厳原港埠頭再編整備計画

Project Report

所 在 地：長崎県対馬市厳原町大手橋Location : Ootebashi,  Izuhara‐cho, Tsushima‐shi,  

Nagasaki‐ken

事業主体：長崎県対馬振興局建設部河港課Project Implementing Body :Nagasaki  Prefecture Government, Tsushima Development Bureau, River and Port  Section

種別/規模：重要港湾/ 116haCategory/ Size : major port/ 116ha

事業期間：2012年度-Term : 2012‐

LACD

Landscape Architecture

and Community

Design Laboratory

SHIBATA Lab.

厳原港の概要

□九州本土と朝鮮半島の間にある対馬島の南東岸に位置する□昭和26年に重要港湾に指定□厳原埠頭から1km圏内に市街地が存在し、市街地には歴史的な石塀や櫓門がある□臨港地区面積 21ha□港湾区域の面積 116ha

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厳原港の様子（H25年）

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大型船来港の様子 埠頭から眺めるコンクリート橋

外国(韓国)からの来航 エプロン部

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厳原港の問題点とその対応

1．フェリー施設の機能不足→建造から40年が経ち劣化が著しい、国外旅客ターミナルの機能不足

2．用地不足→駐車場用地ならびにイベント用地の不足

3．巡視艇の多層係留とその大型化→巡視艇の多層係留、係留延長の不足

□旅客ターミナルを新設し、国内外で旅客ターミナル機能を分離する□港湾活動の円滑化のための駐車場用地、地域活性化のための緑地を確保する□巡視艇の大型化や迅速な出動に備え、係留地を確保する

旅客埠頭の現状

5既存施設での利用者に対する対応の限界

整備されていない駐車場 岸壁やエプロン部でクラック・段差が生じる等の老朽化

巡視艇の多層係留

埠頭再編に向けた検討内容

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①土地利用計画の検討

②フェリーターミナルの建築意匠の検討

③ジェットフォイル用浮桟橋の景観検討

①土地利用計画の検討

7□駐車場用地の拡張 □緑地空間の新設 □安全な埠頭空間の整備

整備後の予想パース（H25年度作成）

→長崎県対馬振興局より提示された整備後の予想パース（H25年度作成)

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Ｈ25.3/27打ち合わせでの計画案②

土地利用計画の検討と工夫

→小山に沿う歩道を緩やかな線形に変更。駐車台数が減るものの利用者に配慮した歩行空間の作成を提案。また動線計画や市街地に繋がる歩道の振り直し等も考えられ、埠頭内の安全性の向上が図られた。

Ｈ24.11/19打ち合わせでの計画案①→提案は駐車場用地の確保だけでなく厳原港埠頭再編協議会にて挙げられたタクシーや送迎用バスの駐車スペースについての意見も反映。本研究室の意見として小山に沿う歩道を作成し、原地形を活かした計画を提案している。

□原地形に配慮した歩道を整備し景観資源の保全案を導いた。□駐車場内の歩行空間確保や歩車の交錯回避等動線計画の見直しが促され、埠頭内の安全性の向上を図った。

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土地利用計画の検討と工夫

Ｈ26.6/2打ち合わせでの計画案③

港湾関連用地を移転した場合の配置計画案

→(第二案)ターミナルとの配置バランスも図りつつ、立体駐車場を設置し、緑地空間を広く確保した提案。本研究室の意見として、立体駐車場とターミナル間での圧迫感及びボリュームの確認が必要であるとし、埠頭用地全体の模型検討を提案した。

→(第一案)長崎県公共事業等デザイン支援会議では駐車場とフェリーターミナルの配置の悪さが指摘され、計画案を修正した案。

□埠頭内の国交省庁舎等（港湾関連用地）の移転が可能な場合、駐車場用地などのレイアウトの選択肢が増える。□第二案の立体駐車場設置案の場合、地域活性化のための緑地を広く確保することができる。

→平成26年度は立体駐車場や緑地等のボリューム確認を行うための模型作成を検討している。

②フェリーターミナルの建築意匠の検討

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第2回長崎県公共事業等デザイン支援会議（市、設計者の意見）→西側の外装を全面ガラス張りの近代的なデザインとし、地域資源として石積みを模した石板をフェリーターミナルの壁面に配置した。

（アドバイザーの意見）→地域らしさを模倣したお化粧的な表現は､フェリーターミナル自体の意匠を陳腐にするので止めたほうがよい。

（市、設計者の意見）→第2回デザイン支援会議でのアドバイザーからの意見を踏まえ石積みの模倣をとりやめ近代的なデザインに仕上げた。

（アドバイザーの意見）→当初の狙いであった地域らしさの表現ができていないため、内部空間に地場材の利用や対馬特有の構造等を活用し、地域らしさを再考してほしい。

第３回長崎県公共事業等デザイン支援会議

アドバイザーは海側のガラス張り外装は反射光が集中し、海上の船舶への眩しさや生態への影響を及ぼすことが考えられるので、設計変更すべきと設計者に指摘した。併せて壁面に対する付焼刃的な建築意匠についての再考も促した。

前会議のアドバイスを踏まえ、市は石積みを模した石板による対馬らしさ表現を回避しコンクリート打ちっ放しとし、外装も反射光の影響が軽減する設計案を修正した。しかし、当初の狙いであった『対馬テイスト』の導入にまでは至っていない。

□対馬市が作成されたフェリーターミナルの設計案に対し、長崎県公共事業等デザイン支援会議のアドバイザーからお化粧的なフェリーターミナルの意匠を回避するよう指摘がなされ､さらにガラス張りの反射光についても軽減できる設計に促した。

③ジェットフォイル用浮桟橋の景観検討

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→管理者・コンサルタント・専門家との協議

当初、浮桟橋の設計案では塗装は海の色に合わせ青色を用いていたが、港湾での最も重要な景観要素は船への眺めであり浮桟橋は景観の「地」となるような配慮が必要とされた。そのために浮桟橋の塗装などは無彩色を用いることを検討した。また構造は山並みを綺麗に見せるために円弧の膜屋根とし、浮桟橋自体の見栄えも良くなるよう雨水排水管の設置数などに工夫を行っている。

→現地調査の様子

現地調査を行った際に来航する船舶のみでなく、コンクリート橋や建設される建造物も白色系であり、浮桟橋の無彩色案が適当であると確認した。

→周囲の環境に配慮し屋根の構造、色彩デザイン等の検討を行うことで、港の景観に配慮した「地」の景観設計が達成された。

ジェットフォイル用浮桟橋の構造の検討

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株式会社三洋コンサルタント作成

株式会社三洋コンサルタント作成

→浮桟橋の屋根の形状埠頭より湾を挟んで眺めることのできる山並みやコンクリート橋上部構造の円弧形状に合わせた膜屋根を採用した。また潮位によって浮き沈みがあるためレベル差による見え方の違いにも配慮している。

→雨水排水管の設置数について当初の設計案では浮桟橋の柱にそれぞれ排水管が取り付けられていたが、機能が不足しない範囲で設置箇所を減らし、構造物の見え方を改善している。

ＣＧによる完成予想図

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→無彩色による塗装について膜屋根：白色 鉄筋塗装：ライトグレー 空気式防舷材：黒 車止め：黒と黄色の縞模様以外のもの 連絡橋の舗装：グレーと黒

株式会社三洋コンサルタント作成

連絡橋の検討

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→連絡橋の構造

浮桟橋の構造や色彩と合わせた一体的な設計を行っている。また停泊するフェリーへの眺めを阻害しないことや連絡橋の角を丸くする等、緑地からの眺めについても検討中である。

→連絡橋とフェリーターミナルとの接続

浮桟橋から延びる連絡橋とフェリーターミナルとの接続は乗降客の動線を考慮しながら進めている。またフェリーターミナルと一体的に考えるよう設計を調整している。さらに連絡橋の形状は迎えを待つ乗降客の溜まり空間になるよう検討もなされている。

株式会社三洋コンサルタント作成