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Case Study Case Study 4月23日、野村アセットマネジメント様(以下、敬 称略)において、「SmartBridgeAdvance/短期資産 OMS」が稼働した。 「SmartBridgeAdvance(以下、SBA)」は、運用 会社のファンドマネージャーやトレーダーが担うフロ ント業務全般を支援するソリューションである。大き く、①ファンドマネージャーの業務を支援するポジショ ン管理機能、②トレーディング業務向け取引注文管理 (OMS)機能、③ポスト・トレード業務向けバックオ フィスシステムへの約定データ自動接続機能、④コンプ ライアンスチェック機能、の4つの機能で構成されてい る。フロント業務の中でも特にシステム化が難しいとさ れるフロントポジション資金管理とポスト・トレード業 務の自動化を実現している。これらは、同一のプラット フォームで稼働しており、ファンドマネージャー、ト レーダー、ポスト・トレード業務担当者がそれぞれ、各 業務の進捗状況を共有することができる。 SBAはまた、上記①~④の機能別に、資産単位(国 内株式、外国株式、為替、為替予約、短期資産)で、利 用者が必要とする部分のみを導入することができる。今 回野村アセットマネジメントが導入したのも、機能の一 つである「短期資産OMS」である。 今回、野村アセットマネジメントが「短期資産 OMS」を導入したのは、4月23日に施行された「国債 取引の決済期間短縮化」に対応するためだ。国債取引の 決済期間が、3日後(T+3)から2日後(T+2)に短 縮される結果、SCレポ(現金担保の国債貸借取引)の 決済期間はT+3からT+2に、GCレポ(国債担保の資 金貸借取引)の決済期 間はT+2からT+1に 短縮される。これに よって、短期資産の約 定照合の負荷が膨大と なるため、今まで手作 業で対応していた野村 アセットマネジメント も、システム化する必 要性に迫られた。 野村アセットマネジ メントの金融市場ト レーディング部の尾本 シニア・トレーダーは 「短期資産関連だけでも日々300-400件の取引件数 があります。従来は、レポ、現先、CPアウトライト、 CP現先、コール取引と多様な商品のなかで最良執行を 野村アセットマネジメント様で、 「SmartBridge Advance/ 短期資産OMS」 が稼働 金融市場トレーディング部 尾本シニア・トレーダー SBA短期資産OMS導入の経緯 SmartBridge Advance/短期資産OMS 野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部 ©2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 16

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Page 1: 「SmartBridge Advance/ 短期資産OMS」が稼働fis.nri.co.jp/~/media/Files/publication/kinyu-itf/2012/...「SmartBridge Advance/短期資産OMS」の導入 がもたらした効果を、根岸氏は「OMS導入による電子

Case Study

Case Study

 4月23日、野村アセットマネジメント様(以下、敬

称略)において、「SmartBridgeAdvance/短期資産

OMS」が稼働した。

 「SmartBridgeAdvance(以下、SBA)」は、運用

会社のファンドマネージャーやトレーダーが担うフロ

ント業務全般を支援するソリューションである。大き

く、①ファンドマネージャーの業務を支援するポジショ

ン管理機能、②トレーディング業務向け取引注文管理

(OMS)機能、③ポスト・トレード業務向けバックオ

フィスシステムへの約定データ自動接続機能、④コンプ

ライアンスチェック機能、の4つの機能で構成されてい

る。フロント業務の中でも特にシステム化が難しいとさ

れるフロントポジション資金管理とポスト・トレード業

務の自動化を実現している。これらは、同一のプラット

フォームで稼働しており、ファンドマネージャー、ト

レーダー、ポスト・トレード業務担当者がそれぞれ、各

業務の進捗状況を共有することができる。

 SBAはまた、上記①~④の機能別に、資産単位(国

内株式、外国株式、為替、為替予約、短期資産)で、利

用者が必要とする部分のみを導入することができる。今

回野村アセットマネジメントが導入したのも、機能の一

つである「短期資産OMS」である。

 今回、野村アセットマネジメントが「短期資産

OMS」を導入したのは、4月23日に施行された「国債

取引の決済期間短縮化」に対応するためだ。国債取引の

決済期間が、3日後(T+3)から2日後(T+2)に短

縮される結果、SCレポ(現金担保の国債貸借取引)の

決済期間はT+3からT+2に、GCレポ(国債担保の資

金貸借取引)の決済期

間はT+2からT+1に

短縮される。これに

よって、短期資産の約

定照合の負荷が膨大と

なるため、今まで手作

業で対応していた野村

アセットマネジメント

も、システム化する必

要性に迫られた。

 野村アセットマネジ

メントの金融市場ト

レーディング部の尾本

シニア・トレーダーは

「短期資産関連だけでも日々300-400件の取引件数

があります。従来は、レポ、現先、CPアウトライト、

CP現先、コール取引と多様な商品のなかで最良執行を

野村アセットマネジメント様で、

「SmartBridge Advance/ 短期資産OMS」が稼働

金融市場トレーディング部尾本シニア・トレーダー

SBA短期資産OMS導入の経緯

SmartBridge Advance/短期資産OMS

野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部©2012NomuraResearchInstitute,Ltd.Allrightsreserved.16

Page 2: 「SmartBridge Advance/ 短期資産OMS」が稼働fis.nri.co.jp/~/media/Files/publication/kinyu-itf/2012/...「SmartBridge Advance/短期資産OMS」の導入 がもたらした効果を、根岸氏は「OMS導入による電子

実践し、基準価額の算出に間に合うよう限られた時間の

中で、FAXベースの取引明細書を目検し、システムに

約定明細を手で入力し、さらに入力されたデータをダブ

ルチェックし、受託銀行に連携するという手順が必要で

した」と語る。

 その解決を図るために導入したのが、「SmartBridge

Advance/短期資産OMS」である。自社開発ではな

く、サービス製品を選んだ理由を、尾本氏はこう語る。

「システム構築後に発生する維持管理(保守)費用を抑

えることができます。サービス製品を利用することで、

制度改正など業界の運営ルールが変った時などのシステ

ム改変費用を低減できることも大きいです」。海外ベン

ダーの製品も考慮したが、「日本の取引制度や慣行、投

信計理に精通しており、実績あるT-STAR/TXなどを提

供している野村総合研究所の製品であれば、取引制度や

会計基準の変更にもすみやかに対応してもらえる安心感

から「短期資産OMS」を選びました」と、グローバル

マネー運用部の根岸部長は語る。

 「国債の決済期間短縮」の検討ワーキング・グルー

プが発足したのは2009年9月である。その後、検討が

重ねられ、2011年3月末に出された中間報告書で、

2012年4月23日にT+2を施行することが決定され

短い開発期間を乗り越える

SBA機能全体概要図

進捗状況モニタリング

国内ブローカ・海外ブローカ

①フロントポジション資金管理機能 ②トレーディング支援機能 ③ポスト・トレードSTP機能②トレーディング支援機能

SmartBridge SWIFTFIX

SmartBridge他ベンダーネットワーク

SmartBridgeSWIFT

③ポスト・トレードSTP機能

④コンプライアンスチェック機能

ポートフォリオ残・構成参照

リアル評価算出 株式権利反映

共通基礎データ・残高算出エンジン

(簡易)債券償還・利金反映

設定解約反映(概算・確定)

(簡易)費用反映当日初残高

コンプラチェック

コンプラチェック

注文取込 発注

取引リアル反映

取引リアル反映

承認フロー ルール

ルールチェックエンジン

出来 配分 配分指示 約定取込

残高参照、約定リアルタイム反映

前日残高当日取引

前日残高

ファンド設定解約取込

権利情報取込

銘柄リファレンス取込

時価・レート取込取引取込

権利情報

ファンド基準価額

ファンド属性

銘柄属性

時価・レート特性値

コードリファレンス

銘柄属性

FundWeb

バックオフィス約定直結

約定照合強制確定

約定入力

建玉・残特定カバー為替計上指定

約定/指図残高

JASDEC・受託銀行・外部委託

外部委託・ブローカ・為替銀行

資金表参照

為替予約玉参照

残高参照、直近評価算出

シミュレーション(親投信売買)

コンプラチェック

注文案件作成・送信

シミュレーション(為替予約・エクスポージャ)

17Financial Information Technology Focus 2012.8

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Co

rpo

rate

Pro

fileCase Study

た。しかし、仕様が固まったのは最終報告書で、それが

公表されたのは施行まで半年をきる2011年11月30

日だった。

 テスト環境での検証(UAT)が始まったのは、

2012年3月。最終報告が出てわずか4ヶ月後であっ

た。このような短期間で対応ができたのは、最終的な仕

様を待つことなく、現場のトレーダー自身が率先して業

務で発生し得る様々な取引ケースを事前に想定し、シス

テム設計に反映できたことが導入スケジュールを短くで

きた要因である。

 「野村総合研究所が、早期にUATを実施することを約

束してくれていましたので、安心感がありました」と尾

本氏は語る。「UATを開始してから、4月23日までに導

入可能な機能についての線引きができました。4月6日

からは、本番での運用を開始しました。本番と今までの

オペレーションの並行運用だったわけですが、早くSBA

だけのオペレーションに切り替えたいと思いましたね」

 「SmartBridgeAdvance/短期資産OMS」の導入

がもたらした効果を、根岸氏は「OMS導入による電子

化よって、案件作成中

の取引から注文・発注

済みのものまで全取引

状況をリアルタイムで

チームメンバー全員が

見ることができるよう

になったため、チーム

内で注文執行状況の共

有が容易になりまし

た。翌日物コール取引

も含め全取引をSBA

でカバーできるように

なったため、自社開

発システムをSBAと接続することでファンドのキャッ

シュポジションやリスク特性値をリアルタイムで更新

できるようになり、日々のファンドの運用管理にあ

たって、精度が高まるとともに業務効率が改善しまし

た。取引規模の拡大時にはその効果が更に実感できる

と思います」と語る。ファンドマネージャーやトレー

ダーの業務が効率化したことで、彼らの時間をマー

ケットの動きを分析することにより多く割くことがで

きるようになっているという。

 「やはり、サービス製品を導入したのは、制度対応へ

の期待が高いからです。今後、T+1への対応もありま

すので、市場慣行の変化に対して、柔軟にかつスピー

ディに対応してくれるものと期待しています」と、根岸

氏も尾本氏も口を揃えた。

SmartBridge Advance/短期資産OMS

 野村アセットマネジメントは、投資信託の開発・運用を行う野村證券投資信託委託と投資顧問業を専門とする野村投資顧問が合併して1997年10月に発足した。早くから運用と顧客基盤のグローバル化に取り組み、アメリカ、ヨーロッパ、アジア等、海外への積極的な展開を図っている。2012年3月末現在、運用資産総額は25兆円強にのぼり、国内最大の運用会社である。 野村アセットマネジメントでは、10年以上前より株式や債券、為替のトレーディング業務を自社システムを用いて効率化するなど、IT化への取り組みを積極的に行ってきている。

グローバルマネー運用部根岸部長

SBAへの期待

導入後の効果

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