地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状...

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地域の課題と地域自治の現状 1

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Page 1: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

地域の課題と地域自治の現状

第 1 章

Page 2: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

第 章 地域の課題と地域自治の現状

1.地域を取り巻く環境

(1)人口減少と少子高齢化

年 月現在の我が国の総人口は 億 万人で、 年間で 万人の減少と

なりました。内訳を 年前と比較すると、 歳未満の生産年齢人口が %から %

に減り、 歳以上の老年人口が %から %となりました。

人口減少と少子高齢化社会の進展は、地域社会の担い手不足や高齢化、役割の固定化

を招き、地域コミュニティの機能低下の大きな要因になります。そして、高齢者福祉を

はじめ、地域の医療・福祉、教育・学習などの地域コミュニティにおいて対応が求めら

れる地域課題を、より深刻化させる要因になるでしょう。

[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の川北秀人氏(本書のアドバイザ

ー)は、著作「ソシオ・マネジメント」第 号「小規模多機能自治-総働で人「交」密

度を高める」( 年 月刊行 以下、ソシオ・マネジメントと称す)の中で「人口減少

と高齢化は特別な地域の問題でなく、 大都市圏の住宅密集地を含む、日本中すべてに共

通する問題である。しかも、日本海側などの「人口減少+多老化+超高齢化」先進地域

では、戦後 年間かけてゆっくりと進んできたことが、 大都市圏ではこれから加速度

的に進む。これまでの 年と今後の 年とは決定的に違うことをまず理解しなければ

ならない。」と述べています。

注)川北秀人氏の略歴

年大阪生まれ、京都大学卒業後、(株)リクルートに入社、 年に 設立、 や社

会責任志向の企業のマネジメント、市民・事業者・行政などが総力をあげて地域を守り抜く協

働・総働の基盤づくり、企業のみならず、 や自治体における社会的責任への取組を推進し

ている。毎年約 の自治体で、職員や市民との合同研修を担当。島根県雲南市の地域運営組織

を立ち上げ当初から支援し、「雲南ゼミ」設立を呼び掛け、全国の自治体が住民自治のあり方を

学んでいる。

① 歳以上が急増し、生産年齢人口は減少が続く「高齢化第 幕」

川北氏によれば、「 歳以上人口は、介護保険制度が施行された 年時点で

万人、総人口比 %に過ぎなかったのですが、国立社会保障・人口問題研究所の予測

によると、 年には 万人とわずか 年間で 倍を超えました。同年 月に厚生

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 3: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

第 章 地域の課題と地域自治の現状

1.地域を取り巻く環境

(1)人口減少と少子高齢化

年 月現在の我が国の総人口は 億 万人で、 年間で 万人の減少と

なりました。内訳を 年前と比較すると、 歳未満の生産年齢人口が %から %

に減り、 歳以上の老年人口が %から %となりました。

人口減少と少子高齢化社会の進展は、地域社会の担い手不足や高齢化、役割の固定化

を招き、地域コミュニティの機能低下の大きな要因になります。そして、高齢者福祉を

はじめ、地域の医療・福祉、教育・学習などの地域コミュニティにおいて対応が求めら

れる地域課題を、より深刻化させる要因になるでしょう。

[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の川北秀人氏(本書のアドバイザ

ー)は、著作「ソシオ・マネジメント」第 号「小規模多機能自治-総働で人「交」密

度を高める」( 年 月刊行 以下、ソシオ・マネジメントと称す)の中で「人口減少

と高齢化は特別な地域の問題でなく、 大都市圏の住宅密集地を含む、日本中すべてに共

通する問題である。しかも、日本海側などの「人口減少+多老化+超高齢化」先進地域

では、戦後 年間かけてゆっくりと進んできたことが、 大都市圏ではこれから加速度

的に進む。これまでの 年と今後の 年とは決定的に違うことをまず理解しなければ

ならない。」と述べています。

注)川北秀人氏の略歴

年大阪生まれ、京都大学卒業後、(株)リクルートに入社、 年に 設立、 や社

会責任志向の企業のマネジメント、市民・事業者・行政などが総力をあげて地域を守り抜く協

働・総働の基盤づくり、企業のみならず、 や自治体における社会的責任への取組を推進し

ている。毎年約 の自治体で、職員や市民との合同研修を担当。島根県雲南市の地域運営組織

を立ち上げ当初から支援し、「雲南ゼミ」設立を呼び掛け、全国の自治体が住民自治のあり方を

学んでいる。

① 歳以上が急増し、生産年齢人口は減少が続く「高齢化第 幕」

川北氏によれば、「 歳以上人口は、介護保険制度が施行された 年時点で

万人、総人口比 %に過ぎなかったのですが、国立社会保障・人口問題研究所の予測

によると、 年には 万人とわずか 年間で 倍を超えました。同年 月に厚生

労働省が発表した「介護保険事業状況報告」に、介護給付費が 年度から 年

度までわずか 年間で、 倍に増えたと報告したこととも符合します。しかも、

歳以上の一人を支える生産年齢人口( 歳から 歳)は 人と、 年の

人から半減してしまいました。すでに介護の現場から、担い手の深刻な不足が指摘さ

れていることは改めて述べるまでもありません。」そして「今後の 歳以上人口は加

速度的に増え、 年には 万人、 年には団塊の世代がすべて 歳以上にな

ることから 万人を超えます。このとき人口比で %、つまり日本人の 人に

一人は 歳以上になるのです。それを支える生産年齢人口は、 歳以上一人に対して

わずか 人と、 年に比べて半分以下になります。そんな 年を迎えるまで、

あと 年足らずしかないのです。」と述べています。

② 高齢者世帯も、後期高齢者の独居世帯も増え続ける

また「ソシオ・マネジメント」では続けて、「高齢者の暮らしは、介護保険事業者の

サービスを受けるだけで支えられるわけではありません。介護保険サービスを受けず

に暮らしている高齢者が圧倒的に多く、受けている方にとっても、そのサービスを受

けないで暮らす時間の方が圧倒的に長いのです。 歳以上の高齢者夫婦または単身の

世帯の全世帯に占める割合は、 年時点で %、それが 年から 年にかけ

て %を超え、 年には %と 世帯に 世帯になります。買い物や通院など

の移動の困難や、孤独死のリスクも抱える後期高齢者の単身世帯も、 年の 万

世帯から 年には 万世帯へと倍増し、男性 万世帯、女性 万世帯と女性

が男性の 倍以上に達しています。しかも公共交通がすでに無くなりつつある地域で

は、買い物や通院は自動車の運転が必要になりますが、女性の後期高齢者の運転免許

保有率は、男性の約 割に対して 割未満という現状にあります。」と述べています。

③ 過疎地域の 年遅れで都会の高齢化・少子化が進む

図表 は、 年国勢調査における各都道府県と政令指定都市の 歳未満同居

世帯比率(いわば子どもがいる世帯)と後期高齢者比率をプロットした表です。表中

の赤線グラフは 年から 年の全国平均の推移を表しています。川北氏は、「全

国平均は緩やかな右肩下がりになっています。 歳未満同居世帯比率が約 %と一番

高い沖縄県は 年の全国平均と同水準ですが、高知県は 年時点の全国平均予

測と同水準にとなります。このことから、沖縄から高知までの差は、全国平均が動く

スピードで考えれば、わずか 年の差しかないことがわかります。一方、子どものい

る世帯の比率の低さは、東京都が約 %、名古屋市が約 %と日本海側をはじめ人口

流出や高齢化の先進地よりも、東海道・山陽新幹線が走る大都市圏の方が深刻です。」

と述べています。

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Page 4: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

【図表 】都道府県および政令指定都市の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と後期高齢

者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)他

同じく、岐阜県内市町村について 歳未満同居世帯比率と高齢者比率を図表 でプ

ロットしてみると、 年から 年の間に、 歳未満同居世帯比率が下方にシフトし、

高齢者比率が右方にシフトし、少子高齢化が進んでいる傾向を読み取ることができます。

【図表 】岐阜県内市町村の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と高齢者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)

全国平均の推移

沖縄県

滋賀県岐阜県

山形県

三重県

高知県

愛知県

東京都

名古屋市

輪之内町

瑞穂市

岐阜市

高山市

東白川村

愛知県内市町村では、岐阜県に比べて特に都市部では、 歳未満同居世帯比率は横ばい

で、高齢化の進展も緩やかという傾向が読み取れます。

【図表 】愛知県内市町村の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と高齢者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)

(2)厳しい地方財政

さらに地方財政は、極めて厳しい状況にあります。川北氏は「ソシオ・マネジメント」

において「人口減少と高齢化・多老化が進む地域に住む人々から、行政への期待(正確

には、依存したい気持ち)が、これまで以上に高まるかもしれないが、自治体行政は、

本当に何もできなくなってしまう」と述べています。

総務省の市町村別決算状況調を使い、川北氏は「 年度から 年度の 年間に、

市町村の歳入は約 兆円から約 兆円へ約 兆円増えていますが、税収も地方債もと

もに約 兆円しか増えておらず、大半は国からの交付金、それも多くは次世代に返済し

てもらう借金となっています。歳入に占める地方税収の比率も、 年度の %から

年度は %へと下がり続けています。歳出も 年間で %増加するなか、職員給与総額

は %減少する一方で職員数は %減っており、歳出も増えているため、職員の業務量

は %も増えており、 割以上忙しくなっています。つまり、それまで 人でやってい

た仕事を 人で行っている計算になります。住民の高齢化で窓口対応時間はますます長

くなるなかで、職員一人あたりの住民人口は 割増しになっています。」と説明を続けま

す。そして「支出の増加で顕著なのは福祉・医療などの扶助費で、 年度に 兆円

であったものが、 年度には 兆円と急増しています。地方債残高は、 年度

の 兆円から 年度には 兆円へ微減していますが、地方債残高+債務行為負担額

東栄町

南知多町

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 5: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

【図表 】都道府県および政令指定都市の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と後期高齢

者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)他

同じく、岐阜県内市町村について 歳未満同居世帯比率と高齢者比率を図表 でプ

ロットしてみると、 年から 年の間に、 歳未満同居世帯比率が下方にシフトし、

高齢者比率が右方にシフトし、少子高齢化が進んでいる傾向を読み取ることができます。

【図表 】岐阜県内市町村の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と高齢者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)

全国平均の推移

沖縄県

滋賀県岐阜県

山形県

三重県

高知県

愛知県

東京都

名古屋市

輪之内町

瑞穂市

岐阜市

高山市

東白川村

愛知県内市町村では、岐阜県に比べて特に都市部では、 歳未満同居世帯比率は横ばい

で、高齢化の進展も緩やかという傾向が読み取れます。

【図表 】愛知県内市町村の 歳未満同居世帯比率(縦軸)と高齢者比率(横軸)

出所:総務省「国勢調査」( 年、 年)

(2)厳しい地方財政

さらに地方財政は、極めて厳しい状況にあります。川北氏は「ソシオ・マネジメント」

において「人口減少と高齢化・多老化が進む地域に住む人々から、行政への期待(正確

には、依存したい気持ち)が、これまで以上に高まるかもしれないが、自治体行政は、

本当に何もできなくなってしまう」と述べています。

総務省の市町村別決算状況調を使い、川北氏は「 年度から 年度の 年間に、

市町村の歳入は約 兆円から約 兆円へ約 兆円増えていますが、税収も地方債もと

もに約 兆円しか増えておらず、大半は国からの交付金、それも多くは次世代に返済し

てもらう借金となっています。歳入に占める地方税収の比率も、 年度の %から

年度は %へと下がり続けています。歳出も 年間で %増加するなか、職員給与総額

は %減少する一方で職員数は %減っており、歳出も増えているため、職員の業務量

は %も増えており、 割以上忙しくなっています。つまり、それまで 人でやってい

た仕事を 人で行っている計算になります。住民の高齢化で窓口対応時間はますます長

くなるなかで、職員一人あたりの住民人口は 割増しになっています。」と説明を続けま

す。そして「支出の増加で顕著なのは福祉・医療などの扶助費で、 年度に 兆円

であったものが、 年度には 兆円と急増しています。地方債残高は、 年度

の 兆円から 年度には 兆円へ微減していますが、地方債残高+債務行為負担額

東栄町

南知多町

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Page 6: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

の合計から積立金を差し引いた額である「将来負担」は、同期間比較で 兆円から

兆円へ急増しています。」と述べます。

さらに続けて、「日本はもうひとつの高齢化に直面する」と川北氏は述べています。こ

れは、昨年の「地域活性化提言」で取り上げたことですが、道路・橋・トンネル・ダム

等社会インフラと学校・市役所等公共施設の老朽化に対して、これらの維持管理と建替

費用の増加をどう賄っていくかが自治体にとって難題となっています。

【図表 】市区町村の主な財政項目の推移

(単位:億円)

年度年度

( 年度比)年度(同)

数 市区町村 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

歳入 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

うち地方税【歳入比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

うち地方債【歳入比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

歳出 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

職員給 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

職員数【職員一人あたり

住民】計 単位:人

市・区

町・村

【 】

【 】

【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

(前ページより続き)

年度年度

( 年度比)年度(同)

扶助費【歳出比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

公債費 計

市・区

町・村

地方債残高 計

市・区

町・村

将来負担 注)【住民一人

当たり】計 単位:万円

市・区

町・村

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

出所:総務省「市町村別決算状況調」(ソシオ・マネジメント )

注)将来負担:地方債残高と債務負担の合計から積立金等を差し引いた額

住民数は国勢調査または住民基本台帳人口

(3)平成の市町村合併の進展

地域を取り巻く環境で大きな影響を与えたのが、平成の大合併です。 年には全国

に あった市町村の数は、合併の進展により、 年には、 まで減少しまし

た。これらは、明治の大合併、昭和の大合併と並んで、平成の大合併と称されています。

全国の合併自治体を対象にした調査によれば、 年から 年の間に市の数は、

から へ増加する一方、町村の数は、 から へと激減しました。また市の平均

人口は 年時点 万人で横ばいとなりましたが、面積は平均で 倍となり、広

域化しました。(図表 参照)また、町村の平均人口は 年時点 万人で

年比 倍、平均面積は平均で 倍となりました。(図表 参照)

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 7: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

の合計から積立金を差し引いた額である「将来負担」は、同期間比較で 兆円から

兆円へ急増しています。」と述べます。

さらに続けて、「日本はもうひとつの高齢化に直面する」と川北氏は述べています。こ

れは、昨年の「地域活性化提言」で取り上げたことですが、道路・橋・トンネル・ダム

等社会インフラと学校・市役所等公共施設の老朽化に対して、これらの維持管理と建替

費用の増加をどう賄っていくかが自治体にとって難題となっています。

【図表 】市区町村の主な財政項目の推移

(単位:億円)

年度年度

( 年度比)年度(同)

数 市区町村 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

歳入 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

うち地方税【歳入比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

うち地方債【歳入比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

( %)【 %】

歳出 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

職員給 計

市・区

町・村

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

( %)

職員数【職員一人あたり

住民】計 単位:人

市・区

町・村

【 】

【 】

【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

( %)【 】

(前ページより続き)

年度年度

( 年度比)年度(同)

扶助費【歳出比】計

市・区

町・村

【 %】

【 %】

【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

% 【 %】

公債費 計

市・区

町・村

地方債残高 計

市・区

町・村

将来負担 注)【住民一人

当たり】計 単位:万円

市・区

町・村

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

出所:総務省「市町村別決算状況調」(ソシオ・マネジメント )

注)将来負担:地方債残高と債務負担の合計から積立金等を差し引いた額

住民数は国勢調査または住民基本台帳人口

(3)平成の市町村合併の進展

地域を取り巻く環境で大きな影響を与えたのが、平成の大合併です。 年には全国

に あった市町村の数は、合併の進展により、 年には、 まで減少しまし

た。これらは、明治の大合併、昭和の大合併と並んで、平成の大合併と称されています。

全国の合併自治体を対象にした調査によれば、 年から 年の間に市の数は、

から へ増加する一方、町村の数は、 から へと激減しました。また市の平均

人口は 年時点 万人で横ばいとなりましたが、面積は平均で 倍となり、広

域化しました。(図表 参照)また、町村の平均人口は 年時点 万人で

年比 倍、平均面積は平均で 倍となりました。(図表 参照)

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Page 8: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

年 年 年 年 年 年 年

市数

(右軸)

平均人口

(左軸)

平均面積

(左軸)

(市数)

【図表 】 市町村合併によって変化した市数・平均人口・平均面積

出所:財団法人地方自治研究機構「地域コミュニティの再生・再編・活性化策に関する調

査研究 Ⅱ」( 年 月)

注)平均人口と平均面積は 年を としたもの

【図表 】市町村合併によって変化した町村数・平均人口・平均面積

出所:財団法人地方自治研究機構「地域コミュニティの再生・再編・活性化策に関する調

査研究 Ⅱ」( 年 月)

注)平均人口と平均面積は 年を としたもの

東海 県では、 年から 年の間に、岐阜県市町村数は から 、愛知県市町

村数は から 、三重県市町村数は から となり、東海 県市町村数は、 から

へ半減しました。また、図表 からわかるように、岐阜県高山市、飛騨市、郡上

市、下呂市、揖斐川町、愛知県豊田市、岡崎市、三重県津市、松阪市など大幅に広域化

した市町が生まれました。こうした市は、旧市内と中山間地域を含んだ旧町村が同じ行

政区におかれたため、広域をカバーした一律の施策・公共サービスはそぐわなくなり、

地域内で、多様な地区に適合した多様な施策・公共サービスが求められるようになりま

した。そして、そこから個性あるまちづくりの必要性が認識されるようになりました。

年 年 年 年 年 年 年

町村数

(右軸)

平均人口

(左軸)

平均面積

(左軸)

(町村数)

【図表 】合併後の岐阜県・愛知県・三重県の市町村の人口状況

【岐阜県】 【愛知県】

【三重県】

(4)過疎化の進展

人口が減り続けた地域の過疎化も大きな地域課題です。過疎という言葉は、 年代

から使われ始めた行政用語でした。 年代末から 年代の過疎問題は、若者による都

会への人口流出など社会的要因での人口減少によって引き起こされたものでした。とこ

ろが、 年代に入ると、社会減による過疎に加え、出生数が死亡数を下回る自然減に

よる過疎が始まりました。第 次過疎問題の登場です。この自然減による過疎は、若者

がいなくなり残された人口が高齢化し、他方で新しい人口が生み出されなくなったこと

によって生じたものでした。

年に「過疎地域対策緊急措置法」、 年に「過疎地域振興特別措置法」、 年

に「過疎地域活性化特別措置法」、 年には「過疎地域自立促進特別措置法」(現行)

と、 年おきに過疎対策法が施行されてきました。これらの法律において、過疎地域と

は、「人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境

*市町村人口

赤 万人以上、

緑 万人以上 万人以下

黄 万人未満

高山市

豊田市

松阪市

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 9: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

年 年 年 年 年 年 年

市数

(右軸)

平均人口

(左軸)

平均面積

(左軸)

(市数)

【図表 】 市町村合併によって変化した市数・平均人口・平均面積

出所:財団法人地方自治研究機構「地域コミュニティの再生・再編・活性化策に関する調

査研究 Ⅱ」( 年 月)

注)平均人口と平均面積は 年を としたもの

【図表 】市町村合併によって変化した町村数・平均人口・平均面積

出所:財団法人地方自治研究機構「地域コミュニティの再生・再編・活性化策に関する調

査研究 Ⅱ」( 年 月)

注)平均人口と平均面積は 年を としたもの

東海 県では、 年から 年の間に、岐阜県市町村数は から 、愛知県市町

村数は から 、三重県市町村数は から となり、東海 県市町村数は、 から

へ半減しました。また、図表 からわかるように、岐阜県高山市、飛騨市、郡上

市、下呂市、揖斐川町、愛知県豊田市、岡崎市、三重県津市、松阪市など大幅に広域化

した市町が生まれました。こうした市は、旧市内と中山間地域を含んだ旧町村が同じ行

政区におかれたため、広域をカバーした一律の施策・公共サービスはそぐわなくなり、

地域内で、多様な地区に適合した多様な施策・公共サービスが求められるようになりま

した。そして、そこから個性あるまちづくりの必要性が認識されるようになりました。

年 年 年 年 年 年 年

町村数

(右軸)

平均人口

(左軸)

平均面積

(左軸)

(町村数)

【図表 】合併後の岐阜県・愛知県・三重県の市町村の人口状況

【岐阜県】 【愛知県】

【三重県】

(4)過疎化の進展

人口が減り続けた地域の過疎化も大きな地域課題です。過疎という言葉は、 年代

から使われ始めた行政用語でした。 年代末から 年代の過疎問題は、若者による都

会への人口流出など社会的要因での人口減少によって引き起こされたものでした。とこ

ろが、 年代に入ると、社会減による過疎に加え、出生数が死亡数を下回る自然減に

よる過疎が始まりました。第 次過疎問題の登場です。この自然減による過疎は、若者

がいなくなり残された人口が高齢化し、他方で新しい人口が生み出されなくなったこと

によって生じたものでした。

年に「過疎地域対策緊急措置法」、 年に「過疎地域振興特別措置法」、 年

に「過疎地域活性化特別措置法」、 年には「過疎地域自立促進特別措置法」(現行)

と、 年おきに過疎対策法が施行されてきました。これらの法律において、過疎地域と

は、「人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境

*市町村人口

赤 万人以上、

緑 万人以上 万人以下

黄 万人未満

高山市

豊田市

松阪市

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Page 10: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」とされています。 年 月 日現在、

全国 市町村のうち、過疎地域に該当する市町村は 市町村です。

過疎地域の集落では、今後ますます人口減少や高齢化が進むにつれて、社会的サービ

スの提供や地域資源の管理、景観や伝統文化の継承など多くの課題が表面化してくるで

しょう。極端にいえば、地域社会の維持そのものが困難になることも危惧されるのです。

また過疎地域においては、 年代ごろから「限界集落」という言葉が、元高知大学

教授の大野晃氏によって生まれました。その定義は、「 歳以上の高齢者が集落人口の半

数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置

かれている集落」というものです。本書においても随所に限界集落や準限界集落が登場

します。そうした地域が存続集落となるには、住民自身がまちづくりの主役になること

が必要でしょう。

(5)地縁組織の課題

住民組織の最小単位は、自治会、町内会という地縁組織です。戦後ほとんどの家庭は、

これらに加入してきたのですが、ここ数年は加入率低下が大きな課題になっています。

また、何故加入しなければならないのかという意見も増えてきました。自治会、町内会

の加入率は、何故下がったのでしょうか。

第一に考えられるのが、地域における共同住宅(アパートまたはマンション)の増加

です。全体戸数は 年の 万戸から 年には 万戸まで増加しており、約

年間で約 万戸も増加しています。(図表 参照)共同住宅のうち、特にアパ

ートは一人世帯も多く、地縁組織に最初から加入していないケースが多く見られます。

【図表 】建て方別住宅数の推移

出所:総務省「平成 年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約」

第二に考えられるのは、地縁組織加入にそもそも何もメリットがないと考える世帯が

増えたことです。その理由は様々ですが、これまでの主な活動である交通安全や防火・

防犯・防災活動ならびに盆踊りや運動会などの行事参加に、必要性を感じなくなってい

る住民が増えたのではないでしょうか。

では、地縁組織は本当にいらないもの、なくなってよいものでしょうか。私たちは、

そうではないと考えます。その理由は、阪神・淡路大震災、東日本大震災など未曾有の

大災害を経験して、日頃から住民同士の交流がいかに重要であったかを学んだからです。

確かに、今でも小学校区内の自治会・町内会が、防災訓練をすることはありますが、 年

に一度くらい訓練をしても、地域防災は十分ではありません。もっと積極的に、例えば

要支援者一覧表が整備されていて、要支援者にも声掛けするような防災訓練が行われれ

ば、住民は真にその防災組織の重要性を認識するのではないでしょうか。

また祭りや運動会などで、負担感だけを感じる住民も増えています。前例踏襲のよう

に行われる旧来の地縁組織の活動が、地域住民にとって必要と感じられにくいことはい

わば当然のことでしょう。

しかし、地縁組織への加入率、参加率が低下し、地域で住民が活動する機会がさらに

減っていくことは回避しなければなりません。このまま加入率、参加率が下がれば下が

るほど、地域コミュニティ全体の力は落ちていきます。それを防止するには、地域住民

が本当の課題を発見し、発見された課題の解決に向けた工夫を真摯に行っていくことが

必要なのです。

10

地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 11: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

の整備等が他の地域に比較して低位にある地域」とされています。 年 月 日現在、

全国 市町村のうち、過疎地域に該当する市町村は 市町村です。

過疎地域の集落では、今後ますます人口減少や高齢化が進むにつれて、社会的サービ

スの提供や地域資源の管理、景観や伝統文化の継承など多くの課題が表面化してくるで

しょう。極端にいえば、地域社会の維持そのものが困難になることも危惧されるのです。

また過疎地域においては、 年代ごろから「限界集落」という言葉が、元高知大学

教授の大野晃氏によって生まれました。その定義は、「 歳以上の高齢者が集落人口の半

数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置

かれている集落」というものです。本書においても随所に限界集落や準限界集落が登場

します。そうした地域が存続集落となるには、住民自身がまちづくりの主役になること

が必要でしょう。

(5)地縁組織の課題

住民組織の最小単位は、自治会、町内会という地縁組織です。戦後ほとんどの家庭は、

これらに加入してきたのですが、ここ数年は加入率低下が大きな課題になっています。

また、何故加入しなければならないのかという意見も増えてきました。自治会、町内会

の加入率は、何故下がったのでしょうか。

第一に考えられるのが、地域における共同住宅(アパートまたはマンション)の増加

です。全体戸数は 年の 万戸から 年には 万戸まで増加しており、約

年間で約 万戸も増加しています。(図表 参照)共同住宅のうち、特にアパ

ートは一人世帯も多く、地縁組織に最初から加入していないケースが多く見られます。

【図表 】建て方別住宅数の推移

出所:総務省「平成 年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約」

第二に考えられるのは、地縁組織加入にそもそも何もメリットがないと考える世帯が

増えたことです。その理由は様々ですが、これまでの主な活動である交通安全や防火・

防犯・防災活動ならびに盆踊りや運動会などの行事参加に、必要性を感じなくなってい

る住民が増えたのではないでしょうか。

では、地縁組織は本当にいらないもの、なくなってよいものでしょうか。私たちは、

そうではないと考えます。その理由は、阪神・淡路大震災、東日本大震災など未曾有の

大災害を経験して、日頃から住民同士の交流がいかに重要であったかを学んだからです。

確かに、今でも小学校区内の自治会・町内会が、防災訓練をすることはありますが、 年

に一度くらい訓練をしても、地域防災は十分ではありません。もっと積極的に、例えば

要支援者一覧表が整備されていて、要支援者にも声掛けするような防災訓練が行われれ

ば、住民は真にその防災組織の重要性を認識するのではないでしょうか。

また祭りや運動会などで、負担感だけを感じる住民も増えています。前例踏襲のよう

に行われる旧来の地縁組織の活動が、地域住民にとって必要と感じられにくいことはい

わば当然のことでしょう。

しかし、地縁組織への加入率、参加率が低下し、地域で住民が活動する機会がさらに

減っていくことは回避しなければなりません。このまま加入率、参加率が下がれば下が

るほど、地域コミュニティ全体の力は落ちていきます。それを防止するには、地域住民

が本当の課題を発見し、発見された課題の解決に向けた工夫を真摯に行っていくことが

必要なのです。

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Page 12: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

2.地方分権の進展

(1)住民自治と地域内分権

年代半ばから取り組まれてきた地方分権改革は、地方分権推進委員会「中間報告

-分権型社会の創造-」( 年 月 日公表)によれば、従来の中央集権型行政シス

テムの弊害を是正し、急速に進む少子高齢化や国際化に対応できる分権型社会の構築と、

個性豊かな地域社会を形成することが目標とされました。一連の地方分権改革の仕組み

は、公共資本整備や教育、福祉などの公共サービスを「補完性の原則」(住民に関わる業

務は、基礎自治体が行い、国や県が基礎自治体の取組を補完する考え方)に基づき、自

治体に役割と責任を担わせる内容になっています。 年以降に、自治体の行財政基盤

を強化する目的で、国の主導による「平成の大合併」と称される市町村合併が積極的に

推進されました。合併特例債などの手厚い財政措置や国・都道府県の強力な関与もあり、

年には 市町村がありましたが、 年には にまで統合されました。

しかし、第一次分権改革が、機関委任事務の廃止や自治体の条例制定権の拡充、国か

ら自治体への権限移譲など、地方自治は国(中央政府)から独立した地域社会自らの団

体(組織・機関)によって行われるべきという団体自治の強化に注力したものであった

ため、地方自治はその地域社会の住民の意思によって行われるべきという住民自治の取

組は不十分なままでした。また、「平成の大合併」により、合併後の市町村の平均面積が、

㎢から ㎢へとほぼ 倍に拡大した結果、行政と住民の距離感が拡大し、行政の

住民対応力が低下し、旧市町村が独自に行っていた施策が廃止され、新市町村の施策が

画一に実施されたことの弊害などが課題として出てきました。

そこで出されたのが「地域内分権」の考え方で、自治体行政からまちづくり協議会な

どの地域運営組織(注 )または地域自主組織(注 )に権限や財源を移譲することで、住

民が地域の様々な課題の発見と解決に主体的に取り組むことが期待されるようになりま

した。

注 )総務省地域力創造グループ地域振興室「暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告

書」( 年 月) 地域運営組織の定義「地域の生活や暮らしを守るため、地域で暮らす人々

が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に

基づき、地域課題の解決に向けた取り組みを持続的に実践する組織」による。

注 )島根県雲南市等における小規模多機能自治組織による。

(2)住民自治基本条例の制定

住民自治を進めるうえで、その根幹をなすものが、住民自治基本条例です。 年

月に、北海道ニセコ町において「ニセコ町まちづくり基本条例」が施行されたことを契

機に、いわゆる「自治基本条例」を制定する地方自治体が急速に増加し、 年 月

日現在で全国 自治体のうち、約 割にあたる 自治体で、住民自治基本条例が

制定されています。(図表 参照)

全国の住民自治基本条例を見ると、自治体の状況やニーズにあわせて、自治の意義、

行政、議会、住民の役割、地区組織(自治会等)の役割についての責務や基本的理念を

定めるとともに、活動するうえでのルールを定めています。活動ルールとしては、基本

構想の議会議決、行政評価、市民参加、住民投票を定めています。

ここでは岐阜県不破郡垂井町の「自治のまちづくり条例に向けた取組」を例にとりな

がら、条例制定のプロセスをみましょう。

垂井町は、 年の大型合併の意向を問う民意意向調査の結果、単独町政を選択しま

した。神田浩史氏(特定非営利活動法人泉京・垂井 副代表理事)によれば、単独町政

を選択したのは「垂井町は歴史のある古いまちという住民の誇りが強かったことや、自

主的なまちづくりをしていこうという住民が多かったため」といいます。 年 月に

は住民有志による「垂井町まちづくり基本条例案」が町長に提案され、 年 月「垂

井町第 次総合計画」で条例制定が明記されました。 年 月に策定委員会が公募

名、地区推薦 名、有識者 名の計 名で構成され、策定の取組が始まりました。策定

委員会副委員長でもあった神田氏によれば、「 年半の間に 回の審議会、講演会 回、

アンケート 回、自主勉強会 回、議会との意見交換会 回、住民との意見交換会は地

区単位で 回、 団体と延べ 名あまりが参加し合意形成に努めた」といいます。こ

うして 年 月に策定委員会は「垂井町まちづくり基本条例案」を提出、公聴会・パ

ブリックコメント実施を経て 年 月に議会で可決され、 年 月に施行されまし

た。

条例では、自主自律の協働のまちづくり、地域特性の尊重、住民が主体のまちづくり

の主権者で、情報共有・住民参加・協働のまちづくりの つの基本理念に基づき、まち

づくりセンター、協議会、審議会を通した協働のまちづくり施策を実施すること、町の

自治の最高規範であることが記載されました。このように、垂井町の住民自治基本条例

は検討から施行まで か年も要しました。その後、垂井町では、条例に沿って、まちづ

くり協議会が 地区に発足し、協働のまちづくりが進んでいます。

垂井町の例を見るまでもなく、「自治基本条例」制定は、相当の時間と関係者の苦労な

しには成し遂げられません。

「住民自治基本条例」の制定はまだ 割程度ですが、制定がなかなか進まないのは何

故でしょうか。前出の川北氏は「住民による自治の意義や必要性、有効性を、住民自身

が理解できていないからということに尽きる」といいます。「自治とは、自分たちで決め

て、自分たちで担うこと。それが松戸市の「すぐやる課」以降、住民は行政から公共サ

ービスを受けるのが当然という機運が定着してしまっていることが、自治の意義や必要

性、有効性を忘れ去ってしまう前提にある。その状況を克服するには、自分たちの未来

をより良いものにするために、このまま行けばどうなるかという将来のある程度具体的

12

地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 13: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

2.地方分権の進展

(1)住民自治と地域内分権

年代半ばから取り組まれてきた地方分権改革は、地方分権推進委員会「中間報告

-分権型社会の創造-」( 年 月 日公表)によれば、従来の中央集権型行政シス

テムの弊害を是正し、急速に進む少子高齢化や国際化に対応できる分権型社会の構築と、

個性豊かな地域社会を形成することが目標とされました。一連の地方分権改革の仕組み

は、公共資本整備や教育、福祉などの公共サービスを「補完性の原則」(住民に関わる業

務は、基礎自治体が行い、国や県が基礎自治体の取組を補完する考え方)に基づき、自

治体に役割と責任を担わせる内容になっています。 年以降に、自治体の行財政基盤

を強化する目的で、国の主導による「平成の大合併」と称される市町村合併が積極的に

推進されました。合併特例債などの手厚い財政措置や国・都道府県の強力な関与もあり、

年には 市町村がありましたが、 年には にまで統合されました。

しかし、第一次分権改革が、機関委任事務の廃止や自治体の条例制定権の拡充、国か

ら自治体への権限移譲など、地方自治は国(中央政府)から独立した地域社会自らの団

体(組織・機関)によって行われるべきという団体自治の強化に注力したものであった

ため、地方自治はその地域社会の住民の意思によって行われるべきという住民自治の取

組は不十分なままでした。また、「平成の大合併」により、合併後の市町村の平均面積が、

㎢から ㎢へとほぼ 倍に拡大した結果、行政と住民の距離感が拡大し、行政の

住民対応力が低下し、旧市町村が独自に行っていた施策が廃止され、新市町村の施策が

画一に実施されたことの弊害などが課題として出てきました。

そこで出されたのが「地域内分権」の考え方で、自治体行政からまちづくり協議会な

どの地域運営組織(注 )または地域自主組織(注 )に権限や財源を移譲することで、住

民が地域の様々な課題の発見と解決に主体的に取り組むことが期待されるようになりま

した。

注 )総務省地域力創造グループ地域振興室「暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告

書」( 年 月) 地域運営組織の定義「地域の生活や暮らしを守るため、地域で暮らす人々

が中心となって形成され、地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地域経営の指針に

基づき、地域課題の解決に向けた取り組みを持続的に実践する組織」による。

注 )島根県雲南市等における小規模多機能自治組織による。

(2)住民自治基本条例の制定

住民自治を進めるうえで、その根幹をなすものが、住民自治基本条例です。 年

月に、北海道ニセコ町において「ニセコ町まちづくり基本条例」が施行されたことを契

機に、いわゆる「自治基本条例」を制定する地方自治体が急速に増加し、 年 月

日現在で全国 自治体のうち、約 割にあたる 自治体で、住民自治基本条例が

制定されています。(図表 参照)

全国の住民自治基本条例を見ると、自治体の状況やニーズにあわせて、自治の意義、

行政、議会、住民の役割、地区組織(自治会等)の役割についての責務や基本的理念を

定めるとともに、活動するうえでのルールを定めています。活動ルールとしては、基本

構想の議会議決、行政評価、市民参加、住民投票を定めています。

ここでは岐阜県不破郡垂井町の「自治のまちづくり条例に向けた取組」を例にとりな

がら、条例制定のプロセスをみましょう。

垂井町は、 年の大型合併の意向を問う民意意向調査の結果、単独町政を選択しま

した。神田浩史氏(特定非営利活動法人泉京・垂井 副代表理事)によれば、単独町政

を選択したのは「垂井町は歴史のある古いまちという住民の誇りが強かったことや、自

主的なまちづくりをしていこうという住民が多かったため」といいます。 年 月に

は住民有志による「垂井町まちづくり基本条例案」が町長に提案され、 年 月「垂

井町第 次総合計画」で条例制定が明記されました。 年 月に策定委員会が公募

名、地区推薦 名、有識者 名の計 名で構成され、策定の取組が始まりました。策定

委員会副委員長でもあった神田氏によれば、「 年半の間に 回の審議会、講演会 回、

アンケート 回、自主勉強会 回、議会との意見交換会 回、住民との意見交換会は地

区単位で 回、 団体と延べ 名あまりが参加し合意形成に努めた」といいます。こ

うして 年 月に策定委員会は「垂井町まちづくり基本条例案」を提出、公聴会・パ

ブリックコメント実施を経て 年 月に議会で可決され、 年 月に施行されまし

た。

条例では、自主自律の協働のまちづくり、地域特性の尊重、住民が主体のまちづくり

の主権者で、情報共有・住民参加・協働のまちづくりの つの基本理念に基づき、まち

づくりセンター、協議会、審議会を通した協働のまちづくり施策を実施すること、町の

自治の最高規範であることが記載されました。このように、垂井町の住民自治基本条例

は検討から施行まで か年も要しました。その後、垂井町では、条例に沿って、まちづ

くり協議会が 地区に発足し、協働のまちづくりが進んでいます。

垂井町の例を見るまでもなく、「自治基本条例」制定は、相当の時間と関係者の苦労な

しには成し遂げられません。

「住民自治基本条例」の制定はまだ 割程度ですが、制定がなかなか進まないのは何

故でしょうか。前出の川北氏は「住民による自治の意義や必要性、有効性を、住民自身

が理解できていないからということに尽きる」といいます。「自治とは、自分たちで決め

て、自分たちで担うこと。それが松戸市の「すぐやる課」以降、住民は行政から公共サ

ービスを受けるのが当然という機運が定着してしまっていることが、自治の意義や必要

性、有効性を忘れ去ってしまう前提にある。その状況を克服するには、自分たちの未来

をより良いものにするために、このまま行けばどうなるかという将来のある程度具体的

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Page 14: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

な見通しを知らせるしかない。」と説明しました。

また住民自治基本条例は、間接民主主義から逸脱し、直接民主主義につながるのでは

ないかという考えもあるようです。これについて川北氏は「それは「自治=行政による

サービス」と、誤って狭く定義してしまっているからではないでしょうか。前述の通り、

自治とは、自分たちで決めて自分たちで担うことであり、自治には、地方公共団体によ

る団体自治と、住民自らが担う住民自治の二つがあります。」と説明します。

【図表 】全国 自治体における自治基本条例の施行状況

出所: 法人公共政策研究所「自治基本条例の都道府県別普及状況( 年 月 日現

在)」

(3)東海 県の自治基本条例施行状況

東海 県における自治基本条例の施行状況は、岐阜県が 自治体のうち (約 %)、

愛知県が 自治体のうち (約 %)、三重県が 自治体のうち (約 %)となっ

ています。全国平均は約 %で、いずれも全国平均を上回っていることから、東海 県

は住民自治に積極的な地域といえます。

(4)岐阜市の住民自治基本条例施行の取組

岐阜市では、 年に住民自治基本条例が制定されました。 年に策定された「岐

阜市総合計画 ぎふ躍動プラン・ 」において、「市民と行政の協働」と「(仮称)自治

基本条例」の制定を掲げました。そして、「岐阜市協働のまちづくり指針」を策定しまし

た。 年度から次年度にかけて、「地域力創生モデル事業(現:地域力創生事業)」、「市

民活動支援事業」、「岐阜版アダプト・プログラム」など新たな制度手法の導入や、「岐阜

市協働のまちづくり推進委員会」の設置、「岐阜市 ・ボランティア協働センター」の

開設を相次いで進め、市民に対して「協働のまちづくり」とはどういうものかという理

解を進めるとともに、市民と協働して施策を推進してきました。こうしたなか、まちづ

くり協議会第 号として「京まちづくりの会」が 年 月に設立されました。

年 月には、「(仮称)岐阜市住民自治基本条例検討委員会」が設置され、検討委

員会で 回審議を積み重ね、公開討論会を 回開催、市民意見交換会や出前講座などを

回開催し、第 次・第 次素案のそれぞれの段階でのパブリックコメント実施を経て、

年 月の議会で「岐阜市住民自治基本条例」が制定されました。そして、 月には

「市民との協働推進本部」、「住民自治推進審議会」が設置され、 年 月に「協働型

市政運営行動計画」が策定されました。

(5)協働のまちづくり条例

住民自治基本条例の制定には時間がかかり、負担も大きいことなどを理由に、最近は、

まちづくりを市民と行政が協働して行う「協働のまちづくり条例」を制定する例が増え

てきました。

たとえば大津市では、「人を結び、時を結び、自然と結ばれる 「結の湖都」 大津」

を実現するため、ひとのつながり・まちのにぎわい・自然のうるおいを基本方針とした

市民・事業者・行政の三者による協働のまちづくりを目指しています。

この理由については、川北氏によれば、「自治は、それぞれの所轄地域・領域において

単独でもできますが、協働は多様な主体による連携を手段とするものです。このため、

自治基本条例は対象とすべき項目が多岐・詳細に及びますが、「協働のまちづくり条例」

は、多様な主体による連携の進め方を示せばよく、後者を選択するのではないか。」とい

うものでした。まちづくりを進めていくうえで、条例の制定は極めて重要であり、住民

自治基本条例への前段階として「協働のまちづくり条例」を先に制定することは、価値

あることだと考えます。

14

地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 15: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

な見通しを知らせるしかない。」と説明しました。

また住民自治基本条例は、間接民主主義から逸脱し、直接民主主義につながるのでは

ないかという考えもあるようです。これについて川北氏は「それは「自治=行政による

サービス」と、誤って狭く定義してしまっているからではないでしょうか。前述の通り、

自治とは、自分たちで決めて自分たちで担うことであり、自治には、地方公共団体によ

る団体自治と、住民自らが担う住民自治の二つがあります。」と説明します。

【図表 】全国 自治体における自治基本条例の施行状況

出所: 法人公共政策研究所「自治基本条例の都道府県別普及状況( 年 月 日現

在)」

(3)東海 県の自治基本条例施行状況

東海 県における自治基本条例の施行状況は、岐阜県が 自治体のうち (約 %)、

愛知県が 自治体のうち (約 %)、三重県が 自治体のうち (約 %)となっ

ています。全国平均は約 %で、いずれも全国平均を上回っていることから、東海 県

は住民自治に積極的な地域といえます。

(4)岐阜市の住民自治基本条例施行の取組

岐阜市では、 年に住民自治基本条例が制定されました。 年に策定された「岐

阜市総合計画 ぎふ躍動プラン・ 」において、「市民と行政の協働」と「(仮称)自治

基本条例」の制定を掲げました。そして、「岐阜市協働のまちづくり指針」を策定しまし

た。 年度から次年度にかけて、「地域力創生モデル事業(現:地域力創生事業)」、「市

民活動支援事業」、「岐阜版アダプト・プログラム」など新たな制度手法の導入や、「岐阜

市協働のまちづくり推進委員会」の設置、「岐阜市 ・ボランティア協働センター」の

開設を相次いで進め、市民に対して「協働のまちづくり」とはどういうものかという理

解を進めるとともに、市民と協働して施策を推進してきました。こうしたなか、まちづ

くり協議会第 号として「京まちづくりの会」が 年 月に設立されました。

年 月には、「(仮称)岐阜市住民自治基本条例検討委員会」が設置され、検討委

員会で 回審議を積み重ね、公開討論会を 回開催、市民意見交換会や出前講座などを

回開催し、第 次・第 次素案のそれぞれの段階でのパブリックコメント実施を経て、

年 月の議会で「岐阜市住民自治基本条例」が制定されました。そして、 月には

「市民との協働推進本部」、「住民自治推進審議会」が設置され、 年 月に「協働型

市政運営行動計画」が策定されました。

(5)協働のまちづくり条例

住民自治基本条例の制定には時間がかかり、負担も大きいことなどを理由に、最近は、

まちづくりを市民と行政が協働して行う「協働のまちづくり条例」を制定する例が増え

てきました。

たとえば大津市では、「人を結び、時を結び、自然と結ばれる 「結の湖都」 大津」

を実現するため、ひとのつながり・まちのにぎわい・自然のうるおいを基本方針とした

市民・事業者・行政の三者による協働のまちづくりを目指しています。

この理由については、川北氏によれば、「自治は、それぞれの所轄地域・領域において

単独でもできますが、協働は多様な主体による連携を手段とするものです。このため、

自治基本条例は対象とすべき項目が多岐・詳細に及びますが、「協働のまちづくり条例」

は、多様な主体による連携の進め方を示せばよく、後者を選択するのではないか。」とい

うものでした。まちづくりを進めていくうえで、条例の制定は極めて重要であり、住民

自治基本条例への前段階として「協働のまちづくり条例」を先に制定することは、価値

あることだと考えます。

15

Page 16: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

3.地域運営組織の現状

人口減少や高齢化の進展を背景に、平成の大合併を契機として、多くの自治体で「自治

基本条例」や「まちづくり基本条例」等が制定され、「参加」と「協働」による住民自治

が行われるようになりました。そこで「地域運営組織」の重要性が改めて認識されました。

(1)地域運営組織形成の背景

従来、地域内におけるイベントや共助の活動、まちづくりの活動などは、地縁組織で

ある自治会・町内会が中心となって行われてきました。自治会・町内会は、長くその地

域にひとつしか存在せず、地域の世帯がほぼ全世帯加入している仕組みにより、地域を

代表する団体として住民や行政から認められ、地域の暮らしを支える組織として、重要

な役割を担ってきました。しかし、自治会・町内会の加入率が 割弱まで低下し、組織

が弱体化したことや、市町村合併の進展に伴う地域課題が多様化・広域化したことによ

り、自治会・町内会がこれまでのような役割を果たすのは難しくなってきました。

その一方で、ここ十数年で、自治会・町内会の機能を補完しつつ、住民自治を充実さ

せるための新たな仕組みづくりへの試みがみられるようになりました。それは、地域内

にある様々な団体・機関が参加し、地域における持続可能な暮らしを実現するため、地

域内の資源を活用して地域を運営する視点をもった将来ビジョンを協議し、そこで決め

られた計画や実施方針を自ら実行する地域運営組織というものでした。

(2)地域運営組織の現状

では、地域運営組織はどれくらい普及しているのでしょうか。地域運営組織の定義は、

第 章第 節で述べていますが、この定義を定めた総務省地域力創造グループ地域振興

室の「暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告書」( 年 月)では、

さらに詳しく、「地域の生活や暮らしを守るため」とは、「日常の買い物や送迎、声かけ・

見守り、高齢者交流など地域で安心して暮し続けるために必要な機能を確保することを

活動の目的」とすると、また、「地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地

域経営の指針に基づき」とは、「自治会や町内会、老人クラブ(老人会)、子ども会、婦

人会など(地縁組織)のほか、地域で活動しているテーマ型の市民活動団体や (機能

的組織)など地域内で活動する様々な関係主体が参加し、地域課題の解決策等を協議す

る場(協議組織)において決定された地域経営の方針(地域における持続的な暮らしを

可能にするため、地域内の資源を最大限活用し、地域を経営するという視点に立って定

めた地域の将来ビジョンや方針)に従って活動を行う」と、そして、「地域課題の解決に

向けた取り組みを持続的に実践する組織」とは、「協議組織において決定された方針を具

北海道東北

関東

北陸東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

北海道

東北

関東

北陸

東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

全国

(%)

体的に実践するため、必要な事業を、コミュニティビジネスの手法を活用しながら、又

は会費や寄付金、補助金(交付金)、他事業からの収益等の財源を活用して、持続的に実

行する組織(実行組織)である」と定義しています。

年度に総務省と農林水産省が共同で実施した「「暮らしを支える活動」に取り組む

組織に関する実態把握アンケート調査」によれば、「暮らしを支える組織がある」と回答

した市町村は、図表 のように、有効回答数 市町村中約 分の にあたる

市町村でした。図表 によれば、暮らしを支える組織がある市町村の割合は、中国

四国地方、東海地方および北陸地方の市町村で %超と高くなりました。図表 に

よれば、 市町村あたりの暮らしを支える活動組織が一番多いのは 組織の関東で、東

海は 組織と少ないことがわかりました。また、グラフにはありませんが、回答の %

の市町村が、組織を立ち上げていく必要があると回答しました。

【図表 】暮らしを支える組織のある市町村数の全国分布

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

注)有効回答数 市町村のうち 市町村があると回答

アンケート調査は岩手県、宮城県、福島県を除く全市町村( )を対象に実施

【図表 】暮らしを支える組織がある市町村の割合

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

16

地域の課題と地域自治の現状第 1 章

Page 17: 地域の課題と地域自治の現状第 章 地域の課題と地域自治の現状 1.地域を取り巻く環境 (1)人口減少と少子高齢化 年 月現在の我が国の総人口は

3.地域運営組織の現状

人口減少や高齢化の進展を背景に、平成の大合併を契機として、多くの自治体で「自治

基本条例」や「まちづくり基本条例」等が制定され、「参加」と「協働」による住民自治

が行われるようになりました。そこで「地域運営組織」の重要性が改めて認識されました。

(1)地域運営組織形成の背景

従来、地域内におけるイベントや共助の活動、まちづくりの活動などは、地縁組織で

ある自治会・町内会が中心となって行われてきました。自治会・町内会は、長くその地

域にひとつしか存在せず、地域の世帯がほぼ全世帯加入している仕組みにより、地域を

代表する団体として住民や行政から認められ、地域の暮らしを支える組織として、重要

な役割を担ってきました。しかし、自治会・町内会の加入率が 割弱まで低下し、組織

が弱体化したことや、市町村合併の進展に伴う地域課題が多様化・広域化したことによ

り、自治会・町内会がこれまでのような役割を果たすのは難しくなってきました。

その一方で、ここ十数年で、自治会・町内会の機能を補完しつつ、住民自治を充実さ

せるための新たな仕組みづくりへの試みがみられるようになりました。それは、地域内

にある様々な団体・機関が参加し、地域における持続可能な暮らしを実現するため、地

域内の資源を活用して地域を運営する視点をもった将来ビジョンを協議し、そこで決め

られた計画や実施方針を自ら実行する地域運営組織というものでした。

(2)地域運営組織の現状

では、地域運営組織はどれくらい普及しているのでしょうか。地域運営組織の定義は、

第 章第 節で述べていますが、この定義を定めた総務省地域力創造グループ地域振興

室の「暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告書」( 年 月)では、

さらに詳しく、「地域の生活や暮らしを守るため」とは、「日常の買い物や送迎、声かけ・

見守り、高齢者交流など地域で安心して暮し続けるために必要な機能を確保することを

活動の目的」とすると、また、「地域内の様々な関係主体が参加する協議組織が定めた地

域経営の指針に基づき」とは、「自治会や町内会、老人クラブ(老人会)、子ども会、婦

人会など(地縁組織)のほか、地域で活動しているテーマ型の市民活動団体や (機能

的組織)など地域内で活動する様々な関係主体が参加し、地域課題の解決策等を協議す

る場(協議組織)において決定された地域経営の方針(地域における持続的な暮らしを

可能にするため、地域内の資源を最大限活用し、地域を経営するという視点に立って定

めた地域の将来ビジョンや方針)に従って活動を行う」と、そして、「地域課題の解決に

向けた取り組みを持続的に実践する組織」とは、「協議組織において決定された方針を具

北海道東北

関東

北陸東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

北海道

東北

関東

北陸

東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

全国

(%)

体的に実践するため、必要な事業を、コミュニティビジネスの手法を活用しながら、又

は会費や寄付金、補助金(交付金)、他事業からの収益等の財源を活用して、持続的に実

行する組織(実行組織)である」と定義しています。

年度に総務省と農林水産省が共同で実施した「「暮らしを支える活動」に取り組む

組織に関する実態把握アンケート調査」によれば、「暮らしを支える組織がある」と回答

した市町村は、図表 のように、有効回答数 市町村中約 分の にあたる

市町村でした。図表 によれば、暮らしを支える組織がある市町村の割合は、中国

四国地方、東海地方および北陸地方の市町村で %超と高くなりました。図表 に

よれば、 市町村あたりの暮らしを支える活動組織が一番多いのは 組織の関東で、東

海は 組織と少ないことがわかりました。また、グラフにはありませんが、回答の %

の市町村が、組織を立ち上げていく必要があると回答しました。

【図表 】暮らしを支える組織のある市町村数の全国分布

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

注)有効回答数 市町村のうち 市町村があると回答

アンケート調査は岩手県、宮城県、福島県を除く全市町村( )を対象に実施

【図表 】暮らしを支える組織がある市町村の割合

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

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その他

財産区

公民館

小学校区

昭和合併前の市町村

平成合併前の市町村

(組織)

【図表 】市町村あたりの暮らしを支える平均組織数

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

(3)地域運営組織の活動範囲

総務省「「暮らし」を支える地域運営組織に関するアンケート調査」( 年 月)

によれば、地域運営組織の活動範囲については、「顔が見える範囲、すなわち一定程度

の区域の広がりを持ちつつ、住民相互のつながりがある程度保たれる範囲として、概ね

「小学校区(旧小学校区)」を想定」としています。また、図表 のように小学校

区が約 組織と一番多く、平成合併時の旧町村もしくは昭和合併時の旧町村の区分け

は約 組織でした。また公民館なども一定割合見られました。

【図表 】地域運営組織の設置エリアと既存の地域単位

出所:全国町村会「全市区町村アンケートによる広域的地域マネジメント組織(地域運営

組織)の設置・運営状況に関する全国的傾向の把握」( 年度)

北海道

東北

関東

北陸

東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

全国

(組織)

条例や要綱などは定めていない

協働のまちづくり等の要綱がある

自治基本条例等の条例がある

(4)地域運営組織の組織形態と発展プロセス

① 二つの組織形態~自治中心型と事業中心型~

総務省では、地域運営組織を主に つのタイプに類型化しています。

まず一つが、自治中心型の地域運営組織で、自治会・町内会など自治をベースとし

て、その延長線上で、地域が有する課題を自ら解決することを目的として共助・サー

ビスを発展させていくタイプです。その典型は、第 章で展開する島根県雲南市の小

規模多機能自治です。既存の公民館から移行した交流センターを活動拠点とし、従来、

公民館で取り組まれてきた生涯学習だけでなく、地域福祉や地域づくりの取組も行わ

れます。

もう一つは、事業中心型の地域運営組織で、限定された地域を活動エリアとする 、

一般社団法人、公益社団法人、その他の法人格を有する団体がコミュニティビジネス

といった形で地域課題をまちづくりに関する事業で解決するものです。前出アンケー

トによれば、約 割は法人格を持たない任意団体であり、実態として、自治中心型が

主流になっています。

また、図表 のように、約 割の自治体が、自治基本条例やまちづくり基本条

例の制定により、協働のまちづくりが推進されるようになりました。

【図表 】地域住民と協働のまちづくりに関する条例や要綱の制定状況

出所:総務省「「暮らしを支える地域運営組織」に関するアンケート調査 」( 年度)

② 地域運営組織への支援策

地域運営組織の支援策については、助成金等の活動資金支援が %で最も多く、次

いで、活動拠点の提供が %となっています。活動拠点については、使用中の庁舎を

除く自治体所有施設(地区公民館、図書館、ホール等)の一部が %で一番多くなっ

ています。また、人材育成、外部専門家の活用、地域担当職員制度、活動団体交流会

なども有効な支援策として挙げられていますが、具体的な事例は、次章以降で紹介し

ていきます。

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章

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その他

財産区

公民館

小学校区

昭和合併前の市町村

平成合併前の市町村

(組織)

【図表 】市町村あたりの暮らしを支える平均組織数

出所:総務省・農林水産省「「暮らしを支える活動」に取り組む組織に関する実態把握アン

ケート調査」( 年度)

(3)地域運営組織の活動範囲

総務省「「暮らし」を支える地域運営組織に関するアンケート調査」( 年 月)

によれば、地域運営組織の活動範囲については、「顔が見える範囲、すなわち一定程度

の区域の広がりを持ちつつ、住民相互のつながりがある程度保たれる範囲として、概ね

「小学校区(旧小学校区)」を想定」としています。また、図表 のように小学校

区が約 組織と一番多く、平成合併時の旧町村もしくは昭和合併時の旧町村の区分け

は約 組織でした。また公民館なども一定割合見られました。

【図表 】地域運営組織の設置エリアと既存の地域単位

出所:全国町村会「全市区町村アンケートによる広域的地域マネジメント組織(地域運営

組織)の設置・運営状況に関する全国的傾向の把握」( 年度)

北海道

東北

関東

北陸

東海

近畿

中国四国

九州・沖縄

全国

(組織)

条例や要綱などは定めていない

協働のまちづくり等の要綱がある

自治基本条例等の条例がある

(4)地域運営組織の組織形態と発展プロセス

① 二つの組織形態~自治中心型と事業中心型~

総務省では、地域運営組織を主に つのタイプに類型化しています。

まず一つが、自治中心型の地域運営組織で、自治会・町内会など自治をベースとし

て、その延長線上で、地域が有する課題を自ら解決することを目的として共助・サー

ビスを発展させていくタイプです。その典型は、第 章で展開する島根県雲南市の小

規模多機能自治です。既存の公民館から移行した交流センターを活動拠点とし、従来、

公民館で取り組まれてきた生涯学習だけでなく、地域福祉や地域づくりの取組も行わ

れます。

もう一つは、事業中心型の地域運営組織で、限定された地域を活動エリアとする 、

一般社団法人、公益社団法人、その他の法人格を有する団体がコミュニティビジネス

といった形で地域課題をまちづくりに関する事業で解決するものです。前出アンケー

トによれば、約 割は法人格を持たない任意団体であり、実態として、自治中心型が

主流になっています。

また、図表 のように、約 割の自治体が、自治基本条例やまちづくり基本条

例の制定により、協働のまちづくりが推進されるようになりました。

【図表 】地域住民と協働のまちづくりに関する条例や要綱の制定状況

出所:総務省「「暮らしを支える地域運営組織」に関するアンケート調査 」( 年度)

② 地域運営組織への支援策

地域運営組織の支援策については、助成金等の活動資金支援が %で最も多く、次

いで、活動拠点の提供が %となっています。活動拠点については、使用中の庁舎を

除く自治体所有施設(地区公民館、図書館、ホール等)の一部が %で一番多くなっ

ています。また、人材育成、外部専門家の活用、地域担当職員制度、活動団体交流会

なども有効な支援策として挙げられていますが、具体的な事例は、次章以降で紹介し

ていきます。

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その他

活動団体交流会の設置

事務局運営の支援

地域担当職員制度を導入

総合的な担当窓口の設置

地域外部の専門家の活用

地域活動の中心となる人材の育成

活動に必要な物品の提供

活動拠点施設の提供

助成金等の活動資金支援

(%)

【図表 】地域運営組織への支援策

出所:総務省「「暮らしを支える地域運営組織」に関するアンケート調査 」( 年度)

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地域の課題と地域自治の現状第 1 章