東北地方における産業の現状と見通し...2012年6月 株式会社 三井住友銀行...

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2012年6月 株式会社 三井住友銀行 企業調査部 東北地方における産業の現状と見通し 【要旨】 ¾ 東北地方では東日本大震災からの復旧が一巡し、今後は復興に向けた動きが本格化するとみられ、復興需要の恩 恵を受ける建設や住宅、外食や一部の小売業態では今年度から目先3~5年までの短・中期的な需要は堅調に推移 する見通し。 ¾ 但し、復興需要が一巡する3~5年後以降は特需の剥落により震災前のトレンドに戻る可能性があるほか、反動減 により震災前を下回って業況が悪化するリスクも懸念される。 ¾ 従って、現時点から復興需要の剥落後を見据えて、復興特区をはじめとする震災復興支援策を活用するなどして 産業活性化を図ることが求められる。そのためには東北地方を企業にとって魅力のある地域とすべく、産官学の 連携による新たな産業の誘致・活性化などの取組みを強化していく必要がある。 本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたもので はありません。 本資料は、作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情 報の正確性・完全性を弊行で保証する性格のものではありません。また、本資料の情報の内容は、経済 情勢等の変化により変更されることがありますので、ご了承ください。 ご利用に際しては、お客さまご自身の判断にてお取扱いくださいますようお願い致します。本資料の一 部または全部を、電子的または機械的な手段を問わず、無断での複製または転送等することを禁じてお ります。 Copyright © 2012 Sumitomo Mitsui Banking Corporation. All Rights Reserved. For Discussion Purpose Only Confidential

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2012年6月

株式会社

三井住友銀行

企業調査部

東北地方における産業の現状と見通し

【要旨】

東北地方では東日本大震災からの復旧が一巡し、今後は復興に向けた動きが本格化するとみられ、復興需要の恩恵を受ける建設や住宅、外食や一部の小売業態では今年度から目先3~5年までの短・中期的な需要は堅調に推移する見通し。

但し、復興需要が一巡する3~5年後以降は特需の剥落により震災前のトレンドに戻る可能性があるほか、反動減により震災前を下回って業況が悪化するリスクも懸念される。

従って、現時点から復興需要の剥落後を見据えて、復興特区をはじめとする震災復興支援策を活用するなどして産業活性化を図ることが求められる。そのためには東北地方を企業にとって魅力のある地域とすべく、産官学の連携による新たな産業の誘致・活性化などの取組みを強化していく必要がある。

本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。

本資料は、作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を弊行で保証する性格のものではありません。また、本資料の情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがありますので、ご了承ください。

ご利用に際しては、お客さまご自身の判断にてお取扱いくださいますようお願い致します。本資料の一部または全部を、電子的または機械的な手段を問わず、無断での複製または転送等することを禁じております。

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1.全体総括編

マクロ環境(1) 震災前からのトレンド ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.1

マクロ環境(2) 現況と短期的見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.2

(ご参考)がれき処理の現況と見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.3

マクロ環境(3) 中長期的見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.4

主要産業の現況と短期的見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.5

今後の中長期的な有望産業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.6

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11%

人口<左>

全国に占める人口構成比<右>

(千人)

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2009

2010

2011

6%

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12%

14%

16%

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20%青森 岩手 宮城

秋田 山形 福島(件)

全国に占める構成比<右>

※1

※2

※1

31%

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3%

3%

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1960

1970

1980

1990

2000

2009

農林水産業

鉱 業

製造業

建設業

電気・ガス・水道業

卸売・小売業

金融・保険業

不動産業

運輸・通信業

サービス業

東京圏への人口・経済活動の一極集中による地域経済低迷が続く中、東北地方も1990年代後半から人口減少に転じたほか、工場立地件数も全国に占める構成比が低下傾向を辿っているなど、東北経済は震災前から長期的に緩やかな下落トレンドにあった。東北経済の産業構造についてみれば、建設業、卸・小売業は長期縮小傾向にある一方、サービス業は大きく拡大。製造業は略横這い乍ら、内訳をみれば2000年以降、電気機械の縮小、輸送用機械の拡大傾向がみられる。

○東北経済における産業構造の変遷(GDPベース)

○工場立地件数の長期推移

○人口動態の長期推移(東北6県計=青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所を基に弊行作成

(出所)経済産業省

(出所)内閣府

(製造業内訳)

17%

19%

18%

3%

3%

3%

4%

5%

5%

4%

3%

4%

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7%

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3%

4%

6% 3%

18%

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5%

2%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1990

2000

2009

食料品

繊維

パルプ・紙

化学

石油・石炭製品

窯業・土石製品

一次金属

金属製品

一般機械

電気機械

輸送用機械

精密機械

その他の製造業

(※1)高速交通網の整備や地方への工場立地を促進する政策等により電気機械を中心に工場立地が進展(※2)工場地方分散の主役は海外シフトが進む電気機械から自動車に移るも、東北は産業集積が相対的

に薄く、シェアは低下

マクロ環境(1)

震災前からのトレンド

1

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建設業, 5%その他, 9%

運送業, 7%

旅館・ホテル業, 7%

水産・食品加工業, 22%

製造業, 27%

卸小売・サービス業,

23%

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11/3月 11/5月 11/7月 11/9月 11/11月 12/1月 12/3月 12/5月

-50

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

岩手

宮城

福島

岩手(前年比)

宮城(前年比)

福島(前年比)

全国(前年比)

(億円) 前年比(%)

人的被害(23/3~24/2)

前年同期比(a)

死者・不明者(b)

(a)+(b)総人口比(単位:%)

岩手県 3,179 -979 5,968 4,989 0.4

宮城県 5,469 4,995 11,200 16,195 0.7

福島県 32,568 26,773 1,819 28,592 1.4

合 計 41,216 30,789 18,987 49,776 0.9

(出所)人口動態:総務省「住民基本台帳人口移動報告」、人的被害:警察庁(2012年3月時点)

(単位:人)

震災影響 計人口移動(転出超過数)

被災3県の人口動態は震災後1年間で従来の減少トレンドからさらに約5万人の人口減が加速したほか、統計上把握が困難な人口減少も存在する模様。一方、短期的には被災地への復旧・復興関係者の流入により、仙台市を中心に滞在人口の押上げが続くとみられる。足元の生産動向は企業各社の復旧に向けた努力に加え、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業が域内産業を下支えしていることもあって、震災直後の落ち込みから回復傾向が続いており、輸送機械など一部業種では震災前水準を上回って推移している。今後の復興需要見通しについて、まちづくり計画の遅れや人手不足等から需要ピークが後ズレする可能性があるものの、公共工事の発注本格化や、それに伴う県外からの復旧・復興関係者による消費押上げ等に下支えされ、今年度は底堅く推移するとみられる。

○震災による人口動態への影響

○鉱工業生産指数の推移(東北地方、11/02月=100)

(出所)経済産業省

(出所)経済産業省

2012年4月時点

マクロ環境(2)

現況と短期的見通し

○グループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)

○公共工事請負金額の推移(がれき処理関連含む)

(出所)東日本建設業保証

交付先自治体

グループ数

補助金(国+県、

億円)

青森県 10 86

岩手県 30 436

宮城県 65 1,196

福島県 80 389

合 計 185 2,107

業種別内訳

2

20

40

60

80

100

120

140

11/01月 11/03月 11/05月 11/07月 11/09月 11/11月 12/01月 12/03月鉱工業 鉄鋼業 一般機械工業

情報通信機械工業 電子部品・デバイス 輸送機械工業

精密機械工業 化学工業 パルプ・紙・紙加工品

食料品・たばこ工業

12/3

鉱工業(全国) 100.5

鉱工業(東北) 96.0

鉄鋼 86.7

一般機械 96.1

情報通信 114.7

電子部品・デバイ ス 91.1

輸送機械 127.5

精密機械 107.3

化学 81.8

紙パルプ 77.0

食料品 94.6

業種

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(内訳)

再生利用 焼却処理 埋立処分

岩手県 5,250 78.0% 11.3% 8.0% 2.2% 1.1%

陸前高田市 1,482 95.0% 9.0% 5.7% 1.8% 1.6%

大船渡市 756 79.0% 38.6% 28.8% 5.8% 3.8%

釜石市 820 42.0% 2.9% 2.2% 0.5% 0.4%

宮城県 11,537 81.0% 18.4% 16.9% 0.8% 0.7%

石巻市 4,458 64.0% 27.2% 26.8% 0.4% 0.0%

気仙沼市 1,435 98.0% 3.6% 3.4% 0.1% 0.0%

仙台市 1,352 98.0% 19.2% 11.1% 4.4% 3.6%

福島県 2,011 71.0% 9.4% 9.2% 0.1% 0.0%

いわき市 700 81.0% 18.2% 18.0% 0.1% 0.1%

南相馬市 640 79.0% 1.1% 1.1% 0.2% 0.0%

相馬市 250 97.0% 6.5% 6.4% 0.0% 0.0%

各県上位3自治体

がれき推計量(千t)

仮置場への搬入率

(%)

処理・処分割合(%)

被災3県(岩手・宮城・福島県)のがれき処理について、仮置場への搬入は未解体建物を除けば略完了しているものの、その後の処理・処分割合は震災から1年強を経た現時点でも15.5%と未だ低水準にとどまる上、大半は再生利用が中心で焼却処理の進展は遅延。政府は2014年3月末までにがれき処理を終えることを目標としているが、県外での広域処理の進展が困難である中、足元では宮城県で県内の仮設焼却炉が稼働しはじめており、今後は焼却処理の本格化が見込まれる。

(ご参考)

がれき(災害廃棄物)処理の現況と見通し

○がれき処理の全体像

(被災3県合計、2012年5月21日時点)

○被災3県のがれき処理状況

(2012年5月21日時点)

(出所)復興庁

(出所)復興庁

○今後のがれき処理の見通し

広域処理が進まない中、県内の仮設

焼却炉設置に向けた動きが本格化

(出所)復興庁、宮城県HP

2012年5月28日時点

(出所)宮城県HP

2012年5月28日時点

3

ブロック(処理区) 代表事業者※ 事業規模 設置・稼働状況

石巻 鹿島建設 1,924億円 1号:試験運転、2~5号:建設中

亘理名取(名取) 西松建設 162億円 1号:稼働、2号:試験運転

亘理名取(岩沼) 間組 238億円 1~3号:試験運転

亘理名取(亘理) 大林組 543億円 1~3号:稼働、4~5号:試験運転

亘理名取(山元) フジタ 331億円 1号:稼働、2号:建設中

宮城東部 JFEエンジニアリング 235億円 1~2号:建設中

気仙沼(南三陸) 清水建設 220億円 建設準備中

気仙沼(気仙沼) 大成建設 484億円 契約締結準備中※各事業は関連企業群によるJV方式が採用されている

全体発生量(18,799千t)

仮置場搬入(14,891千t)

再生利用(2,552千t)

焼却処理(212千t)

埋立処分(143千t)

搬入率(79%)

処理・処分割合(15.5%)

○仮設焼却炉設置に向けた動き

全体目標:2014年3月末までに中間処理・ 終処分を完了

全体計画

宮城県における具体的な動き

県外広域処理仮設焼却炉の設置

既存焼却施設の活用

合計処理能力

本格稼動 試験運転 (計画全体)

岩手県 2基 2基 - 71.2千t/年

宮城県 29基 5基 7基 1640.7千t/年

設置計画仮設焼却炉

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復興に向けた動きは長期化が予想されることから、目先3~5年(中期)に亘って公共工事の発注や住宅需要の顕在化が続くとみられるほか、復興関係者の流入による滞在人口押上げも下支えとなって、東北地方の生産・消費活動は底堅く推移する見通し。尤も、復興需要が一巡する3~5年後以降(長期)を展望すれば、震災以前の人口減少トレンドに回帰する可能性もあることから、今後は復興支援政策等を活用した新たなまちづくりや産業誘致による地域経済の活性化が求められる。

○東北地方の人口動態の中長期展望(イメージ図)

震災発生 現在

復興需要一巡後

震災前からの

人口減少トレンド

【シナリオ②】産業誘致や新たな街づくりが進展し、

人口減少率は震災前より改善

復旧・復興期

【シナリオ①】若年層流出に歯止めが掛からず

震災前から更に人口減少加速

マクロ環境(3)

中長期的見通し

政策 課題 求められる方向性

公共工事中期的には復興需要で堅調に推移するも、

その後は需要の反動減に加え、自治体財

政悪化による長期需要低迷

自治体の財源不足等への対応として官民連

携事業に対する取組を強化していく

まちづくり計画自治体のマンパワー不足や住民の利害調

整難航等による計画遅延

住民の利害調整を着実に進め、スマートコ

ミュニティなど新たなまちづくりを本格化

させることで人口減少に歯止めをかける

産業誘致日本の立地競争力が低下している中、海

外進出対比でみた東北拠点のメリットが

見劣りし、散発的な企業進出にとどまる

復興特区制度等の活用により東北地方の国

際的な立地競争力を高め、自動車産業など

の各地域の注力産業の集積を図っていく

次世代産業育成採算面や地元住民の反対等がネックと

なって再生可能エネルギー関連のプロ

ジェクトが長期化

再生可能エネルギー関連プロジェクトの検

証や利害調整を加速させるほか、産官学連

携による医療・研究開発拠点の集積強化

既存産業の再生風評リスクは払拭されず、農林水産業、

食品加工、観光産業などで低迷長期化

風評リスクの払拭に努めるとともに、農林

水産業の6次産業化、農地や漁港の集約等に

より競争力を高める

○中長期的なマクロ要因連関図

3~5年後

○今後の復興政策の課題と求められる方向性

4

【シナリオ③】一時的に人口が回帰するも

再び減少が加速する

○被災3県の復興計画(※)

宮城

・ものづくり産業の早期復興~自動車関連産業の更なる誘致等

・新しい水産業の創造、先進的な農林業の構築

・再生可能エネルギーを活用したエコタウン形成

岩手

・漁業協同組合、産地魚市場を核とした水産業の再生

・官民一体となった三陸沿岸観光の再構築

・国際リニアコライダー(ILC)の誘致など国際学術支援エリア形成

福島

・除染の推進による環境回復

・ 先端の放射線医学の研究等の医療関連産業集積

・再生可能エネルギー推進による原子力に依存しない社会づくり※各県の特徴的な施策のみを抽出して記載 (出所)宮城県HP、岩手県HP、福島県HP

域外流入

生産回復 雇用増加

人口回復所得増加

消費増加

復興政策まちづくり計画産業復興・誘致

復興需要

避難住民回帰

金融正常化

<起点>

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足元では復旧工事が実行される中、建設関係の業況は震災前を上回る水準で推移。復旧工事関係者等が流入し、外食、百貨店やGMSなど一部の小売業態も好調に推移している。短期的には復興工事の本格化に伴いさらなる需要増が期待されるものの、需要ピークが後ズレすれば、現状並みの水準で推移する見通し。また、自動車、機械は工場や物流体制の復旧に伴い震災前の生産水準に回復。特に自動車は東北の拠点を拡充したトヨタの増産もあり好調を持続するとみられるが、国内外の自動車販売の動向に左右される点には留意が必要。尚、震災後の特需が数ヶ月で収束した食品スーパーの業況は冴えないほか、円高による輸出減や前期特需の反動による内需減などに苦しむ電機・電子部品、素材(除く建材)は震災前の生産水準に達しておらず、回復の遅れが懸念される。

主要産業の現況と短期的見通し

短期的見通し

◎~○

復興工事が本格化すれば需要増、後ズレすれば現在の水準で横這いのイメージ

震災前からの低下トレンドに加え、円高による輸出減、エコポイント打ち切り後の反動による需要減の影響有り

ケース1 復旧工事に伴い需要は好調で震災前を上回る水準。足元で復旧は一服しつつあるが復興工事開始に伴い需要は増加する見通し

代表的な産業 建設、住宅、建材、ホテル、外食、小売(百貨店・ホームセンター・GMS)

・震災後一年間は復旧に注力・時期はともかく復興工事は今年度以降本格化する見通し

産業・企業動向 ・地域によるが需要が震災前の+5割以上のケースもあり

・自衛隊、警察、工事作業員等の一時滞在人口が急増 ホテル、外食は活況(但し仙台等一部地域のみ)・保険金、補償金の支給でブランド品・高額品の購入が増加

ケース2 震災で被害を受けた生産設備、物流体制が整備され、生産は震災前の水準に回復。今後は市場動向等に左右される

代表的な産業 自動車、機械

復旧・復興政策 ・産業誘致の方針は未定で具体的な動きは示されず

・工場や物流体制が復旧し生産量は回復

・自動車はエコカー補助金の効果で足下は好調ながら 補助打ち切り後の反動減が懸念される・人口流出に伴い地元における消費は減少・他地域及び海外宛に製品供給

ケース3 人口流出の影響で震災前の水準には戻らず。今後は震災前のペースを上回る勢いで減少する懸念あり

代表的な産業 小売(食品スーパー)、素材(除く建材)、電機・電子部品

復旧・復興政策 ・まちづくり計画は未定

・円高の影響で輸出減少、輸入品との競合激化

・一部産業では電力コスト上昇の影響も大・人口流出に伴い地元における消費は減少 一時滞在人口の増加ではカバーできず・薄型TVは前期特需の反動減もあり需要は急減

復旧・復興政策

人口動態・消費

産業・企業動向

人口動態・消費

産業・企業動向

人口動態・消費

11/3月震災発生

12/3月一年後

12/5月現在

業況良

11/3月震災発生

12/3月一年後

12/5月現在

11/3月震災発生

12/3月一年後

12/5月現在

業況良

業況良

悪5

復興需要は一段落。生産面ではエコカー補助金効果で相応の水準を維持するとみられる

○~△

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業種 社数

自動車 13社

食品 11社

高度電子機械 5社

木材 5社

医療・健康関連 3社

クリーンエネルギー 1社

今後は復興に向けた自治体、民間の動きが本格化していくとみられる中、中期的に復興需要の恩恵を享受できる産業として、建設や住宅(含む建材)、外食、小売(ホームセンター)が想定される。但し、これら業種では需要の反動減も懸念されることから、復興需要後を見据えた長期戦略を検討していくことが求められる。また、これまで競争力を有していた観光や食品加工業に加え、新たな有望産業として、再生可能エネルギー発電事業や、スマートコミュニティー、自動車・医療・航空関連産業の集積などを期待する声がある。

今後の中長期的な有望産業

業種 中期見通し(3~5年後) 特需

建設全体で約10兆円以上の復興需要が見込まれ、今後は

自治体による大型工事等の発注が本格化

住宅今後は被害総額約2兆円に対し、少なくとも1兆円以

上の新築・リフォーム需要が顕在化する見通し

外食復興の本格化に伴い、県外からの復興工事関係者の

流入による需要押上げが見込まれる(仙台市中心)

小売住宅着工戸数増加の恩恵を受けるホームセンターな

どの需要は底堅く推移する見通し

○中期的に復興需要の恩恵を受ける産業 ○長期的に期待される新たな有望産業

但し、復興需要一巡後の反動減が懸念される

5月末時点で認定済みの復興推進計画は、青森:1件、岩手:2件、宮城:6件、福島:4件、茨城:1件そのうち、宮城県では自動車や食品を中心に指定事業者が選定されたほか、岩手県でも選定済み。今後は福島、茨城、青森県でも順次選定される見通し。

○復興推進計画の具体的な進展 宮城県の指定事業者選定状況

○今後の産業振興の方向性

(出所)宮城県HP

既存産業の更なる強化・食品、電機、自動車、航空関連産業の立地拠点性強化次世代の新たな産業の振興

・クリーンエネルギーや環境、医療、次世代自動車等の新たな産業の集積グローバルな産業エリア創出

・東北大学をはじめとする研究機関や企業との連携、外資系企業等の研究開発部門誘致

トヨタは東北地方を国内第3の生産拠点とする取組みを強化東北大学と連携して次世代自動車の開発・製造拠点化推進

自動車産業の集積3

各種の規制緩和や、今年7月から施行のFIT(全量固定価格買取制度)により再生エネ発電事業(IPP)を後押し

再生可能エネルギー1

経産省は今年4月に東北地方8地域をマスタープラン策定地域として選定し、事業支援のための補助金交付を決定

スマートコミュニティ2

東北大学(宮城)や福島県立医大(福島)等を中心とした先端研究開発拠点及び関連産業の誘致

医療関連産業の集積4

既存の産業集積(IHI:相馬市等)を活かし、今後も成長が期待される同産業の更なる集積を図る

航空宇宙産業の集積5

(出所)宮城県HP

2012年5月末時点6

医療産業

クリーン

エネルギ

ー産業

自動車関

連産業食品関連

産業等

高度電子

機械産業

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電力業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.7

建設業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.8

住宅業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.9

建材業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.10

2.個別業界編

外食業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.11

小売業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.12

自動車業界 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.13

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600

650

700

750

800

850

2001 2004 2007 2010

(億kWh)

電力消費量

電力業界

東北電力の設備容量(発電能力)は、火力発電所(540万kW)や原子力発電所(327万kW)等の被災・停止により震災直後に半減したものの、茲1年間で火力発電所の復旧が進み、12/3月末時点の設備容量は震災前比約70%の水準まで回復した。東北電力は今後、東通原発(12/10月予定)及び女川原発(13年度以降)を順次立ち上げていく計画乍ら、政府・自治体が原発再稼動に難色を示した場合には、十分な供給余力を確保できない状況が続く可能性もある。

要因 短期 長期

産業部門の動向(復興・集積)

家庭部門の動向(人口動態)

省エネ・節電機器の普及

発電所の復旧・リプレイス

固定価格買取制度(FIT)の導入

送配電網の強化・拡充

スマートコミュニティの建設

電力事業制度の見直し 供給構造の変化

原子力発電所の再稼動問題 需給見通しの変動

支援制度・補助策の打ち切り 投資意欲の低下

燃料価格の高騰 消費意欲の低下

今後の方向性

短期的には、復興投資の本格化や産業集積等により電力需要は増加するとみられるものの、長期的には人口減少や省エネ・節電機器の普及等により需要減少が予想される。

一方、被災・停止した発電所の回復は略一巡したものの、今後は固定価格買取制度(FIT)の導入や経産省が東北復興のグランドデザインとして掲げるスマートコミュニティの構築に伴って、再生可能エネルギー発電事業(IPP)が加速するとみられる。

但し、電力業界の事業環境は、規制や補助金等の政策動向に大きく左右されるため、政府・省庁の方針等に留意する必要がある。

メガソーラー スマートシティ

太陽光発電の設備コストは20~40万円/kW程度(プロジェクトあたり数十億円)。

震災以降、新たな事業者が東北地方をターゲットとして単独又は共同で発電事業の立上げを狙う。

プロジェクトの投資規模は50~100億円程度。

経産省が12/4月に8事業を選定、主体となる企業が12/9月までにマスタープランを策定予定。

日射量の変化による発電量の変動とそれによる電力品質の低価(需給バランスへの悪影響)。

買取価格や買取期間は基本的に毎年見直し。電力の安定供給に支障を来たす場合、電力会社は接続解除が可能。

地権者間の利害調整が困難で、プロジェクトの進捗は今ひとつ。

経産省が補助金(投資額の3分の2)を拠出するが、予算(80億円)は3件分程度。再エネ中心のコスト高な街には人や企業が集まらない惧れあり。

【今後の戦略(ビジネスチャンス)】

7(出所)電気事業連合会

○東北電力の販売電力量の推移

(出所)環境省

○東北電力管内における再生可能エネル

ギーの導入ポテンシャル(2011年4月)

種別導入ポテンシャルと

東北の地域性

太陽光地域偏在性は小さいが、三

陸海岸は相対的に好条件

風力30,000万kW、事業収支が優

良な地点が多い

地熱350万kW、事業収支が優良

な地点が多い

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建設業界

【図表】復興需要の規模及びスケジュールのイメージ

建設(土木・非住宅)業界は国・自治体の予算等から、10兆円以上の需要が見込まれる。土木は、今年度以降大型工事等の発注が本格化する見通し。非住宅は、企業の設備投資意欲が弱い等需要は限定的と見られる。

土木に強い大手・準大手業者や自治体発注の小規模工事を取り込む地場業者は受注拡大が期待できるが、被災地における協力会社網或いは得意分野(道路・港湾等)を持たない中堅は苦戦する見通し。

長期的には、復興一巡後は震災前を下回る水準まで需要は低迷すると見られ、今後は耐震等の施工技術の更なる強化による提案営業の推進や、増加が予想される官民連携事業への取組を強化する必要あり。

今後の戦略

長期的には復興が一巡した後は震災前を下回る水準まで需要は低迷すると見られることから、収益力を維持する上では全国的に増加が予想される耐震、防潮堤建設等、防災関係工事を受注するべく施工技術や提案営業の強化が必要。

官公庁の財源及び人手不足等から、今後増加が予想される国・地方自治体との官民連携事業に対する取組を強化。

業界動向

土木

瓦礫処理は全地区で発注完了。除染は今年度本格的に発注の見通し。河川や海岸堤防は出水期(6~7月頃)までに発注予定。道路の工事本格化は来年度後半以降。その他は3~5年程度で発注は一巡。

非住宅

公共施設の発注は短期的には役所や病院等緊急性が高いものに略限定。土木工事が進捗する3年後頃から発注増加も、現状民間設備投資の話は余り聞かれず需要は限定的と見られる。

大手・

準大手

各社とも被災地拠点の人員を増強。公共工事の大ロット化から、調達能力が高い大手の受注機会が増加。

中堅

各被災地拠点の人員増強を図るも、営業基盤弱く大手・準大手程受注は増加せず。尤も、港湾や道路舗装等得意分野の持つ先は相応の受注を確保する見込み。

地場

自治体の小規模工事中心に受注は大幅増も、施工力は限界に達しており、これ以上の受注上乗せは困難。大手・準大手や中堅と同様、建築中心の企業は受注伸びず。

非住宅

住宅

その他(不明含む)

道路

河川港湾

除染

1兆円以上

建築:

1兆円以上

0.9兆円以上

10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度16年度

以降

東日本大震災発生

合計

土木:

10兆円以上

瓦礫

NA

1.4兆円以上

発注、施工

発注、施工

焼却処理1兆円以上

5.7兆円以上

発注・仮置場へ搬入

発注、施工

復旧工事の発注、施工

復旧工事の発注、施工

実証実験

11兆円以上

復興需要の弊部予測

(更なる後ろ倒しの

懸念あり)

発注、施工設計、用地買収復旧工事の発注、施工

その他民間施設の発注、施工公共施設の発注、施工

復旧工事の発注、施工

復興住宅

民間住宅

仮設住宅

1兆円以上

(出所)内閣府、財務省及び岩手、宮城、福島県HP公表資料を基に弊行作成

8

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うち全壊

26,961 20,189

宮城県 260,879 84,940福島県 90,335 20,599

(参考)被害戸数

岩手県

住宅は、被害総額約2兆円に対して、少なくとも1兆円以上が新築やリフォーム需要として顕在化の見込み。

需要は足許、資金力及び土地を有す一部被災者から発注が出ており、大手ハウスメーカー、中小・地場工務店では受注が急増。但し、本格的な盛り上がりは自治体の復興計画策定後少なくとも今年末以降の見通し(計画策定動向によっては更に遅延)。

復興需要一巡後は、収益力維持に向け国土交通省が推進している地域型住宅への取組強化や、リフォーム事業等の関連事業を強化。

住宅業界

【図表】岩手、宮城、福島県の住宅

着工戸数前年同月比

【図表】3県の復興住宅供給計画

(出所)「建築着工統計」国土交通省

(出所)復興庁

業界動向

短期的には一部資金に余裕のある被災者の需要が顕在化。全壊戸数のうち、少なくとも半数の6万戸程度は新築需要が顕在化。但し、自治体、民間ともに土地の確保が難航しており、3~5年程度に亘って顕在化。長期的には需要縮小トレンドに戻る。

震災直後から大手各社が東北地方に進出、進出した業者間での競争は激化。地場工務店は、足許の一時的な需要増で施工能力は限界に達し、新規受注を略ストップしている業者も。足許で大手・地場ともに職人不足となっているものの、大手の一部業者は全国の協力会社から職人を確保する等の体制整備を進めており、更なる受注上積みを狙う動き。

今後の戦略

国土交通省が地域資源の使用促進及び地域の気候や風土に合った木造住宅生産体制の強化を目的に推進している「地域型住宅」への取組を強化。

長期的には、震災によりあらためて認識された、耐震性能や防災性能を高めた商品の開発及び販売の強化、及びリフォーム事業等関連事業の強化し、収益力を維持・拡大。

-80%

-60%

-40%

-20%

+0%

+20%

+40%

+60%

+80%

11/3 5 7 9 11 12/1 3(年月)

全国計 岩手 宮城福島 3県計

(単位:戸)

4,000~5,000

390

宮城県 15,000 1,452福島県 N.A. 151

岩手県

用地確保済

供給計画

9

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建材需要は、土木分野の一部で需給がタイト化しているものの、殆どの部材では既存生産能力で十分対応可能で、今後の需要増も概ね吸収できる見通し。このため、メーカー側に供給能力拡大に向け新たな設備投資等を行う動きは特段見られず。

復興一巡後は、全国的にニーズが高まっている耐震・断熱等の性能を高めた製品の販売、海外進出や国内のアライアンス戦略を強化。

建材業界

非住宅向け業界動向

土木

河川や港湾関係の工事が優先的に発注されており、関連建材の発注が増加。中長期的には、3~5年程度で一巡。その後は震災前を下回る水準まで減少。

建築

建築関連建材は、足許で復旧が一巡したことで荷動きは落ち着いている。中長期的には、3年後から徐々に需要が出てくるものの限定的と見られる。

足許で土木工事の工事量は平時比略倍増しており、一部ではフル生産状態で、1社だけでは対応しきれない受注は、同業者と協働して対応する動きも。一部製品では、元々営業地盤のないメーカーが、地場メーカーの工場を買収する等新規参入する動き。骨材等、一部の原料は今後需給がタイト化する傾向。

住宅向け業界動向

復旧需要や一部被災者の新築需要を取り込み、殆どの部材で平時比+30~50%程度の販売量。需要量は、施工能力がボトルネックとなって現状(乃至はやや多い)程度の水準が3~5年続くと見られる。

足許で特に素材系の製品において、施工段階での職人不足解消に資するため、プレカット等加工を施した建材を販売しシェアアップを狙う動き。また、物流施設については、石巻市等一部で小規模な施設を新設する動きも。断熱材等一部の建材を除き略全ての建材において、業界では従来から過剰生産能力を抱えていたことから、需要増に対しては既存設備で対応可能な見通し。

今後の戦略

耐震・断熱・省エネ等の性能を高めた製品の開発や販売。

長期的な新築需要減少を見据え、リフォーム分野の強化や海外進出といった取組に注力する一方、国内シェア拡大のためアライアンス戦略を強化。

-60%

-50%

-40%

-30%

-20%

-10%

+0%

+10%

+20%

+30%

11/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12(年/月)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18(千円/㎥)

土木向け(前年同月比、左軸)

建築向け(前年同月比、左軸)出荷単価(右軸)

【参考】東北地方の生コン出荷量、出荷単価

(出所)「生コンクリート流通統計」経済産業省

○:平年比増加、△:横這い若しくは小幅増

【参考】販売先別需要レベルのイメージ

3~5年後5年後

以降

○ △

△需要

一巡

○需要

一巡

11年度

需要レベル

非住宅(土木向け) ○非住宅

(建築向け) ○

住宅 ○

10

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外食業界

50

100

150

今後の戦略

11/3月震災発生

<東北地方における外食需要の推移

(イメージ)> 短期

(1年後)

中期

(3~5年後)

震災前対比需要見通し

需要増加

要因

工事関係従事者流入

保険金・補償金等

需要減少

要因

(リスク)

工事着工の遅れ -

工事短期化・予算減少

地元住民の高齢化・減少

放射能汚染問題拡大

減益要因

放射能汚染問題拡大

に伴う食材価格上昇

人件費・電力料金上昇

復旧工事に伴う特需

復興工事に伴う特需

外食市場は長年縮小傾向

復旧工事一段落

短期

現在

(表1)一世帯あたり年間外食支出(家計調査)

0

50,000

100,000

150,000

200,000

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

(円)東北 人口5万人以上

(年)

【短 期】復興工事の本格化に伴い工事関係者等が流入、仙台を中心に特需が発生し業界を下支え【中長期】人口減少、高齢化進展が見込まれる中、既存店強化を第一に、地場経済の動向を見極めた戦略が求められる

中期

都市

(1~3月) (月)

戦略 短期 中期

既存店

強化

・客数増加や常連客確保のための人材教育やサービスレベル向上

・特需で得た資金を活用し、店舗の改装や厨房設備等の更新によ

り集客力強化

新規

出店

・需要が集中している仙台

中心の出店が基本

・沿岸部の特需は持続しない

可能性もあり、設備投資は

極力抑制のスタンスが肝要

・地場経済の動向も睨みつつ、

機動的な出店戦略(スクラッ

プ&ビルド含む)が必要

(表2)景気動向指数の推移(一致指数)

0

50

100

11/1 3 5 7 9 11 12/1 3

宮城県

全国

(出所)総務省 (出所)内閣府、宮城県HP

11

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【今後の戦略(ビジネスチャンス)】

90

92

94

96

98

100

102

02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 (年度)

長期に亘り縮小基調で推移

復興特需

徐々に収束

小売業界

業態 11年度 12年度 5年後以降

ホームセンター ◎ ○ △

住宅着工戸数が高水準で

推移すれば需要も持続

百貨店・GMS ◎ ○

減少

トレンド

保険金等が消費に回った

一時的な押上げの面あり

家電量販店 △ 反動減 △ 11、12年度はエコポイン

ト特需の反動の影響あり

食品スーパー △ 反動減

減少

トレンド

特需は数ヶ月で収束。人

口減少に伴い需要も減少

◎:平年比大幅増、○:増加、△:小幅増

特需で得た資金の活用等による競争力の強化

新規出店の継続、ドミナント強化既存店の改装、スクラップ&ビルドのペース加速物流センターの新設等によるコスト競争力の強化

経営統合、提携による競争力の強化

調達力の強化、商品開発面での協働等

⇒収益環境の厳しい食品スーパーで足下活発化

一段の競合激化は不可避、優勝劣敗が加速。但し、多くの業態では寡占化が進んでおらず、シェアを高めることで業績拡大余地はあり。

【図表】東北小売市場の市場規模推移(大型小売店売上高、02年度=100)

業態により濃淡あり

今後の業界見通し

短期的には一部業態で特需が持続。中長期的には住宅着工や雇用環境等次第乍ら人口減に伴い需要は減少する見込み。

大手から中堅まで出店意欲は旺盛。東北地盤以外の業者の参入も増加。業態を超え競合が激化(特に食品)。

復興特需の影響は業態により濃淡あり。中長期的には競合激化が懸念されるが、競争力強化に向けた施策に着実取り組んでいる先等では業績を拡大していく余地あり。また、食品スーパー等の収益環境の厳しい業態では業界再編が加速する見通し。

事業領域の拡大(ホームセンターや家電量販店のリフォーム事業への参入・拡大等)強みを有するカテゴリの専門店化(自転車やペット売場等を専門店として独立させ店舗展開)複数業態の展開による集客強化(異なる業態の店舗を隣接させることで相乗効果を図る等)

12

(出所)経済産業省

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自動車業界

自動車需要は、短期的にはエコカー補助金による押し上げ効果が見込まれるも、中長期的には人口減少を主因に逓減していく見通し。生産面では、トヨタの一大生産拠点化による産業集積が期待されるも、今後の集積度合いやペース等は現状見通し難い。更なる産業振興を実現する為には、次世代車の開発拠点化の他、東北への更なる生産シフトや裾野産業の育成等を進めていく必要あり。

----原発事故の影響

---電力等インフラの復旧

エコカー補助金等の販売支援

中長期(3~5年後)短期(1年後)

販売

生産

販売

トヨタ自動車の意向

主要サプライヤーの意向

産業集積への政策支援

人口の減少

生産影響が想定される要因 <販売>

被災車両の買い替えや保険金による特需、エコカー補助金効果により、前期比+20%程度の増加

<生産>震災後の復旧は概ね完了電力、水道等のインフラ面も略懸念なし

足下までの動き

<販売>復興需要は一段落エコカー補助金もあり相応の需要は見込まれる(但し、好調だった昨年対比では反動減の懸念もある)

<生産>エコカー補助金効果に加え、東北で集中生産されているトヨタ車「アクア」等の需要が高いことから、相応の水準を維持

短期的見通し

<販売>人口減少や車両保有期間の長期化により、逓減基調が続く見込み補助金及び減税期間終了による反動減も懸念される

<生産>トヨタが一大生産拠点化を打ち出しているが、現行生産水準以上の規模拡大は同社の海外戦略に依るところ大

中長期的見通し

0

15

30

45

60

75

90

10/4 6 8 10 12 11/2 4 6 8 10 12 12/2 (年/月)

(千台)

-90%

-60%

-30%

0%

+30%

+60%

+90%

+120%

+150%

+180%

販売台数(左軸) 販売前年比(右軸)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

10/4 6 8 10 12 11/2 4 6 8 10 12 12/2 (年/月)

(千台)

-90%

-60%

-30%

0%

+30%

+60%

+90%

+120%

+150%

+180%

販売台数(左軸) 生産台数(左軸)

販売前年比(右軸) 生産前年比(右軸)

国内月次販売・生産台数推移 東北地方の月次販売台数推移

トヨタ・東北大学・経産省の産学官連携等を軸として、東北を日本の中でも優位性の高い次世代自動車の開発拠点とする中部・北九州、更には海外も含めた他地域からの東北への生産シフト、乃至は東北を優先した生産能力の拡充を行う大手部品メーカーの積極的な誘致とともに、地場サプライヤーを育成し、早期に裾野産業の育成と現調率の引き上げを目指す

産業振興の早期実現のために必要となるポイント

42万台 50万台台数

アクア、ヤリスセダン、イストカローラアクシオ・フィールダー

未定(左記と概ね変わらない見込)

車種

50%未満 未定(将来目標は80%以上)現地調達率

東北におけるトヨタの生産状況

見通し(3~5年後)現状

(出所)日本自動車販売協会連合会、日本自動車工業会 (出所)東北運輸局13

(出所)各種報道より弊行作成