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「大阪大学大学院人間科学研究科紀要」第 29 ,2003 月所収 情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要

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Page 1: Osaka University Knowledge Archive : OUKA...情報化社会に関する全国調査(JIS 2001)の概要 直井 優 菅野 剛 岩渕亜希子 1.JIS調査の特徴 1.1目的と内容

「大阪大学大学院人間科学研究科紀要」第29巻,2003年3月所収

情報化社会に関する全国調査(JIS 2001)の概要

直 井 優菅 野 剛岩 渕 亜希子

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情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要

直井 優菅野 剛岩渕亜希子

1.JIS 調査の特徴

1.1 目的と内容

本調査研究は、社会階層に関する従来の調査研究をもとに、情報格差についての新た

なタイプの格差をとりあげ、情報技術(IT)革命がもたらす文化・社会・心理的効果に

ついて学際的に明らかにするものである。本稿では、2001年に実施した「情報化社会に

関する全国調査」(the Japan Survey on Information Society ; JIS)の第1回調査について

説明し、基本的な分析結果を示す。

社会階層研究の新たな側面 1995年に実施された SSM全国調査では、豊かさの中の不

平等という現象が見出され、豊かになった現代日本社会における格差がとりあげられた。

他方、高度情報化やグローバライゼーションが急速に近年進展しており、情報技術に関

連して生じる新たな格差についての社会階層的研究が重要となってきている。JIS調査

では、学歴、個人収入、世帯収入、職業、職業威信等の社会階層に関連する項目を用い

て分析する。さらに情報技術関連については、イメージ、知識、利用、活用等を段階的

に問う測定項目を新たに取り入れ、従来の社会階層研究での未開拓領域に踏み込むと共

に、情報技術における格差を測定する質問項目の妥当性と信頼性について研究をする。

情報化社会における価値観とライフスタイル 産業において、情報や知識の価値が以前

にも増して重要になってくることはたびたび指摘されてきた。産業構造が変動し、工業

社会や近代的社会から脱工業社会や脱近代的社会構造への移行に伴い、人々の価値観も

物質主義から脱物質主義へと静かに世代間で移り変わっていくと言われる。これらの研

究の中でも、イングルハートらの世界価値観調査は実証的な国際比較・継続調査におい

て重要な蓄積がある(Inglehart1971, 1977)。日本でも、1995年 SSM調査において、遠

藤薫(2000)が情報コンシャスネス(=「情報に強いこと」)を軸に、新しいライフスタ

イル、脱物質主義的な価値観とオルト・エリートの台頭について議論しており、情報技

術関連指標と価値観の関連について詳細な検討と分析が重要である。JIS調査では、イ

ングルハートの脱物質主義に関連する項目と、余暇活動やライフスタイルについての項

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目を測定しており、情報化社会における価値観やライフスタイルを探ることが重要な課

題となっている。

仕事とパーソナリティー研究の発展 関連して、社会意識について学習一般化メカニズ

ムの見地から研究がなされている仕事とパーソナリティー研究(Kohn and Schooler

1983, Naoi and Schooler1985, 直井1987)の流れに沿って、情報リテラシーや情報技

術利用度等を位置付けることも重要な課題である。社会階層と自己指令性・知的柔軟性

の関連は、仕事の条件による効果であることが分析で明らかになっている。仕事の条件

の中でも特に重要なのが仕事の複雑性である。社会階層的に上位に位置する者ほど、知

的に柔軟な姿勢を作りだす複雑な仕事の条件のもとにあり、この日常の仕事の条件を長

い年月にわたって経験することで、学習一般化により本人のパーソナリティーや能力が

影響を受ける。この研究は、アメリカ、日本、ポーランドの国際比較によって支持され

ている(Kohn et al. 1990)。この研究の流れに沿って、情報化社会における産業構造の

変化を考慮して、情報技術に関する知識・関心・利用等の段階的測定項目を用いて、仕

事の条件と情報リテラシーや情報技術利用がどのような関連を持っているか、また、情

報リテラシーや情報技術利用がパーソナリティーとどのような関連を持っているか、に

ついて研究を行う。パーソナリティー(社会的オリエンテーションと心理的機能、価値)

としては、自己指令性、権威主義的保守主義、他者への信頼性、自己信頼、自己疎隔、

責任の帰属、不安感・ディストレス、考え方の同調性、知的柔軟性等をとりあげる。ま

た、情報処理技術の進展に伴い、仕事でパソコンや情報処理端末に触れる機会が格段に

増えており、データ、人、モノからなる仕事の複雑性と、情報技術の利用度合の関連に

ついての分析も重要な課題となっている。また、社会意識、価値観、余暇活動、文化的

活動、ライフスタイル、家事等の様々な項目に対して、情報リテラシーや情報技術利用

という新しい文脈を視野に入れつつ、仕事とパーソナリティー研究に対する総合的な包

括的貢献を目指す。

グローバル化と国際比較研究 高度情報社会化は、全世界的な規模で急速に進展してい

る。この現象の理解のためには、日本国内だけではなく、国際比較という軸も重要となっ

てくる。すなわち、情報技術革命において先行していたアメリカに対して、アジアにお

ける日本・ヨーロッパにおけるドイツという戦後に急速な経済復興を遂げた二つの先進

国をとりあげる。社会調査研究の蓄積が豊富であるアメリカについては General Social

Survey等でデータが利用可能であり、ドイツについては ALLBUSを参考にして、情報

技術関連項目や社会意識における質問項目を設計・比較を行うことで、情報技術革命に

おける様々な違いのコントラストを浮き彫りにし、それぞれの特徴と相違を把握する。

ALLBUSは ZUMAと ZAの共同プロジェクトであり、ドイツ社会の、社会的態度、行

為と社会的構造の長期的調査を目的としている。1980年以来、ALLBUS調査は隔年ご

とに実施されている。

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情報化と継続的比較 JIS調査では、情報技術に関して知識・所有・利用を段階的に問

う測定項目を取り入れ、社会階層研究での未開拓領域に踏み込むと共に、情報技術格差

を測定する質問項目の妥当性・信頼性を明らかにする。その際、グローバル化を捉える

地理的な共時的な軸と共に、日本の社会構造の動態と変遷を把握するために、継続的比

較という通時的な軸も重要となってくる。

超高齢社会を考慮した標本設計 日本では、65歳以上の高齢者人口は1950年に総人口の

5%に満たなかったが、1970年に7%を超え(高齢化社会)、1994年に14%を超え(高齢

社会)、急速に高齢化が進展している(内閣府編,2001)。JIS調査の実施時期に近い2001

年10月1日現在で日本の人口は1億2,729万人、65歳以上の高齢者人口は2,287万人、総

人口に占める割合(高齢化率)は18.0%である1)。現代日本社会は、急速に超高齢化が

進行し、他方で、急速に高度情報化も進展しており、この双方の社会現象が共に進む大

変興味深い時期にある。一般に高齢者は労働人口の周辺に位置しているが、日本では、

欧米諸国に比べると高齢者の労働力率が高い2)。そのような中で高度情報化が進み、産

業構造が変化し、また少子化による労働力の要請もあり、労働市場に高齢者が参入する

可能性はさらに増大する。また、高齢者が対象となる社会保障や医療の分野でも、テク

ノロジーの側面から情報化は大きな影響を及ぼすことが予想される。JIS調査では、急

激に進展しつつある日本の超高齢社会を把握し、今後経時的比較を実施するため、20歳

から89歳までの幅広い年齢層を対象としている。

研究内容 調査研究の結果、文化的側面において明らかになることとして、情報技術関

連メディアの利用や普及状況の現状把握、情報技術利用・普及に伴って価値観がどのよ

うに移り変わっていくのか、既存マス・メディアとインターネットの利用の多様化とそ

の影響、グローバル化に伴う英語の今後の重要性についての認識、等がある。社会的側

面においては、個人化や私化が進んでいるといわれる中で、メールによるコミュニケー

ションの進展と友人関係の変化、情報技術を媒介とするサポート関係の進展と家族関係

の移り変わり等が重要である。また、情報格差の主観的・客観的状況の把握として、男

女格差、年齢格差、地域格差、学歴や職業、収入等の社会階層格差が重要である。心理

的側面については、仕事・家事の複雑性と情報技術が、自己指令性・知的柔軟性・権威

主義に対してどのように関連しているか、情報技術利用による社会的・心理的影響や変

化、情報化の進展に伴う情報漏洩・プライバシーについての意識、高度情報化社会につ

いて抱かれるイメージ(光と影)とその規定因等をとりあげる。

1.2 調査の方法

調査の設計 調査対象は満20歳以上89歳以下の男女で、抽出方法は層化2段無作為抽出

法、抽出台帳は選挙人名簿を基本としている。調査の設計と層化については、全国を11

の地域(1.北海道、2.東北、3.関東、4.北陸、5.東山、6.東海、7.近畿、8.中国、

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9.四国、10.北九州、11.南九州)に分類し3)、さらに四つの市郡規模(1.13大都市、2.

人口10万人以上の市、3.人口10万人未満の市、4.町村)によって層化している。調査

地域は日本全国102地点、計画標本数は1,500である。調査方法は個別面接聴取法と留置

法を併用し、調査実施時期は平成13年10月-12月、有効回収数は1,011票、有効回収率67.4

%である。調査の実査は社団法人中央調査社に依託している。

調査プログラムの構造 JIS調査は、いくつかの先行調査を参考にして構成されており、

なかでもドイツ全国調査 ALLBUSは JIS調査に大きな影響を与えている4)。まず、基

本的な社会的属性として、性、年齢、居住地、学歴、職業、婚姻状態、住居形態、収入

などの社会的属性を測定している。主要なテーマとしては情報技術関連(情報技術、情

報メディア)のイメージ・知識・所有・利用状況を段階的に測定している。その他の項

目群としては、仕事・家事の複雑性など社会環境側面、権威主義、知的柔軟性、自己指

令性、不安感、信頼性、自尊心などの心理的側面、物質主義・脱物質主義や価値観等の

社会的側面、余暇や文化活動、ライフスタイル、政治意識や社会意識について測定して

いる。このように、社会階層、情報技術革命・情報化、文化的項目、心理的項目、社会

的意識、ライフスタイル等を複合的に把握する。

1.3 情報化関連の測定項目

本稿では、情報技術関連の測定項目について記述的な基礎分析を行う。情報化は急速

に進展しつつあるが、しかし、例えば、高齢者において情報機器の利用率は低く情報化

に関する知識も少ない傾向があり、質問項目によってはかなりの欠損値が生じることが

予想された。一般に、情報化に関する調査では分析に利用できる有効サンプル数が減少

する傾向があるが、この点に特に配慮した。そこで、JIS調査では、情報化に関連する

項目において、

�日常生活における普及情報機器の何気ない利用からより高度で複雑な先端情報機器までの様々な利用レベルによって、情報環境の複雑性を見い出すことが出来る情報

機器の日常的利用

�知識や利用水準・活用程度によって移り変わり、漠然としたものから、情報の積極的収集や情報処理を背景として様々に移り変わる情報技術関連についての関心

�インターネットという言葉を知っているかどうかという知識�情報技術、インターネットについて思い浮かぶ自由回答�人によって様々な回答が得られるであろう、情報技術の進展による今後の社会についての情報化社会イメージ

�テレビ、新聞等の既存マスメディアとホームページやメール等の新しいメディアの利用程度と関心内容から、様々な利用を多角的に測定するメディア利用

�インターネット、メールの利用における目的や利用頻度等、情報機器の活用

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等を測定している。以上は、かならずしも厳密には完全な段階的区分ではないが、これ

らの諸要素を組み合わせることで情報リテラシーの層を測定し、なるべく多くの人々か

らのデータを得ることを試みている。

また、テレビや新聞といった既存のメディアと、メールやホームページ等の新しいメ

ディアの利用の比較も重要である。メディアには、マス・メディアとパーソナル・メディ

アの軸もある。ここでは、情報の流れが一方向的なテレビ、新聞といったマス・メディ

アに対して、柔軟な情報収集と個人からの情報発信も比較的容易なホームページ、そし

て個人と個人のコミュニケーション・メディアとしてのメールや携帯電話について、測

定を行っている。利用頻度、利用時間、内容の関心分野については、新聞、テレビ、ホー

ムページについて測定している。

本節では、以上の項目の一部について、段階的に調査項目の分析結果を示す。まず、

様々な情報機器の実際の利用について概略し、次第に、余暇におけるコンピューターと

インターネットの利用、メールの利用やその影響等、利用における格差を見ていく。次

いで、インターネットについての知識や情報技術についての関心を探り、情報化社会に

ついてのイメージを概略し、人々の意識における情報化の状況と意識における格差を見

ていく。そして、階層帰属意識と情報階層帰属意識について調査結果を示し、情報格差

や“デジタル・デバイド”(木村2001, 橋元2001)といわれる現象の主観的な側面に触

れる。

2.利用における格差

2.1 情報機器の利用

現代社会では、日常何気なく情報機器に囲まれて生活が営まれている。情報機器を実

際に利用しているかどうかについて、「あなたは、以下の機器を利用されていますか。

ご自分で日常的に利用しているもの全てをあげてください。」と尋ね、1.携帯電話、2.

ファックス、3.テレビゲーム機、4.ステレオやラジカセ、5.ビデオ、6.DVD、7.ワー

プロ専用機、8.パソコン、9.プリンター、10.スキャナー、11.デジタル・カメラ、12.

コピー機、13.カー・ナビゲーション、14.その他、の14項目について、利用している(=

1)、利用していない(=0)という形で測定している。これらの中には、必ずしも情報

機器として意識されずに利用されているものもあるかもしれないが、情報を扱う機器を

幅広く取り上げて、質問項目に含めている5)。

全体での利用率 情報機器の利用率(図1)を見ると、最も利用率が高いのはビデオで

あり、3人に2人が利用している(65.7%)。JIS調査では、日常的に利用しているかど

うかを尋ねているため、自宅に所有していないが利用しているという回答も利用率に反

映される。次いで、2人に1人以上が利用している情報機器は、携帯電話(56.8%)とス

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テレオやラジカセ(52.8%)である。これにファックス(39.4%)とパソコン(38.2%)が続

く。また、おおよそ3人に1人が利用しているものとして、コピー機(28.0%)とプリン

ター(27.9%)が続く。そして、テレビゲーム機(17.5%)、デジタル・カメラ(16.5%)に

ついては5―6人に1人が利用しているといえる。これ以外の利用については、図では

省略しているが、ワープロ専用機(14%)、カー・ナビゲーション(10%)、スキャナー(10

%)、DVD(9%)、その他(1%)となっている。

以上の利用率は、家庭と仕事での利用の両方を合わせた回答であり、特に携帯電話、

ファックス、パソコン、コピー機、プリンターについては、世帯や個人の所有率よりは

高めの値となっている点は注意する必要がある。ただし、情報機器との接触を調査する

上では、所有よりは実際の利用の方が重要だろう。なお、総務省の消費動向調査による

と、主要耐久消費財等の平成14年3月末時点での普及率(全世帯)は、電気掃除機98.2

%、電気冷蔵庫98.4%、電子レンジ95.7%、電気洗濯機99.3%、カラーテレビ99.3%、

衛星放送受信装置39.0%、VTR79.6%、ビデオカメラ37.2%(アナログ含むだろう)、DVD

プレーヤー19.3%、ステレオ54.9%、CDプレーヤー60.5%、パソコン57.2%、ファク

シミリ39.3%、携帯電話78.6%、となっている。これらの数字は世帯普及率であるため、

値がやや大きくなっている。

次に、分析視角として、男女格差、年齢格差、地域格差、学歴や職業、収入等の社会

階層格差の視点から、情報化について考察してデータを見ていく。

男女別に見る情報機器利用率 男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が顕著

となり、男女共生社会への取り組みも進められてきたが、男女の就業率と就業形態にお

図1 情報機器の利用率(全体サンプル)

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いては、依然として大きな違いがある。男女別に利用率(図2)を見ると、最も普及し

ているビデオにおいて男性72%、女性60%、ステレオやラジカセにおいて男性57%、女

性49%と男性の方が利用している。携帯電話においては男性69%、女性46%、パソコン

において男性47%、女性29%、プリンターにおいて男性38%、女性19%、と差が開いて

いる。その他のどの情報機器においても女性に比べて男性の利用率が高い。日常的に利

用され、広く普及している既存の情報機器としてのビデオとステレオやラジカセに比べ

て、比較的新しく登場し、開発と普及が進行中の携帯電話とパソコンにおいて特に男女

差が見られる。

年齢別に見る情報機器利用率 超高齢社会を迎える現代社会では、年齢による格差の把

握も重要である。ここではグラフを分かりやすくするため、年齢区分は、20-39歳、40

-59歳、60-89歳としている。年齢ごとによる情報機器の利用率(図3)を見ると、多く

の項目で20-39歳において利用率が最も高く、年齢が若い方が利用率が高く、年齢が高

いほど利用率が低い。20-39歳における情報機器の利用率を見ると、ビデオ86%、携帯

電話86%、ステレオやラジカセ76%、パソコン58%、となっている。そして、他の年齢

層では、ファックスの方がパソコンより利用率が高いのに対し、20-39歳ではパソコン

の方がファックスよりも利用率が高い。ただし、ファックスとコピー機については、40

-59歳において利用率が最も高く(それぞれ53%、38%)、20-39歳が続き、そして60-89

歳において最も利用率が低い。また、プリンターにおいては、20-39歳と40-59歳は同

程度の利用率となっている。

図2 男女別に見る情報機器利用率

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都市規模別に見る情報機器利用率 地域格差が進んでいると言われている。過密化して

いる大都市圏が存在する一方で、過疎問題に直面している地域が存在し、人材面、イン

フラ面での地域格差が存在するという事実は否めない。このような中で、情報機器の利

用は、地理的な距離を狭め、これまでは情報や物流の中心であった大都市圏に対する周

辺地域による巻き返しの可能性がしばしば期待される。都市規模別に情報機器の利用率

(図4)を見ると、都市規模が大きな居住地域ほど、情報機器の利用率が高い傾向が見

図3 年齢別に見る情報機器利用率

図4 都市規模別に見る情報機器利用率

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られる。多くの項目において、13大都市において利用率が最も高く、町村において利用

率が最も低い。ただし、携帯電話やステレオやラジカセ、ファックス、プリンター、テ

レビゲーム機の利用率は、13大都市で最も高く、10万以上の市と10万未満の市でほぼ同

じであり、町村で最も利用率が低くなっている。さらにコピー機については、都市規模

による利用率の違いがあまり見られない。またデジタル・カメラは13大都市において利

用率が最も高いが、それ以外における差はあまり見られない。

学歴別に見る情報機器利用率 本稿では、大学卒(大学院卒、大学卒、短大卒)、高校卒

(高等学校卒)、中学卒(中学校卒)という学歴区分を用いる6)。学歴別に情報機器の利

用率(図5)を見ると、情報機器の利用率は、高学歴において高い。どの情報機器にお

いても、大学卒において利用率が最も高く、高校卒が続き、中学卒において利用率が最

も低い傾向がある。広く普及しているビデオ、ステレオやラジカセといった既存の情報

機器においても大きな違いがある。特に、パソコン利用において差が大きく、利用率は

大学卒69%、高卒31%、中卒7%となっている。また、携帯電話については、利用率は

大学卒78%、高卒58%、中卒24%となっている。新しい情報機器において、学歴による

違いがより見られる。また、高卒と中卒においては、ファックスの方がパソコンより利

用率が高いが、大学卒ではパソコンの方がファックスよりも利用率が高い。本稿の分析

で扱っている情報機器の中では、デジタル・カメラは利用率が低めであり、携帯電話や

ステレオやラジカセは利用率が高めである。しかし、大学卒におけるデジタル・カメラ

の利用率(24%)は、中学卒における携帯電話やステレオやラジカセの利用率と同程度と

なっており(それぞれ24%、27%)、学歴が重要な要因となっている。

図5 学歴別に見る情報機器利用率

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職業別に見る情報機器利用率 職業は、1995年 SSM職業分類に準拠してコーディング

作業を行っている。ここでは、結果を分かりやすくグラフで図示するため、専門・管理

(専門職、管理職)、事務・販売(事務職、販売職)、ブルーカラー(熟練、半熟練、非熟

練)・農業、無職、という四つの大きな区分を用いる7)。職業別に情報機器の利用率(図

6)を見ると、ビデオにおいてはブルーカラーにおいて利用率が低めとなっている。専

門・管理職においては利用率が高い項目が多く、無職においてはいずれの項目において

も利用率が最も低い。また、ブルーカラー・農業においては利用率が低い項目が多い。

職業によって、情報機器の利用率が異なることが分かるが、ファックスとパソコンにお

いて、ホワイトカラーとブルーカラーの違いが顕著となる。また、専門・管理職では、

ファックス利用率よりもパソコン利用率の方が高い。

世帯収入別に見る情報機器利用率 世帯収入は、0-350万未満、350-650万未満、650-

1,000万未満、1,000万以上、の大きな四つの区分を用いる。世帯年収ごとに情報機器の

利用率(図7)を見ると、ビデオにおいては、350万以上においては、いずれも7割程度

が利用しているが、350万未満において利用率が5割弱に下がっている。350万未満にお

いて利用率が顕著に下がるこの傾向は、携帯電話、ステレオやラジカセ、デジタル・カ

メラにおいても見られる。一方、ファックス、パソコン、コピー機、プリンターにおい

ては、世帯年収が高くなるに従って利用率も高くなる傾向が見られる。テレビゲーム機

については、350-650万において最も利用率が高くなっており、1,000万以上、650-1,000

万未満、350万未満で同程度の利用率となっている。

一般に、どのような新しいメディアでも、世帯収入が高い層から普及していくが、本

図6 職業別に見る情報機器利用率

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稿では利用率を見ている。そしてメディアや情報機器が普及価格帯に差し込むと、急速

に世帯普及率が高まっていく。この意味では、今やありふれているテレビやビデオも一

時期は希少なものであった。なお、ビデオ、ステレオやラジカセといった既存の情報機

器の利用率に見られる収入階層による違いのパターンに、携帯電話の利用率における収

入階層による違いのパターンも近くなっている。パソコンについては、ファックス、コ

ピー機、プリンターとパターンが近い。

2.2 メディアの日常利用と内容への関心

メディアの利用については、テレビ、新聞といった既存のメディアと、ホームページ

という新たなメディアについて、1週間の利用日数と時間を測定している。

テレビの利用とテレビ番組への関心 テレビの利用頻度については、「あなたは、一般

に、1週間に何日テレビを見ますか」と尋ねている。0日-6日の間の回答はそれぞれ

1%程度と非常に少なく、これらをまとめても8.4%である。テレビを週に7日見ると

いう回答は91.6%であり、9割の人がテレビを毎日利用しており、利用率が非常に高い。

テレビ番組の内容における関心については、「あなたは、さまざまなテレビ番組に対

して、どの程度関心を持っていますか。関心の強さをお答え下さい」と尋ね、ニュース、

ドキュメンタリー、スポーツ、映画、ドラマ、クイズ番組、バラエティー、芸術・文化、

ワイドショー、の9項目について測定している(図8)。回答の選択肢は、1.「関心は

非常に強い」、2.「関心は強い」、3.「どちらともいえない」、4.「関心は弱い」、5.「関心

は非常に弱い」、の5件法である。まず、ニュースについては、「関心は非常に強い」が

図7 世帯収入別に見る情報機器利用率

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 33

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47.2%、「関心は強い」が40.3%、合わせて87.5%の人々が関心を持っている。同様に、

「関心は非常に強い」と「関心は強い」を合わせると、ドキュメンタリーについては61.3

%、スポーツについて55.8%、映画について51.6%が関心を持っている。さらに、ドラ

マについて45.3%、クイズ番組について39.6%、バラエティーについて35.2%、芸術・

文化について32.1%、ワイドショーについて31.0%が関心を持っている。

新聞の利用と内容への関心 新聞の利用についても同様に尋ねている。1週間のうち0

日-6日の回答をまとめると18.9%である。週に7日新聞を読むという回答は81.0%で

あり、8割の人が新聞を毎日利用している。

新聞の記事における関心については、「あなたは、日刊新聞のさまざまな内容にどの

程度関心を持っていますか。」と尋ねて、社会面、地方記事、政治、テレビ・ラジオ欄、

スポーツ、経済、生活家庭欄、コラム・社説、芸術・文化、広告、求人、の11項目につ

いて測定している(図9)。回答の選択肢は、1.「関心は非常に強い」、2.「関心は強い」、

3.「どちらともいえない」、4.「関心は弱い」、5.「関心は非常に弱い」、の5件法である。

まず、社会面に対しては、「関心は非常に強い」(18.3%)と「関心は強い」(46.4%)を合

わせて64.7%の人々が関心を持っている。同様に、「関心は非常に強い」と「関心は強

い」を合わせると、地方記事については57.8%、政治について56.5%であり、ニュース

に関連する記事に対して関心が強い。そして、テレビ・ラジオ欄について50.6%、スポー

ツについて51.7%、経済についても49.1%が関心を持っている。さらに、生活家庭欄に

ついては38.0%、コラム・社説について30.6%、芸術・文化について27.8%、広告につ

いて21.3%、求人については13.1%が関心を持っており、関心は低めとなっている。

図8 テレビ番組の内容における関心

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ホームページの利用と内容への関心 ホームページ閲覧についても同様に尋ねている。

1週間のうち0日、つまり利用していない人々が68.9%にものぼり、約7割の人々はホー

ムページを閲覧していない。そして週に1日ホームページを閲覧するという回答は7.3

%、2日は3.5%、3日は4.2%、4日は2.5%、5日は3.7%、6日は1.5%、7日は8.5

%であり、1日以上の利用を全て合わせると31.1%となる。3割の人々が、ホームペー

ジを閲覧している結果となった。

ホームページへの関心については、利用している人にも利用していない人に対しても、

「あなたは、様々なホームページに対して、どの程度関心を持っていますか。関心の強

さをお答えください。(ホームページをご覧になっていない方も、もしご覧になるとすれ

ばと想定して、関心の強さをお答えください。)」と尋ね、ニュース、レジャーや娯楽に

ついての情報、健康の維持・増進についての情報、医療・病院についての情報、介護・

福祉についての情報、映画・音楽、スポーツ、公共情報・行政情報、芸術・文化、オン

ラインショッピング、ファッション・美容、個人のホームページ、育児についての情報、

の13項目について測定している(図10)。回答の選択肢は、1.「関心は非常に強い」、2.

「関心は強い」、3.「どちらともいえない」、4.「関心は弱い」、5.「関心は非常に弱い」、

の5件法である。まず、ニュースについて、「関心は非常に強い」が17.0%、「関心は強

い」が39.1%であり、合わせて56.1%が関心を持っている。同様に、「関心は非常に強い」

と「関心は強い」を合わせて、レジャーや娯楽についての情報について50.4%、健康の

維持・増進についての情報について45.6%、医療・病院についての情報について43.3%、

介護・福祉についての情報について39.6%、映画・音楽について38.1%、スポーツにつ

図9 新聞の記事における関心

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 35

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いて37.4%、公共情報・行政情報について35.4%が関心を持っている。関心が弱いもの

として、芸術・文化について27.7%、オンラインショッピングについて20.9%、ファッ

ション・美容について20.9%、個人のホームページについて16.0%、育児についての情

報について15.9%が関心を持っている。これらの項目では「関心は非常に弱い」という

回答比率が30%程度にもなる。

まとめ テレビ、新聞、ホームページの三つのメディアにおいて、内容に対する関心の

強さを測定しているが、メディアによって内容と区分が若干異なるため、関心について

の完全な比較はここでは行わない。しかし、テレビ、新聞、ホームページいずれのメディ

アにおいても、ニュースに関連するものに対する関心が強い。「関心は非常に強い」と

「関心は強い」をあわせて見てみると、ニュースに対する関心においては、テレビで87.5

%、新聞で64.7%、ホームページで56.1%が関心を持っている。また、スポーツについ

ても関心が強めであり、テレビで55.8%、新聞で51.7%、ホームページで37.4%が関心

を持っている。そして、いずれのメディアにおいても、芸術・文化については関心が弱

めとなっており、テレビで32.1%、新聞で27.8%、ホームページで27.7%が関心を持っ

ている。

図10 ホームページの内容における関心

36

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2.3 余暇におけるメディア利用

JIS調査では、様々な余暇活動について尋ねており、「あなたの余暇についてお伺い

します。余暇のときに、あなたはこの中にある過ごし方を、どの程度の頻度でしますか。」

と10項目について測定している。そのうち、「テレビを見る」、「新聞を読む」、「レコー

ド、CD、カセットを聴く」、「本を読む」、「ビデオを見る」、「コンピューターに取り組む」、

「インターネットまたは特別なオンラインサービスを利用する」、の7項目がメディア

利用に関するものであり、その結果が図11である。回答の選択肢は、1.「毎日」、2.「最

低一週1回」、3.「最低一カ月1回」、4.「たまにする」、5.「しない」となっている。

余暇の時に「テレビを見る」ことについて、「毎日」と「最低一週1回」を合わせる

と95.0%、「新聞を読む」については、83.9%であり、余暇において大多数がテレビや

新聞といったマスメディアに触れている。以下同様に「毎日」と「最低一週1回」を合

わせた形で見ていくと、「レコード、CD、カセットを聴く」について36.8%、「本を読

む」について33.2%、「ビデオを見る」について31.5%、「コンピューターに取り組む」

について28.5%、「インターネットまたは特別なオンラインサービスを利用する」につ

いて22.4%、となっている。なお、「しない」に注目すると、「コンピューターに取り組

む」については59.7%、「インターネットまたは特別なオンラインサービスを利用する」

について66.4%となっており、コンピューターやインターネットは、他のメディアに比

べるとまだまだ利用されていない。

図11 余暇におけるメディア利用

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 37

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2.3.1 余暇におけるコンピューター利用

先ほどの「コンピューターに取り組む」について、さらに詳細に記述する(図12)。

�1 全体では、毎日利用しているのは17.3%、最低一週1回利用しているのが11.2%、

最低一ヶ月に1回利用しているのが2.2%、たまにするのが9.6%であり、40.3%の

人が余暇でコンピューターを利用している。

�2 都市規模別にコンピューター利用を見ると、大都市ほど、利用頻度が高いことが

分かる。毎日利用しているのは、13大都市において22.5%、10万以上の市で20.5%、

10万以下の市で13.3%、町村で8.9%となっている。利用しないという回答は、13

大都市で50.2%、10万以上の市で54.0%、10万以下の市で66.5%、町村で75.4%と

なっている。

�3 男女別にコンピューター利用を見ると、男性の方が、若干利用している傾向が見

られる。利用しないという回答は、男性において30.7%、女性において34.6%となっ

ている。

�4 年齢別にコンピューター利用を見ると、余暇でコンピューターを毎日利用してい

る人は、20-39歳では25.9%、40-59歳では21.6%だが、60-89歳では4.1%のみと

なる。また、コンピューターに取り組むことを「しない」という回答から見ると、

20-39歳では36.7%、40-59歳では53.9%と上がり、60-89歳では88.3%と9割近

い人が利用していない。若い年齢層ほど余暇でコンピューターを利用しており、コ

ンピューター利用の年齢格差が存在する。

�5 学歴別にコンピューター利用を見ると、毎日利用している人は、大学卒で35.8%、

高校卒で11.5%、中学卒では1.5%のみになり、学歴が高いほど利用している傾向

がある。また、「しない」という回答について注目すると、大学卒では28.6%だけ

だが、高校卒では66.2%にもなり、中学卒では93.0%が利用していない。高学歴ほ

ど余暇でコンピューターを利用しており、コンピューター利用における学歴格差が

存在する。

�6 職業別にコンピューター利用を見ると、毎日利用している割合は、専門・管理職

で41.8%と高く、事務・販売職での利用はやや下がって26.6%、ブルーカラーで9.0

%、無職では7.2%である。専門・管理職において最も利用されている。

�7 収入別にコンピューター利用を見ると、毎日利用しているのは、1,000万以上に

おいて30.6%、650-1,000万未満において23.6%、350-650万未満において17.2%

であり、世帯年収が高いほど、余暇におけるコンピューターの利用が高いことが分

かる。特に、350万以下においては6.0%のみであり、急激に値が小さくなる。

以上より、余暇におけるコンピューター利用の頻度は、都市規模が大きく、年齢が若

く、学歴が高く、専門職や管理職で、世帯年収が高いほど高くなっている。特徴的なの

は、男女差が弱いことである。

38

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図12 余暇におけるコンピューターの利用

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 39

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2.3.2 余暇におけるインターネット利用

余暇において、「インターネットまたは特別なオンラインサービスを利用する」こと

についてさらに詳しく記述をする(図13)。

�1 全体で見ると、毎日利用しているのは12.6%、最低一週1回利用しているのが9.8

%、最低一ヶ月に1回利用しているのが3.0%、たまにするのが8.2%であり、33.6

%の人が余暇でインターネットやオンラインサービスを利用している。先ほどのコ

ンピューターの利用(40.3%)に比べるとやや利用頻度が低くなる。

�2 都市規模別にインターネット利用を見ると、大都市ほど、利用している傾向が見

られる。

�3 男女別にインターネット利用を見ると、毎日利用しているのは、男性で22.8%、

女性で12.3%である。また、しないという回答は、男性の48.0%に対して、女性で

は70.6%にもなり、大きな開きがある。先ほどのコンピューター利用(図12の�3)では男女差はあまり見られなかったが、余暇におけるインターネットの利用におい

ては男性の方が利用している。

�4 年齢別にインターネット利用を見ると、年齢が若いほど、利用している傾向が見

られる。60-89歳では93.3%もの人が利用していないと回答している。

�5 学歴別にインターネット利用を見ると、毎日利用している人の割合は、大学卒で

25.7%、高校卒で8.7%、中学卒で1.5%である。また、利用しない人の割合は、大

学卒で37.8%と低めだが、高校卒では73.1%にあがり、中学卒では95.4%にもなり、

先ほどの、余暇におけるコンピューター利用の頻度(図12の�5)と対応して、学歴によって大きな違いがある。中学卒のほとんどが余暇においてインターネットを利

用していない。

�6 職業別にインターネット利用を見ると、毎日利用しているのは、専門・管理職で

32.5%と利用頻度が高く、事務・販売職が17.4%と続き、ブルーカラーでは7.5%、

無職では4.8%となっている。

�7 収入別にインターネット利用を見ると、世帯年収が高いほど、利用頻度が高いこ

とが分かる。

以上より、余暇におけるインターネットやオンラインサービスの利用の頻度は、都市

規模が大きく、男性であり、年齢が若く、学歴が高く、専門職や管理職で、世帯年収が

高いほど高くなっている。

2.4 メールの利用

2.4.1 メールの利用形態

電子メールは、社会関係資本の構築とサポートに対して、ますます重要な影響を及ぼ

してくると考えられる。JIS調査では、メールを、携帯電話・PHSで利用しているか、

パソコンで利用しているか、両方で利用しているか、を測定している。このメールの利

40

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図13 余暇におけるインターネット・オンラインサービスの利用

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 41

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用形態について調べたのが、図14である。

�1 全体では、両方でメールを利用している層が約1割(12.8%)、パソコンだけでメー

ルを利用している層が約1割(10.9%)、携帯電話だけでメールを利用している層が

約2割(19.0%)である。合わせて約4割(42.6%)の人が、何らかの形でメールを利

用しており、約6割(57.4%)がメールを利用していない。

�2 メール利用形態を都市規模別に見ると、大都市ほど両方で利用しているという回

答の割合が高く、よりオプションを有しているといえる。両方で利用しているとい

う回答に注目すると、13大都市で23.5%、10万以上の市で11.8%、10万以下の市で

8.5%、町村で7.1%、となっている。利用していない割合は、13大都市で42.9%、

10万以上の市で52.8%、10万以下の市で67.6%、町村で72.5%、となっている。

�3 メール利用形態を男女別に見ると、両方で利用しているという回答の割合は、女

性11.3%に比べて、男性の方が14.3%とがわずかに高い。むしろ大きな違いは、パ

ソコンのメールを利用している割合においてであり、女性での6.1%に対して、男

性では15.9%と高くなる。また、メールを利用しない割合においても大きな違いが

見られ、男性では49.4%が利用していないが、女性では64.9%もの人が利用してい

ない。

�4 メール利用形態を年齢ごとに見ると、年齢が若いほど両方で利用している。両方

で利用しているものの割合は、20-39歳で25.9%、40-59歳で12.5%だが、60-89

歳では0.9%と非常に低くなる。特に、メールを利用していない人の割合は、60-89

歳では92.3%にもなる。年齢によって、メール利用が大きく異なる。

�5 メール利用形態を学歴ごとに見ると、学歴が高いほど、両方で利用している。メー

ルを利用していない割合は、中学卒では90.0%にもなる。メール利用は、学歴によっ

ても大きく異なる。

�6 メール利用形態を職業ごとに見ると、両方で利用している割合は、専門・管理職

において最も高い(32.5%)。事務・販売で18.9%、ブルーカラーで8.0%、無職3.9

%と続く。利用していない割合は、専門・管理で29.3%、事務・販売で42.1%、ブ

ルー62.4%、無職で79.1%、となっている。

�7 メール利用形態を収入ごとに見ると、世帯年収が高いほど、両方で利用している

割合が高い。ただし、350万未満での利用が大きく落ち込んでいるのが大きな特徴

である。また、携帯電話・PHSでのメール利用における差は比較的小さい。両方

でのメール利用、パソコンでのメール利用において、大きな差が見られる。

以上より、メールの利用において、性別、年齢、学歴、職業において大きな違いが見

られた。特に、世帯年収は、350万未満において開きが見られた。社会的ネットワーク

や、社会関係資本は、社会階層等の社会構造上の位置と関連が見られることが従来から

指摘されている。ここでは、電子メールという、サイバースペースにおける社会関係資

本の構築の仕方において格差が見いだされた。

42

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図14 メールの利用形態

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 43

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2.4.2 利用していない人々のメール利用意向

なお、メールを現在利用していない人びとに対する調査項目も重要である。メールの

非利用層に対しては、今後使いたいかどうかを尋ねている。この結果が、図15である。

�1 全体で見ると、メールを利用していない人のうち、24.9%が「近いうちに利用し

てみたい」と回答しており、潜在的な利用層として想定できる。

�2 メール利用意向を都市規模別に見ると、「近いうちに利用してみたい」という回

答については、「その他の市」と「町村」において回答の割合がやや高めではある

が、あまり大きな違いは見られない。

�3 メール利用意向を男女別に見ると、男性は30.3%が利用してみたいと回答してい

るが、女性は21.0%のみにとどまり、男女差が見られる。

�4 メール利用意向を年齢ごとに見ると、利用してみたいという回答は、20-39歳で

48.3%、40-59歳で35.3%だが、60-89歳では12.3%と大幅に下がり、年齢が若い

ほど、メールの将来的な利用意向は強い。

�5 メール利用意向を学歴ごとに見ると、利用してみたいという回答は、大学卒で46.8

%と半数近いが、高校卒では26.7%と下がり、中学卒ではさらに11.2%まで落ち込

む。学歴が高いほど、メールの利用意向は強い傾向がある。

�6 今後のメール利用意向について職業ごとに見ると、事務・販売職において、利用

してみたいという回答が最も多い(42.9%)。

�7 今後のメール利用意向を世帯収入ごとに見ると、利用してみたいという回答は、

650-1,000万未満で29.5%、350-650万未満で37.8%、350万未満で37.2%となって

いる。他方、1,000万以上では13.0%のみであり、意外な結果に思える。ただし、

全体サンプルにおいては、世帯年収1,000万以上は、59.5%が何らかの形でメール

を利用しており(図14の�7)、他の世帯年収の階層に比べて利用の割合は最も高い。利用意向を持つものは比較的容易に利用していると予想されるので、メールを利用

していないこれら40.5%の人においてこのような結果になったのだろう。

以上より、メールの非利用者における、今後の利用意向については、年齢と学歴にお

いて大きな違いが見いだされた。

2.4.3 メールの利用内容と頻度

JIS調査では、メールの利用内容として、

�友人・知人との個人的なコミュニケーション�仕事や業務上のコミュニケーション�家族との個人的なコミュニケーション�生活・趣味に関する情報収集

について尋ねている。回答選択肢は、1.「ほぼ毎日」、2.「週に3日以上」、3.「週に1

日程度」、4.「月に1日程度」、5.「使わない」の5件法である(図16)。

44

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図15 利用していない人々の今後のメール利用意向

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 45

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「友人・知人との個人的なコミュニケーション」は、今回の項目では最も利用頻度が

高く、「ほぼ毎日」31.0%、「週に3日以上」24.7%であり、合わせて55.7%が頻繁に利

用している。「使わない」のは10.2%に過ぎない。「仕事や業務上のコミュニケーション」

は、「ほぼ毎日」27.0%であり、頻繁になされているが、「使わない」のは46.6%と半数

近くがしていない。「家族との個人的なコミュニケーション」は、「ほぼ毎日」14.2%、

「週に3日以上」16.4%であり、合わせて30.6%が頻繁にしている。ただし、45.3%が

「使わない」。「生活・趣味に関する情報収集」は、「ほぼ毎日」13.9%、「週に3日以上」

13.7%であり、合わせて27.6%が頻繁にしているが、35.2%が「使わない」。

2.4.4 メール利用による変化

メールの普及は、社会的結合や社会解体という文脈ではどのような効果を持つのだろ

うか。

JIS 調査では、メールを利用することでどのような変化を感じているのか、

�「電話の回数や時間が減少した」�「仕事や学業の能率があがった」�「友人・知人の数が増えた」�「家族とのコミュニケーションが深まった」�「友人・知人と実際に会う回数が減った」

について、対象者による主観的な回答を尋ねている。回答選択肢は、1.「あてはまる」、

2.「ややあてはまる」、3.「どちらともいえない」、4.「あまりあてはまらない」、5.「全

くあてはまらない」の5件法である。その単純集計をグラフにしたのが図17である。

「電話の回数や時間が減少した」において、26.2%があてはまると回答している。他

図16 メールの利用内容と頻度

46

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方で、「友人・知人の数が増えた」については7.8%のみがあてはまると回答し、22.6%

が「全くあてはまらない」と回答しており、主観的には友人・知人の数は増えていない

様子がうかがえる。「家族とのコミュニケーションが深まった」についても5.2%のみが

あてはまると回答し、32.4%が「全くあてはまらない」と回答しており、家族とのコミュ

ニケーションが深まっているとは認識されていない。「友人・知人と実際に会う回数が

減った」については、1.4%のみがあてはまると回答し、32.5%が「全くあてはまらな

い」と回答しており、友人・知人と実際に会う回数が減少したとは認識されていない。

「仕事や学業の能率があがった」についても、「全くあてはまらない」という回答の比

率が29.5%と最も大きい。このように、これらの項目では「あてはまる」という回答比

率が低く、「全くあてはまらない」という回答比率が大きい。

2.4.5 電話の回数や時間の変化

以上の「電話の回数や時間が減少した」かどうかについての結果をより詳しく見たの

が図18である。

�2 都市規模別に電話回数・時間の減少について見ると、「あてはまる」と「ややあ

てはまる」を合わせると、町村で46.3%が該当し、都市規模が大きくなるに従って

あてはまる割合が高くなり、13大都市で66.9%が該当する。

�3 男女ごとに電話回数・時間の減少を見ると、男性では「あてはまる」23.1%、「や

やあてはまる」29.1%、あわせて52.2%であるのに対し、女性では「あてはまる」

30.2%、「ややあてはまる」34.1%、あわせて64.3%であり、女性の方が電話の回

数や時間が減少したと回答している。

図17 メール利用によって感じられるコミュニケーションの変化

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 47

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図18 電話の回数や時間が減少した

48

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�4 年齢ごとに電話回数・時間減少を見ると、20-39歳では「あてはまる」29.1%、「や

やあてはまる」33.3%であり、合わせて62.4%、40-59歳では合わせて51.6%、60-

89歳で42.9%であり、年齢が若いほど電話の回数や時間が減少したと回答している。

�5 学歴ごとに電話回数・時間減少を見ると、大学卒では、「あてはまる」27.6%、「や

やあてはまる」34.6%、あわせて62.2%であり、高校卒では合わせて53.7%、中学

卒で41.2%であり、学歴が高いほど電話の回数や時間が減少したと回答している。

�6 職業ごとに電話回数・時間減少を見ると、無職においてあてはまるという回答比

率が高い(28.6%)が、無職は利用率が低く、この結果は慎重に解釈する必要がある。

�7 世帯収入ごとに電話回数・時間減少を見ると、世帯年収が高いほど「あてはまる」

という回答の比率が大きくなる傾向が見られる。ただし「ややあてはまる」という

回答を含めると、650-1,000万未満においてあてはまる回答比率が最も高い。

2.4.6 仕事や学業の能率の変化

以上の「仕事や学業の能率があがった」かどうかについてより詳しく見たのが図19で

ある。

�2 都市規模別で能率向上について見ると、「あてはまる」と「ややあてはまる」を

合わせると、町村で32.1%が該当し、13大都市では39.8%が該当する。

�3 男女別に能率向上について見ると、男性では「あてはまる」19.4%、「ややあて

はまる」22.9%、あわせて42.3%であるのに対し、女性では「あてはまる」8.8%、

「ややあてはまる」16.4%、あわせて25.2%であり、男性の方が仕事や学業の能率

があがったと実感している。ただし、最も回答が多かったのは「全くあてはまらな

い」であり、男性の25.6%、女性の35.2%が該当する。

�4 年齢別に能率向上を見ると、20-39歳では「あてはまる」13.2%、40-59歳では16.7

%、60-89歳で21.7%であり、高年齢ほど、「あてはまる」という回答比率が大きい。

�5 学歴別に能率向上について見ると、大学卒では、「あてはまる」20.1%、「ややあ

てはまる」24.5%、合わせて44.6%であり、高校卒では合わせて25.0%、中学卒で

21.4%であり、高学歴ほど仕事や学業の能率があがったと回答している。

�6 職業別に能率向上について見ると、専門・管理職において仕事の能率が上がった

と回答する比率が高い(「あてはまる」25.3%、「ややあてはまる」30.1%、合わせ

て55.4%)。これに事務・販売職、ブルーカラーが続く。

�7 世帯収入別に能率向上を見ると、1,000万以上では、「あてはまる」27.9%、「や

やあてはまる」26.2%、合わせて54.1%と最も高い。次に650-1,000万未満が合わ

せて39.4%、350万未満が34.1%、350-650万未満が29.6%となっている。350-650

万未満においては、「全くあてはまらない」という回答比率も42.0%と最も大きく、

仕事や学業の能率向上に対してあてはまらない。

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 49

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図19 仕事や学業の能率があがった

50

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3.意識における格差

3.1 関心

3.1.1 情報通信技術への関心

次に、より意識上にあがるものとして、情報化に関連する様々な項目に対する関心を

把握するため、「情報技術の利用が進む中で、あなたは現在、この中のようなことに関

心をお持ちですか」と尋ね、インターネット、衛星放送(テレビ)、電子メール、ホーム

ページ、ケーブル・テレビ、テレビ電話、オンラインショッピング、インターネット無

線接続、光ファイバー網、オンデマンド配信、ブロードバンド、電子政府、といった、

情報技術に関連する用語12項目について関心の強さを測定した。関心は、情報行動にお

ける能動性を表し、また潜在的な利用を示唆する重要な指標といえる。回答の選択肢は、

1.「関心は非常に強い」、2.「関心は強い」、3.「どちらともいえない」、4.「関心は弱い」、

5.「関心は非常に弱い」、の5件法となっている。結果を見ると、やや専門的・技術的

色合いが強い項目に対しては「知らない」という無回答が多かったため、ここでは「知

らない」を含めて調査結果をグラフにした(図20)。

まず、「関心は非常に強い」と「関心は強い」を合わせると、インターネットについ

て48.8%(20.5%+28.3%)の人々が関心を持っている。以下同様に、衛星放送(テレビ)

では42.6%(11.5%+31.1%)、電子メールでは36.6%(13.0%+23.6%)、ホームページ

では33.1%(10.3%+22.8%)である。これらの項目では、「関心は強い」という回答が

図20 情報通信技術に対する関心

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 51

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最も多数を占めており、人々に関心が比較的持たれている。また、「知らない」という

回答も少ない。特に、衛星テレビについては「知らない」という回答は1.2%のみであ

り、ほとんど知らない人はいない。ケーブル・テレビについては27.7%(6.6%+21.1%)

が関心を持っているが、「関心が弱い」23.2%と「関心は非常に弱い」19.5%を合わせる

と42.7%になり、関心が弱いという割合の方が大きくなる。同様に、テレビ電話につい

て関心を持っているのは21.0%(4.4%+16.6%)だけになり、50.1%(24.7%+25.4%)

と約5割が関心は弱い。オンラインショッピングについても関心を持っているのは18.1

%(3.8%+14.3%)だけであり、47.7%(23.7%+24.0%)と約5割が関心は弱い。

それ以外の項目はやや技術的な用語でもあり、インターネット無線接続について20.8

%(6.5%+14.3%)、光ファイバー網で21.0%(8.9%+12.1%)、オンデマンド配信で

17.2%(4.5%+12.7%)、ブロードバンドで13.1%(6.1%+7.0%)、電子政府について

は8.0%(2.2%+5.8%)が関心を持っているが、やはり「関心が弱い」と「関心は非常

に弱い」の割合の方が大きくなっている。特に、これらの5項目においては、「知らな

い」という回答比率が高く、インターネット無線接続について22.4%、光ファイバー網

で24.1%、オンデマンド配信で29.0%、ブロードバンドで33.4%、電子政府については

32.6%と、2―3割もの人々が「知らない」と回答している。

以上より、インターネット、衛星放送(テレビ)、電子メール、ホームページについ

ては人々の関心は強いが、それ以外の項目については知らなかったり、関心が弱い。

3.1.2 インターネットへの関心

以上の12項目のうち、関心が最も強く持たれている「インターネット」について、回

答を属性ごとに詳しく見る(図21)。

�1 全体で見ると、まず、「関心は非常に強い」人が20.5%、「関心は強い」人が28.3

%であり、合わせて48.8%の人が、インターネットについて関心を持っている。

�2 都市規模別に関心の強さを見ると、大都市ほど関心が強い傾向が見られる。

�3 男女別に関心を見ると、男性では、「関心は非常に強い」は25.0%、「関心は強い」

は31.1%であり、合わせて56.1%が関心が強い。女性では、「関心は非常に強い」

は16.2%、「関心は強い」は25.6%であり、合わせて41.8%が関心が強く、男性に

比べてやや低い。

�4 年齢別に関心を見ると、年齢が若いほど、関心が強い。特に、「関心は非常に弱

い」という回答は、20-39歳で4.0%、40-59歳で12.3%だが、60-89歳においては、

36.1%にものぼっている。「関心は弱い」の17.9%と合わせると、60-89歳では54.0

%もの割合の人の関心が弱く、また、「知らない」という回答も多い(18.8%)。先

ほどの知識におけるのと同様、関心においても高齢者層において年齢格差が大きい。

�5 学歴別に関心を見ると、高学歴ほど、関心が強いことが分かる。特に、「関心は

非常に強い」と「関心は強い」を合わせた関心がある割合は、大学卒では75.3%(33.9

52

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図21 インターネットに対する関心

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 53

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%+41.4%)と非常に大きな値であるが、高校卒で46.1%(19.1+27.0)と落ち込み、

中学卒では15.0%(3.4%+11.6%)しか関心がない。また、「知らない」という回答

について見ると、大学卒0.3%、高校卒3.6%、中学卒20.6%、と大きな違いがある。

�6 職業別に関心を見ると、専門・管理職において関心が強く(39.3%)、事務・販売

が続く(26.3%)。無職においては「関心は非常に強い」は11.3%だけであり、「関

心は弱い」が14.5%、「関心は非常に弱い」は30.9%、知らないという回答が16.7%

であり、インターネットに対する関心は弱い。専門・管理職、事務・販売職では半

分以上が関心を持っているが、無職では半分以上が関心を持っていない。

�7 世帯年収ごとに関心を見ると、世帯収入が高いほど、関心が強い傾向が見て取れ

る。インターネットについての知識におけるのと同様、350万未満において関心が

強い割合が低くなり、さらに、「関心が非常に弱い」という回答が29.3%もあり、「知

らない」という回答が14.7%、半数以上が関心を持っておらず、他の層に比べて特

に関心が弱くなっている。

以上より、インターネットについての関心は、全体の約5割の人が持っている。ただ

し、大都市に居住し、男性であり、若くて、高学歴で、専門職や管理職であり、世帯年

収が高いほど、インターネットについての関心が強い傾向がある。「関心は非常に弱い」

という回答傾向に着目すると、60-89歳で、中学卒、ブルーカラー、世帯年収が350万

未満の層において、インターネットについての関心において差が見られる。関心という

意識における側面においても、階層格差が顕著であるといえる。

3.2 知識

次に、やや具体的に、知識について見る。インターネットについての知識として、こ

こでは「あなたは、インターネットやパソコン通信をご存じですか」と尋ねている(図22)。

回答の選択肢は、1.「何ができるのかを知っている」、2.「何ができるのかは知らないが、

言葉は知っている」、3.「まったく知らない」、の3件法となっている。この項目は、情

報技術についてあまり触れていない層でも回答でき、無回答は少ない。ここでは、社会

的属性別に集計をとり、インターネットを知っているかどうかについて詳しく見ていく。

�1 全体では、まず、62.5%が「何ができるのかを知っている」と回答しており、「言

葉は知っている」28.5%を合わせると、実に91.0%もの人がインターネットやパソ

コン通信を何らかの形で知っていることになる。これは、近年、マスメディアでイ

ンターネットが頻繁に取り上げられていることによるものだろう。

�2 都市規模別に知識を見ると、大都市ほど知っている傾向が読み取れ、13大都市で

は70.3%の人が知っているのに対し、町村では50.5%の人が知っている。

�3 男女別に知識を見ると、性別でも差が見られ、男性は69.1%が知っているが、女

性は56.3%が知っている。ただし、「言葉は知っている」まで含めると、男性92.6

%、女性89.5%とその差は縮まる。

54

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図22 インターネットやパソコン通信をご存じですか

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 55

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�4 年齢別に知識を見ると、「何ができるのかを知っている」という回答は、20-39

歳で82.8%、40-59歳で71.5%、60-89歳で32.6%であり、年齢が若いほどインター

ネットを知っている傾向がある。特に、「まったく知らない」人は、20-39歳で1.3

%、40-59歳で2.4%とあまり違いがないが、60-89歳では「まったく知らない」人

が24.1%にもなる。高齢者においてインターネットを全く知らない人が多く、年齢

における格差が見られる。

�5 学歴別に知識を見ると、「何ができるのかを知っている」という回答は、大学卒

で86.3%、高校卒で60.8%、中学卒で30.0%であり、高学歴であるほど、インター

ネットを知っている傾向がある。特に、「まったく知らない」という回答は、大学

卒で2.2%、高校卒で4.4%であるのに対し、中学卒では28.1%にものぼっており、

学歴における格差が見られる。

�6 職業別に知識を見ると、「何ができるのかを知っている」と答える人が専門・管理

職で89.2%、事務・販売職で78.3%と、これらの職業ではインターネットを知って

いる割合が高い。そしてブルーカラーで58.7%、無職では40.9%と知っている割合

は下がる。特に、無職では「まったく知らない」という回答が19.9%と際立って高い。

�7 世帯年収別に知識を見ると、1,000万以上で86.1%、650-1,000万未満で73.2%、

350-650万未満で66.0%、350万未満で42.8%、と世帯年収が下がるにつれてイン

ターネットを知っている人の割合が小さくなる。特に、350万未満では、「まったく

知らない」という回答の割合が20.9%にものぼり、他と比較して、知らない割合が

非常に大きくなっている。

以上より、「インターネットやパソコン通信」は、既に全体の約9割の人が知ってい

る言葉であった。ただし、インターネットについての知識として「何ができるのかを知っ

ている」のは62.5%であり、実質的に、具体的な認識は全体の6割にとどまるといえる。

また、大都市に居住し、男性であり、若くて、高学歴で、専門職や管理職であり、世帯

年収が高いほど、インターネットやパソコン通信という言葉を具体的に知っている傾向

が見られた。特に、「まったく知らない」という回答傾向に着目すると60-89歳で、中

学卒、無職、世帯年収が350万未満の層において、情報技術に関する知識において階層

格差が見られることが分かった。

3.3 イメージ : 情報化社会の光と影

情報化の社会的影響について研究する際に、情報技術の影響により今後どのような変

化が社会に生じると思うか、個々人が社会に対して抱く様々なイメージを把握しておく

ことも重要である。このイメージは、人によって詳細であったり正確であったり、漠然

としていたり不正確であったりするだろうが、情報化について専門的な知識や強い関心

がなくとも、漠然としたイメージを回答出来る。このため、大多数の人々が何らかの回

答という形で、調査に参加することができるという点でも重要である。

56

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情報化社会イメージとしては、「情報技術の利用が進む今後の社会において、以下の

文章は、あなたのお気持ちにどの程度あてはまりますか。」と尋ね、�1期待、�2不安と懸念、�3個人情報とプライバシー、�4人間関係への影響、�5社会の変化とグローバル化、等のテーマについて測定している。回答は、1.「あてはまる」、2.「ややあてはまる」、3.

「どちらともいえない」、4.「あまりあてはまらない」、5.「全くあてはまらない」の5

件法で測定している(図23)。

�1 情報化社会への期待 情報化社会における期待を表す側面については、

�「より多くの情報を入手できるようになると思う」�「ほしい情報にアクセスができるようになると思う」�「生活が便利になると思う」�「仕事の効率があがり、楽になると思う」�「自分の生きる世界が広がり、新しい可能性が広がると思う」�「だれでも考えを発言できるようになると思う」

という項目について尋ねている。これらは、情報化社会の光の部分に対する主観的なイ

メージである。「より多くの情報を入手できるようになると思う」に対しては、「あては

まる」と「ややあてはまる」を合わせると88.6%が該当しており、情報収集という能動

的な行為における量的側面での期待が抱かれている。「ほしい情報にアクセスができる

ようになると思う」についても86.5%(54.3%+32.2%)が該当しており、情報収集にお

ける質的側面についても期待されている。「生活が便利になると思う」については74.4

%(37.9%+36.5%)が該当し、受動的な意味においても、一般生活における情報技術の

恩恵が期待されている。また、一般生活以外についても、「仕事の効率があがり、楽に

なると思う」について65.2%(30.9%+34.3%)が該当し、情報技術の浸透が仕事の効率

や能率を高め、仕事における負担を下げるものと期待されている。以上より、情報技術

の進展により、質量両側面において情報収集がしやすくなり、一般生活は便利になり、

仕事は効率があがるという形で、情報技術の明るい側面への幅広い期待が確認された。

一方、「自分の生きる世界が広がり、新しい可能性が広がると思う」については「あて

はまる」16.3%、「ややあてはまる」34.6%、合わせて50.9%が肯定的なイメージを抱い

ているが、構成比率が最も大きいのは36.0%を占める「どちらともいえない」である。

「だれでも考えを発言できるようになると思う」についても、「あてはまる」16.2%、「や

やあてはまる」29.1%であり、合わせて45.3%が肯定的なイメージを抱いているが、構

成比率が最も大きいのは41.1%を占める「どちらともいえない」である。抽象的・潜在

的な側面においても情報技術による底上げ効果への楽観的期待が見られるものの、技術

的な側面以外に、個々人の能力や能動的な行為も求められるこれらの項目では慎重な判

断が増えている。

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 57

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図23 情報化社会イメージ

58

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�2 情報化社会への不安と懸念 情報化社会における不安と懸念を表す側面については、

�「情報がはんらんすると思う」�「コンピュータやインターネットが使いこなせないと、何かと不利な世の中になると思う」

�「反社会的な行為や異常犯罪が増加することを心配している」�「コンピュータの故障で生活に支障が及ぶことを心配している」

を尋ねている。これらは、情報化社会の影の部分に対する主観的イメージである。イン

ターネットでの情報は正確なものだけではない。不要情報も多く、必要情報を検索する

には時間と手間がかかり判断力も求められる。また、憎悪を持つグループが怒りのメッ

セージと正当性を広め、同志を集める手段として、偽の歴史や思想を流布させて憎悪を

増長させる情報操作をするヘイト・サイトも存在する。このような中では、単にコン

ピューター・メール・ホームページを利用できるというだけでは氾濫する情報の波を乗

り越えていけない。収集した情報の信頼性の確認や高度なレベルでの情報操作能力・情

報リテラシーが求められる。「情報がはんらんすると思う」については「あてはまる」と

「ややあてはまる」を合わせると77.3%(40.7%+36.6%)が該当し、個々人にとって重

要な情報を取捨選択する必要性が広く認識されている。「コンピュータやインターネッ

トが使いこなせないと、何かと不利な世の中になると思う」については70.1%(37.8%

+32.3%)が該当し、情報技術に関連する格差について広く意識されている。また、コ

ンピュータ・ウイルス、セキュリティ問題に関連して不正アクセスとクラッキング、情

報改竄、ネットストーカー、電子掲示板(BBS)のボード荒らし、匿名による告発や不

特定多数への犯罪依頼、インターネットでのマルチ商法やインターネットショッピング

での売買トラブル、サイバーテロの可能性と暗号化技術による違法情報やスパイ活動、

薬物や麻薬取引、ネットワークを利用した事件や犯罪等がマスメディアで取り上げられ、

表面化している。「反社会的な行為や異常犯罪が増加することを心配している」につい

ては75.3%(36.1%+39.2%)が該当し、情報技術に関連する影の部分について多くの人

が懸念や不安を表明している。一方、コンピューターに依存した現代社会の問題点につ

いては2000年問題の際に広く取り上げられた。「コンピュータの故障で生活に支障が及

ぶことを心配している」については59.5%(22.1%+37.4%)が該当しており、上述の項

目に比較すると心配している比率はやや低くなっている。

�3 情報化社会での個人情報とプライバシー コンピューターに入力されたデジタルな

情報には、劣化をすることがなく、完全な複製が簡単であり、インターネットを通じて

どこへでも瞬時に伝えられる、等の特徴がある。この優れた利点は、場合によってやっ

かいな問題を引き起こす。たとえば、氏名、住所、電話番号、口座番号等の個人情報の

流出や有料で売買される事件、個人情報の盗用やインターネット上でのなりすまし行為

等が起こっている。米国では1970年代から個人情報の保護法制が整備され、国際的には

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 59

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1980年に OECDから「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラ

インに関する OECD理事会勧告」が発表され、世界各国の個人情報保護制度に影響を

与えた。日本では1989年から「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保

護に関する法律」が施行され、多くの地方自治体で「個人情報保護条例」が制定されて

いる。他方で、1999年には「住民基本台帳法」の一部改正がなされ、行政事務の効率化

のためにすべての住民票が通し番号(住民票コード)でデータ化された。

情報化社会における個人情報とプライバシーに関連する項目については、

�「自分の個人情報は自分で管理したい」�「自分の個人情報が悪用されることが不安だ」�「企業がどのように顧客の個人情報を扱っているかが気になる」

について尋ねている。個人情報保護法、住基ネットなどの話題もあり、「自分の個人情報

は自分で管理したい」について83.1%(53.6%+29.5%)、「自分の個人情報が悪用され

ることが不安だ」について82.8%(44.5%+38.3%)、「企業がどのように顧客の個人情

報を扱っているかが気になる」について75.9%(44.0%+31.9%)が該当しており、個人

情報の流出やプライバシー保護についてのいずれの項目においても、人々の関心は高い。

�4 情報化社会における人間関係への影響 携帯電話等を使用した出会い系サイト事件、

メル友殺人という言葉がマスメディアで取り上げられている。情報化社会における人間

関係への影響に関連する項目については、

�「見えない相手とのコミュニケーションによる人間関係のトラブルが増加することを心配している」

�「人との交流範囲が広がると思う」�「対人関係が疎遠になり、人々は自分の世界に閉じこもって身勝手になると思う」�「人とのふれあいが減る」

について尋ねている。まず、「見えない相手とのコミュニケーションによる人間関係の

トラブルが増加することを心配している」が77.2%(36.6%+40.6%)と高い。また、「人

との交流範囲が広がると思う」については58.2%(25.1%+33.1%)が該当する一方、「対

人関係が疎遠になり、人々は自分の世界に閉じこもって身勝手になると思う」が56.7%

(24.0%+32.7%)、「人とのふれあいが減る」について55.0%(26.8%+28.2%)が該当

し、便利さの中に潜む危険が意識されている。

�5 情報化社会での社会の変化とグローバル化 情報技術の進展は世界を巻き込んで、

グローバル倫理やグローバルカルチャーにも影響を及ぼしている。インターネットは現

時点では英語が中心的役割を果たしており、世界各地の英語の合成としての「インター

ネット英語」が非公式な共通語となっている。また、インターネットにより、個人によ

る情報発信の機会が増えており、著作権を侵害する、あるいは侵害される可能性も増大

している。Napsterや、さらには Gnutellaの登場で、知的所有権や著作権の問題等も表

60

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面化した。情報化社会での、社会の変化とグローバル化に関連する項目については、

�「今より英語の重要性が増すと思う」�「善悪の判断基準や社会の常識が変わると思う」�「忙しくなり、休みや暇がなくなると思う」

について尋ねている。「今より英語の重要性が増すと思う」については64.7%(31.3%+

33.4%)と多くの人が該当している。「善悪の判断基準や社会の常識が変わると思う」に

ついては44.9%(16.3%+28.6%)とおよそ半数の人が該当しているが、「どちらともい

えない」という意見も37.7%と大きく占めている。「忙しくなり、休みや暇がなくなる

と思う」については、19.8%(6.4%+13.4%)が該当しているが、「どちらともいえない」

が44.7%、「あまりあてはまらない」が25.5%、「全くあてはまらない」が9.9%を占めて

おり、以上の項目の中で唯一、あてはまらないという回答比率の方が高かった。

4.情報化社会における社会階層

4.1 情報化社会における階層帰属意識

社会において、自分に対して社会的な位置付けをするのが階層帰属意識である。ここ

では、情報化社会における帰属意識として情報階層帰属意識を尋ねた結果が、図24であ

る。

(1a)(1b)全体 階層帰属意識に比べ、情報階層帰属意識は「中の上」「中の下」の回答

割合が低くなっており、「下の上」「下の下」の回答割合が高くなっている。結果として、

「下の上」と「下の下」を合わせた「下」の比率は、階層帰属意識では20.5%だが、情報

階層帰属意識では46.0%にもなっている。人々の意識の上では、従来の階層に比べて、

新たな情報における階層における自己の帰属は低めに位置づけられている。

(2a)(2b)年齢で異なる情報階層帰属意識 年齢別に見ると、階層帰属意識では、年齢

による分布の違いは小さい。他方で、情報階層帰属意識では、「中の上」と回答する割

合は、20-39歳で22.2%、40-59歳で12.1%、60-89歳で9.7%と年齢が高くなるにつれ

て小さくなる。また、「下の下」と回答する割合は、20-39歳で13.2%、40-59歳で26.5

%、60-89歳で38.5%と年齢が高くなるにつれて大きな違いが見られる。このように、

階層帰属意識に比べて、情報階層帰属意識の方が年齢による帰属の違いが明白に表れて

いる。

(3a)(3b)学歴で異なる情報階層帰属意識 学歴別にも情報階層帰属意識において大き

な違いが見られる。階層帰属意識では、「上」と「中の上」を合わせてみると、大学卒38.4

%、高校卒28.7%、中学卒20.6%、となる。いずれにおいても、「中の下」が最も多い(大

学卒48.1%、高校卒48.8%、中学卒51.9%)。情報階層帰属意識では、「上」と「中の上」

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 61

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図24 階層帰属意識と情報階層帰属意識

62

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を合わせてみると、大学卒25.3%、高校卒11.6%、中学卒6.7%、となる。階層帰属意

識では、「下の下」と回答する割合は、大学卒で2.4%、高校卒で4.9%、中学卒で9.0%

と少しずつ増える。しかし、情報階層帰属意識において「下の下」と回答する割合は、

大学卒で15.0%、高校卒で25.8%となり、中学卒において52.4%にものぼる。

(4a)(4b)収入ごとに見る階層帰属意識 世帯年収別にも、情報階層帰属意識の方が大

きな違いが見られる。階層帰属意識では、1,000万以上では半分(49.1%)が「中の上」

という回答が最も多い。そして、その他の収入階層では、「中の下」という回答が最も

多い。他方、情報階層帰属意識では、1,000万以上においても「中の下」という回答が

最も多い(42.9%)。階層帰属意識では、「下の下」と回答する割合は、1,000万以上で3.8

%、650-1,000万未満で2.5%、350-650万未満で4.4%、350万未満で11.0%となってい

る。これに対して、情報階層帰属意識において「下の下」と回答する割合は、1,000万

以上で14.3%、650-1,000万未満で21.6%、350-650万未満で25.0%、350万未満で33.3

%であり、明白な関連が見られる。

以上のように、従来の階層帰属意識に比べて、情報階層帰属意識において自己の位置

づけがより低めになる傾向が見られ、また、階層による違いも明瞭に見られた。

4.2 情報化社会と社会階層

情報通信技術に関連して、知識やイメージ、関心等の意識における違いから始まり、

様々な情報機器の実際の利用の違い、さらにコンピューターやインターネットの利用、

そしてメールの利用形態や利用による変化についての主観的評価、階層帰属意識と情報

階層帰属意識について調査結果を示してきた。以上からは、情報化という側面において、

地域格差、男女格差、年齢格差、学歴格差、職業格差、収入格差が確認できた。現代日

本では、社会階層変数による説明力が低下してきたと指摘されることがあり、その背景

として価値観の多様化やライフスタイル等が言及される。一方で、情報技術に関連する

JIS調査の分析結果では、様々な格差をグラフで明瞭に確認できた。これらが、社会的

格差が比較的大きなアメリカにおいて論じられているデジタル・デバイドを直接に表す

ものであると早急に結論付けることはできない。知識やイメージ・関心等の意識と、利

用率・利用形態という観点から見た情報化における社会的な格差は、現時点ではかなり

明瞭なものであった。

かつては大変高価であったラジオやテレビを例に出すまでもなく、一般に新たなメ

ディアが登場する場合、普及初期においては、そのメディアの利用において大きな格差

が生じるが、次第に縮小する。またメディアの利用によって生じる実際の格差について

は、さらに詳細な研究が必要である。JIS調査は継続調査であり、今後の経時的比較が

重要である。

情報化社会に関する全国調査(JIS2001)の概要 63

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付記

本研究は平成13年度科学研究費基盤研究 A(2)13301007「情報通信技術(IT)革命の文化的・社会的・

心理的効果に関する調査研究」(研究代表者 :直井優)の研究成果の一部です。

1)前期高齢者(65-74歳)人口は1,334万人、後期高齢者(75歳以上)人口は953万人。

2)日本の高齢者の労働力率は男性32.9%、女性13.8%であり、欧米諸国よりも高い。例えば、米国で

は男性14.4%、女性9.4%、ドイツでは男性4.4%、女性1.5%、フランスでは男性1.9%、女性0.9

%である。中国では男性33.6%、女性8.4%、韓国では男性39.9%、女性22.5%、メキシコでは男

性50.1%、女性14.5%である(内閣府編,2001, p.16)。

3)11の地域は以下の通り。1.北海道 :北海道、2.東北 :青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福

島県、3.関東 :茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、4.北陸 :新潟県、富山

県、石川県、福井県、5.東山 :山梨県、長野県、岐阜県、6.東海 :静岡県、愛知県、三重県、7.近畿 :

滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、8.中国 :鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山

口県、9.四国 :愛媛県、徳島県、香川県、高知県、10.北九州 :福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、11.

南九州 :熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県。

4)ALLBUSでは、質問項目を1.基本的な社会的属性の測定、2.主要なテーマ、3.その他の項目群、

という3段階の区分でモジュール構成としている。

5)なお、例えば1995年 SSM調査では、「お宅では、次にあげるもののうち、どれとどれをお持ちです

か。あるものをすべてあげてください。」と、世帯での所有を尋ねているが、情報機器の普及を測

定するにあたり、JIS調査では「所有」ではなく「利用」を尋ねている。この中で、利用しているこ

とが個人での所有に意味が近い可能性が高いのは、1.携帯電話、3.テレビゲーム機、4.ステレオ

やラジカセ、5.ビデオ、6.DVD、11.デジタル・カメラ、と考えられる。また、利用についての回

答が職場での利用であり、個人での所有についてはケースバイケースである可能性があるものは、

8.パソコン、9.プリンター、10.スキャナー、12.コピー機、2.ファックス、7.ワープロ専用機、

等と考えられ、これらの利用率は職場・学校・所属先での利用を反映する可能性がある。

6)学歴については、1.旧制尋常小学校、2.旧制高等小学校、3.旧制中学校・高等女学校、4.旧制実

業学校、5.旧制師範学校、6.旧制高校・専門学校・高等師範学校、7.旧制大学、12.新制中学校、13.

新制高校、14.新制短大・高専、15.新制大学、16.新制大学院、17.専門学校等、を再コードした。

7)JIS2001データには学生も含まれている。ただし、本稿の分析結果では学生について除いている。

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The Japan Survey on Information Society(JIS)2001

Atsushi NAOI, Tsuyoshi SUGANO and Akiko IWABUCHI

The revolution in Information Technology(IT), or Information and Communication

Technology(ICT) in Japan have affected the value, social orientation, psychological

functioning, lifestyle, and perceived social image on the information society and aged

society. In this paper, we introduce and explain the Japan Survey on Information Society

(JIS) project for researching various effects of ICT on value, social orientation,

psychological functioning, and lifestyle in contemporary Japan, and show some of the

basic results. This project studies on social stratification and inequality, relationships

between social stratification and ICT, the new aspects of relationships of work and

personality and the learning generalization mechanism, the relationships between the ICT

and post−materialism, measuring information literacy. The Fieldwork of JIS2001 was

carried out in the2001 autumn. A multi−stage random sampling survey of men and

women20-89 years old was carried out. The original sample size was1,500 with a

response rate of67.4%, giving a valid sample of1,011.

We describe some basic results on the use rate of various kinds of ICT, such as video

recorder, cellular phone, stereo or radio cassette, fax, computer, copy machine, printer,

game console, and digital camera. The use rates of these ICT are shown to differ among

various socio−demographic characteristics in Japan, which are indicative of digital divide.

There also exists gap on consciousness, such as knowledge on the Internet or interest on

the information technologies, among social stratification.

Those who use the ICT and know the usage of the Internet were most likely to be

men, living at metropolises, aged20-39 years old, earning more than10 million a year,

university completed, and in professional and managerial occupations. Those who do not

use the ICT and do not know the Internet at all were most likely to be women, aged60

-89 years old, living at rural areas, earning at less than3.5 million a year, compulsory

completed, and the unemployed. The JIS is working with international comparative and

longitudinal research interest on the information society. We keep monitoring the trend of

information society in Japan to see whether this observed gap is really the deep digital

divide, or only the artifact of the diversity of lifestyles or of the early dispersion process

of ICT just like telephones, televisions and video recorders.

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