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2015/02/02 日本の検疫状況 エボラウイルス病Ebola Virus Diseaseに対して 東京空港検疫所支所 佐々木 滋

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日本の検疫状況

エボラウイルス病(Ebola Virus Disease)

に対して

東京空港検疫所支所

佐々木 滋

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検疫感染症

検疫法によって規定された、検疫の対象となる感染症 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html

一類感染症

(出入国管理法により、患者である外国人に対し、本邦への入国を拒否出来る) エボラ出血熱、クルミア・コンゴ出血熱、痘瘡、南米出血熱、ペスト、マールブルグ熱、ラッサ熱

二類感染症

H5N1トリインフルエンザ、H7N9トリインフルエンザ、中東呼吸器症候群(MERS)

四類感染症

マラリア、チクングニア熱、デング熱

新型インフルエンザ等感染症

新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ

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羽田空港国際線 2014年月別健康相談者数

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2013年 各空港国際線利用者数状況

成田

47%

関空

20%

羽田

13%

中部

7%

福岡

5%

その他

8%

成田空港 27,946,137名

関西国際空港 11,900,120名

羽田空港 8,039,080名

中部国際空港 4,312,914名

福岡空港 3,189,780名

その他 4,714,266名

合計 60,102,297名

国土交通省 平成25年空港管理状況調書

http://www.mlit.go.jp/common/001056220.pdf

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健康相談室での業務内容の実際

検疫感染症を疑う患者のスクリーニング

おもに、マラリア、デング熱、チクングニア熱、新型インフルエンザ等

体調不良者への健康相談

不健康地からの帰国者、入国者への対応

空港内での急変者に対する救急対応への支援

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輸入感染症への検疫所の対応例

ヒトのデング熱診断

2014年以前より、感染症法に基づき、潜伏期間内におけるデング熱の流行地域からの日本への入国者に対し、以下の対応を継続して施行。

◎サーモグラフィーによる入国者の体温測定

◎発熱、その他有症患者の診察

◎診断の上、必要と認めた場合の採血検査

(検疫所内で、同定検査が可能) ◎必要医療機関への治療・搬送の依頼

媒介蚊の病原体保有検査

空港区域で採集した蚊について、種の同定を実施した後、マラリア原虫、およびデング熱、チクングニア熱、黄熱、日本脳炎、ウエストナイル熱を対象とした、ウイルス遺伝子保有の有無を確認。

2014年 デング熱流行の際における検疫所の対応

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最近の日本において

海外からの再興感染症として注目されているもの

細菌感染症

劇症型A群連鎖球菌感染症、ペスト、ジフテリア、薬剤耐性結核、百日咳、サルモネラ症、大腸菌感染症、肺炎球菌感染症、髄膜炎菌性髄膜炎

ウイルス感染症

狂犬病、デング熱・デング出血熱、黄熱病

寄生虫・原虫感染症

マラリア、住血吸虫症、トキソプラズマ症、ランブル鞭毛虫症(ジアルジア)、エキノコッカス症 他

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2014年エボラウイルス病 発生地域と拡大

ギニアでの発生の推移

2013年12月6日

ギニアで最初の患者となる2歳の男児が死亡。その後、その家族も死亡。

ギニア政府は、当所、原因不明の感染症と発表。

2014年3月22日

同政府は、疾患がエボラウイルス病であることを発表(その時点で、感染者数80名、死者数59名)。

5月にシエラレオネへ、6月にリベリアへ感染が波及。

2014年6月23日

国境なき医師団による、「制御出来ない状況」、との声明。

2014年8月8日

WHOによる、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言。

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2014年4月以降のエボラウイルス病の拡大

https://flutrackers.com/forum/forum/ebola-outbreak-2014/168121-ebola-graph-cumulative-cases-

deaths-using-who-updates-november-6-2014

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2014年エボラウイルス病 ナイジェリアへの波及

米国籍リベリア人の発症 7月20日、米国籍を持つリベリア政府財務省職員のMr.Patrick Sawyer

(40)が、航空機でナイジェリア入国後にエボラウイルス病と診断され、同25

日に死亡。

彼は、その後の、彼の診療に従事した医療従事者と、その家族等を含めた、合計21名の感染の原因になった。

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2014年エボラウイルス病 国際機関、各国の対応

ギニア、リベリア、シエラレオネ政府

国家非常事態委員会を設立し、事態収拾のためにエボラウイルス病への対応計画を立案。

ドイツ政府 発生国からのドイツ人の退避勧告。(8月13日) 一方で、エボラウイルス病患者の治療のための受け入れを表明。

米国務省 リベリアと、シエラレオネからの大使館員家族の退避命令。(8月8日および14日)

WHO 「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言。(8月8日) 発生国に対して、出国者の検査の実施と、感染疑い症例に対して、治療目的以外での出国を許可しないよう、声明を発表。(8月18日) 一方で、旅客機内でエボラに感染するリスクは低いとして、感染国への渡航や通商の制限を拡大する必要はない、との見解を、改めて示している。

その他 航空会社 ブリティッシュ・エアウェイズ リベリアとシエラレオネ便の一時停止

エミレーツ航空 コナクリ便(ギニア)の一時停止

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2014年エボラウイルス病 西アフリカ域外において

米国人感染者の搬送 8月2日、リベリアで診療にあたっていたDr.Kent Brantly(33)が、5日には宣教師のMs.Nancy Writebol(59)が、米国に搬送。⇒治療後、退院

スペイン人神父の搬送 8月7日、リベリアで診療にあたっていたカトリック神父Ft.Miguel

Pajares(75)が、スペインに搬送。⇒死亡

西アフリカ域外での感染疑い例 サウジアラビア 8月5日

シエラレオネから帰国し、死亡した40代男性。⇒陰性

ドイツ 8月19日

職業斡旋所で高熱を発した30歳女性。⇒陰性

アラブ首長国連邦 8月19日

悪性腫瘍による治療のため、ナイジェリアからインドへ向かう途中に急死した35歳のナイジェリア人女性。⇒陰性

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2014年 エボラウイルス病に対する厚生労働省の対応・通知

エボラ対象国からの日本への入国者(帰国者)に対する最初の規定

1 対象国(エボラ流行国→発生国)の規定

2 対象者の分類、定義

3 対象者の状態に応じた、入国後の扱いに関する規定

4 上記施行のための検疫所、保健所に対する指示

5 関係自治体への連絡

その後、9月5日、10月21日および24日、11月21日に、追加通知。

平成26年8月8日 『西アフリカにおけるエボラ出血熱発生への対応について』

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エボラウイルス病発生の対象となった国々

平成26年8月8日付

対象国が、ギニア、リベリア、およびシエラレオネと規定される。

平成26年9月5日付

ギニア、リベリア、シエラレオネに加えて、

ナイジェリア、コンゴ民主共和国が追加される。

平成26年10月24日付

ナイジェリアが対象から外れる。

平成26年11月21日

コンゴ民主共和国が対象から外れる。

現在、対象国は、ギニア、リベリア、およびシエラレオネのみ。

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対象者の分類、定義

「検疫所確認済書」を交付し入国審査官に提出するよう指示

必要に応じて健康相談

なし

発生国への3週間以内の渡航歴の有無

記入内容について本人に確認

「状況報告書」および「調査票」を記入

対象者が医療従事者の場合、以下を確認

・現地で診療に従事したか?

・従事した場合、医療機関・施設の名前、具体的な診療行為の内容?

・その他、現地での行動内容、エボラ出血熱患者に支援活動等をしているか?

支援した場合、その内容の詳細等

あり

①エボラ出血熱対象国からの帰国者

および入国者への対応

②エボラ出血熱対象国の

旅券所持者への対応

母国での3週間以内の滞在歴の有無

あり なし

対象者

・直前の滞在国、出発地に関わらず、発生国の旅券所持者の全て

・入国に際し、以下の検疫所確認済書を提出しない場合は、入国審査官より差し戻される

対象者

・航空会社からの事前通報による有症者

・帰国者の自己申告、検疫官による声がけ

・サーモグラフィーでの熱反応

・外務省、JICAからの事前情報

・入国審査官からの差し戻し

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対象者への対応の指針 平成26年8月8日付

◎症状

ア:「38℃以上の発熱」と、以下のうち1つ以上あり →「症状あり」

イ:発熱、および以下の症状もない →「症状なし」

「頭痛」、「関節痛」、「筋肉痛」、「胸痛」、「嘔吐」、「下痢」、「食思不振」、「脱力」、「原因不明の出血」など

◎接触歴

A 到着前21日以内に次のア・イのいずれかがある。

ア:エボラ出血熱患者(疑い含む)の血液や体液(汗、唾液、吐物、排泄物、その他)との接触歴

イ:コウモリ、霊長類等に直接手で触れるなどの接触歴 →「接触歴あり」

B 到着前21日以内にア・イのいずれもなし。 →「接触歴なし」

◎「症状なし」「接触歴なし」 → 帰宅(「健康管理カード」を交付)

◎「症状なし」「接触歴あり」 → 健康監視対象(「健康監視対象者指示書」を交付)

◎「一部症状あり」「接触歴あり」 → 停留措置(一類、または感染症特定医療機関を受診)

◎「症状あり」「接触歴あり」 → 隔離措置(一類、または感染症特定医療機関へ搬送)

<判定基準>

<対応>

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検疫法に基づく罰則規定

◎当該報告を拒み、虚偽の報告を行った場合

6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金

◎隔離、停留の期間中において、逃亡を図った場合

1年以下の懲役、または100万円以下の罰金

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エボラウイルス病 2014年8月以降の感染の拡大

8月以降、感染拡大の勢いは衰えず、

10月に入り、累積患者総数も著しく増加。

西アフリカ3国における累積患者総数

西アフリカ3国における累積死者総数

21日以内の新規発症患者数

WHOデータより http://www.who.int/csr/disease/ebola/situation-

reports/en/

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対象者への対応の指針 その後の変化 平成26年10月21日および24日付

◎症状

「38℃以上の発熱」と、以下のうち1つ以上の症状

「頭痛」、「関節痛」、「筋肉痛」、「胸痛」、「嘔吐」、「下痢」、「食思不振」、「脱力」、「原因不明の出血」など

◎接触歴

到着前21日以内の

エボラ出血熱患者(疑い含む)の血液や体液(汗、唾液、吐物、排泄物、その他)との接触歴

もしくは、コウモリ、霊長類等に直接手で触れるなどの接触歴

◎「症状なし」「接触歴なし」 → 帰宅(「健康管理カード」を交付)

◎「症状なし」「接触歴あり」 → 健康監視対象(「健康監視対象者指示書」を交付)

※入国後21日間、後に対象国出国後21日間へ変更

◎「一部症状あり」「接触歴あり」 → 停留措置(一類、または感染症特定医療機関を受診)

◎「症状あり」「接触歴あり」 → 隔離措置(一類、または感染症特定医療機関へ搬送)

<判定基準>

<対応>

①ギニア、リベリア、シエラレオネからの帰国者および入国者への対応

②ギニア、リベリア、シエラレオネ以外からの帰国者および入国者への対応

患者との接触歴の有無に関わらず、全て健康監視の対象となる。それ以上の有症者については、下記対応に準拠。

全ての対応において、下記対応に準拠。

<基本指針>

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到着前21日以内にエボラ出血熱の対象国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)に渡航、または滞在歴あり

次の(ア)、または(イ)への該当の有無

(ア)38℃以上の発熱症状がある。

(イ)体熱感を伴う症状があり、且つ

到着前21日以内にエボラ出血熱患者 (疑い患者を含む)の体液(血液、唾液、吐物、排泄物等)との接触歴(感染予防策の有無を問わない)がある。

症状のない場合であっても、針刺し・粘膜・傷口への曝露等で直接ウイルスの曝露を受け、エボラ出血熱に感染したおそれがある。

停留 隔離

特定感染症指定医療機関、または第一種感染症指定医療機関に委託停留。 (最大21日間)

特定感染症指定医療機関、または第一種感染症指定医療機関に委託隔離。

(病原体を保有しないことが確認されるまで)

健康監視対象者で、防護服の着用等、必要な感染予防策を取らずに、下記①~③に該当した場合 ①エボラ出血熱の患者(死体を含む)の血液、唾液、便、精液、涙、母乳等に接触 ②エボラ出血熱の患者(死体を含む)の検体処理(検査室等における検体の取扱い)に従事 ③エボラ出血熱の患者(死体を含む)の概ね1 メートル以内の距離で、診察、処置、搬送等に従事

エボラ出血熱の潜伏期間である21日間、1日2回(朝・夕)の体温測定を自ら行い、その都度、結果について、指示を行った検疫所に報告する。 また、エボラ出血熱が疑われる症状が出た場合には、直ちに指示を行った検疫所に報告する。(エボラ出血熱の流行国出国後21日間)

※ 保健所が外出自粛要請対象者の健康監視を行う場合、健康監視結果について、期間中、当該検疫所に連絡する。

健康監視および外出自粛要請:保健所による健康監視(感染症法15条第3項) 検疫所による健康監視(検疫法第18条第2項)

あり

なし あり

あり

疑似症例

対象者への対応の指針 その後の変化 平成26年11月21日付

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健康監視対象者への説明の際の留意事項

くれぐれも、体調にも気を付けて頂き、健康管理に留意すること。 関係自治体と個人情報を共有することについて。 体調不良の際には、まず検疫所(あるいは保健所)に相談し、必ず指示を仰ぐ。その場合、直接、医療機関を受診しないこと。 体温計を所持していない外国人に対しては、「簡易体温計」と「使用説明書」をお渡しする。

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機内で有症者が発生した場合

着陸

機内で有症者を発見

機長より航空会社を通じて、

検疫所に必要情報を報告

航空機内での対応 検疫所での対応

○対応者の限定、マスク、手袋の装着

○使用トイレの限定

○有症者を他の乗客より引き離す等、

感染防止策の実施、使用トイレの限定

適宜、追加情報を報告

検疫所より関係諸機関に連絡

○対策本部の設置

○航空会社や空港事務所との調整

○空港内、および機側への立入調整

○機内検疫の準備

○搬送者、および搬送ルートの調整・確保

検疫チーム、および関係者の

駐機場での待機、立入規制

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CDCによる航空会社向けの指針

乗員に対する指針

(機内でのエボラウイルス病疑い患者への対処) ・可能な限り、患者を(他の乗客や乗員から)離れた場所に置く。

・患者が咳やくしゃみをする際には、可能であれば、マスクを着用させる。無理であれば、咳やくしゃみをする際に、ティッシュ等で口を覆うよう指示する。また、ティシュ廃棄用にプラスティックの容器を与える。

・患者が吐気を訴えた際には、吐物用容器を与える。

・患者の血液や体液に触らなくてはならない場合、防水等の不透過処置を施されたディスポの手袋を着用する。

その他に、乗員自身の装備、有症者の搭乗拒否、機内清掃員、貨物取扱員に対する指針、ウイルスに曝露された場合の対応を細かく指示。

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その他、有症者発生の際の留意事項

◎検疫結果の評価、情報の把握。

(隔離対象者、停留対象者、健康監視対象者、その他への分類)

◎有症者の検査結果が陽性であった場合の、同乗者情報の収集、周辺乗客への対処。

◎有症者搬送の際の、医療機関、警察、CIQ諸機関との連絡・調整。

◎機内消毒の実施。

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シールド付サージカル・マスク(もしくはゴーグル、およびサージカル・マスク)、グローブ、アイソレーション・ガウン

N95マスク、フェイス・シールド、サージカル・ガウン、タイベック・ソフトウェア、グローブ(二重)、ゴム長靴

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これまでエボラウイルス病への

感染があり得るとされた患者について 厚生労働省報道発表資料より

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola.html

2014年10月27日

40歳代、男性、西アフリカ滞在歴あり ⇒ 陰性

(国立国際医療研究センター)

2014年11月7日

60歳代、男性、リベリア滞在歴あり ⇒ 陰性

(国立国際医療研究センター) 20歳代、女性、ギニアからの入国(ギニア国籍) ⇒ 陰性

(りんくう総合医療センター)

2014年12月29日

30歳代、男性、シエラレオネ滞在歴あり ⇒ 陰性

(国立国際医療研究センター)

2015年1月18日

70歳代、女性、シエラレオネ在住、一時帰国 ⇒ 陰性

(国立国際医療研究センター)

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エボラウイルス曝露者の監視に関するCDCの指針(抜粋)

High Risk

・有症エボラウイルス病患者の血液・体液による直接的な皮膚・粘膜を介した体内への曝露。

・PPEを装着せず、エボラウイルス病患者の血液・体液による曝露、死体との接触。

・有症エボラウイルス病患者との同居、介護。

(指針)直接的な能動監視の実施、公共交通機関の利用制限。職場、公共の場所への立入制限。

Some Risk

・流行地において、PPEを装着せず、有症エボラウイルス病患者の血液・体液、患者自身との接触。

・家庭、医療施設での有症エボラウイルス病患者との濃厚接触。

(指針)High Risk群に準じる。

Low Risk(But Not Zero) ・流行国への過去21日以内の訪問。

・PPEを装着せず、病初期の患者との短い期間の接触(握手など)。

・非流行国において、PPEを装着した上での患者との接触。

・有症エボラウイルス病患者との航空機による移動、極短時間の同室。

(指針)公共交通機関の利用制限。職場、公共の場所への立入制限は不要。

米国内で診療にあたった医療従事者、およびエボラウイルス病患者の航空機に3フィート以内の距離の座席で同乗した場合の、直接的な能動監視の実施。それ以外は、通常の能動監視。

No Identifiable Risk

・発症前のエボラ患者との接触、流行国への訪問から21日以上が経過。

(指針)特になし。

http://www.cdc.gov/vhf/ebola/exposure/monitoring-and-movement-of-persons-with-exposure.html

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検疫の実施における一般的な課題

◎検疫対象者のリスク評価、その対応策の妥当性について

◎対象者個人への配慮について

◎対象者個人を超えた、社会全体に対する配慮について

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入国後14日間、1日2回の体温測定を行い、38℃以上の発熱、咳、その他の呼吸器症状の有無について、検疫所で確認。

空港検疫所でPCR検査

なし

陰性

対象者

到着前14日以内にMERS対象国に滞在し、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する者

(1)医療機関の受診、または訪問歴がある。

(2)MERS患者との濃厚接触歴(通常環境下では、飛沫の飛散距離である2m以内を目安)がある。

(3)ラクダとの濃厚接触歴(未殺菌乳の喫食など)がある。

38℃以上の発熱(解熱作用のある薬剤を使用している場合には、38℃以下

でも全身倦怠等の症状をもって発熱と同じ状態とみなす)

かつ

急性呼吸器症状

中東呼吸器症候群(MERS)の場合の対応(参考) 平成26年7月24日付

健康監視

陽性【患者(確定例)】

国立感染症研究所で 再度PCR検査

陽性【患者(疑似症例)】

陰性

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html

MERS対象国 (平成26年7月16日付)

アラブ首長国連邦

イエメン

オマーン

カタール

クウェート

サウジアラビア

ヨルダン

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エボラウイルス病に関連し空港での検疫体制に関心が集まった例

【患者】 39歳、女性。

英国保健局(National Health Service)に所属する看護師。

【シエラレオネへの入国の経緯、病状の経過】 Save The Children in Sierra Leoneのボランティアとして、2014年11月23日にシエラレオネに入国。

5週間の診療に従事した後、英国への帰国の途に就き、カサブランカ、ロンドンを経由し、 国内線であるBA1478便で、12月28日の午後11時30分に、グラスゴーに到着。

その直後から、症状が増悪。翌29日の午前7時50分には、グラスゴーのGartnavel Hospitalの隔離病棟に入院。同日中に、エボラウイルス感染が確認され、さらに30日には、軍用機でロンドンのRoyal Free Hospitalに搬送。

2014年12月29日 英国でのエボラウイルス感染例について (英国内において、入国後に感染が確認された、最初の症例)

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【ロンドン到着時の状態】 すでに発熱していた可能性。

http://www.who.int/csr/don/30-december-2014-ebola/en/

ヒースロー空港到着時に、担当官に対して、(体調に問題があったためか)「熱が上がって来ているのでは・・・」と告げ、その後30分程の間に、合計で7回体温を測定した。

http://www.bbc.com/news/health-30657485

【本事例に対する批判】 『(症状を有していたかも知れない)西アフリカでのエボラ患者の診療に従事した、いわゆるハイリスク群の医療従事者に対して、公共の交通機関(彼女の場合は、国内便)による帰宅を許している』

http://www.theguardian.com/world/2014/dec/30/uk-ebola-patient-named-pauline-cafferkey-scottish-nurse

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/ebola/11317382/Ebola-victim-Pauline-Cafferkeys-colleague-

criticises-shambolic-screening.html

2014年12月 英国での発症例の詳細

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2015年 最新の西アフリカの感染状況

WHO発表 2015年1月21日現在

http://www.who.int/csr/disease/ebola/situation-reports/en/

21日以内の新規発症患者数の低下傾向、特に、リベリアでの著明な低下。

(21日以内の新規発症患者総数)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

Guinea

Liberia

Sierra Leone

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これまでの検疫の実施を振り返って

◎2014年8月以降、エボラウイルス病に対する検疫体制を強化している。

◎エボラウイルス病発生国からの帰国者、および入国者については、現地での滞在状況について、直接、聞き取りを実施している。

◎対象者個人や社会に対する影響の中で、より適切な対応が広く行われるためには、疾患そのものへの正しい理解と知識の普及が、重要となる。

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ご清聴

ありがとうございました。

東京空港検疫所支所

佐々木 滋