地球温暖化と太陽の影響について - naosolar · 1...

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1 地球温暖化と太陽の影響について 太陽の輝度変動 1900年頃から、スミソニアン天文台のアボット(C.G.Abbot)は 高山で太陽総放射の観測 50年間続けたが変化は見られず 人工衛星に搭載した太陽総放射計(1979年から) 太陽輝度の変動~0.1(1980年代後半の発見) 活動極大期のほうが黒点が多いのに明るい!

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Page 1: 地球温暖化と太陽の影響について - NAOsolar · 1 地球温暖化と太陽の影響について 太陽の輝度変動 • 1900年頃から、スミソニアン天文台のアボット(C.G.Abbot)は

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地球温暖化と太陽の影響について

太陽の輝度変動

• 1900年頃から、スミソニアン天文台のアボット(C.G.Abbot)は高山で太陽総放射の観測約50年間続けたが変化は見られず

• 人工衛星に搭載した太陽総放射計(1979年から)

• 太陽輝度の変動~0.1% (1980年代後半の発見)活動極大期のほうが黒点が多いのに明るい!

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太陽総放射

地球の空の透明度変化と解釈できるか

スミソニアン天文台 国立天文台(乗鞍)Sakurai (2002)

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夜光雲

http://www.clearskies.se/Noctilucent clouds.htm

夜光雲 (Noctilucent Clouds)

• 高緯度地方で、地上には日照がなく高空だけが照らされているときに見

える

• 超高層80~90km(中間圏、温度120-140 K)にできる

• 11年の太陽活動と逆相関:活動極小期に多い

(活動極大期は中間圏が加熱され雲核ができにくい?)

通年

夏だけ6/20‐7/20

太陽活動(F10.7)

Kirkwood et al. (2008)

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太陽総放射計

大気圏外からの太陽総放射量の精密な測定(1970年代後半から)

各衛星ごとに絶対値には差

http://www.pmodwrc.ch/pmod.php?topic=tsi/composite/SolarConstant

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一本につなげる

http://spot.colorado.edu/~koppg/TSI/index.html

1360.8±0.5 W m-2

黒点が現れると太陽は暗くなる

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6000K4000K

小さな磁束管は斜めから見ると明るい

白斑 黒点

対流エネルギー

明るい壁から放射が抜け出る

=20%のエネルギー

しか来ていない

4

60004000

黒点数の変動と太陽の明るさ

• 大黒点が現れると、太陽は0.1%くらい暗くなる

• しかし黒点の多い時期(活動極大期)のほうが太陽は明るい(0.1%程度)

• 黒点のような大きな磁場の管は暗い

• 白斑のような小さな磁場の管は明るい

• 総体では白斑の明るさが勝る(小さい磁束管の数が多い)しかしなぜそうなるかはわかっていない

• 太陽の活動がにぶると、太陽はもっと暗くなる?

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黒点数が非常に多いと、太陽は暗くなり始める

Solanki & Fligge (1999)

黒点相対数

太陽総放射

IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 2007年報告

太陽の影響は小さいと考えられている

CO2の影響

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太陽の変動が地球の気候を変えるのか?

• 太陽の明るさ(太陽エネルギー)が直接地球の気候(温度)を変えるのではないらしい– 明るさの変化は小さい(0.1%)

• 波長の短い光(紫外線など)はもっと大きく変動する(数%~数十%)それが地球の上層大気に影響して気候を変えるのではないか

• 太陽活動が低下すると宇宙線の入射量が増え、雲がたくさんできるために気温が下がるのではないか

太陽のスペクトル

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• 波長による放射強度変化の差

• X線、紫外線の変化が大きい

Lean and Rind (1998)

波長(nm)

11年の変動割合

コロナのX線強度は百倍くらい変動する(ようこう衛星)

極大期 極小期

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黒点相対数の長期変動

モーンダー極小期1645~1715

ドルトン極小期1795~1830

観測データの信頼性は高い

年間ほぼ100%観測データがある

年 年

黒点群数

年間観測日数

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黒点は明らかに現代と違う分布を

していた

Ribes and Nesme-Ribes (1993)

緯度

緯度

全球平均気温

全球の気温測定値は1861年以降

モーンダー極小期は0.5C 寒冷?

1860年以前については木の年輪などにより構築

気温変化

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モーンダー極小期(1645~1715年)

• 観測記録は信頼でき、黒点は異常に少なかった

• 黒点の緯度分布や自転速度も異常

• 地表平均気温は0.5~1度程度低かった模様(地域による)

• 太陽の輝度変化0.1%で地表平均気温は0.2度しか変わらない

• 太陽の磁場が全く無くなると、輝度は現在の0.35%減という試算

• むしろ紫外線の変動が重要?

• 日本では江戸・元禄時代– 1702年 赤穂浪士の討ち入り

– 1732年 享保の飢饉

Lean et al. (2011)

紫外線 (0‐120 nm)変動量予測モデル

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もっと昔は? 14Cが示唆する過去の太陽活動

• 14Cは宇宙線が地球大気の窒素原子と衝突してできる

• 半減期5730年

• 宇宙線の飛来は、太陽からの磁場の雲で妨げられる

• 太陽活動が活発だと14Cの生成量は少ない

• 14Cの生成量には200~2000年の変動

• 他に10Be(半減期150万年)のデータも使われる

7000年前までさかのぼった太陽活動度太陽の活動は時々停滞する

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Gray et al. (2010)

銀河宇宙線 太陽総放射 太陽紫外線 太陽光エネルギー粒子

雲核を作る

海洋、地表を暖める

上層大気を暖める

上層大気のイオン化

複雑な相互作用で気候に影響?

今回の活動周期はやや異常

• 前回極小1996年5月

• 今回極小2008年12月

• 周期が長かった12年7ヶ月

• 立ち上がりが遅い

• 次の活動極大期は黒点数が多くないと予想

黒点相

対数

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http://wso.stanford.edu/gifs/Polar.gif

極域の磁場:通常の6割くらいしかない

1980 1990 2000 2010年

極の磁場

地球軌道での磁場も弱い

Smith & Balogh 2008 GRL

地球軌道での

太陽風の磁場

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地球軌道での太陽風

低密度

いろいろな速度が混じる

黒点相対数

速度密度

頻度

太陽風の速度全緯度

• 分布が乱れている

• きれいな分布赤道は遅く極は速い

Tokumaru et al. 2009 GRL

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地球に到達する宇宙線は増加

Moraal & Stoker 2010 JGR

太陽の明るさも通常の極小期より暗い

黒点が多い

黒点が少ない

以前の極小値より

小さい

http://www.pmodwrc.ch/pmod.php?topic=tsi/composite/SolarConstant年

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Gray et al. (2010)

モーンダー極小期後のシミュレーション

温暖化(寒冷から回復)している

Gray et al. (2010)年

気温

変化

気温変化

自然+人為起源

自然起源のみ

観測値

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Gray et al. (2010)

自然起源のみ自然+人為起源 観測値

地球軌道の変化でも気候は変動する

• ミランコビッチ(Milankovich)の理論(1920~40年頃)– 地球の自転軸や軌道の変化が氷河期の原因

– 黄道傾斜角の変化(惑星の摂動のため):4.1万年

– 地球の自転軸の歳差:1.9万年、2.3万年

– 地球軌道の離心率の変化:10万年、40万年

北緯65°の夏半年の日照量

千年

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• 軌道の離心率の変化

• 自転軸の傾斜角の変化

• 自転軸の歳差

Zachos (2001) Hays et al. (1976)

軌道要素と日照量の周期性

Hays et al. (1976)

振動数

パワー

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地球の気温の周期性

• 気温の指標– 有孔虫の化石のδ18O

– 放散虫の種の構成

Berger (1988)

パワー

周期(千年)