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日本の医薬品研究開発の状況
東京大学大学院薬学系研究科
小野 俊介
資料2
1996年
2002年
2008年
2010年
赤: 日本 緑: 米国 青: 欧州
日本の医薬品開発の場としての相対的な重要性は
低下し続けている
(東大・薬・医薬品評価科学推計. 2011)
日米欧(場所)の臨床開発プロジェクト数の推移
1
95
71
54 5263
43
60 6056
96105 107 109
119
722
500
406
391
463424 438
361
414
497 504530
495
553
0
100
200
300
400
500
600
700
800
0
50
100
150
200
250
300
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
初回治験届出数
治験届出数
初回治験届出数 治験届出数
新たな治験活性化5カ年計画
新GCP公布
新GCP完全施行 外国臨床データ受入れ拡大
全国治験活性化3カ年計画(1年延長)
日本の治験届出数の推移
(年)
(厚生労働省) 2
日本と米国の治験届出数の推移 両国を並べるだけでわかることがある
1990年代以降、日本の治験届出数は停滞。
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
US INDs Japanese INDs
3
日本の製薬産業の従業員数の推移 新薬を研究開発する日本人は減少
医薬品・医療機器産業実態調査(厚労省)
0
10000
20000
30000
40000
50000
60000
0
50000
100000
150000
200000
250000
総従業員数(左軸) 研究部門数(右軸) 研究者数(右軸)
4
(東大・薬・医薬品評価科学推計)
世界を見渡しても、日本の従業員数の減り方は大きく見える
(EFPIA industry report 2010)
0
20000
40000
60000
80000
100000
120000
R&D担当者総数 非臨床担当者数
米国 PhRMA の R&D 担当者数
欧州の製薬産業従業員数
0
20000
40000
60000
80000
100000
120000
140000
英
独
仏
スイス
ベルギー
欧州各国の製薬企業従業員数
5
(東大・薬・医薬品評価科学推計. 2010)
日本産 made in Japan の新薬数も減少中
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
4500
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
Figure 1. Originator別、開発品目の種類数
Japan Total
USA Total
UK Total
France Total
Germany Total
Switzerland Total
6
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
Figure 2. Oritinator別、開発品目の種類数(USA除く)
Japan Total
UK Total
France Total
Germany Total
Switzerland Total
日本だけが減少トレンド (先のグラフから米国を除いたもの)
(東大・薬・医薬品評価科学推計. 2010) 7
日米間の新薬承認申請ラグの経時変化
0
24
48
72
96
120
ラグ/審査期間(月
)
2000 2002 2004 2006 2008 2010日本での承認年
日米承認ラグ(年中央値) 日米申請ラグ(年中央値)
米国審査期間(年中央値) 日本審査期間(年中央値)
日米の承認ラグ、申請ラグ、審査期間2000-2011
(東大・薬・医薬品評価科学 推計. 2011) 8
(東大・薬・医薬品評価科学推計)
-3
-2.5
-2
-1.5
-1
-0.5
01
99
5年
19
96年
19
97年
19
98年
19
99年
20
00年
20
01年
20
02年
20
03年
20
04年
20
05年
20
06年
20
07年
20
08年
20
09年
ドラッグラグは源流(開発の上流)で悪化が続いている
遅れなし
遅れ大
優等生候補のラグ (日米両方で開発着手された新薬)
すべての新薬候補のラグ
ある時点で、開発段階にある「すべての新薬候補」が、「どのくらい」遅れているかを仮定に基づき試算。
9
ドラッグラグの国際比較 最近の状況
0.00
0.25
0.50
0.75
1.00
0 5 10 15analysis time
frc grm jpn uk usa
1996-2006
(東大・薬・医薬品評価科学推計 2011)
1. 米国も100%の薬がそろっているわけではない。
2. 日本の新薬登場の出足は遅いが、最終的には仏・独並みには薬は登場。
3. 英国は、米国並みに新薬が登場する。
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申請ラグの分析結果
申請の遅れには企業の品目選定、戦略の選択が強く関係
モデル1(OLS) モデル2(2SLS)
申請者が外資系企業 +36.7*** +30.5 (NS)
ライセンスアウトされた品目 +48.7*** +46.8***
ブリッジング戦略の品目 -27.6*** -2.7 (NS)
薬効領域変数のうち感染症領域 -29.0 (NS) -33.2*
データパッケージの被験者数 -0.004 (NS) -
予想売上高 -0.25 (NS) -0.32 (NS)
希少疾病用医薬品 -19.1 (NS) -7.1 (NS)
(Hirai Y et al. Clin Pharmacol Ther 2010)
単位:月(months)。*** P<0.01、**P<0.05、*P<0.1。
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日本での開発の遅れは日本での開発の成功率と正に関係 日本での開発の遅れ(ドラッグラグ)は経済合理性の表れ
• 日本の開発を遅らせれば遅らせるほど、日本の開発の成功確率が上がる。
(工藤 他. 2009)
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ドラッグラグは薬を安全にする いろいろなトレードオフが生じている
変数 リスク
推定使用者数 100万人増えると 1.15 - 1.19 倍 P<0.05
ドラッグラグ 6年以上 0.24 - 0.26 倍 P<0.05
同種同効薬あり 0.20 - 0.34 倍 P<0.01
ブリッジング戦略 1.72 - 3.08 倍 P<0.05
オーファン薬 (1.09 - 1.53 倍) NS
被験者数 1000人増えると (1.84 倍) NS
審査期間 1000日増えると (0.80 - 1.12 倍) NS
市販後全例調査 (0.24 - 0.25倍) NS
(Yamada et al. Annals Pharmcother 2011)
日本で重篤な副作用が発生し、行政対応(通知)が必要になる危険への影響
14
日本の治験が売れない構造 (私見) 原因は需要側。 供給側(治験の現場)が主たる原因ではない
民需低下 (千数百億円程度)
官需低迷 (数百億円程度)
研究者・ 国の研究費 横ばい?
製薬企業
国内申請向け減少
国外申請(輸出)向け微増 ?
海外治験の輸入が激増 国策として欧米の治験の輸入を促進
・ 国策として申請資料縮小 ・ 保険運用厳しい ・ 景気の影響も
そもそも日本人データは欧米人には不人気で、さほど売れない
・民需に比べて絶対額が小さい ・厳しい財政下、常に減らす圧力
「臨床試験は公共事業」文化 結果は使わない
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日本人データの需要は減少
(東大・薬・医薬品評価科学講座 2011) 17
医薬品・医療機器の研究開発・承認審査と規制に係る私見
• 基本理念なく、複雑かつ恣意的なプロセスだけが存在する規制の限界が露呈。
– 医薬品等の承認の基本方針、及び、研究開発基本法(にあたるもの)は必須。 「何でもあ
り」の規制からはプレイヤーに信頼されるシグナルは出ない。
– 医薬品医療機器総合機構 (PMDA) とは別に、医薬品等の使い方の改善 (経済評価を含む) を目
指すメカニズム(機関)の構築を提案したい。
• 医療アウトカムの改善と臨床研究・データ・関連諸科学への需要創出を目指す。国以外には無理。
• 医薬品の使い方に関するPMDAによる判断・決定の独占の排除。 複数の当事者による判断の違い
を可能にする。
• 三兎を追うのなら、それぞれに根拠のある政策アプローチと具体的な目標設定
が必要。 三兎の間のトレードオフにも覚悟が必要。
① 日本人患者の新薬アクセスの改善 (国民の健康、厚生)
② 研究開発の場としての日本の活性化 (研究開発、教育、競争力)
③ (日本の)製薬企業の支援 (雇用、ノウハウ、競争力)
• 医薬品等の審査プロセス等に改善すべき点はまだある。
– 当局と企業の見解の相違が生じた際の透明な解決プロセスの不在。
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