反転教授型リメディアル英語コースにおける教材動画製作の実際...

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九州PCカンファレンス 反転教授型リメディアル英語コースにおける 教材動画製作の実際 作業量と予算の観点からフィージビリティを考える 木村修平(立命館大生命科学部生命情報学科准教授) [email protected] / @syuhei 九州PCカンファレンス 2014119日 @立命館大学アジア太平洋大学

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九州PCカンファレンス

反転教授型リメディアル英語コースにおける教材動画製作の実際

―作業量と予算の観点からフィージビリティを考える―

木村修平(立命館大生命科学部生命情報学科准教授)

[email protected] / @syuhei

九州PCカンファレンス

2014年11月9日@立命館大学アジア太平洋大学

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九州PCカンファレンス

アウトライン

1. 先行研究

2. 研究の背景

3. P0プロジェクトについて

4. P0の運営体制

5. P0動画教材の制作フロー(初期)

6. P0動画教材の制作フロー(後期)

7. 作業量をいかに減らすか

8. 類似の試みへの提言

9. おわりに:次回予告

10. 参考文献一覧

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先行研究:反転授業の概念と定義

•理解度に合わせた学習支援にコンピュータを組み込むというアイデア→ Mazur and

Hilborn (1997) のPeer Instructionに起源

• Tucker (2012) による反転授業の定義

• 「特にこれといったモデルはないが,その中心的なアイデアは一般的な指導方法を反転する事にあり,すなわち,教員が通常教室で行う授業を,ビデオ等の機材を使い録画して,それを学生が家にいても見られるようにする」

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先行研究:事例報告

• Mousel (2013) :高校の数学の授業に反転授業を取り入れた結果、大多数の生徒が数学の学習に対して学習意欲が向上

• Toto and Nguyen (2009) :反転授業を大学のエンジニアリング・コースの授業に応用した結果、授業外の時間で講義のビデオで見て、対面授業ではクラスメイトとのグループワークなど問題解決のための議論ができた

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先行研究:事例報告

• Herried and Schiller (2013) :2つの問題点

•学生が授業ビデオによる自習や予習を行わずに教室での指導を受けるという問題

•自習用に提供される動画教材を学習者が用いる際に、学習したい内容を含む箇所を探すのに時間がかかる

• Stuntz (2013):ICTやデジタル機器に対するリテラシーが反転授業への参加意欲を低下させる可能性がある

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先行研究:事例報告

•山梨大学工学部での取り組み (丸山, 2014)

•富士ゼロックスが開発した、音声付スライドショー作成システムを用いて作成した動画(15〜30分程度)を学生に事前配信

•授業時間にはアクティブ・ラーニング(実践演習、学生同士の議論、プレゼンテーションなど)を行う

•導入前と比較して、自習時間、成績ともに向上した

•全学部展開を見据えてワーキンググループを起ちあげた

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研究の背景

•プロジェクト発信型英語プログラム

•立命館大学スポーツ健康科学部・生命科学部・薬学部で実施

•スポーツ健康科学部では1・2回生の必修授業

• プロジェクト英語1(P1)〜プロジェクト英語4(P4)

•学生個々人の関心領域に基づいてリサーチと発表を積み上げ、最終的にその成果を英語によるアカデミック・プレゼンテーションやアカデミック・ペーパーといった形式で発表

•詳しくは→ PEP-RG.JP

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研究の背景

•クラスは習熟度別ではなく、TOEIC 800点を超える学生と200点前後の学生が同じクラスの中に存在

•学部の性質上、体育会クラブに所属する学生の割合が高く、試合や練習で欠席することも

•授業や英語学習のために十分な時間を割けない学生が一定数存在

•必然的に再履修率が高くなる

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P0プロジェクトについて

• 2013年後期、試験的に補修コースとしてパイロット版を実施。課題点を洗い出す(木村・祐伯・山本, 2014)

• パイロット版で明らかになった課題点• 対面添削の時間が朝8:00 → 朝早すぎる

• 動画1本あたりの平均再生時間が18分→ 長すぎる

• Guo, Kim and Rubin (2014) によると6分前後が理想

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P0プロジェクトについて

• 2014年度前期、正課授業として実施することが決定

•正課授業版P0の目標• 中学校・高校で十分身についていない英語の基礎的な知識を復習する

• P1 のカリキュラムと連動し、P1 での中間試験や期末試験に相当する、主として口頭発表タスクを補助する

•流れ• 木曜日に動画を公開→事前学習→火曜日に教室で添削

•予算• 学内競争的予算「教育力強化予算(質向上)」 約135万円

•結果• 当初設定目標をおおむね達成 (祐伯・木村, 査読中)

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P0の運営体制

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【全体統括】教学担当副学部長、英語科目専任教員

【動画教材作成】英語嘱託講師(筆者)、

補助学生3名

【教室対面指導】外部委託教育機関

(コーディネーター1名、講師1

名、補助学生1名)

学部職員1名

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P0動画教材の制作フロー(初期)

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1. iMac上でWordを起動し、ホワイトボードに見

立てて英語教員が解説を行う

2. その様子をQuickTime Playerの画面収録機

能でキャプチャする

3. キャプチャ動画を学内のネットワークに接続さ

れたTimeCapsuleに保存する

4. 編集担当の補助学生がTimeCapsuleから動

画を取り出し、iMovieで編集を行う

5. 編集が完了した動画をTimeCapsuleに保存

し、英語教員が受け取り、内容を確認して

YouTubeにアップロードする

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P0動画教材の制作フロー(後期)

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1. 大型タッチディスプレイ(シャープ社製

BigPad)を黒板に見立てて英語教員と補助

学生が解説

2. 解説時は単一指向性マイク(Countryman社

製ISOMAX2O)を装着

3. その様子をセミプロ用デジカム(Panasonic社

製AG-AC90)で撮影

4. 撮影された動画を編集担当の補助学生が

Adobe Premierで編集

5. 編集が完了した動画をTimeCapsuleに保存

し、英語教員が受け取り、内容を確認して

YouTubeにアップロードする

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作業量をいかに減らすか

•動画編集

• 経験値の高い補助学生に依頼

• 補助学生に一定の権限を付与(購入機材選定など)

•セミプロレベルの撮影機材の導入

• 高品質で撮影・録音することで編集にかかる手間を軽減

• イニシャル・コストの投資がランニング・コストをおさえる

•ファイル共有&ミーティング

• ファイルはGoogleドライブで共有。添付ファイルをつけたメールの煩雑なやりとりを省略

• Facebookメッセンジャーによるスタッフ間の連絡

• Skypeで移動にかかるエネルギーを節約

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類似の試みへの提言

• P0の動画教材はすべてYouTubeで公開中

PEP英語学習ナビからも→ pep-rg.jp/navi/

• Beyond Borders(立命館大学広報課)

•異なる部署や立場に身を置く人々の協働

•作業量軽減のために学外のサービスを積極活用

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http://www.ritsumei.ac.jp/bb/

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おわりに:次回予告

•祝!P0プロジェクト2015年度も継続決定

• 2014年度版を踏まえてさらなる改良を予定

• 動画教材をすべて再撮影予定

• ワークシートや教授内容の刷新

• 上記教材をすべてCreativeCommonsでネット公開?

2015PCカンファレンスでの発表を目指します!

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参考文献一覧• Guo, P. J., Kim, J., and Rubin, R. How video production affects student engagement: An empirical

study of mooc videos. In Learning at Scale 2014, Unpublished manuscript (2014). http://groups.csail.mit.edu/uid/other-pubs/las2014-pguo-engagement.pdf

• Herreid, C. F. and Schiller, N. A. “Case Studies and Flipped Classroom”, Journal of College Science Teaching, Vol.42, No.5, pp. 62-66 (2013).

• 木村修平・山本好比古・祐伯敦史: “反転授業形式による英文ライティング添削指導のためのオンライン動画教材の制作と活用について”, CIEC 研究会報告

• 集 (5), pp. 80-83, (2014).

• 丸山和昭. “事例[2] 山梨大学産学連携で取り組む「反転授業」”, カレッジマネジメント, vol. 185, pp. 20-23 (2014).

• Mazur, E., & Hilborn, R. C. "Peer instruction: A user's manual", Physics Today, 50(4), pp. 68-69 (1997).

• Mousel, A. “Flipping the High School Mathematics Classroom”, Studies in Teaching 2013 Research Digest – Action Research Project Presented at Annual Research Forum, 61-66. Winston-Salem, NC June 26, 2013 (2013).

• Stuntz D. F. “Flipped classrooms and CALL sustainability: A rationale for the development of flipped classrooms for sustainable CALL”, Global perspectives on Computer-Assisted Language Learning, pp. 323-324, Glasgow, 10-13, July, 2013 (2013).

• Toto, R. and Nguyen, H. “Flipping the Work Design in an Industrial Engineering Course”, 39th ASEE/IEEE Frontiers in Education Conference. San Antonio, TX October pp.18-21, 2009 (2009).

• Tucker, B. "The Filliped Classroom – online instruction at home frees class time for learning –", Education Next, winter, pp. 82-83 (2012).

• 祐伯敦史・木村修平: “発信型英語授業における補完コースの試みと効果の検証-反転学習方式の可能性と課題-”, 立命館高等教育研究, (査読中).

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