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人間本位の産業を目指して
2018 Copyright Robot Revolution Initiative, All Rights Reserved.
WG1/SWG4「我が国製造業の強みの維持・強化」
2017年度活動報告書フューチャー株式会社
Strategy Innovation Group
杉江周平
人間本位の産業を目指して
2018 Copyright Robot Revolution Initiative, All Rights Reserved.
メンバー
(会社名) (名前)
ダイキン工業株式会社 伊藤 宏幸
日本電気株式会社 関 行秀
株式会社 野村総合研究所 藤野 直明
富士通株式会社 藤井 敏彦
インテル株式会社 下堀 昌広
国際経済研究所 依田 光広
スズキ株式会社 水谷 圭介(~2018年4月)
堂本 雅美(2018年4月~)
ウイングアーク1st株式会社 大川 真史
株式会社三菱総合研究所 首藤 俊夫
フューチャー株式会社 中元 淳
木﨑 重雄
杉江 周平
ロボット革命イニシアチブ 水上 潔
万仲 豊
人間本位の産業を目指して
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目的
検討の背景
◆ IoT・AI等のデジタル技術を新たな競争力の源泉としていくためには、現在の強みを生かした製品・システム設計にする必要がある。また、技術は弱みの克服にも活用できる。
◆ そのためには、日本の強み/弱みについて把握する必要があり、2016年度に、その整理と、強みを生かした戦略の方向性、ユースケースについて検討を行った。
◆戦略実現に向けては、課題の深堀と解決策の検討が必要な状況。
2017年度の目的
強みを生かした戦略実現に向けた課題の洗い出し
最重要課題(人材に関する課題)の深堀り
課題解決方策の検討と、解決に向けて実施すべき内容の洗い出し
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課題認識①:ものづくりの環境変化
従来
Product(製品)
顧客に買ってもらう(壊れたら修理・買い換え)
今後
顧客に使い続けてもらう(壊れないために予防する・製品もアップデートされる)
1⚫ 製品性能・品質、販売価格 ⚫ 運用・利用性能・品質、LCC(ライフサ
イクルコスト)
Value(価値)
2⚫ ハードウェアを中心としたQCD ⚫ 最適な使い方を実現するソフト、アプリ、
サービス
Business(ビジネスモデル)
3⚫ ハードウェアを売る(売り切り) ⚫ ソフト、アプリ等が付加価値の重要性を
増す⚫ ハードウェアではコスト低減が重要
Resource(リソース)
4⚫ 製品技術に強い人材 ⚫ 顧客の使い方がわかる人材
⚫ 顧客に最適な使い方を提言できる人材
Industry(製造業の産業構造)
5⚫ 「ものづくり」中心の文化⚫ クローズドなバリューチェーン
⚫ シリコンバレーに代表されるITの文化⚫ オープンなバリューチェーン
ものづくりを取巻く事業環境が大きく変化する中で、日本企業はどう変わるべきなのか変わるためには何が不足しており、どうすれば獲得できるのか
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課題認識②:日本のものづくりの特徴
ものづくり至上主義成功体験
まじめ・器用さ律義さ
国民の均質性・画一的教育平等主義
職人気質、従業員の
気づく能力の高さ
高い生産性 製造品質の高さ
デジタル化・サービス化への対応の遅れ
現場の改善能力/
従業員の仕事への真摯さ
ロボット・自動化への
積極投資
サプライヤー企業の
品質の高さ
品質に厳しい消費者
最先端のIT
を理解している人材
が不足(経営含む)
IT
関連業務、サービス関連業務
の子会社化
部品・部材産業の高い市場シェア、総合力
あらゆる製造業が
国内に存在
低い離職率(低い流動性)
終身雇用
強固な系列、サプライチェー
ン(阿吽の呼吸での取引)
日本ブランドの信頼性の高さ
スペックを形に落とし込む
能力が高い
(機能を作りこんでしまい)
価値の設計が不得意
調整型の経営者が多い
プロの経営者が少ない
三方よしの精神
慎重な経営
日本のものづくりのこれまでの強みが、デジタル化・サービス化への足枷となっていないか特徴を事業環境変化に合わせて深化させるには、どうしたらいいか
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課題認識③:課題の全体像
日本のものづくり産業における最大の強みである人材に関する課題を解決すべきこれからの時代に合わせた人材戦略が不可欠
必要な人材の明確化 人材の量的確保 人材の質的確保
現場力の維持・向上(人手不足対応、レジリエンス対応)
付加価値の創出・最大化(サービス・ソリューション展開、デザイン思考・システム思考、アジャイルな経営、プラットフォーム・エコシステム構築、オープンイノベーション、M&A等)
国としてのビジョン、産業政策の明確化(Connected Industriesの具体化)
競争力強化に向けた各種環境整備(6重苦の継続的解決)
本年度の主たる
検討対象人材
企業
国・政府
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2017年度のスケジュール・取組み内容
日時 検討内容
第1回検討会2018年1月30日
✓ 2017年度の検討の進め方
第2回検討会 2月22日✓ 人材に関する問題意識の共有✓ 日本のものづくり産業がとるべき戦略の再検討
第3回検討会 3月27日✓ 人材に関する課題についての解決策検討
第4回検討会 5月7日 ✓ 2017年度の報告書案について
◼ 年明けからの4か月間で、月1回程度の会合を実施し、検討を進めた◼ 検討会の合間は、個人ワークにより問題意識の先鋭化を行った
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2017年度取組結果①:戦略の方向性
顧客理解、現場の技術活用・運用力、トップと現場・ホワイトカラーとブルーカラーのハイブリット 等の強みを生かす
製造業と顧客・社会とのつながる化
製造・開発プロセスにおける
つながる化
顧客にとって、唯一無二・必要不可欠な製品・サービスを提供し、改善し続けることで高利益率
を実現
IoT等のデジタル技術で強化された人材・組織が、得意領域に集中し、
製品・サービスと提供プロセスをトータルにマネジメント
アメリカ企業が得意な戦略
ドイツ企業が得意な戦略
旧来型企業
顧客ニーズ変化、社会課題変化に対し新製品・サービスで
差異化された価値提供
製品・サービス提供プロセスを標準化・共通化し、素早く、
低コスト・高品質を実現
日本企業がとるべき戦略
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(参考)製造業におけるIoT活用方策
2つの“つながる”化
つながる化の内容 つながる化の意義 つながる化への対応の方向性
顧客・社会とつながる
【代表的事例】テスラ(米)ネスト・ラボ(米)小松製作所(日)
デマンドチェーンにおけるサービス革新商品がネットワーク化され、常に商品を通じて利用者とつながる
• 的確なタイミングで最適な需要対応
⇒在庫切れ予防、商品利用サポートなどの利便性向上
➢ 売切りから、サービス化へのビジネスモデル変革への意思決定
➢ 商品機能のソフトウェア化、ネットワーク化
バリューチェーンにおけるマーケティング革新多様な個人・企業とつながる
• リアルタイム・ビッグデータ解析により、顧客ニーズ発掘による新しい価値創造
⇒個別ニーズに対応したカスタマイズ商品・サービス
オペレーションプロセスがつながる
【代表的事例】シーメンス(独)アディダス(独)ヒルトップ(日)
サプライチェーンにおける生産性革新調達~生産~販売・出荷の各工程が企業内外でつながる
• 企業内の各工程がデジタル化つながる化
• 工程間・企業間のつながる化により、サプライチェーン全体が最適化
⇒画期的QCD改善
➢ 各工程からのデータ取得➢ 人的ノウハウの見える化➢ 標準プロセスによる工程
間・企業間連携➢ オペレーションプロセスのシ
ミュレーション環境の構築
【人材・組織の強化】➢ ソフトウエア人材の育成
と登用➢ データ活用力の強化➢ 現場(開発、営業、
保守)における人材融合
出所)三菱総合研究所「Monthly Report」2017年3月を改編
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結果②:戦略実現に必要な人材像
日本の強みである人間力を進化させ、複数領域でπ型※人間を育成することが必要(※ パイ型人材:技術とビジネス等、複数の異なる能力を一定以上のレベルで有する人材。複数の技術分野取得という意味合いではない。)
生産性の向上(≒利益率)
事業化能力(≒売上高)
ビジネスデザイン力
顧客理解力
技術理解力
戦略構築力
発想力
サービス実装力
モデリング力
先端技術実装(AI、3Dプリンティング 等)
プログラミング力
システム思考力
分析力管理・評価力
原理化・体系化能力(原理適応力)
人間力
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結果③:人材育成イメージ
気質
コンピテンシー
スキル
義務教育・高校 大学・高専 社会人
(若手) (再教育)
発想力
技術理解力
サービス(オーケストレーション)デザイン
システム開発の全ての相互関係理解・管理力
プログラミング力 サービス実装力(AI等)
オペレーションマネジメント、管理会計、品質管理
チーム力・持久力
モデリング力
人材育成は、戦略的に長期的視野を持って行うことが必要キャリアオーナーシップを持ち、自ら選択し、学ぶ力を充実すべき
人間力学習力
顧客理解力戦略構築力
分析力原理化・体系化能力(原理適応力)
ビジネスデザイン力
サービス実装力
システム思考力
人間力
【凡例】
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(参考)個人能力についての考え方
◼ Institution for a Global Society (IGS)は、東京大学中原研究室と共同で、以下の枠組みを提案(能力把握の手法論も保有)
出所)「クリエイティブ人材評価・育成で 企業のイノベーションと利益向上へ ~分析結果途中報告~」 IGS、2017
スキル・コンピテンシー・気質の関係性
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結果④:育成に当たっての課題・解決策
育成に当たって、日本の製造業においては受入側の企業における課題が大きい何よりも企業トップの意識改革が最優先
学習・キャリアに関するオーナーシップ意識の欠如
成長意欲の相対的低下(新興諸国と比較して)
KPIに縛られ、中長期の人材育成ができない(人材育成に投資しない)
専門人材を受け入れられる人事評価制度になっていない
エンジニア(特にソフトウェアエンジニア)の地位が低い
教育・育成側の人材不足 社会全体としての異文化・異な
る人材への受容性不足
個人
企業
国・社会
➢ 初等・中等教育での意識改革(学ぶ意味・価値を学ぶ)
➢ 企業教育におけるプッシュ型のリカレント教育
➢ 経営トップの意識改革✓ 成功事例の共有✓ 危機的状況の認識(優秀な若者に
いかに選ばれなくなっているか)
➢ 生産性向上に向けた更なる国策
➢ 流動性向上に向けたあらゆる障壁の撤廃
➢ 大学改革➢ 理系教育の充実
課題 解決策案
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(参考)先進事例:ダイキン工業(1/2)
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(参考)先進事例:ダイキン工業(2/2)
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今後について(2018年度以降)
① 企業が抱える課題(特に人材関連)についての優先順位把握
⚫ 今年度の検討で、課題の網羅的な抽出はできたが、解決施策を検討するにあたっては、その優先順位付けが不可欠
⚫ RRIの参加企業に対してアンケート調査を行い、政策検討(優先順位付け)の基礎資料とする
② 変化への対応を適切に行っている国・企業の実態把握
⚫ ドイツのIndustrie4.0動向については、RRIの中で一定のレビューを行っているが、他国や個別企業の情報については不足している状況
⚫ 特に人材育成については、初等中等教育や文化的背景を含めた調査が必要であり、一定の労力を割く価値があると考えられる
⚫ システム思考、デザイン思考教育の実態について把握のための調査を実施したい
◼ 2017年度は有志によるディスカッションベースで検討を進めたが、政策や企業の意思決定・行動につなげるためには、ファクトの収集が必要
◼ 2018年度は、以下2つの調査の推進を提案する
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Appendix:SWG内の議論
【本報告資料以外にSWGの議論の中で得られた主な論点を以下に示す】
✓ 日本の工業会は製品に紐づいているため、マニュファクチャリングに関する議論をできる場が少ない。✓ 科学技術政策と産業政策の整合を図ることも考えていかないといけない。✓ 時価総額を高めて、M&Aを事業戦略の中核とする企業が成長している。当該戦略に対する日本企業のスタンスを明確にする必要がある。
• 核となるのはサービス。サービスは再生産が容易でスケールさせることができ、収益も安定する。事業ポートフォリオにサービスが加わることで、企業価値が高まり、M&A戦略を優位に進めることができるようになる。
✓ 日本の工場は、現場上がりの工場長が多く、トップダウンの考え・先進的な考えを持った人が来てもつぶされてしまう。日本の現場の団結力は予想以上に強い。
✓ 日本というマーケットは世界で最も進んでおり、このマーケットをうまく使えば大きな可能性がある。✓ ドイツではドルトムントの研究所でエンジニアリング教育を継続的に行っている。VDMAと大学、企業間での人材の流動性が高い点も、国
全体にエンジニアリングの考え方が普及することを後押ししている。✓ 流動性が増すことによって、個人の考え方は広がる。Waymoのトップは、学者からトヨタ、フォードと移り、現在Google傘下のWaymoの
トップになっている。多様な組織を渡ることで、飛躍的に個人が成長する。✓ グローバルに全方位で競争するのか、得意領域に絞り込むのか判断をするべき時期に来ている。システム思考が最もできるのは文化人類
学者だという話もあり、異分野から学ぶことも必要である。✓ 社会問題から入って考えることが必要だと思っている。そうでないとイノベーションは生じない。イノベーション創出には、アブダクション能力が必
要である。仮説設定能力とも言える。✓ イノベーションのためには、新技術の価値や多様性などを経営層が理解することが必要。現状はまだ高度経済成長期の成功体験を持った
経営者が多い。✓ 企業側が本気になれば、国はある程度動く。例えば、再生医療の世界では山中先生が信念をもって動くことで、日本の研究環境は世界
でもっと進んだものとなり、世界中から試験をしたい人たちが集まっている。✓ 多能工と単能工については、メリット/デメリットがある。多能工を増やした結果、本質的なものづくりができなくなって事例も数多くある。✓ システム思考をする際に意味・空間・時間を同時に俯瞰することが重要。それができてこそ、機能要件が明確になり、最適な技術をチョイス
することができる。✓ 日本メーカでもやっているところはあるので、ゼロ/イチというようなメッセージにはしない方が良い。✓ 海外のコンサルタントを見ると、普通にDouble Degreeを持っている。日本はその割合が少ない。✓ 欧州は働く時間が制限されていることと、就社ではなく、就職である点が日本と異なっている。状況が変わる中で、競争領域と協調領域も
絶えず動いている。限られた労力で成果を出すために、協調領域の範囲を決めている。