「賞金が当たった」という詐欺的なdmに注意!2012/03/15  · 3 2....

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報道発表資料 平成 24 年 3 月 15 日 独立行政法人国民生活センター 「賞金が当たった」という詐欺的なDMに注意! -全国の消費生活センターに寄せられたDMの分析をふまえて- 海外の宝くじやロトなどで高額賞金が当たったかのようなダイレクトメール(以下、DM)を海 外から送付し、消費者に申込金などを支払わせる手口について、近年、送られてくるDMの内容 に変化がみられる。最近では、従来あった海外宝くじやロトが当たったというDMが届くのでは なく、「賞金が当たった」「賞金当選のための資格を獲得」などという出所の分からない賞金を受 け取るために申込金などの名目でお金を支払わせるものが多い (注 1) 。DMを送ってくる団体の住 所や連絡先ははっきりせず、抽選などがいつどこで行われるかの記述もなく、極めて詐欺的な手 口である。 従来の「海外宝くじ」と合わせて、海外から届く「賞金が当たった」というDMに関する相談 を集計したところ (注 2) 、消費生活センターへの相談件数は近年減少傾向にあったが、2011 年度は 前年同期と比べて件数が 2 倍以上に増加していた。 海外宝くじやロトも、「賞金が当たった」というDMも、申し込んだとしても額面通りの賞金を 受け取ることはできず、支払った申込金などの返金を求めても業者と連絡がとれないことが多い。 70 歳以上の高齢者がDMを受け取ったという相談が多く、既払金額が高額になる例もみられる。 このようなトラブルの未然防止、拡大防止のため、消費者に注意を呼びかける。 1. PIO-NET (注 3) にみる相談の概要 (1)年度別相談件数 全国の消費生活センターに寄せられた、海外宝くじや海外からの「賞金が当たる」というDMに 関する相談は、2007 年度以降の 5 年間では、2008 年度の 7,021 件をピークに減少傾向にあった。 しかし、2011 年度(2012 年 2 月末日までに登録された相談)は 8,306 件と、前年同期の 3,765 件と 比べて約 2 倍に増加した(図 1)。 (注1) 2004 年度と 2011 年度のDMの比較は 9 頁の参考資料1を参照。 (注2) DMの内容の変化を受けて、これまでの公表で集計してきた海外からの「宝くじ」に加えて、「宝くじではな いが賞金がもらえるという手紙や葉書など」に関する相談のうち、海外から送付されたことが明らかである相談 の件数を集計した。 (注3) PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)とは、国民生活センターと全国の消 費生活センターをオンラインネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのこと。 データは 2012 年 2 月末日までの登録分。

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  • 報道発表資料

    平成 24 年 3 月 15 日

    独立行政法人国民生活センター

    「賞金が当たった」という詐欺的なDMに注意!

    -全国の消費生活センターに寄せられたDMの分析をふまえて-

    海外の宝くじやロトなどで高額賞金が当たったかのようなダイレクトメール(以下、DM)を海

    外から送付し、消費者に申込金などを支払わせる手口について、近年、送られてくるDMの内容

    に変化がみられる。最近では、従来あった海外宝くじやロトが当たったというDMが届くのでは

    なく、「賞金が当たった」「賞金当選のための資格を獲得」などという出所の分からない賞金を受

    け取るために申込金などの名目でお金を支払わせるものが多い(注 1)。DMを送ってくる団体の住

    所や連絡先ははっきりせず、抽選などがいつどこで行われるかの記述もなく、極めて詐欺的な手

    口である。

    従来の「海外宝くじ」と合わせて、海外から届く「賞金が当たった」というDMに関する相談

    を集計したところ(注 2)、消費生活センターへの相談件数は近年減少傾向にあったが、2011 年度は

    前年同期と比べて件数が 2倍以上に増加していた。

    海外宝くじやロトも、「賞金が当たった」というDMも、申し込んだとしても額面通りの賞金を

    受け取ることはできず、支払った申込金などの返金を求めても業者と連絡がとれないことが多い。

    70 歳以上の高齢者がDMを受け取ったという相談が多く、既払金額が高額になる例もみられる。

    このようなトラブルの未然防止、拡大防止のため、消費者に注意を呼びかける。

    1. PIO-NET(注 3)にみる相談の概要

    (1)年度別相談件数

    全国の消費生活センターに寄せられた、海外宝くじや海外からの「賞金が当たる」というDMに

    関する相談は、2007 年度以降の 5 年間では、2008 年度の 7,021 件をピークに減少傾向にあった。

    しかし、2011 年度(2012 年 2 月末日までに登録された相談)は 8,306 件と、前年同期の 3,765 件と

    比べて約 2倍に増加した(図 1)。

    (注1) 2004 年度と 2011 年度のDMの比較は 9頁の参考資料1を参照。 (注2) DMの内容の変化を受けて、これまでの公表で集計してきた海外からの「宝くじ」に加えて、「宝くじではな

    いが賞金がもらえるという手紙や葉書など」に関する相談のうち、海外から送付されたことが明らかである相談

    の件数を集計した。 (注3) PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)とは、国民生活センターと全国の消

    費生活センターをオンラインネットワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積しているデータベースのこと。

    データは 2012 年 2 月末日までの登録分。

  • 2

    8,306

    5,237

    6,3627,021

    5,203

    3,765

    0

    1,000

    2,000

    3,000

    4,000

    5,000

    6,000

    7,000

    8,000

    9,000

    2007 2008 2009 2010 2011

    (年度)

    (件)

    (2)契約者の属性(以下、不明・無回答は除く)

    2011 年度の相談における、契約者の属性を分析した。

    1)年代・職業・性別

    年代別では、70 歳代が 34.1%(2,545 件)と最も多く、

    60歳代が25.2%(1,878件)、80歳以上が16.4%(1,224件)

    と続く。70 歳以上の契約者が全体の半数以上、60 歳以

    上の契約者が全体の 75%以上を占めており、高齢の契約

    者の割合が極めて高い(図 2)。

    職業別では、無職が 52.6%(3,876 件)と最も多く、続

    いて家事従業者が 26.1%(1,928 件)、給与生活者が

    17.2%(1,268 件)の順であった。これは契約者の年代を

    反映した結果といえる。

    性別は、男性が 48.8%(3,972 件)、女性が 51.1%(4,163 件)であり、男女比にはほとんど差がな

    い。

    2)相談者との同一性

    相談者と契約者が同一であった相談は 70.7%(5,808 件)、家族やヘルパーなど、相談者と契約者

    が異なる相談は 29.3% (2,405 件)である。一方、同じ期間に寄せられた消費生活相談全体と比較

    すると、相談全体では相談者と契約者が同一の相談は 79.1%、相談者と契約者が異なる相談は

    20.9%であり、海外宝くじや賞金に関する相談では、相談全体と比べて契約者と別の人から寄せら

    れる相談の割合が 1割近く高くなっていることが分かる。

    (3)既払金額

    2011 年度の相談 8,306 件のうち、消費者が既に代金を支払ったことが確認できる相談は 264 件

    (3.2%)で、そのうち半数以上は既払金額が 1 万円未満の相談であった。しかし、小額を次々と何

    度も支払った結果、合計が 1,000 万円を超える例もみられ、なかには「5 年間、毎週送られてく

    る海外宝くじを申し込み続け、総額約 2,000 万円を使ってしまった」という相談もあった。

    【図 1】 年度別相談件数

    (注)2012 年 2 月末日現在

    【図 2】契約者の年齢(2011 年度)

    (注)2012 年 2 月末日現在

    60歳代25.2%

    70歳代34.1%

    80歳以上16.4%

    50歳代10.2%

    30歳未満 2.1%30歳代 4.7%

    40歳代 7.2%

  • 3

    2. 主な手口と相談事例

    (1)典型的な手口

    消費者に「賞金が確定した」などと書かれたDMが送られてくる。名目は「宝くじ」「賞金」な

    どDMにより異なるが、いずれの場合も実際には必ずしも賞金を受け取れるわけではないにも関

    わらず、いかにも賞金を受け取れるような言い回しで消費者をその気にさせる。

    1)宝くじやロトの場合

    DMは宝くじやロトに既に当選したような文章だが、注意深く読むと宝くじやロトに参加す

    る権利が当たったという内容である。消費者が宝くじやロトに参加するには、「参加費用」「申

    込金」などとして代金を支払う必要がある。

    2)賞金の場合

    DMは賞金が当たったような書き方がされており、賞金を受け取るためには「エントリー」、

    「登録」、「獲得のための申請」などをする必要がある。これから何らかの抽選が行われること

    を示唆しているようなものが多いが、いつ、どこから、どのように賞金がもらえるのか、定か

    なことはDMを読んだだけでは分からない。また、なかには注書きとして小さな字で「スポン

    サーにより支払われる賞金」「『コンテスト・懸賞』への申し込みを代行する」と書かれている

    ものもある。賞金を受け取るための手続きを進めるには「エントリー料金」「手数料」などの代

    金を支払う必要がある。

    宝くじ、ロト、賞金のどの場合でも、DMには返信用紙と、返信先の住所が印刷された返信用

    封筒が同封されており、賞金獲得に向けて申し込むためには、返信用紙に個人情報などの必要事

    項を記入し返信するようにと書かれている。返信用紙には署名欄などだけでなく、消費者が支払

    う申込金などの支払方法を選択する欄があり、消費者が支払い方法をクレジットカード払い、定

    額小為替、現金の郵送の中から選ぶ形式である。クレジットカードで支払う場合は返信用紙にク

    レジットカード情報を書いて申し込む。1回あたりの申込金額は、大抵の場合 1,000 円~1万円台

    と小額である。

    申し込みをしても、その後業者からは連絡がなく、賞金を受け取れるケースはほとんどない。

    また、受け取れたとしても、額面通りの金額ではなく、数千円程度である。

    (2)主な相談事例

    【事例1】当選していると思い込ませるDM

    高齢の母親のところに中国から不審なDMが送られてきた。数千円の定額小為替を海外に送れ

    ば、「大金の獲得可能賞金がある」と書いてあり、母は当選したと思って、定額小為替を購入し、

    用紙に個人情報を記入して送ったようだ。その後勧誘のDMが頻繁にくるようになった。今後の

    対処法を知りたい。

    (相談受付年月:2012 年 2 月、契約者:70 歳代、女性、家事従業者、滋賀県)

  • 4

    【事例2】申し込んだが当たらず、頻繁にDMが送られてくる

    申し込んだ覚えがないのに海外宝くじのDMが複数の国から頻繁に届く。当選金が受け取れる

    ならばと思い複数業者に数千円を定額小為替で送金した。今までに当選金を受け取ったことはな

    い。それどころか同種の海外宝くじのDMが頻繁に届き困っている。止める方法を教えてほしい。

    (相談受付年月:2011 年 10 月、契約者:60 歳代、女性、給与生活者、山梨県)

    【事例3】大量に届いたDM、申し込みをしたところ、クレジットカードの引き落としが止まら

    ない

    海外宝くじの参加案内や当選通知が頻繁に来て困っている。なるべく見ないようにしていたが、

    高額な賞金に惹ひ

    かれ、つい中をじっくり読んでしまい、参加費用が2,000円と安かったのでクレジ

    ットカード番号を記入してファックスで送信した。その後の連絡は何もないが、1回だけだと思っ

    ていたのに毎月同額が決済され、困っている。既に5回決済され、1万円を支払った。今後どうす

    ればよいか。

    (相談受付年月:2011 年 9 月、契約者:80 歳代、男性、無職、福岡県)

    【事例4】格安商品販売で申し込みを促す賞金当選通知

    海外の会社から「1,000 万円の懸賞金当選者となったので速やかに登録確認申請を行うように」

    といった内容のDMが届いた。この懸賞は高級ジュエリーの新ラインナップの発表に合わせキャ

    ンペーン企画の一環として企画されており、1,000 万円の獲得の他に、1カラットダイヤモンド

    ネックレスが 1,000 円で購入できると書かれている。DMには宝石鑑定士の証明書と一生涯の保

    証まで付いており、オーストリアの住所が印字された返信封筒が同封されている。話がうますぎ

    る気もするが、信用できるか。

    (相談受付年月:2011 年 7 月、契約者:70 歳代、女性、家事従業者、岡山県)

    【事例5】霊能力者から「海外宝くじに当たる」と勧められて申し込んだ

    海外の霊能力者から「今年は貴方あ な た

    にとって 120 年に一度の幸運の年だ。香港の宝くじを買うよ

    うに」というDMが来た。その後、買った覚えがないのに香港から「高額な宝くじに当たった」

    というDMが来るようになったので、何度か賞金を受け取るための手続きをした。家族に「騙だま

    れている」と言われてそれ以後振り込みはやめさせられてしまったが、その後、他の国からも早

    く受け取るようにとDMが届く。

    (相談受付年月:2011 年 11 月、契約者:80 歳代、女性、無職、岡山県)

  • 5

    3. 送られてきたDMの分析結果

    国民生活センターでは、全国の消費生活センターから、海外宝くじや「賞金が当たる」という

    DMの現物を 1,583 通収集した。これらを分析すると、以下のような結果が得られた。

    (1)収集したDM全体の分析結果(注 4)

    全国の消費生活センターから収集した 1,583 通のDMを分析したところ、中国から送られてき

    たものが 536 通(33.9%)と圧倒的に多く、次いで、アメリカ(164 通、10.4%)、オーストラリ

    ア(134 通、8.5%)が多かった(注 5)。

    (2)DM100 通の分析結果(表参照)(注 6)

    また、DMの内容を詳細に分析するために、提供された 1,583 通のうち、100 通を無作為抽出

    して以下のとおり集計を行った。

    1)送られてきたDMの種類

    海外宝くじやロトに関するDMは 22 通である。一方、懸賞などで「お金が当たる」という内容

    のDMは 78 通である。

    2)DMに記載のある連絡先

    DMの記載を見ると、賞金をくれる団体についての情報は非常に少ない。団体の住所ははっき

    りせず、100 通のうち 54 通は送られてきた封筒と、返信用封筒に別の住所が書かれていた。また、

    記載されている住所が海外の私書箱のみで、団体の住所が明らかにされていないDMも 33 通あっ

    た。

    封筒などに書かれた住所以外に連絡先が書かれていないDMも多く、メールアドレス・ファッ

    クス・電話番号のいずれの記載もないDMが 85 通であった。

    3)「賞金が当たる」というDMのうち、スポンサー名や懸賞名などの記載

    海外宝くじやロト以外で賞金をくれるというDMでは「スポンサーにより支払われる賞金」「コ

    ンテスト・懸賞」(以下、懸賞)などにより消費者にお金が支払われることになっているが、スポ

    ンサー名や懸賞の名称が明記されているものは少ない。「賞金が当たる」という 78 通のDMの中

    で、上記のうちいずれかの記載があるものは 8 通で、70 通には具体的な名称の記載はなかった。

    また、スポンサー名や懸賞の名称だけでなく、抽選などがいつどこで行われるかも書かれてい

    ない。78 通の中で懸賞が行われる期間・場所、どちらかについて記載があったのは 6 通のみで、

    72 通には期間・場所について記載がなかった。

    (注4) 調査対象:全国(1,017 カ所)の消費生活センターへ「海外宝くじ」のDMの提供を依頼した 回収数:1,583 通(34 都道府県、63 の消費生活センターより)

    収集時期:2011 年 11 月~12 月 (注5) 封筒に記載された住所、切手、消印に書かれた国が異なるものも多数存在したが、そのような場合は消印の

    記載を優先して集計した。また、消印がない場合は切手の記載を優先して集計した。 (注6) 分析対象:100 件(全 1,583 通から無作為抽出)

  • 6

    【表】DM100 通の集計結果

    項目 選択肢 件数 宝くじ・ロト それ以外

    ①海外宝くじ・ロト 22 契約内容

    ②それ以外 78

    ①記載あり 23 15 8宝くじ・ロト名/懸賞

    名/スポンサー名 ②記載なし 77 7 70

    ①私書箱のみ 33 6 27団体の住所記載

    ②私書箱以外の記載もあり 67 16 51

    ①なし 85 12 73

    団体の連絡先 ②電話番号・ファックス番号・メールアド

    レスのいずれかの記載あり 15 10 5

    ①なし 80 8 72

    ②日程・期間のみ 13 7 6

    ③場所のみ 1 1 0

    懸賞・抽選の日程・

    期間・場所

    ④両方記載あり 6 6 0

    ①住所が異なる 54 7 47

    ②住所が同じ 15 9 6

    ③一方にしか記載なし 30 6 24

    送られてきた封筒と

    返信用封筒の住所

    ④不明 1 0 1

    4.問題点

    (1)懸賞などが実在しているかどうかが疑わしい詐欺的な手口である

    DMには詳しい説明がなく、賞金を受け取ることができるのか極めて疑わしい。資金の分配を

    決定する日程・場所・方法について記載がないばかりでなく、本当にそのような業務を行ってい

    る団体があるのかも定かではない。

    仮にDMに書かれた宝くじや賞金、申込先の業者などが架空であれば、詐欺にあたる可能性も

    高いと考えられる。

    (2)賞金に当選したような文句で消費者に申込金などを支払わせるDM

    どのDMにも共通して「賞金申請資格保持者として認定されました」「賞金獲得エントリー資格

    が 100%保証されています」という見出しや「賞金○○○○万円!」と賞金の額が書かれていて、

    一見高額の賞金に当選したかのようである。DMの文章は、通常の日本語からすると不自然な言

    葉づかいが多く、契約関係を理解することが難しいが、詳しく読むと宝くじ又は何らかの抽選に

    申し込む権利が与えられただけで、申し込んだからといって必ず賞金を受け取れるわけではない

    という類いのDMが多い。

  • 7

    実際は申し込んだ後に賞金がもらえるかどうかが抽選などにより決まるにも関わらず、消費者

    に既に賞金が当たったかのような誤解を与える記載である。

    (3)一度手続きするとDMが大量に送られてくる

    一度申し込みをした消費者には、1日に 10 通以上の同じようなDMが送られてくるケースもあ

    る。

    大量のDMは消費者にとって精神的な負担になるだけではなく、賞金の支払いが約束されてい

    ると信じて、送られてくるDMに繰り返し申し込みをしてしまうと、結果的に、高額な金額をつ

    ぎ込んでしまうことになる。

    (4)申し込むとさらなる個人情報流出の可能性

    一度申し込んだ消費者に対して、別の業者から多数の海外宝くじや「賞金が当たった」という

    DMが次から次へと送付されてくるケースがある。申し込みの際に業者に個人情報を伝えること

    で、他の業者にも自らの個人情報を知らせることになりかねない。

    (5)業者と連絡がとれず、返金されない

    海外宝くじや「賞金が当たった」というDMには、海外の住所以外に、電話番号やメールアド

    レスなどの記載がないことが多いため、消費者は業者との連絡手段が分からない場合が多い。お

    金を支払った後に返金を望んでも、業者と連絡がつかず、返金交渉をすること自体が難しい。

    また、クレジットカードを利用した決済では、一度だけ申し込むつもりでクレジットカード番

    号を伝え申し込んだところ、毎月引き落としになっていたというケースもある。さらに、クレジ

    ットカードの利用明細を確認しても、業者の所在地だと思われる国とは別の国からの決済になっ

    ているケースもみられ、どの申し込みに対する料金請求なのかを特定することが困難である。

    5.消費者へのアドバイス

    (1)決して申し込まないこと!消費者が違法性を問われる可能性も

    申し込んでもいないのに「くじ」や「懸賞」に当選するということはありえない。また、実際

    に業者が海外で宝くじの購入や懸賞への申し込みを行っているかどうかも疑わしい。申し込んで

    もいないのに「当選した」などという甘い話には決して乗らないこと。

    また、日本国内で海外宝くじを授受すると、消費者自身も違法性を問われる可能性もあるため

    (「富くじ罪」(注 7)に違反するという見解もあるため)、絶対に申し込まないこと。

    (2)クレジットカード番号や個人情報を業者に教えないこと

    一度申し込んだ消費者に対して、別の業者から多数の海外宝くじや「賞金が当たった」という

    (注7) (刑法:富くじ発売等) 第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。 2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。

  • 8

    DMが次から次へと送付されてくるケースがある。自ら個人情報を流出することになりかねず、

    また、一度だけ申し込むつもりでクレジットカード番号を教えたところ、毎月「申込金」などの

    名目で料金を引き落とされ続けたというケースもある。さらに、海外の業者が関連するクレジッ

    トのトラブルは特に解決が難しく、被害の回復も困難である。安易にクレジットカード番号や電

    話番号などを業者に知らせないこと。

    (3)送られてきたDMは処分してもかまわない

    一度申し込むと、大量にDMが送付されてくることがある。このように送付されてきたDMに

    ついて、受け取りたくないときには、「受取拒否」をすることもできる(注 8)。ただし、「受取拒否」

    をしても次からDMが届かなくなるとは限らないので、「受取拒否」の手続きをする時間がない場

    合や、DMを受け取ってしまった場合については処分してもかまわない。

    (4)トラブルにあったらすぐに消費生活センターに相談する

    一度申し込みをしてしまうと返金は難しいことが多いが、業者やクレジットカード会社との交

    渉の余地がある場合も存在する。トラブルにあったら、まずは最寄りの消費生活センターに相談

    すること。 また、高齢者をねらった悪質な勧誘が目立ち、本人以外からの相談も多いため、日ごろから家

    族や周囲の人も気をつけること。特に、定額小為替の受領証書が見つかったり、クレジットカー

    ドの利用明細に不審な請求が大量に記載されていたりする際は注意が必要である。

    6.情報提供先

    消費者庁 消費者政策課

    消費者委員会 事務局

    警察庁 刑事局 捜査第二課

    総務省 情報流通行政局 郵政行政部 郵便課

    外務省 経済局 政策課

    社会福祉法人 全国社会福祉協議会

    社団法人 日本クレジット協会

    郵便事業株式会社

    (注8) 郵便物の開封前であれば、郵便物などに「受取拒否」の文字、及び、拒否をした方の印や署名を記載したメ

    モや付せんを貼り付け、配達担当者に渡すか、郵便窓口に持参するか、郵便ポストに投函すると差出人へ返還し

    てくれる。

  • 9

    <参考資料1>

    2004 年度に入手したDMとの比較

    2004 年度に公表(注 9)した際に入手したDMと、今回の収集で寄せられたDMの違いについて以

    下、簡単に比較した(10~12 頁の参考資料 2参照)。

    (1)さらに不自然さが増した!当たったのか、当たってないのか分からない

    2004 年度のDMでは、海外宝くじ、○○ロトという表現のDMが多く、宝くじやロトの詳細も

    書かれており、消費者により信憑性しんぴょうせい

    が高いような印象を与えた。現在のDMは、海外宝くじやロ

    トかどうかもはっきりしない「賞金」や「懸賞」に申し込むものが多く、「賞金」や「懸賞」の詳

    細に関する記載がみられるものは非常に少ない。

    (2)お金を振り込ませるための様々な手口がみられるようになった

    現在では、くじや抽選方法に関する具体的な情報が減った代わりに、高価そうな宝石をあしら

    ったアクセサリーなどを同時に格安で販売したり、霊能力者からスピリチュアルなパワーを授け

    るというグッズや手紙を同封したりして、応募を促す手口もみられる。

    (3)申込期限の強調、急せ

    かすような表現は 2004 年度と共通している

    「10 日以内に申し込まないと資格が永久に消滅する」「最終通知」「チャンスを見逃すつもりで

    すか?」と申し込みの期限を強調し、消費者を焦らせるような記載は 2004 年度と現在のDMに共

    通している。

    (4)支払方法にも 2004 年度との大きな変化はみられない

    海外宝くじや「賞金が当たった」というDMに対する支払い方法は、クレジットカード、定額

    小為替、現金のいずれかを選ばせるDMが多い。この点も、2004 年度のDMと現在のDMに共通

    している。

    (注9) 「ダイレクトメールを使った『海外宝くじ』に注意!」(2004 年 2 月 5日)

    http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20040205_1.html

  • 10

    <参考資料2>

    A.2004 年度に送付されたDM一例

  • 11

    B.2011 年度に送付されたDM一例

    (1)賞金が当たったというDM

  • 12

    (2)霊能力者からのDM

    「賞金が当たった」という詐欺的なDMに注意! - 全国の消費生活センターに寄せられたDMの分析をふまえて -