「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法 の...
TRANSCRIPT
1
「医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法 のバリデーションに関するガイドライン(案)」 に対する製薬協での議論
日本製薬工業協会 医薬品評価委員会
基礎研究部会 薬物動態課題対応チーム
久光製薬株式会社 基礎研究所
前川 浩太郎
第4回 JBFシンポジウム
国内版 生体試料中薬物濃度分析法のバリデーション(BMV)ガイドラインの動向とJBFディスカッショングループ(DG)活動紹介
2013年8月2日
昭和大学 旗の台キャンパス
低分子BMV-GL案の策定経緯
BMV研究班 JBF
2011年10月GL案作成依頼
2012年3月JBF案提出
関連団体(製薬協、GE薬協、
安研協
など)
2012年4月コメント募集
2012年5月コメント提出
意見交換質問提出意見交換
2
製薬協加盟36社より356のコメントを入手。多かった意見及び議論内容を紹介する。
2013年4月~6月パブコメ募集
2013年7月通知
3
意見や議論が多かった項目
3
1)
本ガイドラインの適用範囲
2)
検量線評価における回帰式や相関係数の取り扱い
3)
マトリックス効果の評価方法
4)
回収率評価の必要性と評価基準
5)
希釈の妥当性の評価法及び結果の解釈
6)
安定性評価に関するより詳細な記載
7)
パーシャル及びクロスバリデーションの実施要件
8)
実測定におけるキャリーオーバー評価の必要性
9)
ISR評価における逸脱した個別値の取り扱い
10)
FDA及びEMAガイドラインとの整合性
4
1)
本ガイドラインの適用範囲
【意見・課題①】
JBF案では、「TK試験及び臨床試験の試料分析」に適用する旨の
記載はあるもの、対象とならない非臨床薬物動態試験でのバリ
デーション試験の必要性を明確にしたい。
【議論の内容①】
・通常、動物PK試験を行う際にはバリデーション試験を行ってい
るとの意見も多かった。
・非臨床薬物動態試験の範囲は広いので、試験目的に応じてバリ
デーション試験の必要性を判断すれば良い。
・特にin vitro代謝試験のような初期段階では、標準品もなく、正
確な測定は実施できない。
⇒「段階的アプローチ」の活用
【結果・結論①】
・研究班及びJBFへも意見を提出した。
・「本GLを参考に実施しても良い」との記載
⇒
各社での判断
5
2)検量線評価における回帰式や相関係数の取り扱い
【意見・課題①】「検量線の回帰式及び重み付け条件には,一般的に濃度とレス
ポンスの関係を示す最も単純なモデルを用いる」とあるが、モ
デル選択の根拠を示す必要はあるか.
【議論の内容①】・最も単純なモデルを選択する必要性が不明(重み付けを行う方
がより外れにくい測定系になる場合もある)。・モデルの検討は、分析法開発及び試験計画段階などで行い、バ
リデーション試験前にモデル選択が終了している場合が多い。⇒
報告書に記載する必要はない(記載できない)。
・バリデーション試験中においてモデル選択を行う場合は、試験
計画書に評価方法を記載し、試験報告書ではモデル選択の根拠
を記載すべきである。
【結果・結論①】・それぞれの分析方法の性質を考えて、最も適切なモデルを選択
するとの考えもある。・選択の根拠を報告書に記載することは必ずしも必要ない。
6
2)検量線評価における回帰式や相関係数の取り扱い
【意見・課題②】
バリデーション試験における検量線の回帰式の算出方法を明確
にしたい。
【議論の内容②】
・真度を満たさない濃度(外れ値)を除外しない検量線から算出
することが適切か。それとも、除外した後の検量線から算出す
ることが適切か(QCの算出も含めて)。
逆回帰値 % 逆回帰値 %
0.025 0.0293 17.1 0.0269 7.5
0.05 0.0496 -0.7 0.0471 -5.7
0.1 0.107 7.4 0.1047 4.7
0.5 0.404 -19.1 - -
1.0 0.976 -2.4 0.969 -3.1
5.0 4.66 -6.8 4.64 -7.3
10.0 10.4 4.5 10.4 3.9
回帰式
相関係数
Y=0.7757X-0.00572 Y=0.7796X-0.00398
r=0.9980 r=0.9986
濃度全データ 除外した場合
相関係数:GL発出時に削除された
7
2)検量線評価における回帰式や相関係数の取り扱い
【議論の内容②(続き)】・バリデーション(検証)段階で理由もなく除外することは、分
析系の正しい評価とは言えないのではないか。・実試料測定時の検量線では、外れ値を除外して検量線を作成す
ることも多い(FDA,
EMA-GL)。バリデーション試験と実試料
分析試験で算出方法が異なることには違和感がある。⇒
実試料測定時と同じ方法でバリデーション試験を評価すべき
・評価基準では、範囲外の結果が生じることを認めているため、
(偶然の)外れ値を除外して評価することも許容されるのでは
ないか。
【結果・結論②】・どちらでも良いが、計画書又はSOPで取り扱いを設定する。・バリデーション試験と実試料分析試験では、同じ算出方法とす
ることが望ましい。
8
3)マトリックス効果の評価方法
【意見・課題①】マトリックス効果の評価法(特に濃度数)が不明確である。
【議論の内容①】・分析に影響を及ぼす成分の有無及びその量は、個体ごとに異なる可能性
があり、個別マトリックス(6個体、各n=1)で評価する。・基本的には高濃度と低濃度の2濃度で評価する(EMA-GL参照)。
(低濃度の方が影響を大きく受けると考えられ、低濃度の評価のみで良
いとの意見もある。しかし、評価しないことには影響の度合いはわから
ない。)
【結果・結論①】・高濃度と低濃度の2濃度で評価することが望ましいと考えられる
(パブコメ回答では「複数濃度で評価を行うことが必要」)
マトリックス存在下での分析対象物質のレスポンス
マトリックス非存在下での分析対象物質のレスポンスMF
=
M無M有
分析対象物質を添加する
前処理M無M有
LC/MS/MS測定し、レスポンスを比較する
<評価法の例>
9
4)回収率評価の必要性と評価基準
【意見・課題①】回収率の評価が必要な理由を明確にしたい。
【議論の内容①】・EMA-GLには記載がない。・同一濃度内及び濃度間での回収率のばらつきの程度を確認することで、
分析法の性質を理解できる。・回収率が低い分析法は、個体差や分析単位での差、外的因子の影響を受
けやすく、実試料分析における注意が必要となる。・評価を求めるならば評価基準が必要である。⇒海外GLでも基準はない。・検量線、真度・精度、マトリックス効果、回収率はそれぞれが関連した
評価項目であり、まとめて考察することが必要。⇒
回収率がばらつくと、真度・精度が評価基準を満たさない可能性が
ある等、必ずしも回収率を評価しなくとも分析法を検証できる。
【結果・結論①】・研究班及びJBFへも意見を提出した。・「分析法の性質を知るために評価が必要」との回答を得た。
(GL発出時には「注意事項」へ移行)
10
5)希釈の妥当性の評価法及び結果の解釈
【意見・課題①】
評価結果の解釈を明確にしたい。
【議論の内容①】
・バリデーション試験の目的を分析法の操作を検証することと考えれる
と、希釈操作法が保証されたと考えるべき。
・希釈という現象を考えれば、10倍希釈が問題なければ、2倍や5倍希釈
も問題ないとも考えられる。
・希釈操作(希釈段階の数や調製量、調製比率、使用器具など)が大き
く変わらない場合は、評価された希釈倍率よりも低い倍率で希釈した
結果は採用できるとも考えられる。
・事前のバリデーションに固執せず、実試料測定で希釈操作が必要にな
った際に実施することでも良い。
【結果・結論①】・操作が大きく変わらなければ、評価倍率以内の倍率であれば問題はな
いと考えられる。(GL発出の際「実試料分析における希釈方法を考慮
した適切な希釈倍率を選択し」が追記された。⇒
希釈操作を重視)
1 2 3 4 5
dQC
希釈操作を5回繰り返す
前処理測定(n=1)
<評価例>
11
6)安定性評価に関するより詳細な記載
【意見・課題①】低濃度及び高濃度QC試料で安定性が確認された上で、ULOQを
超える実試料が生じた時の対応を明確にしたい。
【議論の内容①】・低分子化合物であれば、より高濃度で不安定になることは少な
いと考えられ、新たな安定性検討は必ずしも必要ない。・ULOQを超える程度によるかもしれない。
(例:ULOQが100ng/mL、実試料が120ng/mLの時に本当に必要?)
・希釈の妥当性を評価するのであれば、その濃度までの安定性を
検討すべき。・実試料を用いたISS(Incurred sample stability)で保証すること
も可能である。
【結果・結論①】・ULOQを超える程度、化合物自体の安定性を考慮して、安定性評
価を行うべきと考える。(パブコメ回答では「温度依存性がなければ特に必要ない」)
12
6)安定性評価に関するより詳細な記載
【意見・課題②】
QC試料を保存前後に分析し、安定性評価を行うことから(理論値対比で
はなく)初期値対比(残存率)で評価しても良いか。(Q&A-3)
【議論の内容②】
・保存前の分析は、QC試料が理論通りに調製されたことを確認するため
であり、化合物の性質や分析のばらつき等を考慮して判定基準を規定す
べき。(判定基準を外れた場合、QC試料の再調製が望ましい。)
・保存前の分析値(初期値)にも分析のばらつきが含まれており、初期値
が真値であるとは言えないとの考えもある。
・化合物が安定である事を前提として評価を行うために、分析のばらつき
を考慮して、理論値対比で評価すべき。
・科学的に妥当な理由がある場合は、初期値対比で評価しても良い。
【結果・結論②】
・基本は理論値対比で評価する。
・分析法の性質を考慮し、科学的に
妥当な理由がある際は初期値対比での評価も可能。
(GL発出時「他の指標が科学的により適切に評価できる場合」が追記)
理論値(100)
初期値(110)
ばらつき?
保存後(93)
対理論
-7% 対初期
-15.4%
13
6)安定性評価に関するより詳細な記載
【意見・課題③】標準溶液中の安定性の評価基準を明確にしたい。
(マトリックス中安定性と同様に理論値の±15%以内と考えて良いか。)
【議論の内容③】・標準溶液中の安定性については、マトリックス中の濃度分析法とは異な
る分析法で評価する場合や別試験の結果を代用する場合もある。
・CMCでの評価基準も参考になるかもしれないが、厳しすぎる。
・FDAやEMAのGLでも基準はなく、日本のみ定めることは難しい。
・評価系(分析法)のばらつきを考慮して、適切な評価基準を定めるべき
である。
・標準溶液の安定性が未確認な状態でバリデーション試験を行った場合、
事後評価で安定性が確認できれば差し支えない。
【結果・結論③】・評価基準を提案することは困難。
・各施設、試験ごとに適切な基準を設けるべきと考える。
14
6)安定性評価に関するより詳細な記載
【意見・課題④】評価温度の定義を明確にしたい。(各施設で設定温度の許容範囲が異なるため、各施設での許容範囲に
したがって管理されることで良いか。)
【議論の内容④】・実試料を実際に保存する温度を想定し、各施設で適切な評価温度を設
定する。・低分子化合物では、一定温度の安定性が確認できれば、それ以下の温
度でも安定であると考えられる。・EMA-GLではBracket法(例:-20℃と-80℃での挟み込み評価)を推
奨しており、それに揃えてはどうか。・評価温度は設定温度を表記し、管理温度範囲は各施設での設定で差し
支えない(施設間での少しの違いは許容される)と考えられる。・QC試料(並行保存QC)を実試料と一緒に保存して、安定性を確認する
ことも有効な手段である。
【結果・結論④】・評価温度は、各施設の許容範囲で良いと考える。・Bracket法や並行保存QC試料の活用も有効である。
15
7)パーシャル及びクロスバリデーションの実施要件
【意見・課題①】
パーシャルバリデーションが必要な場合とその際の評価項目を明
示できるか。
【議論の内容①】
・分析対象となる種やマトリックスの変更:フルバリデーションが
基本。(GL発出時に削除)
・他施設への移管:フルバリデーションを行うことが多い。
・分析機器の変更:機器グレード変更ではパーシャルバリデーショ
ンが必要。同一機器の場合はパーシャルバリデーションは必須で
はないが、変更可否の評価(例:感度、直線性など)を行うべき
と考える。
・定量範囲の変更:広げる/狭める、LLOQ/ULOQの変更により評価
項目は異なるので、変更する条件及び程度を考慮して、パーシャ
ルバリデーションでの評価項目(安定性含む)を選定する。
・前処理法や分析条件の変更:条件及び程度を考慮し、決定する。
16
7)パーシャル及びクロスバリデーションの実施要件
【議論の内容①(続き)】・抗凝固剤の変更:別の抗凝固剤(ヘパリン⇒EDTA)への変更はフルバリ
デーションが基本。抗凝固剤の塩違いは、分析法への影響を考慮してパ
ーシャルバリデーションの必要性を判断する。
・動物の系統違い、人種/性別/年齢の違い、疾患の有無など:パーシャル
バリデーションを全ての事項に対して実施する必要はなく、それぞれの
事項に関して分析法に影響しそうな項目を評価することも許容されると
考えられる。また、ISRの結果から分析系への影響の有無を考察すること
も一手段と考えられる。
・分析担当者の変更:同様のスキルを持つ担当者に変更することが多く、
パーシャルバリデーションは必要ないと考えられる。ただし、変更可否
の評価(例:検量線、日内再現性など)を行うべきと考える。
【結果・結論①】
・多くの場合が存在し、それぞれについて明示することは不可能。
・試験目的や分析法の性質から評価の必要性及び評価項目を判断す
る。
17
7)パーシャル及びクロスバリデーションの実施要件
【意見・課題②】JBF案では、クロスバリデーションが必要な場合が不明確であり、必要
な場合とその際の評価項目を明確にしたい。
【議論の内容②】・実際にクロスバリデーションを経験したメーカーは多くない。
・施設ごとにフルバリデーションを実施しているにもかかわらず、クロス
バリデーションが必要となる理由が不明確である。
・FDAやEMAのGLでも求められている。
・「医薬品の臨床薬物動態試験について」(医薬審発第796号)Q&AのQ3
でもクロスバリデーションの必要性が記載されており、両者の整合性が
必要である。
・QC試料を用いる場合は2又は3濃度についてn=3程度、実試料を用いる場
合にはISRの評価方法が参考になると考えられる。
【結果・結論②】
・研究班及びJBFへ意見を提出し、本文の修正を協議した。
・パブコメ案では「同一試験内で複数施設での測定の場合」「異なる試験
間で異なる分析法を用いる場合」に修正された。
18
8)実測定におけるキャリーオーバー評価の必要性
【意見・課題①】JBF案では評価が求められた。バリデーション試験で検討済みにも
かかわらず、実試料分析でも評価が必要なのか。(Q&A-13参考)
【議論の内容①】・バリデーション試験でキャリーオーバーが認められなければ、実
試料分析でのキャリーオーバーを懸念する必要はない。・しかし、キャリーオーバーの程度は、分析機器の状態や測定試料
数などによって変化すると考えられる。・また、試料の性質上、QC試料より実試料の方がキャリーオーバ-
する可能性が高い(予期せぬ高濃度試料の存在など)。・キャリーオーバーの回避が困難であった分析法では、実試料の分
析に影響を及ぼすことが懸念され、分析毎に確認することは必要
だろう。
【結果・結論①】・研究班及びJBFへも意見を提出した。・パブコメ案では「懸念される場合に評価する」と修正された。
19
9) ISR評価における逸脱した個別値の取り扱い
【意見・課題①】
ISRとして判断基準を満たすものの、乖離度が±20%以内との判
断基準を逸脱した個別の実試料を再分析すべきか。(Q&A-11)
【議論の内容①】
・ISRの判断基準を満たす場合は、個別に再分析は不要と考える。
・乖離度が±20%を超える試料に規則性が認められる場合、その原
因を確認及び考察することは、分析法の性質を理解する上で有用
な場合もある。
規則性:特定の個体・濃度域・分析単位などに由来する等
原因確認:検体の状況(溶血など)や作業記録を確認する等
【結果・結論①】
・再分析は必要ないが、規則性の有無には注意すべきであろう。
ISRの定量値 - 初回の定量値
両者の平均値乖離度(%) = × 100
20
最後に
20
・医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法について、国内
においてもガイドラインが示された。・製薬協内の意見募集では、細かな評価方法や評価基準を求める
意見が多かった。一方で、各社の考え方や実際の操作法の違い
も感じられ、評価方法や評価基準を一概に定めることの困難さ
を感じた。・分析対象となる化合物や分析法の性質を理解して、科学的な評
価及び柔軟な対応が必要である。・国内において、各社が抱える疑問や課題を共有し、議論の場を
持つことが重要であり、JBFがその中心的な役割を担うものと
期待する。・製薬協からも情報や意見を提供し、活発な議論に貢献していき
たい。
21
謝辞
21
日本製薬工業協会
医薬品評価委員会基礎研究部会
薬物動態課題対応(T4)チーム
チームリーダ-倉橋
良一(日本たばこ産業株式会社)
チームサブリーダ-古田
盛
(ゼリア新薬株式会社)
サブチーム(トピックⅤ)メンバー酒井
和明(帝人ファーマ株式会社)
角尾
浩幸(大鵬薬品工業株式会社)
中村
浩明(協和発酵キリン株式会社)
青木
淳
(バイエル薬品株式会社)
宮井
裕子(わかもと製薬株式会社)
石井
美樹夫(MSD株式会社)
他
T4参加23社のメンバー(合計32社)
以下、バックアップ
(用語解説)
23
用語解説:段階的アプローチ
附録
段階的アプローチの利用
臨床薬物動態試験で分析の対象とするヒトでの代謝物は,臨床試験の
早期段階では必ずしも明らかにならないことが多く,標準物質としてバ
リデーションに供するために十分な量を準備するにはある程度の期間が
必要なため,医薬品開発の効率化を考慮し,分析法バリデーションを段
階的アプローチと呼ばれる方法を採用して進めることがある.段階的アプローチとは,分析法の妥当性の検証を限定的な内容とする
ものであり,開発の段階が進むにつれて,確認項目及びその内容をフル
バリデーションに近づけていく手法である.医薬品の開発の初期から中
期に段階的アプローチを利用することによって,開発の早期段階での評
価を可能とし,医薬品開発の見通しを立てやすくすることにより,効率
的な医薬品の研究開発につながるものと期待される.ただし,段階的アプローチを用いる場合においても,得られる濃度デ
ータの再現性及び信頼性を高めるために,分析法の妥当性の検証には,
科学的な判断に基づいてあらかじめ妥当な判断基準を設定することが望
ましい.
24
用語解説: 「医薬品の臨床薬物動態試験について」Q&AのQ3
Q3
クロスバリデーションについて、必要とされる状況、具体的
な方法並びに把握しておくべき情報を提示されたい。
臨床薬物動態試験における定量分析法はバリデーションにより
真度、精度、特異性、定量限界などの特性が明らかにされ、目的
とする分析に適切であると判定されたものでなくてはならない。
従って、通常は同一の試料を異なる方法で測定するとしても、そ
れらの間の特性を比較するためのクロスバリデーションは必要と
しない。但し、上記特性が不十分であり、両者の間で実質的に異
なる値が得られる可能性がある場合にはクロスバリデーションを
行う。個々の事例において、データの一貫性が確保されるよう、
また、得られたデータが使用目的に充分適用しうるようケースバ
イケースの対応をされたい。なお、原理が異なる分析法間(HPLC
分析とRIA分析等)では、通常、分析法間の一致性を確認するため
のクロスバリデーションが必要である。