pre 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ...

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PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリング 議事録 (調整課長) 只今より、第1回 PRE 戦略検討会を開催し、有識者ヒアリングを実施いたします。 有識者の皆様方におかれましては、ご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありが とうございます。まず、本日、ご出席いただいております有識者の皆様をご紹介させてい ただきます。有識者の皆様方の右手から、 首都大学東京 都市環境学部特任教授 山本康友様。 一橋大学大学院 商学研究科教授 山内弘隆様。 みずほ信託銀行不動産コンサルティング部部長 久木野良樹様。 同不動産コンサルティング部次長 星野拓実様。 でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 検討会の開催にあたりまして、池田財務副大臣より、ご挨拶をさせていただきます。 (池田副大臣) 副大臣を務めております池田元久でございます。今日は、大変お忙しい中ご出席をいた だきまして、大変ありがたく存じております。 財務省では、菅前大臣、現総理のご指示を踏まえ、「新成長戦略」における施策の実施に 併せ、国有財産の一層の有効活用を図るべく、民間有識者の方々や、幅広く一般の方々か らご意見等をいただき、本年6月に「新成長戦略における国有財産の有効活用について」 を取りまとめたところでございます。この「新成長戦略における国有財産の有効活用につ いて」においては、庁舎・宿舎を含む国有財産について、「PRE戦略」の考え方等を踏ま えた検討を行うこととしております。本ヒアリングは、国有財産における不動産の最適化 戦略の考え方を踏まえた検討、及び併せて行うこととしております公務員宿舎の在り方の 検討を行うに際し、専門家である皆様からのご提案を伺いたい、という考えから開かせて いただいた次第です。 本日は、皆様より忌憚のないご提案を伺い、また、我々の問題意識を率直に述べさせて いただくことで、有意義な議論の場となることを望んおります。それでは、本日、宜しく お願い申し上げます。 (調整課長) まず、事務方より、本日配布させて頂いております資料を若干ご説明させて頂きます。 説明資料と参考資料とご用意させて頂いてございますが、説明資料につきまして、簡単に ご説明申し上げます。 1枚おめくりいただきますと、副大臣からご挨拶にございました、「新成長戦略における - 1 -

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Page 1: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

「PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリング 議事録

(調整課長)

只今より、第1回 PRE 戦略検討会を開催し、有識者ヒアリングを実施いたします。

有識者の皆様方におかれましては、ご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありが

とうございます。まず、本日、ご出席いただいております有識者の皆様をご紹介させてい

ただきます。有識者の皆様方の右手から、

首都大学東京 都市環境学部特任教授 山本康友様。

一橋大学大学院 商学研究科教授 山内弘隆様。

みずほ信託銀行不動産コンサルティング部部長 久木野良樹様。

同不動産コンサルティング部次長 星野拓実様。

でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

検討会の開催にあたりまして、池田財務副大臣より、ご挨拶をさせていただきます。

(池田副大臣)

副大臣を務めております池田元久でございます。今日は、大変お忙しい中ご出席をいた

だきまして、大変ありがたく存じております。

財務省では、菅前大臣、現総理のご指示を踏まえ、「新成長戦略」における施策の実施に

併せ、国有財産の一層の有効活用を図るべく、民間有識者の方々や、幅広く一般の方々か

らご意見等をいただき、本年6月に「新成長戦略における国有財産の有効活用について」

を取りまとめたところでございます。この「新成長戦略における国有財産の有効活用につ

いて」においては、庁舎・宿舎を含む国有財産について、「PRE戦略」の考え方等を踏ま

えた検討を行うこととしております。本ヒアリングは、国有財産における不動産の 適化

戦略の考え方を踏まえた検討、及び併せて行うこととしております公務員宿舎の在り方の

検討を行うに際し、専門家である皆様からのご提案を伺いたい、という考えから開かせて

いただいた次第です。

本日は、皆様より忌憚のないご提案を伺い、また、我々の問題意識を率直に述べさせて

いただくことで、有意義な議論の場となることを望んおります。それでは、本日、宜しく

お願い申し上げます。

(調整課長)

まず、事務方より、本日配布させて頂いております資料を若干ご説明させて頂きます。

説明資料と参考資料とご用意させて頂いてございますが、説明資料につきまして、簡単に

ご説明申し上げます。

1枚おめくりいただきますと、副大臣からご挨拶にございました、「新成長戦略における

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Page 2: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

国有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

3.の今後の取組みで、庁舎・宿舎を含む国有財産について、PRE(Public Real Estate)

戦略(不動産の 適化戦略)の考え方等を踏まえた検討を行う必要があるということでご

ざいまして、こういうことでこの検討会を開催させていただいているものでございます。

また、公務員宿舎につきましては、この上の1.の(2)というところにその在り方につ

いて検討する、集約化を推進し、跡地の創出を目指す、という記述がされてございますが、

いずれにしても、昨年11月の事業仕分け結果を踏まえて、そのあり方を検討する必要が

ございます。公務員宿舎につきましては、国有財産としての効率的な管理・運用方策や、

地域との連携等を視野に入れた検討が必要と、こういったことで本検討会の中で併せて検

討するということにしているものでございます。

もう一枚おめくりいただきまして、この紙は現時点で財務省として考えているPRE戦

略の策定についての検討イメージでございます。 初に上の囲みでございますが、国有財

産をとりまく現状ということでございまして、財務省は国有財産全体を総括する立場にあ

るということでPRE戦略を推進する基本的な下地があると、いうことでございます。他

方、左のところにございます更なる課題といたしまして、まず庁舎宿舎については各年度

の予算とその執行が中心であると、維持管理コストの把握・分析や、中長期的な更新、投

資計画が策定が行われていないと、いったことですとか、その次としまして、国有財産全

体としてコストパフォーマンスを高めるための取組み、保全状況の監査や、庁舎宿舎の効

率的使用、こういった進める余地がなおあるのではないかといったこと、更には有効活用

のための土地スペースの洗い出しが今後も重要と、社会福祉施設への活用ですとか売却収

入のみならず、貸付収入にシフトすると、こういった点が課題として考えられまして、こ

れらの課題に対応するため、PRE戦略の検討を行い、国有財産行政の更なる見直しを検

討する必要があるものと考えてございます。

このPRE戦略の検討にあたりましては、民間で行われているCRE戦略(Corporate

Real Estate 戦略)の考え方をベースとした3つの視点、というのはどうかと考えてござい

ます。右のピンク色のところでございますが、第一といたしまして、行政サービス向上の

ため、各省各庁に対して、より適切な不動産を提供するという視点、第二でございますが、

行政コスト削減のため、保有・借受の選択等を通し、より安価な不動産を確保するという

視点、第三でございますが、政策ニーズに直接対応するため、未利用地・空きスペースを

活用すると、こういう3つの視点がどうかと考えてございます。

本日、有識者の皆様方には、PRE戦略やそのベースとなるCRE戦略の概論について

お話をいただくという予定でございますが、この検討イメージにつきましても何かご意見

等ございましたら、ご教示頂ければ大変ありがたいと考えておるところでございます。

私の方からは以上でございます。つづきまして有識者の皆様からそれぞれご説明を頂き

たいと思います。

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Page 3: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

(山内氏)

山内でございます。よろしくお願いいたします。私の資料は横綴じなっております「PRE

の必要性と留意点」というものであります。私が 初にお話するに当たりまして、この PRE

戦略、この大論といいますか、基本的考え方を申し上げたいと思います。

私の背景を申し上げますと、私自身は経済学を勉強しておりますので、その意味では政

策的な視点ですとか、あるいはどのように経済とか貨幣とかを把握していくのか、という

ことを重要視しております。また逆に、少し言い訳になりますけど、実務家ではございま

せんので、その辺の細かい点は後ほど他の先生方から御説明頂けるものと思っております。

資料開けていただいて、 初の「国有財産を取り巻く環境変化と課題」、言うまでもない

ことでありますけれども、財政逼迫する中で日本のストックと言いますか、国有財産の量

も、大変なものになっておりまして、これをどの様に活用していくかと、こういう視点が

重要だということでございます。先ほどもお話がありましたけれども、財政逼迫の中で国

有財産を売却するというのも一つの選択肢であったわけでありますけれども、この現在に

及んで売却だけでということ、それよりももう少し長期的な視点あるいは政策的な視点に

立って、これを利用していく必要があるのではないかということが言われていると思いま

す。

そこで、「効率化、機能向上への要求」、それからもう一つは「機能劣化への対応」とい

うことになりますけれども、 初に申し上げたいことは、この PRE 戦略を考える時に、3

段階くらいで考えるということがいいのかなと思っております。例えば、効率化というこ

とからすると、第 1 段階目は、物理的な効率化というものが考えられると。例えばそれは

庁舎であれば無駄を省いていくとか重複を省いていくとか、こういった形で必要量を切り

詰めていく、このようなことが物理的に行われるというようなこと。実際はもう既に財務

省の理財局の方で行われておりまして、私どもの国有財産の部会ででもですね、いろいろ

議論しているところです。こういう物理的な効率化が一つあります。

それから、ここで一歩踏み出して、PRE 戦略という時に、やはり経済的な効率化という

ものを考えるということだと思います。先ほどお話にありましたように、庁舎、それから

宿舎等、社会的に見ればかなり価値のあるものがあって、その価値をいかに具現していく

かということ、それも経済的に把握していくということだと思います。具体的に、後ほど

お話に出ると思いますけれども、例えば投資した価値を貨幣で表示する、それ自体によっ

て財産の真の価値というものが分かってくる。こういったものを通じて経済的な効率を上

げていくと。こういった段階が、基本的にこの PRE 戦略のコアかなと思っています。

ただ、私がここでもう一つ申し上げたいのは、それにプラスして三段階目、社会的な効

率性とでも言いましょうか、そういったものの重要性を看過してはならないと考えていま

す。それは何かと言いますと、要するにこれは国の財産でありまして、行政がそれを上手

く使うことによって社会全体がプラスになると、こういう視点があると思います。国有財

産でもですね社会資本的な意味を持っている、これは比較的分かりやすくて、道路にしろ

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なんにしろ、社会全体の経済の礎でありますので、そのような視点に立って社会的な効率

性があると思います。例えば、庁舎あるいは宿舎というものに対してでもですね、都市の

政策の中で、それをどう活かしていくかとか、あるいは将来的に都市の政策の中でそれを

どう位置付けられるか、そういった視点も必要ではないかと考えています。

この 3 つの段階を一遍にというわけではありませんで、これは段階的に強化していく、

あるいは実践していくということだと思いますけれども、今、申し上げた社会的な効率性

の視点というのを、是非とも頭においていただければなと思っております。

レジュメの方に戻りますけれども、機能劣化の問題というものがあります。これは、い

ろいろなところで言われますし、今日資料を拝見しまして、山本先生の資料にもございま

すけれども、こういったものをいかに、既にストックとしてあるものをマネジメントして

いくかという視点も重要であります。特に、ここに費用対効果の経済学的な把握とありま

すけれども、その時に、すべてのストックを一様に引き揚げるというのは、これは財政的

に無理だということでありますので、いかにその効果を把握しているかと、こうしたこと

の必要性があるかと思われます。そして、効果の把握のところで、先ほどの経済的な効率

性をいかに使っていくか、あるいは社会的効率性という要素を加味しているかということ

が重要だと思います。

次のところ、 後の「シャドー・プライスのとらえ方」ということですけれども、基本

的に今申し上げた経済的な効率性を把握すること、要するに、ある財産がどれだけの価値

を持っているのかということを機会費用的に捉えるということがシャドー・プライスです

けれども、それがこういった分析で可能になるということだと思います。

それから一番下の、「国有財産の規模、多様性と管理限界」と書きましたところは、これ

は実施レベルになった時にですね、正に規模、これだけある大きさがあるものを把握して

いくのか、また多様な財産でございますので、それを管理していく時のある意味では業務

的な難しさというものは存在するのかなと思っております。

国有財産に関するいろいろな、先ほど言いました技術的な効率性の問題にしてもですね、

かなり詳細、細かい点でいろいろな効果を挙げているところがあるのですけれども、それ

をそれぞれに把握していく、しかも全体的に把握していくという難しさというのはあるの

かなと思っています。この辺も、ちょっと資料を拝見しましたけれども、実務的にこうい

う風にしたらというご提案を後ほど伺えるかと思いますので、その辺も頭に入れていただ

ければと思います。

めくっていただいて、2枚目でありますけれども「PRE 戦略の方向性」ということであ

ります。これはもう、先ほど事務局からお話があった通りでありまして、民間的な手法を

応用していくということ。また、先ほどの資料にありました様に、投資の戦略・コストの

戦略、それから売却・賃貸の収入の戦略と、この三つくらいに分かれるのかなと思います。

「投資価値分析」については、要するにさっき言いましたように、貨幣的な価値がどこ

まであるのかということを上手く把握していくこと。これはもう既に民間の、投資分析の

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Page 5: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

中での価値分析、いろんな手法がございますので、それを応用していくことかと思います。

ただ、その際も、民間ですと具体的に、これも予測値ですので民間でも難しいのですけれ

ども、国有財産の場合は特に、通常の民間の投資というだけではなくて、比較対照になる

といいますか、パラメーターとして難しいといいますか、Unknown といいますか、情報が

不確実なところがたくさんあるかと思います。その辺を如何に適切に把握していくかとい

うことを図るべきであります。この辺は民間のノウハウを活かしながら、あるいは行政の

これまでの蓄積を活かしながら PRE に応用していくのかなと思っております。

それから「コスト分析」ですけれども、比較的、投資分析に比べれば簡単といいますか、

入りやすいのかなと思いますけれども、要するに保有コストと賃借コストを、比較すると。

必要な財産については、こういうことをしながらコストを削っていくということだと思い

ます。

ここで、先ほど物理的な効率化のところでも申し上げましたけれども、既に理財局のほ

うでは国有財産の、特に庁舎等について、こういったことをやられていらっしゃるので、

こうしたところの蓄積を生かせるのかなと思っております。

それから三番目の「売却収入と賃貸収入の比較」ですけれども、ここは不要といいます

か、直接今必要ではない様な財産について、売却なり賃貸ということになると思いますけ

れども、ここのところは 初の投資価値分析と同じでありまして、如何に Unknown の部

分、推測の部分の確実性を増していくかということだと思います。

それで、「全体としての不動産ポートフォリオ」と書きましたけれども、要するにその徴

収するあるいは現在必要なもののコストを下げていく、あるいは不要な財産を売却ないし

は賃借をして収入を上げていく、全体図を見る中で 適な国有財産の在り方を探るべきだ

ということをポートフォリオというということになります。ただ、先ほど申しました様に

国有財産は規模が多様でありまして、また、内容も非常に多岐に渡っておりますので、こ

れを一元的に管理するというのは、一足飛びにするのはなかなか難しいのかなと思います。

その辺の問題と、その下に書いてありますけれども、こういった分析をするときに、さっ

きも申し上げた政策的な観点、これも非常に重要なポイントかと思います。企業であれば

バリューアップということで、不動産価値、資産価値を上げていくという、比較的分かり

易い政策、あるいは戦略目的があるわけですけれども、これを国有財産、公的な財産とい

うことになった場合には、もう少し深いといいますか、広いといいますか、そういった視

点が必要であるということであります。

めくっていただいて、「民間手法と公的意思決定の基本問題」です。基本的には今申し上

げたことがここに書いてございます。施策の結果としての効果、価値の把握であります。

貨幣的な価値と政策的な価値、これは先ほども申し上げたところであります。私自身は、

社会資本のことについて、かなりコミットしてまいりましたので、費用対効果分析という

ものをずいぶん勉強させていただきました。その中であるわけですけれども、例えば投資

をするときの費用対効果は費用便益分析をすると。これは民間レベルで言えば、収入を前

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Page 6: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

提とした収益分析ということになる訳で、その時には、特に社会資本の場合には政策目的

が大きいですので、貨幣以外のところで出る効果を、どう把握するかという問題になる訳

でございます。例えば、外部効果というか技術的な外部効果が、他の経済に及ぶという様

なことを、このベネフィットの中に取り込んでくると、こういうことだと思います。

今回この PRE 戦略という時には、あくまでそれを明確に意識することは無いのかなと思

っております。特に、我々が今念頭においております庁舎とか宿舎ということになれば、

通常の社会資本の議論と違うのかなと思っております。ただ、それでも先ほど言いました

様に、例えば都市の再開発であるとか将来ですとか、そういった意味での政策目的にどこ

まで寄与するのか、あるいは影響するのかといったことを、把握する必要があるのかなと

思っております。そういった効果把握を通じて、優先順位を決めていくということだと思

います。

国有財産の多様性、多岐に渡るということからすれば、資産の種類だとか本来的目的に

即した評価手法というものが必要になると思われます。その意味では、現在でも国有財産

の仕分けや分類というのは、もちろんある訳でありますけれども、経済的な視点に立った

資産の種類とか、あるいはそれに対する評価の方法というものを、まずは 初に積み上げ

る必要がある。これが第 1 段目の、公的な意思決定かなと思っております。それで、一番

下に書いてある「公会計と影の価格の把握」とありますけれども、日本も公会計制度、ず

いぶんと進みまして、財務諸表も企業と同じような複式簿記による財務諸表が作られてき

ているわけでありますけれども、一つは、そうしたところにリアル・エステートの分析を

加えることによって、正確性といいますか正確な公会計への橋渡しと言いますか、そうい

ったものが可能かなと。それからもう一つは、シャドー・プライスというものを、如何に

把握していくのかということを、再度検証すると、その視点の提供、これが重要ではない

のかと、逆に公会計に対して、この PRE 戦略がプラスの効果を及ぼすのかなと思っており

ます。

後の紙ですけれども、まとめということになりますけれども、PRE 戦略を構築して実

施していく上での問題点ということで、何点か指摘をさせていただきます。一つは具体的

な目標の設定の問題であります。先ほど申し上げました様に、三つの効率性の中でどうい

ったところに重点を置いていくのか。これは段階的なもので、まずは技術、それから経済、

更には政策といったものを考えていくのかなと思います。それから全体 適と部分 適で

あります。おそらく先ほども申し上げました様に、国有財産の規模からすると 初からす

べてを把握して、全体 適を求める様なシステムを作るのはなかなか難しくて、例えば財

産の種類によって選考するものしないもの、あるいは貨幣的に把握出来るもの出来ないも

のといったところで、段階があるのだろうと思っております。それを部分 適に終わらせ

ないように、全体 適に如何に結び付けていくか、これは比較的、ある意味では、時間的

にも長期的な視点で取り組む必要があるということが 2 番目であります。

関係して 3 番目も同じ様なことでありまして、全体把握と実施可能性を如何にして作っ

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Page 7: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

ていくかということであろうかと思います。それから、ライフサイクルコストのことが下

に書いてありますけれども、国有財産としてのライフサイクルコストを把握して、その中

で、リアル・エステートの戦略を取っていくということですけれども、先ほども申しまし

た、公的な投資というものと、私的な投資というものとの間の割引率の問題というのは、

後まで残るのかなと思っております。

三つの段階で、経済的な効率性という時にはマーケットでの割引率ということだけでよ

ろしいのかもしれませんけれども、もう少し社会的な効果や、あるいは外部効果といった

ものを考えるときに、社会的な割引率の中でのライフサイクルコストの把握というものが

必要となってくるのではないかと思われます。この辺、なかなか理論的にも実務的にも難

しいところでございまして、簡単ではない訳ですけれども、 後の問題点として指摘をさ

せていただこうと思います。以上、私のプレゼンテーションでございます。何か質問があ

りましたら、また後ほど伺いたいと思います。どうもありがとうございました。

(久木野氏)

みずほ信託銀行の久木野でございます。本日はこのような機会をいただきまして誠にあ

りがとうございます。私共信託銀行では、土地信託をはじめとした不動産業務を行ってい

る関係上、不動産に関するさまざまなご相談を承っているのですが、 近増えているのは、

企業が保有する不動産をその企業の成長戦略の中でいかに効率的に活用していくべきかと

いうことを検討する、いわゆるCRE戦略に関するご相談です。

従来、不動産の相談というのは、各事業部門別の検討ということだったのですけれども、

このCRE戦略においては、経営という、全社的な見地から、本体企業だけでなく、関連

会社も含む、グループ全体の連結ベースでの検討をしているというのが、大きな特徴かな

ということでございます。具体的には、保有物件の調査から始まって企業の成長戦略に照

らして、今後もその不動産を事業に活用していくか否かの分類であるとか、本業に使わな

い不動産について今後貸付によって有効活用する資産、あるいは売却して資金を本業に投

下する資産の分類であったり、あるいは信託スキームの活用を含んだ不動産の貸付や売却

の具体的な手法の検討から実行までのお手伝い、そのようなことを私ども信託銀行ではお

手伝いさせていただいております。

本日はこれまでの実務経験を踏まえて私共なりにPRE戦略における資産分類の考え方

をまとめさせていただきましたので、少しでも参考になればということで、ご説明させて

いただきたいと思います。詳細については星野の方から説明させていただきますので、宜

しくお願い致します。

(星野氏)

それでは、「PRE戦略における資産分類の考え方」という資料に沿ってご説明させて頂

きたいと思います。

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Page 8: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

表紙めくっていただいて1ページ目は、PRE戦略導入の意義というところでございま

す。今までの説明と重複する部分がございますので、この部分の説明は省略させていただ

きます。

めくっていただいて2ページ目です。ここでは基本的なPREのサイクルについてご紹

介しております。フェーズⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳということで調査、戦略立案、実行、検証とい

うサイクルです。本日私共のほうからは特にこの中のフェーズⅡ、戦略立案の中の分析・

評価というところのテクニカルなところを中心に事例を踏まえてご説明したいと思います。

めくっていただいて3ページ目です。まずフェーズⅠ、調査におけるポイントというと

ころでございます。ここで申し上げたいのは、中程に赤い字でですね適宜用途別、エリア

別グループ化して実施ということが書いておりますが、対象不動産についてエリア別等で

用途別のグルーピングをするということが一つ重要だということでございます。特に組織

が大きくて対象不動産の数が多い場合は、重要ということになります。グループといいま

すのは、グループの中で統廃合を検討するという一つの単位ということになります。言い

換えれば統廃合を検討するということであれば 一つのグループの中に入れて検討すると

いうことが必要でございます。例えば、昨今、民間企業の経営統合をする、持ち株会社を

設置し複数の法人が構成しているという企業グループであるならば、法人間の垣根を越え

て統廃合を検討すれば経営統合・再編の効果が得られやすいということになりますので、

複数の法人にまたがって、例えば、社宅であったり、庁舎であったり、宿舎であったり、

店舗であったり、そういったものを一つのグループとして検討していくということが必要

と考えております。

めくっていただいて4ページ目です。フェーズⅡ戦略立案におけるポイントというとこ

ろでございます。ここでは個別不動産の評価手法について一覧にしております。まず内部

価値と外部価値に関する評価ですけれども、左側からですね、貢献度分析、これはどの資

産を残すのか、どの資産が必要なのかということを評価するというものでございます。他

方、3つ目に書いてあります市場性分析、これはどの資産を外に出すのか、市場で何を処

分するべきなのかという視点から評価するものでございます。この貢献度分析と市場性分

析という2つの視点からの評価を基にして不動産の再編計画、何を残し、どこに統合し、

何を処分し外に出すのかということを検討していくということになります。2つ目に書い

てある投資価値分析、ここでは狭義の投資価値分析と申し上げた方がいいかと思いますが、

これは使用価値と市場価値とを定量的に比較しようというものでございます。ですが、国

有財産の場合は、使用価値、すなわちその不動産を使用することによってもたらされる経

済価値というものを推し量るというのは非常に難しいので、狭義の投資価値分析による定

量分析というのはなかなか難しいのではないか、適さない手法といえるかと思います。4

つ目のコスト分析、これは使用を継続するという方針に至った財産について保有をし続け

るのがいいのか、あるいは賃借に切り替えたほうがいいのか、ということのコスト比較を

するというものでございます。5つ目の売却・賃貸比較分析は、文字通り処分や賃貸で利

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Page 9: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

活用をしようという方針に至ったものについて、売却をするのがいいのかそれとも賃貸の

方がいいのかどちらが多くの経済的価値をもたらすのか比較検討するというものでござい

ます。

めくっていただいて5ページ目は、今申し上げた5つの分析の中の1つ目、貢献度分析

に関する事例でございます。事例については、5ページの右側のところに参考事例という

ところに書いておりますけれども、この例では、法人Aが首都圏に持つ5つの社宅につい

て、どの社宅を残し、そこに集約するのか、ということを検討しております。したがって、

社宅としての価値の高いものは何なのか、ということでございます。各評価項目としては、

利便性、それが駅からの距離であったり、あるいは住環境の良し悪しであったり。あるい

は集約をしていくということでは規模がある程度大きいほうがいいということで、規模で

あったりと、評価項目をあげてございまして、ここに例えば、5段階で2点、1点、0点、

-1点、-2点というような5段階評価をして集計をするという方法もございますけれど

も、ここで挙げた例では総合評価的に◎から○△×と4段階で評価するという事例になっ

ております。

続きまして、6ページ目を見ていただきまして、これは投資価値分析のイメージ図でご

ざいます。右下の図のように横軸に使用価値、縦軸に市場価値をとりまして、45度の線

より下であれば使用価値の方が高く使用を継続すべきということになりますが、使用価値

の定量化は、経済価値を生み出している財産でないと難しいといえるかと思います。民間

の場合ですと分かりやすいものとしては賃貸用不動産です。賃貸用不動産があげる賃貸収

益というものを価値として表すことは、テクニカル的にできやすいと言えます。あるいは

店舗とかについても、比較的定量化しやすいということが言えます。他方、本社や研修所、

社宅といった自己使用施設の場合は、民間の場合でもやはり難しいということになります。

めくっていただいて7ページ目です。これは市場性分析ということで、市場価値分析の

事例でございます。下の表は市場価値分析についての事例でございまして、ここではどの

社宅を外に出すのか、処分をすべきなのかという視点で評価をしようということでござい

ます。したがって立地条件ですとか、売れそうな物件なのかどうなのかといったことにな

ります。またこのケースでは、売却した物件の売却収入でもって、集約する社宅の建替え

費用に充当しようと考えていますので、どのくらいの売却収入が期待できるのか、という

ことも重要になります。そういった評価項目について評価をして、分析をするということ

でございます。

めくっていただいて8ページ目は、コスト分析でございます。保有賃借の比較です。ポ

イントとしては、真ん中のあたりに赤いアンダーラインを引いておりますけれども、一般

的な保有コストのほかに潜在的な保有コストというべきものがありまして、そのことを考

慮に入れる必要があるということでございます。潜在的なコスト項目については、下の表

の下の方に列挙しておりますけれども、機会費用とか資本コストとか、追加管理コストと

いうようなものでございます。例えば機会費用といいますのは、保有している財産につい

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Page 10: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

て、それを賃貸に出せば収益があげられる。そういうものを自己使用するということによ

って逸失利益が生じているような場合。その分を損失として見る。そういう概念です。例

えば住宅地として成熟しているところにグラウンドだとかあまり稼働率の良くない不動産

を持っているというような場合はイメージし易いと思います。

他方、本社のようにどうしても必要な施設の場合は、この表の一番下のところに注釈と

して書いておりますけれども、例えば本社、あるいは庁舎など、保有不動産を外部賃貸し

た場合には、本社はどうしても必要ですから、別途賃借をするという必要があるような不

動産につきましては、余剰している床面積についてのみ機会費用を見込むという工夫が必

要になる場合があるということでございます。その辺については対象となる不動産につい

て、個別的に考える必要があるという留意点でございます。

めくっていただいて9ページ目です。これは保有賃借コストの比較の事例でございます。

下の表でございますが、上の段の保有コストについての試算表、下の方が賃借コストにつ

いての試算表でございます。保有コストのところでは、維持管理費、水光熱費、固都税、

保険料といった費用を見込んでおります。また減価償却費の代わりに修繕積立金をここで

は見ているというところでございます。単年度の保有コストでいうと、4億2600万と

いう数字が、変動率なしということで仮定し、並んでございます。 終年度ですね、10

年目のところで、土地建物残存価値といいますか、売却収入をみております。それがここ

でいうと約61億円という数字でございます。ただこれを単純に保有コストの中に、これ

は収入項目になるのですが、織り込むのではなくて、基本的にはそれをですね、割引率で

割り戻して、現在価値化するということをやっております。ですから、10年目について

は、差し引き56億という収入があるのですが、現在価値化すると38億円に圧縮される

ということでございます。

他方、下のほうでね、賃借の場合ですけれども、保有していたものをゼロ年目のところ

で、売却をして賃借に切り替えるということを想定しているケースでございます。したが

ってゼロ年目のところに、売却収入69億4200万という数字がのっていて、1年目以

降賃料を計上しております。こうしていきますと、単年度ごとの経常的な支出でいきます

と、6億4600万という数字が並んでいるということになります。ただ、現在価値化し

た、現在価値の総和ということで見ますと、それぞれの表の一番下の黄色いマーカーで塗

っているところの数字ですけども、保有の部分が6億7700万円、賃借の場合も6億6

500万円ということで、この辺は割引率が効いてきてですね、あまり大きな差がないと

いうような試算結果にこのケースではなっているということでございます。

続きまして、めくっていただいて 10 ページ目でございます。

利活用すべき、という方針になった資産について、売却をしたほうがいいのか賃貸した

ほうがいいのか、売却収入、賃貸収入いずれが高いか、というのを分析をするというもの

でございます。売却収入につきましては、売却価格から売却に要するコスト、解体費とか

仲介手数料とかその他の経費を差し引くということです。賃貸収入に関しましては、賃貸

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Page 11: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

借期間中の、各期の賃貸収益を現在価値化する。それと、復帰価格というのは 終的にそ

れを売却をし処分をするときの売却収入。それの現在価値の総和という形でございます。

右の絵が、その賃貸期間中の収益と、右端が、売却収入・復帰価格の現在価値の総和とい

うことで、売却収入と比較しましょうというのをイメージ化したものでございます。

ここでのポイントなんですけれども、賃貸収益の現在価値を算出するための割引率でご

ざいます。10ページの下の方の表にですね、水色のところで、割引率ということで、こ

こではリスクフリーレート、基準になる長期利回りということで、10 年国債利回りにリス

クプレミアムを乗せましょうということでございます。

リスクプレミアムといいますのは、概ね言ってみれば、将来の収益に対する変動リスク

といいますか、不確実性的なものを割り引いて考えましょう、ということでございまして、

国債の利回りに対して不動産の期待収益というのは、やはりリスクのあるもの、不確実性

の高いものということになりますので、そこの部分を割り引いて考える必要があるだろう、

という考え方でございます。直近の、日本不動産研究所の不動産投資家調査によりますと、

リスクフリーレート、まあ 10 年国債1%前後だとして、リスクプレミアムとしては、3%

程度ということが、ほぼこの中に出ております。ですから先ほどいくつか試算させていた

だいた事例の割引率というのは4%程度で計算させていただいているものが多くございま

す。

続きまして11ページ目でございます。これは、賃貸収益の算出方法について、2つの

例を挙げさせていただいております。上のほうの事例①は、DCF 法的な算出方法といいま

すか、賃貸収益に関してですね、一定期間の賃貸収益を現在価値の総和として算出してい

きましょうという考え方でございます。参考事例②のところはですね、単年度の賃貸収入

を算出しまして、そこから適正な還元利回りで割り戻す、という形で算出する方法でござ

います。

めくっていただいて12ページ。ここまでの分析、分類について、ここまでのおさらい

をフローチャート化したものでございます。まずグルーピングをしましょう、ということ

です。そして分類基準1というところで、未利用の不動産とか、不稼動不動産につきまし

ては、これは①ということで、それ以外の使用している不動産については②に移る、と。

②の現在の機能を維持していくものというものですけれども、これについて、分類基準 2、

といいますのは、貢献度分析、それから市場性分析の結果を踏まえて、相対的内部価値が

高くて、外部価値が低いもの、要するに残すべきもの、集約すべきもの、それを④のとこ

ろに移る。それ以外のものは③ということで移転・統廃合をして利活用をするものとして

そちらのほうに移す。④について分類基準 3、コスト分析でございまして、機能としては残

していこう、それについて、保有を継続したほうがいいのか、あるいは処分をして賃借に

切り変えるというのがいいのかということについてコスト分析で検討する、というもので

ございます。分類基準4といいますのは、基本的には、売却もしくは賃貸という他の方法

で利活用しようというものですね。グループとしては①とか③に属するものになるわけで

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Page 12: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

すけれども、これにつきましては売却したほうがいいのか、賃貸したほうがいいのかとい

うことで、先ほどの売却・賃貸の比較分析をすると。それによって、売却をするか、ある

いは貸付をするのか、他の用途で転用するのか、ということについての方針を導いていく

ということでございます。

めくっていただいて13ページ。これは分類基準1、2、貢献度分析、市場性分析、そ

れから分類基準 3、コスト分析、分類基準 4 について、2 軸グラフ化したイメージ図でござ

います。説明は省略させていただきます。

後14ページでございます。これは、分類基準1から4までを用いて、首都圏それと

関西圏にですね、首都圏に5箇所、関西に 2 箇所の社宅を持っていた法人について再編計

画を策定したものでございます。右の図を見ていただきますと、建替適性の高い、ここに

集約しようと、まあ内部価値の高いものとして A 宿舎というものがありまして、それ以外

の BCDE というのは、これはむしろ外部に売却をしていったほうがいいというのに属する

ものでございまして、結果的にこの法人につきましては、A 宿舎、これを建替えの軸にしよ

うと、ここに集約をしていこうと。そして BCDE につきましては売却若しくは賃貸をして

いこう、ということでございます。ただ、基本的にこの法人さんの場合にはこの A 宿舎に

建て替える建替え資金を、BCDE の売却資金で充当していこう、ということになりまして、

終的に BCDE は売却する方針ということで、計画をまとめたものでございます。

以上、ちょっと駆け足で説明させていただきまして、わかりにくい点もあったかと思い

ますけれども、一応、私どものほうからの説明を終わらせいただきます。ご清聴ありがと

うございました。

(山本氏)

首都大学東京の山本でございます。私は 3 月までどちらかというと公有財産の実務的な

話と全般的なご相談に乗っておりまして、現在もやっておりますが、そういう意味から公

有財産全般の課題と方向性をお話させていただいて、庁舎宿舎の課題はその中から明らか

になってくるのではないかと思っております。

先生方が、すでにお話されたこともあるので、多少省略しながら進めたいと思います。

まず4ページでは、公共資産とは何を指すかということで、議論はあると思いますが、

1)と2)は現実に利用されているもの、3)4)が未利用や暫定活用されているもので

すが、それ以外に5)というのがあるんじゃないかと思って、将来役立つ用地で今後入手

不可能なもの、たとえ遊休地であったとしても今後入手不可能なものに関しては、公共資

産として残すべきだという、この可能性は非常に大きいのではないかと思っています。

それから5ページは、公共建築の資産管理の原則ということですが、これはもう資産管

理する上でのごく当たり前の安全・安心や省エネやCO2削減といったものです。これを

具体的な話で課題という形で表したのが6ページです。これは、地方自治体のこともかな

り入っているのですが、課題としては全般的な公共の課題になります。財政上の課題とい

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Page 13: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

うことでは、経常収支比率の硬直化や借入金残高の増加や税収の低下が問題となっていま

す。単年度予算の課題では、公共ストックの情報がかなり不足しているということと、維

持管理費が硬直化して、新たな積み上げができないという状況のため、新規予算がなかな

か立てにくいということです。また、社会ニーズがかなり変化しているということで、こ

れは少子高齢化によるニーズの変化、宿舎なんかも特にあると思うのですが。それから市

町村合併による同用途施設の整理・適正配置があります。行政組織のスリム化では、これ

は庁舎に特に関係するのですが、団塊世代の退職で、仕事をしている人数がかなり減るこ

とと、アウトソーシングの普及での、現実的な庁舎としての実面積の減少があります。環

境問題への対応ということでは、省エネやCO2対策や木材需要の対策、これは水にも関

係することかと思います。

それから、7ページですが、公共建築の課題ということで、公共施設データの統一化と

いうことでデータ保管そのものの不備と、国有財産はそういうことはないかと思いますが、

統一的なデータ処理がされていない。それから、老朽化と耐震対応の必要性ということで、

維持更新費が建物の劣化とかなり乖離しているのではないかということと、昭和 56 年の新

耐震基準までの対応、早急な対応、これが必要じゃないかと。

あと、3 番では、建替え、大規模改修、設備更新の集中化ということで、建築後年数の双

コブ化。一つは、高度成長期、昭和 30 年代後半から 40 年代にかけての建築後 30 年経過の

建替え、大規模改修。それから、バブル期の設備更新が、そろそろ両方同じ時期に来るこ

とです。環境負荷対応ということでは、当然、CO2削減です。所有コストの適正化とい

うことでは、維持管理コストの適正化や減価償却の考え方、マンション修繕積立金のよう

な修繕積立金の考え方、この辺が欠如されているのではないかと考えます。あと、社会ニ

ーズの変化ということでは、行政区域内での適正配置、これは地方公共団体向けになって

しまうかと思いますが、学校施設の統廃合による通学距離の遠隔化などがあります。宿舎

などは該当するかもしれませんが、行政区域内外での施設の適正配置。例えば、病院や図

書館などに関しては、何でも行政区域内でなくても良いのではないかということが問われ

ています。

8ページ以降は、ちょっと、現実的な話です。9ページを開けてください。これは、国

はないと思うのですが、多くの自治体の図面の保管状況です。これはまだいい方ですね、

図面が保管されている状況ですから。保管されていない状況があります。それから、マイ

クロフィルムで保管されているケースが多いのですが、マイクロフィルムを保管している

業者もほとんどなくなり、しばらくするとマイクロフィルムが使えなくなってしまう。こ

れもかなり課題になっていると思います。

10ページ、これは建築後 10 数年の給排水管の閉塞状況ということで、私もビックリし

ました。左上の図は、ちょっとですね、真中辺りにCを逆にしたようなところがあります。

これから給水が出ているという状況です。本当にしっかりした維持管理をしていかないと

いけないということです。右の給水管の継手の劣化状況は、たまたま悪い場所かもしれま

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Page 14: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

せんが、10 数年から 20 数年経つとこんなような状況になります。

11ページが、男子トイレの小便器の排水管です。真ん中辺りに、尿石自体が詰まって

います。ダクトパイプスペースの掃除口にもかなりゴミが溜まっています。いかに維持管

理が大事かということです。

それから12ページが、劣化の状況です。適切な維持管理をしていかないと状況が悪く

なっていきます。左の写真は、ひび割れしたところに水が入ったりしますと鉄筋が腐食し

て膨張し、膨張することによって、鉄筋が爆発する、いわゆる爆裂です。それによってコ

ンクリートが破裂していきます。右の写真が、変電設備の発錆と浸水です。これは非常に

漏電の可能性が高くなります。非常に危険だと思います。右下の写真は、空調機内部のポ

ンプの発錆です。こういう状況ですと、即座に補修をしなくてはいけません。

その次のページは、公共施設のライフサイクルコストです。これは、デフレーターかけ

てございます。何を話したいかというと、A庁舎は築 9 年ですから、修繕費はほとんど変

わらない、建設費が約 9 年間のトータルコストで約 75%、他には光熱水費、維持保全費だ

けです。ところが、右下のD庁舎の築 37 年になりますと、37 年間の累計のコスト計算では、

建設費が約 9%ということで、1 割以下ということで、91%がそれ以外の維持管理費にかか

るということです。いかに、維持管理費が大事かがわかります。

その次が14ページでございますが、これは東京都所管の建築年次別ストック特徴です。

昭和 45 年に一回目の構造法規の改正があり、昭和 56 年に二回目の改正がございました。

56 年以降は、新耐震ということで、それ以前のものに関しては全部耐震の診断をして耐震

的に安全かどうか確認しないといけない。かなり昭和 45 年以前は安全でない確率が高いも

のですから、そういうものも含めて早急に、耐震診断しながら耐震改修していく必要があ

ります。東京都では、昭和 56 年以前の建物の割合は、約 4 割ですが、地方によっては約 6

割、場合によっては、約 7 割はあると思います。多分、国有財産に関しても、昭和 56 年以

前の建物についてかなりあるのではないかと思います。これに、どう対応をするか、大規

模改修でいくのか、耐震改修をしていくのか、建替えしていくのか、課題が出てくると思

います。

それから15ページですが、1990 年の京都議定書以後の問題になります。バブル期の時

期にかなりの建物が、延べ床面積として増加しています。東京都の実例では、2002 年まで

に、3 割ほど増えています。バブル期の増加で、かなり公共関係の床面積は増えていますの

で、これに関するCO2削減をどうするかということが、全般的な課題になってきます。

続いて16ページですが、CO2の発生源として、庁舎がかなりの割合を占めています。

庁舎でのCO2削減の対応をしなくてはいけないと思います。後、公共に関しますと、文

化施設・医療施設、病院関係も、CO2 の発生をしています。

それから、17ページは、建築ストックと環境負荷の低減対策です。東京都の場合ですが、

2002 年は、1990 年時点に比べて、CO2が約27%増えていますので、 低限でも、そこ

までは下げないといけないし、さらに、1990 年時点から25%下げるとなると、かなりの

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Page 15: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

投資をしないといけないということが課題となってきます。

18ページ、これはエネルギー消費量の分布グラフでございますが、燃料、熱及び電気

等のエネルギー使用量が、原油換算で年間1500キロリッター以上のある大規模な施設

に関してですが、約200施設あるうちの全体の割合を調べてみますと、赤で表現してい

る26施設で、約6割から7割エネルギー消費を使っています。さらに、上位の100施

設を含めますと、約9割のエネルギーを消費しています。大規模施設であればあるほど、

エネルギー消費割合が大きくなっています。

それから、19ページがこれはJFMAのPRE/CRE特別委員会から引用させてもら

った考え方です。減価償却費を、維持保全に充当した場合のライフサイクルコストです。

建設費の約2.5~3.5%、減価償却費が必要ではないかということです。これは、次

の20ページで、都税事務所の26事務所の全データを調べてみたところ、新築、改築時

の 1 ㎡あたりの金額と、改修工事金額を累計しますと、約 34 年ぐらいから、ほぼ逆転現象

が出始めて、ちょうど、44 年目に合致します。

と言うことは、新築、改築時の金額の約 1/34~1/44 の金額を、減価償却費で回さない

といけない。そういうことが、考えられるのではないかなと思います。

それから、新宿区内の主要公共施設ですが、新宿区内にもこれだけ、公共施設ございま

す。緑色が区の施設、赤色が都の施設、青色が国の施設です。ということで、実はかなり

新宿区内にも公有財産がございまして、単体としては、都の施設であり、区の施設であり、

国の施設ですが、中央付近には、国の財産、都の財産、区の財産が入り交じっているとこ

ろがあります。これを全体的に考えていかないといけないのではないかと考えられます。

その次のページの22ページ以降は、全国の公共建築の延べ床面積、これは国交省と私

の方で、データを全国から集めたものです。全国で約7億㎡の公共の財産があって国が約

1億㎡、それから都道府県が約 1 億7千㎡、市町村が約3億7千万㎡という、これだけの

公共保有の財産があります。

その傾向としては、23ページを見ていただくと、公営住宅が約3分の1、学校が3分

の1、その他が3分の1という割合になっています。

あと24ページには、建築後年数を表しています。これは、ちょっと古く平成14年時

点なので、8年前なんで、これがさらに8年プラスになってきますから、もう半分以上が

20年を超えてるのではないかなと思います。

25ページはほぼ全国的に、これは市のレベルですけど、大体1人あたり、2.5㎡~

3㎡の範囲で、公有財産を持っている状況です。

26ページは、今後のPREの方向の私見でございますが、まず導入時には文書規定の

整備が必要であり、次には、導入効果の検証、それから所有不動産の把握、 適保有量算

出、つまり、ほんとに実際に必要な量がどうだということです。後、保有施設については、

地域連携が可能かどうか、これは先程山内先生が言われたようなシャドー・プライス、影

の価値をどう判断するかというようなことです。このようなことが出来るかどうかですが、

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Page 16: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

行政も儲けられる仕組みづくりが出来るかどうかということです。庁舎では、ありえない

でしょうけど、他の公有、公共では、あり得るのではないでしょうか。環境保全について

は、将来負担計算を行うことが大事で、そのことについて将来の環境保全について、どの

くらい効果があるかということです。また、決めた仕組みをすぐに直せるシステムが大事

です。一度動き出しますと、なかなか公共は方向転換が大変なものですから、そこをどう

方向転換も可能にできるかということ、

27ページは現在の国の整備状況です。赤字が今整備されているもので、青字が、もう

少し整備する必要があるものです。

それから28ページは、公共財産の劣化点検のことです。法令上は、延べ面積1000

㎡以上かつ5階以上は法令対象ですけど、官公法では200㎡以上が対象となってますの

で、このことに関しても劣化点検をどうしていくかということです。参考に、28~30

ページまでに、このような点検をしたらと思い表しました。

31ページは、資産アセスメントの考えです。これは、みずほ信託銀行さんがお話にな

ったような、有効性だとか効率性だとか、妥当生だとか将来性を第三者評価していかない

といけないのではないかなと思います。

32ページはこれはちょっと技術的な評価項目なので、これ以外には、使用実態などの

評価もありますが、技術的な評価項目としてとらえていただければと思います。

33、34ページに関しては、これは医療機関の適正配置ということです。庁舎ではあ

りえないかもしれないですが、例えばの話ですが、震災時に重症者の移動距離を3㎞との

とらえ方をした場合、34ページで例えば、都内をターゲットにして、2次医療、3次医

療の病院以外の空白があったとしても、実は都内ではなくも、近県で対応できたりとか、

救急告示以外の病院で対応すれば、対応できてしまうのではないかなと思えます。

35ページ以下はイメージなのですが、例えば駅前の学校とか駅前にある宿舎を本当に

残すべきか、それとも、別の場所にできるのではないかと思います。

36ページは、左側は、現在の姿ですが、それを全体的に区所有とか都所有とか国所有

とか言わないで、敷地全体を、民間ビルを含めての適正配置ができるのではないかと思い

ます。

37ページは、国有財産を、いろいろなまちづくりの中で、活用できる面があるのでは

ないかということを考えております。

後に、38ページのCRE戦略では、基本的によくこういった表現がされます。コア

事業、ノンコア事業で、本社などのコア事業で、キャッシュを生むものに関してはそのま

ま残しますが、遊休地に関しては、ノンキャッシュでノンコア事業であれば、これは売却

してキャッシュを生み出してもらいますし、コア事業でノンキャッシュのものや、また、

生産性があっても、ノンコア事業のものである場合はどうするか、どちらを選ぶかという

ことで、短期的に言えば、コア事業でも、非生産の方を売却というのも考えられますし、

長期的にみれば、賃貸施設、貸駐車であれば売却していくということも色々考えられると

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Page 17: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

思います。これがキャッシュに基づく、コア事業、ノンコア事業の民間の考え方の一般的

な例じゃないかと思います。

39ページが、今、PREとして、よく、これで動いているケースが多いです。建物の

性能、それと利用ニーズによっています。利用ニーズが高くて、建物性能が高ければ、保

持しますし、建物性能が低くて、利用ニーズが低ければ売却するということなんです。

ただ、どうも財政的な面からはあまり考えていないのではないかと思います。財政を考

えて、それにプラスした3次元の考え方というものがあるのではないでしょうか。

40ページに表現しています。施設の規模、または、施設の性能になると思うんですけ

れど、それとサービスの水準、住民ニーズだけでは、2次元になってしまいます。これに、

費用を加えて、3次元で捉えていくべきと考えます。費用が限られていれば、その中で施

設の規模とかサービスの水準とかをどうしていくかと、サービスの水準をあげるとなった

ら、その中の費用をどうしていくといったことが出てくると思います。以上でございます。

(調整課長)

大変貴重なお話をどうもありがとうございました。続きまして意見交換に入らせて頂き

たいと思います。

(古本政務官)

今日はどうもありがとうございました。中座してしまいますので、感想といいますか、

是非、諸先生方に今後また色々ご指導頂きたいのですけれども、これから少子高齢社会に

突入して参りますが、高度成長期に土地神話というものがありました。サラリーマン一生

に家一軒でいつか家を買ったらその資産価値が上がり、孫子にそれを相続できるという、

上がっていく大前提だったと思うんですけれども、これからは悲しい現実ですが人口が半

分に減っていく訳ですから、土地の値段が上がる要素はありません。取り合いになりませ

んので。でも他方で都心の、本当の一等地は、二度と手に入らない土地というのはありま

す。いかに人口が半分になろうとも。

実は菅前財務大臣のご主旨は、やはり財務省といいますか、国家として持てるそのツー

ルを全て 大限有効活用して、一部文面にはありましたように、儲けても良いのではない

かと、そのストックを活用して、という観点が大分大きいものがあると思います。その際

に、今後の議論が是非そういう方向に行けば良いなと期待しているのが、むしろその不動

産を買うことによる、実は、一般、極々一般的な勤労者世帯で言えば、不動産購入という

のは実は負のストックになっている現実があります。2千万、3千万のローンを抱えて、

親と同居するかどうかも分からない。親は親で借金を重ねて、子世代も借金して、親子三

代、孫まで家を建てたら、多分億円オーダーでの借金になります。であるならば、いかに

その既存のストックを回していくかというのは、家計部門でも言えることだと思ってまし

て、当然にこの公共用セクターも、持てる資産をいかに活用していくかという時に、大変

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Page 18: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

非常に示唆に富んだ切り口が随所にありましたが、やはり地公体と、国がもっと融通し合

うとか、非常にかぶる財産をバラバラに買うのではなくて、お互いに活用すれば、随分公

務部門のこういう Real Estate に関する余計な出費をせずに済むと言いますか、その分、今

おっしゃるストックマネジメントにどんどん回すべきです。一気に、橋梁始め色々な分野

でストックマネジメントの年間コストが 10 兆オーダーの時代に多分入ると思います、維持

補修だけで。この水道管を見ればぞっとしますよね。だから、これはもう大転換を図らな

くてはいけなくて、そういう意味では、これ結論なんですが、何やら国家的な賃貸業を始

めたのではないかとか、あるいは県なり市町と連携した不動産業を始めたのではないかと

映ると非常に悲しくて、そうならないように、まさに儲けたならば、結果として税外収入

が上がりますから、皆さんの税金もその分余計に取らなくて済みますので、そういう議論

を今後したいという風に思っています。政治の意思としては。細かな技術的な事等々は、

是非諸先生方からまた今後とも理論的なアドバイスを頂きたいと思っていますが、今、目

論見としてはそんなことができたらいいなと思っていて、具体例を2、3・・・1つだけあげ

ると、今取り組み中ですが、公務部門で、ある自治体がいわゆる介護とか福祉、子育ての

分野で、新規で、本来ならば土地取得をするのだろうけれども、そこに国の用地を、ある

いは庁舎をお貸しすることにより、ある地公体はそれを新規で買わずに済むわけです。家

計部門にとっても負のストックになる場合があるので、当然、公的セクターも、土地を買

ってしまうことが負のストックになる可能性もあるものですから、そういうことを、1つ

ずつ成功例を出していけると、国民的な理解も得られるのかなと思っています。

過去、一等地、二度と手に入らないであろうという所をどんどん売り払い、それを色々

活用されてきたデベロッパーの方々からすると、むしろ逆の方向なのかもしれませんが、

国家的な財産は、国民共通の財産だという立場に立って、そういう風にやれると良いなと

思っています。

中座させて頂きます。すみません。

(調整課長)

いかがでしょうか。

(久木野氏)

今の政務官のご発言につきましてはですね、私もその通りではないかという風に考えて

おります。国家が不動産業を行っているというところまで、積極的に、具体的に言うと、

今まで売却していた都心部の土地を、逆に予算をつぎ込んで買って、開発すると、そこま

でやるとさすがにやりすぎかもしれませんが、今持っている国有財産を有効的に活用しな

がら、一時的な財源を確保するというのではなくて、長期的に安定的な収益を確保してい

くというのは、非常に有効な手法であると思います。また、先ほど具体的に、お話ありま

したように、国では行わないけども、地公体等で、福祉関連の施設を整備するに当たって、

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国が持っている資産を上手く活用していくことは、地公体からすると、当初、投下する資

金が少なくて済むというメリットもある訳ですし、先ほど政務官が仰っておられたとおり、

国、地公体も含めて、公共という観点で、負のストックを負わないというメリットもある

訳ですから、これからどんどん進めていくべきだと思います。

民間においては、従来、開発の素地が、公共から出てきて、それを活用して、リスクを

取りながら開発メリットを享受するということを行うことができました。現在考えられて

いるのは、借地というものを上手く活用して、収益を確保するということが、大きな方向

としてございます。民間が国等から、土地をお借りして、その上で事業を行っていくとい

うことであれば、民間の方も、きちっとした事業が今後も引き続き行われることになりま

す。また、今まで土地を購入して、建物を建てていたことに比較すると、土地を借りると

いうことによって、投下資本が少なくて済むというメリットもあろうかと思いますので、

公的セクター・民間ともに非常に大きな効果が得られるんじゃないかなと、個人的には考

えておる次第でございます。以上です。

(調整課長)

政務官が中座されましたけれども、引き続き残り時間ございますので、意見交換させて

いただきたいと思います。

有識者の先生方からも何かございましたら宜しくお願いいたします。

(企画課長)

山内先生のご質問になるんですけれども、問題意識として、みずほ信託様からご説明い

ただいた資料の4ページのなかに、いくつか財産の市場価値に基づいた分析といった、こ

ういうアプローチがあって、大変興味深く拝聴いたしました。山内先生のほうからも、多

様な国有財産についていろいろ分類しながらといったご指摘もあったものですから、みず

ほ信託様のような分類について、あるいは先生の分類みたいなものについてのお考えは、

という質問なんですけれども、私ども実務的に、私なりの理解で申し上げますと、みずほ

さんの資料の4ページに、貢献度分析、投資価値分析、市場性分析とこうあって、実は我々

法律家の頭からしますと、国有財産の分類というのは、ご案内の通り、まず、行政財産と

普通財産と、こう分かれまして、これはさらに公共用財産とか企業用財産とか皇室用財産

だと、法律上の分類はそうなります。

これを経済的に置きかえますと、まず貢献度分析というのは、まさに行政財産というこ

となので、各省庁で責任をもってやっていただきながらも、近年の取組みとしましては、

なるだけ効率性を高めていきたいということで、山内先生からもご指導いただきながら、

いわゆる使用調整を強化してきておりまして、なるだけ非効率な庁舎については集約化し

ていくということについては、財務省もコミットを強めつつあるのかなと思います。

それから市場性分析はまさにこれまでは未利用国有地は売却ということでございました

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Page 20: PRE 戦略検討会」(第1回)における有識者ヒアリ …›½有財産の有効活用について」の抜粋でございます。この中で下のところでございますが、

ので当然マーケットに参入して売っていくという頭から、市場性の分析はそれなりにやっ

てきたのだろうと思いますし、ただ投資価値分析みたいな発想が十分であったかといえば、

若干これからの課題かなと思いますけれども、いずれにしろ何がしか我々は、十分かどう

かは別にしてもやってきた世界かなとは思っております。

それからこの右にあります、コスト分析と売却・賃貸比較分析と、売却・賃貸比較分析

につきましては、5月にいろいろと皆様からもご意見賜って、6月の財務省から発表いた

しましたものにも相当程度分析を残しておりまして、これを具体的に実務にどう適用して

いくかというのは、まさにすでに我々の中では実務的な検討を進めているという段階にあ

ります。

したがって、おそらく今後大きく残された課題は、4番目のコスト分析と、これをどうい

う風なアプローチでこれからより効率的にやっていけばいいのかなと、私どもの頭として

はこうなったわけなのですけれども、山内先生のご所見もお伺いしたいなと、いうのがご

質問でございます。

(山内氏)

おっしゃる通りで、まず分類のほうからいくと、法律上の財産分類はあるけれどもそれ

にとらわれずに実態とですね、それからこういったエコノミックなアプレイザル

(appraisal)があるわけだから、それに基づいた分類というのが一つあると思います。そ

れで、先ほど言った使用調整のようなくだりで、私はさっき物理的効率性といったけれど

も、それはかなり進めて来られたと思います。そのもう一つ上のエコノミックなアプレイ

ザルもあって、それによる 適な市場戦略みたいなものを取っていく中で、具体的にはお

っしゃる通りだと思うんですね。実際使っている貢献度をどう見るかとか、あるいは売っ

たらどうなるのかとか、キャッシュフローに着目した売却と賃貸ということなんだけれど

も、コスト分析のところでいえば、具体的に保有コストと賃借コストを比較するというの

は、想定のもとなので、どこまで詳細に詰めるかというのも少し、これから進めるべきで

はないかと思うのと、全体に言えるのはリスクの把握みたいなものをどこまでできるかと

いうことだと思います。先ほどのリスクプレミアムの話もあったけれども、民間に貸すな

り何なりして、民間が評価をしてリスクプレミアムを考えた中で、例えばプライシングし

てくると思うのですけれども、でも本当に適切なのはどうかとか、その辺のことを貸す側

と言いますか、財産を持っている側もね、ちゃんと評価できないので、そういったところ

の分析を少し進める必要があるのかなと思います。

(企画課長)

ありがとうございました。次に山本先生へのご質問なんですけれど、貴重な事例も含め

たご紹介をいただき、ありがとうございました。まず少しコメントさせていただきますと、

2点ございまして、1点目は新宿区内を区の施設、都の施設、国の施設というようにドッ

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トいただいて、改めて自治体の土地と我々国有の土地が隣接しているケースが多いことを、

目で見て改めて感じ取ったのですけれども、実は5月にもこの関係の議論が相当ございま

して、既に6月の取りまとめにも、方針を書かせていただいたんですけれども、まさに一

般の国民の方から見れば、国、地方公共団体、あるいは独立行政法人と別々に対応するよ

りも公的セクターで連携していったらどうだというご指摘も、5月にも相当賜りまして、

まずは情報提供の在り方だとか、連携の在り方から取り組んでいこうということをやらせ

ていただいているところでございます。また、なかなか制度的に一足飛びにいくのも難し

い面があるものですから、まず我々財務省としては、国にも一般会計と特別会計というも

のがございますので、まず特別会計について悉皆的に監査を行っていくとか、各省と連携

をしていくことについて今、取り組んでいるということをご紹介させていただきたいと思

います。

ご質問を端的にいたしますと、いろいろ衝撃的事例もございましたが、これを教訓とし

て、これから我々は何に気をつけていったらいいだろうか、という点です。実務的な面で

は、27ページ以降でいろいろ管理規定等で、ご指摘も賜ったんではないかと思うのです

けれども、後々修繕が高くついてしまうといったようなことを避けるためには、どういう

アプローチを検討すべきなのか、反省点的にご説明いただいても結構ですし、支障があれ

ば一般論的なことでも結構なんですけれども、冒頭の調整課長の説明に照らせばどういう

ふうに中長期的な、言わば投資計画的なものを検討していくべきかについてご指導賜りた

いと思います。

(山本氏)

13ページに記載しましたが、公共施設の実例としてのライフサイクルコストがありま

す。この実例では、デフレーター使っております。建設投資時期の金額とそれ以後の金額

を見ますと、維持保全費の金額が大きくなっています。光熱水費は、毎年の同じでもいい

と思いますが、修繕費とプラス維持保全費用の一部が減価償却の金額という考え方になる

と思います。ということはどういうことかというと、一つの建物を建築した場合には、維

持保全費用が、それ以後の年数に応じて掛かるということです。そして、20 年後に大規模

改修を行い、40 年後に改築していくのか、もう一度大規模改修するのかを判断していかね

ばなりません。それには、減価償却の考え方、あるいは、マンションの積立修繕金のよう

な考え方をしていかないといけないと思います。改修時、改築時の時に、予算を組んでい

けば良いという考え方ではなく、毎年、既に出来ている建物に関して、維持保全の費用を

考えていかないと、いけない時期だと思います。

私も、修繕の金額がなくて、修繕できない状況になったことがあります。これは、どう

いうことになったかというと、データ的には数字的な根拠はなかなか示せないんですけれ

ども、現実として非常に劣化が激しくなりました。劣化が悪くなって、それ以降の修繕費

の積み上げのほうが、余程お金がかかるという状況から考えるとやはり少なくとも減価償

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却分のお金くらいは、積み上げていかないと、適正な建物は維持管理できないと思います。

さらに、機能アップまで考えると、宿舎でいうと、そのなかにどのくらい機能アップする

かわかりませんけれど、そこをまあ、入居させる方の負担にさせるか、それとも家主のほ

うが負担するのかということも考えて、その負担のことの割合も考えていかないといけな

いと思います。

(企画課長)

ありがとうございました。

(調整課長)

他にございませんか。

それでは本日はどうもありがとうございました。 後に理財局長から締めくくりのご挨

拶をさせていただきます。

(理財局長)

本日はどうも貴重なご提案を頂きまして誠にありがとうございました。新成長戦略の施

策を踏まえ、国有財産行政が新たな展開を図っていく中で、本日のヒアリングの実施によ

り国有財産の有効活用方法であるとか、更には、今後の国有財産行政の在り方を考える際

の、大変重要な示唆を得ることができたと考えております。

皆様からお伺いしましたご提案をもとに、よりいっそう充実した国有財産行政を実施し

ていく所存であります。本日は大変お忙しい中ご出席いただきまして、有識者の皆様へ今

一度御礼を申し上げて、本日のヒアリングを終了させて頂きたいと思います。本日は誠に

ありがとうございました。