t d e m 探 査 - 株式会社キンキ地質センター ホームページ¹³成19 年(2007...
TRANSCRIPT
■TDEM 探査の測定方法
TDEM 探査の一般的な測定システムは、一次側が
送信ループと電流を流す送信機、二次側は渦電流
による磁場変化を測定する受振コイル(磁場セン
サ)と受信機からなります。TDEM 探査の測定シ
ステムには多様なバリエーションがありますが、
当社では左図のように、二次側を送信ループの中
に置いて複数の測点を設けるという手法をとって
います。 TDEM 探査では、受信コイルの位置が測点となり
その直下の地下構造を、深度方向に一次元探査し
ていることになります。探査深度はループ辺長の
2~3 倍が目安とされています。
■周波数領域の探査と時間領域の探査
電磁探査では、一次電磁場を与え、それによって誘導される二次電磁場の歪みを測定することにより、地下の電磁異常を捉え
ます。このとき、深度方向に探査する測定手法として、一次電磁場の周波数を変化させる場合と、時間変化による過渡現象を
追跡する場合とがあります。周波数を変化させる場合は周波数領域(Frequency Domain;FD)の探査、過渡現象を追う場合は
上記のように時間領域の探査と呼び、区別されています。CSAMT 探査や VLF 探査は、周波数領域電磁探査(FDEM 探査)の
範疇に入ります。
地質調査シリーズ
- No.330 -
《資源分野》 金属鉱床や深層部の地下水探査
《建設分野》 浅層部の地下水、空洞調査に適用
平成 19 年(2007)4 月
T D E M 探 査
■TDEM 探査とは
TDEM 探査とは、時間領域(Time Domain)の電磁(Electro-Magnetic)探査のことです。金属鉱床や地下水など資源開発の分野
で発達してきた探査手法ですが、近年は小型化が図られ、建設分野にも適用範囲が広がりつつあります。とくに数 10m~100m
以浅といった比較的浅層部の地下水や、地下空洞などへの適用が期待されています。
建設コンサルタント・土質及び地質調査 キンキ地質センター 本社 TEL 075-611-5281
株式 会社
■TDEM 探査の原理
送信ループに流した電流を遮断すると、電磁誘導のため、右
の図のように渦電流が送信ループの位置から地中に向かって
次々と発生します。時間の経過とともに、先行して発生した
渦電流は、減衰しながら地中深部へと伝播していきます。 TDEM 探査では、このような渦電流を地表で磁場の時間変化
として捉えます(時間領域の探査)。測定時間を長くとること
により、探査深度をより深部へ伸ばすことができます。 TDEM 探査の測定データには一次電磁場が存在しないので、
二次電磁場が拡大された感度の良い測定ができる利点があり
ます。また、渦電流は時間とともに地中深くに侵入していく
ので、地形や地表付近の異常の影響はそれに応じて減少し、
複雑な地形にも有効とされています。 送信ループから発生する渦電流
TDEM 探査の測定システム
0
25
50
75
100
125
150
1 10 100 1000
0
25
50
75
100
125
150
1 10 100 1000
0
25
50
75
100
125
150
1 10 100 1000
上図は、写真②現場におけるデータ解析結果の一部を示す。深度 75m 付近で比抵抗が急低下し(青色破線部分)、地下
水の可能性が示唆される。
送信ループ 1辺 50m
受信機 受信コイル
送信機 発電機
■地下水の試験探査事例
① ②
受信コイル(磁場センサ)
送信機
深度 150m 程度以浅を対象に、地下水の試験探査を実施した。写真①の現場は、
平坦な農地で1辺 50m の送信ループを張った。写真②の現場は、農地および
河床(比高 8m 程度)とそれらの間の斜面に 35m×60m の送信ループを張った。
測点は、それぞれループの中央部に設け 5~10m ピッチで測定を行った。
受信機
比抵抗(Ωm)
深度
(m)
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
0
10
20
30
40
50
60
70
1 10 100 1000
比抵抗(Ωm)
深度(
m)
■地下空洞の試験探査事例
上図は、丘陵地に掘られた地下壕調査に関連して実施した試験探査の解析結果を示す。地下壕は、2.5m×3m の断面で
横坑状に伸び、深度は 15m 程度である。測点は地下壕に斜交して配置され、測点 C~E が地下壕区間に該当する。地
下壕の深度を含む深度 10~25m において、測点 C~E と他の測点とで、比抵抗の変化傾向に大きな違いが認められ、
地下壕の有無を反映していると考えられる(ただし、測点 E は深度の誤差が大きく深い方にシフトしている)。 なお、深度 30m 以深においても、黄色矢印や桃色矢印で示したように、特徴的な高比抵抗部と低比抵抗部が出現して
おり、これらは地山の地質状況に起因すると推定される。
A B C D E F
比抵抗が 一様に低下
比抵抗一定
区間を挟む