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論文 学術リ ソ ースと し てのW eb サイ ト 引用方法について On Citation of a W eb Site as an Academic Resource 伊藤 博文 愛知大学法科大学院) 要旨 近時,学術リ ース てイ ンタ ーネッ 上の Web ページが引用さ れる 場面が多く 見ら れる が,そ の引用方法は多様であり 統一する が望ま い。 引用方法の問題点を 指摘し 私案と ての引用 方法を 提示し 規格化への一歩を 踏み出すための提案を 行う キーワ ード 学術リ ース 引用方法, URL, URI, 検索エンジン表記法 1. はじ めに 本稿は, ンタ ーネッ 上の学術リ Academ ic Resource) を 引用する 場合 の表記方法について検討し 望ま い引用 方法を 新たに提案する を 目的と する 1 昨今さ ざま な情報がイ ンタ ーネッ で公開さ れており 学術リ ース 例外で はない。 学術論文の多く は, Web サイ の情報リ ース を 典拠引用し ている かし ながら その引用方法にはさ ざま 形式があり 一致を見ていない。 そこ で, ンタ ーネッ 上のコ ンテンツ や情報リ ース を 引用する 場合の引用方法 を新たに考案する ために, 現状で行われて いる 引用方法を 検討し つつ, 引用そのも の意義を 再検討し て, 新た な 引用方法を 提 案し たい 2 2. 引用の意義 ず, 引用の意義を 確かめる から め た い。【 引用】 いう 語の意味は, 広辞 3 によ 自分の説のよ て他の文章や事例ま たは古人の語を引く 。」 れる た, 一例を 掲げる アメ 法を 学ぶにあ たり 最も 権威のあ 愛知大学法科大学院教授。 以下のメ ールア ド に忌憚なき 意見や批判を 送付し ていただけ れば幸いで m ailto: hirofum i@law school. aichi-u.ac.jp 1 本稿においては, 混乱を 避け る ため, 敢えて 従来型の引用方法を と なお引用文中URL 最終ア ク セス 確認日は2012年11月30日である 2 の分野の先駆的な研究と ては, 指宿信 ネッ 文献の引用方法について―学術資源と てのネッ の可能性―」 およ びその掲げる 考文献等参照。 available at http://w w w .ne.jp/ asahi/coffee/house/A RG/054.htm l# c 3 広辞苑第六版 岩波書店 2008 年 愛知大学情報メ ディ アセンタ ー 13 vol.23, No.1, 2013

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論文

学術リ ソ ースと し ての W eb サイ ト 引用方法について

O n C ita tio n o f a W eb S ite as an A cadem i c Reso urce

伊藤 博文† ( 愛知大学法科大学院)

要旨

近時,学術リ ソ ース と し てイ ンタ ーネッ ト 上の Web ページが引用さ れる 場面が多く 見ら れる が,そ

の引用方法は多様であり , 統一する こ と が望ま し い。 引用方法の問題点を指摘し , 私案と し ての引用

方法を提示し , 規格化への一歩を踏み出すための提案を行う 。

キーワ ード : 学術リ ソ ース , 引用方法, URL, URI, 検索エンジン表記法

1. はじ めに

本稿は, イ ンタ ーネッ ト 上の学術リ ソ ー

ス ( Academ ic Resource) を引用する 場合

の表記方法について検討し , 望ま し い引用

方法を新たに提案する こ と を目的と する 1。

昨今さ ま ざま な情報がイ ンタ ーネッ ト 上

で公開さ れており , 学術リ ソ ース も 例外で

はない。 学術論文の多く は, Web サイ ト か

ら の情報リ ソ ース を典拠引用し ている 。 し

かし ながら , その引用方法にはさ ま ざま な

形式があり , 一致を見ていない。

そこ で, イ ンタ ーネッ ト 上のコ ンテンツ

や情報リ ソ ース を引用する 場合の引用方法

を新たに考案する ために, 現状で行われて

いる 引用方法を検討し つつ, 引用そのも の

の意義を再検討し て, 新たな引用方法を提

案し たい 2。

2. 引用の意義

ま ず, 引用の意義を確かめる こ と から 始

めたい。【 引用】 と いう 語の意味は, 広辞

苑 3によ る と 「 自分の説のよ り ど こ ろ と し

て他の文章や事例ま たは古人の語を引く こ

と 。」 と さ れる 。 ま た, も う 一例を掲げる 。

アメ リ カ 法を 学ぶにあ たり 最も 権威のあ

† 愛知大学法科大学院教授。 以下のメ ールアド

レ ス に忌憚なき 意見や批判を送付し ていただけ

れば幸いで あ る 。 m ailto: hirofum i@ law school.

aichi-u.ac.jp1 本稿においては, 混乱を避ける ため, 敢えて

従来型の引用方法をと る 。 なお引用文中URL の

最終アク セス 確認日は2012年11月30日である 。

2 こ の分野の先駆的な研究と し ては, 指宿信

「 ネッ ト 文献の引用方法について―学術資源と

し てのネッ ト の可能性―」 およ びその掲げる 参

考文献等参照。 available at http://w w w .ne.jp/

asahi/coffee/house/ARG/054.htm l# c3 広辞苑第六版 岩波書店 2008年

愛知大学情報メ ディ アセンター - 13 - vol.23, No.1, 2013

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る アメ リ カ法律学辞典である Black’s Law

Dictionary で は, 日本語の引用にあ た る

Citation を次のよ う に説明し ている 4。

つま り , 我々は, 他人の言葉を引く 行為

そのも のと , 同時にその典拠を示すこ と も

引用と 呼んでいる のである 。 引用と いう 意

味は多義的に用いら れ, 第1は, Quotation

の意味であり , 他所に存在する 文章等の一

部をそのま ま 書き 写し て, 自ら の文書の中

で使う こ と であり , 第2は, Citation の意味

であり , 引用物の典拠を示すこ と 若し く は

その表示方法である 。

換言すれば, 日本語の引用と いう 語が,

Quotation と Citation と いう 意味を 混在さ

せている のである 。 論点を明確にする ため

にも , 本稿では, 第2の意味つま り Citation

の意味での典拠表示と し ての引用( 典拠表

示) について論じ る こ と と する 。

2.1 引用の目的

では, なぜ引用( 典拠表示) をする かと

4 Bryan A . Garner, Black’s Law Dictionary

4th Pocket Edition, WEST 2011 at 115. 原 文

を 以下に掲げる 。 Citation: 3. A reference to a

legal precedent or authority, such as a case,

statute, or treaties, that either substantiates or

contradicts a given position.

いう 基本的な問題から 始めたい。 引用を行

う 場面は, 学術論文がも っぱら であり , 引

用をする こ と の意味は,( 1) 自己の主張を

裏付ける ため,( 2) 権威付け,( 3) 後発研

究への経路を 示すこ と の 3つに集約でき よ

う 。

( 1),( 2) は, 相互関連性の強いも ので

あり 引用者の自己満足的な要素が強いが,

( 3) 後発研究への経路を示すこ と , つま り

「 バッ ク ト ラ ッ ク( 後述2.2)」 を可能にする

こ と で, 客観的な検証が行われ初めて引用

が意味を持つ。 よ って, 重要なのは, バッ

ク ト ラ ッ ク である 。 原典にたどり 着く 指標

と なる こ と を引用の主目的と 考える べき で

あろう 。

こ れによ り , 引用・ 転載し た記述が, 本

当に存在する かを確認し , 適切なコ ンテク

ス ト の内で引用・ 転載さ れている かを証明

する と いう 引用の持つ義務を果たせる と い

えよ う 。

2.2 バッ ク ト ラ ッ ク

引用の主目的は, 参照典拠を示し 後発研

究への経路を示すこ と である 。 典拠を示す

と いう こ と は, 読者が典拠を確認し よ う と

し たと き に, 確実に原典である 典拠物ま で

読者がたどり 着ける 道筋を示すこ と , つま

り ト レ ース 可能な表記が求めら れる のであ

る 。 こ れをバッ ク ト ラ ッ ク ( Back Track)

と 呼ぶこ と と する 。

こ れは時間軸から は, 当然過去へ戻る こ

愛知大学情報メ ディ アセンター - 14 - vol.23, No.1, 2013

引用 3 特定の主張を根拠付ける 若し

く は矛盾を指摘する 判例, 制定法, ま た

は条約と いっ た, 法的先例若し く は権

威。

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と と なり , 既に滅失し てし ま っている 情報

源へと 道筋を辿る こ と も 想定さ れる 。 引用

表記においては, 確実にタ ーゲッ ト と なる

情報源へと 導く 方法が必要であり , 可能な

限り の客観的な方策を講ずる こ と が必要と

なる 。

3. さ ま ざ ま なリ ソ ース と 引用方法

こ こ ま での引用の意義の検討を踏ま えた

上で, イ ン タ ーネッ ト 上のリ ソ ース と し

て, 引用はど のよ う な 形で行われて いる

のかを見ていく 。 ま ずは, アメ リ カ法での

Citation について 最も 権威あ る BlueBook5

と ALWD Citation Manual6を例にし て, そ

の表記方法を検討し てみたい。

3.1 引用例

BlueBook も 第19版と なり , こ れま で以

上に電子文字化さ れたリ ソ ース への引用に

対し て紙面を割いている 。 対応する リ ソ ー

ス と し ては,イ ンタ ーネッ ト 上の Web サイ

ト , オン ラ イ ン データ ベース , CD-ROM,

マイ ク ロ フィ ルム, Podcastsと いった録音

源なども 対象と し ている 。 こ こ では, イ ン

タ ーネッ ト で最も 情報量の多い Web サイ

ト の引用,つま り URL によ る 引用を例と し

たい。

ま ず, Basic Citation Form s (a) Internet

Source (rule 18.2)に掲げら れている 引用例

から 2点を示す 7。

上記Sam ple 1は,印刷文字と し て入手可

能な文献がイ ンタ ーネッ ト 上でも 入手可能

である こ と を示し ており , Sam ple 2は, ブ

ロ グ を URL で表記し ており , 特徴的なの

はそのアク セス 日時を表記し ている 点であ

る 。

も う 一つ例を 出そう 。 ア メ リ カ での法

文書作成でよ く 使われる ALWD Citation

Manualも ,PART4. Electronic Sourcesに

おいて, イ ンタ ーネッ ト 上のリ ソ ース 引用

方法について紙面を割いて詳し く 述べてい

る 。 特に 40.1 (d) URL8 において Web 上の

コ ンテンツに対する 引用方法が特徴的であ

る 。5 T he Harvar d Law Rev iew A ssociation ,

The BlueBook - A Uniform System of Citation

Nineteenth Edition, 2010, at PP.164-176.6 A ssociation of Legal W r iting Director s,

Darby Dickerson, ALWD Citation Manual 4th

ed., Aspen Publishers 2010.

7

8

The BlueBook 19th ed., at 164.

ALWD Citation Manual 4th ed. at 343.

愛知大学情報メ ディ アセンター - 15 - vol.23, No.1, 2013

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ALWD Citation Manual に 掲載さ れて

いる Sam ple 3は, 合州国政府の刊行物の

所在を示し ている が, 大規模なデータ ベー

ス のよ う な Web サイ ト から 目的に辿り 着

く 道筋と し て, URL の みな ら ず, select,

search-keyw ords "xxx "と いった keystroke

を 使っ た引用方法を 提示し て いる 。 こ れ

は Bluebook に掲載さ れていない形式であ

り ,単なる URL 表記から は一歩前進し た引

用形式である と 評価でき る 。 その理由は,

バッ ク ト ラ ッ ク に対する 配慮がみら れる か

ら である 。

こ こ での例示でわかる よ う に, イ ンタ ー

ネッ ト 上のリ ソ ース に対する 引用方法に定

番がある わけではなく , 現段階では試行錯

誤が行われている と いう のが実情である 。

3.2 引用の表示技術

インタ ーネッ ト 上の情報つま り リ ソ ース

は URL によ っ て表記可能であ る 。 こ こ で

URL と いう 表記について触れておく 。URL

( Uniform Resource Locator)は, イ ンタ ー

ネッ ト 上の場所を示す表記方法のルールで

あり ,RFC39869に規定さ れている 。 たと え

ば, URI のス キーム( Schem e) と し ては,

ftp, http, ldap, m ailto, new s, tel, telnet, urn

などがある こ と を下記枠内の1.1.2 Exam ple

は示し ている 。

3.3 UR L と UR I について

こ こ で URL と URI と について 述べる 。

RFC3986によ れば, URL は, UR(I Uniform

Resource Identifier) の下位概念と 位置づ

けら れており ,URI の一例が URL と し てい

る 。 イ ンタ ーネッ ト 上で場所を表記する 場

合,多く はWeb 上のコ ンテンツを指し 示す

も のである ので, URL と 表記すれば事足り

る のである が, 両者を 使い分ける 意味は,

9 RFC 3986 http://w w w .ietf.org/rfc/rfc3986.

txt RFC (Request for Com m ent) と は, IETF

(Internet Engineering Task Force)によ る 技術

仕様の保存, 公開形式であり , イ ンタ ーネッ ト

上のネッ ト ワ ーク 技術を 標準化する 作業時の

仕様書と なっ ている 。 http://w w w .ietf.org/rfc.

htm l

愛知大学情報メ ディ アセンター - 16 - vol.23, No.1, 2013

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URN の存在である 。

URL が, 場所を 示す書き 方のルールで

あ り , Web ページ や画像な ど にア ク セス

する ための主要な存在場所と ア ク セス 方

法を指定する も のである 。 URN( Uniform

Resource Nam e) は, 名前を永続的に識別

する 書き 方のルールと さ れる 。 URL がイ

ンタ ーネッ ト 上で動的に変化する 可能性の

ある 場所を示し ている のに対し , URN は,

書籍のも つISBN のよ う な静的に安定し た

記号を用いて情報源の特定を行う も のであ

る 。 たと ば, urn:isbn: 9784535510869のよ

う に表記する のである 。

URI と URN の上位概念と し て URI を 置

く が,URN が書籍名の引用と いった従来の

表記方法( たと えばISBN) と 異なる も の

ではなく , ク リ ッ ク し ても タ ーゲッ ト と な

る 情報源にアク セス でき る わけではないの

で, 結果的に普及し ていない。

イ ンタ ーネッ ト 上のリ ソ ース 源を表記す

る 場合, イ ンタ ーネッ ト 上に存在し ないリ

ソ ース を 参照する 表記方法には意味がな

く , 結果的に URI と URL が同じ も のと な

り , 両者を使い分ける 実益が乏し く なって

いる 。 よ って, Web サイ ト の場所を示すた

めには,一般に普及し ている URL と 表記す

れば事足り る のである 。

3.4 リ ン ク 切れ

イ ンタ ーネッ ト 上のリ ソ ース は動的に動

いている ので, それを静的に捉えよ う と す

る と 不具合が生じ る 。 つま り , URL を ク

リ ッ ク し ても 対象の Web ページが表示さ

れないと いう 現象である 。 いわゆる , リ ン

ク 切れ( Dead Link) の問題である 。

こ のリ ンク 切れの原因には, 大き く 分け

て 2種類ある 。 パタ ーンA と し ては, 見た

い Web ページがイ ン タ ーネッ ト 上で今も

見ら れる 状態にある が, URL が変更になっ

たため参照でき ない場合である 。 パタ ーン

B と し ては,も はや見たい Web ページが削

除さ れてし ま い閲覧不能な状態になってい

る 場合である 。

ま ずは, パタ ーンA である 。 具体例と し

て,私のサイ ト の URL 変遷を一例と し て示

す。 Project CaLS のサイ ト は, 私の前任校

の時代ではhttp://cals2.sozo2.ac.jp( 図1)で

図 1 旧 URL http ://cals2.sozo2.ac.jp

愛知大学情報メ ディ アセンター - 17 - vol.23, No.1, 2013

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図 2 新 URL http ://cals.a ich i-u .ac.jp

あった。 2004年に愛知大学に移ったこ と に

よ り 同一のサイ ト 名が, http://cals.aichi-u.

ac.jp( 図2) へと 変わった。 よ って URL と

し て http://cals2.sozo2.ac.jp を 典拠と し て

いる 私の過去の論文は, イ ンタ ーネッ ト 上

で入手可能な PDF ファ イ ル 10 も 含め, 全て

リ ン ク 切れになっ ている 。 旧URL から 新

URL へと 誘導する 場合, 旧URL 上のサイ

ト に移転先を 明示する 若し く は旧URL を

自動的に新URL へと 導く Web ページを 置

けば解決と なる が, 既に所属し ていない組

織のサーバーにそのよ う な Web ページを

置く こ と は難し い。 よ ってド メ イ ン名の多

様化にと も なう 変化も あわせて, URL が変

化する こ と は避けら れず, リ ンク 切れは今

後も 頻発する こ と と なる 。

パタ ーンA に対し て最も 効果的なのは検

索エンジンの活用である 。 コ ンテンツがイ

ンタ ーネッ ト 上に存在し ている がたどり 着

けないのであれば, 検索エンジンを使い拾

い出すこ と が可能である 。 検索エンジンが

全てのコ ンテンツをイ ンデッ ク ス 化し てい

る わけではないので, 必ずたどり 着ける と

いう 保証はないが, かなり の確率でたどり

着ける はずである 。 こ の点は次項において

詳し く 述べる 。

次にパタ ーンB である 。 イ ンタ ーネッ ト

上にも はや原典と なる コ ンテンツそのも の

が存在し ない場合にはアク セス し よ う がな

いのは当然である 。 し かし , こ のパタ ーン

B においても バッ ク ト ラ ッ ク の方法がない

わけではない。

イ ンタ ーネッ ト 上にコ ンテンツが存在し

ないと いう のは, 著作者自ら はも はや公開

し ていないが, イ ンタ ーネッ ト 上には別の

形で残さ れている 可能性も ある 。 それは,

検索エンジンの持つキャ ッ シュ , 他者によ

る コ ンテンツの転載, イ ンタ ーネッ ト 上に

ある アーカイ ーブサイ ト ( 後述4.2, 図3参

照) を利用する 方法である 。

こ れら の方法を使う こ と を前提と し てど

のよ う な引用方法が望ま し いのか次項で説

明し たい。

4. 新し い引用方法

こ こ では, リ ン ク 切れによ り バッ ク ト

ラ ッ ク が不能と なってし ま う 問題への対応

策を考えていき ながら , 引用方法と し ての10 私の書いた論文は PDF フ ァ イ ル型式で下記

URL にて公開し ている 。

http://cals.aichi-u.ac.jp/project/PN0160.htm l。

愛知大学情報メ ディ アセンター - 18 - vol.23, No.1, 2013

望ま し い姿を検討し ていく 。

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4.1 引用の静と 動

こ こ で新たな視点と し て電子文字と いう

観点を 視野に入れる 。 電子文字と はコ ン

ピュ ータ 等の画面で表示さ れる 電気的な信

号に置き 換えら れた文字であり , 紙等に記

載・ 印刷さ れた静的な状態の印刷文字への

対立概念である 11。

イ ンタ ーネッ ト 上のリ ソ ース を引用する

と いう こ と は, 電子文字( 動) を印刷文字

( 静) に置き 換える こ と , つま り 動的に変

化し 得る 電子文字情報を静的で変化し ない

印刷文字にする と いう 側面を持つこ と と な

る 。 よ って, 常に変化し 続ける 電子文字を

静的に捉える と いう こ と は, ある 一時点で

の情報を印刷文字と し て静的に表記する こ

と になら ざる を得ない。 こ れは当然のこ と

ながら 動的な電子文字の変化に対応はでき

ない。 既述のよ う に URL でも ,ド メ イ ン名

の変化に伴いバッ ク ト ラ ッ ク を失う こ と は

現実に多発し ている 現象である 。 当然のこ

と と し て, 日々変化し 続ける イ ンタ ーネッ

ト 上のコ ンテンツを紙面上で表記する こ と

には限界がある 。

よ って引用方法を考慮する 場合, その引

用方法が電子文字で行われる のか印刷文字

で行われる のかも 分けて考え る 必要があ

る 。 つま り , 論文や書籍のよ う に印刷さ れ

11 電子文字化については, 伊藤博文「 電子文字

化論再考」 愛知大学情報メ ディ アセンタ ー紀要

『 COM』 Vol.22/No.1第37号1頁( 2012年) 参照。

available at http://cals.aichi-u.ac.jp/products/

articles/ElectrifyingWrittenSymbolsRevisited.pdf

紙面に表記さ れる には印刷文字用の引用表

記が必要であり , オンラ イ ンで閲覧する コ

ンテンツの場合は動的に対応でき る 引用が

必要であり 電子文字用の引用表記が必要と

なる 。

印刷文字での引用表記には, 一時点の

URL を 表記し てその後の変化に対応すべ

く 可能な限り のフ ォ ロ ーを すべき であ ろ

う 。 一方, 電子文字によ る 引用では, Web

サイ ト 上のリ ンク を想定し , 動的に変化可

能な形式を想定すべき である 。 つま り , 検

索エンジンの力を借り て表記する こ と も 必

要と なる 。 電子文字の特徴である 動的変化

に対応でき る 機能を活かし た引用方法が必

要である 。

そこ で, 引用を動的引用と 静的引用と 区

別し , 動的引用では, 電子文字独自の機能

を反映さ せた手法を用いる べき である 。

4.2 過去に遡る 技術

バッ ク ト ラ ッ ク での大き な問題の一つで

ある リ ンク 切れへの対策の一つには, イ ン

ターネッ ト アーカイ ブを利用する 方法があ

る 。

既述のリ ン ク 切れパタ ーン B において

は, も はやイ ンタ ーネッ ト 上に存在し 得な

いリ ソ ース を 参照する こ と にな り , バッ

ク ト ラ ッ ク ができ ない状態であった。 し か

し , イ ン タ ーネッ ト 上には過去の Web サ

イ ト 上のデータ を 全て保存し ア ーカ イ ブ

化し ている サイ ト がある 。 それは, 図3に

愛知大学情報メ ディ アセンター - 19 - vol.23, No.1, 2013

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示さ れて いる Internet Archive WayBack

Machineである 。 こ の Web サイ ト では, あ

たかも タ イ ムマシンのよ う に, 過去に遡っ

てイ ン タ ーネッ ト 上の Web サイ ト の経年

変化を調べる こ と ができ る 。

こ のサイ ト は膨大な量の蓄積データ から

過去の Web サイ ト を表示し てく れる が,限

界も ある 。 たと えば, 前掲17頁の図1では

私の過去のサイ ト を表示さ せていたも ので

ある が, ASP( Active Server Pages) のよ

う に動的な Web サイ ト 表示には対応でき

ておら ず, 完全な意味での復元と はなって

いない。 し かし , 文字データ などはほぼ完

全な形で保存さ れている ので, 文献引用と

いった場面において問題はなく 使える と 考

えている 。

こ れ以外に も , 検索エ ン ジ ン の 持つ

キャ ッ シュ を利用し , 検索エンジンの検索

結果一覧表に出てく る キャ ッ シュ を使う こ

と も 一方法である 。 そし て, 他者によ る コ

ンテンツの転載が有効な場合も ある 。 イ ン

タ ーネッ ト のユーザーが, 自身のブロ グや

Web サイ ト に転載し 掲示し ている 場合は,

こ れも 検索エンジンによ り 拾い出す可能性

も ある 。

4.3 検索エン ジン 最適化

検 索 エ ン ジ ン 最 適 化( SEO: Search

Engine Optim ization)12 は,イ ンタ ーネッ ト

上の検索エンジンが普及する につれ, 検索

エンジン・ ビジネス の発展と あいま って注

目さ れる 技術である 。

検索エン ジン の代表格であ る Google が

検索結果を出すアルゴリ ズムは 13

( 1) ク ロ ール: Googleがサイ ト を認識

し て検出する

( 2) イ ンデッ ク ス 作成: Googleがサイ

ト のイ ンデッ ク ス を作成する

( 3) 検索結果の表示: ユーザーの検索

と 関連する 有益なコ ンテンツが含ま

れている サイ ト を表示する

の 3つから 構成さ れる 。

検索エンジンが検索結果と し て上位に表

記する ために重要なのは,( 2)の「 イ ンデッ

ク ス 作成」 過程であ る 。 Google の検索エ

ン ジン が放つ「 Googlebotはク ロ ールし た

12 http://ja.w ikipedia.org/w iki/検索エンジン最

http://ar ch iv e.or g /w eb/w eb.php

適化13 http://support.google.com /w ebm asters/bin/

answ er.py?hl= ja& answ er= 70897# 1

愛知大学情報メ ディ アセンター - 20 - vol.23, No.1, 2013

図3 Internet Archive WayBack Machine

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各ページを処理し , 検出し たすべての単語

と ページ上の場所を登録し た大規模なイ ン

デッ ク ス を作成し ま す。 さ ら に, titleタ グ

やalt属性など の主要なコ ン テン ツ タ グや

属性に含ま れる 情報も 処理し ま す。」 14 と し

ている 。

つま り 検索エ ン ジ ン を 利用する 場合

も , 目的と なる Web サイ ト のタ グ, 特に

< title> ~< /title> を キ ーワ ード と する こ

と で, バッ ク ト ラ ッ ク する 可能性が高く な

る 。

た と え ば, 上 枠 内 は 私 の サ イ ト の

1 ページ( http://cals.aichi-u.ac.jp/project/

PN0160.htm l) のソ ース フ ァ イ ルの一部で

ある 。 こ の Web ページのタ イ ト ルは,タ グ

< title> と タ グ < /title> に挟ま れた 文字列

「 抜刷を差し 上げま す」である 。 こ の文字列

を検索エンジンにキーワ ード と し て入れれ

ば, 上位にラ ンク さ れて検索結果表示がな

さ れる 。

検索エンジンにも 種類があり , どの検索

エンジンを使う かによ っても 検索結果は異

なる 。 ま た, それに近い形での二次的なサ

イ ト を 見つける こ と も 可能と な る 。 つま

り , タ ーゲッ ト と なる サイ ト が消滅し てい

ても それを複製し たサイ ト , 一部を引用し

たサイ ト などを見つけ出すこ と も 可能と な

る のである 。

つま り 検索エンジン最適化の働き を上手

く 利用すれば, かな り の確率でバッ ク ト

ラ ッ ク ができ る のであ る から , こ の機能

を引用方法に入れる こ と が望ま し いと いえ

る 。

4.4 ア ク セス 日時表示

動的に変化する 情報を静的に引用表記す

る のであれば, 表記時の時間を示す必要が

ある 。

確かに, ブロ グなどのよ う に刻々と 変化

する リ ソ ース では, 時分秒ま で特定する 必

要があろう が, 通常は年月日ま でで表記す

れば十分である 。 し かし 年月日表示にし て

も , 下枠内のよ う にアメ リ カ式表記と イ ギ

14 http://support.google.com /w ebm asters/bin/

answ er.py?hl= ja& answ er= 70897# 1

愛知大学情報メ ディ アセンター - 21 - vol.23, No.1, 2013

2012年12月21日 を表記する と

1. アメ リ カ式表記

Dec 21, 2012 or 12/21/12

2. イ ギリ ス 式表記

21 Dec 2102 or 21/12/12

3. 本稿での提案

20121221

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リ ス 式表記では異なる 。 こ れら を統一する

意味から も , 年( 西暦4桁半角数字) +月

( 2桁半角数字) +日( 2桁半角数字) で表

記する のが好ま し い。 こ の表記方法の一番

のメ リ ッ ト は, ファ イ ル名などに利用し た

と き 必ず時系列にコ ンピュ ータ 上で並べ替

える こ と ができ る こ と である 。

ま た日時表示では,“ last visited on” と

か“ accessed on” を付加する こ と なく , 端

的に 8桁の半角数字だけを 表示する こ と が

望ま し いと いえる 。

4.5 あ ら たな引用方法

こ れま で述べてき た引用方法以外のも の

と し ては, 引用表記を行う 時点での原典を

画像で保存する こ と も 一案であ る 。 つま

る 。 動的引用においては, むし ろこ のよ う

なアプロ ーチが好ま し いと も いえる 。

ま と めと し て, 引用形式と し て含ま せる

要素には, 検索エンジン( Search) と 検索

キーワ ード ( T itleタ グ内の文字列) を表記

し 15, 最終アク セス 時刻を 表示する こ と も

必要であろう 。 以上をま と める と , 提案し

たいのは上記のよ う な引用方法である 。

15 検索キ ーワ ード を 表記する と いっ ても , 面

面のハード コ ピーを取って, それを画像と

し て保存し 典拠表示する 方法である 。 こ の

画像ファ イ ルをサーバー上に置いてク リ ッ

ク すれば大き な画像を表示でき る よ う にす

倒な操作を伴う こ と も 事実である 。 ブラ ウ ザ上

で右ク リ ッ ク し て Web サイ ト のソ ース を 表示

さ せ, こ のソ ース 内から < T itle> タ グ内にある

文字列をコ ピ ー&ペース ト する 作業が必要と な

る 。 こ う し た 作業も 将来的には Macroで簡単

に引き 出せる よ う になる こ と が望ま し いであろ

う 。

愛知大学情報メ ディ アセンター - 22 - vol.23, No.1, 2013

り , Web サイ ト 上で原典と な る ページ 画

動的引用方法(Active Citation Method)(クリッカブルが望ましい)[タイトル], URL , アクセス日時, 検索キーワード, 画面保存画像(クリックで大画像表示)

Project CaLS, http://cals.aichi-u.ac.jp, 20121022, search “Project CaLS”,

静的引用方法(Static Citation Method)[タイトル], URL, アクセス日時, [検索キーワード]Project CaLS, http://cals.aichi-u.ac.jp, 20121022, search “Project CaLS”

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5. おわり に

イ ンタ ーネッ ト 技術には無限の可能性が

ある 。 現在起き ている リ ン ク 切れの問題,

インタ ーネッ ト 上の情報氾濫と その情報の

玉石混淆問題は, なんら かの技術によ り 解

決さ れる であろう と 予想さ れる 。 イ ンタ ー

ネッ ト を形成し てき た繋ぐ 技術が目指し た

も のが, 分散し た情報へどのよ う なアク セ

ン経路を示すかと いう アプロ ーチであった

のが変化し つつある 。 それは, 昨今のク ラ

ウド 化のよ う な情報リ ソ ース 源の一局集中

化によ り , よ り 新たな情報の存在形式が生

ま れ, よ り 確実に情報源へたどり 着ける 方

法が確立さ れる こ と が望ま し いから であろ

う 。

ま た, 本稿の扱った引用についての議論

が, さ ま ざま な制約から , 限ら れたコ ンテ

イツ のみを 対象と する こ と に留ま っ てお

り , あら ゆる 学術リ ソ ース を網羅し ている

と はいえない。 こ れは今後の研究に委ねざ

る を得ない。 そのためにも 本稿の提起する

問題点や手法がその研究の一助になれば幸

いである 。 も っと 多様な視点から 伝統的な

文献引用と いう 手法に考察の光があてら れ

て, 次世代の引用方法が生ま れてく る こ と

を期待し たい。

本稿は,愛知大学研究助成共同研究B「 大

学教育における 学生と の双方向通信のあり

方」によ る 研究助成によ る 研究成果である 。

こ のよ う な研究助成を与えていただいた愛

知大学に感謝し たい。

愛知大学情報メ ディ アセンター - 23 - vol.23, No.1, 2013

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� � �愛知大学情報メ ディ アセンター - 24 - vol.23, No.1, 2013