富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 -...

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富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 竹内昭浩 1 1 中部地方整備局 富士砂防事務所 調査・品質確保課(〒418-0004 静岡県富士宮市三園平1,100富士山大沢崩れは日本有数の大崩壊地であり、崩壊した土砂は土石流となって流出しこ れまで被害が発生している。富士砂防事務所では土石流対策、発生源対策として「大沢川 遊砂地」の整備及び「大沢川源頭域調査」の事業を実施している。崩壊・流出土砂量を推 定するための計測は、昭和44年から毎年実施しており、流出土砂量は年平均約15万m3と 推定され、これまでの計測成果で崩壊・堆積・流出土砂量の推定はできたが、下流域に至 る土砂移動実態の定量的な把握はできていない。土砂移動実態を把握するための新たな調 査体制について報告するものである。 キーワード 土砂移動の実態把握、航空レーザ計測、DMC、ハイドロフォン、微地形判読 1.はじめに 富士山大沢川の源頭部にある大沢崩れは、山頂の剣ケ 峯から標高2,200m付近に位置する長さ約2,000m、最大幅 約500m、最大深さ約150mの巨大な崩壊地である。富士砂 防事務所では、この大沢崩れに起因する土砂災害を防止 するために、昭和44年から39年間にわたり、土石流の発 生源である崩壊地の変化と土石流の規模や流下過程を把 握するための各種モニタリングを実施してきた。 本報では、それらモニタリングの概要を示した上で、 航空レーザ計測及び高解像度デジタル航空カメラ(以下、 DMCと略す)による観測結果を記す。次いで、大沢崩 れにおける地盤条件と航空レーザ計測により得られた土 砂変動特性の関連性の検討結果を報告する。 また、大沢川扇状地より下流へと流出する土砂の定量 的な把握を目的として、大沢川橋に設置されているハイ ドロフォン等を用いたモニタリングの状況について報告 する。 2.大沢川における各種モニタリング -1および表-1に、富士山大沢川において実施してい る観測手法および観測項目、観測地点を示す。当事務所 では、これら複数の観測を実施することにより、富士山 大沢川の経年的な変動状況を監視し、大沢崩れにおける 崩壊・土石流発生等の機構を調査している。 観測手法 観測項目 航空レーザ計測 源頭域~扇状地における土砂変動量 高解像度デジタル航空カメラ撮影 源頭域に存在する開口亀裂 ITVカメラ観測 岩樋下流端・大沢川橋における流量・土石流量 流砂観測 大沢川橋における流砂量・粒度構成 表-1 大沢川で実施している各種観測 DMC撮影 航空レーザ計測 図-1 大沢川で実施している各種モニタリング 流砂観測

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Page 1: 富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 - MLIT...富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 竹内昭浩1 1中部地方整備局 富士砂防事務所 調査・品質確保課(〒418-0004

富士山大沢崩れの土砂移動実態調査

竹内昭浩1

1中部地方整備局 富士砂防事務所 調査・品質確保課(〒418-0004 静岡県富士宮市三園平1,100)

富士山大沢崩れは日本有数の大崩壊地であり、崩壊した土砂は土石流となって流出しこ

れまで被害が発生している。富士砂防事務所では土石流対策、発生源対策として「大沢川

遊砂地」の整備及び「大沢川源頭域調査」の事業を実施している。崩壊・流出土砂量を推

定するための計測は、昭和44年から毎年実施しており、流出土砂量は年平均約15万m3と

推定され、これまでの計測成果で崩壊・堆積・流出土砂量の推定はできたが、下流域に至

る土砂移動実態の定量的な把握はできていない。土砂移動実態を把握するための新たな調

査体制について報告するものである。

キーワード 土砂移動の実態把握、航空レーザ計測、DMC、ハイドロフォン、微地形判読

1. はじめに

富士山大沢川の源頭部にある大沢崩れは、山頂の剣ケ

峯から標高2,200m付近に位置する長さ約2,000m、最大幅

約500m、最大深さ約150mの巨大な崩壊地である。富士砂

防事務所では、この大沢崩れに起因する土砂災害を防止

するために、昭和44年から39年間にわたり、土石流の発

生源である崩壊地の変化と土石流の規模や流下過程を把

握するための各種モニタリングを実施してきた。

本報では、それらモニタリングの概要を示した上で、

航空レーザ計測及び高解像度デジタル航空カメラ(以下、

DMCと略す)による観測結果を記す。次いで、大沢崩

れにおける地盤条件と航空レーザ計測により得られた土

砂変動特性の関連性の検討結果を報告する。 また、大沢川扇状地より下流へと流出する土砂の定量

的な把握を目的として、大沢川橋に設置されているハイ

ドロフォン等を用いたモニタリングの状況について報告

する。

2. 大沢川における各種モニタリング

図-1および表-1に、富士山大沢川において実施してい

る観測手法および観測項目、観測地点を示す。当事務所

では、これら複数の観測を実施することにより、富士山

大沢川の経年的な変動状況を監視し、大沢崩れにおける

崩壊・土石流発生等の機構を調査している。

観測手法 観測項目航空レーザ計測 源頭域~扇状地における土砂変動量高解像度デジタル航空カメラ撮影 源頭域に存在する開口亀裂ITVカメラ観測 岩樋下流端・大沢川橋における流量・土石流量流砂観測 大沢川橋における流砂量・粒度構成

表-1 大沢川で実施している各種観測

DMC撮影

航空レーザ計測

図-1 大沢川で実施している各種モニタリング

流砂観測

Page 2: 富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 - MLIT...富士山大沢崩れの土砂移動実態調査 竹内昭浩1 1中部地方整備局 富士砂防事務所 調査・品質確保課(〒418-0004

3. 航空レーザ計測による大沢川土砂変動量算出

結果

当事務所では、昭和44年から毎年空中写真測量を、平

成18年からは航空レーザ計測を実施しており、2時期の

計測結果を比較することで、大沢崩れの崩壊の拡大量や

渓床の堆積量等を把握している。その一例として、図-2に、平成19~20年の1年間における大沢崩れにおける土

砂変動量図を示す。また図-3に、近年(平成11~20年)

の渓床部堆積土砂量の経年的変化を示す。 以下に、その計測結果をもとに考察した結果を要約する。 ・平成19~20年の一年間で、斜面(S1~S9)から10.9万m3の土砂が生産され、渓床部(V1~V6)に3.7万m3の土砂が堆積した(図-2)。そして差分の7.2万m3の土砂量が、源頭部下流端より流出した。

・斜面からの土砂供給により、渓床部に毎年約5~10万m3の土砂が堆積する(図-3)。そして、渓床部へ

の堆積土砂量が約20~30万m3に達したときに、土

石流(流出土砂量約20万m3)が発生する傾向にあ

る。平成20年には土石流が発生した平成16年時点と

同程度の土砂が渓床に堆積していることから、土石

流の発生に注意が必要である。

4. 高解像度デジタル航空カメラによる開口亀裂

の判読結果

大沢崩れの微視的な地形状況を把握することを目的と

して、平成20年にDMCを用いた高解像度デジタル画像

(解像度1億画素)の撮影を行った。その結果、DMC画像に標高2,500m付近より上部の溶岩層に発達する開口亀

裂が複数撮影されていることが判明した(図-4、表-2)。

開口亀裂は、溶岩層の初生的な亀裂が凍結融解作用や亀

裂への砂の充填等による二次的な風化過程で形成された

ものであり、地山と分離したブロックが剥離・落下する

タイプの崩壊の要因となっている。したがって、開口亀

裂の位置、数、長さ、幅、出現・消失の有無等を経年的

に調査することが重要である。しかし、これまで現場が

高標高かつ急崖であることから、無数に存在する開口亀

裂の位置や諸元の全容を現地踏査によって調べることが

困難であった。 今回の調査で、DMCから得られる航空デジタル画像

をもとに開口亀裂の判読を面的に行うことができる可能

性を示せたことから、今後、DMCによる判読結果と現

地調査結果とを照合しつつ、DMCによる開口亀裂のモ

ニタリング手法を確立させていきたいと考えている。

図-2 土砂変動量図(平成19~20年)

図-3 渓床部堆積土砂量の推移(平成11~20年)

図-4 DMC画像をもとに抽出した開口亀裂の例 (表-2に亀裂番号⑤として示した開口亀裂)

0

10

20

30

40

50

H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20

渓床

部の

堆積

土砂

量(万

㎥)

土石流発生

(H16.12)

土石流発生

(H12.11)

<崩壊>

<堆積>

1~2m

2~3m

3m以上

1~2m

2~3m

3~4m

4m以上

S2 (-1.6万m3)

S3 (-3.0万m3)

S4 (-1.5万m3)S5 (-1.1万m3)

S6 (-1.0万m3)S7 (-0.4万m3)

S8 (-0.4万m3)

S9 (0.3万m3)

V1 (-0.6万m3)

V2 (0万m3)

V3 (1.6万m3)V4 (0.6万m3)

V5 (1.8万m3)

V6 (0.4万m3)

S1 (-2.2万m3)

<崩壊>

<堆積>

1~2m

2~3m

3m以上

1~2m

2~3m

3~4m

4m以上

S2 (-1.6万m3)

S3 (-3.0万m3)

S4 (-1.5万m3)S5 (-1.1万m3)

S6 (-1.0万m3)S7 (-0.4万m3)

S8 (-0.4万m3)

S9 (0.3万m3)

V1 (-0.6万m3)

V2 (0万m3)

V3 (1.6万m3)V4 (0.6万m3)

V5 (1.8万m3)

V6 (0.4万m3)

S1 (-2.2万m3)

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5.大沢崩れにおける地盤条件と崩壊の関係につ

いて

大沢崩れは、玄武岩質溶岩と火山砕屑岩層の互層から

なる急崖である。火山砕屑岩層が凍結融解作用、雨水に

よって侵食されることにより溶岩層がオーバーハング状

態となり、その進行とともに自重に耐えきれずに崩落す

る。ここでは、このような源頭部における崩落現象と溶

岩層の傾斜、厚さ、オーバーハング量の間に何らかの関

係があると推定し、崩壊機構の定性的把握を目的にそれ

らの関係を調査した上で、航空レーザ計測結果と併せて

考察した。 5.1.溶岩層の傾斜量とオーバーハング臨界量の関係

溶岩層を一定の直方体に近似し、一定の角度に傾

けたときに、重心から下ろした垂線と底辺の交点の

直下が空洞(オーバーハング)であったら崩落する

というモデルを想定した(図-5)。このモデルに基

づき、溶岩層の割れ目間隔を300cmと一定と仮定し

た場合、溶岩層の傾斜とオーバーハング臨界量の関

係は図-6のようになった。この図から、以下のこと

が言える。 ・受け盤の方が流れ盤よりも相対的に安定している。 ・受け盤では溶岩層が厚い方がより安定であるのに

対して、流れ盤では薄い方がより安定である。

5.2.大沢崩れの地盤条件と航空レーザ計測結果との比

較結果

現地調査時の観察と、空中写真判読、地質図を参

考にして、大沢崩れにおける地盤区分図を作成した

(図-7)。地盤区分の中で、受け盤型安定斜面と流

れ盤型薄層安定斜面、流れ盤型塔立斜面の3種を特

に示した。この地盤区分図と航空レーザ計測から得

られた土砂変動特性を比較した結果、以下のことが

明らかとなった。 ・標高3,300~3,600mの大沢崩れの両岸部には、“流

れ盤型厚層不安定斜面”が存在する。一方、航空

レーザ計測結果によると最も激しい崩壊は、この流

れ盤型層厚斜面の下流端で発生している。流れ盤斜

面は、斜面傾斜と溶岩層の傾斜が一致していること

が多く、溶岩層が薄いときには安定であるが、厚い

と非常に不安定となることを示している。 ・標高3,300~3,500mの大沢崩れの中央部には、“受

け盤型安定斜面”が存在する。航空レーザ計測結果

をみても、やはりこの受け盤斜面における変動量は

相対的に少ない。

スコリア層

スコリア層

岩盤より下層のスコリア層が浸食・流失等により山側に後退し、岩盤の重心の垂線がスコリアより前になると崩落する。

表-2 DMCで判読した開口亀裂の諸元

亀裂番号

左右岸の別

標高(m)

長さ(m)

亀裂幅(m)

稜線からの離隔距離

(m)

① 右岸 3,390 12 0.15~0.30 3.1② 右岸 3,310 19 0.15~0.30 3.2③ 右岸 3,250 7 0.15~0.30 1.9④ 左岸 3,460 14 0.15~0.30 3.8⑤ 左岸 3,440 35 0.10~0.30 3.6

S:溶岩中の割れ目間隔(cm)

h:溶岩流の厚さ(cm)

x:オーバーハング量(cm)

θ:溶岩層の傾斜(度)

(流れ盤のとき+受け盤のとき-)

図-5 溶岩層の静力学的モデル

図-6 溶岩層の傾斜とオーバーハング臨界量の関係

図-7 大沢崩れにおける地盤区分

3,600m

3,700m

3,500m

3,400m

3,300m

3,200m

3,100m

3,000m

2,900m

2,800m

3,200m

3,100m

2,900m

2,600m

2,700m

2,800m

3,600m

3,700m

3,500m

3,400m

3,300m

2,500m

3,000m

受け盤型安定斜面

流れ盤型厚層不安定斜面

流れ盤型薄層安定斜面

流れ盤型塔立斜面

<地盤区分図>

受け盤型安定斜面

流れ盤型厚層不安定斜面

流れ盤型薄層安定斜面

流れ盤型塔立斜面

<地盤区分図>

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6. ハイドロフォンによる流砂量観測

当事務所では、流砂系における総合的な土砂管理のた

めに、大沢川岩樋下流端~大沢川橋間を移動する土砂の

量・質を定量的に把握することを目的とし、主に水位・

流量・流速に関してモニタリングを実施してきた。 流砂観測としては、採水による浮遊砂の観測と平成12年度に設置した掃流砂観測桝により土砂を直接捕捉し計測

を行ってきたが、出水初期に桝が満砂するため、出水

ピーク時のデータが採取できない状況であった。 平成18年度からは掃流砂を継続的に観測できる観測手

法として、流砂量を間接的に計測するハイドロフォンを

設置しモニタリング調査を実施している。(図-8) ハイドロフォンとは、マイクロフォンの付いた空洞の

円管を河床に埋め込んだもので、河床を転がる礫が管に

あたったときの音響を感知して信号に変換、波形処理等

行うことにより河床を転がる礫の個数を計測している。

(図-9) ハイドロフォンの観測結果(カウント数)と観測桝の

堆積物を比較し感度特性を把握すること及び、水位・流

量の観測結果と重ねることにより、ハイドロフォンによ

る流砂量の観測が可能になる。

設置よりこれまで大規模な出水は発生していないが、

大沢川では普段流水が全くないこともあり小規模出水で

のデータについて図-10,11,12に示す。 図-10は水位と流砂(ハイドロフォンの単位時間当た

りパルス数)の関係について示したもので、両者の動き

に関係があることは明らかである。また、図-12に示す

ように、パルス数の累計と堆砂圧の増加に一定の傾向が

見られた。このように、ハイドロフォン観測結果と観測

桝による流砂量観測により、出水時の土砂の質、量との

関係が明らかになりつつある。 なお、小出水時の観測では、現状の観測桝の容量不足

が指摘されており、今後施設の改良検討及び観測データ

の蓄積が必要である。

堆積センサー

ハイドロフォン

水位観測

ハイドロフォン→土砂移動(音響)堆積センサー→堆積土砂量粒度分布調査→粒径別堆積土砂量      ↓時間的な流砂量(キャリブレーション)

水位計→水位→観測流量

流砂量と水理量の関係↓

ハイドロフォンで土石流を観測

掃流砂

堆積センサー

ハイドロフォン

水位観測

ハイドロフォン→土砂移動(音響)堆積センサー→堆積土砂量粒度分布調査→粒径別堆積土砂量      ↓時間的な流砂量(キャリブレーション)

水位計→水位→観測流量

流砂量と水理量の関係↓

ハイドロフォンで土石流を観測

掃流砂

大沢沈砂地

大沢扇状地

岩樋下流観測所

大沢川橋観測所

上流からの流入土砂量

・上流からの土砂量把握

・下流への流出土砂量把握

・流入・流出土砂量から堆砂量を推定・レーザープロファイラによる堆砂量測定・河床材料調査の実施

大沢扇状地からの流出土砂量

大沢沈砂地

大沢扇状地

岩樋下流観測所

大沢川橋観測所

上流からの流入土砂量

・上流からの土砂量把握

・下流への流出土砂量把握

・流入・流出土砂量から堆砂量を推定・レーザープロファイラによる堆砂量測定・河床材料調査の実施

大沢扇状地からの流出土砂量

図-9 ハイドロフォン観測イメージ

図-8 ハイドロフォン設置状況

大沢川橋観測データ(2008年12月5日出水)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

13:00 13:10 13:20 13:30 13:40 13:50 14:00 14:10 14:20 14:30 14:40 14:50 15:00 15:10 15:20 15:30

時刻

水位

(cm

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

ハイ

ドロ

フォ

ン・パ

ルス

(回

/分

水位

1016倍

501倍

256倍

64倍

16倍

図-10 出水期間中観測されたパルス数と水位

図-11 増幅率1016倍のパルス数と水位との関係

大沢川橋観測データ(2008年12月5日出水)

y = 0.288e0.7016x

R2 = 0.6625

0

50

100

150

200

250

300

350

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10水位(cm)

パル

ス(回

/分)

1016倍

指数 (1016倍)

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7. おわりに

大沢崩れの崩壊・流出土砂量の推定は、これまで蓄積

されてきた貴重な計測データによって可能となった。 継続的に航空レーザ計測やDMCによる撮影、土石流

の観測と監視により、上流からの供給土砂量を把握し、

かつ大沢川扇状地下流で流砂量を時系列的に把握できれ

ば、流水外力等と関連づけて土砂移動モデルの構築が可

能となり、より効果的な対策が可能となると思われる。 また、流砂量観測の自動化が可能となれば、土石流発

生による上流の移動土砂量、大沢川扇状地の補足土砂量、

大沢川扇状地からの流出土砂量が早期に計測でき、土石

流発生時に迅速な対応が可能になると思われる。 今後は計測データを速やかに公表することにより、流

域住民の大沢崩れに対する関心を高め、防災情報として

利用が定着されることが望まれる。 ○航空レーザによる計測 ○ハイドロフォンによる観測 ○高解像度デジタル航空カメラによる開口亀裂の計測 これら整備された調査体制により、「迅速な情報発

信」に今後とも努めていきたい。

大沢川橋観測データ(2008年12月5日出水)

y = -55279x2 + 47913x - 7015.5

R2 = 0.9802

y = -45395x2 + 38988x - 5737.6

R2 = 0.9798

y = -35007x2 + 30024x - 4448.6

R2 = 0.9795

y = -14906x2 + 12762x - 1919

R2 = 0.9796

y = -4435.7x2 + 3750.4x - 568.9

R2 = 0.9761

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5

堆砂圧P(Pa/min)

パル

ス数

累計

(回)

1016倍

501倍

256倍

64倍

16倍

図-12 堆砂圧の増加と累計パルス数の関係