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©横森大輔、「自然発話の文法における逸脱と秩序:カラ節単独発話の分析から」 『言語科学論集』、第 17 (2011)pp.4975. 自然発話の文法における逸脱と秩序:カラ節単独発話の分析から 横森 よこもり 大輔 だいすけ 京都大学 [email protected] 1. はじめに よく知られているように、Chomsky (1965: 34) は、言い淀み・規則からの逸脱・途中で のプラン変更といった言語運用上の要素の混在のために言語能力を直接反映していないと して、自然発話のデータを文法研究の対象から排除した。Chomsky の指摘する通り、現実 に産出される自然発話には、言い淀み・規則からの逸脱・途中でのプラン変更など、言語 運用に伴うエラーやノイズとみなされるような逸脱的現象が数多く含まれている(丸山 et al. 2006: 257258)。しかしながら、一見すると単なるエラーやノイズのように見えるそれら の現象も、決してランダムに生起しているわけではなく、それ自体一定の秩序のもとで生 起している (Biber et al. 1999: 10371125) 。例えば Schegloff (1979) は発話産出における「修 復」の分析を通じて、語の途中での言いさしやフィラーの使用といった「言い淀み」現象 の中に、話者の文法的知識に基づく秩序を見出すことができることを示している。こうい った意味で、現実の言語使用のデータは、母語話者が実際にどのような文法的知識を有し ているか (Ono & Thompson 1995; Du Bois 2001) およびそのような文法的知識が相互行為 上の営みにどのように利用されているか (Schegloff et al. 1996) といった点を明らかにする 鏡として、文法研究に積極的に活用する意義がある。 このような問題意識のもと、本稿では現代日本語における「カラ節単独発話」という現 象の分析を行い、一見すると文法規則からの逸脱のように見えるこの現象が、実際には日 本語話者の文法的知識が秩序立った形で利用される一つの事例として理解できることを示 す。 以下では、まず第 2 節において、本稿の分析対象である「カラ節単独発話」という言語 現象の導入を行い、先行研究において残されている課題に取り組むために「連鎖」という 視点が必要であることを論じる。第 3 節では、本稿が拠って立つ方法論上の立場とその背 景を示し、分析に用いる自然会話データについて紹介する。第 4 節では、自然会話データ の検討に基づいて、「カラ節単独発話」が生起する連鎖と行為のパターンの記述を行い、「カ ラ節単独発話」の使用に見出される秩序について考察を行う。最後に、第 5 節で全体のま とめを行い、結語とする。 2. 「カラ節単独発話」をめぐる問題 2.1 「カラ節単独発話」とは何か 日本語の文法体系において、接続助詞カラはある節を<主節に関する理由や原因を表す 副詞節>としてマークする標識とされている(益岡・田窪 1992: 190192; 日本語記述文法

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©横森大輔、「自然発話の文法における逸脱と秩序:カラ節単独発話の分析から」 『言語科学論集』、第 17号 (2011)、pp.49‐75.

自然発話の文法における逸脱と秩序:カラ節単独発話の分析から 

 

横森よこもり

 大輔だいすけ

 

京都大学 

[email protected] 

 

 

1. はじめに 

よく知られているように、Chomsky (1965: 3‐4) は、言い淀み・規則からの逸脱・途中で

のプラン変更といった言語運用上の要素の混在のために言語能力を直接反映していないと

して、自然発話のデータを文法研究の対象から排除した。Chomskyの指摘する通り、現実

に産出される自然発話には、言い淀み・規則からの逸脱・途中でのプラン変更など、言語

運用に伴うエラーやノイズとみなされるような逸脱的現象が数多く含まれている(丸山  et 

al. 2006: 257‐258)。しかしながら、一見すると単なるエラーやノイズのように見えるそれら

の現象も、決してランダムに生起しているわけではなく、それ自体一定の秩序のもとで生

起している  (Biber et al. 1999: 1037‐1125) 。例えば Schegloff (1979) は発話産出における「修

復」の分析を通じて、語の途中での言いさしやフィラーの使用といった「言い淀み」現象

の中に、話者の文法的知識に基づく秩序を見出すことができることを示している。こうい

った意味で、現実の言語使用のデータは、母語話者が実際にどのような文法的知識を有し

ているか  (Ono & Thompson 1995; Du Bois 2001) およびそのような文法的知識が相互行為

上の営みにどのように利用されているか  (Schegloff et al. 1996) といった点を明らかにする

鏡として、文法研究に積極的に活用する意義がある。 

このような問題意識のもと、本稿では現代日本語における「カラ節単独発話」という現

象の分析を行い、一見すると文法規則からの逸脱のように見えるこの現象が、実際には日

本語話者の文法的知識が秩序立った形で利用される一つの事例として理解できることを示

す。 

以下では、まず第 2 節において、本稿の分析対象である「カラ節単独発話」という言語

現象の導入を行い、先行研究において残されている課題に取り組むために「連鎖」という

視点が必要であることを論じる。第 3 節では、本稿が拠って立つ方法論上の立場とその背

景を示し、分析に用いる自然会話データについて紹介する。第 4 節では、自然会話データ

の検討に基づいて、「カラ節単独発話」が生起する連鎖と行為のパターンの記述を行い、「カ

ラ節単独発話」の使用に見出される秩序について考察を行う。最後に、第 5 節で全体のま

とめを行い、結語とする。 

 

2. 「カラ節単独発話」をめぐる問題 

2.1 「カラ節単独発話」とは何か 

日本語の文法体系において、接続助詞カラはある節を<主節に関する理由や原因を表す

副詞節>としてマークする標識とされている(益岡・田窪  1992:  190‐192; 日本語記述文法

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研究会  2008: 121‐127)。したがって、カラでマークされた節(カラ節)にとって、その修飾

対象たる主節は統語的に義務的な要素である。その一方で、カラ節が主節を伴わずにそれ

単独で完結した発話として用いられるという現象の存在もまた知られている(白川  1991; 

Iguchi 1998)。例えば次の  (1)に示す自然会話データにおいて、1行目から 3行目にかけて B

が産出した「あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むから.」という

カラ節は、主節を伴わずに完結した発話として用いられている(なお、本稿に引用する会

話データの詳細については第 3 節を、会話データの書き起こし記法については論文末尾の

付録を参照されたい)。 

 

(1) [CF1684] 

1 -> B: =.h あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:,

2 A: うん.

3 -> B: 先輩と一緒に住むから.

4 (0.7)

5 A: hは? ((呼気混じりの声で))

本稿ではこのような現象を「カラ節単独発話」と呼び、考察対象として取り上げる。 

「カラ節単独発話」におけるカラ節は、上記  (1) の事例に見られるように、修飾対象と

なるべき主節を欠いており、統語的には文として完結していない。その意味で「カラ節単

独発話」は、文法規則から逸脱した振る舞いであり、Chomskyが問題にしたような言語運

用に特有のエラーやノイズ、あるいは一般に「言葉の乱れ」と呼ばれる現象と捉えられる

かもしれない。 

しかしながら、この逸脱は、たまたま話し手が文の産出を途中で中止してしまったこと

によるものでも、話し手の文法的知識が拙いことによるものでも、あるいは話し手がルー

スな話し方をしていることによるものでもない。むしろ、統語的には文として未完結であ

っても、機能的には発話として完結していると言うことができる 1。 

そのように述べる第一の根拠は、一人の日本語母語話者として、筆者にはそのように認

識されるということである。第二の、そしてより重要な根拠は、この会話の参与者たち自

身が機能的に完結した発話として認識し、そのように取り扱っているということが観察さ

れるということである。例えば、(1) の 5 行目における呼気混じりの「hは?」という A の

反応は、その直前にもたらされたニュースへの驚きを示すものであり、一つのニュース告

知の発話が 3 行目までで完了したものと A が理解したことを示している。これは、2 行目

の「うん.」という反応が Bの発話の続きを促すものであり、Bの発話産出がまだ途中であ

ると A が理解したことを示しているのと対照的である。また、カラ節を産出した B の側を

みても、3行目の後に、何か言葉を足そうとしている素振りも、発話が途中で終わってしま

ったことに対処するような素振り(例えば「えーっと」という言葉を産出するなど)は見

られず、B自身が 3行目まででひとまとまりの発話が完結したものと認識していることが見

て取れる。これは、例えば 1 行目における「十一月と十二月さ:,」で、発話の途中である

ということをプロソディによって明示化していることと対照的である。 

さらに、(1) の「カラ節単独発話」に基づく例  (2) および  (3) を検討してみよう。 

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『言語科学論集』第 17号  (2011)  51

(2) あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住む.

 

(3) a.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むよ.

  b.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むの.

  c.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むんだ.

 

(2) は、(1) における「カラ節単独発話」の、接続助詞カラが出現する直前までの部分であ

る。これは、「カラ節単独発話」と異なり、統語的には文として完結した形式になっている

が、どこか座りの悪さが感じられ、機能的にはむしろ不十分な発話形式であるように思わ

れる。また  (3) の各文は、(1) の「カラ節単独発話」における接続助詞カラを別の助詞・助

動詞で置き換えたものである。これらはいずれも統語論的・意味論的に適格な表現である

が、発話の語用論的な微妙なニュアンスが  (1) の「カラ節単独発話」とは異なっているよ

うに思われる。 

以上はごく簡単な観察であるが、(1) に見られるような「カラ節単独発話」が機能的に完

結した発話として理解できること、そして、他の助詞・助動詞を用いた場合とは区別され

るような独特の語用論的特徴を持っていること、したがって「カラ節単独発話」が一定の

秩序の下で使用されるということが認められるだろう。 

したがって「カラ節単独発話」は、単に言語運用においてランダムに現れるノイズやエ

ラーあるいは「言葉の乱れ」ではなく、一定の秩序の下で出現する言語現象として捉える

必要がある。本稿では、第 1 節で提起した問題意識に関わる現象の一つとして「カラ節単

独発話」を取り上げ、「カラ節単独発話」がどのような秩序の下で産出されているのかとい

う問題をリサーチクエスチョンとして設定し、考察していく。 

 

2.2 先行研究と残された課題 

「カラ節単独発話」は、これまでに言語学や日本語学の分野で「中断節  (suspended 

clause) 」  (Ohori  1995) あるいは「言いさし文」(白川  2009)などと呼ばれて議論されて

きた、従属節が主節を伴わずに用いられるという現象の一つである 2。従来の研究では、主

節を伴わずに用いられた際のカラ節が、接続助詞カラの意味的あるいは統語的性質に還元

できないような独特の語用論的効果を持つという点に注目して、現象の特徴づけを行って

いる。 

例えば、白川  (1991) は、「カラ節単独発話」の形式(白川の用語では「終助詞的用法の

カラ」)を用いることで「ソノコトヲ、承知シテオイテクダサイ」(p.  253) あるいは「コノ

コトヲ踏マエレバ、アナタガドノヨウナ行動ヲトッタラヨイノカ、ワカルハズダ」(p. 254) と

いった言外の意味を伝達することが可能になり、その結果として、使用される文脈次第で

は「相手を牽制して結果的にある行動を取るよう仕向けるため使われたり、参考意見とし

て知らせておいて、相手の行動のなんらかの指針に供したり」(p. 253) することができると

述べている。Ohori (1995) は、[X‐KARA, φ] という形式の発話は  ‘X, so you know what’ ま

たは  ‘X, so it concerns me/you’ などとパラフレーズできるような意味を伝え、<聞き手の

関与を求める>という話し手の態度を表すとしている  (p.  211) 。また、Iguchi  (1998) は、

カラが発話末に用いられるような発話の様々な事例に関して、それらが伝える“暗黙のメ

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ッセージ  (implicit message) ”を記述し、発話末のカラの機能は終助詞の機能に似て、聞

き手や発話内容に対する話し手の態度を表すものである、と述べている  (p. 119) 。 

以上のように、言語学や日本語学の分野での様々な研究において、「カラ節単独発話」に

よる語用論的効果の定式化が提案されている。これらの定式化は、「カラ節単独発話」の特

徴の一部を巧みに捉えているように思われ、実際、第 4 節に示す本稿の分析と大きく矛盾

するものではない。とはいえ、「カラ節単独発話」に関してさらに探究すべき課題も残って

いる。その最たるものは、先行研究における定式化は非常に抽象度が高く、他の文末表現

を用いた発話との違いが十分に明らかでない、という点である。例えば、上記  (3) では、

(1) の「カラ節単独発話」におけるカラを他の助詞・助動詞に置き換えた文をみた(下記に

再掲)が、これらのどの文に関しても「『ソノコトヲ、承知シテオイテクダサイ』という含

意が存在する」という記述が可能であるように思われる。 

 

(4) a.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むよ.

b.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むの.

  c.  あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むんだ.

 

したがって、先行研究による知見だけでは、「カラ節単独発話」がどのような秩序の下で産

出されているのかという本稿の問いには答えることができない。 

先行研究における定式化の抽象度の高さは、いずれの研究も、発話を埋め込んでいる文

脈を定式化の段階で捨象し、発話そのものの属性を抽出しようとしていることに起因する。

つまり、語用論的効果の定式化が、単一の発話のみをスコープとして行われているのであ

る。定式化のスコープが単一の発話のみとなっているという点は、先行研究が「カラ節単

独発話」に伴う「含意」や「メッセージ」を自然言語によってパラフレーズするという手

法を採っていること(例えば、白川  (1991) の『ソノコトヲ、承知シテオイテクダサイ』や

Ohori (1995) の  ‘X, so you know what’ という定式化)に端的に現れている 3。 

 

2.3 「連鎖」という視点の導入:「カラ節単独発話」における秩序の解明に向けて 

本稿では、単一の発話をスコープとする分析における課題を克服するため、複数の発話

の間の「連鎖  (sequence) 」(Schegloff 2007) という視点を導入することで、「カラ節単独発

話」の使用に関わる秩序を考察していく。単一の発話をスコープとする分析の問題点と、「連

鎖」という視点を導入する意義に関しては、次の二つの論点が挙げられる。 

第一に、ある発話が果たしている語用論的効果の特徴は、発話そのものの特徴(発話の

統語的・語彙的・意味論的・韻律的な特徴)だけでなく、発話が生起する「位置」に大き

く依存している。例えば、Sacks (1992a: 97) が述べるように、ある発話が“挨拶”となる為

には、単に挨拶表現(例えば英語の  “Hello” )が用いられればよいのではなく、それが会

話における“挨拶にふさわしいタイミング”で(例えば、知人と廊下で出くわした時点で)

産出されなければならい。同じ  “Hello” という表現も、それが会話中の他の時点、例えば

開始されてしばらく経つ電話会話の最中に産出されれば、“挨拶”ではなく“相手と電話が

通じているかを確認する”という行為になるのである。同様に、ある発話が“答え”とな

るのは、それが“質問の直後”という特定の「位置」に生起することに依存している。例

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えば、次のような対話を想定してみよう。 

 

(5) A: Are we going to the game?

-> B: It’s raining.

 

(6) A: Are we going to the game?

-> B: Isn’t it raining?

 

ここで、“It’s raining.” や  “Isn’t it raining?” といった発話が  “Are we going to the game?” 

に対する“答え”となるのは、発話間の内容上の関係性によるものというより、まさにそ

の質問の直後に産出されること、すなわち生起する「位置」によるものである  (Schegloff 

2007: 20‐21) 4。 

第二に、ある発話の語用論的効果が作用する範囲は、その発話自体の属性(例えば、「含

意」や「メッセージ」)に留まるとは限らない。例えば、Schegloff (1980) は、「質問しても

いい?」あるいは「ちょっと聞きたいことがあるんだ」といった類の発話の性質を理解す

るためには、当該の発話以降の複数の発話にまたがる会話展開の構造を視野に入れる必要

があることを論じている。すなわち、これらの発話はこれから自分が行う本題行為の「準

備の準備」にあたり、その産出によって“次の自分の発話は、まだ本題行為ではなく、さ

らにその次に行われる本題行為の準備である”という理解とそれに基づく振る舞いを会話

の相手に求めることができる 5。Schegloffは、次のような会話例をあげている  (p. 105) 。 

 

(7)  

11 B: -> I like tuh ask you something.

12 A: Shoot.

13 B: Y'know I 'ad my license suspended

14 fuh six munts,

15 A: Uh huh

16 B: Y'know for a reason which, I

17 rathuh not, mention tuh you, in

18 othuh words, --a serious reason,

19 -> en I like tuh know if I w'd

20 talk tuh my senator or--

21 -> somebuddy, could they help me

22 get it back,

ここでは、11行目に「準備の準備」の発話がなされたことで、13‐14行目での「自分は六ヶ

月間の免許停止処分を受けた」という情報提供がそれ自体は本題ではなく、その後に行わ

れる本題行為(ここでは 19行目以降)の準備である、ということを相手に理解させ、その

ような理解に基づく振る舞いを要求することができる。実際、Aは 15行目の  “Uh huh” と

いう反応によって、免許停止処分についての知らせ自体は本題ではないと理解しているこ

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54 

とを示している。このように、ある発話の語用論的効果が、複数の発話にまたがる範囲に

作用するということは決して稀ではない。 

これら二つの論点のいずれにも関わっているのが、会話の中における複数の発話間の有

機的な連なり、すなわち「連鎖」である。会話は複数の発話が順次産出されていくことに

よって構成されているが、個々の発話はランダムに連続しているわけではない。例えば、

<挨拶>と<挨拶>や<質問>と<回答>などの行為のペア、あるいは<質問の「準備の

準備」>に始まり<質問の準備となる情報提供>を経て<質問>に至るというより大きな

連なりまで、会話の中では複数の発話が秩序立ったまとまりを形成して、様々な「行為の

流れ  (course  of  action) 」を展開している。「連鎖」とは、そのような「行為の流れ」とし

て秩序立った発話のまとまりを、参与者たちが産出したり理解したりするのに用いる一般

的なパターンないし構造のことである  (Schegloff 2007: 3) 。 

以上を踏まえて、本稿では、「単一の発話」から複数の発話の間の「連鎖」にスコープを

拡大して分析することで、一見すると文法的な逸脱のように見える「カラ節単独発話」の

使用に関わる秩序を明らかにしていく。具体的には、「カラ節単独発話」が、会話中の「ど

のような連鎖の」「どのような位置において」「どのような行為を実現する手続き」として、

参与者達に産出および理解されているか、といった点から記述を行っていく。これは、相

互行為の観点から言語現象の性質を探る、「相互行為言語学  (Interactional Linguistics) 」と

呼ばれる研究潮流  (Selting & Couper‐Kuhlen 2001; Hakulinen & Selting 2005; Thompson & 

Couper‐Kuhlen 2005) に連なるアプローチである。 

 

3. 方法論とデータ 

3.1 自然会話データの必要性 

本稿では、「カラ節単独発話」がどのような秩序の下で産出されているかを検討するため

に、日本語の自然会話データの分析を提示する。伝統的な言語学や日本語学の文法研究で

は、対話的側面に注目する際、小説の会話文やコミックの台詞あるいは劇やドラマのシナ

リオといった文芸作品を研究データとして用いることが多い。それに対して本稿は、研究

上の目的とそれに応じた方法論上の特性からの要請として、自然会話を録画(電話会話に

関しては録音)したデータを利用する。ここでは、自然会話データを必要とする理由につ

いて三つの点を述べ、同時に本稿の方法論上の特性を示す。 

第一に、第 2 節で論じたように、本稿の目的のためには「カラ節単独発話」が会話中の

「どのような連鎖の」「どのような位置において」生起しているかを観察しなければならな

い。そのため、発話産出の正確なタイミング(これには、発話同士の重複における開始点

と終了点の正確な位置や、無音区間の 0.1 秒単位での正確な長さなどが含まれる)、発話が

埋め込まれている前後文脈、発話に伴うプロソディやパラ言語要素、そして視線・頷き・

ジェスチャーなどの非言語的行動などを捨象せずに分析に含める必要がある。 

第二に、本稿は、単にコーパス上での「カラ節単独発話」の生起状況を調査するだけで

なく、「カラ節単独発話」に見られる文法からの逸脱と秩序を、参与者たち自身がどのよう

に理解し、利用しているかを問題とする。したがって、データの観察においては、参与者

たち自身が個々の「カラ節単独発話」をどのように取り扱っているか(例えば、ある「カ

ラ節単独発話」の後、その聞き手がどのように振る舞うか)という記述によって、観察の

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妥当性を確保することができる  (Sacks et al. 1974: 728‐729) 。 

第三に、Sacks (1992b: 419) が述べるように、仮想的な事例や人々が典型だとみなす事例

に基づいて研究を行うことは、あらかじめ議論を人々から受け入れられやすいような範囲

に限定してしまうことになる。人々の一般常識あるいは言語学分野における既存の前提に

留まらずに研究を展開するためには、現実の言語使用のありのままの姿をデータとする必

要がある。 

 

3.2 データの概要 

本稿では、自然会話 18時間あまりを収録したコーパスから「カラ節単独発話」の実例を

収集して、分析を行った。分析に用いたデータの種類と分量の内訳は、「筆者が独自に収録

したもの」(約 17時間)、『CallFriend  Japanese Corpus』(約 60分)、『千葉大 3人会話コーパ

ス』(約 20分)に分けられる。『CallFriend Japanese Corpus』とは、1990年代のアメリカで収

録された、在米日本人同士の長距離電話の通話データであり、The  TalkBank  Project 

(MacWhinney  2007) にて配布されている。また、『千葉大 3 人会話コーパス』(Den  & 

Enomoto  2007) とは、千葉大学の伝康晴氏を中心に構築された会話コーパスで、3人の大

学生による対面会話を収録している。本稿が利用する会話データのさらに詳細な内訳につ

いて、以下の表に示す。 

 

表 会話データの内訳 

データ ID  入手経路  時間  人数  会話場面 

Questionnaire  筆者収録  30分  2人  質問紙調査とフォローアップインタビュー

における研究者と被験者のやりとり 

Band Meeting  筆者収録  200分 7人  市民吹奏楽団のミーティング 

Band Dinner  筆者収録  100分 8人  市民吹奏楽団の練習後の食事会 

Camp  筆者収録  60分  10人 キャンプ場での食事・団欒場面 

After the Party  筆者収録  50分  2人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

CNN  筆者収録  50分  2人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Party Prep  筆者収録  60分  4人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Christmas  筆者収録  60分  4人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Old Friends  筆者収録  30分  4人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Olympic  筆者収録  60分  5人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Three Couples  筆者収録  120分 6人  参与者の自宅での食事・団欒場面 

Wedding  筆者収録  35秒  7人  結婚披露宴での参列者同士のやり取り 

CF1684  CallFriend  30分  2人  アメリカ在住の日本人同士による電話会話

CF1773  CallFriend  15分  2人  同上 

CF4222  CallFriend  15分  2人  同上 

Chiba0332  千葉大  10分  3人  収録のために集められた友人同士の会話 

Chiba0432  千葉大  10分  3人  同上 

 

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56 

本稿中で示す会話断片は、その引用元である会話データのデータ IDを、断片の冒頭位置に

示す。また、会話状況のより詳しい説明は、個々の事例提示の際に必要に応じて行ってい

く。 

 

3.3 事例収集手続き 

分析対象の事例収集にあたっては、以下のようなケースは分析対象外とした。 

まず、次の  (8) のカラ節のように、発話の末尾に接続助詞カラが用いられていたとして

も、その修飾対象(いわゆる主節)が先行文脈中に見出されるケースは、後置(倒置)と

みなして対象外とした 6。 

 

(8) [Christmas] 

1 B: まあ寝る前に, ちょっとだけ見てみようかとか.

2 A: そのちょっとだけが, 怖いんだよね:.

3 (0.5)

4 -> A: なんだろう, ちょっとだけが:, (0.4) 最後まで見そうだか[^ら:],

5 D: [ h h] h

6 C: (>あれ<)長時間なの? 九十分, (0.2) みっちりみたいな?

 

また、(9) のように話者が「カラ節単独発話」を引用して自分の発話に埋め込んでいるケー

スや、(10) のようにネやサといった別の助詞が付与されているケースも、考察対象の多様

性を限定するため、対象外とした。 

(9) [CF1684]

1 A: .hh(0.3) う:ん. わかんないまだほ- だから言ったの.

2 -> 「ボーイフレンドもいるし, あたし, あなたのことよくわかんないから:」

3 とか言って:,

 

(10)  [CF1684] 

1 B: 悲しかった?

2 -> A: 悲しい:とかもう, 三回目だから^ね:.

3 B: hhh

 

分析にあたっては、「カラ節単独発話」が用いられる「連鎖上の位置」(相互行為の展開の

中で、どのようなタイミングでその発話が産出されたか)および、その発話によって実現

している「行為」に注目する。また、「連鎖上の位置」や「行為」の特徴を指標するものと

して、どのような言語的要素と共起しているかという点にも着目する。 

4. 「カラ節単独発話」の連鎖と行為のパターン 

自然会話データから収集した事例について観察を行った結果、「カラ節単独発話」が用い

られる連鎖上の位置とそこで行っている行為には、いくつかの顕著なパターンが存在する

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『言語科学論集』第 17号  (2011)  57

ことがわかった。以下では、実際の事例の分析とともに、連鎖と行為のパターンを検討し

ていく。 

なお、具体的な分析に移る前に、免責事項を三点述べておく。第一に、各パターンに付

与された名称は、論文中で言及するという便宜の為の「ラベル」として近似したものに過

ぎず、それぞれの連鎖と行為に関する特徴を正確に表現したものとは限らない。第二に、

本稿で挙げる幾つかのパターンは、「カラ節単独発話」が一定の秩序のもとで用いられてい

ることを示すという目的のために筆者の手元のデータにおいて顕著なものをピックアップ

したものであり、「カラ節単独発話」の用法の全てを網羅していることを主張するものでは

ない。第三に、各カテゴリーは部分的に重なりあっている場合があり、実際の事例には、

複数のカテゴリーの中間的な性格を帯びたものも存在するため、本稿はカテゴリー間の相

互排他性を主張するものではない。 

 

4.1 理由を説明する 

第一のパターンは、直前に話題になっている事柄について理由の説明が求められ、それ

に応える形で理由の説明を与える、というものである。これは<主節の理由を示す>とい

うカラ節の本来の用法からの自然な拡張として理解されやすいもので、カラ節単独で完結

した発話になるという状況としては容易に推測がつくものかもしれない。 

例えば次の  (11) のように、理由を質問された直後に、その質問に答える際に、カラ節単

独で一つの発話を構成するという場合がある。ここで D は、妻である B がプレゼントの包

装を行っているのを傍から見ており、1行目ではその包装のやり方に関して「なんでそんな

高度な技使うの.」と尋ねている。それに対して Bは、「高度な:女だから.」と回答を与え、

カラ節単独で発話を構成している。 

 

(11) [Party Prep]   

1 D: なんでそんな高度な技使うの.

2 -> B: いや, ゚ hh゜高度な:女だから.

3 D: 高度(h)な(h)女だったんだ.

 

また、このように<理由を尋ねられた直後>以外にも、理由のみを述べるという行為が

会話の連鎖の中でレリバントになる状況が存在する。例として会話断片  (12) を検討する。 

この断片を含む会話  (Three Couples) は、Aと B、Cと D、Eと Fという 3組の夫婦(そ

れぞれ前者が夫で後者が妻)が食事および歓談している場面を収録したものである。この

断片の直前では、A が「まだ結婚する前の時期に、いかに自分が B に翻弄されたか」とい

うエピソードを面白おかしく語っている 7。Aのエピソード語りに対しては、残りの参与者

5 名のうち特に CD の 2 人がオーディエンスという立場に従事している(ここには、EF 夫

妻は AB夫妻が結婚する前からの付き合いであり、語りの内容を既に知っている可能性が高

いという背景も影響していると思われる)。 

断片の 1 行目から分析の焦点である 6 行目までの展開は以下の通りである。断片の 1 行

目から 3行目にかけての発話で言及しているのは、Aが Bを「6時に」誘っても、Bは「忙

しい. パタタ:タタタ:」などと言って会う時間を後ろ倒しにし、結局レストランの予約を

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した「7時半」になっても現れない、という出来事のことである。それを受けて、当事者で

ある Bが笑い始めた(5行目)直後、Dが「お: : : : : .」と言って Aの語りへの関心

と B の過去の行動への感心を強くディスプレイする(7 行目)。このような強い聞き手反応

は、単なる相槌とは異なり、一連の先行する語りの中から、「更にそれを話題として語りを

展開する価値があるもの」として、あるいはもう少し単純に「注目に値するもの」として、

特定の要素を遡及的にピックアップする行為である  (Goodwin & Goodwin 1987) 。 

 

(12) [Three Couples]   

1 A: 6時にとか言うと,(0.5) 「忙しい. パタタ:タタタ:」とか言って:,=

2 B: =Huhu[hu

3 A: [7時- 7時半で予約してんのに (0.5) けえへん.

4 (0.4)

5 B: ha[haha ]

6 E: [haghaha]

7 D: [ お: : ] : : : .

8 (0.5)

9 -> B: ((Dに視線))営業は↑^ね, 残業がつき[ものですから. [(いえ)-

10 D: [う : : : : : [ん.

11 A: [いやいやいやい-

12 A:プライオリティーが違うか[ら.((Dに視線))

13 C: [ngHuh[Huhhh

14 D: [hhhhhhhhhh=

15 B: =ちょっとお- お茶してたとかなんだよ^ね_ 友達と.

 

分析の焦点である 9行目では、Bが「営業は↑^ね, 残業がつきものですから.」という「カ

ラ節単独発話」を産出している。ここで、B は D に視線を向けていること、D の直前の振

る舞いが1‐3行目で描写されたBの過去の振る舞いを注目に値するものとしてピックアップ

するものであったこと、という 2 点から、この B の発話は参与者の中で特に D に宛てられ

たものであると言える。したがって、この 9行目の発話は Bの過去の振る舞いに関して、D

に向けて理由を説明するもの、として記述することができる。なお、その B の発話の直後

には、A がやはり D に視線を向けながら、「いやいやいやい- プライオリティーが違うか

ら.」と、同じ出来事に関する別の理由をDに向かって提供している(11行目から 12行目)。 

以上のように、「カラ節単独発話」が生起する連鎖パターンの一つとして、直前に話題に

なっている事柄について、理由の説明が求められて、それに応える形で理由の説明を与え

る、というものが存在する。しかし、全ての「カラ節単独発話」がこのように理由の説明

として単純に考えられるものばかりではない。 

 

4.2 聞き手の認識上の問題を是正する 

第二のパターンは、直前の時点における相手の認識に誤った点や不適切な点があること

を指摘し、認識を改めさせる、というものである。 

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連鎖上の構造としては、相手の発話や行動の後に、その発話や行動の前提にある相手の

認識を否定するような情報を「カラ節単独」の形式で提示し、それによって相手の認識を

間違いとして遡及的にマークする、という特徴を持つ。それまでの会話の連鎖の中で理由

の説明を求められ、それに応えて理由を提示した第一のパターンとは異なり、このパター

ンにおける「カラ節単独発話」は、それまでの連鎖から求められて出現したものではない。

むしろ、産出時点では連鎖上のレリバンスを持っていなかった要素を、遡及的に連鎖の一

部として組み込んでおり、その意味で、「笑い」「気付き」といった行為と同じく「遡及的

連鎖  (retro‐sequence) 」  (Schegloff 2007: 217‐219) の一例と言える。 

例として、(13) の会話断片を検討する。これは、『千葉大 3人会話コーパス』からのデー

タである。参与者である 3人の大学生は、サイコロを振って出た「トピック」を足がかり

に、約 10分間自由に会話するように求められている。この会話断片は、サイコロの目が「腹

の立つ話」だったことに応じて、Bが語りを開始した後のやり取りである。Bが語り始めた

のは、ある飲食店で自分が注文したスパゲティーから嘔吐物のような臭いがしたため腹を

立てた、というもので、会話参与者の Aと Cもその場面に居合わせたものだった。この語

りは、相手が既に知っていることを語っているという点で典型的なエピソード語りとは異

なる性格を帯びており  (Sacks 1974)、それがこの会話の中の様々な振る舞いに冗談めいた調

子を一貫して与えている。この断片の直前では、Aが「俺あのときの店員さんの目がすご

く怖かった」と Bに対する文句を言い、続けて Cが「そうだよ、俺ら追い出されるところ

だったんだぞ」と同調している。なぜ「店員さんの目がすごく怖」く「追い出されるとこ

ろだった」のかという事情については、3人の間では共有されているようであるがこの断片

以前には言及されていない。それが初めて明示的に言及されるのが、断片の 1行目以降で

ある。それによると、「タッカン」(Bの愛称)が「げろの匂いがする」と「店員さん」に聞

こえるような声で発言したという出来事が起きていたとわかる。Aは、「店員さん」の行動

を「いきなり包丁研ぎ始める゜(の)゜」と描写したのに続けて、「シュッ」という包丁を

研ぐ音を模した擬音語を産出している(6行目)。9行目や 12行目においても繰り返される

「シュッ」という音は、その発音自体も、一定の間を空けて繰り返す調子からも、演劇的

なデザインで産出されている。これらのことから、Aによる「いきなり包丁研ぎ始める」

以降の行為が、事実を述べているのではなく冗談を述べているのであり、Bに対するからか

いであると記述できる。 

 

(13) [chiba0432] 

1 A: [タッ]カンがさ:, (0.2) う-

2 (0.3)

3 A: 「げろの匂い[がす [る」]ってゆった]ときさ, 向こうの[:,

4 C: [uhhh[huh]

5 B: [ uhuhu ] [ .hh

6 A: .hh 方で店員さんが, いきなり包丁研ぎ始める゜(の)゜. 「シュッ」

7 (0.2)

8 C: ha[hahaha ]

9 A: [「シュッ」]

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60 

10 (.)

11 -> B: いやい[や. そんなホラーな, [話じゃないか[ら.

12 A: [「シュッ」 [「シュッ」 [「シュッ」

13 C: [hh

14 C: .hh (0.2) >てか<ま(h)じ, げろの匂い>とか<, し↑ねえし. .hh

15 B: いやし^た[んだ-

16 C: [(sniff)

 

Aによってからかわれた Bが反応するのが、分析の焦点である 11行目である。ここで Bは、

「いやいや. そんなホラーな, 話じゃないから.」とカラ節のみからなる発話を産出してい

る。この発話は、第一のパターンと異なり、先行文脈で言及された事柄に対する理由を説

明するものではない。むしろ、直前で相手が語っている内容を否定している。既に述べた

ように 1行目から 12行目にかけての Aの発言は、明らかに事実と異なるとわかる内容を演

劇的に語って見せるという冗談であり、漫才における“ボケ”のような性格を帯びている。

そのボケの直後の位置においてその内容を否定する 11行目の発話は、いわゆる“ツッコミ”

の行為を遂行するものである。同様のパターンの事例として、次の  (14) も検討してみよう。 

 

(14) [Old Friends] 

1 C: すいませんお世話になりました.

2 -> B: いやいや. いやいや. (.) いやいやいや, そんな,

3 (0.6)

4 -> 大したことないですから.

 

この例では、1行目で Cが謝意を表明したのに対して、Bは感謝するに及ばないのだと相手

の想定を是正し、それによって“謙遜”という行為を行っている。また、相手の発話に表

れる認識上の問題を是正する場合だけでなく、相手の非言語的な行動の背後にある認識上

の問題を是正する場合もある。 

 

(15) [Wedding] 

1 D: じゃあ Aさんと俺に. ((ウィスキーの入ったグラスを Aに渡しながら))

2 (0.3)

3 -> A: (これ[俺はい-)お-]お- ↑多いから.((ウィスキーの嵩を指で示しながら))

4 F: [ khah hah]

5 (.)

6 D: ^え?

7 F: khah [hah]

8 -> A: [ 多 ]いから.

9 (0.2)

10 D: じゃあ Eに. ((視線を Aに向けたまま、Eに向かって指差し))

 

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この例では、「Dが Aにコップに溢れるほどのウィスキーを飲ませようとした」という直前

の行動(1行目)を受けて、3行目と 8行目の二度に渡って「カラ節単独発話」が産出され

ている。ここでは、相手の行動の不適切な点を指摘することで、“拒絶”や“抗議”という

行為の実現のために「カラ節単独発話」が利用されている。以上のように、この第二のパ

ターンの「カラ節単独発話」は、直前の振る舞いに表れた聞き手の認識上の問題点を是正

する情報告知として理解することができる。 

言語構造上の特徴としては、このパターンの「カラ節単独発話」は、発話冒頭に「いや」

またはその繰り返しを伴うことが多い。「いや」は、単なる否定ではなく、「相手の前提へ

の抵抗を示すトークン」  (Kushida & Hayashi 2010) であり、相手の認識の是正という行為

を導くのに有用なものである。また、このパターンでは、カラをッテという表現で言い換

えても発話の働きやニュアンスが大きく変わらずに保たれるという特徴も有している。 

 

(16)  a. いやいや. そんなホラーな, 話じゃないから. 

  b. いやいや. そんなホラーな, 話じゃないって.

 

(17)  a. 大したことないですから. 

  b. 大したことないですって.

 

(18)  a. 多いから. 

  b. 多いって.

 

このような場合に想定される「って」は、鈴木  (2007) が“説得”の機能を果たすものとし

て記述したものに対応すると思われる。次の  (19) は、鈴木が観察した“説得”の「って」

の使用事例である。 

 

(19)  電話かけて、たまたまマービンが取った時に、「マービンこれはね、えと、サトコに

は言わないで計画してるんだけど」って言えばいいじゃない。かけてる間に、絶対チ

ャンスがあるって。                                                                                   (鈴木  2007: 39)

 

鈴木によれば、「話し手が、「って」によって自分の考えを「発言」のようにして差し出し、

「この言葉を繰り返し言うよ(言っているではないか)」という、発話の再現という側面を

表している」(p. 41) というメカニズムが働いていると考えられる。 

ここにみられる、ッテとの交換可能性は、「カラ節単独発話」の他のパターンと第二のパ

ターンを明確に区別する特徴である。 

 

(20)  a. 営業は↑^ね, 残業がつきものですから. 

  b. ??? 営業は↑^ね, 残業がつきものですって.

 

(21)  a. あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むから. 

  b. ??? あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と一緒に住むって.

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62 

以上の考察は、<理由>と<引用>という大きく性格の異なるマーカー同士が、相手の認

識の是正を行うという特定の連鎖環境において類似した働きに貢献することを示しており、

言語形式と連鎖環境の相互作用の問題にとって示唆的な事実といえる。 

 

4.3 聞き手が充分に認識していない事柄を告知する 

「カラ節単独発話」の用いられ方の第三のパターンは、直前の時点における相手の認識

に不十分な点があることを指摘し、特定の情報に対する認識を求めるというものである。

このパターンには、例えば“相手が気付いていないニュースの告知”や“自分の体験談へ

の話題と活動の転換”といった行為を実現する場合が含まれている。 

第三のパターンの連鎖上の特徴として、以下の 3 点が挙げられる。まず、先行するやり

取りの中に「理由の説明」や「是正」のターゲットになるような要素は(明確には)存在

しない。次に、「カラ節単独発話」で述べられる話題は、先行するやり取りで言及されてい

なかったものである。すなわち、このパターンの「カラ節単独発話」は<新規の話題を導

入する>という特徴がある。さらに、「カラ節単独発話」で述べられる内容は、<話し手の

現状>、<話し手の行動の予定>、<話し手の過去の経験>など、話し手を当事者とする

出来事に関するものである。このような出来事の知識は、「タイプ 1 知識   (Type  1 

Knowable) 」と呼ばれ、話し手の側に語る権利と義務があるものとして、会話の中の相互

行為の展開に影響を及ぼすものである  (Pomerantz 1980) 。 

また、言語構造上の特徴としては、一人称代名詞(「俺」、「私」、「うちら」etc.)が発話

冒頭に生起することが多いというのも、注目すべき点である。日本語においては一人称代

名詞のマーキングは統語上は義務的ではなく、むしろ談話構造における有標性と関わって

いるとされている  (Ono & Thompson 2003) 。 

 

4.3.1 相手が気付いていないニュースの告知 

次の  (22) は、本稿冒頭に提示した  (1) をより広い前後文脈を含めて再掲するものである。

これは、ダラスに住む A がニューヨークに住む B にかけた電話会話が開始してすぐのとこ

ろである。断片中に登場する「先輩」とは、A と B とともにニューヨークでダンスの修行

をしていた仲間であり、この会話収録時点で、A 以外の 2 人はニューヨークでダンスを続

けているものと推測される。この断片の直前部分では、<A は「先輩」と B のそれぞれに

電話をかけたが、どちらにも通じなかった>ということ、そして<実は、「先輩」と B の二

人が電話をしていた>という事柄が言及されている。そして断片の 1 行目から 12 行目にか

けては、A が「先輩」と B のそれぞれに対して留守番電話のメッセージを残すという話題

が言及されている(なお、結局のところ A がメッセージを残したかどうかについては不明

であり、参与者たち自身もそれ以上追及していない)。13 行目において B は、一連の A の

苦情めいた報告を受け取って「本当:? >どうもどうも.<」と述べている。この発話は、連

鎖中の位置と用いられている言語表現からは“謝意”を表す発話になり得るものだが、(不

等号によって表されているように)非常に速いスピードで産出されていること、(等号によ

って表されているように)直後の発話に素早く移行していることから、表面的で、どこか

受け流すようなニュアンスさえあるような謝意としての性格を帯びている。そして、その

直後、間髪いれずに「カラ節単独発話」が産出されている。 

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(22) [CF1684] 

1 B: [電話した?=前.]

2 A: (だ)Bさんとこもした. =

3 =あたしは Bさんとこにはメッセージのこさな- =

4 =先輩とこも残さなかったの:_=

5 B: =は:ん.

6 A: どっちも:,=

7 B: =あ:ん.

8 A: .h でも:, たいがいちょっとあれだな:と思って[:, ]

9 B: [うん.]

10 A: anghah [もういいや. メッセージでも,] =

11 B: [ちょっと残してみた? ]

12 A: =一つでも残しとこうとか[思って,]

13 B: [ 本当:?] >どうも[どうも.]< =

14 A: [hh ]

15 -> B: =.h あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:,

16 A: うん.

17 -> B: 先輩と一緒に住むから.

18 (0.7)

19 A: hは:? ((呼気混じり))

20 B: ってかね, ユミチャンがさ, ノゾミんとこいっちゃったんだよもう.

21 A: あ:::やっぱり:?

22 B: う:ん.

23 (0.2)

24 A: h::m

25 B: <だか^ら>:, .hhhh あ, 今はまた別の人が住んでんのね:?あそこに:.

26 A: うん

27 B: .h で:, .h う:んと, エミリーが, (.)ドイツに行ってんのよ今:.

28 (0.5)

29 A: え h:?

30 B: フォーティーセカンドストリートで.

31 (0.3)

32 A: すごいじゃ:ん.=

33 B: =そうそれで, (.)ちょっとだけ帰ってくんだけど:,

34 .h で, ジョージがね:?

この断片における分析の焦点である「あたし(>ちょと<), 十一月と十二月さ:, 先輩と

一緒に住むから.」という発話は、<話し手の近い将来の予定>をニュースとして告知する

ものである。ただし、これは単に“ニュース告知”であるだけでなく、「直前のやり取りに

おいて相手の認識の不在が顕在化された」情報の告知という特徴を有している。その後、A

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64 

は呼気混じりで「h は:?」と応答することで、自分が全く認識していなかった情報が提供

されたという理解を示しつつ、更に詳しい説明を要求している(19 行目)。20 行目以降、B

は「ってかね,」と前置きし、詳しく長い事情説明を展開する。

4.3.2 自分の体験談への話題と活動の転換 

またこの第三のパターンでは、直前のやり取りで“実際に”相手の認識不足が顕在化し

た情報だけでなく、ある情報を「相手が認識不足のもの」として遡及的にマークするよう

なケースも存在する。このようなケースでは、「カラ節単独発話」の秩序を利用することに

よって、“自分の体験談への話題と活動の転換”という行為を達成することが可能になって

いる。

次の (23) とその続きである (24) を見てみよう。これは、アメリカに暮らす 3 組の日本

人夫妻(Aと B、Cと D、Eと F)の会話で、(12) の会話断片の直前部分に相当する。この

断片よりも前のやり取りでは、<アメリカの西海岸と東海岸でのロブスター料理の違い>

を話題として会話が展開していた。その話題によるやり取りが一段落し、新しい連鎖が開

始され得る時点となっているのが断片の 1行目である。 

この 1行目では、Aが「>Bちゃんも<桜木町でご馳走したじゃない.」と自分の妻に対し

て発話し、<ロブスター料理に関する二人の共通経験を語る>という新しい活動を開始し

ている。また、この発話は単に“思い出を想起する”だけでなく、そのことに関して“相

手に恩を着せ、相手からの感謝を求める”という性格を帯びている(例えば「一緒に食べ

た」とも言える内容を「ご馳走した」という言葉を選んで表現している点は、その一つの

要因である)。もちろん、囁くような声質によって指標されるように、これは本気で相手か

らの感謝を追求するようなものではなく冗談まじりのものであり、周囲の人間も冗談まじ

りの側面を理解していることを笑いによってディスプレイしている(3‐4 行目)。そのよう

な発話を向けられた Bは、「そう(だったねえ.)」「いただいたねえ.」と、相手からの「恩」

を認めつつ、どこかとぼけるような応答を返している(2‐5 行目)。このやり取りを起点と

し、6 行目以降から 37 行目までの間、A と B が応酬しそれを聞いて周囲の人間が笑うやり

取りが繰り返されるという「連鎖の連鎖」  (Schegloff 2007: 195‐216) が展開し、この「連鎖

の連鎖」を通じて文字通りの意味での<夫婦漫才>のような活動が進行している。この間、

夫婦漫才の「演者」である A と B は互いに視線を交わしながら応酬を展開しているが、38

行目において Aが「オーディエンス」の参与者達(B以外の 4人)の方向に視線を転じ、「カ

ラ節単独発話」を産出している。 

 

(23) [Three Couples] 

1 A: >Bちゃんも<桜木町でご馳走したじゃない. ((囁くような声質))

2 B: そ[う(だっ[たねえ.)

3 C: [ hHuh [Huhhuh .h .h [.h .h

4 E: [hhahahahah

5 B: [いただいた[ねえ.

6 A: [(ん二万円-)

7 二万以上はらっとる[で_

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『言語科学論集』第 17号  (2011)  65

8 C: [Ugh[hHu[Ha [ha .H .H .H .H[.hh

9 B: [hh

10 D: [aha[ ha ha ha ha [ha hah

11 F: [ h h h h

12 B: [美味しかった=

13 =気がす[る.

14 C: [.kh .kh

15 E: huh[huh

16 B: [hhh[h

17 A: [一人一匹ずつくっとるやん.

18 (0.3)

19 B: あ, そうか.

20 A: 「(>ね<)[「あたしも食べよっかなあ. =

21 E: [hhhh

22 A: =食べれるなあ」とか言っ[て, [全然食べ]へんかった.=

23 C: [gHuhh[HuhHuh ]

24 B: [ h h h ]

25 A: =[俺(の)[しか食って(ねえ/へん).=

26 E: [ huh [huhhuh

27 B: [hhh

28 C: =[ huhhuh ]

29 B: [huhuhahah]

30 A: huhu[huh[huhuhuhu

31 D: [kh [kh kh kh

32 C: [.kh .kh .kh [.kh

33 E: [huhhuh

34 B: ちょっとグロいなと[思って. ]

35 A: [ん俺九時半]の[新幹線に[乗( )-]

36 D: [ahahaha[hahahaha]

37 C: [UHUHhHUh]=

38 -> A: =[↑それで俺, [九時半の新]幹線で, 横浜から帰りますから.

39 F: [゜(んん)゜ ((口にものを含みながら、Aをみて大きく頷く))

40 D: [ huhuhuh]

41 (0.2)

 

38行目における「↑それで俺, 九時半の新幹線で, 横浜から帰りますから.」という発話は、

一度 35行目で試みたものの、その前の連鎖の一部である笑い声とオーバーラップして頓挫

した発話のやり直しであり、やり直しに際して(上向き矢印に示されるように)発話冒頭

のピッチを高めている。また既に述べたように、38 行目において、A は視線を B 以外の参

与者たちの方向に転じている。さらに、ここで提供される「A が九時半の新幹線で横浜か

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66 

ら帰る」という情報は、1 行目から 37 行目のやり取りの間に言及されていなかった話題に

関する情報である。以上の特徴から、A が、38 行目の発話によってそれまでの「連鎖の連

鎖」による<夫婦漫才>の活動から外れ、新しい活動に転換しようとしているものと理解

される。 

38行目の「カラ節単独発話」を通じて提供される情報は<話し手の過去の経験>である。

当然、それまでに他の参与者は認識を持たない情報ではあるが、(20) のような事例と異な

り、その認識不足が直前のやり取りの中で問題になっているわけではない。ここではむし

ろ「カラ節単独発話」の形式を利用することで、その情報を「直前で相手が認識しておく

価値があった」ものとしてマークしている。そのようなマークによって、話題を<二人の

共通経験>から<自分の経験>に転換させ、同時に活動を<夫婦による漫才的応酬とオー

ディエンスの笑い>から<オーディエンスに向けた夫の愚痴語り>へと転換させることが

可能になっている。例えば、42行目の Cによる「京都に:_」という発話は、単なる明確化

要求ではなく、38 行目の発話に見出し得る<惨めさ>や<大変さ>などの愚痴としての要

素をピックアップする試みである(参与者の間では「この話題になっている出来事があっ

た当時 A は京都に住んでおり、出張の折に B をデートに誘っていた」という知識が共有さ

れている)。また、それに対する Aの「もちろんそう.」という返答(44行目)と Cの素早

いタイミングでの「あ::ん.」という受け取り(45行目)からも、あるいは Dの「な:んか,

(0.4) せ- 切ないねえ.」という同情の表明からも、「愚痴り役」としての Aと、「愚痴の

オーディエンス役」としての Cや Dとで、愚痴語りの活動を共同で構築しようという志向

性が見て取れる。そして、「オーディエンス役」からの反応によって自分が転換した方向性

への支持(39‐51行目)を見て取った Aは、56行目から語りにおける描写の「粒度」(Schegloff 

2000) を上げ、自分がいかにつれない対応を取られたという、愚痴になり得る体験談を詳細

に語っている。 

 

(24) [Three Couples ( (21) の続き) ] 

38 -> A: =[↑それで俺, [九時半の新]幹線で, 横浜から帰りますから.

39 F: [゜(んん)゜ ((口にものを含みながら、Aをみて大きく頷く))

40 D: [ huhuhuh]

41 (0.2)

42 C: 京都に:_

43 (0.2)

44 A: もちろ[んそう.

45 C: [あ::ん.

46 (0.7)

47 D: な:んか, (0.4) せ- 切ないねえ.

48 C: nH[h heh he [heheheheh

49 A: [(切ないよ切な[いよ)

50 D: [HHHahahhahhahhah

51 B: .kh .hh hahahah

52 (0.9)

Page 19: Pls17 Yokomori

『言語科学論集』第 17号  (2011)  67

53 A: [そうですよ.]

54 F: [ う : : ]ん.

55 (0.7)

56 A: 出張, sh- 入れて.

57 (0.2)

58 D: う[::ん.

59 A: [ミーティング[終わって.

60 C: [hhh

61 (0.2)

62 A: 六時ぐらいまで- ミーティングなんてした日なんてさあ,=

63 =.h [も三時半くらいから空いとる訳ですよ.

64 D: [う:ん.

65 (.)

66 B: ゚ う:[ん.゜

67 C: [あ : [: : :.

68 D: [ふ : [: : ん?

69 A: [(ほいで)品川,

70 (0.4)

71 A: 高輪口んとこで俺ずっ[と, カフェ]ですよ.

72 B: [そうだね:_]

73 D: h[huhuh

74 C: [ghhhhHuh

75 A: ほんとに, 何を語りだすかっていう.=

76 B: =(そ(h)う(h))な(h)に(h)を(h)語りだす

 

75 行目では、A 自身が愚痴語りという活動が行き過ぎた(と B から非難され得る状況であ

る)ことを認識していることが示され、それに協調的に応答する B の発話(76 行目)によ

って、この愚痴語りの活動は完了を迎えている。

このように、それまでに展開している話題と活動から自分の経験談へと話題と活動を転

換するという行為の達成に「カラ節単独発話」が利用されるというケースも確認された。

4.4 データ分析のまとめと考察 

本節ではここまで、自然会話コーパスの観察に基づき、「カラ節単独発話」の連鎖と行為

のパターンを検討した。筆者の手元のデータにおける顕著なパターンとして、第一に「先

行文脈で話題になっている事柄に関する理由を説明する」というもの、第二に「直前の時

点における聞き手の認識上の問題を是正する」というもの、第三に「直前の時点において

聞き手が充分に認識していない事柄を告知する」というものの存在が見出された。また、

第三のパターンには、先行文脈で問題になった相手の認識不足に志向する「相手が気付い

ていないニュースの告知」というケースと、ある情報を<先行文脈の時点で認識しておく

価値があった>ものとしてマークすることによる「自分の体験談への話題と活動の転換」

Page 20: Pls17 Yokomori

68 

というケースが存在することも見出された。 

4.1 節で述べたように、「先行文脈で話題になっている事柄に関する理由を説明する」と

いう行為は、<主節の理由を示す>というカラ節の本来の用法からの自然に理解されるも

のである。では、第二・第三のカテゴリーに見られる連鎖と行為のパターンは、相互にど

のように関係し、また、それらはカラという接続助詞の性質とどのように関係しているだ

ろうか。 

第二・第三のカテゴリーに見られる連鎖と行為のパターンに共通しているのは、「直前の

時点における認識を改めることを聞き手に求める」という点である。<認識を改める>こ

との一つのサブタイプが<認識を是正する>ことであり、別のサブタイプが<相手が十分

に認識していない事柄を認識させる>ということである。そして、相手が十分に認識して

いないという事実は、先行文脈のやり取りの中で解消すべき問題として立ち現れる場合も

あれば、ある情報を遡及的に<先行文脈の時点で認識しておく価値があった>ものとして

マークするという場合もあり得る。 

したがって、少なくとも手元のデータに見出せるパターンに基づけば、次のようにタク

ソノミックな整理を与えることができるだろう。「カラ節単独発話」が生起する連鎖と行為

のパターンは、まず、  (A)「先行文脈で話題になっている事柄に関する理由を説明する」タ

イプと  (B)「直前の時点における認識を改めることを聞き手に求める」タイプに大別できる。

後者はさらに  (B‐1)「直前の時点における聞き手の認識上の問題を是正する」タイプと  (B‐2)

「直前の時点において聞き手が充分に認識していない事柄を告知する」タイプに分類でき

る。そして、  (B‐2) には、  (B‐2‐1)「相手が気付いていないニュースの告知」や  (B‐2‐2)「自

分の体験談への話題と活動の転換」といったタイプが含まれている。以上をまとめたのが

図 1である。 

 

 

┌(A) 直前に話題になっている事柄について、理由の説明を与える 

│ 

└(B) 直前における聞き手の認識を改めさせる 

│┌(B‐1) 直前における聞き手の認識上の問題を是正する 

└┤ 

└(B‐2) 直前の時点において聞き手が充分に認識していないことを知らせる 

│┌(B‐2‐1) 相手が気付いていないニュースの告知 

└┤ 

└(B‐2‐2) 自分の体験談への話題と活動の転換 

 

図 1 「カラ節単独発話」の連鎖と行為のパターンの類型 

 

本稿の 2.2 節および 4.2 節では、「カラ節単独発話」はカラをヨ・ノ・ノダといった他の

助詞・助動詞と置き換えた文を作った場合、それらの語用論的特徴の違いを明示的に規定

することが難しいということを述べた。このような語用論的特徴の類似性は、カラおよび

ヨ・ノ・ノダなどでマークされる文がいずれも広い意味での「聞き手への情報告知」と結

Page 21: Pls17 Yokomori

『言語科学論集』第 17号  (2011)  69

びついている、という点に求められるだろう 8。翻って考えてみれば、カラおよびヨ・ノ・

ノダの相違点は、「単に情報を告知するだけでなく、その情報告知がどのような連鎖上の性

格を持つのか」という点に見出すことができると考えられる。このような観点から、本稿

のデータ分析結果に基づいて、「カラ節単独発話」の特性を次のように定式化する。 

 

(25)  「カラ節単独発話」は、単に情報告知するだけでなく、「直前のやり取りに表れた相

手の認識を改めさせる」という連鎖上の性格を持った情報告知を行う。 

 

以上で論じられた、「カラ節単独発話」の連鎖と行為の構造を図示したのが図 2である。 

 

 

[1] 参与者 Bが、何らかの振る舞いによって、認識上の問題点や不備を公にする 

↓ 

[2] 参与者 Aが、Bの認識を改めさせる情報を「カラ節単独発話」で提供する 

(  [1] の時点における Bの認識上の問題点や不備を遡及的にマークする) 

↓ 

[3] 参与者 Bが、認識を改める 

(間違いを適切なものに正す、ニュースを受け止める、相手の体験談への転換に従う) 

 

図 2 「カラ節単独発話」の連鎖と行為の構造 

 

このように、連鎖をスコープとする分析に依拠することで、「カラ節単独発話」の語用論的

特徴を従来よりも特定的な形で定式化することができた 9。 

では、ここまでに論じてきた「カラ節単独発話」の秩序は、主節を伴う場合のカラ節の

用法(接続助詞カラの本来の用法)とどのように関連しているだろうか。筆者は別稿にお

いて、やはり相互行為上のパターンに注目して接続助詞カラとノデの比較を行った(横森 

2010)。それによれば、ノデ節が「そのままでは内容理解ができない可能性のある主節の情

報伝達の理解を助けるために、背景的な事情を伝えるもの」であるのに対し、カラ節は「そ

のままでは受け入れられ難い可能性のある主張・判断を受け入れられ易くするために、そ

の主張・判断の妥当性を示し、その主張・判断を導くもの」であると定式化できる。この

定式化が妥当であれば、相手の認識を改めさせるという「カラ節単独発話」の働きもまた、

「そのままでは受け入れられ難いかもしれない主張・判断を受け入れられ易くする」とい

う接続助詞カラの性質が相互行為上の要請に応じて利用される一つのあり方である、とい

うように整合的に理解することができる。すなわち、一見すると文法からの逸脱と見なさ

れる「カラ節単独発話」という現象は、接続助詞カラの文法的知識が相互行為の中で利用

された結果として創発した、秩序立った言語現象として捉えることができる。 

 

5. 結語 

本稿では、現代日本語における「カラ節単独発話」という言語現象を取り上げ、一見す

ると文法からの逸脱のように見えるこの現象が、実際には秩序立って産出されていること

Page 22: Pls17 Yokomori

70 

を示した。また、従来の言語学的研究の多くが「単一の発話」をスコープとして分析を行

う傾向があるのに対し、本稿では、「発話間の連鎖」をスコープとするアプローチを採用し、

その有効性を示した。具体的なデータ分析においては、自然会話データの観察と会話分析

の知見に基づく議論に基づき、「カラ節単独発話」が産出される顕著なパターンをいくつか

同定し、相互関係を素描した。さらに、その分析結果に基づいて、「カラ節単独発話」は、

単に情報告知をするだけでなく、「直前のやり取りに表れた相手の認識を改めさせる」とい

う連鎖上の性格を持った情報告知を行うものとして定式化した。そしてこのような「カラ

節単独発話」の性質は、接続助詞カラの本来の用法における相互行為上の性質(横森  2010)

と整合的である可能性が示唆された。 

このように、話し言葉データにおける一見するとエラーやノイズのような言語運用の現

象も、その実態を微視的に観察すると、決してランダムではなく、母語話者の語彙や文法

に関する知識が精密に反映されていることに気付くことができる。言語を運用する主体は、

その言語知識を秩序立てて利用することで、相互行為の営みを達成しているのである。そ

の意味で、こういった意味で、現実の言語使用のデータは、すなわち母語話者の持つ文法

的知識の実態を明らかにする鏡として、文法研究に積極的に活用する意義がある。 

なお、本稿における最も重要な論点の一つは、「連鎖」をスコープとして分析することに

よって、一見すると逸脱的な文法現象の中にも秩序を見出すことができる可能性がある、

という点である。実は、文法研究におけるこのような方向性は完全に新奇のアイディアと

いうわけではない。 

例えば Harvey  Sacks は 1964 年の講義の中で、単一の文を分析の単位とする傾向にある

言語学研究の唯一の例外として Fries  (1952) を挙げている  (Sacks  1992a:  95) 。また、

McCawley (1988: 10) は  “While  the sentence  is  the unit on which  the greatest amount of 

attention will be lavished in this book, I (unlike most syntacticians) take syntax to include 

principles constraining the combination of sentences and/or other units into larger units of 

discourse.” と、文を超えた範囲の統語論の可能性に言及している。さらに近年では、山梨 

(2009: 233‐236) が、「グローバル構文」という概念のもと、単文ではなく対話の連鎖を単位

として構文の特徴づけを行う意義を唱えている。山梨  (2009) の「構文によっては、その前

後の構文との関係が理解できない限り、意味が把握できない事例が広範に存在する」(p. 

236) 、そして「これまでの構文文法の研究は、構文が生起する対話文脈やテクスト文脈を

捨象し、それぞれの文自体の構文的な意味だけを問題にしている」(ibid.) という指摘は、

まさに本稿の問題意識と重なり合うものである。 

言語学の分野において、単一の文や発話よりも広いスコープをもつ文法研究の実践は決

して数多く行われてはいない。しかしながら、その重要性の認識は少しずつ高まりを見せ

ており、今後の言語学が向かう方向性の一つとしての地位にあると言える。この小論が、

そのような研究潮流の展開にわずかながらも寄与するところがあれば幸いである。 

 

 

謝辞 

本稿の執筆にあたり、多くの方々のお世話になった。ここに記して感謝の意を表したい。

『千葉大 3 人会話コーパス』の利用は、伝康晴氏(千葉大学)のご厚意により可能になっ

Page 23: Pls17 Yokomori

『言語科学論集』第 17号  (2011)  71

た。また、「カラ節単独発話」の分析を進める段階では、林誠(イリノイ大学)、下谷麻記

(関西外国語大学)、遠藤智子(日本学術振興会/京都大学)の各氏より有益なコメントを

頂いた。さらに、会話断片  (22) に関しては、2011 年 8 月 30 日に開催された会話分析研究

会データセッション(於 関西学院大学・梅田キャンパス)において、研究会メンバーの

諸氏より数多くの有益な意見を頂くことができた。もちろん、本稿に残る誤りと不備はす

べて筆者個人に帰するものである。 

 

付録:自然会話データの書き起こし記法 

基本的には会話分析の分野における書き起こし記法のスタンダードである Jefferson  (2004) 

に準拠している。なお、笑いや非言語的音声は、ローマ字により可能な限りその音声的特

徴の再現に努めた。また、分析の焦点である接続助詞カラは太字ゴシック体で記した。 

 

凡例  意味 

(.) 0.2秒未満のわずかな無音区間

(0.2) 0.2秒以上の無音区間は、秒数を小数点第一位まで記す

.h 吸気音(「引き笑い」の音声も含む)

h 呼気音(笑い声も含む)

は(h)い 言語音が、笑い声など呼気音まじりで産出されている場合、その音を表す文字の直後に

(h)と記す。

$はい$ 笑い声は起きていないが、笑いの表情を伴ったような声色の場合、その区間を$で囲む。

^はい プロミネンスのある音の直前に^を記す。

はい 強い音や大きい音は、その区間に下線を施す。

↑は↓い 音の高さに有標な上下がある場合、矢印で記す。

゜はい゜ 小さい音は、その区間を゜で囲む。

(はい) 音声がはっきり聞き取れない区間は、聞き取りの候補を丸括弧で囲む。

「はい」 声色等によって発言や思考の引用としてマークされている部分は鍵括弧で囲む。

<はい> 周囲の語より、相対的にゆっくりと産出されている区間は< >で囲む。

>はい< 周囲の語より、相対的に早口で産出されている区間は> <で囲む。

はい. 下降音調で韻律的な切れ目がある場合。書き言葉と異なり、統語や意味的な切れ目や、発

話行為(疑問か主張かなど)とは完全に独立である(以下も同様)。

はい_ 平板な音調で韻律的な切れ目がある場合。

はい? 上昇する音調で韻律的な切れ目がある場合。

はい, すぐに言葉が続きそうな形で、韻律的な切れ目がある場合。

は- 産出しかけた言葉を途中で切った場合。

はい: 音が引き伸ばされる場合。

=はい 無音区間が一切無く発話の産出が続いた場合。

は[い] 複数の話者の声が重複した場合、[ ]でその区間を示す。

((Aに視線)) 文脈情報や非言語的行動は、二重括弧で記す。

-> その断片の分析において特に注目する行を示す。

Page 24: Pls17 Yokomori

72 

注 

1 ここでは、「統語的に完結した文でなければ発話として完結できない」という一般的な想

定に言及しているのではなく、あくまでカラ節という特定の言語形式に関する完結性・未

完結性を問題にしていることに注意されたい。 

 

2 従属節が主節のように振る舞うという現象は、日本語に限らず世界中の言語で報告され

ており、Insubordination(Evans 2007; cf. 堀江・パルデシ  2009: 126)と呼ばれている。Evans 

(2007) は、Insubordinationの一つの例として、本稿で扱うような日本語における副詞節単

独発話の現象を取り上げている。 

 

3 ある発話形式の語用論的効果の記述に関する言語学の伝統的アプローチにおける問題点

と、連鎖という視点を導入する必要性については Heritage & Sorjonen (1994: 2) にも論じら

れている。 

 

4 これは、「発話の言語形式や意味内容は、その発話による行為の決定に全く貢献しない」

という主張をするものではない。ただし、伝統的な言語学や語用論における、発話の言語

形式や意味内容こそが解釈の<出発点>であり、場合によっては文脈が解釈に影響を与え

る、という、発話中心的・言語中心的な姿勢に再考を促すものである。この種の問題に関

する詳細は Schegloff (1988) を参照されたい。また、発話の言語形式や意味内容が、行為と

しての性質に及ぼす影響については、例えば Schegloff (1996: 171) において検討されている。 

 

5 西阪  (2008) は、日本語の会話データを用いて「準備の準備」の概念について解説してい

る。 

 

6 カラ節の後置現象については、Yokomori (2008) を参照されたい。 

 

7 この会話断片  (12) は会話断片  (24) の直後にあたるため、直前の具体的なやりとりにつ

いてはそちらを参照されたい。 

 

8 日本語参照文法の集大成の一つである日本語記述文法研究会  (2003) では、ヨについて

「その文が表す内容を、聞き手が知っているべき情報として示すという伝達態度を表す」(p. 

242) と、ノダについて「聞き手が認識していない事態を認識させようとする話し手の態度

が表される」(p. 195) と、そしてノについては「「の」の機能は「のだ」と変わらない」(p. 272) 

と記している。 

9 「カラ節単独発話」が特定の相互行為パターンに秩序立った形で用いられているという

ことによって、この表現形式がある種の「キャラクター」に特徴的な言語表現、すなわち

「役割語」(金水  2011)として利用され得るという社会言語学的な事実にも説明がつくよ

うに思われる。例えば、芸人・波田陽区による「ギター侍」という芸では、その決め台詞

における「カラ節単独発話」によって、(先行文脈における振る舞いに現れた)有名人の勘

違いを指摘して笑いものにする、という行為が繰り返し行われ、まさにその行為の繰り返

しによって「ギター侍」というキャラクターを確立している。その実例は次の通り。 

 

 

Page 25: Pls17 Yokomori

『言語科学論集』第 17号  (2011)  73

「スーパーアイドル スーパーアイドル 私1人で歩きたい 私モー娘卒業します 卒業

させて頂きます」って言うじゃな~い?  

アンタ 卒業というより・・・退学ですから! 

残念!保田圭斬り!! 

(2010年 4月 11日放映『お笑いワイドショー マルコポロリ!』(関西テレビ放送)より)

 

また、富樫  (2009) は、ツンデレと呼ばれるキャラクターに関して、文末にカラを用いるこ

とが役割語として働いていることを指摘している。 

 

a. 「電話なんかしてこなくても…寂しくなんてないんだから…」 

b. 「さよならなんて言ってあげないんだから!」 

(富樫  (2009: 289) における株式会社 DEARS『ツンデレカルタ』からの引用)

 

「ツンデレ」というキャラクターの典型的な行為の一つは、「先行文脈における自分の振る

舞い(好意の表れとして解釈される可能性の高い振る舞い)に関して、それを好意の表れ

と解釈することは勘違いである、と強く否定する」ことであり、まさにこの行為に「カラ

節単独発話」の特性が利用されていると言うことができる。 参考文献 

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