 6: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-1 癒し・療養環境(2)療養生活に季節感を添える試み ~壁面装飾を用いて~

信愛病院 看護部

やまなか ちえこ

○山中 智恵子(介護福祉士),醍醐 洋子,太田 幸子,越永 守道

【はじめに】 当病棟は 34 床の介護療養型医療施設であり、医療が必要な介護度が高い患者さんが入院しているため、日常の業務においては介護や看護に多くの時間を当てなければならない状況にある。入院生活における質の向上を図りたいと思う気持ちは持ちつつも、患者様のためのレクリエーションなどをおこなうには時間的、物理的な制約がある。そこで四季折々の風景を盛り込んだ壁面装飾の導入を試みた。 【目的】 壁面装飾を用いて、患者様に四季の変化を身近に感じてもらうことで、入院生活の活性化を図る。 【研究期間】 2014 年 6 月~ 2016 年 6 月までの 2 年 1 か月間 【方法】 1. あらかじめ季節の題材を決める担当者を決め、年間計画を立てる。 2. 年間計画では、季節の変わり目を逃さずに装飾できるように、各月の担当者を決めておく。 3. 患者様に装飾の制作過程に参加してもらい、楽しみながら季節感を感じてもらうように働きかける。 4. ご家族、ボランティアなどと共同で制作することにより 様々な人に関心をもってもらうように働きかける。 【結果】 装飾をはじめると、患者様からは「次は何なの?」という声も多く聞かれ、患者様が楽しみにしている様子が伺われた。自室から出る機会の少ない患者様もリクライニング型車椅子に乗車した際には、スタッフが「紫陽花ですよ」などの言葉をかけるなどより深いコミュニケーションを図ることができた。またご家族からの評判も良かった。 【考察】 一般に入院生活が長くなれば季節の感覚が薄れがちになる。特に介護度が高くなれば外に出る機会は少なくなりその傾向はより顕著となる。今回の取り組みは、壁面装飾を季節の変化に合わる事により、患者様の療養生活にある程度の活性化をもたらしたと考えられる。

Page 7: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-2 癒し・療養環境(2)施設入居者で認知症カフェに参加した一例

1 金沢西病院 リハビリテーションセンター,2 金沢西病院 地域連携センター

さとう まなみ

○佐藤 愛美(理学療法士)1,白山 武志 1,丸居 夕利佳 1,矢口 まほの 2

【はじめに】厚生労働省が認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の中で認知症の介護者負担軽減策として掲げた項目の中で「認知症カフェ」が各市町村で行われている。金沢市駅西地区在宅医療普及の会(りくつなケアネット金澤)でも、無住寺を利用し認知症カフェを開催している。その中で、在宅復帰を希望する、施設入所中の独居高齢者が認知症カフェに参加することにより、QOL の向上が見られたため報告する。

【利用者紹介】70 歳代後半、女性、3 年前に脳梗塞 ( 左片麻痺 ) 発症。左下肢に短下肢装具着用し、T 字杖歩行可能。日中は車椅子にて移動。現在は特別養護老人施設のロングショートステイを利用しながら、月に1回、家族と共に 2 ~ 3 日間帰宅しながら過ごしている。本人は、介護保険サービスを利用しながら独居生活をしてみたいと希望がある。家族は、安全に安心して過ごせるように今の生活を続けて欲しいと希望している。特養では介護士による生活リハビリの他に、当院の理学療法士・作業療法士による、リハビリの支援や生活における評価や指導など行っている。外出機会を増やし、社会との関わりの機会を作る目的で本利用者に認知症カフェを紹介し、参加を促した。

【結果】認知症カフェに参加することにより、階段昇降や畳上の歩行、2 時間端座位で過ごす体力などが必要となるため、施設での生活リハビリに専念するようになった。また、元々住んでいた地域で行われているため、昔の友人や近所の方と再会し、情報交換などを行うことができた。

【考察】認知症カフェは新オレンジプランの中で様々な役割を担っており、その特徴は地域やメンバーによって様々である。今回、地域や社会との関わりや友人や仲間ができ、娯楽の場となった。更に専門家との繋がりができ、支援し続けてくれる人がいるという気づきも得られたと考えられる。その結果、生き生きとした生活を送ることができている。

Page 8: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-3 癒し・療養環境(2)ユーカリ・ラディアータオイルでの芳香浴による去痰作用の効果

緑水会病院 看護部

もり としゆき

○盛 聡幸(准看護師)

アロマテラピーは各種オイルにより効能も様々である。ある事象に対し効能があると文献には記されているものの、どの程度の効能があるか解らないのが実情である。当院の入院患者様は高齢であり寝たきりで喀痰の自力喀出が困難な方が多くを占める。長期の療養生活を送るなかで、より安楽な呼吸の援助を提供したいと考えユーカリ・ラディアータオイル(以下 オイル)の去痰効果に着目した。長期療養生活を送る患者様にもこのオイルによる芳香浴が効果的であることを明らかにするため本研究を計画し検証を行った。検証する項目として喀痰吸引回数、咳嗽、咽頭の貯痰音、喀痰の粘稠度を調査した。芳香浴を受けて頂くことで、喀痰の粘稠の程度を軟化する効果は得られなかったが、気道内分泌物の分泌促進・排痰運動の活性化が効果として得られた。本研究において、長期療養生活患者様が芳香浴から得られる去痰効果の実際を本学会において報告するものとする。

Page 9: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-4 癒し・療養環境(2)遷延性意識障害患者からの学び ~ナイチンゲールの「観察」からみえてきたこと~

竹川病院 看護部2階回復期病棟

よしもと あつこ

○吉本 敦子(看護師),池亀 千秋

【はじめに】遷延性意識障害のある患者にとって快や不快は何か。意識レベルだけでは汲み取れない患者の思いを医療者としてどのように観察し把握していけばよいか。快不快を感じるものとして発汗・排泄に注目した。看護の中で最も基本であり重要なことは「観察」というナイチンゲールの教えに基づき実践した事例を報告する。

【事例紹介】A 氏 20代女性重症頭部外傷、減圧開頭血腫除去術施行外傷後水頭症、V-P シャント術後シャント感染遷延性意識障害、JCS Ⅰ - 3~Ⅱ - 10 発症から1年2ヵ月後、当院回復期リハビリテーション病棟へ入院経鼻経管栄養、気管切開、終日発汗が多い

【方法・期間】排泄・発汗・更衣の有無についての記入表を作成し、1ヶ月間記入する。気温・湿度から不快指数を算出する。

【経過・結果】経管栄養後やリハビリ後に発汗が多いため、発汗が起こりうる時間帯を見据えて更衣を行った。患者に常に声かけをしながら全身状態を観察し、口元や眼の動きなど僅かな表情をみながら更衣を行なうなどを計画立案し介入した。話しかけると口の形を変えた、視線が 1 メートルくらい離れると目で追う感じがあったなど、スタッフ同士やご家族と情報を共有することができた。スタッフからは意識障害のある患者さんに対して向き合えたという意見が出た。不快指数の平均は 72.8(指数上 70~75 は「暑くない」)であり明らかな不快は示していなかった。

【考察】今回、不快指数からは明らかな結果はでなかった。しかし、スタッフ一人ひとりが観察の目を養う機会となった。ナイチンゲールが述べている看護の原点である観察に立ち返って看護を実践したことで、結果の「でる」「でない」に関わらず、変化の乏しい患者に対してもできることを模索し常に患者に向かう姿勢の重要性を再認識できた。

Page 10: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-5 癒し・療養環境(2)食べたい・歩きたい・話したいを満たす為に~人工呼吸器離脱に向けて~

博悠会温泉病院 看護部

ふじえだ ゆうこ

○藤枝 祐子(看護師),北方 時和

【はじめに】人工呼吸器管理が長期化すると気道損傷や人工呼吸器関連肺炎などの合併症のリスクが増加し、患者にとっても苦痛となる。これらの合併症を減らすためには早期から離脱に向けたケアを積極的に行い、患者本来の機能を引き出すことが重要である。今回呼吸器への精神的依存が極めて強い患者について、QOL 向上に向けて取り組んだので報告する。

【方法】89 歳 女性 慢性閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全ADL は全介助だったが徐々に拡大。コミュニケーションは読唇・ジェスチャーにより可能。入院当初は終日人工呼吸器を装着していたが、日中は自発呼吸下で酸素 1ℓ使用するまでに改善した。しかし酸素療法へ変更し離床したいという訴えはなく、離床後自室へ戻ると呼吸器を希望する動作が頻回に見られた。取り組みとして、日中の自発呼吸下での酸素療法施行時間を徐々に延長した。精神状態安定のためベッドの位置を工夫し、訪室時は必ずコミュニケーションを図るようにした。

【結果】①面接時人工呼吸器からの離脱へ不安感を抱いている様子が見られた。②自ら SpO₂ 値を確認し呼吸を整える様子も見られるようになった。③自発呼吸下酸素療法施行時間の延長により、倦怠感を訴える事が増え活動量の低下を招いた。

【考察】呼吸筋疲労等に伴う身体的な要素が活動量低下に大きく関与していたと考えられた。スタッフとの連携不足により患者の思いを十分に理解することが出来ていなかった。患者の欲求を十分に理解し、共にその日の酸素療法施行時間を決めるなどの自発性を引き出す必要があったと考える。

【おわりに】QOL の概念は個人によって異なるため、本人の思う QOL とは何かをまず考える必要がある。同じ目標に向けて会話を積み重ね、相互信頼により目標を達成することが極めて重要であると考える。

Page 11: 慢性期療養病棟における接遇への取り組み · 1時間ごとに睡眠状態を観察し、統計を取る。 *対象者 : 84歳 女性 85歳 男性 86歳 男性 【結果・考察】

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢7-10-6 癒し・療養環境(2)心のニーズに応える~生きがいを求めて~

新所沢清和病院 看護部

たかはし まみ

○高橋 真美(介護福祉士),高島 久美子,関野 仁美

【はじめに】当院は内科病棟220床、認知症病棟240床の慢性期療養型の病院である。今回、一日の大半を居室で過ごされている内科病棟の患者様に焦点をあてた。その方の趣味や特技を生かしながら、喜びや楽しみの持てる入院生活を送れるよう取り組んだ事例を報告する。

【患者紹介】対象者 K様91歳 男性 性格 頑固 こだわりが強い既往歴 リウマチ性多発筋痛症 腰椎圧迫骨折

【研究期間】平成27年6月初旬~9月末

【方法】・毎日、趣味であるスケッチや水彩画など好きな絵を描く。・院内の展示会に作品を出品する。・院外療法の一環として必要な画材を買いに行く。・実施内容や、その時の様子等を専用ノートに記入する。【結果】開始直後は居室にて制作をされていたが、声掛けによりホールでの写生が日課となった。他患者様との会話も聞かれ「みんなで絵を描くのは学校のようで楽しい。」と笑顔が増えた。同時に習字も日課に取り入れ、生活の中の楽しみとなっていった。院外療法に向けては、筋力をつけるため熱心にリハビリを行い、外出前日にはご自身で買い物リストを作成し二度の外出を達成された。ご自身で、店員と専門的な話をしながら買い物が出来た。念願の展示会に出品することもできた。

【考察】居室で過ごされることの多かったK様が徐々に活気を取り戻し、他患者様へ話しかける姿が見られるようになった。院外療法では実際にご自分の意志で買い物が出来たことで、満足感や達成感が得られ、自信に繋がっていったように思う。 後に職員に宛てた手紙の中に「今まで考えていなかった勇気が出てきた。趣味によって生きることが生活の中に入ってきた。毎日絵と習字と病気を楽しんでいる。」とある。この一文から生きがいを持つことが苦痛や不安を取り除き、生きる意欲に繋がったのではないかと改めて実感した。これからも患者様の心のニーズに目を向けて、患者様の望む療養生活が送れる様支援をしていきたい。