unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41...

20
マクロ経済学 小巻泰之 unit 4 中央政府の財政政策

Upload: others

Post on 18-Jan-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

マクロ経済学

小巻泰之

unit 4 中央政府の財政政策

Page 2: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

本日の講義は,

(1)政府は役に立っているのか.なぜ,存在しているのか

(2)政府の収入の50%程度は借金!

⇒借金にも,良い借金と悪い借金がある.最近は悪い借金が借金全体の77%占める

⇒では,何の税で収入を増やすべきなのか

(3)政府の支出の25%は借金返済

⇒高齢化で支出は,どんどん増加する

を扱います.

Page 3: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

耐震構造偽装問題 建築確認・検査は1998年以前は地方自治体のみが実施 規制緩和から,民間の検査機関も加わる

日本建築構造技術者協会 HPより

検査は,構造計算書に精通した者でないと詳細はわかりにくい

情報の非対称性

Page 4: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

耐震構造偽装問題 旧GS物件の周辺マンションとの比較

分譲時期 物件名 駅からの距離(徒歩)

総戸数 平均坪単価(万円)

平均価格(万円)

平均専有面積(平方メートル)

2002年4月 Vハイム I 7分 32 162.9 3335.0 67.672002年5月 Pタワー 3分 38 147.2 2754.0 61.842002年7月 Vハイム II 7分 32 158.1 3298.0 68.942002年9月 Vハイム III 7分 32 157.5 3132.5 65.762002年9月 Pタワー I 3分 38 152.3 3478.0 75.48

2002年11月 Hホーム I 4分 79 147.9 3420.0 76.452002年11月 Rパーク 16分 102 124.8 2743.3 72.692002年11月 Rパーク 16分 102 125.6 2900.7 76.322002年12月 Jマンション 4分 27 154.8 3191.1 68.152002年12月 Hホーム II 4分 79 146.0 3321.0 75.172003年1月 Pタワー II 3分 38 154.0 2900.9 62.292003年3月 Hホーム III 4分 79 146.0 3321.0 75.172003年4月 RマンションEX不動産 5分 47 137.0 2692.8 64.96

2003年10月 LS I 8分 74 162.2 3561.3 72.602003年10月 旧GS 6分 37 144.8 4611.1 106.002003年11月 CH 1 5分 55 125.1 2688.0 71.012003年12月 LS II 8分 74 160.1 3374.6 69.672004年2月 CH 2 5分 55 125.1 2688.0 71.012004年2月 CH 3 5分 55 129.6 2615.8 66.702004年5月 JP 1 3分 123 140.5 3110.9 73.172004年6月 Nランド1 4分 39 151.1 3429.0 75.022004年7月 Cサウス1 6分 40 144.7 3049.1 69.662004年7月 Nランド2 4分 39 154.1 3330.7 71.452004年7月 JP 2 3分 123 134.1 2883.0 71.062004年8月 Cサウス2 6分 40 149.2 3322.1 73.63

2004年10月 Cサウス3 6分 40 155.7 3688.0 78.312004年11月 Nランド3 4分 39 156.0 3465.0 73.402004年11月 Nランド4 4分 39 151.7 3287.0 71.622005年2月 Lガーデン 5分 149 160.6 3518.6 72.43

(出所)日経ビジネス「価格でマンションの質は見抜けない~ヒューザー物件は「安物買いの銭失い」だったのか?」     2007年3月27日号

購入者は事前に,欠陥マンションと知る手段はなかったのか?

マンション価格に品質が反映されていればわかる

価格が他のマンションより安ければ,わかったが・・

市場での価格形成が不十分

Page 5: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の役割

1. 市場での価格調整メカニズムの不完全性 = 市場の失敗の存在 2. 経済主体の情報の不完全性 = 情報の非対称性の存在

市場が供給 できないもの

所得格差の拡大

失業,景気悪化

公共財の提供 所得の再分配

減税等財政政策

ビルトイン・スタビライザー

Page 6: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の収入(歳入)

リーマンショック・政権交代後,公債金発行は大幅増加

国家予算も100兆円超え

1975 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

税収 13.75 38.19 60.10 51.93 50.71 49.06 49.07 51.01 44.27 38.73 41.49 42.03 42.35 ▲18.07 ▲1.79

公債金 5.28 12.30 7.31 21.24 33.00 31.26 27.47 25.38 33.17 51.96 42.30 55.85 44.24 +48.54 +6.96 内、特例 2.09 6.00 0.96 4.80 21.87 23.50 21.05 19.34 26.19 36.94 34.70 35.93 38.34 +34.97 +6.05

その他収入 1.83 2.51 1.85 2.76 5.60 8.68 7.87 8.16 7.26 10.29 10.60 7.19 3.74 +5.34 +6.81合計 20.86 53.00 69.26 75.93 89.32 89.00 84.41 84.55 84.70 100.97 95.31 107.51 90.33 +38.25 +12.90

1990年⇒2011年

2003年⇒2010年

(注)2010年度までは決算。2011年度は補正後、2012年度は当初予算ベース。

Page 7: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の収入(歳入)

税収として,何が適切なのか??

(租税の種類) 1. 所得 2. 支出 3. 資産 ⇒ 高齢化を考えれば,支出.逆進性の問題

国名消費税率(%)

食料品の消費税率(%)

イギリス 17.5 0.0フランス 19.6 5.5イタリア 20.0 10.0ドイツ 17.0 6.0オランダ 19.0 6.0アイルランド 21.0 0.0ポルトガル 19.0 5.0スペイン 16.0 7.0スイス 7.6 2.4ノルウェー 24.0 12.0スウェーデン 25.0 12.0デンマーク 25.0 25.0オーストラリア 10.0 0.0メキシコ 15.0 0.0

日本 5.0 5.0

Page 8: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の支出(歳出)

国債費(借金返済)の増加...でも,国債の発行額より少ない! 高齢化により,社会保障支出は増加...でも,我々は現役世代の

収入の50%を確保できない!!

1975 1985 1990 1995 2000 2005 2009 2010 2011 2012

国債費 1.03 10.22 14.29 13.22 21.97 18.44 20.24 20.65 21.55 21.94 +7.66 ▲0.02地方交付税 4.40 9.69 15.28 13.21 14.93 16.08 16.57 17.48 16.78 16.59 +1.32 +1.66

一般歳出 15.84 32.59 36.67 44.55 48.09 47.28 51.73 53.45 54.08 51.80 +15.12 +3.70 社会保障 3.92 9.57 11.61 13.93 16.77 20.38 24.83 27.27 28.71 26.39 +14.78 +9.62 文教・科学振興 2.64 4.84 5.11 6.08 6.52 5.72 5.31 5.59 5.51 5.41 +0.29 ▲1.12 恩給 0.75 1.86 1.84 1.73 1.43 1.07 0.79 0.71 0.64 0.57 ▲1.27 ▲0.85 防衛 1.32 3.14 4.16 4.72 4.94 4.86 4.77 4.79 4.78 4.71 +0.55 ▲0.22 公共事業 2.90 6.37 6.21 9.24 9.43 7.53 7.07 5.77 4.97 4.57 ▲1.64 ▲4.86 経済協力 0.17 0.59 0.78 1.04 0.98 0.74 0.63 0.58 0.53 0.52 ▲0.26 ▲0.46 中小企業 0.12 0.22 0.19 0.19 0.19 0.17 0.19 0.19 0.20 0.18 ▲0.01 ▲0.01 エネルギー 0.00 0.62 0.55 0.68 0.64 0.50 0.86 0.84 0.86 0.82 +0.27 +0.19 食料安定供給 0.91 0.70 0.40 0.75 0.22 0.68 0.87 1.16 1.16 1.10 +0.71 +0.88 産業投資特会繰入 0.07 0.00 1.30 1.28 0.16 0.44 0.00 0.00 0.00 0.00 ▲1.30 ▲0.16 その他経費 2.70 4.32 4.16 4.56 5.96 5.22 5.06 5.20 5.57 6.26 +2.09 +0.29 公共事業予備費 0.00 0.00 0.00 0.00 0.50 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 +0.00 ▲0.50経済危機対応・地域活性化予備費 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 1.00 0.81 0.91 +0.91 +0.91

 予備費 0.30 0.35 0.35 0.35 0.35 0.35 0.35 0.35 0.35 0.35 +0.00 +0.00

合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35

1990年⇒2012年

2000年⇒2012年

(注)数値は当初予算ベース。

Page 9: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

国債について

(2種類の国債) 建設国債(四条国債):財政法第4条に基づくもの 特例国債(赤字国債):公共事業以外に充てる資金を調達すること

を目的.単年度立法で発行. 国債発行額

50

100

150

200

250

300

350

400

450

1964 1968 1972 1976 1980 1984 1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012(年度)

(発行額,兆円)

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

(名目GDP比)

建設国債

特例国債

GDP比

(注)2010,2011年度の名目GDPは,それぞれ,2.8%,0.1%成長としている.2010年度は補正後,2011年度は当初ベース.

Page 10: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の支出(歳出)

財政の硬直化

国債費の増大である.一般会計の25%程度を占める存在

財政再建は本当に できるのか??

国債費の推移

50

100

150

200

250

1964

1966

1968

1970

1972

1974

1976

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

2012(年度)

(1000億円)

0

5

10

15

20

25

30

国債費

国債費負担率

(注)2010,2011年度の名目GDPは,それぞれ,2.8%,0.1%成長としている.2010年度は補正後,2011年度は当初ベース.

Page 11: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府債務残高 (借金の残高)

日本における戦後の財政悪化は1965年の赤字国債の発行に始まり,2度のオイルショックへの対応から急激に財政は悪化

バブル崩壊後の経済活動を下支えする財政拡張から,財政は急激に悪化した.特に,90年代後半には,債務残高は大幅に増加した.長期債務残高の6割近くが90年代の10年間で急増した

国及び地方の長期債務残高

1990年度末 1995年度末 2000年度末 2005年度末 2010年度末<補正後>

国 200.3 297.0 490.7 590.5 701.8普通国債残高 166.3 225.2 367.6 526.9 643.0

うち、建設国債 101.8 157.7 209.1 247.0 252.0うち、特例国債 64.5 61.3 135.1 253.1 366.0

地方 67.0 124.8 181.4 201.4 199.7

国と地方の重複分 1.5 11.7 26.3 33.6 33.6

国・地方計 265.8 410.1 645.9 758.3 867.95年間の増加額 144.2 235.8 112.4 109.6

(注)①国・地方計では、地方の「交付税特会借入金残高」が国の特別会計の借入金残高と重複している ため、「国と地方の重複分」として控除している②国の特例国債残高には98年度以降、減税特例国債、日本国有鉄道生産事業団及び国有林野事業における継承債務借換国債を含む③2003年度の残高が減少したのは郵政事業特別会計及び郵便貯金特別会計の借入金残高(約50兆円)が控除されているため(出所)財務省及び総務省ホームページ

単位:兆円一般政府債務残高(国際比較)

30.0

50.0

70.0

90.0

110.0

130.0

150.0

170.0

190.0

210.0

230.0

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

(名目GDP比)

カナダ ドイツ

イタリア 日本

イギリス アメリカ

ユーロエリア

(注)2009年以降は推計値(出所)OECD"Economic Outlook 88 database"より作成

OECD Reportで「未知の領域」と評価!?

Page 12: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

財政赤字はどうして巨大化したのか

1. なぜ,日本の財政はこのようになってしまったのか・・・ 2. 何も対応策をしてこなかったのか 3. 日本の財政は破綻するのか 4. 財政赤字は将来に禍根を残すのか

Page 13: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の行動原理 以下の文章は,平成8年(1996年)に「財政を家計に例えた」場合として 財務省の担当者によって書かれたものです. 何か,おかしなことに気づきますか??

Page 14: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

しかし,平成9年度(1997年度)の文章は大きく変化!

財政健全化を目標として「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(財政構造改革法)を1997年11月に制定

財政の健全化が大きなテーマに

Page 15: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

政府の予算制約 国債 ,政府支出 ,税収 ,国債の利払い とすると, 政府の予算制約式は,以下のように表現できる

簡単に言えば,政府の予算制約の基本コンセプトは,,, 政府の収入=政府の支出 ← 当たり前でしょ. これを書き直すと, 国債発行増加額+税収=政府支出+国債の利払い これを書き直すと 借金+収入=支出+借金返済

B G T rB

tttttt BrGTBB +=+−+1

わかりますか??

Page 16: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

予算制約式を判断する指標: プライマリーバランス,財政収支

プライマリーバランスと:歳出から税収を控除したもの 財政収支:歳出と公債の利払い費から税収を控除したもの

ttttttt BrBBTGPD −−=−= +1

ttttttt BBTBrGFD −=−+= +1

財政収支とプライマリーバランス

-8

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

財政収支

プライマリーバランス

(注)2009年以降は推計値(出所)OECD"Economic Outlook 88 database"より作成

Page 17: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

プライマリーバランスと財政収支の関係

プライマリー・バランスの均衡=毎年の政策的な経費が税収などの毎年の収入で賄われている

⇒この場合,この年の債務の増加は利払い分だけ 利子率と経済成長率が同じであれば公債の対 GDP比は一定となる. ⇒つまり,借金は増加せず財政は破綻しない. (ドーマーの条件) プライマリー・バランスと財政収支は国債の利払い費

だけの差が生じる. ⇒たとえ,プライマリー・バランスが均衡であっても,過

去の国債によって財政収支がゼロとなることはない.

Page 18: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

リカードの中立命題

増税⇒現在の所得が減少するため現在の消費は減少

国債発行⇒課税の将来への繰延べにすぎない.今から,そのための貯蓄を増加,消費は減少

(命題)

財政赤字のファイナンスで,国債発行と増税は消費に,異なった効果となるか

財源調達方法(租税・国債発行)に依存しない

(現時点で増税が実施された場合) (現時点で国債を発行した場合)

現時点 将来 現時点 将来

政府歳入 増加 一定 政府歳入 増加 一定

租税 増税 一定 租税 一定 増税

可処分所得 減少 一定 可処分所得 一定 減少

消費 減少 一定 消費 減少 一定

貯蓄 減少 一定 貯蓄 増加 一定

政府部門

民間部門

Page 19: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

バロー=リカードの中立命題 でも,,「減税を受けた人が死んでから国債が償還される場合は今いったことは成

り立たないんじゃないの?」

親子間で相続される

自らの生存期間には国債償還のための増税が行われないとしても,自分の子どもや子孫の代で行われるとすれば,その子孫の利益を守るため,現在の消費を抑え,子孫のために貯蓄を遺産として残そうとすると考えるのである

Page 20: unit 4 中央政府の財政政策...合計 21.28 52.50 66.24 70.99 84.99 82.18 88.55 92.30 92.41 90.33 +24.10 +5.35 1990年 ⇒2012年 2000年 ⇒2012年 (注)数値は当初予算ベース。国債について

次回の講義予定

次回は, unit 5 中央銀行の貨幣供給 1. 貨幣の存在理由 2. 中央銀行の役割 ⇒ 日本銀行は何をしているのか?? 3. お金の増え方(信用創造) を検討します.