早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン...c 1296 1-3 血清h....

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  • 1283

    早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1284

    Gastroenterological Endoscopy

    目 次

    [1]はじめに � �1285[ 2 ]本ガイドラインの作成手順 � �1285[ 3 ]本論文内容に関連する著者の利益相反 � �1288[ 4 ]資金 � �1288[ 5 ]改訂 � �1288[ 6 ]早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン� �1289   [Ⅰ]内視鏡検査施行前の胃癌のリスク層別化 � �1290   [Ⅱ]早期胃癌発見 � �1298   [Ⅲ]早期胃癌の質的診断(癌と非癌の鑑別診断) � �1305   [Ⅳ]胃癌の治療方針を決定する診断 � �1307   [Ⅴ]内視鏡検査後のリスク層別化 � �1313   [Ⅵ]早期胃癌のサーベイランス � �1316   アルゴリズム � �1319

    ─�00�─

  • 1285Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    ガイドライン

    早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン

    八尾建史 上堂文也 鎌田智有 平澤俊明 長浜 孝 吉永繁高 岡 政志 井上和彦 間部克裕 八尾隆史 吉田雅博 宮代 勲 藤本一眞 田尻久雄

    日本消化器内視鏡学会早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン委員会

    要  旨

    日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン」を作成した.内視鏡での早期胃癌診断は精度の高い検査としてその有用性が認知され,近年普及してきている.この分野の情報はエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないことが多かった.本診療ガイドラインは,[Ⅰ]内視鏡検査施行前の胃癌のリスク層別化,[Ⅱ]早期胃癌発見,[Ⅲ]早期胃癌の質的診断,[Ⅳ]胃癌の治療方針を決定する診断,[Ⅴ]内視鏡検査後のリスク層別化,[Ⅵ]早期胃癌のサーベイランスの 6 つの項目に分け,現時点での指針とした.

    Key words �早期胃癌診断/内視鏡検査/ガイドライン

    [ 1 ]はじめに 内視鏡による早期胃癌診断を安全かつ正確に実施するためには,基本的な指針が必要である.これまで,内視鏡による胃癌治療,または内視鏡に特定しない胃癌検診に関するガイドラインは刊行されているが,早期胃癌の内視鏡診断に特化したガイドラインは作成されていなかった.そこで,日本消化器内視鏡学会ガイドライン委員会は,早期胃癌の内視鏡診断ガイドラインを,科学的な手法に基づいた基本的な指針となるものとして新たに作成することを決定した.本ガイドラインは,胃内視鏡検査を受ける可能性のあるすべての成人を対象とし,早期胃癌を内視鏡によって正確に診断することで胃癌患者の生命予後と生活の質を改善することが目的である.そのために,これまでに利用可能なエビデンスを整理・解釈し,個々の患者の価値観を踏まえた上での適切な臨床判断を行うための推奨を提供する(Table 1 ). 作成方法は,近年行われており国際的に標準とされている evidence based medicine(EBM)の手法に則って行った.具体的には「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」1) に従ったガイド

    ライン作成を心がけた(Table 2 ).執筆の形式は,ステートメントを掲げた総説形式とした.なお,この領域におけるレベルの高いエビデンスは少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得なかった.本ガイドラインが内視鏡による早期胃癌診断の有用な指針となることを期待する.

    文 献

     1.  森實敏夫,小島原典子,吉田雅博編.Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014.福井次矢,山口直人監修,医学書院,東京,2014.

    [ 2 ]本ガイドラインの作成手順1 .委員 日本消化器内視鏡学会ガイドライン作成委員として消化器内視鏡医 6 名が作成を委嘱された.また内部評価委員として,消化器内視鏡医 3 名,病理医 1 名,ガイドライン作成方法論担当医 1 名,疫学専門医 1 名が評価を担当した.併せて,外部評価委員 3 名に評価を依頼した(Table 3 ).

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1286

    Gastroenterological Endoscopy

    ステートメント番号 ステートメント 推奨の強さ

    エビデンス レベル 掲載頁

    [Ⅰ]内視鏡検査施行前の胃癌のリスク層別化

    1 - 1

    胃癌のリスクとして H. pylori 感染,胃粘膜萎縮,遺伝性疾患,喫煙など明らかなリスクファクターが指摘されている.その他にも食事,嗜好,Epstein-Barr(EB)ウイルスなどが可能性のあるリスクファクターとして報告されている.

      C 1290

    1 - 2 内視鏡検査前の胃癌リスクの層別化は可能であり,経済効果も期待できる.しかし,具体的な方法については課題が残されている.   C 1296

    1 - 3

    血清 H. pylori 抗体および血清ペプシノゲンの組み合わせが胃癌のリスク層別化に有用である可能性がある.しかし,高度萎縮症例,過去感染例での偽陰性や H. pylori 抗体価のカットオフ値やその測定方法,ペプシノゲン値の解釈,PG Ⅰ /PG Ⅱ比のカットオフ値などの課題がある.

    2 C 1296

    [Ⅱ]早期胃癌発見

    2 - 1 蠕動運動が激しく観察が難しい症例では,胃蠕動運動抑制剤の使用を考慮する. 決定できない D 1298

    2 - 2粘膜の視認性が向上すれば,早期胃癌の発見につながることが推測されるため,胃内粘液溶解除去剤および消泡剤の使用が強く推奨される.

    1 D 1299

    2 - 3 不安が強い場合や,反射や体動により観察が難しい症例では,副作用に注意して鎮静剤・鎮痛剤を使用してもよい. 決定できない D 1300

    2 - 4 胃の観察時間と早期胃癌の発見は関連性があり,充分な時間をかけて胃内を観察すべきである. 1 D 1301

    2 - 5 早期胃癌の発見のために,系統立って胃内を観察すべきである. 1 D 1302

    2 - 6 現在,早期胃癌の発見に対する,画像強調観察の有用性が検討されている. 決定できない D 1303

    [Ⅲ]早期胃癌の質的診断(癌と非癌の鑑別診断)

    3 - 1 早期胃癌の質的診断に画像強調観察は有用であり,行うことを提案する. 2 A 1305

    [Ⅳ]胃癌の治療方針を決定する診断

    4 - 1 治療前の精密内視鏡検査は,早期胃癌患者の治療方針を決定するために必要である. 1 D 1307

    4 - 2 癌の組織型の診断は,内視鏡診断および鉗子生検による病理組織診断により総合的に行う. 2 D 1308

    4 - 3内視鏡検査でおおよその病変の大きさの推定は可能であるが,最終的には切除標本の病理組織学的所見が判明した後に大きさの判定をするという前提で診断を行う.

    D 1309

    4 - 4

    早期胃癌の深達度診断は原則として白色光通常観察により行う.白色光通常観察により診断が困難な場合には,超音波内視鏡(en-doscopic ultrasonography:EUS)が補助的診断として有用な場合がある.

    2 C 1310

    4 - 5 早期胃癌に合併した活動性潰瘍,潰瘍瘢痕の有無は,原則として白色光通常観察で診断を行う. 2 D 1311

    4 - 6 画像強調内視鏡は浸潤範囲診断に有用である. 1 B 1311[Ⅴ]内視鏡検査後のリスク層別化

    5 - 1 萎縮,腸上皮化生,鳥肌,皺襞腫大,胃黄色腫が胃癌のリスクと関連する内視鏡所見である. B 1313

    5 - 2内視鏡的 H. pylori 未感染所見および胃粘膜萎縮により胃癌リスク層別化は可能であり,この 2 項目による層別化を行うことを提案する.

    2 C 1315

    [Ⅵ]早期胃癌のサーベイランス

    6 - 1 胃癌発生のリスク因子(臨床所見・内視鏡所見)のある症例にはサーベイランス内視鏡検査が推奨される. 1 B 1316

    Table 1 早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン ステートメント一覧.

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1287Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    2 .推奨の強さとエビデンスレベル,ステートメント

     作成委員により,早期胃癌の定義と内視鏡で早期胃癌を診断する意義,内視鏡検査施行前の胃癌のリスク層別化,早期胃癌発見,早期胃癌の質的診断(癌と非癌の鑑別),胃癌の治療方針を決定する診断,内視鏡検査後のリスク層別化,早期胃癌

    のサーベイランスの 7 つの項目が設定された.なお,早期胃癌の定義と内視鏡で早期胃癌を診断する意義については,本ガイドラインの大前提であるため,ステートメントとせず序文として掲載することとした.したがって,最終的には 6 つの項目それぞれについて,クリニカル・クエスチョン

    (CQ)を作成したが,内部評価委員会の意見を参

    推奨の強さ  1:強く推奨する  2:弱く推奨する(提案する)  なし:明確な推奨ができないもしくは推奨の強さを決められない

    エビデンスレベル  A:強い根拠に基づく  B:中程度の根拠に基づく  C:弱い根拠に基づく  D:とても弱い根拠に基づく

    Table 2 推奨の強さとエビデンスレベル.

    日本消化器内視鏡学会ガイドライン委員会 理事長 田尻 久雄 (東京慈恵会医科大学先進内視鏡治療研究講座) 担当理事 藤本 一眞 (佐賀大学内科) 委員長 藤本 一眞 (佐賀大学内科)

    早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン委員会 委員長 八尾 建史 (福岡大学筑紫病院内視鏡部) 作成委員長 八尾 建史 (福岡大学筑紫病院内視鏡部) 作成委員 上堂 文也 (大阪国際がんセンター消化管内科) 鎌田 智有 (川崎医科大学総合医療センター健康管理学) 平澤 俊明 (がん研究会有明病院消化器内科) 長浜  孝 (福岡大学筑紫病院内視鏡部) 吉永 繁高 (国立がん研究センター中央病院内視鏡科)

     評価委員長 岡  政志 (埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科) 評価委員 井上 和彦 (淳風会ロングライフホスピタル) 間部 克裕 (国立病院機構函館病院消化器科) 八尾 隆史 (順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学) 吉田 雅博 (国際医療福祉大学市川病院人工透析・一般外科) 宮代  勲 (大阪国際がんセンターがん対策センター)

    外部評価委員 中山 健夫 ( 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野, 専門領域:ガイドライン作成方法論)

    菊地 正悟 ( 愛知医科大学医学部医学科公衆衛生学講座, 専門領域:公衆衛生,検診,サーベイランス)

    田尻 久雄 (東京慈恵会医科大学先進内視鏡治療研究講座,専門領域:内視鏡医療)

    協力学会 日本胃癌学会,日本消化器がん検診学会,日本消化器病学会,日本消化管学会, 日本ヘリコバクター学会,日本病理学会,日本人間ドック学会

    Table 3 早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン作成委員会.

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1288

    Gastroenterological Endoscopy

    考に修正を加え最終的に 19 個となった.これに対し,当該診療を理解する上で重要な基本的事項

    (臨床的・疫学特徴,病態,診療の全体の流れ,すでにスタンダードになった診療方法等)については,「Background knowledge」として区別した.具体的には,background knowledge は最新の情報を記載し,CQ はシステマティックレビューを経て推奨作成・提示を行うものとして,切り分けて対応した.この考え方は,「Minds からの提言 診療ガイドラインにおけるクリニカルクエスチョンとは?(http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/guideline/pdf/Proposal4_ver.1.0.pdf)」を参考とした.そして,各 CQ に対して,PubMed,Cochrane および医学中央雑誌にて遡及可能な限り古い年代から2017 年 2 月までの期間で,系統的に文献検索を行った.キーワード・検索式については,各ステートメント別に詳記した.不足した文献に対してはハンドサーチも採用した.検索した文献を評価してランダム化比較試験・観察研究(コホート研究・ケースコントロール研究)・メタアナリシス,またこれらの論文で不足する場合には症例集積研究を採用し,動物実験・遺伝子研究を除外して,各 CQ に対するステートメントと解説文を作成した.そして,作成委員は各担当分野の各文献のエビデンスレベルおよびステートメントに対する推奨の強さとエビデンスレベルを「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に従って設定した. 作成されたステートメントと解説文を用いて総説形式のガイドラインを作成し,ステートメント案に対して,作成委員と内部評価委員の合計 12 名により修正 Delphi 法による投票を行った.修正Delphi 法は, 1 - 3 :非合意, 4 - 6 :不満,7 - 9 :合意,として 7 以上のものをステートメントとして採用した. 6 点以下の評価がある場合はディスカッションを行いステートメントあるいは推奨度を修正し, 7 点以上となるまで投票を繰り返した.完成したガイドライン案は外部評価委員の評価を受けるとともに,学会会員に公開されてパブリックコメントを求めた上で,それぞれの結果に関する議論を経て修正を加え,本ガイドラインが完成した.

    3 .対象 本ガイドラインの利用者として想定しているのは,消化器内視鏡診療に関わる医療従事者である.ガイドラインはあくまでも標準的な指針であり,個々の患者の意志,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情などにより柔軟に運用する必要がある.

    [ 3 ]本論文内容に関連する著者の利益相反 ( 1 )開示:本ガイドライン作成委員,評価委員の利益相反に関して各委員には下記の内容で申告を求めた. 本ガイドラインに関係し,委員個人として何らかの報酬を得た企業・団体について:報酬(100万円以上),株式の利益(100 万円以上,あるいは5 %以上),特許使用料(100 万円以上),講演料等(50 万円以上),原稿料(50 万円以上),研究費,助成金(100 万円以上),奨学(奨励)寄付など(100 万円以上),企業などが提供する寄附講座

    (100 万円以上),研究とは直接無関係なものの提供( 5 万円以上).

     八尾建史(講演料:オリンパス),岡 政志(講演料:マイラン EPD),井上和彦(講演料:武田薬品工業,エーザイ,アストラゼネカ,第一三共,大塚製薬),間部克裕(講演料:武田薬品工業,エーザイ,寄付講座:エーザイ),八尾隆史(講演料:武田薬品工業).

     ( 2 )管理:利益相反の管理については,上記の経済的利益相反に加え,学術的利益相反についても申告し,推奨度を決定する投票の際に利益相反ありの委員は,投票を棄権した.

    [ 4 ]資金 本ガイドライン作成に関係した費用は,日本消化器内視鏡学会によるものである.

    [ 5 ]改訂 本ガイドラインの改訂は,新しいエビデンスの集積と機器や手技の進歩を見極めて,約 5 年を目標に本学会のガイドライン委員会が中心となって行う.

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1289Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    [ 6 ]早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン序文:早期胃癌の定義と内視鏡で早期胃癌を診断する意義 早期胃癌の定義は,胃粘膜に発生する上皮性悪性腫瘍のうち,リンパ節転移の有無を問わず,腫瘍の浸潤が粘膜内または粘膜下層までに留まるものである1). 早期胃癌を内視鏡により発見し治療することで胃癌による死亡率を減らすことができるかどうかのエビデンスについては,内視鏡を施行する群と施行しない群について死亡率をアウトカムとするランダム化比較試験を行うことは現実的に不可能であるので,観察研究の結果を参照する以外方法がない.また,「早期胃癌を内視鏡により発見し治療すれば,胃癌による死亡率を減らすこと」 を直接提示した報告はないが,( 1 )対策型内視鏡検診により胃癌(早期胃癌と進行胃癌)の死亡率を減少させる効果,( 2 )対策型検診により発見された胃癌に早期胃癌の比率が多いという間接的なアウトカム,( 3 )発見された早期胃癌を治療した群は,治療しなかった群よりも死亡数が少ないというエビデンスに基づき,早期胃癌を内視鏡により発見し治療をすれば,胃癌による死亡率を減らすことが期待される. ( 1 )PubMed でスクリーニングと胃癌の死亡率について文献検索を行った結果, 2 編の症例対照研究2),3), 2 編のコホート研究4),5) について記載した論文が検索された.韓国の胃癌に対するスクリーニング・プログラムを受けた被験者を対象としたコホート研究6) によると,胃内視鏡検査を受けた被験者の胃癌による死亡のオッズ比は,0.53

    (95% CI:0.51~0.56)と報告されている.すなわち,内視鏡によるスクリーニング検査は,胃癌による死亡率の減少効果に貢献すると考えられる.別の症例対照研究において,胃癌と診断された 36カ月以内に,胃内視鏡によるスクリーニングを受けていた対象者は,まったく受けていない対象者と比較して 30%のオッズの低下が報告されている2).他の症例対照研究の結果,胃癌に対する内視鏡によるスクリーニング検査を受けている被験者は,受けていない被験者と比較し,胃癌により死亡するオッズ比が 0.206(95%CI:0.044~0.965)であったと報告されている3). ( 2 )また,死亡率をアウトカムにした研究では

    なく,リードタイムバイアスを考慮する必要があるが,胃癌に対するスクリーニング検査を受けた集団と受けない集団についての比較試験を対象としたメタアナリシスの結果によると,スクリーニングを受けた患者集団において発見された胃癌における早期胃癌の占める割合は 73%であり,スクリーニングを受けていない集団の 43%より,有意に多かったと報告されている7). ( 3 )発見された早期胃癌を治療すると死亡数が減少するかという点については,遡及的観察研究で治療群における胃癌死亡率のハザード比は 0.51で,治療しなかった群より低かったと報告されている8). これら( 1 ),( 2 ),( 3 )の結果を総合的に考えると,内視鏡で発見された早期胃癌を治療すれば胃癌による死亡数は減少すると推察できる. また,内視鏡による有害事象は,日本消化器内視鏡学会が行った多施設共同前向き観察研究で上部消化管内視鏡観察 11,081 件の偶発症頻度は0.171%(生検 3,447 件中,0.667%)であったが死亡例はなかった9).益と害のバランスについては評価できるエビデンスが充分には示されていない.患者により内視鏡検査を受けたいという価値観や好みにはばらつきがあり,負担についても内視鏡による患者の苦痛は人により異なる10).内視鏡検査で早期胃癌を発見することについて,日本人全体に対する医療経済性を検討した論文はない.今後検討の余地が残されている.しかし,日本では,保険診療,対策型検診を利用した内視鏡検査は比較的安価であり,コストに見合った利益を得る点では,問題ないと考えられる.人的資源については,日本消化器内視鏡学会の会員数は34,258 人(2018 年 2 月現在)であり問題ないと考えられる.また,有症状者など胃癌の発見とは別の目的で施行した保険診療としての内視鏡検査により多数の早期胃癌が発見されているので,現在のところ,保険診療においては資源に充分見合ったものと推測される.対策型検診については,2016 年に正式に認められたばかりであり,マンパワーについて現時点では評価できない. 本ガイドラインに記載された内容は,対象の年齢や Helicobactor pylori(H. pylori)感染率により,異なる可能性がある. 本ガイドラインでは,[Ⅰ]内視鏡検査施行前の

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1290

    Gastroenterological Endoscopy

    胃癌のリスク層別化,[Ⅱ]早期胃癌発見,[Ⅲ]早期胃癌の質的診断(癌と非癌の鑑別診断),[Ⅳ]胃癌の治療方針を決定する診断,[Ⅴ]内視鏡検査後のリスク層別化,[Ⅵ]早期胃癌のサーベイランス,という 6 つの大きな項目を,実際の診療の時系列に沿って順を追って設定した.そして,これらのステートメントから導き出した「早期胃癌診断のための内視鏡診療アルゴリズム」の提案を行ったことが,本ガイドラインの大きな特徴である.

    文 献

     1.  Japanese Gastric Cancer Association. Japanese clas-sification of gastric carcinoma : 3rd English edition. Gastric Cancer 2011;14:101-12.(ハンドサーチ)(ガイドライン)

     2.  Hamashima C, Ogoshi K, Okamoto M et al. A com-munity-based, case-control study evaluating mortali-ty reduction from gastric cancer by endoscopic screening in Japan. PLoS One 2013;8:e79088.

    (PubMed)(症例対照研究) 3.  Matsumoto S, Yoshida Y. Efficacy of endoscopic

    screening in an isolated island : a case-control study. Indian J Gastroenterol 2014;33:46-9.(PubMed)( 症例対照研究)

     4.  Hamashima C, Ogoshi K, Narisawa R et al. Impact of endoscopic screening on mortality reduction from gastric cancer. World J Gastroenterol 2015;21:

    2480-6.(PubMed)(コホート研究) 5.  Matsumoto S, Ishikawa S, Yoshida Y. Reduction of

    gastric cancer mortality by endoscopic and radio-graphic screening in an isolated island : A retrospec-tive cohort study. Aust J Rural Health 2013;21:319-24.(PubMed)(コホート研究)

     6.  Jun JK, Choi KS, Lee HY et al. Effectiveness of the Korean National Cancer Screening Program in Re-ducing Gastric Cancer Mortality. Gastroenterology 2017;152:1319-28.e7.(ハンドサーチ)(コホート研究)

     7.  Khanderia E, Markar SR, Acharya A et al. The in-fluence of gastric cancer screening on the stage at diagnosis and survival : a meta-analysis of compara-tive studies in the Far East. J Clin Gastroenterol 2016;50:190-7.(PubMed)(メタアナリシス)

     8.  Tsukuma H, Oshima A, Narahara H et al. Natural history of early gastric cancer : a non-concurrent, long term, follow up study. Gut 2000;47:618-21.

    (ハンドサーチ)(コホート研究) 9.  加藤元嗣,古田隆久,伊藤 透ほか.抗血栓薬服用者

    に対する消化器内視鏡に関連した偶発症の全国調査結果.Gastroenterol Endosc 2017;59:1532-6.(ハンドサーチ)(コホート研究)

    10.  Gotoda T, Ishikawa H, Ohnishi H et al. Randomized controlled trial comparing gastric cancer screening by gastrointestinal X-ray with serology for Helicobacter pylori and pepsinogens followed by gastro-intestinal endoscopy. Gastric Cancer 2015;18:605-11.(ハンドサーチ)(RCT)

    [Ⅰ]内視鏡検査施行前の胃癌のリスク層別化ステートメント:1-1

     胃癌のリスクとして H. pylori 感染,胃粘膜萎縮,遺伝性疾患,喫煙など明らかなリスクファクターが指摘されている.その他にも食事,嗜好,Epstein-Barr(EB)ウイルスなどが可能性のあるリスクファクターとして報告されている.

    修正 Delphi 法による評価 なし(background knowledge)エビデンスレベル:C

    解説: H. pylori 感染と胃癌との間には強い関連があることが分かっており1),2),International Agency for Research on Cancer(IARC)でも H. pyloriは Group 1 の発癌因子に挙げられている.H. pylori の中には病原蛋白である CagA を持つものがあり,この CagA が胃癌の発生と強く関連することが3),メタアナリシスでも示されている4).また,H. pylori 感染率と胃癌の発生率との相関は人

    種によって異なるが5),これは H. pylori の持つCagA のタイプが異なることが原因の 1 つと考えられ,East-Asian-type の CagA をもつ H. pylori感染者は non-East-Asian-type の CagA をもつH. pylori 感染者より有意に胃癌の有病率が高く6),マレーシアのような多民族国家内の人種間7)

    やアジア諸国間8) でも H. pylori の CagA のタイプの割合が異なっており,このことにより人種間

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1291Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    での胃癌の発生率の違いが生じていると考えられる.その他にも H. pylori が胃粘膜上皮に空胞変性を引き起こす空胞化毒素 VacA の有無も胃癌の発生と関連があるとされている9),10).VacA はCagA 同様構造多型があり VacA の s1/m1 型とCagA の組み合わせが胃癌の発生に強く関連している11),12). 胃粘膜萎縮の有無は,H. pylori 感染と同様に胃癌の発生と強い関連をもつ13)~15).血清ペプシノゲンは萎縮性胃炎の指標として用いられており,特に胃底腺領域のみから産生される PG Ⅰと胃底腺,幽門腺両方より産生される PG Ⅱの比であるPG Ⅰ/PG Ⅱ比が萎縮の程度と相関するといわれている16).この PG Ⅰ/PG Ⅱ比の低値が胃癌の発生と相関することが長期間の前向き大規模コホート研究17),システマティックレビュー18),メタアナリシス19) において示されている. その他の胃癌のリスクを先天的因子,後天的因子に分けて考えると,先天的因子として遺伝子多型や遺伝性疾患,性別,人種などが挙げられる.遺伝子多型については肯定的な結果も多いが否定的な結果も多く,また人種や胃癌の組織型によりその関連性は異なるなど今後のさらなる検討が必要である20)~23). 遺伝性疾患として遺伝性びまん性胃癌(heredi-tary diffuse gastric cancer:HDGC), そ の 他Lynch 症候群,家族性大腸腺腫症(familial adenom-atous polyposis:FAP),Peutz-Jeghers 症候群,Li-Fraumeni 症候群に伴う胃癌などがある24).HDGC は常染色体優性遺伝の形式で遺伝し未分化型胃癌が発生する24),25).原因遺伝子としてCDH1 遺伝子の変異を認めることがあり,この遺伝子変異を認めると大部分が 40 歳以前に胃癌を発症する.また Lynch 症候群は生殖細胞系列での ミ ス マ ッ チ 修 復 遺 伝 子(MLH1・MSH2・MSH6・PMS2)の変異を認め, 6 ~13%の胃癌発生リスクがあるといわれている26).FAP は APC遺伝子の変異によって発症する APC 関連ポリポーシスに含まれており,日本人,韓国人においては一般人に比べて胃癌の発生率は 10 倍である27).また類縁疾患の胃腺癌および近位胃ポリポーシス(gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach:GAPPS)においても胃癌の発生リスクが高いとされている27).その他,

    Peutz-Jeghers 症候群や Li-Fraumeni 症候群でも消化管癌のリスクが高いとされている28),29).また胃癌の家族歴があることは 1.5~3.5 倍の危険度があるといわれており30),遺伝性素因も含め家族歴の有無は重要な因子と考えられる.性別では女性に比べ男性のほうが胃癌の発生率が高く31),女性におけるエストロゲンが胃癌の発生率を下げる可能性が示唆されている32).人種では胃癌はアジア,特に東アジアに多くみられるが5),マレーシアのような多民族国家における前向きコホート研究では H. pylori 感染率はすべての民族で高かったにも関わらず,インド系に比べ中華系の人種に胃癌が多く発生していたと報告されており,同じ地域でも人種により胃癌発生率は異なることが示されている33). 後天的因子として食事,嗜好,疾患,薬物,職業,運動,H. pylori 感染などが挙げられる.食事に関して果物や野菜がリスクを下げるという報告が多いが34),35),種類によるという報告36)~38) や否定的なものもあり39),さらなる検討の余地がある.魚の摂取と胃癌リスクとの関連ははっきりとせず40),赤身の加工肉の摂取は胃癌リスクを増加させる可能性が示唆されている41).高脂肪の乳製品の摂取に関しては胃癌のリスクを上げる,関連がないなどの報告がある34),42).別のメタアナリシスでは脂肪摂取は胃癌のリスクを上げる可能性があるが,飽和脂肪酸がリスクを上げるのに対し,多価不飽和脂肪酸や植物脂肪はリスクを下げ,単価不飽和脂肪酸や動物脂肪はリスクと関連がないなど,サブグループ解析に一致した結果がないという結論であった43).また塩漬けの食べ物の摂取と胃癌リスクに関するメタアナリシスでは胃癌リスクが 50%上昇するという結果が出ている44).塩分摂取量を調べた前向きコホート研究においても,特に H. pylori 感染を伴う萎縮性胃炎患者で塩分摂取と胃癌のリスク増加に関連を認めている45).ビタミン C に関しては多国間多施設大規模研究で胃癌リスクの低下に寄与する可能性が示唆されたが46),いまだ賛否が分かれている47)~49).また body mass index(BMI)と胃癌との関係について BMI 上昇と胃癌リスクの上昇が関連するというメタアナリシスの結果がある一方50),噴門部癌と関連はあったが非噴門部癌にはなかったとするメタアナリシス51) の結果もある.BMI と食道

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1292

    Gastroenterological Endoscopy

    腺癌・噴門部癌との間にみられる強い関連に比べ52),まだ議論の余地があると思われる.飲酒と胃癌リスクの関連に関して,日本人におけるシステマティックレビューと他のメタアナリシスにおいて明らかな関連がないと報告されているが,方法などを統一した上での計画的な検討が必要と考えられた53),54).喫煙は胃癌のリスク増加との関連については否定的な報告もあるが 55),肯定的な報告も多く56),57),IARC でも sufficient evidenceがある発癌因子として挙げられている.コーヒー摂取と胃癌リスクに関しては 3 つのメタアナリシスで,胃癌リスク低下に関連があるかもしれない58),関連がない59),関連ないが噴門部癌のリスクは増加させるかもしれない60),と一定の見解がない.緑茶摂取についても同様で,日本人女性において胃癌リスクを低下させるかもしれないというシステマティックレビュー61) はあるが関連がないとするメタアナリシスもある62),63).生活習慣に関して胃癌患者と年齢,人種,性別をマッチさせた症例対照研究にて夕食から就寝までの時間が 3 時間未満,食後に歩かないことが胃癌リスクの上昇と関連したと報告され,今後のさらなる研究が期待される64).他疾患と胃癌との関係について糖尿病は胃癌リスクの増加と強い関連が示唆されるという報告があるが65)~68),男性患者において関連がないというシステマティックレビューもある65).また内服薬では非ステロイド系消炎鎮痛剤

    (NSAIDs)69),70),特に aspirin が胃癌のリスクを減少させるという報告があるが,その投与量が異なっており,さらなる検討が必要と思われる71),72).またスタチン系薬剤による胃癌リスクの低下もメタアナリシスにおいて示唆されているが薬剤の種類による違いや長期予後などまだ不明な点が多くこちらもさらなる研究が必要である73).その他職業上のアスベスト曝露が胃癌リスクを増加させるというメタアナリシスがあり74),IARC でも限られた証明のみとはされているが Group 1 の発癌因子として挙げられている.また EB ウイルスは胃癌組織の 10%前後に認められ75),76),胃癌リスクとの関連性が証明されている77),78).しかし,in situ hybridization(ISH)法での検索では強い関連を認めるが PCR 法単独では不充分な結果で77),また成人の 90%以上が EB ウイルスに潜伏感染していることと76) 実際の胃癌における陽性率との

    相違からも,IARC では発癌因子に挙げられてはいるが限られた証明のみとされており,リスクファクターとしてどれだけの重みがあるかはまだ議論の余地が残っている. 以上,胃癌のリスクに影響を与える因子は上記のように様々あるが,実際にはこのような因子が複雑に関連すると考えられ39),42),50),79),H. pylori感染,胃粘膜萎縮,遺伝性素因,喫煙など関連性の強い因子以外は一定の評価が得られていないのが現状と考えられる.また IARC80) や国立がん研究センター81) のホームページでも胃癌のリスク因子に関する記載があるのでご参照頂きたい.

     今回の文献抽出については,database は Cochraneおよび PubMed を用いた.gastric cancer と risk factor,atrophy,smoking,drinking,alcohol,salt,preserved meat,vegitable,fruit,CagA,Gastrin 17,sex,age,family history,(past his-tory, gastric cancer),(past history, gastric ade-noma),(past history, esophageal cancer),Helicobacter pylori antibody,(Helicobacter pylori antibody, risk stratification),serum pepsinogen,

    (serum pepsinogen, risk stratification)の組み合わせを用いて検索をかけた結果 546 編の論文がヒットし,システマティックレビュー34 編,メタアナリシス 76 編が検索された(重複あり).重複を除き胃癌のリスクファクターに関係のあるシステマティックレビュー 9 編,メタアナリシス 30 編,その他関連文献を引用した.またガイドライン委員会での話し合いの過程において gastric cancerと EB virus,systematic,meta-analysis の組み合わせを用いて PubMed にて 70 編の論文が検索され(重複あり),重複を除き胃癌のリスクファクターに関係のあるシステマティックレビュー 2 編を引用した.その他文献内の引用文献およびPubMed を用いたハンドサーチにて 21 編追加引用した.

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    Gastroenterological Endoscopy

    ステートメント:1-2

     内視鏡検査前の胃癌リスクの層別化は可能であり,経済効果も期待できる.しかし,具体的な方法については課題が残されている.

    修正 Delphi 法による評価 なし(background knowledge)エビデンスレベル:C

    解説: 日本において血清ペプシノゲン値および血清H. pylori 抗体価を用いた胃癌リスクの層別化によるコホート内対象研究が1),また,日本を含む多国間において血清 H. pylori 抗体価を用いたリスク層別化による大規模コホート研究が行われている2).また, 4 つのコホート研究のメタアナリシスにおいても血清ペプシノゲン値および血清H. pylori 抗体価を用いた胃癌リスクの層別化の可能性が示唆されたが,群の分け方による解釈や測定方法の相違などの問題があるため,具体的なリスク層別化の方法については課題がある3).シンガポールからの報告では,胃癌高リスク群と低リスク群に分けて内視鏡的サーベイランスを行った場合に有意に費用減少効果を認めている4),5).しかしながら,シンガポールと日本では母集団の胃癌の有病率,H. pylori 感染率に相違があるため,日本における検査前のリスク層別化にそのまま当てはめることはできない.

     今回の文献抽出については, 1 - 1 で検索されたものの関連文献およびハンドサーチにて検索された文献 5 編を引用した.

    文 献

     1.  Sasazuki S, Inoue M, Iwasaki M et al. Effect of Helicobacter pylori infection combined with CagA and pepsinogen status on gastric cancer development among Japanese men and women : a nested case-control study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2006;15:1341-7.(ハンドサーチ)(コホート研究)

     2.  Helicobacter and Cancer Collaborative Group. Gas-tric cancer and Helicobacter pylori : a combined anal-ysis of 12 case control studies nested within prospec-tive cohorts. Gut 2001;49:347-53.(ハンドサーチ)

    (コホート研究) 3.  Terasawa T, Nishida H, Kato K et al. Prediction of

    gastric cancer development by serum pepsinogen test and Helicobacter pylori seropositivity in Eastern Asians : a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2014;9:e109783.(ハンドサーチ)(メタアナリシス)

     4.  Dan YY, So JB, Yeoh KG. Endoscopic screening for gastric cancer. Clin Gastroenterol Hepatol 2006;4:709-16.(ハンドサーチ)(症例集積研究)

     5.  Zhou HJ, Li SC, Naidoo N et al. Empirical evidence of the continuing improvement in cost efficiency of an endoscopic surveillance programme for gastric cancer in Singapore from 2004 to 2010. BMC Health Serv Res 2013;13:139.(ハンドサーチ)(症例集積研究)

    ステートメント:1-3

     血清 H. pylori 抗体および血清ペプシノゲンの組み合わせが胃癌のリスク層別化に有用である可能性がある.しかし,高度萎縮症例,過去感染例での偽陰性や H. pylori 抗体価のカットオフ値やその測定方法,ペプシノゲン値の解釈,PG Ⅰ/PG Ⅱ比のカットオフ値などの課題がある.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 9 ,最低値: 7 ,最高値: 9推奨の強さ: 2  エビデンスレベル:C

    解説:  1 - 1 , 1 - 2 に提示したエビデンスを考えると,H. pylori 感染の有無と血清ペプシノゲンの測

    定を行うことが胃癌リスクの層別化に有用である可能性があるといえる.H. pylori 感染の有無を調

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1297Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    べる方法として培養法,鏡検法,尿素呼気テストなどがあるが,簡便な方法として,血清 H. pylori抗体の計測が胃癌リスクの層別化に有用であることが証明されている1).また,血清ペプシノゲン値も胃癌リスクのスクリーニングに有用であることが示されており2),血清 H. pylori 抗体価と血清ペプシノゲン値の測定により対象を 4 群に分けるいわゆる ABC 検診が提唱されている3).すなわち PG Ⅰと PG Ⅰ /PG Ⅱ比の組み合わせ,および血清 H. pylori 抗体価により A 群[Hp(-),PG

    (-)],B 群[Hp(+),PG(-)],C 群[Hp(+),PG(+)],D 群[Hp(-),PG(+)]に分けることにより胃癌のリスクを層別化する方法であり,前向きコホート研究で A 群に比べ C 群が6.0 倍,D 群が 8.2 倍胃癌の発生リスクが高いという結果でその有用性が証明された3).しかし,H. pylori 感染率の高い集団が対象ではリスク層別化にならないという意見4) や A 群の中に H. pylori既感染例や現感染例が含まれる事実5),システマティックレビューで 4 群ではなく A 群,B 群,C+D 群の 3 群に分けたほうが妥当であるという結果6) などの問題点が報告されており,H. pylori抗体価のカットオフ値やその測定方法,ペプシノゲン値の解釈,PG Ⅰ /PG Ⅱ比のカットオフ値などについて検討がなされている7)~9). その他 1 - 1 で挙げられた因子のうち遺伝的素因については発端者以外は家族歴聴取により拾い上げが可能なため,家族歴の聴取はリスクの層別化に有用な可能性がある.

     今回の文献抽出については, 1 - 1 で検索されたもの文献 1 編,その他関連論文, 1 - 2 で引用した文献,およびハンドサーチにて検索された文献8 編を引用した.

    文 献

     1.  Huang JQ, Sridhar S, Chen Y et al. Meta-analysis of the relationship between Helicobacter pylori seropos-itivity and gastric cancer. Gastroenterology 1998;114:1169-79.(ハンドサーチ)(メタアナリシス)

     2.  Dinis-Ribeiro M, Yamaki G, Miki K et al. Meta-anal-ysis on the validity of pepsinogen test for gastric car-cinoma, dysplasia or chronic atrophic gastritis screening. J Med Screen 2004;11:141-7.(ハンドサーチ)(メタアナリシス)

     3.  Watabe H, Mitsushima T, Yamaji Y et al. Predicting the development of gastric cancer from combining Helicobacter pylori antibodies and serum pepsinogen status : a prospective endoscopic cohort study. Gut 2005;54:764-8.(ハンドサーチ)(コホート研究)

     4.  Shimoyama T, Aoki M, Sasaki Y et al. ABC screen-ing for gastric cancer is not applicable in a Japanese population with high prevalence of atrophic gastritis. Gastric Cancer 2012;15:331-4.(ハンドサーチ)(コホート研究)

     5.  Boda T, Ito M, Yoshihara M et al. Advanced method for evaluation of gastric cancer risk by serum markers : determination of true low-risk subjects for gastric neoplasm. Helicobacter 2014;19:1-8.

    (PubMed)(症例対照研究) 6.  Terasawa T, Nishida H, Kato K et al. Prediction of

    gastric cancer development by serum pepsinogen test and Helicobacter pylori seropositivity in Eastern Asians : a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2014;9:e109783.(ハンドサーチ)(システマティックレビュー)

     7.  Kishikawa H, Kimura K, Ito A et al. Predictors of gastric neoplasia in cases negative for Helicobacter pylori antibody and with normal pepsinogen. Anti-cancer Res 2015;35:6765-71.(ハンドサーチ)(症例対照研究)

     8.  Kitamura Y, Yoshihara M, Ito M et al. Diagnosis of Helicobacter pylori-induced gastritis by serum pep-sinogen levels. J Gastroenterol Hepatol 2015;30:1473-7.(ハンドサーチ)(横断研究)

     9.  Kishikawa H, Kimura K, Ito A et al. Cutoff pepsino-gen level for predicting unintendedly eradicated cases of Helicobacter pylori infection in subjects with seem-ingly normal pepsinogen levels. Digestion 2017;95:229-36.(ハンドサーチ)(症例対照研究)

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1298

    Gastroenterological Endoscopy

    [Ⅱ]早期胃癌発見ステートメント:2-1

     蠕動運動が激しく観察が難しい症例では,胃蠕動運動抑制剤の使用を考慮する.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 8 ,最低値: 6 ,最高値: 9推奨の強さ:決定できない エビデンスレベル:D

    解説: 胃は前庭部を中心に蠕動運動が活発で,内視鏡観察に支障を来す場合がある.そのため上部消化管内視鏡検査の際に,蠕動運動抑制剤が前投薬として使用されることがある1).蠕動運動抑制剤は注射剤として,抗コリン薬である臭化ブチルスコポラミンとグルカゴンがあり,局所散布製剤としてペパーミントオイルおよびその主成分であるl-menthol 製剤がある2),3).Hiki らはランダム化比較試験で l-menthol 製剤の胃の蠕動運動抑制効果を示した3). 臭化ブチルスコポラミン投与の禁忌に,緑内障,前立腺肥大症,重篤な心疾患,麻痺性イレウスがあり,主な副作用として心悸亢進,排尿障害,口渇,視調節障害などがあるため,高齢者では使用しにくい4).グルカゴン投与の禁忌には褐色細胞腫,コントロール不良な糖尿病があり,副作用の遅発性低血糖発作には注意が必要である.グルカゴンは臭化ブチルスコポラミンと比較して心臓血管系の影響は少ない5).ペパーミントオイル,l-menthol 製剤は重篤な副作用がなく,比較的安全に使用できる2),3). 蠕動運動を抑制することにより,内視鏡の観察が容易になると考えられるが,いずれの蠕動運動抑制剤も早期胃癌の発見を向上させるということを,明確に示した研究は存在しない.しかしながら,よりよい視野を保つことができれば,早期胃癌の発見率が向上することが推測されるため,蠕動運動が激しく観察が難しい症例では,必要に応じて胃蠕動運動抑制剤の使用を考慮する.なお,薬剤のコストは高い順にグルカゴン,l-menthol製剤,臭化ブチルスコポラミンである. ガイドライン作成委員会推奨決定会議では,推奨度を明記しないという以外に,“ 蠕動運動が激しく観察に制限がかかる症例では,胃蠕動運動抑制剤の使用を弱く推奨する ” という意見も出た.

     今回の文献抽出に関しては,database は PubMedおよび医学中央雑誌を用いた.PubMed では検索式(gastroscopy OR esophagogastroduodenosco-py) AND (antidiarrheals OR antiperistaltic OR “cholinergic antagonists” OR “scopolamine hydro-bromide” OR “scopolamine butylbromide” OR glucagon OR peppermint) Filters: Humans; En-glish; Japanese をかけた結果 288 文献がヒットし,医学中央雑誌では,検索式((((蠕動 /TH or 蠕動運動 /AL) or (薄荷 /TH or ハッカ /AL) or cholinergic/AL and antagonists/AL or (“Scopol-amine Hydrobromide”/TH or scopolamine/AL) or (Glucagon/TH or glucagon/AL))) and ((内視鏡 /TH or 内視鏡 /AL) or 上部消化管内視鏡検査 /AL)) and (PT =会議録除く)をかけた結果 153 文献がヒットした.その中で本ステートメントに沿った文献を絞り込み,さらにハンドサーチにて文献を追加した.

    文 献

     1.  Yao K, Nagahama T, Matsui T et al. Detection and characterization of early gastric cancer for curative endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc 2013;25:44-54.(ハンドサーチ)(専門家の意見)

     2.  Hiki N, Kurosaka H, Tatsutomi Y et al. Peppermint oil reduces gastric spasm during upper endoscopy : a randomized, double-blind, double-dummy controlled tr ia l . Gastrointest Endosc 2003;57:475-82.

    (PubMed)(RCT) 3.  Hiki N, Kaminishi M, Yasuda K et al. Antiperistaltic

    effect and safety of L-menthol sprayed on the gas-tric mucosa for upper GI endoscopy : a phase Ⅲ, multicenter, randomized, double-blind, placebo-con-trolled study. Gastrointest Endosc 2011;73:932-41.(PubMed)(RCT)

     4.  Umegaki E, Abe S, Tokioka S et al. Risk manage-ment for gastrointestinal endoscopy in elderly patients : questionnaire for patients undergoing gas-trointestinal endoscopy. J Clin Biochem Nutr 2010;

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1299Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

    46:73-80.(ハンドサーチ)(症例集積研究) 5.  Hashimoto T, Adachi K, Ishimura N et al. Safety

    and efficacy of glucagon as a premedication for up-

    per gastrointestinal endoscopy--a comparative study with butyl scopolamine bromide. Aliment Pharmacol Ther 2002;16:111-8.(PubMed)(RCT)

    ステートメント:2-2

     粘膜の視認性が向上すれば,早期胃癌の発見につながることが推測されるため,胃内粘液溶解除去剤および消泡剤の使用が強く推奨される.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 8 ,最低値: 7 ,最高値: 9推奨の強さ: 1  エビデンスレベル:D

    解説: 粘膜表面に付着している泡や粘液は,内視鏡観察の妨げになり,粘膜の微細な変化を見落とす原因となる.そのため,粘膜の視認性を向上させる目的で,胃内粘液溶解除去剤および消泡剤が前処置薬として使用されることが多い1).胃内粘液溶解除去剤にはプロナーゼと N- アセチルシステインがあり,日本ではプロナーゼが胃内視鏡検査における胃内粘液の溶解除去として承認されている.プロナーゼの投与により,粘膜の視認性が改善するというランダム化比較試験が複数報告されており2)~4),色素内視鏡や NBI(narrow-band imaging)拡大観察に対しても有用とされている5),6). 一方,消泡剤にはジメチコンが使用される.プラセボとジメチコンの投与を比較したランダム化比較試験ではジメチコン投与群では胃内の泡が有意に少なく,特に残胃の症例で消泡効果が強く表れた7).ジメチコンの投与が検査時間の短縮8) や内視鏡医の満足度の向上につながるという報告もある9). メタアナリシスでは,ジメチコン単剤投与は,プロナーゼや N- アセチルシステイン単剤投与よりも内視鏡視認性の向上効果を認めた.また,ジメチコンにプロナーゼや N- アセチルシステインを併用した際の視認性の向上効果は限定的であった10). 胃内粘液溶解除去剤および消泡剤が早期胃癌の発見を向上させるということを,明確に示した研究は存在しない.しかしながら,粘膜の視認性が向上すれば,早期胃癌の発見につながることが推測されるため,日本では胃内粘液溶解除去剤およ

    び消泡剤の使用が勧められる.なお,ジメチコン,プロナーゼは安価で副作用の頻度が低いため,使用しやすい薬剤である.しかし,プロナーゼは粘液の除去に伴い,患部より出血するおそれがあるため,胃内出血の疑いがある患者には慎重投与とされている. ガイドライン作成委員会推奨決定会議では,胃内粘液溶解除去剤および消泡剤が直接早期胃癌の発見を向上させるというエビデンスはないが,粘膜の視認性が向上するという強いエビデンスがあり,安価で副作用が少なく,容易に入手でき,かつ患者負担も少ないことから,強く奨励することとなった.

     今回の文献抽出に関しては,database は PubMedおよび医学中央雑誌を用いた.PubMed では検索式((gastroscopy OR esophagogastroduodenos-copy) AND (expectorants[pa] OR pronase OR “antifoaming agents” OR defoaming OR Simethi-cone OR Octoxynol))Filters: Humans; English; Japanese をかけた結果 93 文献がヒットし,医学中央雑誌では(((内視鏡 /TH or 内視鏡 /AL) or 上部消化管内視鏡検査 /AL) and ((粘液溶解 /AL or (去痰剤 /TH or 去痰剤 /AL) or (Pronase/TH or pronase/AL) or (Pronase/TH or プロナーゼ /AL) or (消泡剤 /TH or 消泡剤 /AL))) and

    (PT =会議録除く)の検索式をかけた結果 130 文献がヒットした.その中で本ステートメントに沿った文献を絞り込み,さらにハンドサーチにて文献を追加した.

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1300

    Gastroenterological Endoscopy

    文 献

     1.  Yao K, Nagahama T, Matsui T et al. Detection and characterization of early gastric cancer for curative endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc 2013;25:44-54.(ハンドサーチ)(専門家の意見)

     2.  Fujii T, Iishi H, Tatsuta M et al. Effectiveness of premedication with pronase for improving visibility during gastroendoscopy : a randomized controlled tri-al. Gastrointest Endosc 1998;47:382-7.(PubMed)

    (RCT) 3.  Chang CC, Chen SH, Lin CP et al. Premedication

    with pronase or N-acetylcysteine improves visibility during gastroendoscopy : an endoscopist-blinded, pro-spective, randomized study. World J Gastroenterol 2007;13:444-7.(PubMed)(RCT)

     4.  Lee GJ, Park SJ, Kim SJ et al. Effectiveness of pre-medication with pronase for visualization of the mu-cosa during endoscopy : a randomized, controlled tri-al. Clin Endosc 2012;45:161-4.(PubMed)(RCT)

     5.  Cha JM, Won KY, Chung IK et al. Effect of pronase premedication on narrow-band imaging endoscopy in patients with precancerous conditions of stomach.

    Dig Dis Sci 2014;59:2735-41.(PubMed)(RCT) 6.  Kim GH, Cho YK, Cha JM et al. Effect of pronase as

    mucolytic agent on imaging quality of magnifying en-doscopy. World J Gastroenterol 2015;21:2483-9.

    (PubMed)(RCT) 7.  Bertoni G, Gumina C, Conigliaro R et al. Randomized

    placebo-controlled trial of oral liquid simethicone pri-or to upper gastrointestinal endoscopy. Endoscopy 1992;24:268-70.(PubMed)(RCT)

     8.  Ahsan M, Babaei L, Gholamrezaei A et al. Simethi-cone for the preparation before esophagogastroduo-denoscopy. Diagn Ther Endosc 2011;2011:484532.

    (ハンドサーチ)(RCT) 9.  Keeratichananont S, Sobhonslidsuk A, Kitiyakara T

    et al. The role of liquid simethicone in enhancing en-doscopic visibility prior to esophagogastroduodenos-copy(EGD): a prospective, randomized, double-blinded, placebo-controlled trial. J Med Assoc Thai 2010;93:892-7.(PubMed)(RCT)

    10.  Chen HW, Hsu HC, Hsieh TY et al. Pre-medication to improve esophagogastroduodenoscopic visibility : a meta-analysis and systemic review. Hepatogastro-enterology 2014;61:1642-8.(PubMed)(メタアナリシス)

    ステートメント:2-3

     不安が強い場合や,反射や体動により観察が難しい症例では,副作用に注意して鎮静剤・鎮痛剤を使用してもよい.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 8 ,最低値: 7 ,最高値: 9推奨の強さ:決定できない エビデンスレベル:D

    解説: 鎮静剤は,患者の不安や不快感を取り除き,鎮痛剤は意識レベルの低下を来さずに痛みを軽減させる.鎮静剤・鎮痛剤は内視鏡検査に対する患者側の受容性や満足度を改善する.また,鎮静剤・鎮痛剤は内視鏡医の観点からも,検査の完遂や診断精度および治療成績の向上に有用である1).鎮静剤・鎮痛剤の副作用としては,呼吸抑制,循環抑制,徐脈,不整脈,前向性健忘,脱抑制,吃逆などがある.死亡を含む重篤な偶発症の報告もあり,鎮静剤・鎮痛剤を使用する場合は,モニタリング実施可能な人員配置と診療環境の確保が重要である.また,内視鏡終了後も覚醒までの間は患者監視を継続する必要がある1). 現時点では,鎮静剤・鎮痛剤が早期胃癌の発見に寄与することを,明確に示した研究は存在しない.しかし,患者の不安が強い場合や,苦痛や体

    動により観察が難しい症例では,鎮静剤・鎮痛剤を使用してもよい.また,鎮静剤・鎮痛剤の使用に関しては前述の副作用や偶発症への対策がとれる施設環境が必要である. ガイドライン作成委員会推奨決定会議では,当初,“ 不安が強い場合や,反射や体動により観察が難しい症例では,副作用に注意して鎮静剤・鎮痛剤の使用を考慮する ” というステートメントであった.しかし,修正 Delphi 投票の結果,中央値が 7 ,範囲 7 - 9 であったため,再度討議を行ったところ,日本全国でみると鎮静剤・鎮痛剤の使用できる人員配置や診療環境には制限があり,細径内視鏡などの内視鏡機器の開発や内視鏡技術の向上により鎮静剤・鎮痛剤の使用を減少させることも可能であることから,“ 使用を考慮する ” から“ 使用してもよい ” と表現を弱くした.

  • ガイドライン■早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン 1301Vol. 61(6), Jun. 2019

    Gastroenterological Endoscopy

     なお,上部消化管内視鏡検査の際の鎮静剤・鎮痛剤の投与については,日本消化器内視鏡学会のガイドラインを参照して行う1).

     今回の文献抽出に関しては,database は PubMedおよび医学中央雑誌を用いた.PubMed では検索式 (“stomach neoplasms” AND Hypnotics and Sedatives [Pharmacological Action]) Filters: Hu-mans; English; Japanese をかけた結果 42 文献がヒットし,“stomach neoplasms/diagnosis” AND analgesics[Pharmacological Action] Filters: Hu-mans; English; Japanese をかけた結果 12 文献がヒットした.医学中央雑誌では検索式(((胃腫瘍 /TH or 胃腫瘍 /AL)) and ((催眠剤と鎮静剤 /TH or 催眠剤と鎮静剤 /AL))) and (PT =会議録除

    く)をかけた結果 72 文献がヒットし,((((胃腫瘍 /TH or 胃腫瘍 /AL)) and (((SH =診断的利用,診断,画像診断,X 線診断,放射性核種診断,超音波診断) or (診断 /TI)))) and ((鎮痛剤 /TH or 鎮痛剤 /AL))) and (PT =会議録除く)かけた結果 64 文献がヒットした.さらにハンドサーチにて文献を検索したが,鎮静剤・鎮痛剤が早期胃癌の発見に寄与することを示した研究は存在しなかった.

    文 献

     1.  Obara K, Haruma K, Irisawa A et al. Guidelines for sedation in gastroenterological endoscopy. Dig En-dosc 2015;27:435-49.(PubMed)(ガイドライン)

    ステートメント:2-4

     胃の観察時間と早期胃癌の発見は関連性があり,充分な時間をかけて胃内を観察すべきである.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 8 ,最低値: 7 ,最高値: 9推奨の強さ: 1  エビデンスレベル:D

    解説: 上部消化管内視鏡検査時間と早期胃癌の発見に関した研究は,これまで 3 つ報告されている.Tehらは,837 件の内視鏡検査のうち,挿入から抜去までの平均検査時間が 7 分未満の内視鏡医は早期胃癌を発見できなかったが,平均検査時間が 7 分以上の内視鏡医は早期胃癌を 4 病変(0.9%)発見したと報告した1).Kawamura らの報告では,15,763 件の内視鏡検査を解析し,挿入から抜去までの平均検査時間が 5 分未満の内視鏡医の早期胃癌の発見率は 0.2%に対して, 5 分以上の内視鏡医は 0.4%と高い傾向にあった2).Park らは,111,962 件の内視鏡検査を,十二指腸までの挿入と洗浄の時間を除いた純粋な胃内の平均観察時間が3 分以下の fast endoscopist 群と, 3 分を超えるslow endoscopist 群に分けて検討を行った3).早期胃癌の発見率は fast endoscopist 群が 0.06%に対して,slow endoscopist 群は 0.09%であり,有意に slow endoscopist 群が高い早期胃癌の発見率を示した(P = 0.0455).なお,この 3 つの論文の平均検査時間および観察時間は,いずれも生検

    をしていない症例で算出している. このように,平均検査時間が短い内視鏡医は早期胃癌の偽陰性が多い可能性が示唆される.しかし,個々の症例で何分以上,観察をすればよいかについては明確な結論は出ていない.

     今回の文献抽出に関しては,database は PubMedおよび医学中央雑誌を用いた.PubMed では検索式 “stomach neoplasms/diagnosis” AND (“exam-ination time”[tiab] OR “observation time”[tiab] OR “time factors”) AND (endoscopy OR endoscop-ic) をかけた結果 194 文献がヒットし,医学中央雑誌では((((胃腫瘍 /TH or 胃腫瘍 /AL)) and

    (((SH =診断的利用,診断,画像診断,X 線診断,放射性核種診断,超音波診断) or (診断 /TI)))) and (((観察 /TH or 観察 /AL) or 経過観察 /AL) and ((時間 /TH or 時間 /AL) or (時間因子 /TH or 時間因子 /AL)))) and (PT =会議録除く)の検索式をかけた結果 68 文献がヒットした.その中で本ステートメントに沿った文献を絞り込

  • Vol. 61 (6), Jun. 2019日本消化器内視鏡学会雑誌1302

    Gastroenterological Endoscopy

    み,さらにハンドサーチにて文献を追加した.

    文 献

     1.  Teh JL, Tan JR, Hau LJ et al. Long examination time improves detection of gastric cancer during di-agnostic upper gastrointestinal endoscopy. Clin Gas-troenterol Hepatol 2015;13:480-7.(PubMed)( 症 例対照研究)

     2.  Kawamura T, Wada H, Sakiyama N et al. Examina-tion time as a quality indicator of screening upper gastrointestinal endoscopy for asymptomatic examin-ees. Dig Endosc 2017;29:569-75.( ハ ン ド サ ー チ)

    (症例対照研究) 3.  Park JM, Huo SM, Lee HH et al. Longer Observa-

    tion Time Increases Proportion of Neoplasms Detect-ed by Esophagogastroduodenoscopy. Gastroenterolo-gy 2017;153:460-9.(ハンドサーチ)(症例対照研究)

    ステートメント:2-5

     早期胃癌の発見のために,系統立って胃内を観察すべきである.

    修正 Delphi 法による評価 中央値: 9 ,最低値: 7 ,最高値: 9推奨の強さ: 1  エビデンスレベル:D

    解説: Hosokawa らは,胃癌なしと診断された内視鏡検査から 3 年以内に胃癌でがん登録されたものを偽陰性と定義すると,偽陰性率は 25.8%と報告している.さらに,内視鏡経験が 10 年未満の医師による検査の偽陰性率は 32.4%,10 年以上では19.5%であり,経験が少ない内視鏡医は有意に偽陰性率が高値であった1).海外を含めたメタアナリシスでは,同様の定義の偽陰率は 11.3%であった2).このように,少なくない割合の胃癌が内視鏡検査で偽陰性となっているのが現実である. 胃癌の見逃しの一因として,胃内の不充分な観察が挙げられる.胃は屈曲した広い管腔を持つ臓器であり,胃内をすべて観察したつもりでも盲点が存在し,胃癌の見逃しにつながる.特に接線方向となる体部の前後壁および,近接像となり視野がとりにくい胃角から前庭部の後壁は観察が不良となりやすい.また,噴門小彎は見下ろしで接線方向となり,見上げでは内視鏡に隠れて観察不良となる3).さらに,体部大彎は空気量が少ないと,ひだの間に病変が隠れてしまうため,よく伸展して観察する必要がある. 胃の内視鏡観察方法と早期胃癌の発見に関しての研究はなく,観察方法は施設や検査医により相違があるのが現状であるが,早期胃癌の偽陰性を防ぐには,胃内をくまなく系統立って観察する必要がある.Yao は系統立った観察法の 1 つとして,systematic screening protocol for the stom-ach(SSS)を提唱している4).また,胃癌の発見

    率はトレーニングにより改善するという報告もあり5),6),内視鏡検査を行う医師には,充分なトレーニングが求められる.

     今回の文献抽出に関しては,database は PubMedおよび医学中央雑誌を用いた.PubMed では検索式 “stomach neoplasms/diagnosis”[majr] AND

    (“gastric mucosa/pathology” OR observ*[tiab]) AND (endos