「遺言」セミナー - med · 「遺言」セミナー ......

4
広島県医師会速報(第⚒⚓⚙⚗号) (⚑⚑)⚒⚐⚑⚙年(平成⚓⚑年)⚒月⚕日 昭和⚒⚖年⚘月⚒⚗日 第⚓種郵便物承認 と き:平成⚓⚐年⚑⚑月⚒⚙日㈭ 午後⚗時⚓⚐分 ところ:広島県医師会館 ⚓⚐⚑会議室    「遺言」セミナー 次世代へのスムーズな承継を目指して 広島県医師会常任理事 小笠原英敬 基礎編・応用編と開催した「持分なし医療法人への移行に係るセミナー」に引き続き、法 人の移行・継承と密接な関係にある遺言・相続の手続きについて、関心のある会員らを対象 に標記セミナーを開催した。以下、セミナーの概要を報告する。 開会挨拶 遺言についてどのようなイ メージをお持ちだろうか。世間 では遺言がなかったために、相 続をめぐり親族間での争いが起 こることも少なくないと聞く。 先生方の築き守ってこられた財 産を有効有意義に活用し、病 院、診療所の承継がスムーズに 行われ、地域医療が円滑に継続するためにも、 遺言とはどのようなものかを知ることは大事な ことである。本日のセミナーが皆さまにとって 実りあるものとなることを祈念する。 講演⚑ 遺言のススメ~相続、 遺産分割と遺言の基礎~ 相続に際して、特に遺族の負 担となるのは財産目録の作成、 財産配分の決定、相続税の申告 期限内納付である。相続人の負 担を軽減する対策としては、誰 が何をいくら取得するかという 遺産分割対策、生前における銀 行口座・証券口座などの集約と いった相続手続き対策、各種税制特例の効果的 な適用といった相続税軽減対策、相続税申告期 限内に現金で相続税を納付するための納税資金 対策の⚔つがある。 このうち遺産分割は、⚑⚐ヵ月の相続税申告期 限内に遺産分割協議が不調の際には、各種の税 額軽減制度が受けられないため税額的負担が増 える、納税に遺産が充てられないため納税資金 を現金で用意する必要があるなど、遺産分割に 関する争いが年々増加していることを踏まえ対 策が最も重要となる。今夏、改正民法が成立し (⚒⚐⚑⚙年以降に順次施行)、うち遺産分割に関し ては配偶者の居住権の創設、配偶者間居住用不 動産の贈与などにおいて遺産分割対象から除外 するなどのルールが準備され、配偶者の優遇・ 保護が図られる。しかし、二次相続での税負担 などが増加する可能性もあるため、遺産配分を 考える際はその点に留意したい。 なお、分割方法は、遺言がある際の指定分割、 遺言がない際の協議分割、遺言がなく遺産分割 協議がまとまらない際の審判分割の⚓つがある。 遺言とは、遺言者が死亡後の意思実現のため 法律で定められた方法・様式で作成されるもの である。遺言の効力として、本人の単独意思に 基づき財産処分が可能(ただし、一定の相続人 が最低限遺産相続できる権利である遺留分の侵 害の場合は、遺言の無効ではなく減殺請求権が 発生し、事後対応が生ずるため要配慮)、第三者 への財産配分が可能、いつでも変更取り消し可 能(最新物が優先)などが挙げられる。 青山 実平 野村信託銀行 株式会社 営業推進課 平松 恵一 広島県医師会 会 長

Upload: others

Post on 28-May-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 「遺言」セミナー - Med · 「遺言」セミナー ... 贈与について概説する(図1: ... 以下の資料は、ご参考のために株式会社野村資産承継研究所が独自に作成したものです。

広島県医師会速報(第 号)( ) 年(平成 年) 月 日 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認

と き:平成 年 月 日㈭ 午後 時 分ところ:広島県医師会館  会議室   

「遺言」セミナー次世代へのスムーズな承継を目指して

広島県医師会常任理事 小笠原英敬

 基礎編・応用編と開催した「持分なし医療法人への移行に係るセミナー」に引き続き、法人の移行・継承と密接な関係にある遺言・相続の手続きについて、関心のある会員らを対象に標記セミナーを開催した。以下、セミナーの概要を報告する。

開会挨拶 遺言についてどのようなイメージをお持ちだろうか。世間では遺言がなかったために、相続をめぐり親族間での争いが起こることも少なくないと聞く。先生方の築き守ってこられた財産を有効有意義に活用し、病院、診療所の承継がスムーズに

行われ、地域医療が円滑に継続するためにも、遺言とはどのようなものかを知ることは大事なことである。本日のセミナーが皆さまにとって実りあるものとなることを祈念する。

講演  遺言のススメ~相続、    遺産分割と遺言の基礎~ 

 相続に際して、特に遺族の負担となるのは財産目録の作成、財産配分の決定、相続税の申告期限内納付である。相続人の負担を軽減する対策としては、誰が何をいくら取得するかという遺産分割対策、生前における銀行口座・証券口座などの集約と

いった相続手続き対策、各種税制特例の効果的な適用といった相続税軽減対策、相続税申告期

限内に現金で相続税を納付するための納税資金対策の つがある。 このうち遺産分割は、 ヵ月の相続税申告期限内に遺産分割協議が不調の際には、各種の税額軽減制度が受けられないため税額的負担が増える、納税に遺産が充てられないため納税資金を現金で用意する必要があるなど、遺産分割に関する争いが年々増加していることを踏まえ対策が最も重要となる。今夏、改正民法が成立し( 年以降に順次施行)、うち遺産分割に関しては配偶者の居住権の創設、配偶者間居住用不動産の贈与などにおいて遺産分割対象から除外するなどのルールが準備され、配偶者の優遇・保護が図られる。しかし、二次相続での税負担などが増加する可能性もあるため、遺産配分を考える際はその点に留意したい。 なお、分割方法は、遺言がある際の指定分割、遺言がない際の協議分割、遺言がなく遺産分割協議がまとまらない際の審判分割の つがある。 遺言とは、遺言者が死亡後の意思実現のため法律で定められた方法・様式で作成されるものである。遺言の効力として、本人の単独意思に基づき財産処分が可能(ただし、一定の相続人が最低限遺産相続できる権利である遺留分の侵害の場合は、遺言の無効ではなく減殺請求権が発生し、事後対応が生ずるため要配慮)、第三者への財産配分が可能、いつでも変更取り消し可能(最新物が優先)などが挙げられる。

青山 実平野村信託銀行株式会社営業推進課

平松 恵一広島県医師会会 長

Page 2: 「遺言」セミナー - Med · 「遺言」セミナー ... 贈与について概説する(図1: ... 以下の資料は、ご参考のために株式会社野村資産承継研究所が独自に作成したものです。

昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 年(平成 年) 月 日( )広島県医師会速報(第 号)

 なお、医療法人の出資持分などの承継は、遺言作成が望ましく、事例としてもよく見られるケースである。 遺言作成には、自筆証書、秘密証書、公正証書の つの方法が認められている。自筆証書遺言は、全文を自筆で記述、特定可能・正確な日付記入、氏名記入、印鑑捺印などの要件があるが、前述の改正民法により今後、財産目録の自書不要、法務局による保管制度創設、保管制度を利用する場合には家庭裁判所での検認が不要となる。公正証書遺言は、遺言者の口述に基づき公証人が公正証書にて作成するものであり、法的実効性を重視するならばこちらを薦める。 銀行などが行っている遺言信託では公正証書遺言作成のサポート、遺言の執行といったサービスなどがあるので、関心がある方は参考にしてほしい。

講演  医師の資産(事業)承継の基礎 資産承継に際し、贈与・譲渡・相続すべての方法に税が付随する。相続税軽減対策では、い

かに相続を贈与に置き換え可能であるかが重要となる。以下、贈与について概説する(図1:贈与税の全体像)。 まず暦年課税制度について、特例・一般贈与による贈与税と相続税とを比較すると、一見、贈与税率のほうが高いが、贈与

であれば回数の分割が可能なため、特例贈与では , 万円/人、一般贈与では , 万円/人までは、相続税率(税率 想定)よりも低税率となる。また孫世代までの財産承継を想定するならば、隔世贈与(直接孫へ贈与)も税額的観点上、遺贈より有利である。教育資金の一括贈与特例や結婚・子育て資金の一括贈与特例といった非課税特例については、 年 月末日が適用期限であるため、要件を満たしている際は早期検討を推奨する注)。 次に相続時精算課税制度について、本制度は贈与時に一旦贈与税を支払い、相続時に他相続財産と対象贈与資産との合算額にて相続税額を計算し、最後に支払済贈与税額を控除する。こ

 以下の資料は、ご参考のために株式会社野村資産承継研究所が独自に作成したものです。本資料に関する事項についてお客様が意思決定を行う場合には、事前にお客様の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、株式会社野村資産承継研究所はそれらの情報を、独自の検証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料のいかなる部分も一切の権利は株式会社野村資産承継研究所に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。

成清 紘介野村資産承継研究所研究課長・公認会計士

(図1)

Page 3: 「遺言」セミナー - Med · 「遺言」セミナー ... 贈与について概説する(図1: ... 以下の資料は、ご参考のために株式会社野村資産承継研究所が独自に作成したものです。

広島県医師会速報(第 号)( ) 年(平成 年) 月 日 昭和 年 月 日 第 種郵便物承認

の利点は、資産の相続税課税価額を贈与時時価にて算定する点であり、制度適用対象者であり資産価額が確実に増加見込みならば有効活用すべき制度である(例えば持分あり法人を続ける予定の方など)。ただし時価下落リスクや、本制度は取り下げ不可であるため基礎控除が以後使用不可となる点など、注意も必要である(図:贈与税制度の比較)。  最後に現在検討されている個人の事業承継の税優遇について、現在、一部中小企業(医療機関は対象外)は無税にて下世代への自社株承継が可能であるが、このたび法人成りしていない個人事業者についても同等の改正の方向性が強まっている。これにより、例えば、個人が開設しているクリニックの土地などがこの税制の対象となる。なお、本制度は小規模宅地特例の代替措置であるとも見込まれており、特例使用予定者含め今後の情報(平成 年度税制改正大綱等)を注視していただきたい注)。

注) セミナー開催時点での情報であり、 月 日公表の平成 年度税制改正大綱において、教育資金の一括贈与制度、結婚・子育て資金の一括贈与制度については 年間の延長が、個人事業者の事業承継税制については医業従事者も対象の見込みにて創設が決定されている。 

質疑応答・遺産分割協議不調の際、相続税申告期限内に自己資金にて納税せねば延滞税がかかるとのことだが、分配が決まっていない状態でどう納税するのか。→特例不使用を前提に相続税額を計算し支払う、法定相続分による分割にて各々支払い後日調整するなどが考えられる。

・相続時、遺言にある相続人が死亡している場合、相続人が得る予定であった資産はどうなるのか。→遺産分割協議となる。防止方策として予備的遺言の重ね掛けや、浮いた際の配分方法記載などがある。

・遺言作成において、今後は自筆証書遺言、公正証書遺言のどちらを薦めるか。→保管制度や検認不要の影響により自筆証書遺言が扱いやすくなるとの意見もあれば、財産目録の自書不要により疑義が残るため公正証書遺言のほうが良いとの意見もある。

(図 )

Page 4: 「遺言」セミナー - Med · 「遺言」セミナー ... 贈与について概説する(図1: ... 以下の資料は、ご参考のために株式会社野村資産承継研究所が独自に作成したものです。

昭和 年 月 日 第 種郵便物承認 年(平成 年) 月 日( )広島県医師会速報(第 号)

・小規模宅地制度とはどのような制度か、また相続後いつから売却などが可能となるか。→要件を満たしている際、土地の相続税評価額を 割減する特例である。納税期限までの居住・所持が必要となるが、それ以後は売却などが可能となる。

・どこに委託すれば後にスムーズに相続可能か。→第三者を立てることで公平な遺産分割が可能となり、銀行紹介の税理士への依頼により遺言に関して完結できるため信託銀行などへの依頼も一法である。顧問税理士へ依頼の際は、遺言や遺産分割に関する経験有無や得手不得手の確認をした方が良い。遺言専門の税理士への委託もまた一法である。

担当理事コメント 遺産相続に関して、実に 件に 件が裁判に持ち込まれているという事実は驚きであった。今回のセミナーでは、相続人の負担軽減対策について比較的平易な説明があったが、十分な理解には時間と各個人に応じたきめ細かな説明が必要であると感じた。また、資産承継に際しては、贈与・譲渡・相続すべての方法に税が付随するため、相続税軽減対策では、いかに相続を贈与に置き換え可能であるかが重要となるとのことであった。会員の先生方が苦労して築いてこられた資産・財産が損なわれることなくできるだけスムーズに承継が行われ、地域医療が切れ目なく継続されるよう、今後も同様のセミナーなどを開催して理解を深める機会を設けていきたい。

e−広報室に下記を追加いたしました。

 通達文書●介護予防・日常生活支援総合事業における「国が定める単価」につい て●東日本大震災に伴う保険診療の特例措置に関する利用状況等の資料提出依頼について●平成 年熊本地震に伴う保険診療の特例措置に関する利用状況等の資料提出依頼について●使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について●ベンダムスチン塩酸塩製剤の保険請求上の取扱いについて●妊婦加算の取扱いについて●日本医師会「医療機関における検体検査業務の精度確保に向けた手引き」のご案内について●「消費税率の引き上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」の広報・周知等へのご協力のお願い(協力依頼)●医師の労働時間短縮に向けた取組について●検査料の点数の取扱いについて●医療機器の保険適用等について●ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤の医薬品医療機器法上の用法及び用量の一部変更について●ヘムライブラ皮下注 mg、同皮下注 mg、同皮下注 mg、同皮下注 mg及び同皮下注

mgの医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正について●抗PD‐抗体抗悪性腫瘍剤(キイトルーダ点滴静注)及び抗PD‐L抗体抗悪性腫瘍剤(テセントリク点滴静注)に係る最適使用推進ガイドラインの改訂等に伴う留意事項の一部改正について●平成 年度以降の肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る。)の定期接種の対応について●競技者に対する安易な鉄剤注射に関する注意喚起について●平成 年度税制改正について●はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について●高濃度ポリ塩化ビフェニル使用安定器の早期処理の徹底に係る周知依頼

 ビデオライブラリ●第 回広島医学会総会

新着のお知ら新着のお知らせせ新着のお知ら新着のお知らせせ