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20 21 MX サスペンションの永遠のテーマ 「乗り心地と強さの両立」 に対する SHOWAのアンサー やっぱり気になる新機構サス 「SFF」をSHOWAさんに突撃取材! 2011KX250FFISFF82002SHOWASFFSFF調CHECK姿!! 25 %先月号で紹介している 2011年モデルの KX250F に採用されている、スプリングとダンパーを左右で独 立に配置した新機構のサスペンション。読者からの問 い合わせも多かったので、開発された SHOW A さん に突撃取材してきました! この SFF を採用した KX250F のインプレは P52-53 にて掲載! SFF を採用することにより、ス ペースの確保、量産でのコストが 見合い、右側にプリロードアジャ スタ−が採用された こ ち ら が、2011年 モ デ ル の KX250F に採用されている SFF の カットモデル。フリクションロス の軽減、軽量化、整備性の向上な ど、多数のメリットが考えられる 基本的にフロントフォークはスプリング、ダンパー、エア室から成り立ってい るが、SFF はスプリングとダンバーを左右で独立させている。まずスプリングが 1 本になったことにより、摺接フリクションが低減し、機能が集約されたことによ り、バイク 1 台につき約 280g の軽量化も実現しているのだ。 実際金属と金属が触れ合うので、そのフリクションは思っている以上に大きく、それ が乗り心地にも影響をしている。フリクションを低減する、ということはつまり、乗り 心地を向上させている、ということなのだ。SHOWA でのオフィシャルデータでは、従 来型と比較して約 25% の低減が発表されている。 ダートスポーツ(以下:D S): まずこの SFF を採用しようと思った経緯を教えて下 さい。 梶野勉さん(以下:梶):速く走る為にマ シンの挙動変化を抑えたい、F フォークを 強くしたいけど乗り心地は良くしたい、だっ たらフリクションを大幅に低減して、減衰 力で制御しよう! というのが始まりです。 Kawasakiさんはこういった開発にもすごく 前向きなので、それで採用して頂いたとい うことですね。 D S: 開発に伴い苦労したところなどはあり ますか? 梶:やはり従来とは構造がまったく違うの でセッティングテストなどで過去のデータ が通用しなかったことですね。もちろん左 右のバランスだったり、剛性感は相当煮詰 めてますね。 D S:構造自体は単純になった、と捕えて いいんでしょうか? 梶: そうですね。例えば「Fサスは自分でオー バーホールしちゃう」なんていう一般の方 にとっても、メンテナンスなどはラクになっ ていると思います。ある意味「従来の一本 分」みたいなものですから。 D S: ということは、もしかしたらショップな どにオーバーホールをお願いするにあたっ て、その金額がお手頃になる可能性も…。 梶:手間の掛かるダンパーは片方だけで すから、もしかすると、そうなるかもしれま せんね(笑)。 D S: なるほど…。お財布にも思わぬメリッ トがあるんですね(笑)。本日は貴重なお話 をありがとうございました !! カワサキの開発ライダーとして、 その的確な分析能力が評判の IA 井 上眞一選手。現在 IA2 ポイントラ ンキングも 6 位を走り、KX250F の仕上がりの良さを感じさせる 下が従来モデルで、これと比べれば SFF ダンパー の太さが分かる。1 本化したことのデメリットを これでなくしているのだ スプリングを 1 本にしたことで 生まれるフリクションの低減は、 その乗りやすさをビギナーでも 体感できるほど 従来はリアのみだったので 姿勢が変化してしまうもの だったが、フロントにもプリ ロードアジャスターを搭載し てことにより、姿勢を変えず にレベル変更が可能になった のだ。特に雨が多く、重土に もなりやすい日本のコースで は、大きなアドバンテージに なってくれるだろう。 左側には通常のサスペンション同 様、押し側の減衰アジャスターが 付いている。マイナスドライバー を使うノッチ式だ 取材協力:SHOWA 従来型/左右共通 SFF /右側 SFF /左側 従来型 SFF プリロード ADJ スプリング 一本化 スプリング ダンパー 一本化 ダンパー エア室 エア室 エア室 ジョイントロッド COMP オイル オイル オイル SFF とは…Separate Function Front Fork の略で、スプリングとダンパーが左右独立で配置された構造のこと Kawasaki 2011 KX250F 2 輪サス開発部 設計 BL マネージャー 梶野勉さん 2 輪サス開発部 設計 BL ラージプロジェクトリーダー 森本晃司さん 2 輪サス開発部 研究 BL プロジェクトリーダー 淺川優さん これでSFFのメリットがまるわかり! SHOWA 開発陣に突撃インタビュー! その実力は レースでも実証済! 造形社発行 月刊ダートスポーツ 2010年9月号より許可を得て抜粋

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Page 1: これでSFFのメリットがまるわかり!€¦ · このsffを採用したkx250fのインプレはp52-53にて掲載! sffを採用することにより、ス ペースの確保、量産でのコストが

2021

MX サスペンションの永遠のテーマ

「乗り心地と強さの両立」に対するSHOWAのアンサー

やっぱり気になる新機構サス

「SFF」をSHOWAさんに突撃取材!

 

前号で2011年モデルの

KX250Fを紹介したが、多く

の読者が、すでに予想をしていた

FI化よりも、この新たな変貌

を遂げたサスペンションに興味を

示した。このSFFという考え方

に関しては、今から約8年前の

2002年あたりからSHOWA

では開発が進められていたもので、

満を持して今回市販車に初採用

となり、早くも各方面で注目を

浴びているのだ。

 

簡単に説明すると、従来の左

右両方にスプリングとダンパーが

入っていたサスペンションから、ス

プリングとダンパーが左右独立で

配置されたセパレートシステムに

変更されたもの、それがSFFだ。

主にスプリングを一本化したことに

よるフリクションの低減と軽量化

がその大きな恩恵となっている。

 

モトクロッサーの市販車サスペ

ンションを開発するにあたり、永

遠のテーマとなるのが、ハイレベル

なライダーでも満足できる「強さ

(制御性)」と、ビギナーでも扱え

る「乗りやすさ(スムーズさ)」の

両立だという。そのテーマへの答え

として、従来のハイパフォーマンス

な性能を活かしつつ、徹底してフ

リクションを減らし、乗りやすさ

を追求したひとつの形がSFFな

のだ。

 

よりシンプルな構造となり、整

備性の向上やプリロードアジャス

ターが付いたのも嬉しい。これに

より「サスペンションを調整して

自分に合わせる」という行為がもっ

と身近になるだろう。次のページ

でさらに詳細を見ていこう。

読者から「早くインプレ記事が見たい」が殺到

図解で構造をCHECKしていこう!

姿勢を自分好みにして

タイムアップ!!

スプリングの一本化により

フリクションを

なんと25%も低減

先月号で紹介している2011年モデルのKX250Fに採用されている、スプリングとダンパーを左右で独立に配置した新機構のサスペンション。読者からの問い合わせも多かったので、開発されたSHOWAさんに突撃取材してきました!

このSFFを採用したKX250FのインプレはP52-53にて掲載!

SFFを採用することにより、スペースの確保、量産でのコストが見合い、右側にプリロードアジャスタ−が採用された

こちらが、2011 年 モ デ ル のKX250Fに採用されているSFFのカットモデル。フリクションロスの軽減、軽量化、整備性の向上など、多数のメリットが考えられる

 基本的にフロントフォークはスプリング、ダンパー、エア室から成り立っているが、SFFはスプリングとダンバーを左右で独立させている。まずスプリングが1本になったことにより、摺接フリクションが低減し、機能が集約されたことにより、バイク1台につき約280gの軽量化も実現しているのだ。

 実際金属と金属が触れ合うので、そのフリクションは思っている以上に大きく、それが乗り心地にも影響をしている。フリクションを低減する、ということはつまり、乗り心地を向上させている、ということなのだ。SHOWAでのオフィシャルデータでは、従来型と比較して約25%の低減が発表されている。

ダートスポーツ(以下:DS):まずこのSFFを採用しようと思った経緯を教えて下さい。梶野勉さん(以下:梶):速く走る為にマシンの挙動変化を抑えたい、Fフォークを強くしたいけど乗り心地は良くしたい、だったらフリクションを大幅に低減して、減衰力で制御しよう! というのが始まりです。Kawasakiさんはこういった開発にもすごく前向きなので、それで採用して頂いたということですね。DS:開発に伴い苦労したところなどはありますか?梶:やはり従来とは構造がまったく違うのでセッティングテストなどで過去のデータが通用しなかったことですね。もちろん左右のバランスだったり、剛性感は相当煮詰めてますね。DS:構造自体は単純になった、と捕えていいんでしょうか?梶:そうですね。例えば「Fサスは自分でオーバーホールしちゃう」なんていう一般の方

にとっても、メンテナンスなどはラクになっていると思います。ある意味「従来の一本分」みたいなものですから。DS:ということは、もしかしたらショップなどにオーバーホールをお願いするにあたって、その金額がお手頃になる可能性も…。梶:手間の掛かるダンパーは片方だけですから、もしかすると、そうなるかもしれませんね(笑)。DS:なるほど…。お財布にも思わぬメリットがあるんですね(笑)。本日は貴重なお話をありがとうございました!!

カワサキの開発ライダーとして、その的確な分析能力が評判のIA井上眞一選手。現在IA2ポイントランキングも6位を走り、KX250Fの仕上がりの良さを感じさせる

下が従来モデルで、これと比べればSFFダンパーの太さが分かる。1本化したことのデメリットをこれでなくしているのだ

スプリングを1本にしたことで生まれるフリクションの低減は、その乗りやすさをビギナーでも体感できるほど

 従来はリアのみだったので姿勢が変化してしまうものだったが、フロントにもプリロードアジャスターを搭載してことにより、姿勢を変えずにレベル変更が可能になったのだ。特に雨が多く、重土にもなりやすい日本のコースでは、大きなアドバンテージになってくれるだろう。

左側には通常のサスペンション同様、押し側の減衰アジャスターが付いている。マイナスドライバーを使うノッチ式だ

取材協力:SHOWA

従来型/左右共通 SFF/右側SFF/左側

従来型

SFF

プリロードADJ

スプリング一本化

スプリング

ダンパー一本化

ダンパー

エア室

エア室

エア室

ジョイントロッドCOMP

オイル

オイル

オイル

SFF とは…Separate Function Front Fork の略で、スプリングとダンパーが左右独立で配置された構造のこと

Kawasaki2011 KX250F

2輪サス開発部設計BLマネージャー梶野勉さん 2輪サス開発部

設計BLラージプロジェクトリーダー森本晃司さん

2輪サス開発部研究BLプロジェクトリーダー淺川優さん

これで SFF のメリットがまるわかり!

SHOWA 開発陣に突撃インタビュー!

その実力は

レースでも実証済!

造形社発行 月刊ダートスポーツ 2010年9月号より許可を得て抜粋

Page 2: これでSFFのメリットがまるわかり!€¦ · このsffを採用したkx250fのインプレはp52-53にて掲載! sffを採用することにより、ス ペースの確保、量産でのコストが

マシンの前後バランスを確認して最高のパフォーマンスを!

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初心者でも分かるサスペンション講座

一度覚えてしまえば簡単だけど、なかなかうまくできない人も多いサグ出しや、アジャスト調整といったサスにまつわるエトセトラ。ここではそのあたりを分かりやすくご紹介!

F/R 適正値(フルサイズの場合)フロントフォーク45mm〜55mmリアショック 95mm〜105mm※ライダーの好みより差は生じるが、上記数値が適正値。詳しくは自分のマシンのサービスマニュアルを見てみよう!

測定の基準位置は・フロントアンダーブラケット下端〜Fアクスルシャフト

・リアサイドプレートとリアフェンダーの交点〜Rアクスルシャフト

・サグは、一般的に全ストローク量1/3が目安・リアショックシリンダーの外周で調整しよう(※2011KX250F の場合は右側Fフォークの上端にもあり)

(測定値 A)− (測定値B)= サグ値

資料協力:SHOWA

これを読めばもう安心

 

ショップさんなどに「最近

ちょっとサスペンションの調子が

悪いんです…」と持って行くと、

実はサグやアジャストが大幅に

ズレていただけ、なんてことも少

なくない。もちろん、そんな時

もショップさんは丁寧にユーザー

に合った調整やメンテナンスを施

してくれるだろうが、せめて自

分で確認できる範囲の調整は覚

えておきたい。

 

特に、その重要度がまだまだ

認識されていないのが「サグ出し」

と呼ばれる、乗車1Gの沈み込

み量の調整だ。性能を100%

引き出すために、マシンの前後

バランスを取るのが大きな目的

だ。確かにひとりで図るのは難し

く、最低でも2人、できれば3

人で図ってほしいものなので頻繁

 

サスペンションの性能を

100%引き出す為、ライダーの

体重に合わせることをサグ(乗

車1G)を出す、という。サグを

簡単に説明すると「ライダーが

乗車した時の沈み込み量」のこ

と。下記基準位置をメジャーを

使い図り、サスが伸び切った状態

と、乗車した時のしずみ込み量

との、差を図るのだ。特に中古

車を購入してそのまま調整せず

に乗っている人や、もう何年も調

整していないような人は早速やっ

てみよう。

簡単な仕組み、サグ出し、アジャストの3つを抑えておこう!

にチェックするのは現実的ではな

いかもしれない。毎週乗るよう

な人はせめて月に1度、たまにし

か乗らない人でも3ヶ月に1度は

確認したい。これを何度か繰り

返すうちに、自分の好みも分かっ

てくるだろう。まず、サスペン

ションに不調を感じたら、ショッ

プに相談するのもOKだが、一度

メジャーを使ってサグを図ってみ

て欲しい。

 

ここでは減衰力の調整も簡単

に説明しているが、これはサービ

スマニュアルの標準に合わせること

がまず基本だ。レベルが上がるに

つれ、自分の走りやコースコンディ

ションに合わせて最適化できるよ

うになってくるだろうが、まずは、

大幅に標準値からズレてないか、

が分かるようになりたいところだ。

サスペンションは大きく2つの機能で成り立っているんです

サグ(乗車1G)出しをマスターしよう!

ダンパー系

POINT ③

乗車時

空車時

POINT ①POINT ②

スプリング系

 スプリングが伸びようとするのを抑制する役割。スプリング系だけでは吸収できない衝撃を、減衰力を応用して補助するのだ。衝撃をヤンワリと受けることで、マシンとライダーへの衝撃を防ぐ。

 また、ダンパーの発生する減衰力は、動く速度によって変化するもの。ダンパーが吸収したエネルギーは、主に熱エネルギーに変換されて、外部へ放出される。つまり、ダンパー自体が熱くなるのだ。

 マシンを適正な姿勢に支え、衝撃を吸収する役割。ストローク量に応じて反力を増し、底突きなどを防止。Fフォークにはエア室を設けていて、このエアが圧縮されることにより反発力が発生し、プログレッシブな特性が得られる。

 リヤショックアブソーバーについては、車体のリンクの特性により、プログレッシブな反力が得られる。なおスプリングは、加重が抜けると伸びようとする特徴があり、これが単体の場合は安定しない。そこで制御としてダンパー系が必要になるのだ。

「なんとなく原理は分かっているけど、自分でイジるのはちょっと…」という人が意外と多い、減衰アジャストのセッティング。乗り始める前に、標準状態かどうかを確認するだけでもOK だ。

減衰力を生み出すのがココ

文字通りマシンの衝撃を吸収するバネ

数値はセッティングマニュアルをCHECK

スタンド

測定値 A

測定値B

測定値 A

測定値B

減衰力を調整してみよう!コンプレッション側(押し側)

減衰力アジャスターコンプレッション側(押し側)

減衰力アジャスター

リバウンド側(引き側)減衰力アジャスター

リバウンド側(引き側)減衰力アジャスター

フロントフォーク

リアショック

造形社発行 月刊ダートスポーツ 2010年9月号より許可を得て抜粋