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「ネットワーク技術の基礎(第 2版)」

サンプルページ

この本の定価・判型などは,以下の URL からご覧いただけます.

http://www.morikita.co.jp/books/mid/081032

※このサンプルページの内容は,第 2版 1刷発行時のものです.

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  情報工学レクチャーシリーズ  ■ 編集委員

    

高橋 直久 名古屋工業大学大学院教授工学博士

松尾 啓志 名古屋工業大学大学院教授工学博士

和田 幸一 法政大学教授工学博士

五十音順

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「情報工学レクチャーシリーズ」の序

本シリーズは,大学・短期大学・高専の学生や若い技術者を対象として,情報工学の基礎知識の理解と応用力を養うことを目的に企画したものである.情報工学における数理,ソフトウェア,ネットワーク,システムをカバーし,その科目は基本的な項目を中心に,つぎの内容を含んでいる.「情報数学,アルゴリズムとデータ構造,形式言語・オートマトン,信号処理,符号理論,コンピュータグラフィックス,プログラミング言語論,オペレーティングシステム,ソフトウェア工学,コンパイラ,論理回路,コンピュータアーキテクチャ入門,コンピュータアーキテクチャの設計と評価,ネットワーク技術の基礎,データベース,AI・知的システム,並列処理,分散処理システム」各巻の執筆にあたっては,情報工学の専門分野で活躍し,優れた教育経験をもつ先生方にお願いすることができた.本シリーズの特長は,情報工学における専門分野の体系をすべて網羅するのではなく,本当の知識として,後々まで役立つような本質的な内容に絞られていることである.加えて丁寧に解説することで内容を十分理解でき,かつ概念をつかめるように編集されている.情報工学の分野は進歩が目覚しく,単なる知識はすぐに陳腐化していく.しかし,本シリーズではしっかりとした概念を学ぶことに主眼をおいているので,長く教科書として役立つことであろう.内容はいずれも基礎的なものにとどめており,直感的な理解が可能となるように図やイラストを多用している.数学的記述の必要な箇所は必要最小限にとどめ,必要となる部分は式や記号の意味をわかりやすく説明するように工夫がなされている.また,新しい学習指導要領に準拠したレベルに合わせられるように配慮されており,できる限り他書を参考にする必要がない,自己完結型の教科書として構成されている.一方,よりレベルの高い方や勉学意欲のある学生のための事項も容易に参照できる構成となっていることも本シリーズの特長である.いずれの巻においても,半期の講義に対応するように章立ても工夫してある.以上,本シリーズは,最近の学生の学力低下を考慮し,できる限りやさしい記述を目指しているにもかかわらず,さまざまな工夫を取り込むことによって,情報工学の基礎を取りこぼすことなく,本質的な内容を理解できるように編集できたことを自負している.

高橋直久 松尾啓志和田幸一

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第2版の序文

初版から 7年が経過し,ネットワークの新たな技術基盤が成熟しつつある状況に鑑み,このたび第 2版を上梓することとした.第 2版では新しい技術である IPv6,LTE,NGN,ENUM,P2P,クラウドなどの記載を追記した.一方,トラヒック理論やセンサーネットワークに関しては他の専門書に委ね,2単位の教科書として使用できる工夫を行った.読者の方々から寄せられた,さまざまなご意見を参考に,表現をより明確化するとともに,演習問題を充実化した.2015年 5月

著者らしるす 

序  文近年,インターネットに象徴される超高速のブロードバンドネットワークは,情報社会のインフラストラクチャとして定着しつつある.ネットワークの量的・質的な変革を成し遂げることに成功したインターネットは,かつてない膨大な情報資源へのアクセス,情報の相互流通による情報産業ビジネスの質的価値を高め,今日の情報環境に大きな変革をもたらした.この世界に広がるネットワークには,普遍的な基礎技術が数多く関係している.一方,情報理論,伝送理論,マルチメディア理論の基礎理論に関する技術も重要な部分を占めている.これらの内容も含めてネットワーク技術を総合的に理解する必要があるが,それらを満たす初学者用の教科書はあまり見あたらない.本書は,これらの状況に鑑み,情報の表現技術から始まり,情報通信の基礎的な考え方,符号理論の基礎,情報源と通信路の符号化の基礎にも十分に配慮した.また,今日のディジタル電話交換,インターネットの礎となったパケット交換技術を中心とした公衆データ網技術,音声・画像などを含めたマルチメディア通信技術,ならびに携帯電話を含めたインターネット技術,セキュリティ技術などにも重点をおいて解説した.さらに,初学者でもネットワークの基本設計の概念が把握できるように,トラヒック理論や信頼性理論の基礎についても解説した.本書は,単なるネットワークの知識の羅列ではなく,その根幹となる基本技術に関わる考え方が,体系的に修得できるようになっている.本書は,大学 2年生または工業高等専門学校などでの半期のネットワーク基礎の講義用に編集されている.講義の時間が十分にとれない場合には,第 1章~第 5章および第 6章~第10章を学習し,さらに第 11章~第 14章の一部を選択し,講義を進めてほしい.本書で学習することは,専門課程で受講する「コンピュータネットワーク」,「情報圧縮」,「ネットワークセキュリティ」,「通信トラヒック設計」などへの橋渡しの役目を果たすことにもなる.本書の記述内容の要約を以下に記す.第 1章から第 5章では,ディジタル電話交換やコンピュータ通信,ならびにインターネットの基礎となった電気通信ネットワークの歴史を,伝送技術と交換技術およびインターネッ

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序  文 iii

トの発展の経緯から解説し,合わせてマルチメディア情報の表現法,符号化の考え方やモバイル通信技術の基礎を述べる.情報通信を初めて学習する学生の便宜を考え,情報伝送の基礎としての情報表現,平均情報量,符号化ならびに通信方式の基礎となる変調方式,多重化方式の原理について解説する.さらに信号対雑音比の概念や,情報通信に関わる情報理論の基礎であるシャノンの情報伝送速度の上限式の概念や具体的な活用法などについて述べる.また,広く普及している通信形態である回線交換,パケット交換,ISDN,B-ISDNなどの技術の基礎を理解し,現代のネットワークにおいてトラヒックの大半を占めているモバイル通信に関して携帯電話システム,PHSシステムの原理から始まり,最近の第 3世代のモバイル無線技術についても基本的な考え方を理解できるように工夫した.第 6章から第 10章では,インターネット基本技術に焦点を絞り,通信プロトコルの基本的考え方として,OSI参照モデルをもとに,データリンク制御やルーチング制御を主体とした通信プロトコルの基礎について解説する.また,ISDN,ADSL,光技術を用いたアクセスネットワーク技術,LAN技術の基礎についても解説した.さらに,TCP/IPの実際的なアプリケーションとしてのWebアクセスや電子メールのメカニズムを解説するほか,インターネットにおける代表的なルーチング技術であるRIP,OSPFなどについても基本的な考え方を述べ,インターネットの基本技術を理解できるように配慮した.第 11章から第 14章では,高度ネットワーク技術の現状を解説している.具体的には,マルチメディアネットワーク技術の具体例として,メディアとしての音声通信技術や画像の圧縮技術(VoIP,MPEGなど)を基本に,ネットワークとの接続を実現するための各種の信号制御技術について学習する.インターネットを中心としたネットワークセキュリティ技術に関しては,暗号方式と認証方式の原理を解説し,具体的なネットワークへの適用法を解説した.ファイアウォール技術については,基本的な原理について解説した.さらに,待ち行列理論の基礎から通信トラヒックの解析手法とネットワークの基本的な設計法を解説した.最終章の第 14章では,次世代 IP網のバックボーンとしての主流技術であるATMを発展させたMPLS,IP-VPNの基礎を学習する.また,最近,脚光を浴びつつあるユビキタス社会のインフラ基盤となり得るアドホック無線ネットワーク技術やセンサネットワーク技術の現状を紹介する.各章ともネットワーク技術の教育上,エンジニアリング上の観点から必要と思われる例題,詳細な解答,ならびに巻末に解答を載せた演習問題を用意し,自習書としても使えるように配慮した.本書が,将来のネットワーク技術の動向が推察できる技術レベルにまで到達できれば,著者らの望外の喜びである.執筆にあたっては NTT研究所関係者の方々からも各種の文献資料などを参考にさせて頂いた.ここに感謝の意を表する次第である.また,森北出版 水垣偉三夫氏の多大なお世話により,本書が出版されたことを記し,感謝の意を表する.おわりに,本書の図面類を作成するにあたって日頃より,誠意ある,御支援を賜った鳥飼恵美様,近藤昌美様には,この場をお借りして,感謝致します.2007年 9月

著者らしるす 

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目 次

第 1章 ネットワーク技術の概要 1

1.1 情報通信とは ...................................................................................... 1

1.2 インターネット ................................................................................... 4

1.3 ネットワークのディジタル化と広帯域化 .................................................. 5

演習問題 .................................................................................................... 8

第 2章 マルチメディア情報の表現と符号化 9

2.1 マルチメディアの情報表現 .................................................................... 9

2.2 マルチメディア情報のディジタル化-標本化と量子化- ............................ 11

2.3 情報源符号化 ..................................................................................... 14

2.4 誤り検出符号と誤り訂正符号 ................................................................ 19

演習問題 ................................................................................................... 21

第 3章 ディジタル伝送技術 22

3.1 伝送技術の基礎理論 ............................................................................ 22

3.2 伝送技術の要素技術 ........................................................................... 25

3.3 変調技術 ........................................................................................... 28

3.4 多重化技術 ........................................................................................ 32

3.5 無線伝送技術 ..................................................................................... 34

演習問題 ................................................................................................... 35

第 4章 ディジタル交換技術 37

4.1 アナログ電話交換 ............................................................................... 37

4.2 ディジタル電話交換 ............................................................................ 38

4.3 ディジタル回線交換 ............................................................................ 39

4.4 パケット交換 ..................................................................................... 42

4.5 フレームリレーと ATM ....................................................................... 45

演習問題 ................................................................................................... 49

第 5章 モバイル通信 51

5.1 携帯電話システム ............................................................................... 51

5.2 ネットワーク機能 ............................................................................... 54

5.3 ディジタル携帯電話 ............................................................................ 58

5.4 第 3世代(3G)モバイル通信 .................................................................. 58

5.5 LTEと第 4世代(4G)モバイル通信 ........................................................ 59

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目 次 v

演習問題 ................................................................................................... 62

第 6章 通信プロトコル 63

6.1 OSI参照モデル .................................................................................. 63

6.2 OSI参照モデルにおける物理層 ............................................................. 67

6.3 各種交換方式の通信プロトコル ............................................................. 68

演習問題 ................................................................................................... 71

第 7章 アクセスネットワーク 73

7.1 アクセスネットワークの現状 ................................................................ 73

7.2 データリンク制御の基本と HDLC伝送制御手順 ...................................... 74

7.3 ISDN ............................................................................................... 80

7.4 ADSL .............................................................................................. 82

7.5 光アクセス ........................................................................................ 83

演習問題 ................................................................................................... 85

第 8章 ローカルエリアネットワーク 86

8.1 LANにおけるコンピュータ通信 ........................................................... 86

8.2 有線 LAN ......................................................................................... 90

8.3 無線 LAN ......................................................................................... 94

演習問題 ................................................................................................... 95

第 9章 TCP/IP 97

9.1 インターネットにおける TCP/IPの位置付け .......................................... 97

9.2 IPデータグラム ................................................................................. 98

9.3 IPアドレスの体系 .............................................................................. 98

9.4 IPアドレスのサブネット化 ................................................................ 100

9.5 TCP層 .......................................................................................... 102

9.6 TCP/IPの上位層 ............................................................................ 107

9.7 IPv6 .............................................................................................. 109

演習問題 ................................................................................................. 111

第 10章 ルーチング技術 112

10.1 電話網のアドレス体系 ..................................................................... 112

10.2 電話網のルーチング ........................................................................ 114

10.3 公衆パケット網のルーチング ............................................................ 115

10.4 インターネットのルーチング ............................................................ 115

演習問題 ................................................................................................. 123

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vi 目 次

第 11章 マルチメディア通信ネットワーク 125

11.1 マルチメディアとアプリケーション ................................................... 125

11.2 VoIPとサービス品質 ...................................................................... 127

11.3 マルチメディア通信のためのプロトコル ............................................. 129

11.4 情報圧縮符号化 .............................................................................. 133

11.5 ENUM:すべての電話をつなぐ番号 .................................................. 134

演習問題 ................................................................................................. 137

第 12章 ネットワークセキュリティ 139

12.1 暗号方式と認証方式 ........................................................................ 139

12.2 IPsec ............................................................................................ 144

12.3 ファイアウォール ........................................................................... 146

演習問題 ................................................................................................. 148

第 13章 新しいネットワーク技術 150

13.1 ATMとMPLS .............................................................................. 150

13.2 IP-VPN ........................................................................................ 155

13.3 アドホックネットワーク .................................................................. 156

13.4 NGN ............................................................................................ 162

13.5 P2P ............................................................................................. 165

13.6 クラウドコンピューティング ............................................................ 166

演習問題 ................................................................................................. 169

さらなる勉強のために 170

演習問題解答 172

索 引 181

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28 第 3 章 ディジタル伝送技術

3.3 変調技術

コンピュータ通信や音声通信に使われる信号は,電気信号により表される.たとえば,マイクロホンで電気信号に変換されたアナログの音声は,300 Hzから 3.4 kHzの帯域をもつ電気信号である.元の信号をそのままの形で電気信号にしたものをベースバンド信号とよび,ベースバンドの電気信号を直接伝送媒体を介して伝える方式はベースバンド伝送とよぶ.しかし,ベースバンド伝送では一本の伝送路に一つの信号しか送ることができない.そのため,一本の伝送路に多数の音声信号を同時に伝送するためには,変調処理を施して,基準となる周波数を高い周波数に変換する技術が用いられる.

3.3.1 アナログ変調方式アナログ変調では,元のベースバンド最高周波数の数倍から数百倍の正弦波形信号が使われる.変調(moduation)とは,振幅・位相・周波数の情報の一つあるいは複数を変化させ,信号情報をのせる信号処理である.正弦波信号は,振幅,周波数,位相の三つの要素で規定でき,たとえば,1秒間に 2πf [rad]位相が変化する正弦波は,f [Hz]の正弦波という.通信媒体に情報をのせて伝送する場合,周波数の高い正弦波信号を搬送波(carrier),のせられる信号を信号波とよぶ.搬送波は振幅・位相・周波数により規定される.変調方式には,振幅を変化させる振幅変調,周波数を変化させる周波数変調,位相を変化させる位相変調やこれらを組み合わせた方式が実用化されている.

( 1 ) AM方式図 3.3に示すように,振幅変調(amplitude modulation:AM)はラジオの中波放送やアナログテレビの映像信号放送に使用されている.あるラジオ放送局は,593 kHz周波数の一定振幅の高周波で発振器を励起させ,音声信号(変調回路に入力される信号波)を用いてこの高周波信号(一定振幅の搬送波)の振幅を変化させる.すなわち,AM方式では搬送波の振幅を信号波の振幅に応じて変化させる.変調された信号は AM変調波とよばれる.振幅変調され

図 3.3 変調の原理

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3.3 変調技術 29

図 3.4 振幅変調された信号の周波数スペクトルと検波

た信号を受信するためには,同調回路で搬送波の周波数にチューニングし,周波数成分だけを抽出してダイオードで検波する.振幅変調された信号波形の周波数スペクトルを図 3.4に示す.検波波形は,変調信号の上側の側波帯に対応する上半分を切り取った包絡線波形が該当する.高周波成分は,高周波遮断用フィルタでカットすることにより,元の信号波形が再生できる.この包絡線検波された信号を増幅してスピーカから再生すれば,元の音声を聞くことができる.

( 2 ) FM方式FM放送やTVの音声信号などに利用されているのは,周波数変調(frequency modulation:

FM)である.図 3.5に示すように,信号波の振幅に比例させて,搬送波の周波数を変動させることにより情報伝送を実現する.FM放送は 18~20 kHz帯域を使うことができるため,音楽などの信号を十分な帯域で放送することができる.受信時には,周波数差に比例して電圧が発生する回路(周波数弁別器)を用い,元の信号を再生する.FM方式は,変調後の信号の振幅を一定にしているため,送受信信号に加算される外来雑音は受信部では振幅値に加わり,周波数成分は変化しない.そのため,雑音信号は FM信号の品質に関係しない.その結果,良い伝送品質が得られる.

図 3.5 周波数変調(FM)の原理

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30 第 3 章 ディジタル伝送技術

( 3 ) PM方式信号振幅に比例して搬送波の位相を変化させるのは,位相変調(phase modulation:PM)である.PM方式では位相だけを変化させるため,変調後の振幅が一定であり,FM方式と同じような性質をもつ.位相変調はディジタル伝送として現在もっとも普及しており,PSK

方式(3.3.2項参照)として実用化されている.

( 4 ) PCM方式アナログ変調方式と異なり,標本化,量子化した標本データをそのまま時系列の “0”,“1”

の符号に変換して伝送するのは,3.1節でも紹介した PCM方式である.PCM方式では,アナログの音声信号波の場合には,標本化,量子化の過程で得られた数値を 2進符号で表現して伝送する.通常,電話では 8ビット,音楽 CDでは 16ビットの 2進符号で表現される 2

進符号列を 1ビットずつ順に伝送する.ディジタル伝送は,2進符号などディジタルの情報を有線,無線などさまざまな伝送路を介して伝送する方式である.ディジタル伝送の大きな特長は,第 1章で述べたように,アナログ伝送と異なり情報が量子化されているため,伝送途中に雑音が加わっても量子化幅の中にあれば影響を受けないことである.ディジタル信号におけるベースバンド方式は,ディジタル信号をそのまま “1”,“0”のパターンに表現して伝送することである.イーサネット(8.1.2項参照)でベースバンド伝送を行う方式には,単流式,複流式がある.単流式は,1を+E または − Eの電圧に,0を 0に対応させる方式,複流式は−Eと+Eの 2値の電圧を使う方式であり,後者は平均すると直流分をもたない.また,0電位を基準にするNRZ(non

return to zero)および 0電位を用いないRZ(return to zero)に分類される方式がある.

3.3.2 ディジタル変調方式ディジタル信号を多重化伝送する場合には変調が必要である.図 3.6に示すように,ディジタル情報の変調方式としては,アナログ変調と類似する方式として,振幅偏移変調,周波数偏移変調,位相偏移変調がある.

図 3.6 搬送波のディジタル変調の例

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3.3 変調技術 31

( 1 ) ASK方式電信に適用されていたディジタル変調方式としてもっとも簡便な方式は,振幅偏移変調(amplitude shift keying : ASK)である.ASK方式では,搬送波の両側に上側波/下側波の周波数成分が現れる.振幅が小さい部分を “0”,振幅の大きい一定の部分を “1”として表現し,2進符号を送る.振幅を 2通りだけでなく,多値化すると,より多くの情報を伝送できる.たとえば,4通りの振幅を “00”,“01”,“10”,“11”とすれば,2ビットの情報を伝送できる.振幅を変化させるアナログ方式では,伝送時に必要となる S/N比は大きくなるが,ディジタル伝送方式の場合には量子化ステップの範囲内の雑音は品質に影響しないため,雑音に強い.信号波の振幅と搬送波の振幅の比は変調度とよばれる.

( 2 ) FSK方式異なる周波数にディジタル信号をのせる方式は,周波数偏移変調(frequency shift keying

: FSK)である.FSK方式では二つの周波数(f1, f2)をもつ信号において,低い周波数に“1”,高い周波数に “0”の情報を割り当てて,ディジタル信号を伝送する.電話回線を用いてディジタル伝送するモデムの ITU規格,V.21,V.23規格として採用されている.

( 3 ) PSK方式搬送波の位相にディジタル情報をのせる方式は,位相偏移変調(phase shift keying : PSK)である.図 3.6では,1回の変調(シンボル)で 1ビットのデータを送るBPSK(binary phase

shift keying)方式を示した.たとえば,4種の位相変化により,1シンボルを送る QPSK

(quadrature phase shift keying)方式は,4相PSKと同じである.この場合は,4種類の情報のうち,1周期が位相 0の波形,1周期が位相を 90

◦,180◦,270

◦それぞれシフトされた波形を用い,基準となる波形からのそれぞれの位相ずれに対し,“00”,“01”,“10”,“11”を対応させる.PSKは周波数帯域が基準となる周波数の近傍にあるため,狭い周波数帯域で通信できるという利点がある.さらに高速のモデムは,16相,24相,64相などの多相の PSKを用いて実現でき,ITUのVシリーズとして勧告化されている.また,8QAM(quadrature

amplitude modulation)のように,ASKとPSKを組み合わせて,振幅と位相を同時に変化させ,高速のディジタル伝送を実現することもできる.8QAMは振幅変調で 2段階,位相シフトを 4段階として 3ビット(8値)の多値データを伝送できる(図 3.7).8QAMは,V.34FAX

モデムに使われている変調方式である.最近では,16QAMから 128QAMまでが実用化され,ADSLや CATVのモデムやディジタル TVの変調方式に使われている.

図 3.7 8QAMの例

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32 第 3 章 ディジタル伝送技術

3.4 多重化技術

一つの伝送路を介して多数の信号を伝送することを多重化(multiplexing)とよぶ.多重化は,電話回線網や LAN,インターネットなど,多様なネットワークを利用するうえで,アナログ伝送路,ディジタル伝送路に限らず,複数の利用者がやりとりする音声やデータを,限られた伝送路資源を有効に活用し,データを同時に伝送する方式といえる.有線系の通信システムにおける代表的な多重化方式としては,周波数分割多重と時分割多重がある.( 1 ) FDM方式周波数分割多重化(frequency division multiplexing:FDM)は,定められた周波数帯域内の伝送路に複数の信号を適切な周波数間隔で配備して伝送する.この技術は,図 3.8(a)に示すアナログテレビ放送などの周波数分割多重化されたベースバンド回線の束をFM伝送する方式として発展したものである.図(b)は第 1世代携帯電話において,適用された多重化方式の例である.複数の電話音声信号を,f1, f2, . . . , fnという周波数をもつ搬送波で振幅変調する.f1, f2, . . . , fnの周波数は,干渉を避けるために 25 kHz以上離し,つぎに変調されたそれぞれの搬送波のすべてをまとめて,より高い周波数をもつ搬送波の変調信号として変調し,その搬送波を伝送する.すなわち,FDM方式は伝送路の伝送可能周波数帯域を一定の周波数帯域ごとに分割し,信号をそれぞれの帯域の搬送周波数で変調・多重化を繰り返して伝送する方式である.FDM方式では,同軸ケーブルやマイクロ波などを用いることにより効率良く数百MHz~数GHzの広い帯域を使うことができるため,ビデオ情報を含んだあらゆる種類の情報を 1本の伝送路で経済的に伝送することが可能である.

図 3.8 FDMの利用形態

( 2 ) TDM方式時分割多重化(time division multiplexing:TDM )は,複数の信号を一定時間ごとに区切り,同一の伝送路上へ時分割で多重化伝送する方式である.実現にあたっては,図 3.9の構成例に示すように,発側ノードの終端装置側に,多重化用回路および時間圧縮を行うためのメモリが必要である.また,着側ノードの終端装置側に,分離用回路および時間伸張を行うためのメモリが必要である.ディジタル符号化された多数のディジタル信号は,固定長のフレーム時間内に,一定の時間間隔で配置されて伝送される.フレーム周期内のタイムスロッ

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3.4 多重化技術 33

図 3.9 TDM方式の構成例

ト(時間位置)は,あらかじめ,ネットワーク内での制御信号のやりとりによって決定される.図 3.9では東京ノードから大阪ノードへの通信を示しているが,逆方向についても同様に接続用の回線設定が行われる.より高次の多重化を行う場合は,タイムスロットに対応する時間間隔をさらに圧縮することを可能とする高速メモリ,および高速電子回路が必要である.TDM方式は,一つの伝送路を時間的に分割して使うタイムスロットがあらかじめ決められるため,STM(synchronous transfer mode:同期転送モード)方式ともよぶ.前述したPCM24方式は TDM方式の代表的な方式例である.TDM方式では,ディジタル化された音声,画像などの情報を,同一伝送路上に多重化して伝送することが可能である.

( 3 ) WDM方式FDM方式,TDM方式とは別に,複数の異なる波長の信号を一本の光ファイバ内で多重化する光波長多重通信に使用されるのが,波長多重化(wavelength division multiplexing:WDM)である.図 3.10に示すように,一本の光ファイバケーブルに複数の異なる波長の光信号を同時に多重化することにより,高速かつ大容量の情報を送ることができる.現在の光中継伝送方式の主流となりつつある.異なる波長の光はお互い信号が干渉しないため,多重通信の場合,単一信号による通信と比較すると,数倍~数千倍といった情報量を 1本のケーブルで送信できるという特長をもつ.現在,テラビット毎秒( 

テラT は 1012)級の方式が実用化さ

れ,WDM伝送技術は 1本の光ファイバの中で複数の波長を多重化・分離(合波・分波)できる多重化伝送路を経済的に実現できるため,今後,さらなる大容量化が期待されている.

図 3.10 WDMの原理

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34 第 3 章 ディジタル伝送技術

図 3.11 WDMに使われる波長

WDM技術は,ネットワークのバックボーンのブロードバンド化に拍車をかけることに成功し,多くの通信事業者が導入し始めている.図 3.11はWDM方式に使われる波長を示している.光ファイバでは伝送損失の低減に伴い,新たな低損失波長の発見がなされ,対応する波長帯の半導体レーザや受光素子などの光デバイス技術の発展が大きな役割を果たした.1979年頃には 0.2 dB/km(波長 1.55 —m)であった伝送損失特性は,2013年には 0.15

dB/km程度の超低損失特性を達成した(光の損失波長特性の測定法は ITU T G650.1に規定).光ファイバは,1.55 —mの付近と 1.35 —mの付近で伝送損失の減衰値の極小値を示す傾向をもつため,シングルモード 1)での光ファイバ伝送にはこの波長帯が用いられるが,WDM用には 1.55 —m帯の近隣を 3分割し,100 GHz間隔で,Sバンド,Cバンド,Lバンドとして使用している.光ファイバ内に光信号を通すとき,光の強度は光の波長によって異なることを利用し,光強度がもっとも大きい 1.5 —m近傍の波長の光が使用されていることに着目する必要がある.ディジタル伝送媒体は,1980年代以降,同軸ケーブルから光ファイバに移行し,およそ 10

年で 1万倍の増加比率で多重化伝送速度が高速化し,1 Tb/s級の伝送速度が実用化されている.

3.5 無線伝送技術

電波を使用した無線通信においては,長波から短波にわたる周波数帯の電波の伝搬により,大陸間の長距離通信が可能となった.さらに,高い周波数帯である超短波からマイクロ波帯に至る周波数帯域が積極的に利用され,中継伝送技術を積極的に活用することにより,公衆電話網,携帯電話網や,LAN内通信にも活用されるようになった.また,衛星通信は通信距離を克服する有効な手段として,現在では,海底同軸ケーブル,海底に設置される光ファイバケーブルとともに,長距離国際通信に活用されている.また.公衆用の移動通信システムとしては,無線技術を活用して基地局までの通信を行う通信形態である携帯電話や PHSな

1)光ファイバのコア径や屈折率を適切に設計すると,光がコア中を全反射しながら進むモードを一つに設定できる.このような光ファイバをシングルモード光ファイバとよび,長距離伝送の場合に使用される.

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第 5 章

モバイル通信

キーワード無線基地局,セル,複信,多元接続,ハンドオーバ,位置登録,共通線信号網,IMT-2000,LTE

本章では,モバイル通信の代表的な例である携帯電話システムの基本構成や,無線通信に特有な機能について説明する.とくに,移動体通信を途切れさせないハンドオーバ機能,位置登録機能や,固定電話網との接続の原理について説明する.また,モバイル通信を行う際の各種の変復調方式や多重化方式について説明する.

5.1 携帯電話システム

携帯電話に代表される移動体通信の無線アクセスネットワークは,図 5.1に示す携帯電話網の一部の構成要素であり,電柱やビルの屋上などに設置されるアンテナを含む無線基地局(base transceiver station:BTS),移動通信交換局(base station controller:BSC),移動関門中継交換局(mobile service switching center:MSC)で構成される.BTSは,単に基地局とよばれる場合が多い.MSCは,交換局や加入者情報など,交換機の基地局間を結ぶ回線などの有線区間のシステム(以下,固定電話網と総称する)と,市外相互接続点(point of interface:POI)で接続

図 5.1 携帯電話網の基本構成

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52 第 5 章 モバイル通信

されている.基地局のアンテナが発する電波が,移動体(携帯端末など)へ届く範囲は,使用している無線通信方式や電波強度により,半径 1~4 km程度のセル(cell)とよばれる領域内に限定される.携帯電話はセルラーとよばれる場合があるが,この理由は,通信網がセルから構成されているためである.携帯電話は,通常は最寄りの基地局との間で電波を利用して通信を行うが,携帯端末が移動すると,セル 1の無線基地局から,セル 2の無線基地局へと通信経路が切り換わり,この情報は移動通信交換局内の位置記録メモリに記録される.セルの構成は,図 5.2に示すように,基地局を中心に数十メートルから数百メートルの領域に分割され,携帯電話の居所をカバーする基地局を経由して通信が行われる.携帯電話と基地局間は,基地局ごとに割り当てられた無線通信用の周波数 fa, fb, . . . を用いて通信が行われ,基地局に届いた携帯電話からの音声・データ信号や制御信号は,固定して設置された携帯電話網設備や有線の固定電話網設備を利用して,接続相手先まで伝送される.セル方式の特長は,限られた周波数を有効に使用できることである.

図 5.2 携帯電話で使用するセルの構成

5.1.1 変調と符号化音声やデータ信号を無線で遠くまで伝送するためには,その信号で電波(搬送波)を変調する必要がある.変調技術としては,アナログ携帯電話の音声通話用には,フェージングなどの影響を受けにくく,かつ所定の通信品質を保証できる FM方式が採用されている.フェージングとは,移動通信において受信機が移動することにより,受信電力が変動する現象のことである.受信電波は建物などによって反射された複数の電波の合成波であり,移動に伴う通信品質の劣化を防ぐための対策が必要である.携帯電話網においても,“0”と “1”を組み合わせたディジタル信号で搬送波を変調するディジタル変調方式(3.3.2 項参照)が実用化されている.とくに,ディジタル携帯電話網では,一定の周波数の搬送波の位相を制御して送信する BPSK方式,QPSK方式などが,携帯電話と基地局の間の無線通信に採用されてい

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5.1 携帯電話システム 53

る.また,位相変調に振幅変調の要素を加え,1シンボルで 64値の信号情報を伝送可能な64QAMとよばれる高速変調技術も実用化されている.携帯電話では,周波数の有効利用を図るため,アナログ音声信号を単純に符号化するだけでなく,ディジタル符号化された音声データを圧縮して伝送する方式が採られている.

5.1.2 複信と多元接続( 1 ) 複信携帯電話 基地局の無線通信区間では,上り(携帯電話などの移動体から基地局の方向)と下り(基地局から移動体の方向)の通信を分ける,複信(duplex)方式をとっている.複信には,FDDと TDDの二つの方式がある.

① 周波数分割型複信(frequency division duplex:FDD) 図 5.3に示すように,上りと下り用に異なる周波数 f1 と f2 を割り当てる方式であり,第 1世代の携帯電話で採用された.

図 5.3 FDDと TDDの原理

② 時分割型複信(time division duplex:TDD) 同じ周波数を用いて,上りと下り用の通信に異なるタイムスロットを割り当て,送信と受信を同時並行して行う方式であり,第 2世代の携帯電話で採用された.TDDでは,上りと下りのチャネルを短い時間で切り換え制御している.

( 2 ) 多元接続複信と同時に,複数の携帯電話が一つの無線基地局に対して同時に通信しても,通信が衝突しないように,同じ電波を共有してアクセスするための多元接続(multiple access:MA)方式が実用化されている.多元接続方式は,周波数分割多元接続(frequency division multiple

access:FDMA),時分割多元接続(time division multiple access:TDMA),符号分割多元接続(code division multiple access:CDMA)の三つの形態に分類できる.図 5.4に示すように,FDMAは同じ場所にいる複数の携帯電話に,それぞれ異なる周波数を割り当て,携帯電話ごとに通信を分離する.携帯電話用に割り当てられた 15 MHzの周波数帯域を25 kHzの帯域で分割することにより,600チャネルを確保し,第 1世代のアナログ式携帯電話で用いられた.TDMAは,複数の携帯電話が同じ周波数を異なる時間帯に分離して使い分ける方式で,第 2世代のディジタル携帯電話で用いられた.TDMAでは,携帯電話用に割り当てられた周波数帯域を 50 kHzの帯域に分割し,これをさらに三つのチャネルに時分割多重化して,42 kb/sのディジタル通信を実現している.CDMAは,携帯電話ごとに異なる符号(コード)を用い,同じ周波数帯域を用いてアクセスできるようにする方式であり,第3世代のディジタル携帯電話で用いられている.

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54 第 5 章 モバイル通信

図 5.4 FDMAを採用した携帯電話の通信原理

5.1.3 モバイル通信に使用される電波携帯電話では,電波を情報(音声信号,データ)で変調して伝送する.無線通信用の電波を包含する電磁波としては,より周波数の高い赤外線,可視光線,紫外線,X線や  ガンマγ  線などの放射線が含まれる.電波は,赤外線よりも周波数が低い(波長が長い)電磁波を指し,電波法では 3000 M(3 T)Hz以下の周波数の電磁波と定義されている.携帯電話に使われる電波は,主にUHF帯(300 MHzから 3 GHz)に属する.一般に,低い周波数の電波は,回析する性質をもち,とくに中波や長波は障害物がある場合でも回析作用を利用して伝搬することが可能である.一方,周波数が高くなると,光に近い性質(直進性)をもつようになるため,SHF(センチ波)では見通し範囲外の伝送は困難になる.1990年代後半頃からの携帯電話システムでは,主にUHF帯や SHF帯の電波が利用されている.携帯電話に利用される 800 MHz帯は,アナログ携帯電話の時代から利用されている周波数帯であるが,携帯電話の需要拡大に伴い,1.5 GHz帯が利用できる技術が開発された.1.9 GHz帯は,PHSでも利用されている周波数帯であり,2 GHz帯は,第 3世代携帯電話(IMT-2000)向けに確保された周波数帯である.

5.2 ネットワーク機能

モバイル通信においては,端末の移動に伴って使用する基地局を切り換える必要がある.携帯電話網で正しく通信および着信・発信を行うには,基地局間でのハンドオーバと,端末が通信する基地局を管理する位置登録が必要である.

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5.2 ネットワーク機能 55

5.2.1 ハンドオーバ基地局間を移動しても電話の通信が途切れないように,セルは少しずつ重なって配置される.移動体は複数の基地局から受信される電波の強度を判別し,電波強度の強い基地局を選択して,通話中のチャネルを切り換えることができる.この切り換え技術の採用により,移動体が別のセルへ移動した場合でも,通信を継続することができる.このように,通話中に携帯電話がセルを超えて移動したときに,接続先の基地局を切り換える機能をハンドオーバとよぶ.PHS(5.3節参照)の場合には,つねに複数の基地局からの信号を受信して,通話中の電波が弱くなった場合には,受信中の信号のもっとも強い基地局に PHS端末が自動的に接続要求を行い,接続先基地局を切り換える方式が採られる 1).携帯電話機が基地局 Aと通信しながら移動し,隣りの基地局 Bの電波を受信し,基地局

Bの電波の強さが,基地局 Aの電波より強くなると,通話チャネルを基地局 Aから基地局Bに切り換える機能をハードハンドオーバとよぶ.一方,CDMA技術を利用した携帯電話では隣接セルで同一の周波数を利用しているが,セルごとに異なる拡散符号を利用しているため,通話や通信が途切れることなく,ハンドオーバが可能である.接続中の基地局と移動先である隣接基地局は,それぞれ異なる拡散符号を利用して同時に接続する.移動先基地局との接続が完了した後に,それまで接続していた基地局との通話用のチャネルを解放することにより,通話を瞬断することなくハンドオーバが実現できる.この機能はソフトハンドオーバとよぶ.同一の周波数で移動できない場合には,ハードハンドオーバによる基地局切り換えが行われる.

5.2.2 位置登録電話網は,音声転送用の通話路網と制御信号転送用の共通線信号網とで構成されている.共通線信号網は,通話信号の音声を通すための通話路網とは独立に設けられた交換機間の通信路であり,交換機間におけるネットワーク制御を実現するための主要な機能をもつ.この共通線信号網は,固定電話関門交換機と移動通信関門交換機間で,

① 電話をかける人が相手への接続を要求② 通話相手の呼び出し③ 通話相手の認証④ 通話相手からの応答通知⑤ 電話通信の切断通知

などの一連の交換動作を制御するための信号や,通話時間・通話料にかかわる課金情報など,ネットワーク全体のサービス管理情報を伝送するための網として活用されている.また,インターネットと従来の固定電話網を接続するゲートウェイを,共通線信号網と接続することにより,従来の電話サービスと同様のダイヤル手順でインターネット電話も利用可能である.共通線信号網が登場する以前は,ダイヤル信号を通話路網と共用して伝送する方式が活用されていたが,共通線信号網の導入により,従来より高速でかつ多様な制御情報を交換機間で

1)ディジタル携帯電話の場合は,基地局の管理下で切り換え制御が行われる.

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56 第 5 章 モバイル通信

使用できるようになり,発信者番号を表示するナンバーディスプレイなどのサービスも実現可能となった.携帯電話からの発信の場合,最寄りの無線基地局を経由して相手の固定電話や,携帯電話への接続を行う必要がある.位置登録処理により,携帯電話の所在がネットワーク内でどのように管理され,どのようにして携帯電話の所在地が追跡確認され,相手との通話が実現されるかはつぎのとおりである(図 5.5).

① 携帯電話は,移動するたびに,共通線信号網を介して,最寄りの基地局から一斉同報通信で通知される位置情報(たとえば,××町××丁目)を受信する.

② 仮に記憶している位置情報と異なる場合は,携帯電話がその旨を基地局に通知する.また,複数の基地局から異なる位置情報を同時に受信した場合は,電波の強度から判断して,もっとも近い基地局の位置情報を選択し,自身が記憶している位置情報と比較して正しい位置情報に変更する.その後,近隣の基地局に登録位置の変更要求を通知する.

③ 通知を受けた基地局は,移動通信交換局を経由して移動関門中継交換局から共通線信号網を利用し,当該携帯電話のホームメモリ局へ正しい携帯電話の位置情報を伝送する.

④ ホームメモリ局での携帯電話の所在情報を更新する.⑤ ,⑥ ホームメモリ局から,共通線信号網を利用して近くの移動関門中継交換局に折り返された更新確認信号が(移動通信交換局を経由して)携帯電話に返信される.

⑦ 携帯電話の位置登録エリア番号が更新される.

このように,携帯電話の移動状況は,絶えず最寄りの基地局から,携帯電話の利用登録が行われているホームメモリ局へ所在情報として通知され,位置情報データが更新されている.

図 5.5 携帯電話の位置登録処理

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5.2 ネットワーク機能 57

5.2.3 携帯電話網における着信と発信固定電話から携帯電話への通信の手順は,つぎのとおりである(図 5.6).固定電話からの携帯電話ダイヤル番号は,固定電話関門交換局を経由し,共通線信号網を通して処理される.

① 携帯電話番号がホームメモリ局(移動関門中継交換局)へ転送される.② ホームメモリ局で接続先携帯電話の位置情報を検索(位置検索)する.③~ ⑤ 検索結果の情報は共通線信号網を利用し,移動関門中継交換局,移動通信交換局を経由して,携帯電話の近くの基地局が相手の携帯電話の呼び出し(ページング)を行う.

⑥,⑦ 携帯電話での着信確認信号は,移動関門中継交換局に転送される.⑧ 通話開始確認信号が携帯電話に転送される.⑨ 携帯電話と固定電話の相互通話が可能となる.

一方,携帯電話からの発信手順は,つぎのとおりである(図 5.6).

❶,❷ 最寄りの移動通信交換局・移動関門中継交換局から共通線信号網を利用し,ホームメモリ局で認証処理が行われる.

❸ 認証結果が携帯電話に通知される.❹ 相手先電話番号などの制御情報がホームメモリ局に記録される.❺ 相手先固定電話呼び出し状況が,「プルル…」の信号音によって移動通信交換局から携帯電話に転送される.

❻ 共通線信号網を介し,相手先の固定電話関門交換局が固定電話の呼び出しを行う.❼ 固定電話との通話が可能となる.

図 5.6 携帯電話網における着信と発信

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58 第 5 章 モバイル通信

5.3 ディジタル携帯電話

第 2世代携帯電話(2nd generation cellular:2G)とよばれるディジタル携帯電話は,ディジタル変調方式を用い,アナログ携帯電話に比べて以下の特長をもつ.

① 周波数利用効率の向上により,同じ周波数帯域により多くのユーザを収容可能である.

② 省電力化による待ち受け時間の延長など,利便性の向上が可能である.③ 暗号通信が容易に実現可能である.④ 音声に加え,テキスト,イメージ,映像などのデータ通信が実現可能である.

日本では,2G用の携帯電話として,NTTドコモを中心にPDC(personal digital cellular)の開発が進められ,1993年にディジタル携帯電話の商用サービスが開始された.初期の PDC

は,アナログ携帯電話に比べて 1.5倍程度の加入容量を実現したものの,待ち受け時間や通話時間,形状(重量)などの性能面で課題があった.その後改良が進み,現在では加入者容量はアナログ携帯電話の 3~4倍に,数十時間程度であった待ち受け時間も 250時間以上に伸びた.PDCは,周波数帯域として 800 MHz,1.5 GHzを使用している.送受信の切り換えには FDD方式をとり,TDMA方式により 1周波数あたり 3通話チャネルを多重化し,一つの周波数あたりの多重化伝送速度として,42 kb/s伝送を実現している.日本で PDCのサービスが始まった頃,欧州ではGSM(global system for mobile com-

munications)が実用化されていた.GSMは,欧州諸国の統一ディジタル携帯電話システムとして開発され,1991年秋に欧州 13カ国で商用サービスが開始された.GSMは,送受信の切り換えには TDD をとり,周波数帯域は 900 MHz,1.8 GHz,1.9 GHzを使用している.GSMではフルレートで音声 8チャネル(1チャネルあたり 33.8 kb/s),ハーフレートで音声16チャネル(1チャネルあたり 16.9 kb/s)の伝送が可能である.

5.4 第 3世代(3G)モバイル通信

第 3 世代(3G)モバイル通信とは,1990 年代に FPLMTS(future public land mobile

telecommunication system)として検討が開始され,その後 ITUが主体となって IMT 2000

(international mobile telecommunications 2000)として世界統一規格としての策定が進められたものである.NTTドコモ,Nokia,Ericssonなどが中心となって策定したW CDMA

(ITU Tの分類では IMT DS(direct spread))と,Qualcomm社が中心となって策定したCDMA2000(ITU Tの分類では IMT MC(multi carrier))が代表的である.両者ともに多元接続方式としては符号分割多元接続(CDMA)を採用し,基地局から端末への下り方向と逆の上り方向とで周波数を用いる周波数分割複信(FDD)を採用して全二重通信を実現している.第 3世代モバイル通信は,音声通話のみならずデータ通信やテレビ電話などマルチメディ

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5.5 LTEと第 4 世代(4G)モバイル通信 59

ア通信に対応する高速ディジタル通信である.IMT 2000の規格としては,高速移動時 144

kb/s,歩行時 384 kb/s,静止時 2 Mb/sの通信速度が規定されている.その後,HSDPA

(high speed downlink packet access)などをはじめとする高速データ通信規格が作られ,本書執筆時点では,第 3世代のサービスとして最大 42 Mb/sや 21 Mb/sといったサービスが展開されている.第 3世代モバイル通信で用いられる CDMAの原理を図 5.7に示す.n回線を多重化する場合,互いに異なりかつ直交するm次元(m ≤ n)ベクトル(拡散符号とよぶ)を n個用意し,それぞれの回線に割り当てる.送信機においては,送信すべき信号に回線に対応する拡散符号を乗算して送信する.回線 k(1 ≥ k ≥ n)の拡散符号を(−→

tk),送信する信号を ak とするとき,送信信号は ak

−→tk となる.このとき,受信機に到達する符号 −→y は以下の式で表される.

−→y =

n∑k=1

ak−→tk (5.1)

受信側では,受信した符号に対して回線に対応する拡散符号を乗算することで,その回線に対して送信された信号を得る.拡散符号の直交性により,k1 �= k2 のとき tk1

· tk2= 0で

あるので,次式が成り立つ.−→tk は既知であるので,この計算により ak が求められる.

−→tk · −→y =

−→tk ·

n∑k=1

ak−→tk = ak|−→tk |2 (5.2)

CDMAでは,隣接セル間で異なる拡散符号を用いることで,同じ周波数帯域を使用することができる.また,一つの回線に複数の拡散符号を同時に割り当てることで,ソフトハンドオーバの実現が容易となるなどのメリットがある.

図 5.7 CDMAの原理

5.5 LTEと第4世代(4G)モバイル通信

2000年代における第 3世代モバイル通信の普及に続き,さらなる高速・大容量の通信を実現する次世代システムとして第 4世代モバイル通信の検討が開始された.ITU Tにおいては,第 4世代携帯電話規格を IMT Advanced(international mobile telecommunications

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60 第 5 章 モバイル通信

advanced)とよび,2014年現在においては LTE AdvancedとWirelessMAN Advancedの2方式が承認されている.IMT Advancedの技術内容については主に ITU Rにおいて検討され,IMT 2000の能力を拡張し,性能面では伝送速度 100 Mb/s(高速移動時)から 1

Gb/s(低速移動時)が目標とされている.周波数については,現在すでに各国で IMTに対して割り当てられているものを使用することが想定されている.これらの技術に先立つ形で,第 3世代モバイル通信網を置き換えあるいは補完する形で展開されているのが,LTE(long-term evolution)やWiMAXなど第 3.9世代とよばれる規格群である.このうちとくに普及が進んでいるのが,3GPP(3rd generation partnership

project)により策定が進められた LTEである.その特長は以下のとおりである.

① パケット交換方式への統一② OFDMAやMIMO技術などを用い,とくに下り方向の高速アクセスを実現(理論上の最大通信速度:下り 325.1 Mb/s,上り 86.4 Mb/s)

③ 最大 20 MHzまでの使用周波数帯域

第 3世代以前と異なり,VoIP(voice over IP)などの技術の適用によって,音声通話も回線交換ではなくパケット交換により提供される.このように,通信網の簡素化などが図られている.直交周波数分割多元接続(orthogonal frequency division multiple access:OFDMA)方式は FDMAを発展させた技術であり,FDMAと同様に,周波数によってチャネルを区別する.ディジタルデータを多相 PSK(LTEでは最大で 64QAM)により変調した場合,その電力スペクトル密度は,図 5.8に示すように一定の周波数間隔(Δf とする)でゼロとなる特徴をもつ.図 5.9のように,各チャネルで用いる搬送波(サブキャリア)の周波数を Δf の間隔で配置することによってチャネル間の相互干渉をなくし,一つの周波数領域の中に複数のチャネルを共存させることができる.これによって,OFDMAでは,各チャネルを個別の周波数領域に配置する必要のある FDMAより多くのチャネルを同じ周波数幅で扱うことができる.周波数利用効率の高さに加えて,無線通信を行ううえでの大きな課題であるフェージングやマルチパス障害への対応が可能であるなどの性質を備えている.MIMO(multiple-input and multiple-output)は,図 5.10に示すように,送信機と受信機のそれぞれにおいて複数のアンテナを用い,データを複数のストリームに分割して送受信する技術である.これらのストリームは同じ周波数帯域を用いて送信されるが,演算処理に

図 5.8 多層 PSK変調されたディジタル信号の電力スペクトル

図 5.9 OFDMAにおけるサブキャリアの配置

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第13章

新しいネットワーク技術

キーワードCAC,UPC,MPLS,IP-VPN,アドホックネットワーク,NGN,P2P,クラウドコンピューティング

本章では,まずATMトラヒック制御方式について基本的な考え方を述べる.ATMネットワークの実用化で培われた技術基盤が,現在の高速インターネット技術を支えているMPLS

へどのようにして継承されていったかを説明する.また,IP-VPN技術の考え方を説明し,次世代ネットワークである NGNの原型を説明する.さらに,ユビキタスネットワークとして研究が進んでいるアドホックネットワークのルーチングの考え方や,センサネットワークへの応用について説明する.

13.1 ATMとMPLS

ATMネットワークでのルーチングは,IPルーチングに比べてより少ないヘッダ情報で制御可能であり,ハードウェアによるテーブルルックアップ処理により,高速制御が実現できる.

13.1.1 ATM ネットワークにおけるトラヒック制御ATMは,STMによる多重化方式と比べて,速度に対する柔軟性は高く,さまざまな速度の信号を容易に処理して,数十 kb/sから数百Mb/sまでの広範囲で,かつバースト的な情報を含んだ多様な情報を効率的に処理することができる.ATMでは,情報転送フェーズにおけるリンクバイリンクでのフロー制御や再送制御をエンドエンドの端末で行い,かつハードウェアによる高速セルフルーチング方式を前提としているため,原理的にネットワーク内での伝送速度を飛躍的に高められる.ATMネットワークの特徴は,つぎのとおりである.

① トラヒックデータを固定長セルに分割し,非同期に転送処理する.② セル内ヘッダ情報に基づき,ハードウェアスイッチによりルーチングする.③ 誤り検出の簡略化とともに,ネットワーク内の再送制御処理を省略する.④ 誤り回復手順は端末 端末区間での処理に任せ,コネクション型通信を基本とする.

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13.1 ATMとMPLS 151

⑤ セルの転送制御は品質クラス(遅延,優先制御クラスなど)に対応して実施 1)する.わが国では,ATMノードを中継ノードとして活用したフレームリレーサービスが 1994年

11月から開始され,ATM通信を対象としたセルリレーサービスが 1995年 9月から開始された.図 13.1にNTTが開発した世界初の商用ATMノード(写真)を示す.1998年 10月には,速度品目を従来の 6 Mb/sからアクセス回線の品目により 0.5 Mb/sから 135 Mb/sまで選択でき,かつ帯域保証サービスのモードとして CBR(constant bit rate),VBR(variable

bit rate),UBR(unspecified bit rate),GFR(guaranteed frame rate)などを選択できるようにサービス種別が拡張された.GFRでは,MCR(最低保証セル速度),PCR(最高セル速度)を設定してフレーム単位でセルを監視し,フレームの一部が廃棄された場合にフレーム全体が再送されることを防止できる.GFRはATMシェアリンク専用線サービスで使われている.ATMノードの本格的な応用は,NTTドコモの移動通信網用 FOMAサービス,ACCAによるインターネットサービスのほか,JGN(japan gigabit network)などのバックボーン系のインフラの構築用である.ATMネットワークは基本的にはコネクション型であり,通信に先立ち相手とのコネクションを設定する必要がある.図 13.2に示すように,ATM 端末は呼設定に先立ち,呼設定制御用の VPI/VCIを用いて,通信に必要なピーク帯域や平均帯域などのトラヒック特性,所要品質などを申告する.網は,要求された伝送帯域が所要のセル廃棄率やセル転送遅延を保証できるかを判定し,ネットワークで要求されたリソースの確保が可能な場合に限り,呼の受付け制御を実施する.呼設定制御手順は,CAC

(connection admission contorl)とよばれる.この手順は ISDNと類似している.網側ではVC単位のセル計数や,トラヒックの監視を行う.呼が通信状態に移行した後,端末からネットワーク内に流入したトラヒック量が,発呼時にネットワーク側に申請されたトラヒック量を大きく超える場合には,他の通信へ悪影響を与える可能性がある.この状態を避けるため,通信中においてもトラヒックを常時監視し,ネットワークに流入するトラヒックが申告値に対応した量であるかどうかを判断している.

図 13.1 世界初の商用 ATMノード(出典:NTT技術史料館提供)

1)ATMにおける優先制御では品質クラス対応のバッファを設け,バッファへのアクセス制御には個別の優先度を設定することにより,それぞれのクラスでの要求通信品質を確保することができる.

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152 第 13章 新しいネットワーク技術

図 13.2 ATM交換ノードでのトラヒック制御

速度違反した ATMセルに対しては,ネットワーク内で廃棄またはマーキングの処理が行われる.このトラヒック監視制御機能は UPC(usage parameter control)とよばれる.UPC

は中継回線では VP単位に行われる.ATMスイッチは,出側回線バッファ単位にVP単位のシェーピング(セルの連続的な送出間隔を一定値以下に抑制する機能)や品質制御(QoS)を行う.シェーピングには,VPIごとに行うVPシェーピング,VCIごとに行うVCシェーピングがある.通信事業者は,網の運用状況に応じて,特定の方路に VP単位で輻輳が生じた場合には,VP内の複数個の VCを他の帯域の余裕のあるVPに移すなどのネットワーク制御を行う.ATMネットワークにおける輻輳制御は CAC,UPCに加え,FECN(forward explicit congestion notification)により前方向のトラヒックに対してネットワークが輻輳状態にあることを伝えることによって実現できる.後方向のトラヒックに対しては,BECN(backward explicit congestion

図 13.3 ATMネットワークにおける輻輳制御

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13.1 ATMとMPLS 153

notification)を用いてネットワークの輻輳状態を通知できる.ATMネットワークにおける輻輳制御のしくみを図 13.3に示す.ATMネットワークにおける輻輳制御は,一般的には①CAC,② UPC,③ FECN,④ BECN,⑤ ユーザの VC/VPごとの優先制御の順で実施される.これらのネットワーク制御方式の考え方は,NGNのトラヒックエンジニアリングにも継承されている.

13.1.2 MPLSの原理MPLS(multi protocol label switching)(RFC 3031)は,ATMにおける宛て先ラベルである VPI,VCIを使用したルーチング技術を応用し,宛て先としてラベルを用いたラベルスイッチングを行うことで,IP網と整合しやすくしたネットワーク技術である.MPLSはOSI参照モデルの第 2~3層を対象とし,IETFにより標準化が進められた.IPルータの処理能力はプロセッサによるソフトウェア処理上の制限があるため,この限界を打破するために IPベースでのルーチング情報処理と高速スイッチングが可能な ATMとの融合を図ったものがMPLSである.MPLSは ATMと同様に,交換ノード間で終端されたコネクションを使用するコネクション型のネットワークに適用できる.また,ネットワーク上でパケットの転送処理と経路計算処理を分離することにより,パケットの高速転送を実現できる.MPLS技術は,本格的にインターネットに導入される以前にも,NTTにおいて次世代の通信技術を開発する中で検討された経緯がある.MPLSの概念を取り入れ,さらにコアヘッダ(中継用コアノードが,パケット転送処理を行うために必要となるヘッダ)の中にサービス種別やグループユーザ番号などの付加情報を加え,IPv6の考え方を先取りした次世代インターネットの構成例を図 13.4に示す.各コア中継ノード間では,ATMのヘッダアドレスで高速ルーチングを行う.経路の設定は,RSVP(resource reservation protocol)(RFC 2205)とよばれる宛て先までの帯域を予約する通信プロトコルを用いて実現される.IPデータの転送時には,IPパケットに付加されたラベル 1)に基づき,ルータやスイッチが経路選択を行い,パケットデータを

図 13.4 次世代インターネットの構成例

1)MPLSにおける IPパケットへのラベル付けは,レイヤ 2ヘッダとレイヤ 3ヘッダの間にシムヘッダ(shim

header)とよばれるヘッダが挿入されて実現される.

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154 第 13章 新しいネットワーク技術

受信したノードは,ラベルに基づいた経路にパケットを転送するため,ATMのルーチング技術と酷似している.また,経路制御系と転送制御系を分離したネットワークアーキテクチャに特徴があり,現在,NGNで検討されているモデルの原型でもある.一般に,MPLSネットワークは,LSR(label switching router)とよばれる通信ノードを用いた IPパケットに記されたラベルをもとに,次ノードへの中継転送する.この場合の通信経路をラベルパスとよび,たとえば図 13.5に示す手順で,経路情報の交換が行われる.ここで作成したラベルは隣接した LSR(R1~R5に対応)に通知され,この手順を,順次,繰り返すことにより,ラベルパスによる経路情報のテーブルは,全 LSRで保持される.いったん経路情報が決まると,ラベルパスによるルーチングが行われる.注目すべき点は,複数の IPアドレス群に連動させて仮想的なラベルパスの経路を設定できることである.各LSRでは,宛て先ラベルに基づいて,経路選択用ラベルをエントリーアドレスとしたルーチングを行う.MPLSは IPサービスのQoSを向上させるために検討されたDiffserv(RFC

2474)との整合をとることも容易である.Diffservでは,IPv4で定義されていた TOS(type

of service)フィールドで規定できる優先度,遅延,スループット,および信頼性の識別用ビットを,DSCP(differentiated services code point)とよばれる新しい QoS制御用ビットとして再定義して使用されている.Diffservは,各フローに対して廃棄優先度を決めることができ,あらかじめ決められた閾値に設定されたキューが溢れる以前にパケットを廃棄処理できる.MPLSでは,パケットに付与されるラベルの値は各ホップごとに異なる値を設定できる.また,ラベルパスは,一度決定された後はネットワーク構成の変更があるときまで継続的に使用できる.MPLSでは,IP層に連動させて仮想的なラベルスイッチパスの経路を設定する機能をもたせることにより,複数の IPアドレスをまとめて一つのラベルにマッピングすることもできる.

図 13.5 ラベルパス設定によるルーチングテーブルの更新手順

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13.2 IP-VPN 155

13.2 IP-VPN

公衆ネットワークで仮想的にユーザ専用のネットワークを実現するための手段として,VPN(virtual private network)技術が開発された.この VPNを IPパケットレベルでの適用が可能となるようにしたネットワークが IP-VPN(RFC 2547)である.2000年頃から各通信事業者より IP-VPNの商用サービスが提供され始め,企業内および企業間用の LAN間通信として導入が進んだ.IP-VPNはプロバイダが提供する専用のネットワークであり,つぎのような利便性をユーザに提供できる.

① IPの転送を前提とした閉域接続サービスが実現できる.② 料金体系は事業所間距離や設定パス数に依存しない.

IP-VPNの実現にあたって,ISP網内のパケット転送には MPLSを適用した方式が実現されている.図 13.6にMPLSを用いた IP-VPNの構成の原理を示す.

図 13.6 MPLSを用いた IP-VPNの構成例

ラベルパスの設定は,OSPFや,LDP(label distribution protocol)(RFC 5036)による自動設定のほか,ネットワーク管理者による手動設定もできる.IP-VPNの特長は,明示的に IPパケットの網内転送経路のラベルを用いて指示することにより,ラベルパスによる中継処理の高速化が図れることである.IP-VPNの経路情報交換用のルーチングプロトコルには,BGPを使用した形態が一般的である.IP-VPNの構築にあたっては,PEルータ(provider edge router),Pルータ(provider

router),CEルータ(customer edge router)の 3種類のルータが必要である.CEルータはユーザ側に設置する汎用ルータであり,IP-VPNへの出入口に対応して設置される.PEルータは,ユーザ側からのアクセス回線を収容するプロバイダ側のエッジ部にあるルータであり,CEルータから届いたパケットがどの VPNに所属するものかどうかを識別し,該当する宛て先に対応したラベルを付与した後,MPLSドメインにパケットを送出する.MPLSドメイン内での転送パケットは,ユーザ側への出口に設置された PEルータに到着すると,ラベル情報が除去され,通常の IPパケットとして目的地の CEルータに送信される.Pルータはコアルータに該当し,ラベル情報をもとにパケットを中継転送する.

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156 第 13章 新しいネットワーク技術

MPLSを適用した IP-VPNでは,通信拠点どうしが必要な帯域分だけ論理的に接続されているため,従来,ATMやフレームリレーで必要とされていた PVCの設定・管理が不要となり,回線コストや運用コストの低減化が期待できる.また,ラベルごとにパスの優先度,帯域やセキュリティなどが設定できるため,ユーザにとって運用管理コストが軽減でき,セキュリティも強化できる.さらに,プライベート IPアドレスも含めた IPアドレス体系の活用が可能であり,複数のキャリアをまたがって VPNを構成することにより,柔軟でかつ安全性の高いネットワークの構築が可能になる.IP-VPNと類似した形態として,インターネット VPNがある.IP-VPNでは拠点間の接続を ISPが担い,MPLSなどを用いた閉域網により接続するのに対し,インターネットVPN

では拠点間の通信もインターネットを介して行う.ISPとの間で特別な契約が不要であることなどにより安価かつ手軽に構築でき,接続する拠点の選択や接続形態の自由度が高い.反面,通信の性能,安定性および互換性の面については課題があり,暗号化されるとはいえインターネットを経由した通信となることから,セキュリティ的なリスクは IP-VPNよりも高い.インターネット VPNの形態としては,大きく分けて拠点のネットワークどうしを接続する形態(拠点間 VPN)と,拠点のネットワークに遠隔地の端末が仮想的に接続する形態(ダイヤルアップ型 VPN)がある.構成手法は,拠点間を接続するための方式,暗号化方式,接続するレイヤ(拠点どうしが同じサブネットとなるレイヤ 2 VPNと拠点間がルーチングされるレイヤ 3 VPNなど)の組み合わせによりさまざまなものが提案,提供されている.IPsecのトンネルモードを用いたレイヤ 3 VPNが標準的に用いられているほか,暗号化のためのトンネルとして SSLを用いる SSL VPNと総称される製品群がさまざまなベンダから提供されている.

13.3 アドホックネットワーク

携帯電話や PHSが普及し,従来の電話音声サービスに加え,電子メール,Webアクセス,位置情報サービスなどのトラヒックが増えることに鑑みると,21世紀の情報社会はますます多様化し,移動通信技術に対しても新たなニーズが生まれつつある.このような状況の中で,従来の移動通信ネットワークとは根本的に異なる通信形態として,アドホックネットワークが研究されている.

13.3.1 アドホックネットワークの定義携帯電話やホットスポットなどの無線端末での通信は,基地局を介して行う手法を採用しているが,アドホックネットワークでは,移動可能な無線端末どうしが直接通信を行うことにより構築されるネットワークを形成できる.アドホックネットワークは,基地局や固定局を使わず,端末間で独自にホッピング(中継)することにより,データ伝送を可能とする技術である.無線アドホックネットワークの位置付けを図 13.7に示す.移動端末を対象としたアドホック通信ネットワークは,mobile adhoc network(MANET)とよばれる.MANET

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181

索 引

英数先頭050番号 114

3.9世代 LTE 6

3ウェイハンドシェーク 104

AAL 71

ADSL 82

AH 144

AM 28

ANI 164

AODV 159

ARPANET 4

AS 116,122

ASCIIコード 10

ASK 31

ATM 46,150

ATM交換 68

ATMレイヤ 70

BCC 75

BECN 152

BER 23

BGP4 122

bit 14

BPSK 31

Bチャネル 81

CA 143

CAC 151

CCITT 47

CDMA 53

CHAP 143

CIDR 117

CRC 78

CRC符号 19

CSMA/CA 89

CSMA/CD 88

dB 13

Diffserv 154

DMZ 146

DNS 107,135

DSL 6

DSR 159

Dチャネル 81

EGP 116,119

ENUM 135

ESP 144

FDD 53

FDDI 94

FDM 32

FDMA 53

FECN 152

FM 29

FSK 31

FTP 67

FTTH 6,83

GSM 58

HDLC伝送制御手順 76

HTTP 107

Hybrid P2P 165

Hチャネル 81

IaaS 166

IANA 99

ICT 6

IETF 128

IGP 116,119

IKE 144

IMS 162

IN 38,113

IP 3,97

IPsec 144

IPv4 98

IPv6 99,109

IP-VPN 155

IPアドレス 98

IP電話 114,128

ISDN 39,74,80

ISO 63

ITU 27

Iインタフェース 80

LAN 4,86

LAPB 74,81

LAPD 74,81

LAPF 74

LSR 154

MAC 89

MANET 156,162

MPLS 153

MTU 98

NGN 127,162

NNI 164

NSPIXP 4

OFDM 94

OLSR 161

OSI 63

OSI参照モデル 63

OSPF 121

P2P 165

PaaS 167

PAP 142

PCM 22,30

PCM24 23,33

PDC 58

PDH 27

PDS 84

PM 30

PON 84

POP3 108

PSK 31

Pure P2P 165

QoS 128

QPSK 31

RIP 119

RSVP 153

RTP 131

RTP制御プロトコル 132

SA 144

SaaS 167

SDH 27

SIP 129,162

SMTP 108

S/N比 13

SONET 27

SS 84

SSL 143

SSRC 131

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182 索 引

STM 33,46

TCP 97

TCP/IP 65,70

TDD 53

TDM 32

TDMA 53

TLS 143

UDP 97,105

UNI 164

UPC 152

URI 135

VLAN 92

VLSI 3

VLSM 100

VoIP 127,162

VPN 144,155

WAN 48

WDM 33

WWW 107

X.25 44

xDSL 83

あ 行アドホックネットワーク 156

アプリケーション層 67

誤り訂正符号 20

暗号鍵 139

イーサネット 5,66,87

位相同期 26

位相偏移変調 31

位相変調 30

位置登録 55

移動関門中継交換局 51

移動通信交換局 51

インターネット 4

インターネット鍵交換 144

インターネット技術標準化委員会128

インターネット電話 126

ウィンドウサイズ 45,104

オーディオ情報 10

か 行回線交換 39,68

回線認証機能 164

開放番号方式 112

鍵交換 140

隠れ端末問題 157

画素 12

仮想私設網 144

画像情報 11

カットアンドスルー 91

カプセル化 64

カプセル化セキュリティペイロード144

可変長符号 17

ギガイーサネット 93

ギャランティ型 126

共通鍵暗号 139

共通制御方式 37

共通線信号網 55

空間周波数 11

空間スイッチ 40

クラウドコンピューティング166

クロスバー方式 37

グローバルアドレス 99

公開鍵暗号 140

国際電気通信連合の電気通信標準化部門 162

コネクション型 43

コネクションレス型 43

コリジョンドメイン 92

コンテンション方式 76

さ 行最長アドレス一致 102

サーバ認証 141

サービスストラタム 163

サブネットマスク 100

晒され端末問題 157

サンプル値 11

シェーピング 152

市外相互接続点 51

時間スイッチ 40

自己情報量 15

シャノンの法則 24

周波数 10

周波数同期 27

周波数偏移変調 31

周波数変調 29

主配電盤 83

巡回冗長検査 19,78

情報エントロピー 16

自律システム 116

信号対雑音電力比 13

振幅偏移変調 31

振幅変調 28

垂直パリティ 76

スイッチングハブ 91

水平パリティ 75

ステップバイステップ方式 37

ストアアンドフォワード 91

ストリーミング 126

スプリットホライズン 121

スロースタート 104

セグメント 102

セッション層 67

セル 52

セレクティング 76

ソフトハンドオーバ 55

た 行第三者認証 141

ダイナミックルーチング 114

タイムスロット 40

多元接続 53

多重化 32

通信プロトコル 129

ディジタル化 9,23

ディジタルハイアラーキ 27

ディジタル網 6

ディフィー・ヘルマン鍵共有144

デシベル 13

データグラム方式 44

データリンク層 66,74

テレビ会議 127

テレビ電話 127

電子署名 141

電子認証 141

転送ストラタム 163

電話交換機 37

同期送信元識別子 131

トークンパッシング 94

トークンリング 93

トランスペアレント 26,39

トランスポート層 66,103

トランスポートモード 145

トンネルモード 145

な 行ナイキスト標本化周波数 12

認証 142

認証ヘッダ 144

ネットワーク層 66

は 行バイナリバックオフ 89

ハイパーバイザ 168

パケット交換 42

バーチャルコール 43

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索 引 183

ハッシュ値 142

ハードハンドオーバ 55

ハフマン符号 17

パーマネントバーチャルサーキット44

ハミング距離 20

パリティ符号 19

搬送波 28

ハンドオーバ 55

光ファイバ 34

ビット 14

ビット同期 26

秘密鍵 140

標本化 11

標本化周波数 11

標本化定理 12

標本値 11

ファイアウォール 146

ファーストイーサネット 93

フェージング 52

複信 53

輻輳 45

符号誤り 19

物理層 65

プライベートアドレス 99

フラッディング 158

フリーダイヤルサービス 113

ブリッジ 91

プレゼンテーション層 67

プレフィックス 100

フレームリレー 45

ブロードキャストドメイン 92

ブロードバンド 5

平均情報量 16

閉鎖番号区域 112

閉鎖番号方式 112

ベーシック伝送制御手順 74

ベストエフォート型 98,126

変調 28,52

変調速度 24

ホームメモリ局 56

ポーリング 76

ポーリング/セレクティング方式76

ま 行マルチホップ 157

マルチメディア 125

ムーアの法則 3

無限カウント 120

無線基地局 51

メトリック 116

網同期 26

網輻輳 46

や 行ユーザ認証 141

予測符号化 134

ら 行ラウンドトリップタイム 104

ラベルスイッチング 153

ラベルパス 154

ランレングス符号 18

リピータ 90

量子化 13

レイヤ 2スイッチ 91

論理チャネル番号 115

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情報工学レクチャーシリーズ ©

宮保憲治・田窪昭夫・

ネットワーク技術の基礎 第 2 版 武川直樹・八槇博史 2015

2007 年 11 月 6 日 第 1 版第 1 刷発行 【本書の無断転載を禁ず】2014 年 3 月 10 日 第 1 版第 4 刷発行2015 年 6 月 16 日 第 2 版第 1 刷発行

著  者 宮保憲治・田窪昭夫・武川直樹・八槇博史発 行 者 森北博巳発 行 所 森北出版株式会社

東京都千代田区富士見 1-4-11(〒 102-0071)電話 03-3265-8341 / FAX 03-3264-8709http://www.morikita.co.jp/日本書籍出版協会・自然科学書協会 会員 <(社)出版者著作権管理機構 委託出版物>

落丁・乱丁本はお取替えいたします.

Printed in Japan/ ISBN978-4-627-81032-7

   著 者 略 歴宮保 憲治(みやほ・のりはる)1974 年 電気通信大学電気通信学部応用電子工学科卒業1974 年 日本電信電話公社(現NTT)電気通信研究所入所2003 年 東京電機大学情報環境学部情報環境工学科教授 現在に至る 博士(工学),技術士(情報工学),電子情報通信学会フェロー研究分野 次世代 IP,クラウドコンピューティング,センサ・可視光ネットワーク

田窪 昭夫(たくぼ・あきお)1966 年 早稲田大学理工学部電気工学科卒業1968 年 早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻修了1968 年 三菱電機株式会社計算機製作所入社2002 年 東京電機大学情報環境学部情報環境工学科教授2013 年 東京電機大学退職 現在に至る 博士(工学)研究分野 ネットワークセキュリティ,認証プロトコル,コンテンツ保護

武川 直樹(むかわ・なおき)1974 年 早稲田大学理工学部電子通信学科卒業1976 年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了1976 年 日本電信電話公社(現NTT)電気通信研究所入所2003 年 東京電機大学情報環境学部情報環境工学科教授 現在に至る 博士(工学),電子情報通信学会フェロー研究分野 画像処理,人と機械のコミュニケーション

八槇 博史(やまき・ひろふみ)1995 年 京都大学工学部情報工学科卒業1999 年 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程修了1999 年 京都大学大学院情報学研究科助手2006 年 名古屋大学情報基盤センター准教授2013 年 東京電機大学情報環境学部准教授 現在に至る 博士(情報学)研究分野 ネットワークセキュリティ,マルチエージェントシステム

編集担当 加藤義之(森北出版)編集責任 富井 晃(森北出版)組  版 アベリー印  刷 日本制作センター製  本   同