pm34 胸部x線写真の読影①

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Point Master 34 胸部X線写真の読影 ABCDEFプロトコール

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Page 1: Pm34 胸部x線写真の読影①

Point Master 34 胸部X線写真の読影 ABCDEFプロトコール

Page 2: Pm34 胸部x線写真の読影①

Point Master 34 胸部X線写真の読影 ABCDEFプロトコール

一分で読む胸部X線写真の読み方

Page 3: Pm34 胸部x線写真の読影①

はじめに

ERでの胸部X線写真の位置づけ 緊急性が高い病態を見逃さない! 素早く読影 読影所見を共有する

ABCDEFプロトコールで順序良く、素早く読

影し、評価・プレゼンできるようになるぞ!

Page 4: Pm34 胸部x線写真の読影①

Density (X線撮影の基礎知識)

bone

water

air

Page 5: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDE(H)Fプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 6: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 7: Pm34 胸部x線写真の読影①

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A assumption (artificial object)

立位P-A撮影 (深吸気時) で人工物はあり ません。

Page 8: Pm34 胸部x線写真の読影①

A assumption

1)撮影姿勢は?

2)斜位撮影か?

3)放射線の線量?

4)深吸気時?

Page 9: Pm34 胸部x線写真の読影①

A assumption (artificial object)

1)撮影姿勢は?

2)斜位撮影か?

3)放射線の線量?

4)深吸気時?

5)人工物は?

挿管チューブの位置は適正か?

CVラインは?

胸腔ドレーンは?

衣服や毛布、カイロ、ペースメーカーなどは?

Page 10: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 11: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

B bone & soft tissue

Page 12: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

B bone & soft tissue

骨軟骨部に異常を認めません。 『胸膜・横隔膜陰影スムーズに追えます。』 ここで言えれば上級者

Page 13: Pm34 胸部x線写真の読影①

B bone & soft tissue

1 of 15

最初に椎体 放射線の線量が適切であるかを評価する。これは中央陰影すなわち心陰影を通じて椎間板が見える条件ならばよい。また椎間板の見え具合と肺野血管陰影の追跡しやすさはほぼ並行しているといわれている。

Page 14: Pm34 胸部x線写真の読影①

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B bone & soft tissue

次に鎖骨 左右の鎖骨胸骨端が椎体突起から等距離であれば斜位になっていないと判断することができる。 斜位撮影のデメリットとしては、気管変位が読めない、右傍気管線が比較できない。心胸郭比(CTR)が測定できない。肺野陰影の大きさが比較できないといったことが挙げられる。

Page 15: Pm34 胸部x線写真の読影①

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B bone & soft tissue

次に肋骨背側部 通常、最頭側は第3肋骨 最尾側は第10-11肋骨 横隔膜は通常第9-10肋間 に存在する

Page 16: Pm34 胸部x線写真の読影①

B bone & soft tissue

1 of 15

次に肋骨腹側部 通常、尾側で横隔膜に最初 にかかるのが第5-6肋骨

Page 17: Pm34 胸部x線写真の読影①

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B bone & soft tissue

① ③

骨が終われば 軟部組織①⇒④

Page 18: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 19: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

C CP angle ( costphrenic angle)

両側 CP angle は sharp です。 少量の胸水の把握ができる

Page 20: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 21: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

D deviations of trachea

気管の偏位や 気管内異常陰影 はありません。 ①右気管傍線の肥厚なし ②奇静脈弓の拡張なし ③奇静脈食道線の途絶なし ここで言えれば上級者

Page 22: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 23: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

E enlargement (cardiac dilatation)

心拡大 はありません。

Page 24: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) H heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 25: Pm34 胸部x線写真の読影①

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H heart shadow & pulmonary hilum

左右心陰影 スムーズに追えます。

Page 26: Pm34 胸部x線写真の読影①

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H heart shadow & pulmonary hilum

下行大動脈 スムーズに追えます

Page 27: Pm34 胸部x線写真の読影①

H heart shadow & pulmonary hilum

左右肺門部の 拡大ありません 肺門部の陰影とは正常の場合は肺動脈のことです。 肺動脈の太さの評価は右下肺動脈径(最大16mm) 一見正常に見えても、肺門近くにこれ以上の陰影があれば注意!

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右下肺動脈 この部分が最も太い

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肺の血管走行

Page 29: Pm34 胸部x線写真の読影①

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肺の血管走行

Page 30: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDEFプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum inferior vena cava.

F lung field reference

Page 31: Pm34 胸部x線写真の読影①

1 of 15

F lung field

『肺野に明らかな異常陰影を認めません。』 最も注意すべきことは肺野は縦隔・横隔膜下を含めたかなり広範な範囲に存在する! 正常ならば肺動脈陰影は胸壁から2cm以内に

は見えないといわれており、適正放射線量の指標となる。

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F lung field

片肺ずつ読影

① ②

Page 33: Pm34 胸部x線写真の読影①

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F lung field

次に、両肺野を比較

Page 34: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDE(HI)Fプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum inferior vena cava.

F lung field reference

Page 35: Pm34 胸部x線写真の読影①

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F reference

最後に、必ず以前の画像があるかを確認し比較する!

Page 36: Pm34 胸部x線写真の読影①

Practice A: assumption (artificial object) A

Page 37: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

Practice A: assumption (artificial object)

Page 38: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

Practice B: bone & soft tissue

Page 39: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

Practice B: bone & soft tissue

Page 40: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

Practice C: CP angle ( costphrenic angle)

Page 41: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。

Practice C: CP angle ( costphrenic angle)

Page 42: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D

Practice D: deviations of trachea

Page 43: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

Practice D: deviations of trachea

Page 44: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E

Practice E: enlargement (cardiac dilatation)

Page 45: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E 心拡大はありません。

Practice E: enlargement (cardiac dilatation)

Page 46: Pm34 胸部x線写真の読影①

Practice H heart shadow & pulmonary hilum

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E 心拡大はありません。 H

Page 47: Pm34 胸部x線写真の読影①

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E 心拡大はありません。 H ①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。

Practice H heart shadow & pulmonary hilum

Page 48: Pm34 胸部x線写真の読影①

Practice F: lung field reference

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E 心拡大はありません。 H ①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。 F

Page 49: Pm34 胸部x線写真の読影①

Practice F: lung field reference

A 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。 左右対称、適切な黒化度・コントラストで撮影されている。 胸郭、横隔膜に異常みとめず正しく吸気位である。

B 骨軟骨部に異常を認めません。 鎖骨、気管、縦隔、心陰影、脊椎(胸椎・頸椎)、大動脈弓、続く胸部大動脈は 異常をみとめず。

C 両側 CP angle は sharp です。 D 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。 E 心拡大はありません。 H ①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。 F 肺野に明らかな異常陰影を認め ません。 肺野は左右とも透過度は良好、肺門ならびに肺動脈、気管支の走行は正常。右上葉と中葉の葉間の葉間間裂の線状影がみられるが、肺の異常影は(孤立性陰影を含む)認められない。

Page 50: Pm34 胸部x線写真の読影①

Take-Home Message

ERでは数多くの胸部単純X線写真が撮影される。

緊急性が高い病態を見逃さない! 素早く読影 読影所見を共有

ABCDE(HI)Fプロトコール(定型文)で順序良く、

素早く読影し、評価・表現しよう!

Page 51: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDE(H)Fプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 52: Pm34 胸部x線写真の読影①

胸部X線写真のABCDE(HI)Fプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum inferior vena cava.

F lung field reference

Page 53: Pm34 胸部x線写真の読影①

参考文献

1. 胸部X線診断プロセス 中外医学社 1980 2. ERマガジン レジデント技術全書 2013;10:11-26

3. 胸部レントゲンを読みたいあなたへ 文光堂 2011

4. 胸部X線診断に自信がつく本 カイ書林 2010

Page 54: Pm34 胸部x線写真の読影①

撮影条件の評価

1)まず撮影姿勢が立位、坐位、仰臥位のいずれであるか、またポータブル撮影かどうかを把握しておく。 撮影姿勢とP-A、A-Pの相違により心陰影が過剰に評価される恐れがあり、立位P-A撮影以外での心胸郭比(CTR)測定は参考値としておく。 2)次に斜位撮影になっていないのかを調べる。これは左右の鎖骨胸骨端が椎体突起から等距離であれば斜位になっていないと判断することができる。 斜位撮影のデメリットとしては、気管変位が読めない、右傍気管線が比較できない。心胸郭比(CTR)が測定できない。肺野陰影の大きさが比較できないといったことが挙げられる。 3)肋骨横隔膜角(CPA)の評価が可能かを調べる。これは少量の胸水の把握ができるかどうかを調べるためのものである。熟練した医師ならば打診で胸水量の測定が可能であるといわれている。打診で胸水の変化をとらえそれが重要であると判断したら、胸部X線で証拠を残すべきである。 4)放射線の線量が適切であるかを評価する。これは中央陰影すなわち心陰影を通じて椎間板が見える条件ならばよい。また椎間板の見え具合と肺野血管陰影の追跡しやすさはほぼ並行しているといわれている。正常ならば肺動脈陰影は胸壁から2cm以内には見えないといわれておりこれも一つの指標となる。 5)深吸気時に撮影されているのかを評価する。これは指標がなく、経過から予測するしかない。呼気撮影では心臓の拡大、肺門部陰影の拡大、肺野の透過性の低下が問題となる。特に下肺野の透過性の低下は病的な状態と鑑別が困難である。