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在宅療養者と家族を支える看取りのケア
医療法人ナカノ会 ナカノ訪問看護ステーション
冨貴田景子・上村真一・長田智子・泊奈津美
2010.3.20 鹿児島県訪問看護ステーション協議会 研究発表会
~「看取りのパンフレット」の改良に焦点を当てて~
緒言
厚生労働省 終末期医療に関する意識調査(平成16年7月)
一般国民 62%:住み慣れた場所で最期を迎えたい66%:家族への負担・急変時の不安で実現困難
平成20年人口動態調査:死亡場所病院など施設内:85%、自宅:12.7%
社団法人全国訪問看護事業協会『訪問看護10ヵ年戦略』(平成21年3月)
訪問看護のミッション国民が最期まで安心して療養生活を送れるよう、他機関・多職種と連携し、24時間365日にわたり療養生活と在宅看取りの支援を行う。
目的
「看取りのパンフレット」の活用状況を明らかにし、改良することによって、療養者と家族を支える看取りのケアを向上させる。
ナカノ訪問看護ステーションでの看取りのケアの取り組み
訪問看護導入時
・家族面接
・退院時共同指導
・パンフレット 「あなたの家にかえろう」
訪問看護開始~終末期
・受持ち制+チームナーシング
・「看取りのパンフレット」お渡し
・お悔やみ訪問
医療法人ナカノ会・ナカノ訪問看護ステーション:利用者約60名・ナカノ在宅医療クリニック:利用者約170名
「看取りのパンフレット」とは
平成17年6月にマニュアル作成担当係が、関西地区の在宅医療を行っているクリニックのホームページを参考に作成。
「看取りのパンフレット」の概要
・片面カラー刷りA4用紙 3枚
・内容
序文
Ⅰ.残された時間が週単位から日数単位になってきた時の様子
Ⅱ.いよいよ死が訪れ息を引き取られる時の様子
Ⅲ.亡くなられたと考えられた時の対応
改訂前:看取りパンフレット
研究方法
1.「看取りのパンフレット」の活用状況の把握
①平成20年度の活用状況:カルテから情報収集
②アンケート調査
調査期間:平成21年10月27日~11月4日
対象者:ナカノ訪問看護ステーション看護師10名
内容:活用方法、改善点などを自由記載
分析:自由記載は類似する回答をカテゴリー化
2.他施設で使用されているパンフレットの分析
3.「改定版:看取りのパンフレット」の作成
結果
利用者数・在宅看取り数
27 (34%)
12 (15%)
23 (24%)
80
82
96
0 20 40 60 80 100 120
平成18年度
平成19年度
平成20年度
在宅看取り
利用者数
看取りのパンフレットの活用状況(平成20年度)
配布した利用者8名(35%)
未配布の利用者15名(65%)
【疾患】ガン6名、その他疾患2名
【配布した時】訪問看護5名、訪問診療3名
【配布時期】死亡1~16日前(平均7日前)
【疾患】ガン8名、その他疾患7名
【在宅療養期間】ガン:1ヶ月以内 7名
2年10ヶ月 1名その他:平均2年1ヶ月
看護師に対するアンケート調査結果
アンケート回収率100% 計10名
1年未満1名
男性1名
30代 4名
~2年 4名
女性 9名
40代 6名
~3年1名
~4年 3名5年以上
1名勤続年数
性別
年齢
看取りのパンフレットの活用
渡したことがある看護師 :9名渡したことがない看護師 :1名
【渡す時期】利用者の状態:7名家族の状態 :3名
主治医からの説明:3名在宅での看取りの希望:2名
【渡す時の状況】・相手に合わせて説明:2名
・後で読むように伝え、渡す時は説明していない:2名
【ご家族からの質問】・亡くなる前後の対応:7名
・その他(他職種からの質問):1名
【工夫点】・渡した後のフォローアップ:3名・家族に合わせた個別ケア:3名
・早めに渡す:2名
看取りのパンフレットの改善点
【レイアウト】・分量:4名・文章:3名・デザイン:3名・タイトル1名
【内容】・家族へのケア:2名
・私たちの姿勢とメッセージ:2名
・身体的変化:2名・葬儀のこと:1名
他施設で使用されている「看取りのパンフレット」
インターネットの検索エンジン(Google/Yahoo)「看取り パンフレット」で検索
*訪問看護ステーションが作成した「看取りのパンフレット」はなかった。
・おわかれのパンフレット(鈴木医院)・残された日々を自宅であなたらしく(富山県厚生部)・これからの過ごし方について(厚生労働科学研究)・健やかに生き安らかに逝く(日本訪問看護振興財団)
改訂版:看取りのパンフレットの作成
身体的な変化を説明した部分の大きな修正はしなかった。
「Ⅳご家族さまへ」の項目追加
看護師全員に回覧し、意見をもらう。
改訂版:看取りのパンフレット完成
改訂版:看取りパンフレット
考察①
1年間に利用者の約4分の1を在宅で看取っていた。
9割の訪問看護師が「看取りのパンフレット」をその支援ツールとして
活用していた。
死亡した35%の利用者にしか渡すことが出来ていなかった。
背景:パンフレットを渡す時期の見極めが難しい。今後:早い時期でお渡しできるような工夫をしていく必要性がある。
考察②
看取りのケア
終末期前期:看取りまで6ヶ月から数ヶ月
終末期中期:看取りまで数週間
終末期後期:看取りまで数日から数時間
患者の苦痛緩和患者と家族の意向の尊重プロセスの重視
考察③
患者 家族
訪問看護師
主治医
ケアマネージャー
ヘルパー
薬剤師
医療系職種 医療系以外の職種
訪問入浴・デイサービスなどの
ケアスタッフ
結語
看取りのケアは個別性の高い繊細なケアであり、看護師ひとりひとりの経験や看護観を大切にしながら、パンフレットの活用の向上など組織としてもケアの強化に取り組んでいきたい。
今後は、看護師側からの視点だけではなく、利用者やその家族からのフィードバックをもらった研究へと発展させていきたい。