定性的セグメンテーションと定量的セグメンテーションをつなぐ...
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定性的セグメンテーションと定量的セグメンテーションをつなぐ 定性調査と社会知ネットワーク(ベイジアンネットワーク)の活用
2013年12月
顧客調査分析における課題
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顧客理解における課題
【課題1】顧客セグメンテーションを効果的に行いたい 多種多様な顧客ニーズを理解するための1つの方法として、弊社で研究を進めている社会知ネットワークの活用がある。
社会知ネットワークは、ヒトの価値観(以下、Societas)核にして、情緒ベネフィット、メディア、検索ワードなどの購買心理や行動特徴を推論をすることができるが、このネットワークを活用し、ターゲット顧客の特徴を正しく理解するためには、どのように顧客セグメンテーションをするかが非常に重要なポイントになる。
しかし、効果的なセグメンテーションを行うことはむずかしい問題で、年齢性別などのデモグラフィック属性だけの軸では不十分で、より顧客心理の本質に迫るセグメンテーションが重要になる。
これは社会知ネットワークの有効活用だけの問題ではなく、マーケティング全般に共通する重要な課題でもある。
【課題2】顧客調査分析を限られたコストの中で実施したい 顧客調査分析における現場の課題として
• 追加アンケート調査する予算も時間もない
• 今あるデータでできるだけ効果的な分析をしたい
というニーズは多い。
特にWebマーケティングにおいては低予算・短納期である場合が多いため、低コストかつスピーディな実施がより求められるため、これらのニーズは高い。
社会知ネットワークにつながる追加調査をすることが理想的な場合もあるが、現実的には今あるデータで何とかするという状況は少なくない。
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調査分析方法について
前頁の課題に対して、
「おもてなしWebコミュニケーションのためのSocietas活用」(弊社オープンラボ2013)にて、下記状況におけるアプローチ例をポスター発表した。
本発表でのアプローチとしてとった調査分析方法のポイントは
• 簡易定性調査と定量分析の活用
• ベイジアンネットワークによる推論
であるが、その詳細については説明しきれなかったため
A) なぜ定性調査も必要があるのか?
B) どのように定性と定量の分析結果を統合していくのか?
について、本資料にて説明していく。
【状況】
・目的:社会知ネットワークを活用し、20-30代向けファッションストアの 顧客セグメンテーションを実施し、各セグメントの特徴を明らかにする
・今あるデータ: 社会知ネットワークにあるファッションに関する23項目
【調査分析方法】
1.簡易インタビュー調査による顧客セグメンテーションの実施
2.定期価値観アンケート調査(2013/9)から20-30代女性のデータ1,950件の分析
①ファッションに関する質問23項目を活用し、pLSAにて潜在クラスを分析
②抽出した潜在クラスと元の23項目を学習データとして、ファッション価値観モデルをベイジアンネットワークで構築
③調査分析1の対象者の回答データ23項目を証拠としてファッション価値観モデルに与え、各ファッション価値観を推論、その結果より定量的セグメンテーションを実施
④Societas(価値観)をハブにして、定量的セグメンテーション別の特徴(情緒ベネフィット、反応メディア、Web検索ワード)を推論
【調査分析方法のポイント】
A)なぜ簡易定性調査もする必要があるのか?
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なぜ簡易定性調査もする必要があるのか?
定量分析の結果をレポートした際に、
「使えない」と評価されてしまうことがあると思うが
この「使えない」という評価を、どういうことか考えると
分析結果を具体的なアクションに落とし込めない、施策実施につながらないということと
考えられる。
そして、落とし込めない、つながらないというのは、
さらに2つのどちらかの問題があると考えることができる。
定量分析結果が十分ではなく、解釈できない/イメージが膨らまない。
定量分析結果が事実と乖離しており、机上の空論となってしまっている。
たとえば、定量データのクラスター分析結果も、解釈できない、あるいは解釈はできるが 「使えない」ということがおこる。
P.4にある2.①定量分析(潜在クラス分析)の場合は、解釈はできるがそのままでは「使えない」結果であった。本資料では、それを1.定性調査分析と比較していき、定性調査の必要性を確認していくが、定量分析だけを行う場合を想定して、まず2-①定量分析の結果から見ていくことにする。
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回答項目
Q8.14.容姿や服装など外見をほめられる
Q8.44.好きな服を着る
Q16.14.こだわり商品:服
Q16.15.こだわり商品:鞄.靴
Q16.16.こだわり商品:アクセサリー
Q16.18.こだわり商品:子ども用品
Q20.1.服を買いにいくのは正直面倒くさい
Q20.2.定番に近い服を着たい
Q20.3.家族にも恥ずかしくない服を着てほしい
Q20.4.多少高くても長く着れる服を選ぶ
Q20.5.よい素材の服を着たい
Q20.6.服は自己表現の手段だと思う
Q20.7.家で洗える服を買いたい
Q20.8.きちんとした格好をしたい
Q20.9.とにかく安い服でかまわない
Q20.10.ブランドのロゴが大きく入っている服は着たくない
Q20.11.ふだん服を買う店.ブランドは決まっている
Q20.12.安い服は着たくない
Q20.13.はやりの服を着たい
Q20.14.好きな有名人と同じ服を着たい
Q20.15.服は誰かに選んでもらう
Q20.16.服のセンスが良いと言われたい
Q21.ファッション誌を読む
2.①定量分析 ファッションに関する23項目の定量データ
左表のファッションに関する23項目を使い、 (定期価値観アンケート、2013年9月、20~30代女性n=1,950)
ファッションストアにとって、
効果的な顧客セグメンテーションを実施したい
そこで、潜在クラス分析を実施する。
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2.①定量分析 潜在クラス分析(pLSA)の実施した結果
ファッションに関する質問23項目を活用し、pLSAにて潜在クラスを分析
4つのファッション価値観(ファッション好き、こだわり、定番、トレンド)を抽出
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2.①定量分析:潜在クラス分析(pLSA)の課題
ファッションに関する質問23項目を活用し、pLSAにて潜在クラスを分析
4つのファッション価値観(ファッション好き、こだわり、定番、トレンド)を抽出
しかし、この4つのファッション価値観を そのまま4つ顧客セグメントとすることは
本当に効果的なセグメンテーションとなるのか? ⇓
そこで、当該ストアの顧客に対する 簡易定性調査分析結果で確認する。
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1.定性調査分析 簡易定性調査による顧客セグメンテーション
ファッションストアAの顧客インタビュー結果で明らかにした
顧客セグメンテーション(下記)と、ファッション価値観の整合性を検証する。
顧客インタビュー分析結果: 少なくとも3つの顧客セグメント(①こだわりおしゃれ層、 ②定番おしゃれ層、 ③子供服こだわり層)があり、それぞれ好みや価値観・ライフスタイル、購買心理が異なり、また各セグメント特徴に現場感もあり、施策への発想にもつながる具体的な内容といえる。
顧客インタビューの実施内容
調査方法:簡易定性調査「ご近所リサーチ」(参考文献・・・)
調査対象:弊社社員に実施したアンケート結果をもとに 20-30代6名をピックアップ
調査方法:購買行動や購買心理についてインタビュー
調査期間:2013年9月
①こだわり おしゃれ層
②定番 おしゃれ層
③子供服 こだわり層
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2.①定量分析と1.定性調査分析結果の比較 定性セグメンテーション ↔ 4つのファッション価値観
定性で得た顧客セグメンテーション
定量的に得たファッション価値観
? ?
①こだわりおしゃれ層(定性)は、b.こだわり(定量)と同様なのか?
②定番おしゃれ層(定性)は、c.定番(定量)と同様なのか?
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2.①定量分析と1.定性調査分析結果の比較 定性セグメンテーション ↮ 4つのファッション価値観
定性で得た顧客セグメンテーション
定量的に得たファッション価値観
× ×
内容を確認すると双方は同じではなく。また、潜在クラスそのままでは現実感とあわず適切なセグメントとは考えられず「使えない」。
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まとめ1
【調査分析方法のポイント】なぜ定性調査分析も必要か?に対して、
定量分析結果から発想が膨らまない、 あるいは現場納得感がなく「使えない」ものにならないためにも、 簡易定性調査を実施することが必要と考えられる。
【調査分析方法のポイント】
B)どのように定性と定量の分析結果を統合していくのか?
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どのように定性と定量の分析結果を統合していくか?
1.定性で得た顧客セグメンテーション
2.①定量的に得たファッション価値観
? ?
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まず、定性調査対象者にファッション23項目をアンケート
1.定性で得た 顧客セグメンテーション
まず6名のうち女性2名に 23項目をアンケート回答 してもらう
設問こだわりおしゃれ層
の被験者A回答結果
定番おしゃれ層
の被験者B回答結果
Q201服を買いにいくのは正直面倒くさい 0 0
Q202定番に近い服を着たい 0 1
Q203家族にも恥ずかしくない服を着てほしい 0 1
Q204多少高くても長く着れる服を選ぶ 1 1
Q205よい素材の服を着たい 1 0
Q206服は自己表現の手段だと思う 1 0
Q207家で洗える服を買いたい 1 0
Q208きちんとした格好をしたい 0 0
Q209とにかく安い服でかまわない 0 0
Q2010ブランドのロゴが大きく入っている服は着たくない 1 0
Q2011ふだん服を買う店・ブランドは決まっている 0 1
Q2012安い服は着たくない 1 0
Q2013はやりの服を着たい 0 0
Q2014好きな有名人と同じ服を着たい 0 0
Q2015服は誰かに選んでもらう 0 0
Q2016服のセンスが良いと言われたい 0 0
Q814容姿や服装など外見をほめられる 0 0
Q844好きな服を着る 1 1
2.①定量的に得たファッション価値観
×
しかし、ファッション23項目の 回答を定性的に判断しても
2名がどのファッション価値観を 持っているかを判断できない
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ファッション価値観を推論するためのモデルを構築
回答項目
Q8.14.容姿や服装など外見をほめられる
Q8.44.好きな服を着る
Q16.14.こだわり商品:服
Q16.15.こだわり商品:鞄.靴
Q16.16.こだわり商品:アクセサリー
Q16.18.こだわり商品:子ども用品
Q20.1.服を買いにいくのは正直面倒くさい
Q20.2.定番に近い服を着たい
Q20.3.家族にも恥ずかしくない服を着てほしい
Q20.4.多少高くても長く着れる服を選ぶ
Q20.5.よい素材の服を着たい
Q20.6.服は自己表現の手段だと思う
Q20.7.家で洗える服を買いたい
Q20.8.きちんとした格好をしたい
Q20.9.とにかく安い服でかまわない
Q20.10.ブランドのロゴが大きく入っている服は着たくない
Q20.11.ふだん服を買う店.ブランドは決まっている
Q20.12.安い服は着たくない
Q20.13.はやりの服を着たい
Q20.14.好きな有名人と同じ服を着たい
Q20.15.服は誰かに選んでもらう
Q20.16.服のセンスが良いと言われたい
Q21.ファッション誌を読む
そのため、定期価値観アンケート(2013年9月、20~30代女性n=1,950)のデータ、
ファッションに関する23項目と4つのファッション価値観(ファッション好き、こだわり、定番、トレンド)で、 ファッション価値観モデル(ベイジアンネットワーク)を構築
モデル図
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定性で得たセグメンテーションのファッション価値観
2人のファッション23項目の回答を見ても、 どのファッション価値観を持っているか判断できなかったため
ベイジアンネットワークで2名のファッションの価値観を推論
設問こだわりおしゃれ層
の被験者A回答結果
定番おしゃれ層
の被験者B回答結果
Q201服を買いにいくのは正直面倒くさい 0 0
Q202定番に近い服を着たい 0 1
Q203家族にも恥ずかしくない服を着てほしい 0 1
Q204多少高くても長く着れる服を選ぶ 1 1
Q205よい素材の服を着たい 1 0
Q206服は自己表現の手段だと思う 1 0
Q207家で洗える服を買いたい 1 0
Q208きちんとした格好をしたい 0 0
Q209とにかく安い服でかまわない 0 0
Q2010ブランドのロゴが大きく入っている服は着たくない 1 0
Q2011ふだん服を買う店・ブランドは決まっている 0 1
Q2012安い服は着たくない 1 0
Q2013はやりの服を着たい 0 0
Q2014好きな有名人と同じ服を着たい 0 0
Q2015服は誰かに選んでもらう 0 0
Q2016服のセンスが良いと言われたい 0 0
Q814容姿や服装など外見をほめられる 0 0
Q844好きな服を着る 1 1
定性調査対象者の アンケート回答を証拠として
モデルに投入
定性調査対象者の ファッション価値観を推論
4つのファッション価値観こだわりおしゃれ層
の被験者A推論結果
定番おしゃれ層
の被験者B推論結果
流行トレンド 0.00% 22.09%
定番 3.35% 63.61%
こだわり 100.00% 97.75%
ファッション好き 85.82% 39.73%
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定性と定量分析結果をつなぐ
1.定性で得た顧客セグメンテーション
2.①定量的に得たファッション価値観
○ ○
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定性調査対象者のファッション価値観を推論するプロセス全体像
ファッション価値観モデル 2.①定量的に得た ファッション価値観
1.定性で得た 顧客セグメンテーション
次に6名のうち女性2名に 23項目をアンケート回答 してもらう
定性調査対象者の アンケート回答を証拠として
モデルに投入 定性調査対象者の ファッション価値観を推論
こだわりおしゃれ層 定番おしゃれ層の ファッション価値観を抽出
4つのファッション価値観
流行トレンド 0.00% 22.09%
定番 3.35% 63.61%
こだわり 100.00% 97.75%
ファッション好き 85.82% 39.73%
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まとめ2
【調査分析方法のポイント】どのように定性と定量の分析結果を融合していくか?に対して、
定性と定量をつなげるために、定性調査対象者に定量調査と同様のアンケートを取得する。
そして、そのアンケート結果を定性的解釈でつなげるのではなく、ベイジアンネットワークを用いて推論する。
なお、定性調査サンプル数が少ないことが課題としてある。
しかし、コストとスピードが求められる現場において、全く実施しない場合と比較すると、少サンプルででも実施することで分析が深まることは、少なくとも明らかである。
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最後に
どのように定性的に得たセグメンテーションを 定量的セグメンテーションに落とし込んだかを説明した。
この定量的セグメンテーションごとに価値観を証拠として、 各セグメントの特徴を推論した結果は、ポスター発表の通りになる。
なお、企業実践の具体的な方法については、 企業内のデータからどのように始めていくかは、 社会知ネットワークのデモで紹介し、 また、このようなお客様の“心”の理解をもとに、 具体的なアクションに落とし込み、施策実践していく方法と事例に関しては ●デザイン・シンキングのための共創の「場」づくり ●Webコミュニケーションデザインの実践的アプローチ にて発表した。