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SPC-21-001 MD-21-001 直並列された自律電力変換モジュールの個別電力制御手法 冨田 ,芳賀 仁(長岡技術科学大学) Individual Power Control Method for Series-parallel Autonomous Power Conversion Modules Sho Tomita and Hitoshi Haga, (Nagaoka University of Technology) In this paper, a method to improve the power imbalance caused by the coordinated operation of the current control systems connected in series is proposed. In the proposed method, the input / output power of each cell connected in series is adjusted by the variable operation of the feedforward voltage focusing on the capacitor voltage. The usefulness of the proposed method was confirmed by actual machine experiments. From the actual machine experiment, it was confirmed that the variation of the capacitor voltage was reduced from 110.72 to 6.16 by the proposed method. It was also confirmed that the capacitor voltage deviation was suppressed to 1[%] or less by controlling the master controller. キーワードAC/DC 電力変換,ユニバーサル・スマート・パワー・モジュール,Hブリッジセル,自律動作,直列接続, 協調制御, (AC/DC power converter, Universal Smart Power Module, H-bridge cell, autonomous operation, series connection, cooperative control) 1. はじめに 近年,広範な電力容量に対応するために,モジュール化し た電力変換器を複数直並列接続するアプローチが多くみら れている (1)(2) 。この手法は,高耐量のデバイスや直並列デバ イスを利用する手法と比較して低圧・高速スイッチングデ バイスが利用できるためにフィルタの小型化が可能であ る。また,容量がモジュール数で可変できることから個別に 設計するよりも開発期間の短縮も期待される。しかしなが ら,スイッチングパターンの生成や制御の適用,検出や通信 などの要素技術は従来と同様に高い専門性や豊富な経験 則,知識を要し,流動的に変化する社会要求に迅速に対応す ることは困難である。 そこで著者らは,主回路,制御回路,駆動回路,ノイズフ ィルタ等を統合して 1 つのモジュールを構築して,これを 直列接続・並列接続することで多様な電圧・電流容量に対応 させる USPM(Universal Smart Power Module)を研究して いる (3) USPM の応用として,マイクログリッド (1),(6) MMC (1),(5),(6) (MMC : Modular Multilevel Converter)ISOP IPOS 方式 (7) をもつ電力変換器が考えられる。 USPM は,電力変換器としての動作に必要な機能を有し ていることから単体で任意な電圧または電流源となる。電 圧・電流容量は USPM の直並列によって調整が可能である。 これによって,電力変換システムの開発者は USPM の接続 構成の決定とモジュールへの指令値を生成するメインコン トローラの開発によって任意の電力変換システムが構築可 能となる。また,各 USPM は自律制御を適用し,低間隔の 指令値更新によって動作するためにメインコントローラと USPM 間の通信は低速な通信規格を利用可能である。 本稿は USPM MMC に適用することを想定したシステ ムと制御器の構成について検討する。従来の分散型 MMC 御は,レグやアーム,クラスタなどのグループに分割した制 御を行っている (5) 。近年では,セルを個々に制御する手法が 提案されているが,各層電流の偏差抑制のために一部のセ ルを集中管理で制御している (1) MMC では,個々のセルが 有する直流コンデンサの電圧を一定かつ均一に制御するコ ンデンサバランス制御が必要である (5)(6) 。この制御は,コン デンサ電圧の過不足に応じて電源や他セルより,電力の授 受を行うものである。自律動作においては,直列セルと電流 経路を共有することから協調制御を適用するため,電流は 各セルの電流指令値の平均値となる。この為,コンデンサを 充放電するための電流量が達成されないためにコンデンサ 電圧の管理は困難となる。そこで,本稿は電流経路を共有す るセルのコンデンサ電圧制御手法と負荷共有手法を提案す る。 提案法では,低更新間隔においてもコンデンサ電圧の均 一化が可能であり,負荷電力変動時においてもコンデンサ 電圧偏差を小さくすることが可能である。 本稿では,USPM の概念と回路構成を示し,適用するセ ルの提案制御手法とメインコントローラの制御手法につい て説明する。提案手法の有用性は,USPM を模した自律動 作する電力変換セルを用いた実験結果より明らかにする。

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SPC-21-001 MD-21-001

直並列された自律電力変換モジュールの個別電力制御手法

冨田 青*,芳賀 仁(長岡技術科学大学)

Individual Power Control Method for Series-parallel Autonomous Power Conversion Modules Sho Tomita*and Hitoshi Haga, (Nagaoka University of Technology)

In this paper, a method to improve the power imbalance caused by the coordinated operation of the current control systems

connected in series is proposed. In the proposed method, the input / output power of each cell connected in series is adjusted

by the variable operation of the feedforward voltage focusing on the capacitor voltage. The usefulness of the proposed

method was confirmed by actual machine experiments. From the actual machine experiment, it was confirmed that the

variation of the capacitor voltage was reduced from 110.72 to 6.16 by the proposed method. It was also confirmed that the

capacitor voltage deviation was suppressed to 1[%] or less by controlling the master controller.

キーワード:AC/DC 電力変換,ユニバーサル・スマート・パワー・モジュール,Hブリッジセル,自律動作,直列接続,

協調制御,

(AC/DC power converter, Universal Smart Power Module, H-bridge cell, autonomous operation, series connection,

cooperative control)

1. はじめに

近年,広範な電力容量に対応するために,モジュール化し

た電力変換器を複数直並列接続するアプローチが多くみら

れている(1)(2)。この手法は,高耐量のデバイスや直並列デバ

イスを利用する手法と比較して低圧・高速スイッチングデ

バイスが利用できるためにフィルタの小型化が可能であ

る。また,容量がモジュール数で可変できることから個別に

設計するよりも開発期間の短縮も期待される。しかしなが

ら,スイッチングパターンの生成や制御の適用,検出や通信

などの要素技術は従来と同様に高い専門性や豊富な経験

則,知識を要し,流動的に変化する社会要求に迅速に対応す

ることは困難である。

そこで著者らは,主回路,制御回路,駆動回路,ノイズフ

ィルタ等を統合して 1 つのモジュールを構築して,これを

直列接続・並列接続することで多様な電圧・電流容量に対応

させる USPM(Universal Smart Power Module)を研究して

いる(3)。USPMの応用として,マイクログリッド(1),(6), MMC (1),(5),(6)(MMC : Modular Multilevel Converter),ISOP や

IPOS 方式(7)をもつ電力変換器が考えられる。

USPM は,電力変換器としての動作に必要な機能を有し

ていることから単体で任意な電圧または電流源となる。電

圧・電流容量は USPMの直並列によって調整が可能である。

これによって,電力変換システムの開発者は USPM の接続

構成の決定とモジュールへの指令値を生成するメインコン

トローラの開発によって任意の電力変換システムが構築可

能となる。また,各 USPM は自律制御を適用し,低間隔の

指令値更新によって動作するためにメインコントローラと

各 USPM 間の通信は低速な通信規格を利用可能である。

本稿は USPMを MMCに適用することを想定したシステ

ムと制御器の構成について検討する。従来の分散型MMC制

御は,レグやアーム,クラスタなどのグループに分割した制

御を行っている(5)。近年では,セルを個々に制御する手法が

提案されているが,各層電流の偏差抑制のために一部のセ

ルを集中管理で制御している(1)。MMC では,個々のセルが

有する直流コンデンサの電圧を一定かつ均一に制御するコ

ンデンサバランス制御が必要である(5)(6)。この制御は,コン

デンサ電圧の過不足に応じて電源や他セルより,電力の授

受を行うものである。自律動作においては,直列セルと電流

経路を共有することから協調制御を適用するため,電流は

各セルの電流指令値の平均値となる。この為,コンデンサを

充放電するための電流量が達成されないためにコンデンサ

電圧の管理は困難となる。そこで,本稿は電流経路を共有す

るセルのコンデンサ電圧制御手法と負荷共有手法を提案す

る。

提案法では,低更新間隔においてもコンデンサ電圧の均

一化が可能であり,負荷電力変動時においてもコンデンサ

電圧偏差を小さくすることが可能である。

本稿では,USPM の概念と回路構成を示し,適用するセ

ルの提案制御手法とメインコントローラの制御手法につい

て説明する。提案手法の有用性は,USPM を模した自律動

作する電力変換セルを用いた実験結果より明らかにする。

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2. 検討回路構成

〈2・1〉 USPM の概念 USPM は,主回路,フィルタ,

検出回路,コントローラ,ゲート駆動回路,通信回路を有す

る電力変換モジュールである。また,動作に着目して大別す

ると電圧源と動作する電圧型 USPM と電流源と動作する電

流型 USPM となる。電圧型の直列で電圧容量を電流型の並

列で電流容量を可変できる。交流から直流に変換する MMC

に適用する場合は,交流電流を制御する必要があることか

ら各アームに 1 つの電流型 USPM と直列に複数の電圧型

USPM によって構築される。その為,最小構成では 1 つの

電流型 USPM がアームに1つの構成となる。

制御構成では,各 USPM が有するモジュール個々に独立

な制御系(下位制御系)と全体を管理する制御系(上位制御系)

に大別される。上位制御系は,低速に下位制御に補正値を生

成し,電力変換システムの全体動作を管理する。

USPM は,独立なモジュールが波形電源と動作するので

上位制御の開発で所望の電力変換システムとなるため,高

い専門性や豊富な経験則・知識を必要とすることなく電力

変換システムの構築可能である。

〈2・2〉 検討回路構成 本稿は,Fig.1 に示すような 1 レ

グ 2 セル構成の単相 MMC の AC/DC 変換動作について検

討する。セルは,先述の電流型 USPM を模擬したものを用

いる。各セルはそれぞれ,直流側に電解コンデンサ,交流側

にフィルムコンデンサを有する。電源とする交流電圧源は,

50Hz の商用単相とする。

各部電圧と電流は Fig.1 に示した通りである。交流電流

(iAC1,iAC2)と直流電流(iDC1,iDC2)の経路はそれぞれ 2通り存在

し,それぞれでセルの直列接続が発生している。この為,電

流制御は入出力それぞれでセル相互に干渉する。

〈2・3〉 モジュール構成 電流型 USPM を模擬する各

セルは,Fig.2 に示すような構成である。セルは,H ブリッ

ジと LC フィルタ,インダクタで構成される。各セルが有す

る独立なコントローラは,Fig.2 に示されるコンデンサ電圧

(直流電圧)と交流電圧,交流電流のみを直接検出可能であ

る。モジュールとメインコントローラの関係は,Fig.3 に示

す通りであり,セルは自身の状態を送信し,メインコントロ

ーラの生成した指令値を受信するのみで他セルの情報を共

有しないものとしている。また,低速な通信規格利用を想定

するためメインコントローラとの通信は 2Hz としている。

3. 制御構成

〈3・1〉 電流制御手法 検討回路構成においては,電流

型 USPM の直列が存在する。簡単のために直流電圧源から

の電流を 2 つの電流源で操作する等価回路で考える。Fig.4

(a)に示すような電流源のみで操作する等価回路では,I1 と

I2が等しくない場合は動作不能である。そこで,電流源と並

列に抵抗 r をそれぞれに置くと Fig.4 (b)となり,I1 と I2 の

偏差量が抵抗 r を経由する。この時の各電流は(1)-(3)式とな

る。ここで I1=I2について考えると追加した抵抗 r によって

電流 I は式(4)に示すように流れる。制御器においては,比

例制御器の定常偏差と等価である。

I =V

2r+

1

2(𝐼 + 𝐼 ) (1)

I =𝑉

2𝑟+

1

2(𝐼 − 𝐼 ) (2)

I =𝑉

2𝑟+

1

2(𝐼 − 𝐼 ) (3)

I =V

2r+ 𝐼 (4)

ここで Fig.4 (c)に示すように抵抗 r に電圧源を直列接続

する時を考える。V1=V2=V/2 の時に電流は(5)式となり,抵

抗の影響を理論上無視できる。

I =I + 𝐼

2 (5)

これを制御に適用すると Fig.5 となり,直列接続の電流制

御の協調動作が可能となる。

vo

io

iS Ro

Ca

CovS

iDC2

iAC2

iAC1

iDC1

CCUSPM1

USPM2

USPM3

USPM4

Fig.1. Single-phase MMC configuration.

ix

vCx vxLS

CfLf

USPMx

Controller

Fig.2. Cell configuration that simulates current-type

USPM.

Command

Status

USPM1 USPM2 USPM3 USPM4

Main Controller

Fig.3. Examination Control system configuration.

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SPC-21-001 MD-21-001

〈3・2〉 出力電圧制御手法 検討システムでは,直流の

電圧出力が目的であることから,電圧制御器を有する。電圧

制御は,電圧源の動作となるため,直列接続は問題ないが並

列は干渉が生じるために電流制御手法と同様に比例制御を

用いる。

〈3・3〉 コンデンサ電圧制御手法 コンデンサ電圧は,

入出力電力の差によって遷移する。電流は先述の通り,比例

制御とフィードフォワードを用いる。先程の Fig.4(c)におけ

る電力に着目して考えると P1と P2では(6)式に示すよう

になる。ここで直列セルが存在しない場合の電力をそれぞ

れ Pi1,Pi2と定義し,直列セルが存在する場合の電力と比較

すると次の式の関係となる。

𝑃 = 𝑟𝐼 (𝐼 + 𝐼 ) +𝑉

2(𝐼 + 𝐼 )

𝑃 = 𝑟𝐼 (𝐼 + 𝐼 ) +𝑉

2(𝐼 + 𝐼 )

(6)

𝑃 =𝑉

2𝐼

𝑃 =𝑉

2𝐼

(7)

∆𝑃 = 𝑃 − 𝑃 = 𝑟𝐼 𝐼 + 𝐼 +𝑉

2𝑟

∆𝑃 = 𝑃 − 𝑃 = 𝑟𝐼 𝐼 + 𝐼 +𝑉

2𝑟

(8)

I1rは I1>I2の時に負になるので電力 P1を多く得ようとす

るほど取得電力は減少する。つまり,電流制御を成立させる

ための抵抗 r の影響によって,コンデンサ電圧の状態量と

相反する電力がセルに入出力となることがわかる。この相

反現象によって,コンデンサ電圧は指令値から期待される

挙動を符号反転したものとなる。ここで問題となるのが,

I1=I2 となるときは指令電力を達成することであり,単純な

符号反転による解決ができないことにある。

そこで,フィードフォワード電圧をコンデンサ電圧の状

態によって可変することを提案する。これを等価回路に示

すと Fig.6 となる。簡単のために直流入力とし,負荷を一定

の抵抗に異なる電流を流すとするとそれぞれのフィードフ

ォワード電圧を変動させることで満足する。出力において

も同様に負荷 Poに対し直列セルがそれぞれ異なる電力 Po1,

Po2 を出力し,負荷電圧 Vo を達成する場合もフィードフォ

ワード電圧を変動させればよい。

以上より,フィードフォワード電圧を可変することで直

列セルにおいて異なる電力入出力が可能となる。本稿にお

いては,(9),(10)式に示す変数(ι,κ)と制御ゲイン μ と ν を

用いて(11),(12)式に示すようにフィードフォワード電圧を

可変させる。

ι =v

𝑉 (9)

κ =

V − 𝑣

𝑉 (10)

v = 𝜄𝜈V (11)

I2rVV

I1r

I1

I

I2

I

I2

rI1

r

VI2r

I1rI

I2

rI1

r

V/2

V/2

(a) Current control equivalent circuit

(b) Parallel resistor to current source

(c) Steady-state deviation suppression by voltage source

V1

V2

Fig.4. Current source series operation principle by

resistor r and method of reducing resistance current.

Pi

v

r rv

iir ir

io

io

vo vo

Fig.5. Physical relationship between proportional

controller and equivalent circuit.

VI2r

I1rI

I2

rI1

r

i1V/2

V/2 i2V/2

Fig.6. Power control with variable voltage source.

atan2

𝛼𝛽𝑑𝑞

vx

ix

a

ba

b0

PI

cosqx

sin

PLL

PLL

iqx

sinqx

ref

Iqx

Fig.7. Reference phase and reactive current control

using PLL.

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v = 𝜅𝜇𝑉 sin 𝜃 (12) 〈3・3〉 瞬時指令値生成手法・無効電流抑制手法 各セ

ルはそれぞれ独立しているためにそれぞれに PLL を有し,

印加電圧より系統位相角を取得する。また,同様の PLL を

用いてセル通流電流の実部と虚部を取得する。検討回路で

は,電圧,電流に出力の直流が重畳するので参考文献(8)に提

案される直流量を無視できる手法を用いる。PLL より得た

各地をもとに Fig.7 に示すように基準正弦波と無効電流抑

制電流指令を生成する。

〈3・4〉 下位制御器構成 以上に示した手法を組み合わ

せることによって Fig.8 に示すような制御系を構築できる。

コンデンサ電圧は単相電力脈動に起因する指令値振動を抑

制するために移動平均(図中では LPF と表記)を用いる。出

力電圧制御系に交流電圧の重畳を軽減する目的でフィード

フォワード電圧を用いている。また,上位への直流量の出力

電流状態量を得るために移動平均を用いている。交流の場

合は,目的の波形との自己相関関数を用いる。IC と Iv は上

位からの補正電流である。

〈3・5〉 定常偏差補正値生成(上位制御器構成) 下位

制御器は相互の干渉を回避するために比例制御器によって

構成される。その為,定常偏差が発生することから,下位の

状態量をもとに偏差を抑制する指令値の生成を行う。本構

成の電力変換システムの目的は,出力電圧とコンデンサ電

圧の達成である。また,各セルの負担電力を均一化する目的

で Fig.9 に示すような制御器を用いる。本稿においては,同

一の時刻に生成した指令値の更新を行う。

4. 実験結果

〈4・1〉 実験構成 提案制御手法の有用性をそれぞれ

確認するために単相電源入力,抵抗負荷とした実機実験を

行った。Table 1 に回路パラメータ及び制御パラメータを示

す。

〈4・2〉 電流制御法の検証 電流制御と瞬時指令値生

成を確認するために入力電流指令値を 6A,出力フィードフ

ォワード電圧を 150V,負荷抵抗 80Ωとした時の各セルの

コンデンサ電圧と入力力電圧・電流波形を取得した。

Fig.10(a)に入出力波形,Fig.10(b)にコンデンサ電圧を示す。

〈4・3〉 下位制御法の検証 出力電圧制御とコンデン

サ電圧制御を確認するためにコンデンサ電圧指令値を

LPF

LPF

VCref

vCx

Vdcref

Vacref Eq.(9-11)

PkC

Pkv LPF Ivx

Fig.7

sinqx

vxix

Pki

vdcx

vacx

ICx

PWM1/X

fPWM

vCx

IC

Iviqxref

Fig.8. Cell controller configuration.

IC

Current Difference Holder

1/4TCy

ZOH

IC1

IC2

IC3

IC4

Iv

Current Difference Holder

1/2TCy

ZOH

Iv1Iv2

Iv3Iv4 1/2

Fig.9. Main controller.

Table 1. Circuit parameters and control

parameters

AC power supply vin 100Vrms fin 50Hz

Buffer reactor Ls 200uH

Cell filter Cf 5F Lf 5H

Cell DC capacitor Cc 480F Cell AC capacitor Ca 10F

Load Ro 80/40 Co 2200F

Switching frequency fPWM 50kHz Dead time Td 150ns Current control gain ki 3.77 Capacitor voltage control gain kC 0.15 Output voltage control gain kv 9.42×10-3 AC voltage variable gain 0.75 AC voltage variable gain ν 1.00 Communication cycle TCy 500ms

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200V,出力電圧指令値を 150V,負荷抵抗 80Ωとした時の

各セルのコンデンサ電圧と入力力電圧・電流波形を取得し

た。Fig.11(a)に入出力波形,Fig.11(b)にコンデンサ電圧を示

す。

〈4・4〉 上位制御法の検証 上位制御による定常偏差

抑制を確認するためにコンデンサ電圧指令値を 200V,出力

電圧指令値を 150V,負荷抵抗 80Ωとした時の各セルのコ

ンデンサ電圧と入力力電圧・電流波形を取得した。補正値の

GND

[100V/div][20A/div]

vS

GND

iS

[50V/div][2A/div]

[5msec/div] vo

io

150V

GND

200V

[5msec/div ] [50V/div]

(a) Power supply voltage / current and load voltage / current (b) Cell capacitor voltage

Fig.10 Waveform response of current coordinated control only.

GND

[100V/div][20A/div]

vS

GND

iS

[50V/div][2A/div]

[5msec/div]

vo

io

150V

GND

200V

[5msec/div ] [50V/div]

(a) Power supply voltage / current and load voltage / current (b) Cell capacitor voltage

Fig.11 Waveform when the capacitor voltage control system is enabled.

GND

[100V/div][20A/div]

vS

GND

iS

[50V/div][2A/div]

[5msec/div]

vo

io

150V

GND

200V

[5msec/div ] [50V/div]

(a) Power supply voltage / current and load voltage / current (b) Cell capacitor voltage

Fig.12 Waveform response when updated by the main controller.

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更新は 2Hz の頻度で行った。Fig.12(a)に入出力波形,

Fig.12(a)にコンデンサ電圧を示す。

〈4・5〉 入力電流の評価 Table 2 に各制御における

力率と電流 THD を示す。表より,各手法において系統連系

に適当な力率・THD であることがわかる。これより,波形

生成動作の有効性が確認される。コンデンサ電圧制御時に

THD が低下しているが,コンデンサ電圧上昇による変調率

変化の為である。

〈4・6〉 コンデンサ電圧の評価 Fig.13 に各制御にお

けるコンデンサ電圧を示す。図は,各セルのコンデンサ電圧

平均値の分散と%偏差量を示している。分散量が電流協調制

御のみと比較してコンデンサ電圧制御(電力制御)時は半減

していることから本提案の有用性が示される。また,上位制

御による補正によって偏差量の大幅な低減と分散量の低下

が確認される。

〈4・7〉 出力電圧の評価 Fig.14 に各制御における出

力電圧値を示す。提案法の原理上,コンデンサ電圧制御を行

うと出力値を逸脱するが,上位制御によって 10%以下の偏

差に抑制されることを確認した。以上より,本提案手法の有

効性と有用性がそれぞれ確認された。

5. まとめ

本稿では,USPM を用いた最小構成の単相 MMC におけ

る電流型 USPM の協調動作によるセル電力不達成に対し

て,コンデンサ電圧を利用した制御手法の提案を行った。実

機実験によって,本提案法が異なる負荷においても有効性

を有することを示した。

しかしながら,出力電圧に定常偏差が残留している。原因

として考慮されるは,指令値更新後のセル動作を考慮しな

い上位制御系の指令値生成動作である。今後の検討として,

上位制御系の指令値生成動作について検討を行う。

本研究は,内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦

略的イノベーション創造プログラム(SIP)「IoE 社会のエネ

ルギーシステム」(管理法人:JST)によって実施されました。

文 献

(1) P. Wu, Y. Su, J. -. Shie and P. Cheng, "A Distributed Control Technique for the Multilevel Cascaded Converter," in IEEE Transactions on Industry Applications, vol. 55, no. 2, pp. 1649-1657, (2019)

(2) L. Huang, H. Xin and Z. Wang, "Damping Low-Frequency Oscillations Through VSC-HVdc Stations Operated as Virtual Synchronous Machines," in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 34, no. 6, pp. 5803-5818(2019)

(3) 冨田青, 芳賀仁:「自律動作する電力変換セルのモジュラー・マルチ

レベル変換器への適用検討」, 半導体電力変換/モータドライブ合同

研究会, SPC-20-115/MD-20-088, pp.49-54 (2020) (4) J. M. Guerrero, J. C. Vasquez, J. Matas, L. G. de Vicuna and M.

Castilla, "Hierarchical Control of Droop-Controlled AC and DC Microgrids—A General Approach Toward Standardization," in IEEE Transactions on Industrial Electronics, vol. 58, no. 1, pp. 158-172(2011)

(5) T. Nakanishi and J. Itoh, "High Power Density Design for a Modular Multilevel Converter With an H-Bridge Cell Based on a Volume Evaluation of Each Component," in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 33, no. 3, pp. 1967-1984(2018)

(6) Y. Okazaki, H. Akagi: “Feasibility Study of a Modular Multilevel DSBC Conversion System Equipped With Medium-Frequency Isolation Transformers for Driving Multiple Medium-Voltage Motors”, IEEJ Transactions. IA, Vol.136, No.12,pp.1005-1014( 2016) (in Japanese)

(7) H. Lee, S. Jung and S. Sul, "A Current Controller Design for Current Source Inverter-Fed AC Machine Drive System," in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 28, no. 3, pp. 1366-1381(2013)

(8) S. Shinnaka, “A New Mapping Method for Phase-Estimation of Single-Phase Signals—A New Generalization and New Realizations of the DFT Estimation Method—”, IEEJ Trans. PE, Vol.125, No.1, pp.29-38(2005) (in Japanese)

Table 2. Input current power factor and THD

in each control and load condition.

Control method Ro[omega] PF THD[%]

Current control only 80 0.998 2.76 40 0.999 2.80

Module control (voltage control)

80 0.999 1.12 40 0.999 1.79

With Master controller 80 0.998 3.47 40 0.999 2.90

190

200

210

220

230

240

250

260

48.6

8.266.16

2.03 2.02

vC1vC2vC3vC4Average

0.4%

18.3%

22.0%

−1.16% −1.21%

Ro=40 Ro=80 Ro=40 Ro=80 Ro=40 Ro=80

Cel

l ca

paci

tor

volt

age

[V]

Current control Power control Power control

Correction value+

Variance%Deviation

110.7212.9%

Fig.13. Mean and variance of capacitor voltage in

each control.

130

140

150

160

170

180

Ro=80Ro=40

−9.2%−5.1%

9.0%

17.5%

−7.0%−3.0%

Current control Power control

Correction value+

Out

put

volt

age

[V]

Power control

Fig.14. Output voltage mean value and deviation

amount in each control.