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76
我が国の財政の現状・課題と 令和元年度予算 令和元年10月16日 0

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我が国の財政の現状・課題と令和元年度予算

令和元年10月16日

0

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財政に関するワードの理解度確認○財政の主要20項目についてご存じですか?

・全世代型社会保障

・人づくり革命

・プライマリーバランス

・財政健全化目標

・長期債務残高

・国民負担率

・受益と負担

・特別会計

・社会保障と税の一体改革

・法人税改革※理解度の低い上位10項目を抜粋

1

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①日本の国の運営に必要なお金(予算)に対して収入(税収)が不足。国債を発行して、主に日本国内から資金を調達し補填している。

②令和元年度末の借金の総額は897兆円に上る見込みで、日本のGDPの約2.37倍。日本の借金は先進国中で最大。

③国民1人当たりの借金は約713万円と計算される。4人家族の世帯では約2,852万円の借金となる。

④借金が増える最大の理由は社会保障費の増加。寿命が延び高齢者人口が増えた結果、年金・医療・介護の支出が急速に増加。

⑤現在の社会保障費のための借金は長期間かけて返済する。子や孫の世代の税収も返済に充てられ、将来世代に借金を付け回す。

⑥近年、日本は年間予算の約34%を社会保障に、約23%を過去の借金返済に充てている。その結果、教育や防衛等、他の予算をほとんど増やせない状況。

⑦2025年、人口が多い団塊世代が後期高齢者(75才以上)に。社会保障に必要なお金が更に増える見込み。

⑧2060年頃、人口が多い団塊ジュニア世代が65才以上に、全人口の約40%が65才以上の高齢者になる見込み。

⑨65~74才を前期高齢者、75才以上を後期高齢者と呼ぶ。政府データによれば後期高齢者の医療日は前期高齢者の約5倍、介護費は約10倍に。

⑩消費税は増加する社会保障をまかなう為に導入。消費税による税収はすべて社会保障に使われている。

○日本の財政と社会保障についてご存じですか?

2

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我が国の会計は、税収などの収入により国家の一般的な支出を行う「一般会計」と、特定の収入(保険料等)により特定の事業を運用する場合などに設置される「特別会計」からなっています。特別会計は、受益と負担の関係や事業ごとの収支をより明確にすることなどを目的としています。

➢ 一般会計予算・・・単に「予算」という時には、この「一般会計予算」をさすことが多いくらい、予算の中で最も基本的なものであり、社会保障、教育、公共事業、防衛関係等の政策の基本的な経費を賄う会計です。

➢ 特別会計予算・・・一般会計の他に、特定の歳入・特定の歳出をもって一般会計とは経理を別にする特別会計を設置しています。

(具体例)・地震再保険特別会計・年金特別会計・東日本大震災復興特別会計 等

予算制度

➢ 国が政策を実行するため、その費用をどのように分配していくのか、また、その費用の財源をどうやって確保していくのか、それを1年間(4月1日~翌年の3月31日まで)という一定の期間を区切って計画をたてる、このことを「予算」と言います。

➢ 国の予算は、執行前にあらかじめ国会の議決を受けることとされています。

国の予算とは

予算の種類

3

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20

平成31年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針

31

概算閣議

(12月下旬)

(3月27日)

平平

31

各府省から説明聴取・査定(9月~12月頃)

概算要求締切・提出

(8月末)

大臣折衝

(12月下旬)

31

29

・要

(内

(内

予算編成の流れ(令和元年度予算)

骨太の方針

(6月頃)

決算概要

(7月上旬)

概算要求基準

(シーリング)(7

月~8月)

各省概算要求書

の作成

成立

(3月下旬)

国会審議(1月~3月)

(1月28日)(12月21日)(12月17,18日)(12月7日)(11月20日)(9月7日)(8月31日)(7月10日)(7月4日)(6月15日)(5月23日) (7月6日) (12月18日)

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2018

(1月18日)

4

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1.財政の現状

2.財政悪化の要因

3.社会保障と税の一体改革

4.財政健全化に向けた取組

5.令和元年度予算のポイント

5

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租税及び印紙収入624,95061.6%

所得税199,34019.6%

法人税128,58012.7%

その他収入

63,0166.2%

公債金326,60532.2%

消費税193,92019.1%

その他103,11010.2%

一般会計歳入総額1,014,571(100.0%)

特例公債257,08525.3%

建設公債69,5206.9%

社会保障

340,593

33.6%

地方交付税

交付金等

159,850

15.8%

公共事業

69,099

6.8%

文教及び

科学振興

56,025

5.5%

防衛

52,574

5.2%

その他

101,347

10.0%

債務償還費

146,580

14.4%

利払費等

88,502

8.7%

国債費

235,08223.2%

基礎的財政収支対象経費

779,48976.8%

一般会計

歳出総額1,014,571(100.0%)

(注1) 臨時・特別の措置2兆280億円を含む。(注2) 計数については、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは合致しないものがある。(注3) 一般歳出※における社会保障関係費の割合は55.0%。

一般会計歳出 一般会計歳入

※「基礎的財政収支対象経費」とは、歳出のうち国債費を除いた経費のこと。当年度の政策的経費を表す指標。

※「一般歳出」(=「基礎的財政収支対象経費」から「地方交付税交付金等」を除いたもの)は、619,639(61.1%)

(単位:億円)

食料安定供給エネルギー対策経済協力恩給中小企業対策その他の事項経費予備費

令和元年度一般会計歳出・歳入の構成(通常分+臨時・特別の措置)

9,823 (1.0)9,760 (1.0)5,021 (0.5)2,097 (0.2)1,790 (0.2)

67,856 (6.7)5,000 (0.5)

6

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(注1)平成30年度までは決算、令和元年度は予算による。(注2)公債発行額は、平成2年度は湾岸地域における平和回復活動を支援する財源を調達するための臨時特別公債、平成6~8年度は消費税率3%から5%への引上げに先行して行った減税による租税収入の減少を

補うための減税特例公債、平成23年度は東日本大震災からの復興のために実施する施策の財源を調達するための復興債、平成24年度及び25年度は基礎年金国庫負担2分の1を実現する財源を調達するための年金特例公債を除いている。

(注3)令和元年度の計数は、一般会計歳出については、点線が臨時・特別の措置に係る計数を含んだもの、実線が臨時・特別の措置に係る計数を除いたもの。また、公債発行額については、総額は臨時・特別の措置分も含めた計数、()内は臨時・特別の措置に係る建設公債発行額。

○ 我が国財政は歳出が歳入(税収等)を上回る状況が続いており、借金である国債の発行によって賄っている状況。

2.1 3.5 4.5 4.3 6.3 7.2 5.9 7.0 6.7 6.4 6.0 5.0 2.5 1.0

0.2 0.8 2.0

9.2 8.5

16.9

24.3 21.9 20.9

25.8 28.7 26.8

23.5 21.1 19.3

26.2

36.9 34.7 34.4 36.0

33.8 31.9 28.4 29.1

26.3 26.3 25.7

3.2 3.7

5.0 6.3 7.1 7.0

7.0 7.0 6.8 6.4 6.3 6.2

6.9 6.2 6.4 6.3 6.7

9.5

16.2 12.3

16.4

10.7 9.9

17.0

13.2

11.1 9.1

9.1 6.7 8.7

7.8

6.4 6.0

7.0

15.0

7.6 8.4 11.4

7.0 6.6

6.5 8.9

7.3 8.1 7.0

(0.8)

13.8 15.7

17.3

21.9 23.7

26.9 29.0

30.5 32.4

34.9 38.2

41.9

46.8

50.8

54.9

60.1 59.8

54.4 54.1 51.0 51.9 52.1

53.9

49.4 47.2

50.7 47.9

43.8 43.3 45.6

49.1 49.1 51.0

44.3

38.7 41.5 42.8

43.9

47.0

54.0

56.3 55.5 58.8

60.4 62.5

20.9 24.5

29.1

34.1

38.8

43.4 46.9 47.2

50.6 51.5 53.0 53.6

57.7

61.5

65.9 69.3 70.5 70.5

75.1 73.6

75.9 78.8 78.5

84.4

89.0 89.3

84.8 83.7 82.4 84.9 85.5

81.4 81.8

84.7

101.0

95.3

100.7

97.1 100.2 98.8 98.2 97.5 98.1 99.0

99.4

5.3 7.2

9.6 10.7

13.5 14.2 12.9 14.0 13.5 12.8 12.3

11.3 9.4

7.2 6.6 6.3 6.7

9.5

16.2

13.2

18.4 19.9

18.5

34.0

37.5

33.0

30.0

35.0 35.3 35.5

31.3

27.5 25.4

33.2

52.0

42.3 42.8

47.5

40.9 38.5

34.9

38.0

33.6 34.4 32.7

101.5

0

20

40

60

80

100

120

50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 元

(兆円)

(年度)

一般会計歳出

一般会計税収

建設公債発行額

特例公債発行額

一般会計における歳出・歳入の状況

7

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公債残高の累増

○ 我が国の公債残高(国の公債残高)は、年々増加の一途をたどっている。令和元年度末の普通国債残高は897兆円に上ると見込まれているが、これは税収約14年分に相当し、将来世代に大きな負担を残すことになる。

2 5 10 15 21 28 33 40 47 53 59 64 65 65 64 65 64 63 61 64 67

77 83

108

134

158 176

199

231

258 280 288

305 321

356

390 411

445

477

506

534 555

579 601

614

13 17 22 28 35

42 49

56 63

69 75

81 87 91 97 102 108 116 131

142 158

168 175

187

197

209

216

222

226

241

247 243 237 225

238

246 248

250

258

260

266

268

269

273 277

11

10

9

8

6

7

5

6 5

0 1 2 2 2 3 4 6 8 10 15 22 32

43 56

71 82

96 110

122 134

145 152 157 161 166 172 178 193

207 225

245 258

295

332

368

392

421

457

499

527 532 541 546

594

636

670

705

744

774

805

831 853

880

897

0

20

40

60

80

100

120

140

160

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

550

600

650

700

750

800

850

900

950

40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 元

(兆円)

(年度末)

建設公債残高

特例公債残高

一般会計税収の約14年分に相当(令和元年度一般会計税収予算額:約62兆円)

令和元年度末公債残高

約897兆円 (見込み)

国民1人当たり 約713万円4人家族で 約2,852万円

※勤労者世帯の平均年間可処分所得約546万円

(平均世帯人員 3.32人)

復興債残高

(注1)公債残高は各年度の3月末現在額。ただし、平成30年度末は第2次補正後予算案、平成元年度末は政府案に基づく見込み。(注2)特例公債残高は、国鉄長期債務、国有林野累積債務等の一般会計承継による借換国債、臨時特別公債、減税特例公債及び年金特例公債を含む。(注3)東日本大震災からの復興のために実施する施策に必要な財源として発行される復興債(平成23年度は一般会計において、平成24年度以降は東日本大震災復興特別会計において負担)を

公債残高に含めている(平成23年度末:10.7兆円、平成24年度末:10.3兆円、平成25年度末:9.0兆円、平成26年度末:8.3兆円、平成27年度末:5.9兆円、平成28年度末:6.7兆円、平成29年度末:5.5兆円、平成30年度末:6.0兆円、令和元年度末:5.4兆円)。

(注4)令和元年度末の翌年度借換のための前倒債限度額を除いた見込額は844兆円程度。

(注1)国民1人当たりの公債残高は、平成31年の総人口(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年4月推計))で公債残高を除した数値。

(注2)可処分所得、世帯人員は、総務省「平成30年家計調査年報」による。

8

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【債務残高の国際比較(対GDP比)】

▲3.5%

財政収支・債務残高の国際比較(対GDP比)

0

30

60

90

120

150

180

210

240

270

2004200520062007200820092010201120122013201420152016201720182019

(%)

日本

イタリア

フランス

英国

米国

カナダ

ドイツ

(暦年)

▲ 16.0

▲ 12.0

▲ 8.0

▲ 4.0

0.0

4.0

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(%)

日本

米国

英国

フランスイタリア

カナダ

ドイツ

【財政収支の国際比較(対GDP比)】

(暦年)

(出典) 財政収支については、OECD “Economic Outlook 104”(2018年11月)。債務残高については、IMF “World Economic Outlook”(2018年10月)。(注) 数値は一般政府ベース。ただし、財政収支については、日本及び米国は社会保障基金を除いたものであり、さらに日本の財政収支については、単年度限りの特殊要因を除いた数値。

9

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1.財政の現状

2.財政悪化の要因

3.社会保障と税の一体改革

4.財政健全化に向けた取組

5.令和元年度予算のポイント

10

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税収

62.5

その他

収入

5.1

建設国債6.2

特例国債

25.7

公共事業6.1

文教・科技5.4

防衛5.2

その他

9.3

社会保障

34.0

(34.2%)

交付税

16.0 債務償還費

14.7

利払い費等

8.9

公共事業

6.2

文教・科技

5.1

防衛

4.2

その他

9.6

社会保障

11.6

(17.5%)

交付税

15.3 債務

償還費

3.1

利払費等

11.2

国債費14.3

税収

58.0

その他

収入

2.6

建設

国債

5.6

決算60.1

平成2(1990)年度と令和元(2019)年度における国の一般会計歳入・歳出の比較

○ 特例公債の発行から脱却することのできた平成2年度予算と比較すると、令和元年度予算では、社会保障関係費が大幅に

増え、特例公債(赤字公債)でまかなっている。

【平成2(1990)年度当初予算】

歳入66.2

歳出66.2

歳入99.4

歳出99.4

【令和元(2019)年度予算】

+33.2 + 0.9 +22.4 +9.2

(単位 : 兆円)

+ 0.7

一般歳出

一般歳出

(注1)括弧内は一般会計歳出に占める社会保障関係費の割合。(注2)平成2年度の一般歳出には、産業投資特別会計への繰入等を含む。(注3)令和元年度の計数は、臨時・特別の措置に係る計数を除いたもの。

国債費23.5

11

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(注)一般歳出とは、歳出のうち国債費及び地方交付税交付金等を除いた経費のことを指す。

2018年度(平成30年度)

子ども・子育ての国の負担額

• 11兆9,531億円

⇒国民1人当たり

① 64歳以下:約 3 万円

② 65~74歳:約 8 万円

③ 75歳以上:約35万円

医療の国の負担額

0才

保険料70.2

国庫負担33.1

年金56.7

医療39.2

介護・福祉等25.3

(うち介護10.7)

資産収入等

地方負担13.8 多

くは借金

社会保障給付費の内訳と財源

・2兆2,791億円

⇒保育料

①多子世帯支援(第2子半額、第3子無償)

⇒児童手当

①1.5万円(0~2歳児)

②1万円(3歳児~中学生)等

年金の国の負担額

・12兆4,171億円

⇒老齢基礎年金6.5万円(満額)

(うち国庫負担半額)

介護の国の負担額

・2兆9,541億円

⇒国民1人当たり

①64歳以下:約0.1万円

②65~74歳:約1万円

③75歳以上:約14万円

65才

男:81才 女:87才

社会保障とは何か

(平均寿命)(平均寿命)

財源117.2兆円+資産収入

給付費121.3兆円

○ 社会保障は、大きく年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約33%、一般歳出(注)の約55%をしめる我が国最大の支出項目となっています。

○ 社会保障給付費の財源は、約60%が保険料、約30%が国庫負担、約10%が資産収入等となっており、保険料と税の組み合わせによりまかなわれています。

12

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624

3,561 3,921 3,381

6,744

8,726

7,516

4,529

2,553

1,541

898

6.3

14.6

28.2

35.3

38.4

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1950(S25)

1960(S35)

1970(S45)

1980(S55)

1990(H2)

2000(H12)

2010(H22)

2020(H32)

2030(H42)

2040(H52)

2050(H62)

2060(H72)

少子高齢化の進行①

○ 我が国は、人口に占める高齢者の割合が増加する高齢化と、出生率の低下により若年者人口が減少する少子化が同時に進行する少子高齢化社会となっている。

(出所) 総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)。

(万人)

15~64歳人口

65歳以上人口

14歳以下人口

高齢化率(65歳以上人口の割合)

65歳以上人口のピーク(2042年)

15~64歳人口のピーク(1995年)

(約50年前)1965年 (50年後)

2065年

(2018年) (%)

9,921

12,618

8,808

(25.7%)

(51.4%)(68.0%)

(10.2%)

(12.2%)

(59.6%)

13

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0 100 200 300

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 100 200 300

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 100 200 300

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

少子高齢化の進行②

2025年には団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者(75歳~)に移行し、高齢化率は継続的に上昇し、平均年齢も継続的に上昇することとなる。

(出典)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」(注)団塊の世代は1947~49(S22~24)年、第2次ベビーブーム世代は1971~74(S46~49)生まれ。

2018年(H30)

総人口1億2,618万人

75歳~1,800(14%)

2025年(H37)

総人口1億2,254万人

75歳~2,180(18%)

65~74歳 1,497(12%)

団塊の世代(76~78歳)

561万人

団塊の世代(69~71歳)

626万人

20~64歳6,928(55%)

20~64歳6,635(54%)

~19歳2,129(17%)

~19歳1,943(16%)

第2次ベビーブーム世代

(44~47歳)793万人

第2次ベビーブーム世代

(51~54歳)782万人

2035年(H47)

総人口1億1,522万人

75歳~2,260(20%)

65~74歳 1,522(13%)

20~64歳6,016(52%)

~19歳1,724(15%)

団塊の世代(86~88歳)

379万人

第2次ベビーブーム世代

(61~64歳)754万人

65歳~・国民医療費の約5割・基礎年金受給開始・介護1号被保険者

65~74歳1,761(14%)

14

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0

5

10

15

20

25

30

35

40

1950 1970 2000 2025 2050(暦年)

(出典)日本 ~2018:人口推計(総務省)2019~2050:日本の将来推計人口(2017年4月、国立社会保障・人口問題研究所)

諸外国 WORLD POPULATION PROSPECTS:THE 2017 REVISION(中位推計)(国連)

2019

高齢化率の国際比較

1970 2019 2025 2050

日本 7.1 28.6 30.0 37.7

ドイツ 13.6 21.9 24.1 30.7

フランス 12.8 20.4 22.3 26.7

イギリス 13.0 18.8 20.2 25.4

アメリカ 10.1 16.2 18.7 22.1

(%)

1990年代に我が国の高齢化率は急激に上昇し、先進国中最も高齢化が進んでいる国となった。今後も、高齢化が他国に類をみない速度で進んでいく見通し

(%)

日:28.6

15

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0

20

40

60

80

100

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

16.2

39.5

47.7

68.9

(兆円)

保険料

(年度)

給付費

公費

財源117.2兆円+資産収入

保険料70.2兆円

国庫負担

33.1兆円

年金56.7兆円

医療39.2兆円

介護・福祉その他

25.3兆円(うち介護10.7兆円)

資産収入等

平成30年度平成30年度

給付費121.3兆円

×

×116.9

47.4

○ わが国社会保障制度は、社会保険方式を採りながら、高齢者医療・介護給付費の5割を公費で賄うなど、公費負担(税財源で賄われる負担)に相当程度依存している。

○ その結果、近年、高齢者医療・介護給付費の増に伴い、負担増は公費に集中している。これを賄う財源を確保出来ていないため、給付と負担のバランス(社会保障制度の持続可能性)が損なわれ、将来世代に負担を先送りしている(=財政悪化の要因)。

社会保障給付費の増に伴う公費負担の増

(出典)国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」。2018(H30)年度は厚生労働省(当初予算ベース)による。

税財源

国債発行

公費46.9兆円

地方税等負担13.8兆円

平成2年 平成28年

被保険者負担 18.5兆円 (28%) 36.5兆円 (27%)

事業主負担 21.0兆円 (32%) 32.4兆円 (24%)

公費 16.2兆円 (25%) 47.7兆円 (35%)

給付費 47.4兆円 116.9兆円

※かっこ書きは全体の財源に占める割合

16

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将来の社会保障給付の見通し

56.7

(10.1%)

59.9

(9.3%)

73.2

(9.3%)

39.2

(7.0%)

47.4~47.8

(7.3~7.4%)

66.7~68.5

(8.4~8.7%)10.7(1.9%)

15.3(2.4%)

25.8(3.3%)

14.6(2.6%)

17.7(2.7%)

22.5(2.9%)

2018 2025 2040

GDP1.22倍

年金1.1倍

医療1.2倍

介護1.4倍

GDP 564.3

GDP1.14倍

121.3(21.5%)

140.2~140.6(21.7~21.8%)

その他

介護

医療

年金

介護1.7倍

医療1.4倍

年金1.2倍

188.2~190.0(23.8~24.0%)

GDP 645.6 GDP 790.6

(単位:兆円)

(出典)内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(計画ベース・経済ベースラインケース)(30年5月)(注)( )内の%表示はGDP比。

○ 高齢化の進展により、社会保障給付費は、今後も急激な増加が見込まれる。団塊の世代全員が75歳以上となる2025年、 20~64歳の現役世代が大幅に減少する2040年に向けて、特に医療・介護分野の給付は、財源調達のベースとなるGDPの伸びを大きく上回って増加していく。

○ 受益と負担の均衡が取れた社会保障制度を一刻も早く構築していく必要がある。

17

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○ 75歳以上になると他の世代に比べ、1人当たり医療費や介護給付費は大幅に高くなり、それに伴って1人当たり国庫負担も増大する。

1人当たり医療費・介護費の増加

全人口に占める人口数及び割合

医療(2016年) 介護(2016年)

2016年 2025年1人当たり国民医療費(64歳以下:18.4万円)

1人当たり国庫負担(64歳以下:2.6万円)

1人当たり介護費(括弧内は要支援・要介護

認定率)

1人当たり国庫負担

65~74歳1,768万人(13.9%)

1,497万人(12.2%)

55.3万円 7.7万円5.0万円(4.3%)

1.4万円

75歳以上1,691万人(13.3%)

2,180万人(17.8%)

91.0万円 34.9万円48.0万円(31.9%)

13.6万円

▲約271万人

+約490万人

約5倍 約10倍

(出典)年齢階級別の人口は総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口(出生中位・死亡中位)」国民医療費は厚生労働省「平成28年度国民医療費の概況」介護費及び要支援・要介護認定率は、厚生労働省「介護給付費実態調査(平成28年度)」、「介護保険事業状況報告(平成28年度)」、総務省「人口推計」

(注)1人当たり国民医療費は、年齢階級別の国民医療費を人口で除して機械的に算出。1人当たり国庫負担は、それぞれの年齢階層の国庫負担額を2015年時点の人口で除すなどにより機械的に算出。 18

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6.1

1.4

1.3

0.6

0.8

0.2

0.1

-0.6

-0.8

-1.0

-1.4

-1.5

-1.8

-1.9

-1.9

-2.1

-2.1

-2.5

-2.6

-2.6

-2.7

-2.8

-2.9

-3.6

-4.3

-4.4

-4.5

-4.5

-5.3

-5.7

-10 0 10

1ノルウェー

2ルクセンブルク

3韓国

4スイス

5ドイツ

6スウェーデン

7エストニア

8チェコ

9アイスランド

10オーストリア

11ラトビア

12デンマーク

13オーストラリア

14アイルランド

15ハンガリー

16オランダ

17イスラエル

18ベルギー

19イタリア

20ポーランド

21スロバキア

22フィンランド

23スロベニア

24フランス

25英国

26ポルトガル

27米国

28日本

29スペイン

30ギリシャ

OECD諸国の政府支出及び収入の関係(2015年)

政府の総支出(対GDP比)

政府の社会保障支出(対GDP比)

政府の社会保障以外の支出(対GDP比) ※利払費を除く

(出典)OECD “National Accounts”、“Revenue Statistics”、“Economic Outlook 103”、内閣府「国民経済計算」等。(注1)日本は2015年度実績、諸外国は2015年実績(オーストラリアは2014年実績)。(注2)一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金を合わせたもの)ベース。ただし、日本及び米国の財政収支は社会保障基金を除いたベース。また、日本の財政収支については、単年度限りの特殊要因を除いた値。(注3)政府の総支出には利払費が含まれている。

政府の租税収入(対GDP比)

政府の財政収支(対GDP比)

(%)

○ 政府の総支出はOECD諸国の中で低い水準となっており、その内訳を見ると、社会保障以外の支出は低く、社会保障支出は、高齢化を反映して中程度となっています。一方で、租税収入や財政収支は、OECD諸国と比較して、低い水準となっています。

(%) (%) (%) (%)

45.8

33.4

32.8

31.2

30.5

30.1

28.6

28.5

27.8

27.4

26.3

26.2

26.2

26.1

25.6

25.5

23.3

23.1

22.5

22.3

21.9

20.7

20.6

20.1

19.9

19.2

19.0

18.6

18.5

18.5

0 20 40 60

1デンマーク

2スウェーデン

3アイスランド

4フィンランド

5ベルギー

6イタリア

7オーストリア

8フランス

9ノルウェー

10オーストラリア

11ルクセンブルク

12英国

13イスラエル

14ハンガリー

15ギリシャ

16ポルトガル

17オランダ

18ドイツ

19エストニア

20スペイン

21スロベニア

22ラトビア

23スイス

24米国

25ポーランド

26アイルランド

27チェコ

28日本

29韓国

30スロバキア

26.7

25.2

23.2

23.1

22.2

21.8

21.7

21.3

21.2

21.1

20.6

20.6

20.5

20.5

20.3

20.1

19.3

19.2

19.2

19.2

18.3

18.1

17.8

17.5

17.4

17.2

16.3

16.2

13.4

10.6

0 20 40

1ハンガリー

2ギリシャ

3ベルギー

4フィンランド

5フランス

6スウェーデン

7エストニア

8スロバキア

9アイスランド

10デンマーク

11イスラエル

12スロベニア

13チェコ

14ラトビア

15ノルウェー

16韓国

17オーストリア

18オランダ

19ポーランド

20ポルトガル

21ルクセンブルク

22スイス

23イタリア

24スペイン

25米国

26オーストラリア

27英国

28ドイツ

29日本

30アイルランド

32.9

32.5

32.2

29.3

28.3

27.8

27.6

27.4

26.2

25.0

24.5

24.4

24.0

23.8

23.6

23.2

22.9

22.2

20.7

20.1

20.0

18.4

17.0

17.0

16.8

15.9

15.6

15.4

15.3

10.6

0 20 40

1フィンランド

2フランス

3デンマーク

4オーストリア

5イタリア

6ノルウェー

7ベルギー

8スウェーデン

9ドイツ

10ギリシャ

11ポルトガル

12オランダ

13スロベニア

14英国

15日本

16スペイン

17ルクセンブルク

18スロバキア

19ポーランド

20チェコ

21ハンガリー

22エストニア

23米国

24オーストラリア

25アイスランド

26イスラエル

27アイルランド

28スイス

29ラトビア

30韓国

57.1

56.7

54.8

53.8

53.8

51.0

50.2

50.2

49.6

48.8

48.2

47.7

45.2

44.9

43.9

43.8

42.5

42.4

41.7

41.6

41.5

40.2

39.8

38.8

37.8

37.1

36.0

34.0

32.3

28.8

0 40 80

1フィンランド

2フランス

3デンマーク

4ギリシャ

5ベルギー

6オーストリア

7イタリア

8ハンガリー

9スウェーデン

10ノルウェー

11ポルトガル

12スロベニア

13スロバキア

14オランダ

15ドイツ

16スペイン

17アイスランド

18英国

19チェコ

20ポーランド

21ルクセンブルク

22エストニア

23イスラエル

24日本

25米国

26ラトビア

27オーストラリア

28スイス

29韓国

30アイルランド

19

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オーストラリア

オーストリア

ベルギー

チェコ

デンマーク

エストニア

フィンランド フランス

ドイツ

ギリシャ

ハンガリー

アイスランド

アイルランドイスラエル

イタリア

韓国

ラトビア

ルクセンブルク

オランダ

ノルウェー

ポーランド

ポルトガル

スロバキア

スロベニア

スペイン

スウェーデン

スイス

英国

米国

5

10

15

20

25

30

35

15 25 35 45

国民負担率(対GDP比)

一般

政府

の社

会保

障支

出(対

GD

P比

(%)

(%)

(出典) 国民負担率: OECD “ National Accounts”、“Revenue Statistics”、 内閣府「国民経済計算」等。社会保障支出: OECD “ National Accounts”、内閣府「国民経済計算」。

(注1) 数値は、一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金を合わせたもの)ベース。(注2) 日本は、2015年度まで実績、諸外国は2015年実績(アイスランド、ニュージーランド、オーストラリアについては2014年実績)。(注3) 日本の2060年度は、財政制度等審議会「我が国の財政に関する長期推計(改訂版)」(平成30年4月6日 起草検討委員提出資料)より作成。

日本(1955年)

日本(1980年)

日本(1990年)

日本(2015年)

日本(2060年)

改革を行わない場合、社会保障支出が膨張

OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係

20

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子ども・子育て支援等

高齢者中心

給 付

現役世代中心

負 担

未来への投資

支え手を増やす努力

・高齢者が長く働ける環境づくり

・負担能力に応じて負担する仕組み

現在の社会保障制度 「全世代対応型」の社会保障へ

社会保障の充実

社会保障制度改革の方向性

21

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1.財政の現状

2.財政悪化の要因

3.社会保障と税の一体改革

4.財政健全化に向けた取組

5.令和元年度予算のポイント

22

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● 景気や人口構成の変化に左右されにくく、税収が安定している

● 働く世代など特定の人に負担が集中することなく、経済活動に中立的

● 高い財源調達力がある

なぜ、消費税なのか?

社会保障の財源を調達する手段としてふさわしい税金

すべての世代が安心感と納得感を得られる、全世代型の社会保障制度へ

高齢者3経費(基礎年金・老人医療・介護)

改革前の消費税(国分)の使途

社会保障4経費(子ども・子育て、医療・介護、年金)

改革後の社会保障の充実

「社会保障と税の一体改革」の趣旨

子ども・子育て0.7兆円程度

医療・介護1.5兆円程度

年金0.6兆円程度

社会保障の充実 2.8兆円程度の内訳

社会保障の充実の対象分野

「税制抜本改革」で安定財源を確保

社会保障の充実・安定化

財政健全化目標の達成

同時に達成

23

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46.8

50.8

54.9

60.1 59.8

54.454.1

51.051.9

52.1

53.9

49.4

47.2

50.7

47.9

43.843.3

45.6

49.1 49.1

51.0

44.3

38.7

41.5

42.843.9

47.0

54.0

56.355.5

58.8

59.9

62.5

17.4

18.0

21.4

26.0

26.7

23.2 23.7

20.4

19.519.0 19.2

17.0

15.4

18.8

17.8

14.8

13.9

14.7

15.6

14.1

16.1

15.0

12.9 13.013.5

14.0

15.5

16.8

17.8 17.6

18.919.5

19.9

15.8

18.4

19.0

18.4

16.6

13.7

12.1 12.4

13.7

14.5

13.5

11.410.8

11.7

10.3

9.5

10.1

11.4

13.3

14.9

14.7

10.0

6.4

9.09.4

9.8

10.511.0 10.8

10.3

12.012.3

12.9

3.3

4.65.0 5.2

5.6 5.6 5.8 6.1

9.3

10.110.4

9.8 9.8

9.8

9.7 10.010.6 10.5

10.310.0

9.8 10.010.2 10.4

10.8

16.0

17.4 17.2 17.517.8

19.4

0

5

10

15

20

25

30

35

0

10

20

30

40

50

60

70

62(1987)

63(1988)

(1989)

(1990)

(1991)

(1992)

(1993)

(1994)

(1995)

(1996)

(1997)

10(1998)

11(1999)

12(2000)

13(2001)

14(2002)

15(2003)

16(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

24(2012)

25(2013)

26(2014)

27(2015)

28(2016)

29(2017)

30補正

(2018)

元予算

(2019)

(兆円)

法人税(右軸)

一般会計税収計(左軸)

(注) 平成29年度以前は決算額、平成30年度は第2次補正後予算額、令和元年度は予算額である。

(年度)

消費税(右軸)

所得税(右軸)

(兆円)

一般会計税収の推移

24

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36.1兆円

消費税引上げに伴う増 0.47兆円

年金国庫負担1/2等 3.3兆円

社会保障の充実等(※1) 2.17兆円

4.4兆円(後代への負担のつけ回しの軽減)

社会保障4経費42.0兆円(※3)

消費税収4%分(国分)

11.5兆円

0.47兆円

2.17兆円

3.3兆円

10.

3兆円

消費税率5%引上げ分

後代への負担の付回し20.2兆円 全

て社会保障財源化

【令和元年度予算ベース】

消費税収(※2)

21.8兆円

(※1)社会保障の充実等については、消費税増収分2.17兆円の他に、重点化・効率化による財政効果0.51兆円を合わせて、計2.68兆円行っている。(※2)消費税収は軽減税率制度による減収分を考慮していない。(※3)幼児教育・保育の無償化に係る初年度の経費を全額国庫負担とすることに伴う子ども・子育て支援臨時給付金(仮称)2,349億円を除く。

社会保障経費と消費税収の関係

消費税率の引上げによる増収分は、全て社会保障の充実と安定化に向けられる。これにより、国と地方自治体の借金として将来世代に負担を付け回す金額も減少する。

25

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※保育士等の処遇改善(平均+3%)

保育士等の職員の人材確保・処遇改善

保育士等の職員を

より手厚く配置安心して子供を預けられる保育施設の充実

児童養護施設等の職員の人材確保・処遇改善

児童養護施設等の職員を

より手厚く配置

2017年度末までに保育の受け皿を

約50万人分増加

※加えて、待機児童解消のため、新たに「子育て安心プラン」を実施(2020年度末までに+32万人分)

2019年度末までに放課後児童クラブ利用者

約30万人分増加

※「新しい経済政策パッケージ」に基づき、2018年度までに前倒し

※加えて、「新・放課後子ども総合プラン」を実施(2023年度末までに+30万人分)

待機児童を解消し、働きたい女性が働ける環境を整備

子ども・子育て

医師、看護師等の医療従事者の確保

※例:3歳児と職員の割合を20:1⇒15:1

※児童指導員等の処遇改善(平均+3%) ※例:子供と職員の割合を5.5:1⇒4:1

保護者のいない児童、被虐待児等への支援

住み慣れた地域内で患者の状態に応じた医療を提供

患者の状態に応じた病床を整備

※急性期から慢性期まで病床をバランスよく整備、在宅医療も充実

※地域密着の小規模な介護施設の整備

地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護を一体的に提供

住み慣れた地域や自宅での介護サービスを充実

介護職員の人材確保・処遇改善 認知症対策の推進

※介護職員の給与を月+1.2万円増加 ※認知症の方とその家族への生活支援を強化

医療・介護

消費税8%への引上げによる社会保障の充実①

26

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医療・介護

難病に悩む方々をより多く支援するため、医療費支援の対象を拡大

【難病】56疾病 ⇒ 306疾病 【小児慢性特定疾病】514疾病 ⇒ 704疾病

助成の対象者が

約80万人増加

2018年度に国保の財政運営責任を市町村から都道府県に移行。県が地域医療の提供水準と標準保険料率を設定

国保の財政基盤強化皆保険のセーフティネットである国保への財政支援の強化

年金受給資格期間

25年→10年

年金

年金受給資格期間の短縮(25年⇒10年)

国民健康保険等の保険料軽減の対象者を拡大対象者を

約500万人拡大

保険料(定額部分)の5割軽減対象及び2割軽減対象の範囲をそれぞれ拡大

消費税8%への引上げによる社会保障の充実②

27

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年金

消費税率8%→10%への引上げにより行われる主な施策

給付金の支給

対象者1人当たり月5千円等

対象者1人当たり

約月1千円減額

世帯全員の市町村民税が非課税である高齢者の介護保険料額(1号)を軽減 ※軽減対象者の軽減前の保険料は 2.8~4.1千円程度

消費税率10%引上げ時までに完全実施

見直し前から予定していた主な充実策

※10%引上げまでの間は、一部実施(年金収入80万円以下の高齢者(650万人)を対象に、対象者1人当たり約月280円軽減)

消費税率10%引上げ時までに実施

(注)・子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については、公平性の観点から、同制度における利用者負担額を上限・保育の必要性があると認定された子どもであって、認可保育所や認定こども園を利用できていない者については、一定の要件を満たす認可外保育施設のサービスについても無償化の対象

3~5歳児について、幼稚園、保育所、認定こども園の費用無償化(注)

勤続年数10年以上の介護福祉士について月額最大8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1,000億円程度を投じ、処遇改善

新たに行う予定の主な施策

0~2歳児についても、当面、住民税非課税世帯を対象として無償化

保育士の確保や他産業との賃金

格差を踏まえて処遇を改善

住民税非課税世帯の子どもたちに対して、

- 国立大学の場合、授業料の標準額を上限として減免- 私立大学の場合、国立大学の授業料の標準額に、私立大学の

授業料の平均額との差額の2分の1を加算した額を上限として減免

2020年度末までに32万人分の受け皿整備

消費税10%への引上げによる増収分の使途

○ 少子高齢化を克服するために、我が国の社会保障制度を全世代型へさらに大きく転換していく必要がある。

○ このため、2019年10月に予定されている消費税率10%への引上げによる財源(5兆円強)の使い道を見直し、この中で従前から予定していた社会保障の充実策(1.1兆円程度)に加え、2兆円程度(注)を教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保に充てることとした。

(注)消費税増収分の他、事業主が拠出する子ども・子育て拠出金の増額による0.3兆円を含む。

低所得者の介護保険料軽減 低所得高齢者の暮らしを支援

幼児教育の無償化

待機児童の解消

高等教育の無償化

介護人材の処遇改善 28

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0歳~ 3~5歳 18歳~ 65歳~

待機児童の解消

幼児教育・保育の無償化

高等教育の無償化

所得の低い高齢者の介護保険料軽減

年金生活者支援給付金の支給

3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化(0歳~2歳児についても、所得が低い家庭を対象として無償化)

所得が低い家庭の真に必要な子供たちに対し、授業料減免・給付型奨学金支給

2020年度末までに32万人分の受け皿を拡充

所得が低い高齢者の保険料の軽減を強化

介護人材の処遇改善により、介護の受け皿を整備

所得が低い年金受給者に対して最大年6万円を給付

介護職員の処遇改善

消費税率10%への引上げによる増収分の使途

29

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<一体改革前>消費税の使い道は高齢者中心

消費税の増収分は全額を社会保障に充当し、「全世代型」の社会保障制度に転換

<一体改革・新しい経済政策パッケージ後>新たに待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化などにも

消費税を充当し、使途を子育て世代にも拡大。

支え手の広がり

・少子化対策・女性・高齢者も働きやすい環境づくり

より子育てのしやすい環境

より充実・安心な老後

全世代型の社会保障制度への転換

●消費税の税率を引き上げることによる増収分は、全て社会保障に充て、待機児童の解消や幼児教育・保育の無

償化など 子育て世代のためにも使われることになっています。

30

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2018年度(平成30年度)

社会保障給付費の財源

0歳

65歳

年 金老後の生活の安定のための年金の支給

介 護高齢などにより、寝たきりや認知症等で介護が必要になったときのリスクを社会全体で支え合う

医 療病気やケガをしたときのリスクを社会全体で支え合う

子ども・子育て等保育所の整備や児童手当の支給

女:87歳(平均寿命)

男:81歳(平均寿命)

56.7兆円

10.7兆円

39.2兆円

14.6兆円

121.3兆円

保険料70.2

財源117.2兆円+資産収入

税金

借金

資産収入等

税金+借金46.9

(単位:兆円)

社会保障の役割と受益する世代

消費税率の引上げの背景①(社会保障制度とその財源)

●社会保障制度の基本は保険料による支え合いですが、保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借

金も充てています。このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況です。

●私たちが受益する社会保障の負担は、あらゆる世代で負担を分かち合いながら私たちでまかなう必要があります。また、

少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、社会保障制度を全世代型に転換していかなければなりません。そのためには

消費税率10%への引上げが必要です。

31

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0

5

10

15

20

25

30

35

40

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

(%)日本の高齢化率

(年)

(高齢化率=総人口に占める65歳以上人口の割合)

社会保障給付をまかなう税金や借金の増加

10人に約1人が高齢者

(1990年)

10人に約4人が高齢者

(2050年)

(出典)国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度社会保障費用統計」

1990年度 2016年度

48兆円

16兆円

税金+借金

(参考)保険料

69兆円

40兆円

約1.7倍

約3.0倍

(出典)日本:総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」諸外国:国連“World Population Prospects: The 2017 Revision”

消費税率の引上げの背景②(社会保障制度の持続可能性)

●日本は速いスピードで高齢化が進んでおり、高齢化に伴い社会保障の費用は増え続け、税金や借金に頼る分も増えて

います。

●社会保障制度を持続可能とするため、消費税率10%への引上げが不可欠です。

32

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●2019年10月に消費税率は8%から10%に引き上げられました。

●ただし、飲食料品(お酒・外食を除く)等の購入には軽減税率(8%)が適用されます。

日々の生活において、幅広い消費者が購入している飲食料品(お酒・外食を除く)等に係る消費税率を8%に

据え置くことにより、家計への影響を緩和するというメリットがあります。

軽減税率制度の趣旨

8%(軽減税率)

・飲食料品(お酒・外食を除く)・新聞(定期購読契約された週2回以上発行されるもの)

10%(標準税率)

軽減税率制度の実施

33

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34

人生で大きな買い物(住宅・自動車)をする場合の負担増を抑えるため税制で配慮します。

【住宅】 住宅ローン減税の拡充

(控除期間を3年延長し、最大で建物価格の2%を減税)

【自動車】 取得時の税負担(環境性能割)の軽減

保有時の税負担(自動車税)の軽減[恒久措置] 等

臨時・特別の予算措置

住宅・自動車の購入に対する税制上の支援

中小・小規模事業者に関する消費者へのポイント還元

防災・減災国土強靭化

消費者がキャッシュレスで中小・小規模事業者に支払った場合、5%(フランチャイズ加盟店は2%)をポイント還元

低所得・子育て世帯向けプレミアム商品券

低所得者・0~2歳児の子育て世帯に対し、プレミアム商品券を販売(1人5千円の財政支援)

住宅の購入者等に対する予算措置

すまい給付金(最大50万円)次世代住宅ポイント制度(購入・リフォームにポイント付与)

重要インフラの緊急点検の結果等を踏まえ、3年間で集中的に実施

前回引上げ時には、一律一斉の価格変更となったため、駆込み需要と反動減が想定以上となったこと等を踏まえ、今回の対応では、需要の平準化にしっかり取り組むとともに、低所得者支援や公共投資を行うこととしています。

【前回引上げ(5→8%)時】✓ 一律一斉の価格変更となったため、耐久財(住宅・車)を中心に駆込み需要と反動減が想定以上となった。

※ 欧州(英・独)では、日本と比べて、価格上昇がなだらかであり駆込み需要と反動減も小さい。✓ 年金給付の減額が実施されたこと等もあり、低所得者・高齢者を中心に消費が低迷。

消費税率10%への引上げに伴う対策

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1.財政の現状

2.財政悪化の要因

3.社会保障と税の一体改革

4.財政健全化に向けた取組

5.令和元年度予算のポイント

35

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公債依存の問題点

○ 我が国では、受益と負担の均衡がとれておらず、現在の世代が自分たちのために財政支出を行えば、将来世代に重いツケを回すことになる。

✓ 緩い財政規律のもとでは、財政支出の中身が中長期的な経済成長や将来世代の受益に資するかのチェックが甘くなりやすい。(将来世代が低い経済成長や乏しい受益に甘んじることに

なりかねない)

✓ 将来世代のうち国債保有層は償還費等を受け取れる一方、それ以外の国民は社会保障関係費等の抑制や増税による税負担を被ることになりかねない。

✓ 将来世代は自ら決定に関与できなかったことに税負担等を求められ、望ましくない再分配が生じる。

✓ 経済危機時や大規模な自然災害時の機動的な財政上の対応余地が狭められる。

≪ポイント≫○毎月新たな借金をして、給料水準を

上回る水準の生活を維持。○過去の借金を返すための借金もしており、

借金の利息の支払額も大きい。

※ 一般会計の計数は、令和元年度予算における臨時・特別の措置を含んだ計数。

我が国の一般会計(※)を手取り月収30万円の家計にたとえると、毎月給料収入を上回る37万円の生活費を支出し、過去の借金の利息支払い分を含めて毎月16万円の新しい借金をしている状況です。

我が国の財政を家計にたとえると

受益と負担のアンバランス 望ましくない再配分

財政の硬直化による政策の自由度の減少

国債や通貨の信認の低下などのリスクの増大

元本の返済:7万円(14%)

利息の支払い:4万円(9%)

その他収入:3万円(6%)

給料収入:30万円(62%)

借金:16万円(32%)

支出

収入

生活費:37万円(77%)

現在の家計の姿

36

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68.6

60.8

52.5

39.8 38.5

26.1

18.8

21.6

16.0

23.0

17.7

16.1

11.1 14.1

18.8

16.6

19.7

34.2

1.5 3.5

12.7

20.7 24.0 23.6

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1960 1970 1980 1990 2000 2019

財政の硬直化(一般会計歳出に占める主要経費の割合の推移)

○ 一般会計歳出に占める国債費と社会保障費の割合が増大。○ 一方、公共事業や教育、防衛などの政策経費の割合は一貫して大幅な減少が続いている。

(注)2000年度までは決算、2019年度は予算による。

国債費

地方交付税交付金等

社会保障

その他

公共事業、

教育、防衛など

(年度)

(%)

37

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<フローの指標>

○財政収支(利払費を含めた財政収支)

分子である債務残高を減少させようとすれば、過去の借金を返す額(債務償還費)が借金する額(公債金収入)を上回る必要。

その場合、税収等が利払費を含む政策的経費を上回ることになり、これを財政収支黒字という。利払費も税収等で賄う考え方になる。

○基礎的財政収支(プライマリー・バランス、利払費を除く財政収支)

これに対し、利払費分の赤字によって分子である債務残高が増加するとしても、成長率が金利並みであるとすれば、分母であるGDPの増大によって打ち消すことができ、債務残高/GDP比は一定に保つことができる。→ 財政収支均衡よりも緩やかな概念として、利払費分の赤字を許容する基礎的財政収支均衡(税収等と政策的経費の均衡)

の概念が発生。

※ PBを考える際には、厳密には歳入から利子収入を除く必要があるが、ここでは簡単化のために捨象。

財政健全化に用いられるストック・フロー指標の関係

<ストックの指標>

○債務残高対GDP比

「債務残高対GDP比」とは、国や地方が抱えている借金の残高を国内総生産(GDP)と比較して考える指標。経済規模に対

する国・地方の債務の大きさを計る指標として、財政の健全性を図る上で重要視される。

図A財政の現状

(歳 入) (歳 出)

借金[新たな債務の増加]

税収等

債務償還費[過去の債務の減少]

利払費

政策的経費

財政収支(赤字)PB(赤字)

債務残高の純増

図B財政収支が均衡した状態

(歳 入) (歳 出)

借金[新たな債務の増加]

税収等

債務償還費[過去の債務の減少]

利払費

政策的経費

財政

収支

(均衡

図CPBが均衡した状態

(歳 入) (歳 出)

借金[新たな債務の増加]

税収等

債務償還費[過去の債務の減少]

利払費

政策的経費

財政収支(赤字)

債務残高の純増

基礎的財政収支(PB)が均衡している状態において、

○金利>成長率の場合

債務残高対GDPは増加

○金利=成長率の場合

債務残高対GDPは一定

○金利<成長率の場合

債務残高対GDPは減少

38

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0

20

40

60

80

100

120

140

160

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

日本

イタリア

米国

英国

フランス

ドイツ

カナダ

39

純債務残高/GDP比の国際比較

(暦年)

< 全世界における順位(89ヶ国中) > < 主要先進国の推移 >

○ 我が国は、政府の総債務残高から政府が保有する金融資産(国民の保険料からなる年金積立金等)を差し引いた純債務残高で見ても、他のG7諸国のみならず、世界で最も高い水準。

1 ノルウェー

2 オマーン

3 カザフスタン

16 韓国

53 ドイツ

74 英国

76 米国

85 イタリア

89 日本

▲85.2%

▲28.5%

▲23.8%

11.8%

48.2%

78 フランス

・・・・・・・・ 78.8%

28.5%

87.5%

152.8%31 カナダ・・・

・・・

・・・

81.2%

119.5%

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・※ 数値は2016年の値。

(出典)IMF "World Economic Outlook Database"(2018年10月)(注1)数値は一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金合わせたもの)ベース。(注2)日本は2017年から、それ以外の国々は2018年からが推計値。(注3)純債務残高におけるマイナス(▲)は、資産超過を意味する。

・・・

・・・

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利払費と金利の推移

15 22

32 43 56

71 82 96

110 122

134 145 152 157 161 166 172 178 193

207 225

245 258

295

332

368 392

421

457

499 527 532 541 546

594

636

670

705

744

774

805 831

853 880

897

0.8 1.3

1.9 2.6

3.3

4.4

5.6

6.6

7.7

8.7

9.7 10.2

10.4

10.5

10.6

10.8

11.0

10.8

10.6

10.7

10.7 10.7

10.6 10.8 10.5

10.0

9.4

8.6

7.8 7.3

7.0 7.0 7.4 7.6 7.7 7.9 8.1 8.0 8.1 8.3 8.3 8.2

7.9 8.0

8.8

7.47.6

7.4

7.1 7.27.4 7.5 7.6 7.5 7.4

7.2

6.8

6.56.3

6.2 6.1 6.15.8

5.45.1

4.6

4.3

4.0 3.5

3.1 2.7

2.3

2.01.7

1.5 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.3 1.2 1.2 1.2 1.1 1.1 1.0 1.0

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 元

(兆円)(兆円)

(年度)

10% 25

8% 20

6% 15

4% 10

2% 5

0% 0

利払費(左軸)

金利(左軸)

公債残高(右軸)

(注1)利払費は、平成29年度までは決算、平成30年度は第2次補正後予算、令和元年度は予算による。(注2)公債残高は各年度3月末現在高。ただし、平成30年度末は第2次補正後予算に基づく見込み、令和元年度末は予算に基づく見込み。また、公債残高は、東日本大震災からの復興のため

に実施する施策に必要な財源として発行される復興債(平成23年度末:10.7兆円、平成24年度末:10.3兆円、平成25年度末:9.0兆円、平成26年度末:8.3兆円、平成27年度末:5.9兆円、平成28年度末:6.7兆円、平成29年度末:5.5兆円、平成30年度末:6.0兆円、令和元年度末:5.4兆円)及び、基礎年金国庫負担2分の1を実現する財源を調達するための年金特例公債(平成24年度末:2.6兆円、平成25年度末:5.2兆円、平成26年度末:4.9兆円、平成27年度末:4.6兆円、平成28年度末:4.4兆円、平成29年度末:4.1兆円、平成30年度末:3.9兆円、令和元年度末:3.6兆円)を含む。

40

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4.1%

12.1%

13.6%

36.1%

30.7%

62.9%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

2004/12 2005/12 2006/12 2007/12 2008/12 2009/12 2010/12 2011/12 2012/12 2013/12 2014/12 2015/12 2016/12 2017/12 2018/12

③ 国債流通市場における海外投資家売買シェア(先物)

② 国債流通市場における海外投資家売買シェア(現物)

① 海外投資家の国債保有割合(ストック)

国内37.1%

海外62.9%国内

63.9%

海外36.1%

国内87.9%

海外12.1%

市場規模:3,063兆円(2018年)

国債の保有・流通市場の状況

○ 内国債は、国民が貸し手であるため、将来世代への負担の転嫁は生じないとの指摘があるが、グローバル化が進んだ現代の国債市場では、妥当する余地が限られていく議論。

○ 実際、グローバル化が進展し、国際的な金融取引が増加する中、海外投資家の国債保有割合は上昇している。

○ 海外投資家は、売買を積極的に行うことから、国債流通市場でのプレゼンスは高まっており、海外投資家からの財政への信認を確保する必要性が一層増している。

合計:1,111兆円(2018年12月)

【② 現物】 【③ 先物】

① 海外投資家の国債保有割合

国債流通市場における海外投資家売買シェア

(注1)国庫短期証券(T-Bill)を含む。②現物は債券ディーラー分を除いた計数。(注2)海外投資家の国債保有割合(左図)は、2018年12月時点における割合であり、国債流通市場における海外投資家売買シェア(左図)は、2018年第4四半期(10-12月)における割合。(注3)②現物の市場規模は2018年の各月の売買金額の合計額であり、③先物の市場規模は2018年の取引代金の売買の合計金額である。(出所)日本銀行、日本証券業協会、東京証券取引所、大阪取引所

41

市場規模:1,132兆円(2018年)

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経常収支の推移

○ 我が国では、これまで政府部門の赤字を民間貯蓄の黒字が上回っており、経常黒字となっている。今後、高齢化の進展に伴う貯蓄率の低下などにより、仮に政府赤字が民間貯蓄を上回れば、経常収支は赤字となり、海外資金に依存せざるを得なくなる。今後とも財政健全化に向けた取組が必要。

(出典)財務省「国際収支統計」

(兆円)

<経常収支の推移><部門別資金過不足の推移>

(対名目GDP比)

42

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

第一次所得収支 貿易収支 サービス収支

第二次所得収支 経常収支 貿易・サービス収支

▲ 15.0

▲ 10.0

▲ 5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

政府 企業等 家計等 経常収支

(投資超過・資金不足)

(暦年)(注)家計等=家計+対家計民間非営利団体 企業等=非金融法人+金融機関

(暦年)

(出所)日本銀行、内閣府

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1.2%

1.5% 1.5% 1.4%1.3%

1.2%

0.5%

1.7%

2.0%

2.0%

2.7%

3.3%3.4% 3.4%

3.2%

0.1%

2.6%

2.2%

2.8%

0.7%

2.0%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028

成長実現ケース

ベースラインケース

(年度)

▲1.6%

▲1.2%

(▲7.2兆円)

▲1.1%

▲2.4%

▲2.7%

▲2.1%

▲1.5%

▲0.4%

(▲2.3兆円)▲0.0% 0.5%

▲5.5%

▲2.2%

▲6.0%

▲5.0%

▲4.0%

▲3.0%

▲2.0%

▲1.0%

0.0%

1.0%

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028

成長実現ケース

ベースラインケース

黒字化目標

(年度)

<国・地方の基礎的財政収支(対GDP比)>

○ 経済シナリオ

・ ①「成長実現ケース」:デフレ脱却・経済再生に向けた政策効果が過去の実績も踏まえたペースで発現(2020-28年度平均:名目2.9%、実質1.7%)

・ ②「ベースラインケース」 :経済が足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移(2020-28年度平均:名目1.4%、実質1.1%)

○ 財政前提

・ 2019(令和元)年度:令和元年度予算を反映。

・ 2020(令和2)年度:高齢化等を除く歳出の増加率は、物価上昇率の半分程度と仮定して機械的に計算。

公的固定資本形成は、内閣府年央試算に基づき、名目値で2019年度と同額であると仮定(注) 。

・ 2021(令和3)年度以降の歳出:社会保障歳出は高齢化要因等で増加、それ以外の一般歳出は物価上昇率並に増加することを想定 。

・ 消費税率(国・地方)が2019年10月1日に10%へ引き上げられ、あわせて消費税の軽減税率制度が実施される。

経済・財政面における主要な想定

「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)の概要※ 令和元年7月31日 経済財政諮問会議提出(内閣府)

試算結果のポイント

<名目経済成長率>

○ 2019(令和元)年度の国・地方PB: ▲15.1兆円(対GDP比▲2.7%)(①②共通)

○ 2025(令和7)年度の国・地方PB: ①▲ 2.3兆円(対GDP比▲0.4%) ②▲7.2兆円(対GDP比▲1.2%)

(注) 2020年度の歳出については、 「臨時・特別の措置」として、現時点で継続が見込まれる中小・小規模事業者に関する消費者へのポイント還元支援、すまい給付金、防災・減災、国土強靭化対策(3か年緊急対策の最終年度分)を想定。 43

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我が国の資産の見方について

44

○ 財政健全化目標のメルクマールとされている「国・地方の公債等残高」に含まれない債務(公的年金預かり金、財投債など)の見合資産は、財政健全化とは直接関係しない。

○ また、政府が保有する有形固定資産は、市場での売却可能性がないか、あっても財政危機時における価値下落の可能性等に留意する必要がある。

・ バランスシート上の資産を評価することは、高い水準の公的債務に起因する脆弱性を否定するものではない。資産の多く

は流動性に乏しいか、または市場性がなく、短期的な資金調達や赤字補填に適うものではない。資産の評価価値は債務よ

りも変動が大きく、景気循環と強く連動するおそれがある。これは、資金調達需要が最も差し迫ったような状況においては、

資産価値もどん底まで落ちている可能性があることを意味する。したがって、総債務や財政赤字、資金調達需要を評価する

ことが、財政政策にとって重要であることに変わりはない。」

・ 非金融資産は、建造物やインフラ、土地などである。これらの多くは公的な資本ストックであり、経済的・社会的な成果を導

く上で不可欠な役割を担うものである。一方で、これらは概して流動性に乏しく市場性もないか、または中長期的に見た場合

にのみ市場性を有するにすぎない(例:民営化)。

・ 金融資産は、しばしば市場性があり、相対的に流動性があるが、公的企業が保有する直接貸付金や非上場株式はその例

外であり、評価の信頼性に乏しいときもある。

○IMF「Fiscal Monitor(2018年10月)」

○OECD「対日経済審査報告書(平成27年4月15日公表)」

・ 政府資産が大きく蓄積していることは念頭に置いておく必要があるものの、公的部門の現状を概してみるためには、総債務

残高が最もよい手法であると思われる。

・ 道路や公共施設などの有形固定資産は政府資産の4分の1以上であり、これらは有事の際の現金化は容易ではない。

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日本の財政に対する国際機関の見方

⚫ 政策の不確実性を減らし、人口動態がもたらす課題に対処し、債務の持続可能性のリスクを軽減するためには、しっかりと具体化された中長期的な財政枠組みが必要。(…)重要な施策は次のとおり。

➢増大する社会保障費を賄い、債務の持続可能性のリスクを下げるために、財政健全化は消費税率を少なくとも15%まで段階的に引き上げることを中心として進めるべき。これはGDPや将来世代も含めた福祉に対する負の影響が比較的小さいことから、好ましい政策手段である。

➢医療費総額を抑制する施策は、有意義な歳出削減を実現するという目的と公共の福祉を維持するという目的との間でバランスをとり、主に効率性の改善に重点的に取り組むべき。医療費の自己負担割合を増やすことは、将来世代の財政負担を軽減する一助にはなるが、そこには低所得世帯の保護措置が含まれるべき

⚫ 日本は具体的な歳出削減と税収増加策を盛り込んだ包括的な財政健全化計画とともに、その実行を担保する財政政策の枠

組みの強化を必要としている。OECDの試算によれば、2060年までに政府債務残高GDP比を150%にまで低下させるためには、

GDP比5%から8%程度の基礎的財政黒字を維持することが必要である。

⚫ 歳出増加を抑制するには、医療・介護に焦点を当てる必要があり、医療・介護に投入される資源をより効率的に活用しつつ、

質の高いケアを提供することが求められる。優先的課題として、病院における長期療養を介護にシフトさせるとともに、在宅ケ

アに焦点を当てること、後発医薬品の更なる使用促進、予防的ケアの改善が挙げられる

⚫ 日本は主として消費税に依拠して歳入増加を図るべきである。(…)十分な水準の基礎的財政黒字を消費増税のみによって

確保するためには、OECD平均である19%を超え、税率を20%から26%の間の水準へと引き上げることが必要となる。

45

OECD「2019年 対日経済審査報告書」(平成31年4月15日公表)

IMF「2018年 対日4条協議審査報告書」(平成30年11月28日公表)

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昭和51年5月14日

昭和50年代前期経済計画(閣議決定)

昭和55年度までのできるだけ早期に特例公債に依存しない財政に復帰する。

昭和54年9月3日

第88回臨時国会における大平内閣総理大臣所信表明演説

昭和59年度までに特例公債依存から脱却することを基本的な目標として、財政の公債依存体質を改善する。

昭和58年8月12日

1980年代経済社会の展望と指針(閣議決定)昭和65年度(平成2年度)までに特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引下げに努め、財政の対応力の改善を図る。

平成9年12月5日

財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成10年6月5日改正、同年12月18日停止)

平成15年度(改正後:17年度)までに国及び地方公共団体の財政赤字の対国内総生産比100分の3以下とする。一般会計の歳出は平成15年度(改正後:17年度)までに特例公債に係る収入以外の歳入をもってその財源とするものとする。

平成14年6月25日

経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(閣議決定)

2010年代初頭に国と地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化させることを目指す。

平成18年7月7日

経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(閣議決定)

① 2011年度(平成23年度)には国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する。

② 基礎的財政収支の黒字化を達成した後も、債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを確保する。

平成21年6月23日

経済財政改革の基本方針2009(閣議決定)今後10年以内に国・地方のプライマリー・バランス黒字化の確実な達成を目指す。まずは、5年を待たずに国・地方のプライマリー・バランス赤字(景気対策によるものを除く)の対GDP比を少なくとも半減させることを目指す。

平成22年6月22日

財政運営戦略(閣議決定)

① 国・地方及び国単独の基礎的財政収支について、遅くとも2015年度までにその赤字の対GDP比を2010年度の水準から半減し、遅くとも2020年度までに黒字化することを目標とする。

② 2021年度以降において、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させる。

平成25年8月8日

当面の財政健全化に向けた取組等について -中期財政計画-(閣議了解)

国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。

平成27年6月30日

経済財政運営と改革の基本方針2015(閣議決定)国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。

平成30年6月15日

経済財政運営と改革の基本方針2018(閣議決定)経済財政と財政健全化に着実に取り組み、2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すことを堅持する。

我が国の財政健全化目標とその変遷

国・地方PBの黒字化

特例公債脱却

○ 平成2年度予算では特例公債の発行から脱却できたが、阪神・淡路大震災への対応等により、平成6年度以降、特例公債の発行が復活し、現在まで続いている。

○ その後、財政健全化目標(フロー)は、「特例公債脱却」から「国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化」に転換され、目標達成が目指されてきた。

46

2025年度 同時に国・地方を合わせた

プライマリーバランス(PB)を黒字化債務残高対GDP比の安定的な引下げ

現在の財政健全化目標

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「新経済・財政再生計画」(2018年6月策定)のポイント

2025年度

同時に

国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)を黒字化

財政健全化目標

2019~2021年度の予算編成における歳出改革の方針

目標の実現に向けて

社会保障関係費

・全世代型社会保障制度を着実に構築するため、総合的な議論を進め、2020年度の「骨太方針」において、

政策を取りまとめ、改革を具体化。基盤強化期間内(2019年度~2021年度)から改革を実行に移す。

・計画の中間時点(2021年度)で進捗状況の評価を行い、2025年度に向け、その後の歳出・歳入改革の取組に反映。

非社会保障関係費

2019~2021年度の間、経済・物価動向等を踏まえ、社会保障関係費の実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる

地方の歳出水準

債務残高対GDP比の安定的な引下げ

経済・物価動向等を踏まえつつ、施策の優先順位の洗い直し、無駄の徹底排除と予算の重点化など、これまでどおり歳出改革の取組を継続

地方の財源について、2018年度の計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保

47

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「骨太2018」(平成30年6月15日閣議決定)の「新経済・財政再生計画」のポイント①

財政健全化目標

➢ 団塊世代が75歳に入り始めるまでに、社会保障制度の基盤強化を進め、全ての団塊世代が75歳以上になるまでに、財政健全化の道筋を確かなものとする必要。

➢ このため、財政健全化目標については、

⚫ 経済再生と財政健全化に着実に取り組み、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)黒字化を目指す。

⚫ 同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すことを堅持する。

社会保障改革を軸とする「基盤強化期間」の設定(2019~2021年度)

➢ 2019年度~2021年度を「基盤強化期間」と位置付け、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めを行う。

➢ 社会保障制度の持続可能性確保が景気を下支えし、持続的な経済成長の実現を後押しする点にも留意する。

財政健全化目標と基盤強化期間内における毎年度の予算編成を結び付けるための仕組み

「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針を堅持し、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を加速、拡大

(注)高齢化による増加分は人口構造の変化に伴う変動分及び年金スライド分からなることとされており、人口構造の変化に伴う変動分については当該年度における高齢者数の伸びの見込みを踏まえた増加分、年金スライド分については実績をそれぞれ反映することとする。これにより、これまで3年間と同様の歳出改革努力を継続する。

① 社会保障関係費

⚫ 再生計画(骨太2015)において、2020年度に向けてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、2019年度以降、その方針を2021年度まで継続する(注)。

⚫ 消費税率引上げとあわせ行う増(これまで定められていた社会保障の充実、「新しい経済政策パッケージ」 で示された「教育負担

の軽減・子育て層支援・介護人材の確保」及び社会保障4経費に係る公経済負担)については、別途考慮する。

⚫ 2022年度以降については、団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費が急増することを踏まえ、こうした高齢化要因を反映するとともに、人口減少要因、経済・物価動向、社会保障を取り巻く状況等を総合的に勘案して検討する。

48

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「骨太2018」(平成30年6月15日閣議決定)の「新経済・財政再生計画」のポイント②

➢ 全世代型社会保障制度を着実に構築していくため、総合的な議論を進め、期間内から順次実行に移せるよう、2020年度に、

それまでの社会保障改革を中心とした進捗状況をレビューし、「骨太方針」において、給付と負担の在り方を含め社会保障

の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめ、早期に改革の具体化を進める。

➢ 経済・財政一体改革の進捗については、新計画の中間時点(2021年度)において評価を行い、2025年度PB黒字化実現に

向け、その後の歳出・歳入改革の取組に反映する。

計画実現に向けた今後の取組

財政健全化目標と基盤強化期間内における毎年度の予算編成を結び付けるための仕組み(続き)

(社会保障分野における基本的考え方)

⚫ 基盤強化期間の重点課題は、高齢化・人口減少や医療の高度化を踏まえ、総合的かつ重点的に取り組むべき政策をとり

まとめ、基盤強化期間内から工程化、制度改革を含め実行に移していくこと。

② 一般歳出のうち非社会保障関係費

⚫ 経済・物価動向等を踏まえつつ、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組を継続。

③ 地方の歳出水準

⚫ 国の一般歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額に

ついて、2018年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。

➢ 真に必要な財政需要の増加に対応するため、制度改革により恒久的な歳入増を確保する場合、歳出改革の取組に当たって

考慮する。

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新経済・財政再生計画 改革工程表2018の概要

歳出分野 主な事項

社会保障分野

➢ 地域医療構想の実現に向け、都道府県知事の権限の在り方について検討。

➢ 保険者におけるインセンティブ強化のため、国保の普通調整交付金の配分について、加入者の性・年齢で調整した標準的な医療費を基準とするなどの観点から議論。介護の調整交付金についても、保険者機能の更なる強化に向けて活用。

➢ 国保財政の健全化に向け、法定外繰入等の解消期限や解消手段を盛り込んだ計画を策定・公表(見える化)。加減算双方向での財政的インセンティブの一層の活用。

➢ 給付と負担の見直しとして、後期高齢者の窓口負担の在り方、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準の見直し、医薬品や医療技術の保険収載の判断等の在り方等について検討。

➢ 「再生計画」の全44項目についても着実に推進。

社会資本整備等

➢ 社会資本整備重点計画に基づき、ストック効果の高いプロジェクトへの重点化を推進。

➢ 改正PFI法で創設されたワンストップ窓口制度の活用等により、人口20万人未満の地方公共団体を含め、PPP/PFIの導入を推進。

➢ コンパクト・プラス・ネットワークについて、立地適正化計画に加え、地域公共交通網形成計画の作成・実施により、まちづくりと公共交通体系の見直しを一体的に推進。

地方行財政改革

➢ 水道・下水道における広域化等の推進を含めた持続的経営確保のため、具体的な方針に基づく取組を推進。先進事例の公表、多様なPPP/PFIの導入を促進。

➢ 地方財政の全面的な「見える化」のため、住民一人当たり行政コスト等を公表し、決算情報等の「見える化」を推進。

文教・科学技術

➢ 成果に係る客観・共通指標により、運営費交付金を配分(配分対象額700億円。なお、重点支援評価とあわせれば1,000億円)。指標については夏頃までに検討し、32年度から活用(31年度から試行導入)。

➢ 教育政策に関する実証研究の進展等を踏まえた教職員定数の中期見通しの策定。外部人材の活用等による、学校における働き方改革の推進や遠隔教育の推進による教育の情報化。

➢ イノベーション創出による歳出効率化に向けて、エビデンス構築、コスト・効果を含めた見える化、EBPM化を進める。

「改革工程表」において、「新経済・財政再生計画」期間(2019~2025年度)の改革の方向性や検討・実施時期等を明確化。

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「骨太2019」(令和元年6月21日閣議決定)第3章「経済再生と財政健全化の好循環」のポイント

➢ 新経済・財政再生計画の下、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進し、経

済再生が財政健全化に貢献し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与することで、経済と財政の一体的な再

生を目指す。

➢ 引き続き、2025年度の財政健全化目標の達成を目指し、「目安」に沿った予算編成を行う。

2025年度の財政健全化目標:

⚫ 経済再生と財政健全化に着実に取り組み、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)黒字化を目指す。

⚫ 同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。

➢ また、2025年度のPB黒字化以降についても、経済財政運営を考える上では、2040年代半ば頃までの中長期スパンでの経

済財政の展望の下、経済・財政一体で改革を推進することが重要である。

財政健全化目標等

「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、新経済・財政再生計画を着実に推進

➢ 新経済・財政再生計画に基づき、基盤強化期間(2019~2021年度)内から改革を順次実行に移し、団塊の世代が75歳以

上に入り始める2022年までに社会保障制度の基盤強化を進め、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めにつな

げる。

➢ このため、給付と負担の見直しも含めた改革工程表について、進捗を十分に検証しながら、改革を着実に推進する。

➢ 年金及び介護については、必要な法改正も視野に、2019年末までに結論を得る。医療等のその他の分野についても、基

盤強化期間内から改革を順次実行に移せるよう、2020年度の「経済財政運営と改革の基本方針」 (骨太2020)において、給

付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる。

社会保障分野における改革の取組の基本的考え方

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1. 幼児教育の無償化• 全ての3歳~5歳児について幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化

• 0歳~2歳児についても、当面、住民税非課税世帯を対象として無償化

※幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化の対象範囲等については、

専門家の声も反映する検討の場を設け、来年夏までに結論

2. 待機児童の解消• 「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿を整備

• 保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえて処遇を改善

※人勧分に加え、2019年4月から更に1%(月3000円相当)引上げ

3. 高等教育の無償化• 所得が低い家庭の真に必要な子供たちに限って高等教育を無償化

- 住民税非課税世帯の子供たちに対して、

①国立大学の場合は授業料を免除

②私立大学の場合は、国立大学の授業料に、私立大学の平均授業料の

水準を勘案した一定額を加算

③1年生については、入学金についても免除

- 給付型奨学金については、学業に専念できるようにするため、学生

生活を送るのに必要な生活費を賄えるよう措置

- 住民税非課税世帯に準ずる世帯についても、上記に準じた支援を段

階的に実施

• 支援対象の要件や支援措置の対象となる大学等の要件を設定

4. 私立高等学校の授業料の実質無償化(年収590万円未満世帯を対象)

• 消費税使途変更による、現行制度・予算の見直しにより活用が可能となる財

源をまず確保

• その上で、2020年度までに、引き続き、政府全体として安定的な財源を確保し

つつ、実質無償化を実現

5. 介護人材の処遇改善• 勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善

を行うことを算定根拠に公費1000億円程度を投じ、処遇改善(障害福祉人材

についても、同様の処遇改善)

6. これらの施策を実現するための安定財源• 2019年10月に予定される消費税率10%への引上げによる増収分(5兆円

強)を①教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、②財政再建

とに、それぞれ概ね半分ずつ充当

⇒ ①について、新たに生まれる1.7兆円程度を、本経済政策パッケー

ジの1~3、5の施策に充当

• 子ども・子育て拠出金の拠出金率の上限変更(0.25%→0.45%)による0.3兆

円の増額分を、2018年度から実施する「子育て安心プラン」の実現に必要な

企業主導型保育事業と保育の運営費(0歳~2歳児相当分)に充当

7. 財政健全化との関連• 財政健全化の旗は決して降ろさず、不断の歳入・歳出改革努力を徹底し、プ

ライマリーバランスの黒字化を目指すという目標自体はしっかり堅持

• 来年の「経済財政運営と改革の基本方針」において、プライマリーバランス黒

字化の達成時期、その裏付けとなる具体的かつ実効性の高い計画を策定

8. 来年夏に向けての検討継続事項• リカレント教育/中間所得層におけるアクセスの機会均等(HECS等諸外国

の事例を参考)/全世代型社会保障の更なる実現

9. 規制制度改革等

1. 中小企業・小規模事業者等の生産性革命

2. 企業の収益性向上・投資促進による生産性革命

3. Society5.0の社会実装と破壊的イノベーションによる生産性革命

生産性革命

人づくり革命

財務省作成新しい経済政策パッケージ(平成29年12月8日閣議決定)の概要

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12

42

42

43

14

1

0

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20

30

40

50

20 30 40 45 50 55 60 70 85

財政健全化目標の諸外国との比較 ①

○ 債務残高対GDP比について、単に「安定的引下げ」が目標とされているわが国とは異なり、諸外国においては、多くの国(73ヶ国)が上限目標を設けている。多くは60%を上限目標としている。

○ 債務残高対GDP比に上限目標(ストック目標)を設けている国の約9割(63ヶ国)が、ストック目標の実現のために、財政収支等に関する目標(フロー目標)を設けている。

(注1)IMFにおいて財政ルールに関する情報が得られた96ヶ国を集計対象国としている。(注2)ストック目標はIMFの財政局が”Debt rule”と定義しているもの、フロー目標は同局が”Budget Balance Rule”と定義しているものを集計。(出所) IMF「Fiscal Rules at a Glance」(2017年3月)

<諸外国における債務残高/GDP比目標の分布>

(%)(債務残高対GDP比の上限目標値)

(国)

フロー目標を設けていない国:10ヶ国

フロー目標を設けている国:63ヶ国

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財政健全化目標の諸外国との比較②

(注1)対象国はユーロ加盟国18か国+その他のEU加盟国7か国(英国、チェコ、クロアチア以外)(注2)構造的財政収支は、経済が潜在GDPの水準に達している場合に実現する財政収支。推計に用いる潜在GDPは、仮定や推計方法によって大きく変化するなど、高い不確実性を伴うものであることに留意が必要。

足元(2016年)の日本の構造的財政収支(対GDP比)はOECD推計で▲3.3%、IMF推計で▲4.1%。(注3)各目標は、原則、一般政府ベースの目標。ただし、ドイツの「中期財政計画2018~2022」における財政収支に関する目標は連邦政府、英国の目標は公的部門、米国及びカナダの目標は連邦政府に係る目標。

○ 主要先進国においては、債務残高対GDP比について上限目標を設けているとともに、フロー目標として利払費を含む財政収支について均衡などの目標を掲げている。

残高目標(ストック)<対GDP比> 収支目標(フロー)<対GDP比>

EU 財政協定(2013年)債務残高⇒60%以下

60%を超える場合、超える部分を原則、年1/20以上削減

財政協定(2013年)(注1)

財政収支⇒均衡債務残高が60%超の場合:構造的財政収支(注2)⇒▲0.5%以下債務残高が60%以下の場合:構造的財政収支⇒▲1.0%以下

※各国憲法その他拘束力があり、永続的な性格を有する法で規定することが求められている。

ドイツ

(参考)中期財政計画2018~2022(2018年)債務残高⇒2019年に60%以下

予算原則法(2013年)構造的財政収支⇒▲0.5%以下

(参考)中期財政計画2018~2022(2018年)財政収支⇒2019年から2022年まで均衡維持

フランス

(参考)安定化プログラム2018(2018年)債務残高⇒60%超の部分を原則、年1/20以上削減

複数年財政計画法2018~2022(2018年)構造的財政収支⇒▲0.4%以下

(参考)安定化プログラム2018(2018年)財政収支⇒2022年までに黒字化

イタリア

(参考)経済財政文書2018(2018年)※公的債務については、EUにおいて定められた目標に適合するようにすることとされている。

債務残高⇒60%超の部分を原則、年1/20以上削減

憲法(2012年)、均衡財政原則の適用に関する法律(2012年)※行政は、欧州連合の法規と一致するよう、予算の均衡(構造的財政収支で判定)及び公的債務の

持続可能性を保障することとされている。

構造的財政収支⇒▲0.5%以下

(参考)経済財政文書2018(2018年)※予算の収支については、EUにおいて定められた目標に適合するようにすることとされている。

構造的財政収支⇒▲0.5%以下

英国 予算責任憲章純債務残高⇒2020年度には減少に転ずる

予算責任憲章構造的財政収支⇒2020年度までに▲2%以下

米国 大統領予算教書(2019年)債務残高⇒2039年度までに45%まで削減

大統領予算教書(2019年)財政収支⇒2034年度までに均衡

カナダ 経済・財政見通しの秋季改訂(2018年)債務残高⇒削減を続ける

経済・財政見通しの秋季改訂(2018年)財政収支⇒2019年度までに均衡

or

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1.財政の現状

2.財政悪化の要因

3.社会保障と税の一体改革

4.財政健全化に向けた取組

5.令和元年度予算のポイント

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令和元年度予算のポイント

○「新経済・財政再生計画」の下、歳出改革の取組を継続

・社会保障関係費:高齢化による増におさめるとの方針を達成(+4,774億円)

・非社会保障関係費:歳出改革の取組を継続(+330億円)

○安倍内閣発足以来、国債発行額を7年連続で縮減(2018年度 : 33.7兆円⇒2019年度 : 32.7兆円〔31.9兆円〕)

○一般会計プライマリーバランスも改善(2018年度 : ▲10.4兆円⇒2019年度 : ▲9.2兆円〔▲8.4兆円〕)

※〔 〕は臨時・特別分を除いた計数

○全世代型の社会保障制度への転換に向け、消費税増収分を活用した幼児教育の無償化、社会保障の充実

公費+8,110億円(国費+7,157億円*1)

・幼児教育・保育の無償化〔2019年10月~〕 ......................公費 +3,882億円 (国費 +3,882億円*2)

・介護人材の処遇改善〔2019年10月~〕.................................公費 +421億円 (国費 +213億円)

・年金生活者支援給付金の支給....................................................公費 +1,859億円 (国費 +1,859億円)

・低所得高齢者の介護保険料の負担軽減強化 .......................公費 +654億円 (国費 +327億円) 等*1,2 幼児教育・保育の無償化に係る初年度の経費を全額国負担とすることに伴う子ども・子育て支援臨時交付金(仮称)2,349億円が含まれており、これを除いた社会保障の充実等に係る社会保障関係費の増はそれぞれ+4,808億円、+1,532億円となる。

○消費税引上げによる経済への影響の平準化に向け、施策を総動員(「臨時・特別の措置」: 国費2兆280億円)

・中小小売業等に関する消費者へのポイント還元 ............................... 2,798億円

・低所得・子育て世帯向けプレミアム付商品券 ....................................1,723億円

・住宅の購入者等への支援 -すまい給付金 .......................................... 785億円

-次世代住宅ポイント制度 ................. 1,300億円

・防災・減災、国土強靱化対策 .......................................................... 1兆3,475億円 等

○重要インフラの緊急点検等を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に基づき、緊急対策160項

目について、2020年度までの3年間で集中的に実施

⇒ 2018年度2次補正、2019・2020年度「臨時・特別の措置」を活用(2019年度 : 1兆3,475億円)【再掲】

※ 2018年度第2次補正予算と合わせて国費2.4兆円、2020年度までの3年間の事業規模は概ね7兆円程度。

《財政の健全化》

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令和元年度予算フレーム(通常分、臨時・特別の措置)

30'→元'

[歳入](歳 入)

税 収 590,790 624,950 34,160

そ の 他 収 入 49,416 50,556 1,140

公 債 金 336,922 318,786 △18,136

 うち4条公債(建設公債) 60,940 61,701 761

 うち特例公債(赤字公債) 275,982 257,085 △ 18,897

計 977,128 994,291 17,163

[歳出](歳 出)

国 債 費 233,020 235,082 2,062

一 般 歳 出 588,958 599,359 10,401

 うち社会保障関係費 329,882 339,914 10,031

 うち社会保障関係費以外 259,076 259,445 370

地 方 交 付 税 交 付 金 等 155,150 159,850 4,701

計 977,128 994,291 17,163

30'→元'

[歳入](歳 入)

そ の 他 収 入 12,461 皆増

公 債 金 7,819 皆増

 うち4条公債(建設公債) 7,819 皆増

計 20,280 皆増

[歳出](歳 出)

一 般 歳 出 20,280 皆増

計 20,280 皆増

【通常分】 (単位:億円)

平成30年度予算(当初) 令和元年度予算 備  考

(注2)計数は、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは一致しないものがある。

【臨時・特別の措置】 (単位:億円)

令和元年度予算 備  考

〇預金保険機構の利益剰余金+8,000億円 平成29年度決算剰余金+2,157億円 等

(注1)社会保障関係費、社会保障関係費以外の平成30年度予算は、令和元年度予算との比較対照のため、組替えをしてある。

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令和元年度予算フレーム(通常分+臨時・特別の措置)

30'→元'

[歳入](歳 入)

税 収 590,790 624,950 34,160

そ の 他 収 入 49,416 63,016 13,601

公 債 金 336,922 326,605 △10,317

 うち4条公債(建設公債) 60,940 69,520 8,580

 うち特例公債(赤字公債) 275,982 257,085 △18,897

計 977,128 1,014,571 37,443

[歳出](歳 出)

国 債 費 233,020 235,082 2,062

一 般 歳 出 588,958 619,639 30,680

地 方 交 付 税 交 付 金 等 155,150 159,850 4,701

計 977,128 1,014,571 37,443

【通常分+臨時・特別の措置】 (単位:億円)

平成30年度予算(当初) 令和元年度予算 備  考

〇公債依存度 32.2%程度(平成30年度当初34.5%)

(注)計数は、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは一致しないものがある。

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(注1) 平成23年基準(2008SNA)による。(注2) 平成30年度及び令和元年度は、「平成31年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成30年12月18日 閣議了解)による。(注3) 平成26年度及び令和元年度の名目GDP成長率及び消費者物価上昇率のカッコ内の計数は、消費税率引上げによる影響を機械的に除いた計数。

(注1) 計数は当初予算ベース。公債依存度は公債発行額を一般会計歳出総額で除して算出。(注2) 一般歳出とは、一般会計歳出総額から国債費及び地方交付税交付金等を除いたもの。(注3) 平成26年度から平成30年度の消費税率引き上げに伴う増収分は5%から8%への引上げに伴うもの。令和元年度については、5%から10%への引上げに伴うもの。

<経済指標>

<財政指標(一般会計)>

平成25年度(実績)

平成26年度(実績)

平成27年度(実績)

平成28年度(実績)

平成29年度(実績)

平成30年度(実績見込み)

令和元年度(見通し)

名目GDP成長率 2.6%2.2%(0.8%)

2.8% 0.7% 2.0% 0.9% 2.4%(2.0%)

名目GDP 507.3兆円 518.2兆円 533.0兆円 536.8兆円 547.4兆円 552.5兆円 566.1兆円

実質GDP成長率 2.6% ▲0.4% 1.3% 0.9% 1.9% 0.9% 1.3%

消費者物価上昇率 0.9%2.9%(0.9%)

0.2% ▲0.1% 0.7% 1.0%1.1%(0.6%)

完全失業率 3.9% 3.5% 3.3% 3.0% 2.7% 2.4% 2.3%

平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度

一 般 歳 出※( )は臨時・特別の措置を含んだ計数

54.0兆円 56.5兆円 57.4兆円 57.8兆円 58.4兆円 58.9兆円59.9兆円

(62.0兆円)

税 収※( )は消費税率引上げに伴う増収分(国税部分)

43.1兆円50.0兆円

(4.5兆円)

54.5兆円

(6.2兆円)

57.6兆円

(6.3兆円)

57.7兆円

(6.3兆円)

59.1兆円

(6.4兆円)

62.5兆円

(7.9兆円)

公 債 金 収 入※別途、基礎年金国庫負担2分の1への引上げに伴う年金特例債あり※( )は臨時・特別の措置を含んだ計数

42.9兆円

※年金特例債2.6兆円41.3兆円 36.9兆円 34.4兆円 34.4兆円 33.7兆円

31.9兆円

(32.7兆円)

基 礎 的 財 政 収 支※( )は臨時・特別の措置を含んだ計数

▲23.2兆円 ▲18.0兆円 ▲13.4兆円 ▲10.8兆円 ▲10.8兆円 ▲10.4兆円▲8.4兆円

(▲9.2兆円)

公 債 依 存 度※( )は臨時・特別の措置を含んだ計数

46.3% 43.0% 38.3% 35.6% 35.3% 34.5%32.1%

(32.2%)

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(単位:億円)主要経費別内訳(臨時・特別の措置を除く)

主要経費30年度予算

(当初)元年度予算 増減額 増減率 備 考

一 般 歳 出 588,958 599,359 +10,401 +1.8%

社会保障関係費 329,882 339,914 +10,031 +3.0%

文教及び科学振興費 53,512 53,824 +311 +0.6%

うち科学技術振興費 13,175 13,378 +204 +1.5%

恩給関係費 2,504 2,097 ▲407 ▲16.2%

防衛関係費 51,911 52,066 +155 +0.3%中期防対象経費:+1.1%政府専用機:▲251億円、岩国への空母艦載機移駐(米軍再編):▲194億円

公共事業関係費 59,789 60,596 +807 +1.3%

経済協力費 5,089 5,021 ▲68 ▲1.3%

(参考)ODA 5,538 5,566 +27 +0.5% 一般会計全体のODA予算は4年連続の増

中小企業対策費 1,771 1,740 ▲31 ▲1.8% 景気回復を反映した信用保証制度関連予算の減:▲45億円 等

エネルギー対策費 9,186 9,104 ▲82 ▲0.9% 予定されていた出資案件が進捗しなかったこと(▲44億円)等による減

食料安定供給関係費 9,924 9,816 ▲108 ▲1.1% 執行実績等を反映した水田活用交付金の減:▲89億円

その他の事項経費 61,888 60,181 ▲1,707 ▲2.8%

予備費 3,500 5,000 +1,500 +42.9%

国債費 233,020 235,082 +2,062 +0.9% 公債残高の累増等に伴う債務償還費の増等

地方交付税交付金等 155,150 159,850 +4,701 +3.0%国税収の伸び等を反映。地方税・地方交付税等の地方の一般財源総額について30年度と実質的に同水準を確保

合計 977,128 994,291 +17,163 +1.8%

(注1) 30年度予算は、元年度予算との比較対照のため、組替えをしてある。(注2) 計数は、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは一致しないものがある。(注3) 一般歳出とは、一般会計歳出総額から国債費及び地方交付税交付金等を除いたもの。

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(単位:億円)主要経費別内訳

主要経費30年度予算

(当初)元年度予算 増減額うち

通常分うち

臨時・特別の措置うち

通常分

一 般 歳 出 588,958 619,639 599,359 20,280 +30,680 +10,401

社会保障関係費 329,882 340,593 339,914 679 +10,710 +10,031

文教及び科学振興費 53,512 56,025 53,824 2,201 +2,513 +311

うち科学技術振興費 13,175 13,597 13,378 219 +423 +204

恩給関係費 2,504 2,097 2,097 - ▲407 ▲407

防衛関係費 51,911 52,574 52,066 508 +663 +155

公共事業関係費 59,789 69,099 60,596 8,503 +9,310 +807

経済協力費 5,089 5,021 5,021 - ▲68 ▲68

(参考)ODA 5,538 5,566 5,566 - +27 +27

中小企業対策費 1,771 1,790 1,740 50 +19 ▲31

エネルギー対策費 9,186 9,760 9,104 656 +574 ▲82

食料安定供給関係費 9,924 9,823 9,816 7 ▲101 ▲108

その他の事項経費 61,888 67,856 60,181 7,675 +5,968 ▲1,707

予備費 3,500 5,000 5,000 - +1,500 +1,500

国債費 233,020 235,082 235,082 - +2,062 +2,062

地方交付税交付金等 155,150 159,850 159,850 - +4,701 +4,701

合計 977,128 1,014,571 994,291 20,280 +37,443 +17,163

(注1) 30年度予算は、元年度予算との比較対照のため、組替えをしてある。(注2) 計数は、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計とは一致しないものがある。(注3) 一般歳出とは、一般会計歳出総額から国債費及び地方交付税交付金等を除いたもの。

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○消費税率については、法律で定められたとおり、2019年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定○前回の3%引上げ時の経験を活かし、あらゆる施策を総動員し、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう、全力で対応①臨時・特別の措置を講ずる2019・2020年度予算を通じて、各措置の規模・実施時期をバランスよく組み合わせ、全体としての財政規律を堅持②各措置の目的を明確化③未来及び経済構造改革に資する観点も十分踏まえて対応〇消費税率引上げの必要性やその影響を緩和する措置などについて、国民に分かりやすい広報の実施

基本的考え方

「消費税率引上げに伴う対応」の概要

消費税率引上げによる影響と対応

幼児教育の無償化、社会保障の充実による支援 受益増

幼児教育無償化の10月1日実施、年金生活者支援給付金の支給等 2.8兆円程度

消費税負担増に対する診療報酬等による補てん等 0.4兆円程度

消費税率の引上げの影響 負担増 負担軽減

消費税率の引上げによる負担増が国・地方で+5.7兆円程度(1%当たり2.87兆円程度) 5.7兆円程度 ー

軽減税率制度の実施 ー 1.1兆円程度

昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保 0.6兆円程度 ー

5.2兆円程度の負担増

3.2兆円程度の受益増

経済への影響を

2兆円程度に抑制

消費税率引上げに対応した新たな対策 予算規模等

臨時・特別の予算措置ポイント還元、プレミアム付商品券、すまい給付金、次世代住宅ポイント制度、防災・減災、国土強靱化 等

2兆円程度(国費)

税制上の支援住宅ローン減税の拡充、自動車の取得時及び保有時の税負担の軽減

0.3兆円程度(減税)

2.3兆円程度の措置

今回の消費税率引上げによる経済への影響は、幼児教育無償化等の措置により2兆円程度に抑えられる。

これに対し、新たな対策として2.3兆円程度を措置。経済への影響を十二分に乗り越える対策とする。

(注)計数精査中

2.3兆円程度の措置

経済への影響を十二分に乗り越える対策

2018年12月20日(木)経済財政諮問会議茂木大臣提出資料

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消費税率引上げに伴う社会保障の充実等

公費+8,110億円(国費+7,157億円*1)

〔主なもの〕 公費 国費

○幼児教育・保育の無償化・2019年10月から、全ての3~5歳児、住民税非課税世帯の0~2歳児を対象に、幼稚園・保育所・認定こども園等の費用を無償化

+3,882億円 +3,882億円 *2

○介護人材の処遇改善・2019年10月から、勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に対応

+421億円 +213億円

○待機児童の解消

・保育の受け皿拡大「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿を整備(保育運営費の拡充) ※この他、事業主拠出金+1,000億円

+330億円 +163億円

・保育士の処遇改善2019年4月から、保育士の処遇について、+1%(月3000円相当)引上げ

+206億円 +103億円

○低年金の高齢者等に対し、年金生活者支援給付金【基準額 年6万円(月5千円)】を支給(2019年10月分~)

+1,859億円 +1,859億円

○低所得高齢者の介護保険料の負担軽減の更なる強化(原則2019年10月~) +654億円 +327億円

○地域医療構想の実現に向けた地域医療介護総合確保基金の拡充 (医療分)(介護分)

+100億円+100億円

+67億円+67億円

○電子カルテの標準化・オンライン資格確認の導入等による効率的な医療提供体制構築のための医療ICT化促進基金(仮称)の創設

+300億円 +300億円

○児童養護施設等の小規模・地域分散化、高機能化等の社会的養育の推進 +58億円 +29億円

(注) この他、消費税率引上げに関連して、2019年度において、後期高齢者医療制度の保険料(均等割)の軽減特例の見直し及び幼児教育・保育無償化に係る自

治体の事務費・システム改修費の補助を実施する。

*1,2 幼児教育・保育の無償化に係る初年度の経費を全額国負担とすることに伴う子ども・子育て支援臨時交付金(仮称)2,349億円が含まれており、これを除いた社会保障の充実等に係る社会保障関係費の増はそれぞれ+4,808億円、+1,532億円となる。

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消費税率引上げへの対応

《臨時・特別の措置》(国費 2兆280億円)

中小小売業等に関する消費者へのポイント還元 (2,798億円)

2019年10月からオリンピック・パラリンピック前の2020年6月までの9か月間に限定し、中小小売業等において消費者がキャッシュレス決済を行う場合、5%(または2%)のポイント還元により支援

低所得者・子育て世帯向けプレミアム付商品券 (1,723億円)

低所得者(生活保護受給者除く)及び0~2歳児の子育て世帯に対し、2019年10月から半年間使用できるプレミアム付商品券を発行・販売(1人5千円の財政支援)

住宅の購入者等に対する支援【すまい給付金】(785億円)

住宅ローン減税の効果が限定的な所得層を対象とする「すまい給付金」について、2019年10月以降、対象所得層を拡大するとともに、給付額を最大30万円から50万円に引上げ

【次世代住宅ポイント制度】(1,300億円)

一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能を満たす住宅や家事・介護負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームに対し、一定期間に限ってポイント付与(新築で基本的に30万円分のポイント付与)

防災・減災、国土強靱化 (1兆3,475億円)

重要インフラの緊急点検の結果等を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」について、2018

年度からの3年間で集中的に実施(※1) 2018年度2次補正とあわせて国費2.4兆円(※2) 2020年度までの3年間の事業規模は概ね7兆円程度

(※) この他、税制上の措置として、①軽減税率制度の実施 (減収見込額:▲1.1兆円程度(注:昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保0.6兆円程度)、②耐久消費財(自動車・住宅)の購入者に対する支援(減収見込額:▲0.3兆円程度)がある。(金額はいずれも国・地方合わせたベース)

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※1 ( )は2019年度予算、〔 〕は2018年度2次補正予算

※2 [防] は「緊急対策」の「防災のための重要インフラ等の機能維持」に該当するものであり、[生] は「緊急対策」の「国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持」に該当するもの。

防災・減災、国土強靱化

○重要インフラの緊急点検等を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018年12月14日閣議決定)に基づき、緊急対策160項目について、3年間で集中的に実施。⇒2018年度2次補正、2019・2020年度「臨時・特別の措置」を活用(2019年度「臨時・特別の措置」: 1兆3,475億円)※ 2018年度第2次補正予算と合わせて国費2.4兆円、2020年度までの3年間の事業規模は概ね7兆円程度。

警察施設等の整備に関する緊急対策 [防][生](124億円)〔545億円〕

信号機の滅灯対策のための信号機電源付加装置の更新整備や、警察施設の建替え整備・耐震改修等を実施。

ため池、治山施設、森林、漁港等の防災・減災対策 [防][生]

(1,207億円)〔938億円〕防災重点ため池の改修・補強や統廃合、治山施設の設置

や森林の間伐、漁港施設の補強等を実施。あわせて、ため池決壊時の浸水想定区域図の作成等を実施。

河川、砂防、道路等の防災・減災対策 [防][生]

(7,153億円)〔6,183億円〕

河川の樹木伐採・掘削や堤防強化、土砂災害防止のための砂防堰堤の整備や道路法面・盛土対策等を実施。あわせて、洪水・土砂災害に係るハザードマップの作成等を実施。

電力インフラの緊急対策 [生] (329億円)〔125億円〕

再エネ事業者や災害時に生活支援拠点となるコンビニ等に対して、災害時にも活躍する自家発電・蓄電池・省電力設備の導入等を支援。

製油所・油槽所の緊急対策 [生] (134億円)〔84億円〕

非常用発電設備等の整備・増強に係る支援や耐震化・強靱化を実施。

災害拠点病院等における耐震化対策等 [防] (75億円)〔43億円〕

未耐震の災害拠点病院、耐震性が特に低い病院等の耐震整備や非常用自家発電の増設等に対する支援。

学校施設等の防災・減災、地震津波観測網等に関するインフラ緊急対策 [防] (1,518億円)〔698億円〕

児童・生徒等の学習の場である学校施設等の耐震化等を進めるとともに、津波からの迅速な避難等のための海底地震津波観測網の整備等を行う。

《具体的な取組》

水道施設の耐震化対策等 [生] (259億円)〔66億円〕

地震により給水停止又は断水のおそれがある水道施設の耐震整備等に対する支援。

自衛隊の防災関係資機材等に関する緊急対策 [防]

(508億円)〔131億円〕災害派遣時の活動に必要な資機材等を整備

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《恒久財源の確保による施策の拡充》

令和元年度予算における施策の重点化・効率化

〔国際観光旅客税収を活用した観光施策の拡充〕○訪日外国人旅行者数2020年4000万人等の目標達成に向け、国際観光旅客税の増分(+440億円)を活用しつつ、顔認証ゲートを用いた出入国手続きの高度化、無料Wi-Fiや多言語案内といった受入体制整備、文化財や国立公園等を活用した観光コンテンツの拡充等を加速(500億円)【国土交通省等】

〔電波利用料見直しによる財源を活用した電波制度改革〕○ 2020年の5Gの実現を始め、Society 5.0に向けた電波利用ニーズ拡大等に対応するため、電波利用料を引き上げ(+

130億円)、高度なワイヤレスシステムを支える電波利用基盤の整備、電波の有効活用のための利用状況調査や周波数共用技術の確立等を実施(747億円)【総務省】

《仕組みの見直し等を通じた重点化・効率化》

〔防衛力整備の効率化・合理化〕○防衛装備品取得の全般にわたり、長期契約の活用、民生品の使用、原価の精査等の装備調達の最適化などを図ることにより、4,159億円の効率化・合理化効果を実現【防衛省】

〔防災・減災分野における公共事業の個別補助化〕○防災・減災分野について優先して取り組むべき事業を推進するため、地方公共団体に対し、交付金による支援から個別補助化による計画的・集中的な支援に切り替え(1,500億円)【国土交通省】

〔農地の集積・集約化の推進〕○農地の集積・集約化の協力金について、出し手から農地を集めるための協力金から、受け手の生産性向上を支援するための協力金に重点化(168億円)【農林水産省】

〔教員加配の仕組みの見直し〕○より質の高い英語教育に向け、教員新規採用者のうち、一定以上の英語力を有する者の割合を指標として、英語専科指導のための教員加配を行う仕組みを導入【文部科学省】

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【社会保障】

○社会保障関係費の実質的な伸びについて、「高齢化による増加分におさめる」という「新経済・財政再生計画」の方針を達成(+4,774億円)。

○実勢価格の動向を反映した薬価改定(▲503億円)やこれまでに決定した制度改革(介護納付金の総報酬割の導入等:▲807億円)を着実に実施。また、足元の物価状況等を勘案し、+0.1%の年金改定(+101億円)。

【教育・科学技術】

○各国立大学への運営費交付金について、その大部分を前年同額で固定して配分してきた仕組みから、1,000億円分を評価(うち700億円は質の高い論文など成果に係る共通指標で相対評価)に基づき配分する仕組みに見直し。

○科研費について、研究力向上に向けて、将来の学術研究を担う若手へ配分を大幅にシフトしつつ、充実(2,372億円(+86億円))。

【公共事業】

○公共事業関係費については安定的な確保(6兆596億円)を行い、その中で、①地方公共団体に対して計画的・集中的な支援を行うための個別補助化や老朽化対策、②成長力を高める生産性向上のためのインフラ整備への重点化を推進。

○水産資源管理の強化のための資源調査の充実や高性能漁船の導入等により水産業の成長産業化を推進(2018年度補正予算とあわせ3,045億円)。

○「2019年の輸出1兆円」目標の確実な達成に向け、輸出プロモーションの強化、輸出環境整備の推進等により、国産農林水産物・食品の輸出を支援。

【農林水産】

※幼児教育の無償化、社会保障の充実を除く

○再エネ等の研究開発・実証等の重点化を図り、水素社会の実現に向けた水素ステーションの整備(100億円)等を推進。○世界的な海洋プラスチックごみ汚染の問題等を踏まえたプラスチック国内リサイクル体制の整備(70億円)等を推進。

【エネルギー・環境】

令和元年度予算における各歳出分野の特徴①

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【警察・海保】

○良好な治安確保やテロの未然防止等のための資機材の整備など、警備体制を充実強化(372億円(+213億円))。○ 2018年度第2次補正予算(313億円)とあわせ、尖閣対応の大型巡視船を中心に、引き続き「海上保安体制強化に関する方針」に基づく体制強化等を推進(2,153億円)。

○訪日外国人旅行者数2020年4000万人、旅行消費額8兆円等の目標達成に向け、国際観光旅客税の増分(+440億円)を活用し、顔認証ゲートを用いた出入国手続きの高度化や地域資源を活用した観光コンテンツの拡充等を実現。

【地方創生】

○地方の自主的かつ先駆的な取組を支援する地方創生推進交付金(1,000億円)や、先端科学や観光・農業といった地方大学等の新たなチャレンジを後押しする地方大学・地域産業創生交付金(22.5億円)により、地方創生を引き続き推進。

【復興】

○復興のステージに応じ、生業の再生等きめ細かな支援とともに、復興拠点整備等を通じた福島の復興に引き続き注力。

【地方財政】

○過去最高の地方税収等の結果、折半対象財源不足の解消(2008年度以来)、臨時財政対策債の発行の大幅な縮減(▲0.7

兆円)等を実現。地方の一般財源総額を適切に確保。幼児教育無償化に係る初年度の経費全額を国が負担(2,349億円)。

【観光】

【外交・防衛】

○中期防対象経費は、新たな「中期防衛力整備計画」を踏まえ+1.1%の伸びを確保し、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域を含め、領域横断作戦を実現できる体制の構築を推進。

○戦略的外交を更に推進するため、外交実施体制を強化。ODAは、一般会計、事業量とも増額(+27億円,+412億円)。

令和元年度予算における各歳出分野の特徴②

○地方自治体における一元的相談窓口設置の支援や、日本語教育の充実など、外国人材の受入れ・共生のための環境整備を推進。

【外国人材受入】

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(参考)

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※ 地方交付税交付金等については「新経済・財政再生計画」との整合性に留意しつつ要求。義務的経費については、国勢調査に必要な経費の増等について加減算。

令和2年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

自然増 0.53兆円

前年度予算額75.9兆円

16.0兆円 32.5兆円 14.8兆円 12.6兆円

地方交付税交付金等

年金・医療等 裁量的経費 義務的経費

さらに、聖域を設けることなく施策・制度の抜本的見直し

新しい日本のための優先課題推進枠

裁量的経費に係る削減額(▲10%:▲A)

裁量的経費に係る削減額A×3倍

裁量的経費への振替額B×3倍

義務的経費に係る削減額(▲B)

裁量的経費への振替額 (+B)

●社会保障の充実、教育負担の軽減・子育て層支援等の消費税率引上げに伴う増

●「臨時・特別の措置」の具体的な内容

(予算編成過程において検討)

更新後(2019年7月 R2シーリング)

70

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高齢化による増加分

自然増

人口構造の変化に伴う変動分

年金スライド分 実績に応じて支払い

当該年度における高齢者数の伸びの見込みを踏まえた増加分

※予算編成過程を通じて精査

「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)」(抄)(平成30年6月15日閣議決定)

社会保障関係費については、再生計画において、2020年度に向けてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当

する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、2019年度以降、その方針を

2021年度まで継続する(注)。

消費税率引上げとあわせ行う増(これまで定められていた社会保障の充実、「新しい経済政策パッケージ」 で示さ

れた「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保」及び社会保障4経費に係る公経済負担)については、別途

考慮する。

なお、2022年度以降については、団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費が急増することを踏まえ、こうし

た高齢化要因を反映するとともに、人口減少要因、経済・物価動向、社会保障を取り巻く状況等を総合的に勘案して

検討する。

(注)高齢化による増加分は人口構造の変化に伴う変動分及び年金スライド分からなることとされており、人口構造の変化に伴う変動分

については当該年度における高齢者数の伸びの見込みを踏まえた増加分、年金スライド分については実績をそれぞれ反映することとする。

これにより、これまで3年間と同様の歳出改革努力を継続する。

今後の社会保障関係費の歳出水準の考え方

消費税率引上げとあわせ行う増

制度改革・効率化

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2.0

2.5

3.6 3.5

2.9

2.9

1.1

0.5

4.14.2 3.9

2.8

2.0

1.4

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027

(%)

75歳以上

65歳以上

(出所) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位)」

高齢者人口の伸び率

72

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部分が、28~30年度の実質的な伸びであり、年+0.5兆円程度

社会保障関係費

28.9兆円

社会保障関係費

29.1兆円

社会保障関係費

30.5兆円

社会保障関係費

31.5兆円

平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度

部分が、社会保障の充実等を除く25~27年度の実質的な伸びであり、年平均+0.5兆円程度

制度改正による減(平成27年度)計:▲1700億円

<主なもの>・介護報酬改定(適正化分)(▲1130億円)・協会けんぽ国庫補助の見直し(▲460億円)

制度改正による減(平成25年度)計:▲1200億円

・生活保護の適正化(▲1200億円)

※平成27年度までの効果額を含む。

制度改正による減(平成26年度)計:▲1700億円

<主なもの>・薬価改定(▲1300億円)・「7対1入院基本料」算定病床の要件の厳格化(▲200億円)

(注3)

(注2)

(注1)

(注1)年金国庫負担2分の1ベースの予算額。(注2)基礎年金国庫負担の受入超過による精算(▲0.3兆円)の影響を含めない。(注3)高齢者の医療費自己負担軽減措置等に係る経費の当初予算化(+0.4兆円)の影響を含めない。(注4)社会保障関係費の計数には、社会保障の充実等を含む。

(参考)最近の社会保障関係費の伸びについて

社会保障関係費

32.0兆円

平成28年度

制度改正による減(平成28年度)計:▲1700億円

・ 薬価改定等(▲1500億円)・ 協会けんぽ国庫補助の見直し(▲200億円)

社会保障関係費

32.5兆円

制度改正による減(平成29年度)計:▲1400億円

<主なもの>・オプジーボ薬価引き下げ (▲200億円)・高額療養費の見直し(▲220億円)・後期高齢者医療の保険料軽減特例の見直し(▲190億円)

・介護納付金の総報酬割の導入(▲440億円)・協会けんぽ国庫補助の見直し(▲320億円)

平成29年度

社会保障関係費

33.0兆円

制度改正による減(平成30年度)計:▲1300億円

・薬価制度の抜本改革、薬価改定等(▲1300億円)

平成30年度

厚労省作成資料

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医療・介護制度改革の視点

「高齢化」「支え手の減少」「高度化」の中で、財政と医療・介護保険制度の持続可能性を確保していくため、下記の視点で、制度の改革に取り組んでいく必要があり、早急に議論を前に進めるべき。

視点3.高齢化や人口減少の中でも持続可能な制度としていく(給付と負担のバランス)① 「年齢ではなく能力に応じた負担」

団塊の世代が後期高齢者となり始める2022年度までに、世代間の公平の観点も踏まえ、「後期高齢者の窓口負担の引上げ」などの改革を実施すべき。

② 「支え手減少下での医療費増加に対しても制度の持続可能性を担保」負担の先送りを解消していくとともに、支え手の負担能力を踏まえつつ、給付を見直していくことで、医療保険制

度を持続可能なものとする道筋をつけるべき。

視点1 制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲としていく(共助の対象は何か)① 「高度・高額な医療技術や医薬品への対応」

新たな医薬品・医療技術について、安全性・有効性に加えて経済性・費用対効果を踏まえて公的保険で対応する仕組みとしていくべき。

② 「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」少額の外来医療、OTC類似薬の処方など、「小さなリスク」については、従前のように手厚い保険給付の対象と

するのではなく、より自助で対応することとすべき。

視点2.必要な保険給付をできるだけ効率的に提供する(公定価格と提供体制)① 「公定価格の適正化・包括化」

診療報酬本体、薬価など、保険償還の対象となるサービスの価格については、国民負担を考慮して、できる限り効率的に提供するよう、診療報酬・薬価の適正化等を進めるべき。

② 「医療提供体制の改革」これまで以上に限られた財源とマンパワーの中で、必要なサービスを過不足なく効率的に提供していくため、医療

提供体制についての都道府県を中心とするコントロールの仕組みを整備・充実していくべき。

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今後の社会保障制度改革について

「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)」(抄)(平成30年6月15日閣議決定)

再生計画の改革工程表の全44項目を着実に推進する。(中略)高齢化・人口減少や医療の高度化を踏まえ、総合的かつ重

点的に取り組むべき政策を取りまとめ、期間内から工程化、制度改革を含め実行に移していく

<骨太2018において掲げられている改革項目の主な例(社会保障)>

(医療・介護提供体制の効率化とこれに向けた都道府県の取組の支援)

◆ 高額医療機器について、共同利用の一層の推進など効率的な配置を促進する方策を講じる。

◆ 高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬について、都道府県の判断に資する具体的な活用策の在り方を検討する。

(医薬品等に係る改革等)

◆ 「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」 に基づき、国民負担の軽減と医療の質の向上に取り組むとともに、医薬品産業を高い創薬力を持

つ産業構造に転換する。

(負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化、自助と共助の役割分担の再構築)

◆ 高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討する。

◆ 団塊世代が後期高齢者入りするまでに、世代間の公平性や制度の持続性確保の観点から、後期高齢者の窓口負担の在り方について検討する。

◆ 介護のケアプラン作成、多床室室料、介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する。

◆ 年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討する。

◆ 新規医薬品や医療技術の保険収載等に際して、費用対効果や財政影響などの経済性評価や保険外併用療養の活用などを検討する。

◆ 薬剤自己負担の引上げについて、市販品と医療用医薬品との間の価格のバランス、医薬品の適正使用の促進等の観点を踏まえつつ、対象範囲

を含め幅広い観点から、引き続き関係審議会において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる。

◆ 病院・診療所の機能分化・機能連携等を推進しつつ、かかりつけ機能の在り方を踏まえながら、かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつ

け薬剤師の普及を進めるとともに、外来受診時等の定額負担導入を検討する

◆ 医療費については、これまでも、その水準を診療報酬改定等によって決定するとともに、その負担について、随時、保険料・患者負担・公費

の見直し等を組み合わせて調整してきたところ。支え手の中核を担う勤労世代が減少しその負担能力が低下する中で、改革に関する国民的理

解を形成する観点から保険給付率(保険料・公費負担)と患者負担率のバランス等を定期的に見える化しつつ、診療報酬とともに保険料・公

費負担、患者負担について総合的な対応を検討する。

◆:新規項目、◆継続項目

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