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脳神経外科 佐々木庸 矢野達也 岡本順二 重松朋芳 江口貴博 生塩之敬 外来看護部 松山澄枝 臨床検査部 笠松里美 宮本茜 矢野千寿子 リハビリテーション部 君浦隆ノ介 岸哲史

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Page 1: SCU - 藍の都脳神経外科病院:トップ©の筋を選択し、機能回復するこ とでADLの改善に繋げるか予測 患者様の視点で の問題点を確認 予測される改善点を伝え、目標を明

脳神経外科 佐々木庸 矢野達也 岡本順二

重松朋芳 江口貴博 生塩之敬

外来看護部 松山澄枝

臨床検査部 笠松里美 宮本茜

薬 剤 部 矢野千寿子

リハビリテーション部 君浦隆ノ介 岸哲史

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<概要>

平成23年7月開院。ボツリヌス療法同年9月末より開始。

場所:大阪市鶴見区放出東2丁目

診療科:脳神経外科・循環器科・神経内科・リハビリテーション科

病床数:80床(SCU3床・一般病床63床・亜急性期病床14床) 職員数:約120人

救急件数:2054件(平成23年7月~平成24年8月末)

手術件数:250件(平成23年7月~平成24年8月末)

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どの筋を選択し、機能回復することでADLの改善に繋げるか予測

患者様の視点での問題点を確認

予測される改善点を伝え、目標を明確にし、リハビリの必要性を説明

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筋の選定と投与量決定

コメディ

カル

医師 患者様

医療提供者の視点 患者様の視点

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医療保険診療報酬上、算定日数の上限を超過

ボツリヌス療法後のリハビリ

医療保険 介護保険

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医療保険

「医学的に改善の見込みがある患者」 (13単位/月以内で外来リハビリ)

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介護保険

当院希望 訪問リハビリ

他施設希望 担当者に連絡 リハビリの依頼

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ボツリヌス療法& リハビリテーションによる

ハイブリッド効果

痙縮改善

機能回復

2nd phase

長期的な視点での回復へ

1st phase

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講演会資料として使用することに対して同意を頂いています。

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単位MAS

推奨単位の1/3

推奨単位の2/3

推奨単位

1 ○

1+ ○ ○

2 ◎ ○

3 ○ ◎

4 ◎

上腕二頭筋の場合:推奨投与量75~100単位

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S.S氏 55歳

<病歴>

H22.4月 左視床出血発症

右上下肢に中等度の痙縮を伴う運動麻痺

退院時mRs3

H23.9/19左脳梗塞発症

右上下肢に軽い痺れのみで、運動麻痺など

増悪無し

退院時mRs3

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ボツリヌス療法 症例1-②

講演会資料として使用することに対して同意を頂いています。

<患者の訴え>

「右手の指が動きにくい・腕が上がりにくい。」「足も気になるが右手を何とかして欲しい。」

<医師・リハの分析> ・大胸筋の痙縮と連合反応で肩関節挙上困難 ・上腕二頭筋、上腕筋の痙縮で肘関節伸展困難 ・深指屈筋・浅指屈筋の痙縮と連合反応で2~4 指が伸展困難 ・母指内転筋・長母指屈筋の痙縮と筋短縮で 母指外転困難

・後脛骨筋の痙縮による内反で歩行困難

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<医師・リハの筋の選定と投与量のプランニング>

大胸筋:60単位

上腕筋・上腕二頭筋:各40単位

浅指屈筋:50単位

深指屈筋:20単位

長母指屈筋:20単位

母指内転筋:10単位

後脛骨筋:70単位

ボツリヌス療法 症例1-③

上肢240単位+下肢70単位=330単位

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講演会資料として使用することに対して同意を頂いています。

近位関節の筋緊張が安定し、上肢全体の動きがスムースに神経筋再教育中心に実施

上肢・手指の筋トーヌスが安定し、リーチからペットボトル把持までがスムーズになった

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S.Sさんのボツリヌス療法後の感想 「肩が軽くなって、腕を上げやすくなった」

「指が拡げやすくなって、右手で物が掴みやすくなった」

僧帽筋の代償動作に影響されずスムーズな肩の挙上を獲得

近位関節の連合反応抑制

手指筋の筋緊張抑制 手指のスムーズな運動の獲得

肩関節の内転筋抑制 大胸筋に投与

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日時 部位 投与量 評価 満足度

H23.9/30 右上肢 100単位 不変 不変

H24.1/14 右上肢 100単位 やや改善 やや満足

H24.4/20 右上肢 140単位 不変 やや不満

H24.8/10 右上下肢 360単位 著明改善 満足

痙縮パターン:肩関節内転内旋・肘関節屈曲・手関節掌屈・手指屈曲・ 足関節内反尖足 主な施注筋:大胸筋・上腕二頭筋・上腕筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋・ 浅指屈筋・深指屈筋・母指内転筋・長母指屈筋・後脛骨筋 リハビリ内容:週1回60分間・神経筋再教育とROM訓練・ADL訓練実施

ボツリヌス療法 症例1-⑤

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S.T氏 51歳

<病歴>

H22.3月右脳内出血発症

左上下肢に痙縮を伴う運動麻痺

退院時mRs2

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講演会資料として使用することに対して同意を頂いています。

<患者の訴え>「こむら返りになりやすい」「歩くときに足先を引っかけやすい」「腕・肩が動かしにくくて着替えがしにくい」 <医師・リハの分析> ・大胸筋の痙縮と連合反応により屈曲・ 外転困難 ・橈側・尺側手根屈筋の痙縮と連合反応により 手関節運動困難 ・浅・深指屈筋の痙縮と連合反応により手指伸 展困難 ・後脛骨筋とヒラメ筋の痙縮による内反尖足で 分回し歩行

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<医師・リハの筋の選定と投与量のプランニング>

大胸筋:40単位

橈側・尺側手根屈筋:各30単位

浅指屈筋・深指屈筋:各60単位

長母指屈筋:10単位

母指内転筋:10単位

後脛骨筋:60単位

ヒラメ筋:60単位

ボツリヌス療法 症例2-③

上肢240単位+下肢120単位=360単位

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講演会資料として使用することに対して同意を頂いています。

前脛骨筋・腓骨筋の動きが改善

内反尖足改善し、フットクリアランスがスムーズ歩行スピードアップ

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S.Tさんのボツリヌス療法後の感想

「足先を擦らなくなったので歩きやすくなったが、ふくらはぎがまだ突っ張るので次回は多めに打ってほしい」

後脛骨筋・ヒラメ筋へ投与 内反尖足改善

腓腹筋過緊張継続

上肢投与も必要

ジレンマ

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痙縮改善 機能回復

2nd phase

長期的な視点での回復へ

1st phase

ボツリヌス療法& リハビリテーションによる

ハイブリッド効果

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痙縮パターン:肩関節内転内旋・肘関節屈曲・手関節掌屈・手指屈曲 足関節内反尖足 主な施注筋:大胸筋・上腕二頭筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋・浅指屈筋 深指屈筋・長母指屈筋・後脛骨筋・ヒラメ筋 リハビリ内容:週1回40分間・神経筋再教育とROM訓練・ADL訓練実施

日時 部位 投与量 評価 満足度

H24.2/4 左上下肢 230単位 不変 不変

H24.5/11 左上下肢 360単位 やや改善 やや満足

H24.8/11 左上下肢 360単位 やや改善 やや満足

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5%

40%

21%

24%

10%

満足度

大変満足 満足 やや満足 どちらでもない 不満

投与量・筋選択に改善因子?

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「トイレの時に縦手すりが握れるようになった」

手指屈筋群の痙縮を改善。手指の伸筋を促通し、屈伸がスムーズに廃用手から補助手へ⇒トイレ動作の安全性が向上。介助量の軽減

「クロウトゥーが治って立ち仕事ができる(料理など)時間が長くなった」

足趾屈筋群の痙縮を改善。足底をしっかり接地できるようになり、支持基底面が拡がったことで立位保持が可能となった

「足の力が抜けすぎて膝折れして歩けなくなった」

内反尖足の改善を目的に腓腹筋にボットクスを投与し痙縮が軽減したが、投与量が多すぎて下腿三頭筋の代償が効かなくなり、膝折れが出現し一時的に歩けなくなってしまった

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3つのハイブリッド効果

①痙縮改善による関節アライメントの安定化

②痙縮改善による神経筋再強化

③機能回復とADL拡大

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①痙縮改善による関節アライメントの安定化

筋活動にアライメントが左右されやすい肩関節や足底

筋トーヌスの安定化により動作性が向上しやすい

日常生活動作での使い方のポイントや、意識的な使用を促して神経筋再教育や筋力トレーニングに繋がり、機能回復を促進していく

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②痙縮改善による神経筋再強化

痙縮筋を一度リセットし、減弱している神経筋活動を再強化

筋協調の再構築を行うことで、相反抑制

痙縮筋をコントロール

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③機能回復とADL拡大

ADLを拡大

回復した機能の維持と筋力強化

初期段階で問題となっていた筋の再教育を完了し、 次の段階を目指す

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1.ボツリヌス療法において効果的な筋弛緩を確保

するためには、投与する筋の選択と、容量を比較的

十分量投与することが重要である。

2.痙縮による運動障害の改善させるべき優先度の

解釈においては、患者様の視点と医療者側の視点

が剥離していることが多く、特に初期段階において

は患者様の視点に重きをおくことが長期的に円滑

なケアサイクルをイメージしたボツリヌス療法を実

施継続できる可能性が高い。

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3.ボツリヌス療法においてのリハビリテーションの併用

は、本来の目的に合致したものであり、さらにハイブリッド的な増強効果が期待できる可能性が高い。

4.ボツリヌス療法後においてのリハビリテーションは、

従来の脳卒中維持期患者への延長線上に位置するのではなく、脳卒中患者初発患者様へのそれとも全く異質な新しい治療知識を必要とした新しい概念であり、今後さらに学習していくことが重要である。

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5.ボツリヌス療法においては、痙縮発生早期に行う

事が望ましく、当院では亜急性期を経て麻痺が残存し、将来的に痙縮を起こす可能性のある潜在的患者様に対し、退院前の段階でボツリヌス療法があることを教授しており、今後は近隣地域の在宅サービス提供施設へも啓蒙していく方針である。

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ご清聴ありがとうございました