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FUJITSU. 63, 1, p. 51-57 01, 201251 あらまし 仮想生産ラインシミュレータ「GP4 Global Protocol for …)」は,3Dデータを活用した 仮想生産ラインにより,生産準備業務を支援するツールである。近年,国内各種製造業 においては,グローバル市場における事業戦略の再構築を進めている。先進国市場の成 熟化と新興国市場の拡大や,韓国・中国に代表されるアジア諸国におけるものづくり競 争力向上など,ここ数年で国内の製造業を取り巻く環境変化は激しく,厳しい状態にある。 特に製造業の大きな変化の要因の一つは,市場のグローバル化に伴い生産拠点の現地化 が急速に進んだことである。さらに,円高や震災が拍車を掛け,製造業は生産拠点の海 外シフトを加速せざるを得ない状況に追い込まれている。急速な現地化により,現地対 応メンバの経験不足による量産立上げ遅れや生産準備コスト増が課題となっている。こ の大きな変化と課題は,設計業務と量産業務をつなぐ生産準備業務に集中しており,こ の領域の改革が急務とされている。 本稿では,グローバル生産におけるものづくりの課題からGP4を活用した現物なしで の最適生産ラインの検討方法とその効果について述べる。 Abstract GP4 (Global Protocol for . . .) is a tool which helps companies prepare for production by showing them a virtual manufacturing line that utilizes 3D data. Recently in various manufacturing industries in Japan, companies have been rebuilding their business strategies in a global market. Developed markets are maturing, emerging markets are expanding and there is increased competitiveness in manufacturing in Asian countries like South Korea and China. Therefore, in recent years, there have been rapid changes in the business environment surrounding the domestic manufacturing industry, and the situation is adverse. One of the major drivers of change in the manufacturing industry is the rapid localization of production bases with the globalization of markets. Furthermore, the strong yen and the Great East Japan Earthquake have added fuel to the fire, and the manufacturing industry has been forced to shift its production bases overseas at a faster pace. This rapid localization is leading to local personnel who have insufficient experience, and this in turn is causing delays in the start of mass production and higher costs in preparing for production. This major change and issues are concentrating on production preparation work that links design work and mass production. There is a pressing need for reform in this area. This paper describes the method of investigating the optimum production line without actual products, by utilizing GP4, because of the issues with global manufacturing, and the effects of GP4. 田中淳介   尾上 隆   上田 徹 仮想生産ラインシミュレータ: GP4 Virtual Manufacturing Line Simulator: GP4

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Page 1: Virtual Manufacturing Line Simulator: GP4...Virtual Manufacturing Line Simulator: GP4 52 FUJITSU. 63, 1( 01, 2012) 仮想生産ラインシミュレータ:GP4 ま え が き

FUJITSU. 63, 1, p. 51-57 (01, 2012) 51

あ ら ま し

仮想生産ラインシミュレータ「GP4(Global Protocol for …)」は,3Dデータを活用した仮想生産ラインにより,生産準備業務を支援するツールである。近年,国内各種製造業

においては,グローバル市場における事業戦略の再構築を進めている。先進国市場の成

熟化と新興国市場の拡大や,韓国・中国に代表されるアジア諸国におけるものづくり競

争力向上など,ここ数年で国内の製造業を取り巻く環境変化は激しく,厳しい状態にある。

特に製造業の大きな変化の要因の一つは,市場のグローバル化に伴い生産拠点の現地化

が急速に進んだことである。さらに,円高や震災が拍車を掛け,製造業は生産拠点の海

外シフトを加速せざるを得ない状況に追い込まれている。急速な現地化により,現地対

応メンバの経験不足による量産立上げ遅れや生産準備コスト増が課題となっている。こ

の大きな変化と課題は,設計業務と量産業務をつなぐ生産準備業務に集中しており,こ

の領域の改革が急務とされている。

本稿では,グローバル生産におけるものづくりの課題からGP4を活用した現物なしでの最適生産ラインの検討方法とその効果について述べる。

Abstract

GP4 (Global Protocol for . . .) is a tool which helps companies prepare for production by showing them a virtual manufacturing line that utilizes 3D data. Recently in various manufacturing industries in Japan, companies have been rebuilding their business strategies in a global market. Developed markets are maturing, emerging markets are expanding and there is increased competitiveness in manufacturing in Asian countries like South Korea and China. Therefore, in recent years, there have been rapid changes in the business environment surrounding the domestic manufacturing industry, and the situation is adverse. One of the major drivers of change in the manufacturing industry is the rapid localization of production bases with the globalization of markets. Furthermore, the strong yen and the Great East Japan Earthquake have added fuel to the fire, and the manufacturing industry has been forced to shift its production bases overseas at a faster pace. This rapid localization is leading to local personnel who have insufficient experience, and this in turn is causing delays in the start of mass production and higher costs in preparing for production. This major change and issues are concentrating on production preparation work that links design work and mass production. There is a pressing need for reform in this area. This paper describes the method of investigating the optimum production line without actual products, by utilizing GP4, because of the issues with global manufacturing, and the effects of GP4.

● 田中淳介   ● 尾上 隆   ● 上田 徹

仮想生産ラインシミュレータ:GP4

Virtual Manufacturing Line Simulator: GP4

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

ま え が き

製造業はグローバル市場における事業戦略の再構築を進めている。先進国市場の成熟化と新興国市場の拡大や,韓国・中国に代表されるアジア諸国におけるものづくり競争力向上など,ここ数年で日本の製造業を取り巻く環境変化は激しく,厳しい状態にある。特に製造業の大きな変化は市場のグローバル化に伴い生産拠点の現地化が急速に進んだことにより,現地対応メンバの経験不足による量産立上げ遅れや生産準備コスト増が課題となっている。この大きな変化と課題は設計業務と量産業務をつなぐ,生産準備業務に集中しており,この領域の改革が急務とされている。(1)

本稿では,グローバル生産(2)におけるものづくりの課題から仮想生産ラインシミュレータ「GP4(Global Protocol for …)」を活用した次世代ものづくり手法とその施策について紹介する。

グローバル生産におけるものづくりの課題

● 日本の製造業の課題生産拠点の海外シフトの加速に伴い,日本のものづくりの空洞化が大きな課題となっている。例えば,海外に生産拠点を持っている場合,従来のものづくりは,国内で設計・試作・量産試作(以下,量試)を行い,海外で量産していた。量試を国内で行う意義は様々な改善点を事前に把握し,それを設計や生産設計にフィードバックして量産の早期化や生産準備コストの削減を行うとともに,ここで出てくる改善点やアイデアをノウハウとして蓄積できるところにある。しかし現在,主力製品市場の海外化に伴う現地生産,現地部品調達との関係などもあって,量試は海外の生産拠点で行われるケースが増加している。海外で量試が行われることで,意図しないものづくりノウハウの海外への移行,国内の生産設計スキルの陳腐化,生産現場を意識しない設計が招く非効率性など,新たな課題も生じている。グローバルなものづくりの拡大により,日本のものづくりの強力なアドバンテージの一つだった,現場改善に代表される生産技術力の低下を危惧するメーカも増えている。また,国内生産を主とする工場では,労働力の安い海外製品に勝つために

ま え が き

グローバル生産におけるものづくりの課題

更なる生産効率の向上,改善プラスαによる競争力の強化が必要とされている。● 生産準備領域のICT活用における課題製造業では,ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)などのリソース管理,サプライマネジメントはICTを活用した業務運用がなされている。一方,エンジニアリング領域におけるICT活用状況は異なる。業務は設計から生産準備業務を経て,量産に移る。既にPDM(Product Data Management)などの上流系エンジニアリングシステムは大手製造業での導入が進んでいるが,生産準備領域になるとほとんどICT化が進んでいないのが現状であり,人間系(人手により)でその業務が進められている(図-1)。過去に生産準備領域のICT化ツールとして欧米系

PLM(Product Life cycle Management)ベンダが開発する製品に注目が集まったが,以下の課題により使われていない,もしくは導入を断念したという声を数多く聞いている。(1) 操作性の課題欧米系ソフトウェアは一般的に利用想定者が専任オペレータである。シミュレータとして高精度の結果を必要とするために,コマンド数や入力パラメータが多く,入力だけで数か月かかる場合がある。日本の場合,生産準備に直接携わる製造技術や製造の方がソフトウェアを操作する傾向が強く,日頃からPLM系ソフトを操作していない方からすると操作が煩雑に感じる。また,メニューやマニュアルが英語というところも壁を高くしている。(2) 主力機能の課題欧米系ソフトウェアは以前よりグローバル競争の激しい航空機や自動車ボディメーカをターゲットとした業種向けに開発された製品である。そのため,主力機能がロボットのオフラインティーチング検証など機械系生産に特化した機能を保有している。現在,グローバル競争が激化している業種は自動車部品,電機・精密機器メーカであり,主な生産方法はセル生産やショップ型生産など人間系の生産である。欧米系ソフトウェアに該当機能はあるものの入力の手間がかかり,自動車部品,電機・精密機器では量産までに検討を終えることが難しい。

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

複数の生産ラインの案から最適ラインを決定する(図-2)。詳細な評価手法は以下のとおりである。

(1) 生産能力計画している人員,設備で1日に必要な生産台数を達成できるか事前にシミュレーションを行う。生産能力が生産台数を上回ると在庫の無駄を生み,下回ると販売の機会損失となる。

GP4を活用した次世代ものづくり手法

GP4は既存で保有している製品3Dデータ,工場レイアウト,組立順序を入力情報として,仮想空間上に生産ラインを構築して,ライン作業者の動きやモノの流れを半自動で生成することが可能である。生産能力をはじめ,作業性,レイアウト特性,物流特性,生産コストなどを定量的に測定し,

GP4を活用した次世代ものづくり手法

技術開発 PDM

BOM

ERP

SCM

MES

制御

エンタープライズ エンジニアリング 業務ツール

3D-CAD

DMU

Excel

Word

Excel

Word

Excel

Word

生準領域はICT未開地

人間系で(人手による)業務推進

開発・設計

生産準備

製造準備

量産

PLM軸

BOM :Bill Of MaterialsDMU :Digital Mock-UpMES :Manufacturing Execution System

図-1 ものづくりにおけるICT

図-2 GP4の基本的な仕組み

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

(2) 作業性人による組立作業の容易さを判断する。基準は手の届く範囲で部品を取れるか,またはその範囲内で組立作業が可能かである。無理な姿勢で手を伸ばす,もしくはしゃがんだ姿勢での部品の取付け作業は時間経過を追うごとに作業者への負担となり,作業ミスへとつながる。結果,不良品を作る危険性が高くなる。(3) レイアウト特性必要な設備,部品棚が現地で問題なく配置できるか事前に確認する。また,現地スタッフの平均身長を確認し,作業台の高さを事前に把握する。いずれも量産開始後の修正を行わないためである。(4) 物流特性工程間のモノの流れとともに,モノが滞留するバッファを確認することができる。特に複数の機種が同じラインに流れる混流ラインでの各工程の稼働率や手待ち状態を事前に評価可能である。(5) 生産コスト今回の生産ラインに必要な人員の人件費,設備などの生産コストを算出する。製品によっては生産数を確保するため生産コスト増が許可される場合と,そうでない場合がある。従来の生産ラインの計画方法はリスクを恐れ,過去製品の生産ラインのコピーにとどまっていた。その結果,改善により部分的な生産性向上は実現できたが,大幅な生産性向上は実現できないため,

グローバル競争化においては,この手法では手遅れである。

GP4は上記の特徴を持つが,現場改善の置換えとは異なる。改善により日本の製造業は力をつけ,世界に誇れる高品質製品を生み出してきた。この手法は根源的,かつ合理的で今後もこの考え方に敬意を持って最大限に生かしていく必要がある。GP4は現場改善を行う前の工程,つまり工程計画時に適用するものであり,改善の置換えではない。GP4の効果的な使い方は現場改善との適用場面を棲み分けすることである(図-3)。

グローバル生産におけるものづくり施策

● GP4を活用したものづくりノウハウ空洞化対策ものづくり空洞化の主たる原因は海外現地で行われた量試時での工程ノウハウを日本にフィードバックする仕組みがないことが考えられる。生産準備業務は生産現場の経験的ノウハウをベースに運用されているために,それらを論理的,かつ標準的なモデルにしづらい面があり,フィードバックが難しいのも事実である。生産準備を日本に戻すわけにもいかず,全く別の側面から対策を検討する必要がある。本対策としては,生産準備業務時にGP4を活用して仮想空間上で日本側で実施し,工程ノウハウの流出を避けることである。工程ノウハウは量試時のタッチ&トライで生まれるケースがほとんど

グローバル生産におけるものづくり施策

図-3 現場改善とGP4適用場面の棲み分け

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

450種類提供している。今すぐにでもGP4を使った工程計画が可能であり,実際の導入ユーザもそのほとんどが製造技術,製造関係者である。(2) 人間系の生産に特化した機能を保有ロボット・自動機系など機械系生産は,欧米系ベンダを中心に既存製品が存在している。しかし,人手による組立,人がかかわる機械工程や検査,部品ピッキングは弱いもしくは入力に手間がかかる。GP4は既存技術が困難な人がかかわる作業を得意としており,歩行作業の自動生成など半自動化機能を組み込むことでシステムへの入力時間を最小限にしている。また,一般的に現場改善で使う標準作業組合せ票やマンマシンチャートなどの出力機能も有することで従来の業務を大幅に変化させることなく,徐々に生産準備業務のICT化を進めることも可能である。

GP4適用効果

GP4の適用効果は生産性向上以外に,大別すると以下の三つがある。(1) 生産準備期間を短縮(機会損失を圧縮)生産行動の見える化により,部門間の相互理解が高まり,生産準備期間を1/2以下に短縮できる。(2) 問題点を前倒しした量産開始(変動費を圧縮)が可能高い生産能力で量産を開始できる。

GP4適用効果

であり,現状ではこの業務が現地化している。日本側においてこのタッチ&トライをGP4で実施し,工程ノウハウを蓄積した上で海外生産拠点への展開を図る。海外生産拠点での量試はこれまでの問題を潰しこむ(工程ノウハウ蓄積)フェーズから確認レベルへと変化する。また,GP4上に蓄積された工程ノウハウを設計にフィードバックすることは,新たなエンジニアリングマネジメントとなり,ものづくりの高品質レベルの維持につながると考える(図-4)。● 日本型ものづくりに準じたGP4による生産準

備のICT化施策GP4は単なるシミュレータではない。これまで日本のものづくりが得意とする摺

り合わせ技術を支援し,生産を高度化できる工程計画ツールである。その観点から以下の二つの特徴を持つ。(1) CAD未経験者でも使える簡単な操作

GP4は,工程ノウハウを持っている利用者が自ら計画・検証し,結果を見て変更するPDCAを回すことを前提と考えている。そのため,利用者は製造技術など日ごろ3D-CADを触ったことのない担当者である。操作アイコンを作業内容とイメージできるものや3D-CADがなくても製品簡易形状が作成可能な機能を持っている。また,工場設備は3Dモデル化されていないことが多く,寸法変更可能な部品棚や工具などは標準でライブラリを約

図-4 グローバル生産におけるものづくりの課題と施策

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

づくりは海外で進めるためにはクラウド活用が重要である。富士通研究所で開発されたクラウド上で動作する3D-CADデータを高速に圧縮し,クライアントPCに表示する高速表示技術「RVEC(レベック:Remote Virtual Environment Computing)」,およびそのサービスであるエンジニアリングクラウドとGP4の組合せによりグローバル生産基盤構築が可能である。例えば,セキュアな環境で日本でグローバル仮想マザーラインを構築する場合,以下のような方法が考えられる(図-5)。(1) 日本でGP4を活用し,仮想マザーラインを構築する。

(2) 海外工場はクラウド環境を通じてGP4のデータを確認する。

(3) 海外のローカライズ情報はクラウドを通じてその都度変更されるが,その情報は日本側で蓄積される。

(4) 各海外拠点で蓄積された情報は必要に応じて,新たな標準化DBとなり,次の生産で生かされる。

● 真のグローバル生産基盤構築に向けてGP4により,「生産海外移転=ものづくりノウハウ空洞化」の構図はなくなり,地震などの自然災害や急激なビジネス環境の変化に機敏かつ柔軟に対応できるグローバル生産基盤構築が可能である。また,「真のグローバル生産基盤構築」に向けて,PDM連携などPLM軸との更なる強化,生産管理連携などSCM軸との更なる強化などのソリューション展開を進めている。

(3) 量試,DR(Design Review)数削減で手戻りコスト削減(固定費を圧縮)手戻り削減で設備試作,設備変更コストを1/3以下に削減できる。以下に,GP4の導入ユーザから導入効果の声を頂いているので紹介する。(1) 自動車メーカ新製品投入での生産準備手戻り削減,新ラインのコンセプトデザインが実現できた。(2) 自動車部品メーカ新製品投入の生産準備工数を半減,間接コストを1/3に削減できた。(3) 大手家電メーカ量産開始を2か月早期化でき,またライン計画工数を半減できた。(4) 大手プリンタメーカ海外工場の生産ラインを仮想化し,現地法人との密連携を実現できた。(5) 重電設備メーカセル生産での生産性が40%向上するとともに,

生産現場の自立化,活性化を実現できた。(6) プラント設備メーカレイアウト計画と生産計画を連動させ,工場の稼働率とスループットを向上した。

グローバル生産基盤構築と今後の展開

● GP4とクラウド活用によるグローバル生産基盤構築(3)

ものづくりのノウハウは国内に残し,実際のもの

グローバル生産基盤構築と今後の展開

(1)(2) (2)

(3)(3)

図-5 クラウド活用によるグローバル仮想マザーライン

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仮想生産ラインシミュレータ:GP4

更に成長させ,欧米系のPLMベンダにはまねのできない,日本のものづくりの強みを生かす「日本発のものづくりICT」を今後も提供していく所存である。

参 考 文 献

(1) 中村昌弘:生産エンジニアリングの「革新力」.JIPMソリューション,2010.

(2) 中村昌弘ほか:グローバル生産の究極形.日経BP社,2011.

(3) 富士通:エンジニアリングクラウド. http://jp.fujitsu.com/solutions/plm/e-cloud/(4) 経済産業省:2010年版ものづくり白書. http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2010/

む  す  び

本稿では,グローバル生産におけるものづくりの課題からGP4を活用した現物なしでの最適生産ラインの検討方法とその効果について紹介した。

2010年版ものづくり白書(4)によると,日本の現地法人数はこの7年間で1800社増,中国に至っては2倍であり,海外生産比率も全体の33%超えの右肩上がりである。また,震災や円高が更に拍車を掛け,生産のグローバル化は過去に類を見ないほど進んでいる。この事実から生産準備業務のICT化施策は今後の製造業の重要戦略であることは間違いない。富士通としては,情報・通信機器など製造業という側面から日本型ものづくりを自ら実践してきている。こうした経験ノウハウを生かし,GP4を

む  す  び

田中淳介(たなか あつゆき)

民需ビジネス推進本部PLMビジネスセンター 所属現在,PLM新規ビジネス事業に従事。

尾上 隆(おがみ たかし)

民需ビジネス推進本部PLMビジネスセンター 所属現在,GP4拡販に従事。

上田 徹(うえだ とおる)

民需ビジネス推進本部PLMビジネスセンター 所属現在,GP4拡販に従事。

著 者 紹 介