pm34 胸部x線写真の読影③

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Point Master 34 胸部X線写真の読影③

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Page 1: Pm34 胸部x線写真の読影③

Point Master 34 胸部X線写真の読影③

Page 2: Pm34 胸部x線写真の読影③

Point Master 34 胸部X線写真の読影 ABCDEFプロトコール

一分で読む胸部X線写真の読み方

Page 3: Pm34 胸部x線写真の読影③

胸部X線写真のABCDE(H)Fプロトコール

A assumption (artificial object)

B bone & soft tissue

C CP angle ( costphrenic angle)

D deviations of trachea

E enlargement ( cardiac dilatation ) heart shadow & pulmonary hilum

F lung field reference

Page 4: Pm34 胸部x線写真の読影③

63歳男性:胸部異常陰影

CXR(P→A)

Page 5: Pm34 胸部x線写真の読影③

63歳男性:胸部異常陰影

CXR(P→A)

Page 6: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。

F) 右下肺野に径4cm程度の淡い濃度上昇域がある。肺血管影や、右横隔膜、肋骨との境界は明瞭。腫瘤影の上部内側の境界は明瞭だが、外側の境界は不明瞭。腫瘤影の上部、内側については辺縁は平滑。明らかなnotchやspiculationは認められない。また内部に明らかな石灰化も認められない。

【評価】 肺外病変 (胸膜、胸膜腔も含む) 脂肪腫(疑い)

Page 7: Pm34 胸部x線写真の読影③

63歳男性:胸部異常陰影

縦隔条件で右肺中葉腹側のレベルで胸膜に 接する形で脂肪の濃度(CT値0H.U.未満)のmass lesionを認める。内部の濃度は均一ではないが

いずれも脂肪の濃度である。辺縁の境界は明瞭、胸膜 側に広く接しており、立ち上がりはなだらかである。

Page 8: Pm34 胸部x線写真の読影③

解説

胸部単純X線写真において陰影の辺縁の一部のみが鮮明に認められることを、incomplete border sign といい、病変が肺外(もしくは胸膜腔、胸膜)にあることを示唆する所見である。

境界が明瞭な部位については腫瘤の境界がX線の方向に対して平行であり、境界が不明瞭な部位については腫瘤の境界がX線の方向に対して平行でないことがCTの所見と比べて明らかである。

本症例については病変の確定診断は得られていないがCTの濃度が低いことより、脂肪原性腫瘍(おそらく胸膜レベルの lipoma)が考えられた。

Page 9: Pm34 胸部x線写真の読影③

incomplete border sign (不完全辺縁徴候)

胸壁もしくは体表の病変で、突出している部分はX線束と正接して明瞭な輪郭を呈し、なだらかに生体へ移行する対側の部分は辺縁が不明瞭となる。

胸壁の腫瘍じゃないかと考える。 Nipple shadowです。

Page 10: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

Page 11: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

Page 12: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

Page 13: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。

F) 両側性にびまん性の粒状結節状影を認める。 【評価】 全肺野びまん性散布性に4-5mm大の肺胞性の粒状結節状影が見られる。

Page 14: Pm34 胸部x線写真の読影③

間質性陰影と肺胞性陰影

1. 間質性陰影 (肺の間質に炎症がある時の特徴) 線状影・輪状影・網状影・蜂窩肺・すりガラス状影など

2. 肺胞性陰影 (肺実質すなわち肺胞内に炎症細胞が浸潤している時の特徴) コンソリデ-ション・浸潤影・融合像 細葉結節影・斑状影・塊状影・すりガラス状影など

3. 結節性陰影 (肺実質・間質の境界なく腫瘤様陰影をつくる時の特徴) 粒状影・微小結節・小結節・大結節・腫瘤影

Page 15: Pm34 胸部x線写真の読影③

小葉の正常と細胞浸潤(肺胞性肺炎)

[右]空気だけで何もない気腔(肺胞内)に多数の細胞浸潤(好中球)をみとめる。細菌に

よる肺胞性肺炎の場合このような変化になる。

[左]正常の小葉、明らかな小葉間隔壁に囲まれ中の蜂の巣様の1つ1つが肺胞、中は何も

ない気腔。中央の管状の構造は細気管支の断面。

Page 16: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

Page 17: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

大小不同の結節状陰影が両側、散布性に認められる。 小結節の分布は、個々の結節の間隔が一様であり、いわゆる小葉中心性の分布を示しているものが多いが、典型的ではない。

Page 18: Pm34 胸部x線写真の読影③

Chickenpox pneumonea (水痘帯状疱疹ウイルスによる肺炎)

ウイルス性肺炎概要

ウイルス性肺炎は、臨床上、呼吸器を標的とする呼吸器系ウイルスによる急性感染と、呼吸器以外の臓器を標的とする系統的ウイルスによる全身感染症の合併症としての肺炎に大別される。 前者(呼吸器系ウイルス)として、インフルエンザ、アデノ、RS、パラインフルエンザ等のウイルスがある。このうちインフルエンザウイルス(特にA型)によるものが代表的であり、純粋なウイルスのみによる肺炎の他,細菌(肺炎球菌、ブドウ球菌インフルエンザ菌等)の二次感染による肺炎も多い。なお、アデノ、RS、パラインフルエンザ各ウイルスによる肺炎は小児が主で、成人には稀である。 また後者(系統的ウイルス)として、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスなどがある。近年、悪性腫瘍や膠原病、糖尿病等の基礎疾患を有する症例、あるいはAIDSや免疫抑制剤投与中の immuno-compromised host において、サイトメガロウイルスなどの系統的ウイルスによる日和見感染が注目されている。

Page 19: Pm34 胸部x線写真の読影③

Chickenpox pneumonea (水痘帯状疱疹ウイルスによる肺炎)

水痘帯状疱疹ウイルス varicella-zoster virus による初感染巣が水痘 varicella(別名 chickenpox)であり、小児期に発症。 その後、体内に潜伏したウイルスが再活性化されて出現する病態が帯状疱疹(herpes-zoster)である。 小児の水痘における肺炎合併はまれであるのに対し、成人で水痘を発症した場合、15-20%に肺炎を合併し、重症化しやすく、死亡率は10-20%にもなるといわれている。 臨床像:皮疹出現後、数日を経過して肺炎が出現し、咳嗽、喀血、呼吸困難、胸痛などが見られる。白血球増多症を示すことがある。また、皮疹を呈することなく肺炎を起こすことはまれである。

Page 20: Pm34 胸部x線写真の読影③

ウイルス性肺炎の胸部X線像

原因ウイルスによって多彩な所見を呈する。しかしX線のみでは原因ウイルスを鑑別することは困難である。 水痘帯状疱疹ウイルスによる肺炎の胸部X線変化は以下のようである。 1)急性期には、全肺野びまん性散布性に4-5mm大の肺胞性の粒状

結節状影が見られる。粒状影が肺門周囲部や肺底部で密に分布し、融合して見えるが、広範な融合像や均等影を示すことはほとんどない。肺門部リンパ節腫大を示すこともある。胸水貯留は見られない。肺野の浸潤影は、一部で消退しながら別の肺野に新たに出現することがある。 2)通常1週間後には消退傾向を示し、10日後にはかなり改善するが、臨床症状が1-2週でほとんど改善することと比較すると、X線像の吸収

は遅い。消退に要する時間は症例により異なり、約2週間で完全に吸収するものから、数ヶ月以上を要するものまである。

Page 21: Pm34 胸部x線写真の読影③

42歳男性: 発熱、全身性水泡

診断:

発疹の性状などから、ある程度推定可能だが、より正確な診断のためには、

・ウイルスの分離培養 ・抗原検出法 ・血清診断法

などが必要となる。本症例では血清診断法として、varicella-zoster virus の IgM抗体が強陽性を示し、きわめて最近の水痘帯状疱疹ウイルス感染があることが証明された。 治療、予後:

アシクロビル、ビダラビンが有効である。本症例ではアシクロビルの点滴静注投与にて症状改善し、軽快退院となった。

Page 22: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

6年前から咳嗽、喀痰の症状あり。 検診にて胸部異常陰影を指摘。 立位PA

Page 23: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

6年前から咳嗽、喀痰の症状あり。 検診にて胸部異常陰影を指摘。 立位PA

Page 24: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

Page 25: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

Page 26: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

Page 27: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。

F) 右肺底部に腫瘤様陰影を認める。右下葉内側後部の肺内の病変と思われる。

【評価】 右下葉内側後部の腫瘤様陰影

Page 29: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

右肺下葉S10に多結節状の病変を認め、病変内部は均一なdensityで比較的造影されにくい。 下行大動脈から右方にfeeding arteryと思われる拡張した異常血管が分岐し、分枝は病変辺縁に分布している。 また、病変上方にdraining veinと思われる血管を認める。 (10mm sliceのCTでは、右下肺静脈に還流していると思われる) 病変周囲には、軽度の気腫状変化が見られる。 尚、再構成像では異常血管が容易に把握できる。

Page 30: Pm34 胸部x線写真の読影③

36歳女性: 咳嗽、喀痰

結果:

確定診断目的で血管造影が行われた。 胸部大動脈下部から右に直接分岐する拡張した異常動脈を認め、右肺下葉S10の病変の辺縁に網状に分布していたが、病変内部はhypovascularであった。 静脈相では、病変内側上方に拡張した還流静脈を認め、右下肺静脈に還流していた。以上より、肺分画症と診断した。 尚、MRIも行われ、T1強調像にて中等度の信号、T2強調像にて著明に高信号、Gd-DTPAにて殆どenhanceされない多結節状の嚢胞性病変を右肺下葉内側後部に認めた。支配動脈も描出された。

Page 31: Pm34 胸部x線写真の読影③

肺分画症 pulmonary sequestration

肺組織の一部が健常肺の気管支系から隔離され、肺循環系ではなく体循環系の動脈から血流を受ける先天性疾患。 単純X線:含気を伴う嚢胞状陰影や腫瘤状陰影。左肺底区に多い。時に浸潤影やair-fluid levelを見る。 CT:多胞性陰影、帯状陰影が特徴的。腫瘤状陰影の場合もある。異常血管はφ5mmあれば描出可能。dynamic CTやthin sliceが有用。時に浸潤影やair-fluid levelを見る。病変周囲に軽度の気腫状変化を認めるという報告もある。 MRI:異常血管が描出可能なことがある。 血管造影:従来は確定診断に必要とされたが、dynamic CTやthin slice CTで十分に存在診断が可能な症例が増加しつつある。異常血管の径は0。5~2cmのものが多い。支配動脈が複数の場合あり(17例/114例との報告)。病変は網状に描出され、還流静脈の早期描出も見られる。 気管支造影:気管支系との交通の欠如の証明に有用であるが、近年は殆ど行われない。

Page 32: Pm34 胸部x線写真の読影③

52歳女性: 胸写異常

Page 33: Pm34 胸部x線写真の読影③

52歳女性: 胸写異常

Page 34: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③両側肺門、縦隔リンパ節の腫大を認める。

F) 肺野には明らかな浸潤影を認めない。

【評価】 両側肺門、縦隔リンパ節の腫大

S/O サルコイドーシス

Page 35: Pm34 胸部x線写真の読影③

52歳女性: 胸写異常

両側肺門、傍気管、気管分岐部、気管分岐下に比較的瘉合傾向の少ないリンパ節腫大を認める。

Page 36: Pm34 胸部x線写真の読影③

サルコイドーシス sarcoidosis

概念

多臓器の非乾酪性の上皮細胞肉芽腫形成性疾患で臨床的には肺に最も好発する。 発生頻度は人口10万人につき10~40例程度で、1/3が検診などの胸部写真で偶然に発見される。 通常は20~40歳代に認められるが、小児や老人にも発見されることがある。 2~3年以内に大半が軽快する予後良好な疾患であり、とくに本邦では欧米の症例に比し、肺病変が進展し呼吸不全にいたる症例は少ない。

Page 37: Pm34 胸部x線写真の読影③

サルコイドーシス sarcoidosis

臨床症状

本症の3割5分から4割が発見時無症状である。全身症状として倦怠感、脱力、体重減少、発熱などがあげられ4割に認められる。

肺病変はほとんど常に認めるが、呼吸器症状を呈するものは3割すぎない。訴えとしては息切れや咳嗽が多く、胸痛はずっと少ない。その他胸水、自然気胸、喀血が稀に見られる。

眼病変は2割から3割にみられ、失明の危険性がある。眼病変の中で肉芽腫性ぶどう膜炎が最も多い。流涙、充血での急激な発症することもあるが、無症状のまま慢性化して緑内障、白内障、失明を続発することもある。

神経系の病変は全体の5分程度に見られる。脳症、肉芽腫性髄膜炎を起こして救急措置を要する場合もある。その他末梢神経、脳神経(顔面神経、視神経)、脊髄、脳幹、視床下部がおかされる。

心病変としては、心筋の刺激伝導系を直接おかし、致死的な不整脈を生じたり、心筋へのびまん性浸潤にもとずくうっ血性心不全、僧帽弁閉鎖不全をおこしたりすることがある。

皮膚病変としては皮膚全層をおかし、表面の丘疹や結節性紅斑、深部の結節が見られる。 肝臓、膵臓の病変は剖検例の7割5分に認める。通常症状としては肝酵素の軽度の上昇がある程度だが、肝脾腫を伴うことがある。

その他少数ではあるが唾液腺や、涙腺がおかされ腫大することや、肉芽腫が骨組織をおかし骨嚢胞を生じることもある。

Page 38: Pm34 胸部x線写真の読影③

27歳男性: 喘息発作

Page 39: Pm34 胸部x線写真の読影③

27歳男性: 喘息発作

Page 40: Pm34 胸部x線写真の読影③

27歳男性: 喘息発作

Page 41: Pm34 胸部x線写真の読影③

27歳男性: 喘息発作

Page 42: Pm34 胸部x線写真の読影③

27歳男性: 喘息発作

Page 43: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 数条の透明な線状陰影が両側頚部の皮下に認められます。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①線状陰影が上縦隔に認められます。 ②下大動脈はスムーズに追えます。 ③両側肺門部に異常を認めません。

F) 肺野には明らかな浸潤影を認めない。

数条の透明な線状陰影が頚部の皮下や上縦隔に認められます。心下縁のシルエットサインが陰性となり横隔膜陰影が明瞭になっています。これは縦隔気腫、皮下気腫の所見です。

【評価】 縦隔気腫 皮下気腫

Page 44: Pm34 胸部x線写真の読影③

縦隔気腫、皮下気腫 (pneumomediastinum, pneumoderma)

喘息の合併症として肺性心や無気肺、肋骨骨折、慢性副鼻腔炎、中耳炎、結膜炎などが挙げられるが、自然気胸、縦隔気腫、皮下気腫の合併も、まれではない。小児で発作時に起こったり、高齢者にもときに見られる。 縦隔気腫とは縦隔内に空気の貯留した状態をいう。縦隔の空気は頚部や後腹膜から入ってくる場合や、気管や食道の破裂・穿孔による場合がある。また気管支喘息発作時に生じる縦隔気腫は肺胞が圧の上昇によって破裂し、空気が肺血管・気管支周囲の間質を通って縦隔に集まるものである。 皮下気腫は縦隔気腫、胸壁外傷後、開胸術後などに発生する。空気が頚部の筋膜面に沿って上方に広がるために生じる。胸壁や頚部の皮下、高度なものでは胸筋内に線状のガス像が認められる。皮下気腫は画像診断的に縦隔気腫の存在を疑う重要な所見となる。

Page 45: Pm34 胸部x線写真の読影③

縦隔気腫、皮下気腫 (pneumomediastinum, pneumoderma)

胸部X線像: 胸部正面像にて上縦隔から頚部にかけて、また心臓辺縁に沿う垂直な空気の層の存在を認める。縦隔胸膜が胸膜腔側に押され、毛髪線として見えることがある。軽度の縦隔気腫では縦隔構造左縁に沿ってわずかな透亮域を示す。 側面像では特に胸骨後腔と大動脈弓や肺動脈などの大血管周囲に空気貯留を認める。食道損傷による縦隔気腫では下部食道が好発部位であるため横隔膜直上の左傍脊椎部に出現する限局性皮下気腫がその早期像として重要である。 縦隔内に出血を伴うと上縦隔の拡大および、ときに気管、食道の偏位を生じることがある。臨床的には縦隔気腫を診断することはもちろんだが、その原因を明らかにすることが大切である。なぜならその原因および程度によって予後は全く異なるからである。

Page 46: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

ER portable

Page 47: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

Page 48: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

Page 49: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

Page 50: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) ER portable APで人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①上縦隔の拡大あり ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大?

F) 肺野にびまん性に3~5mm大の粒状影が主体の病変が見られる。

1~2mm径の典型的な粟粒影が両肺野に均等に密に分布しているのが古典的には見られる。 (粟粒結核は粒状影が主体のX線像を呈する疾患の代表的なものである。粒状影と呼ぶのは通常径5mmまでの小円形陰影で、その辺縁は比較的明瞭なものである。微小結節影あるいは粟粒影と呼ばれることもある。但し、粟粒影とは厳密には径1~2mmのものとされる。このような微小な病変がびまん性に分布すると、胸部単純X線像で検出される理由として、病変の重積効果が挙げられる。) 胸部単純X線写真でびまん性粒状影を示す疾患の鑑別 ①塵肺 ②粟粒結核 ③真菌(アスペルギルス、クリプトコッカス) ④水痘肺炎 ⑤転移性肺腫瘍 ⑥サルコイドーシス

Page 51: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

Page 52: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

Page 53: Pm34 胸部x線写真の読影③

65歳女性: 意識障害、発熱

【CT・HRCT 所見】 微細粒状影を全肺野にびまん性に認める。 粒状影は2次小葉構造との位置関係で言うと、特定の部位に無関係に存在していて、血行性散布病変が示唆される。 HRCT(high-resolution CT) CT像のなかでもスライス厚2mm以下(1mm、0.5mm)で肺用の(輪郭を強調した)再構成関数を用いて、20cm前後程度の表示視野(DFOV)で片肺など表示した高分解能CTは、肺の病理像をよく反映した画像を表示できます。 HRCTは、肺のびまん性疾患の解析に際しては、肺の二次小葉を診断の基本的単位とする考えかたに応用されています。

Page 54: Pm34 胸部x線写真の読影③

粟粒結核 (miliary tuberculosis)

結核でびまん性粒状影を呈するのは血行性散布による粟粒結核である。

胸部単純X線上、径が1~2mmまでの典型的な粟粒影を呈するものは少なく、3~5mmの粒状影が主体のものが多いと言われている。

発病形式は、初感染リンパ節病巣から鎖骨下静脈に流入した菌によって血行性に生ずる早期播種型と、肺内または他臓器の2次結核病巣から直接血管に穿孔し進展する晩期播種型に大別される。

(晩期播種型は高齢が発症の因子として重要であると言われている。また肺以外の臓器からの進展は晩期播種型の20%前後に見られるといわれており、晩期播種型が疑われた場合は他臓器の結核の有無の検索が必要である。)

免疫力の低下した患者では発熱を欠き、ツベルクリン反応も陰性であることが多い。喀痰からの結核菌の検出は必ずしも多くない。確定診断のためには気管支ファイバーでの肺生検が必要となることもある。 (髄膜炎を併発したり、時にARDSを合併する場合もあり、緊急に診断を確定することが要求される。)

Page 55: Pm34 胸部x線写真の読影③

55歳男性: 感冒様症状・胸写異常

2週間ほど前から悪寒・咽頭発赤などにて近医でfollowされていた。 3日前から咳が出現。胸写にて異常陰影を指摘される。 立位PA

Page 56: Pm34 胸部x線写真の読影③

55歳男性: 感冒様症状・胸写異常

Page 57: Pm34 胸部x線写真の読影③

55歳男性: 感冒様症状・胸写異常

Page 58: Pm34 胸部x線写真の読影③

55歳男性: 感冒様症状・胸写異常

立位PA (1ヵ月後)

Page 59: Pm34 胸部x線写真の読影③

ABCDE(H)Fプロトコール

A) 立位P-A撮影(深吸気時)で人工物はありません。

B) 骨軟骨部に異常を認めません。

C) 両側 CP angle は sharp です。

D) 気管の偏位や気管内異常陰影はありません。

E) 心拡大はありません。①左右心陰影スムーズに追えます。 ②下大動脈スムーズに追えます。 ③左右肺門部の拡大ありません。

F) 右下肺野に腫瘤様の浸潤影あり。内側は比較的境界明瞭で辺縁もsmoothだが、外側は毛羽立ち様所見が目立つ。(経過観察の写真では、陰影の縮小を認める。)

【評価】 S/O 器質化肺炎

Page 60: Pm34 胸部x線写真の読影③

55歳男性: 感冒様症状・胸写異常

右肺下葉S8に、長径4cm程度の不整形のconsolidationを認める。

気管支に沿って認められ、B8末梢を閉塞している。

中枢側では辺縁は直線的だが、末梢側は辺縁不整で微細なspiculation、葉間胸膜の引き込み像

が認められる。周囲には限局性の淡いスリガラス様所見がみられる。

内部は比較的均一だが、末梢側には多房状の低吸収域がみられ、中枢側では点状石灰化が認められる。

以上、形態的には器質化肺炎をまず考えたい所見。

末梢側の形態より肺癌の可能性を否定出来ず、鑑別に原発性肺癌が挙げられる。

Page 61: Pm34 胸部x線写真の読影③

器質化肺炎

肺炎(とくに細菌性)の初期には、肺胞隔壁は鬱血し、気腔は病原体(細菌)、赤血球、蛋白質濃度の高い浸出液で満たされる。続いて線維素と好中球が気腔に侵入し、病原体を貪食する。やがて気腔は線維素や細胞成分で置換され、肝臓のように硬くなる。これがconsolidationという言葉に対応する状態である。この後肺炎は二つの経過をたどる。正常肺への復帰(肺炎の消退)が器質化である。 ・肺炎の消退 好中球は次第に単球(マクロファージ)にとって代わられ、線維素は好中球のプロテアーゼと単球のプラスミノーゲン活性物質によって溶解され、浸出液は呼出されるか貪食され、やがて気腔に空気が戻ってくる。細菌性肺炎の主座は気腔にあり、肺胞隔壁は比較的冒されないため、気腔内の液体や細胞成分が空気に置換されることによって、完全に元の正常な状態に戻ることが可能である。 ・器質化 何らかの理由により肺炎の消退が遅れると、肺胞隔壁から線維芽細胞が気腔に侵出し、残存する線維素を線維素織に置換する。器質化されるのは気管支が閉塞してしまう場合(気腔内容と空気の置換が遅れる)、既存構造の破壊が強い場合(好中球や単球が不足する)、あるいは不適切に抗生剤が使用された場合などである。病変の器質化が始まっても大部分は正常化し、一部の線維化が進行して、a)無気肺状に残るもの、b)一部が結節状に残るもの、c)ほぼ全体が残るもの、などがある。b),c)では腫瘍性病変との鑑別が必要となる。一般に器質化肺炎は多角状で、線維化による収縮を反映して陰影の中心に向かって凹んだ形態を示すことが多い。内部の空気(泡沫状 あるいは air bronchogram)は肺癌に多いとされるが、器質化肺炎でも比較的早い時期には認められる。診断には、何よりも経過が大切と考えられるが、確定診断のためにVATSや小開胸手術が施行される例も時に認められる。

Page 62: Pm34 胸部x線写真の読影③

器質化肺炎

結核でびまん性粒状影を呈するのは血行性散布による粟粒結核である。

胸部単純X線上、径が1~2mmまでの典型的な粟粒影を呈するものは少なく、3~5mmの粒状影が主体のものが多いと言われている。

発病形式は、初感染リンパ節病巣から鎖骨下静脈に流入した菌によって血行性に生ずる早期播種型と、肺内または他臓器の2次結核病巣から直接血管に穿孔し進展する晩期播種型に大別される。

(晩期播種型は高齢が発症の因子として重要であると言われている。また肺以外の臓器からの進展は晩期播種型の20%前後に見られるといわれており、晩期播種型が疑われた場合は他臓器の結核の有無の検索が必要である。)

免疫力の低下した患者では発熱を欠き、ツベルクリン反応も陰性であることが多い。喀痰からの結核菌の検出は必ずしも多くない。確定診断のためには気管支ファイバーでの肺生検が必要となることもある。 (髄膜炎を併発したり、時にARDSを合併する場合もあり、緊急に診断を確定することが要求される。)

Page 63: Pm34 胸部x線写真の読影③

参考文献

1. 胸部X線診断プロセス 中外医学社 1980 2. ERマガジン レジデント技術全書 2013;10:11-26

3. 胸部レントゲンを読みたいあなたへ 文光堂 2011

4. 胸部X線診断に自信がつく本 カイ書林 2010