先進的 iot プロジェクト支援事業 既存機械式計器 … 2016 情財第297 号...

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1 2016 情財第 297 先進的 IoT プロジェクト支援事業 既存機械式計器の OPC-UA 対応 IoT 化 及びビジネスモデル構築 成果報告書 委託先:株式会社木幡計器製作所 担当メンター:丸 幸弘、大坂 吉伸 2017 9 29

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1

2016 情財第 297 号

先進的 IoTプロジェクト支援事業

既存機械式計器の OPC-UA対応 IoT 化

及びビジネスモデル構築

成果報告書

委託先:株式会社木幡計器製作所

担当メンター:丸 幸弘、大坂 吉伸

2017 年 9 月 29 日

2

目次

1. 要約 ....................................................................................................................... 4

2. 背景および目的 ..................................................................................................... 4

2.1 プロジェクトの背景 ......................................................................................... 4

2.2 目的 .................................................................................................................. 5

3. プロジェクト概要 ................................................................................................. 7

3.1 製品・サービス概要 ......................................................................................... 7

3.2 ビジネスモデル概要 ......................................................................................... 8

4. 実施内容 .............................................................................................................. 12

4.1 製品開発と価値検証の実施内容...................................................................... 12

4.2 ビジネスモデルの構築・運用と有効性検証の実施内容 .................................. 15

5. プロジェクトの成果 ............................................................................................ 17

5.1 製品開発と価値検証の成果 ............................................................................. 17

5.2 ビジネスモデルの構築・運用と有効性検証の成果 ......................................... 32

6. 事業化に向けた課題と展望 ................................................................................. 54

6.1 製品・サービスの課題と展望 ......................................................................... 54

6.2 ビジネスモデルの課題と展望 ......................................................................... 54

7.付録 ....................................................................................................................... 56

7.1 用語説明 .......................................................................................................... 56

7.2 関連 Web サイト .............................................................................................. 57

3

図目次

図 1 機械式圧力計 .................................................................................................................. 4

図 2 ブルドン管式圧力計構造図 ............................................................................................ 4

図 3 現状の課題 ..................................................................................................................... 6

図 4 本プロジェクトで開発する製品 .................................................................................... 7

図 5 ビジネスモデル ............................................................................................................ 10

図 6 指針読取センサユニット機能ブロック図 .................................................................... 18

図 7 システム構成 ................................................................................................................ 18

図 8 センサユニット外形図 ................................................................................................. 20

図 9 ビーコン送信フォーマット .......................................................................................... 20

写真 1 デジタル圧力計 .......................................................................................................... 5

写真 2 後付け指針読取センサユニット ............................................................................... 19

写真 3 評価器 ....................................................................................................................... 21

写真 4 遠隔通信ユニット 計器に付けたところ ................................................................ 25

写真 5 遠距離通信ユニット 単体 ...................................................................................... 26

写真 6 プレゼンテージョンの様子 ...................................................................................... 37

写真 7 ヒアリングの様子 ................................................................................................. 37

写真 8 ディスカッションの様子 ...................................................................................... 38

写真 9 プレゼンテーションの様子 .................................................................................. 38

写真 10 TECH PLANTER in Singaporeでの会場の様子 .................................................... 39

写真 11 920MHz LoRa 方式 通信試験 .......................................................................... 42

写真 12 大手製鉄会社トライアルで使用した計器 .......................................................... 42

写真 13 大手製鉄会社モニタリング画像 ......................................................................... 43

写真 14 OPC-UA対応ゲートウェイ ................................................................................... 43

写真 15 病院 圧力計 .......................................................................................................... 44

写真 16 病院 実証風景 圧力計&流量計 ..................................................................... 45

写真 17 病院 圧力計 実証試験 .................................................................................... 45

写真 18 病院 圧力流量モニタリング画面 ..................................................................... 46

写真 19 センサ/IoT技術展 2017 ..................................................................................... 46

写真 20 IoTのセキュリティを考える集い in 新横浜 .................................................... 47

写真 21 あまがさき産業フェア 2017 ............................................................................... 47

写真 22 OSP2017 “OPC UA を体験する集い” ............................................................ 48

写真 23 滋賀テックプランター最終選考会 ..................................................................... 49

写真 24 事業プレゼン ...................................................................................................... 49

4

1. 要約

本プロジェクトでは、既設の機械式計器に後付け可能な「後付け指針読取センサ」

と、OPC-UA対応の「高セキュア遠隔監視システム」の開発を行い、孤立した既設の

機械式計器を後付けで IoT化して、高セキュアな遠隔監視ができるシステムを実現し

た。

大手製鉄会社および病院のガス設備に対してトライアル導入を実施し、製品・サー

ビスの有効性を検証する実証試験を行った。

ユーザー企業へのヒアリングやトライアル導入を通して、ビジネスモデルの検討と

評価を行い、工場向けのビジネスモデルと病院向けのビジネスモデルをそれぞれ策定

した。

2. 背景および目的

2.1 プロジェクトの背景

工業計器類には機械式計器、電子式計器があるが、それぞれ利点、欠点がある。

機械式計器は数値を読まなくても、いつも使っている計器の場合にはおよその値が

一見して分かるなどの点からも、現場指示計としては機械式圧力計が採用されること

が多く、現在でも国内では年間 1,000万個近く生産されるほど広く使用されている。

しかしながら、機械式圧力計は IoT化されていない。

一方で電子式のデジタル計器は計測値のデータ化された信号を蓄積し、二次利用可

能なことが最大の利点であるといえる。既に各種プラントでは一般的に、状態監視を

中央監視制御室で集中監視・制御されることが多く、大抵の場合において、その圧力

機械式圧力計 ブルドン管式圧力計構造図

図 1 機械式圧力計 図 2 ブルドン管式圧力計構造図

5

計測や温度計測は、電子式で有線タイプの圧力・差圧・温度伝送器が利用されている

が、これら電子式計器は基本的に駆動電源が必須条件でその多くは、仮に災害・事故

等で、計器への電源供給が出来なくなると、センサが稼働せず計測自体が不能になり

正しい状態監視が出来ず、致命的な事態を生ずることが懸念される。

2.2 目的

色々と長所も多く、現在でも国内で 1,000万個近く生産されている機械式計器であ

るが設備点検の面では遅れていることが多い。工場の製造設備や、大規模商業ビルの

機械室等には、ボイラー・熱交換器等のエネルギー設備に、圧力計・温度計・流量計・

電力計などの無数の計器類が装備されており、これらは設備の状態を現場で監視する

目的で用いられている。

これらの孤立した既設の機械式計器を後付けユニットで IoT化し、各機器の稼働状

況をセキュアな遠隔監視で把握することを目的とする。

デジタル圧力計 写真 1 デジタル圧力計

6

計器の外観形状はいずれも似通っており、

並んでいると識別しにくい。 設備点検は手書きの点検表で管理されている場合が多い。

しかも熟練のメンテナンス技術者は不足している。

日常設備点検は大変な仕事、手間や人手がかかり、重要だけれど、

つい見過ごされがちな仕事。

日常管理が不十分とみられる事例

某ホテル駐車場内配管の圧力計

× 指針欠落

示度不良

×

図 3 現状の課題

7

3. プロジェクト概要

3.1 製品・サービス概要

3.1.1 後付け指針読取センサ

指針読取センサと近距離無線通信部を有するユニット式計器ガラスの交換と、外付

けの遠距離通信・電源(バッテリーor 環境発電)ユニットを追加設置することで既

設計器を IoT 化する。「後付け指針読取センサ・近距離通信ユニット部」は、後付け

で既設の計器の指針に取り付けられた磁石の回転角度を検出することで、圧力などの

測定値を情報端末(PDF)などに出力し巡回監視を実現する。また、「後付け遠距離通

信・電源ユニット部」は、「後付け指針読取センサ・近距離通信ユニット部」からの

データを受信し、IoT ゲートウェイに転送し、IoTによる遠隔監視を実現する。

3.1.2 高セキュア遠隔監視システム

先行開発済みのハイブリッド IoT圧力計を用いて OPC-UA対応の高セキュアで高信頼

通信の IoT化を実現する。OPC-UAとは産業オートメーション分野などにおける、安

全で信頼性あるデータ交換を目的とした相互運用を行うための標準規格。「OPC-UA

IoTゲートウェイ

ハイブリッド IoT 圧力計試作機

(基本部は開発済)

c.OPC-UA対応

遠隔通信

d.詳細設定ソフト

近距離通信

超小型薄膜

磁気センサ 情報端末(PDA)による巡回

点検ソフト(開発済)にも対応

a.後付け指針読取センサ・

近距離通信ユニット部

b.後付け遠距離通

信・電源ユニット

図 4 本プロジェクトで開発する製品

高セキュア遠隔監視システム 後付け指針読取センサ

8

対応」は、高いセキュリティ・高信頼性を要求するユーザーに対応を実現する。「詳

細設定ソフト」は、計器側の設定を行うためのソフトで計測送信頻度等をユーザーが

設定できるようにし、ユーザーの利便性向上を実現する。

3.2 ビジネスモデル概要

3.2.1 ビジネスモデル

A.販売

提供する製品・サービス

提供する製品・サービスは下記である。

・既存の計器に後付け装着できる「後付け指針読取センサユニット」

・後付け装着ではなく新規(交換)製品となる「計器」、

・「クラウドサービス」「保守点検サービス」等の各種サービスや、計測デ

ータの提供

製品・サービスの提供方法と対価の受領方法

製品・サービスの提供(販売)方法は下記を検討する。

・直販(計器を販売、後付けユニットを販売して製品対価を得る)

・代理店販売(計器を販売、後付けユニットを販売して製品対価を得る)

・リース販売

・サービス提供(クラウドサービス・保守点検サービス等。計器・後付ユニ

ットは安価・又は無料にして月々のサービス使用料を徴収する)

・データ提供(基本料+データ量に応じた金額を徴収する)

直販・代理店販売に加えて、リース販売による提供や、携帯電話のビジネス

モデル同様に、ハードは低価格もしくは無料配布等として、サービス使用料で

回収するモデル等も検討する。

9

製品・サービスの提供先

製品・サービスの提供先となるエンドユーザーは下記を想定する。

・建築系設備系・・・ゼネコン、サブコン、ビルメンテナンス企業

・工業設備系・・・各種のプラント装置メーカー

既設計器への後付けユニット、取り換え需要にはハイブリット IoT圧力計を

提供、あわせて周辺機器やクラウドサーバの利用権を販売し、顧客商流により

直販と代理店販売を選択する。

B.協業

サービスの提携先

クラウドサービスは、これまでに関西積乱雲プロジェクトで連携し、当社も

販売代理店として提供可能なベルチャイルド社のクラウドサービス「iBRESS」

を考えており、エンドユーザーから徴収した売り上げから利用料を支払う。

C.調達

部品供給元

部品の調達先としては、大阪市立大学辻本教授が代表を務める大学発ベン

チャー企業である(株)SIRCよりセンサとデバイスユニットを調達する。ま

た機械式圧力計の部品は従来からの圧力計部品メーカー、電子部品は既存取

引があり小ロット試作用の供給が可能な電子部品商社を検討する。

製品開発委託先

ハード委託先は、後付けセンサのキーデバイスとして薄膜磁気センサの技

術と試作用センサを持つ大阪市立大学と連携する。

ソフト委託先は、当社も参画企業としてこれまで約 2 年半、協業連携し、

既にいろいろな機器の接続実証を行い、事業化連携をとってきている IoT 分

野アライアンスグループの「関西積乱雲プロジェクト」と連携することで、

10

今後もスムーズな開発と事業化を進める。

図 5 ビジネスモデル

3.2.2 検証範囲

対象にする市場セグメント

対象にする市場セグメントとしては、主にビル、商業・公共施設の建築設備系と、

生産ラインを主とする工業設備(プラント)系の2系統を考えており、いずれも日常

設備点検を行う保守点検の分野がターゲットとなる。エンドユーザーの他、各種装置

メーカーも対象に検証する。また、海外市場のニーズ調査・ユーザーへのヒアリング

も実施する。

市場調査会社による評価

これら市場のニーズや、開発製品の需要度を確認検証する意味で、製造・建築分野

の B2B ポータルサイトを運営し、モニター会員数 40 万人を対象に国内最大級の業界特

化型アンケート調査会社を利用して調査評価検証を行う。

大阪市立大学

木幡計器

製作所

関西積乱雲

プロジェクト

エンドユーザー

・ゼネコン

・サブコン

・ビルメンテ

・プラントメーカ 部品

クラウド

環境

(株)SIRC

圧力計部品

メーカー

電子部品

メーカー

C.調達

委託

成果物

対価

対価

対価

販売

販売 代理店

対価

A.販売

B.協業

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展示会による評価

プラントメンテナンスショーなどの大型展示会出展によりヒアリングも実施する。

トライアル導入

当社取引先、および新たに開拓する顧客候補の企業のうち、2 社に対して設備点検

によるトライアル導入をお願いし、効果検証を行う。

12

4. 実施内容

4.1 製品開発と価値検証の実施内容

4.1.1 後付け指針読取センサの開発、検証内容

4.1.1.1 開発内容

(1)磁気抵抗素子のシミュレーションによる解析

指針に磁石を装着し、透明目盛覆い盤にセンサを実装するにあたって、指針(磁

石)、センサ、地磁気の単体モデル構築を行った。

想定したセンサの位置、磁石の位置で、指針(磁石)の位置(回転角)が正し

く検出できるかどうかを試作基板作成前にシミュレーションで確認するための

シミュレーションモデル構築を行った。

センサで指針の回転を検出可能であることの検証を行った。

(2)磁気抵抗素子を使った後付け可能な後付け指針読取センサ試作

指針取り付け磁石の検討試作、磁石取付方法の検討試作を行う。

既存の計器の指針に磁石を取り付けたことによる悪影響がないことを確認す

る。また、地磁気の悪影響に対する対策を検討する。

実際に磁気抵抗素子を使った事前確認用磁界検出基板を試作する。

事前確認用磁気検出基板とシミュレーション結果により、後付け指針読取セン

サユニット(基板)を開発した。

後付け指針読取センサユニット制御ソフトを開発した。

(3)磁気抵抗素子を使った後付け可能な指針読取ユニット評価と課題分析・対応

評価環境を構築し、地磁気の影響について検討を行った。。

後付け指針読取センサユニット(基板)を使用して指針に装着した磁石の回転

角の自動読み取り精度、地磁気の影響を評価を行った。

地磁気の影響が大きければ対策を行う。指針に磁石を付けたことに対する悪影

響の有無を検証し、磁石設計にフィードバックさせる。

13

(4)後付け遠距離通信・電源ユニット部開発

計器に後付けすることで遠距離通信を行う事が可能な後付け遠距離通信・電源

ユニット部の仕様・構造を検討し、機構、ハード(基板)を設計し、試作し、ソ

フト開発し、試作機を評価を行い、問題があればフィードバックし改善する。

4.1.1.2.検証方法

弊社及びトライアル導入先で技術的な評価を実施する。

・信頼性:

後付け指針読取センサを装着使用した状態で、機械式圧力計の製品技術基

準となる JIS B7505-1 アネロイド型圧力計に規定される性能検査を実施し、

すべての要件を満たすことを確認する。

・視認性:

後付け指針読取センサを直径 100mm の圧力計に装着使用した時に、目盛盤

の圧力値を示す数字が見えなくなっている割合を、実機の目視による確認

を実施する。

・計器指針自動読取精度:

実機に基準圧力を与え、自動で読み取る信号値と基準圧力値を比較評価す

る。

・遠距離通信の正確性:

遠隔地で実際に通信を行い、測定値を読み取って正しい値であるかを評価

する。

ユーザーに後付け可能な指針読み取りユニットのトライアル導入評価を依頼し

評価結果から課題を分析し課題対応を行う。

14

4.1.2 高セキュア遠隔監視システムの開発、検証内容

4.1.2.1 開発内容

ハイブリッド圧力計試作機を進化させた高セキュア・高信頼性遠隔監視システム

の開発を行う。ハード的には CPU の性能を向上させ、ソフト的には LINUX 対応し、

OPC-UA対応を行う。自立電源の開発、比較検討も行う。

さらに、アラートや測定間隔など遠隔監視に関する詳細設定が可能な詳細設定ソ

フトの開発を行う。

(1)高セキュア遠隔監視システム作成

システム・仕様・プロトコル検討を行う。機械式計器をデジタル出力する計器

を試作し、OPC-UAに搭載するためにCPUの性能を向上させた基板を設計・試作し、

ソフトに OS搭載し、OPC-UAを搭載する。

(2)高セキュア遠隔監視システム評価・改善

実際に高セキュアな遠隔監視システムを開発者が実機機能評価、製品の信頼性

評価、電気性能評価、各自立電源比較評価、低コスト化、性能分析評価試験など

を行い、問題点があれば改善する。

(3)詳細設定ソフト開発

特定の条件(例えば圧力値が設定値を超えるなど)でアラートを発生させたり、

測定のサンプリングや通信の間隔などユーザーの使い勝手を向上させる詳細設

定ソフトを開発し、評価を行う。

4.1.2.2 検証方法

・セキュリティ性、信頼性:

OPC Foundation が会員にのみ配布しているテストツール (テスト項目とし

ては、約 300~500項目の予定) でテストし、致命的問題が発生しないこと

を確認する。

実機使用による障害確認機能試験を弊社で実施、評価する。また、ソフトウ

15

ェア認証試験により、耐障害性評価を実施する。

・ユーザビリティ:

ユーザー企業へのアプローチにより、聞き取り確認を実施する。さらに、ユ

ーザー企業によるトライアル評価により、使い勝手の評価を行う。

4.2 ビジネスモデルの構築・運用と有効性検証の実施内容

4.2.1 ビジネスモデルの構築・運用活動

(1) マーケティング計画

・マーケティング計画の具体化

顧客ニーズを把握し、価格戦略、顧客戦略、ビジネスモデル設計を行う。

・販売先の明確化

販売先の明確化を行う。

・販売マテリアル作成

提案書、マニュアル、価格表などを作成する。

・コスト削減

部品調達先の最適化などによりコスト削減を行う。

(2) アプローチ/ヒアリング

ヒアリングと8件のアプローチを行い、その結果をフィードバックさせる。海

外市場のニーズ調査・ユーザーへのヒアリングも実施する。

(3) トライアル導入

トライアル導入のための資料作成、トライアル導入アプローチを行う。

(4) 展示会出展、アンケート調査

ニーズを調査するため展示会に出展しその結果をフィードバックする。

4.2.2 検証方法

弊社取引先および新規の導入候補先に対してアプローチを行い、仕様・ニー

ズについてヒアリング、リサーチを行う。導入候補先として、ゼネコン業界・

ボイラー業界・ポンプ業界・油圧業界を検討する。あわせて、調査会社による

ニーズ調査(インターネットによる弊社作成のアンケート調査)を実施し、仕

16

様・ニーズを評価する。

アプローチした中からトライアル導入候補を選定し、トライアル導入しても

らって実証実験を行う。仕様や使い勝手、保守点検の効果などを評価、フィー

ドバックしてもらい、ビジネスモデルの検証、ブラッシュアップを行う。

ヒアリング先・アプローチ先・トライアル先からのフィードバックにより、ビ

ジネスモデルの有効性を検証し、ビジネスモデルを改善する。

調査会社によるアンケート結果、展示会出展でのユーザー候補の意見を検討し、

ビジネスモデルを改善する。

17

5. プロジェクトの成果

5.1 製品開発と価値検証の成果

5.1.1 後付け指針読取センサの開発、検証結果

5.1.1.1 目標

既設の機械式計器に後付け可能な「後付け指針読取センサ」を開発し、保守

点検において計器の指針を自動で読み取り、遠距離通信でデータ送信すること

で、現状の目視確認と比べ、指針読み取りミス(含む記述ミス)を無くす。

・信頼性:

後付け指針読取センサを装着使用した状態で、機械式圧力計の製品技術基

準を 100%満たすこと。

・視認性:

後付け指針読取センサの装着により、計器の目盛板の圧力値を示す数字が

見えなくなっている割合が 1%以下であること。

・計器指針自動読取精度:

最大圧力値の 1%以下であること。

・遠距離通信の正確性:

遠隔地で正しく測定値が読み取ること。通信エラーがないこと。

5.1.1.2 開発結果

(1)シミュレーション解析結果

指針読取ユニットを開発するにあたって、センサの数、センサの位置、バイアス磁

石の強度、指針に取り付ける磁石の強度などを求める為、大阪市立大学にシミュレー

ションによる解析を依頼した。計器のシミュレーションモデルを作成し、電磁気シミ

ュレータである Maxwell を用いて電磁解析を行った。

その結果、磁気センサーの位置、数、磁石の強度などを算出でき、試作機に生かす

ことができた。

18

(2)後付け指針読取センサ試作結果

機械式圧力計の指針に磁石を取り付け、指針読み取りセンサユニットを透明板に後

付けで装着することで、指針の動きを磁界強度で検出し、圧力値に算出することが可

能な)後付け指針読取センサを開発した。

指針読取センサユニット機能ブロック図に示したように、大阪市立大学辻本研究室

の磁気抵抗センサー(辻本デバイス)とアナログ回路、BLE部などからなり、電源

はリチウムコイン電池を外付けする。

図 6 指針読取センサユニット機能ブロック図

今回の試作機はシステム構成に示したように計器の指針データは近距離通信(BLE)

で「後付け遠距離通信・電源ユニット」に送信される。

「後付け遠距離通信・電源ユニット」から遠距離通信(LoRa 方式)で遠く離れたゲ

ートウェイに送信を行う。ゲートウェイは OPC-UA で高いセキュリティでPCに送ら

れる。

図 7 システム構成

19

今回作成した後付け指針読み取りセンサユニットの写真である。

写真 2 後付け指針読取センサユニット

今回試作した後付け指針読取センサユニットの基板外形図である。

直径 25Φと小さいため、目盛板の視認性を妨げることはない。

磁気抵抗センサ アナログ回路

(オペアンプ)

BLE モジュール

20

図 8 センサユニット外形図

今回試作した後付け指針読取センサユニットのビーコン通信フォーマットのフォ

ーマットを示す。消費電力を抑える為、指針の角度計算はゲートウェイで行う。

図 9 ビーコン送信フォーマット

21

(3)後付け指針読取ユニット評価結果

写真 3 評価器

指針読取センサーユニットを計器の透明板に貼り付け、圧力ポンプで実際

に圧力を与え、2つの磁気センサの出力から以下の式で回転角度を求め、圧

力値を求め基準圧力計と比較する。

22

圧力値 = 最大圧力値 * θ / 270

今回用いた算出式。

23

0MPa=0° 5MPa=90° 10MPa=180° 15MPa=270°

0MPa=0° 5MPa=90° 10MPa=180° 15MPa=270°

24

今回の測定では、実際の圧力と比べ、誤差が 2%強と目標よりも大きかった。

バイアス磁石の取り付け精度向上やキャリブレーションにより改善を行い、

誤差を小さくする予定である。

25

(4)後付け遠距離通信・電源ユニット部開発結果

計器や配管等にカチュウシャ式留め具等で後付け固定が可能な、遠距離通信用のユニ

ットと遠距離通信に要する電源(バッテリ、自立電源等)から構成され、現場の機械装

置や配管に数多く既設され孤立している現場監視用機械式計器類を安価に IoT ネットワ

ーク化し遠隔監視を可能にする「後付け遠距離通信・電源ユニット」を開発した。

・遠隔通信ユニット

写真 4 遠隔通信ユニット 計器に付けたところ

26

写真 5 遠距離通信ユニット 単体

27

工場向けモデル:

広い工場内で使用し、データサンプリング速度が遅いため 920MHz LoRa

方式で開発した。

病院向けモデル:

狭い機械室で使用し、データサンプリング速度が工場モデルより早いため、

920MHzwi-sun 方式で開発した。

電源ユニット部では、試作ではリチウム電池、バッテリー、DCDC コンバー

タから構成されるものを開発したが、現在大手総合電機メーカーと太陽電池

を使った電源を開発中である。

5.1.1.3 価値検証結果

・信頼性:

大手製鉄会社実証実験、及び社内で確認。

90%達成。移動により測定誤差が大きくなる課題があり、キャリブレーショ

ンを行う事で達成見込み。

・視認性:

大手製鉄会社実証実験、及び社内で確認。

目盛が隠れることがなく達成。

・計器指針自動読取精度:

社内で確認。

最大圧力値の 2%誤差があり、バイアス磁石の接着後の磁性化や

キャリブレーションソフト改善などで対策を行う事で達成見込み。

・遠距離通信の正確性:

大手製鉄会社での検証結果、遠隔地で正しく測定値が読み取れない問題が

あり、ソフト対応を行う事で目標達成見込み。

28

5.1.1.4 作成物

大阪市立大学磁気抵抗素子のシミュレーションによる解析報告書

後付け磁気指針読み取りセンサユニット 試作機

磁石(バイアス磁石及び指針取り付け磁石)

後付け遠隔通信ユニット 試作機

5.1.2 高セキュア遠隔監視システムの開発、検証結果

5.1.2.1 目標

発電所など設置場所によっては、計器の IoTシステムに対して情報の暗号化な

どセキュアな遠隔監視が要求される。インダストリー4.0の推奨する OPC-UA

に対応することで、OPC-UAのセキュアで拡張可能な利点をユーザーに提供す

る。

また、詳細設定(データ計測送信頻度・アラート等)が可能なソフトを開発す

ることにより、ユーザーの利便性を向上させる。

・セキュリティ性、信頼性:

OPC-UAに対応し、OPCが規定するテストで致命的問題の発生確率を 0% に

する。

予期せぬ事象に対する安全性を確保し、障害発生率を 1%以下に抑える。

・ユーザビリティ:

ユーザーの利便性を向上する

5.1.2.2 開発結果

(1)高セキュア遠隔監視システムの作成結果

今回開発したシステムは、以下に示したように、機械式圧力計を後付け指針読み取

りユニットと後付け遠距離通信ユニット(通信方式は LoRa 方式)によって、工場内

の制御ネットワークを行い、IT系ネットワークの接続には OPC-UAを搭載することで

高いセキュリティを有するシステムを開発した。工場内の制御ネットワークと IT 系

ネットワークの接続がOPC-UAを使うことで安全に接続可能。

29

OSP 2017 (OPC-UAの集い)に出展し、各社の相互接続テストを行った。

10数社の多様なデバイスとOPC-UAで相互接続できているのを確認できた。

30

(2)高セキュア遠隔監視システム評価改善結果

下記テストを行った結果、問題発生は0であった。

・OPC UAプロトコルの準拠テスト

・暗号化・復号化テスト

・ユーザー認証テスト

・値の読込みテスト

・値の変更通知テスト

31

5.1.2.3 価値検証結果

・セキュリティ性、信頼性:

OPC-UAに対応し、OPCが規定するテストで致命的問題の発生確率を 0% に

する目標は達成。OPC-UA に対する秘匿ノウハウであるため詳細は非公開。

現在、通信トラブルが発生しており、障害発生1%以内にすることは現時点

では達成していないがソフトなど改善により達成する見込み。

・ユーザビリティ:

ユーザーの利便性を向上する目標は、トライアルに協力して下さった大手

製鉄会社や協力先の病院(医療用ガス商社)の要望を盛り込んだことで利

便性は向上。よって、達成。

32

5.2 ビジネスモデルの構築・運用と有効性検証の成果

5.2.1 目標

顧客候補を明確化してアプローチし、事業化にあたっての課題を定義して、

ヒアリングやトライアル導入による評価・検証を行った

・顧客候補へのアプローチ 8件

・トライアル導入・評価 2件

5.2.2 構築・運用結果

(1)マーケティング計画

(1-1)販売先の明確化

販売先候補(アプローチ先)を開拓するため、以下を実施とした。

・既存顧客や代理店、および既存顧客からの紹介

当社の既存顧客である、産業・医療ガス業界の業者や、配管・管材業界の業者・

商社を販売先候補としてリストアップした。さらに既存顧客から、本製品に興味

がありそうな顧客候補を紹介してもらった。

・専門家、メンター、関西積乱雲プロジェクトからの紹介

医療ガスの使用従量課金のビジネスモデル検討をすることとし、長年業界に従事

され医療ガス業界に詳しく、現在、弊社営業支援に協力を頂いている医療ガスに

詳しい専門家に、病院における医療ガスの仕入と、患者さんに対して医療報酬を

レセプト積算する収支業務の実態についてヒアリングを行った。

また、医療ガスの専門家から医療ガス商社を、メンターから大手ゼネコン業種を

紹介してもらった。関西積乱雲プロジェクトの元メンバーから大手ガス商社を紹

介してもらった。

・展示会やマッチングイベントからの開拓

各種展示会やマッチングイベントに参加し、本製品に関心を持つ販売先候補の開

拓を行った。

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(1-2)販売マテリアル作成

販売先候補へのアプローチに向けて、下記の準備を実施した。

・販促プレゼン資料の作成

・デモ機材およびデモシナリオの作成

・営業・販促体制の強化

(2)アプローチ/ヒアリング

(2-1)アプローチ先の開拓結果

アプローチ先 業種 アプローチ時期 開拓手段

A社

配管工事業 2017 年 1月 既存顧客やその紹介

B社

管材商社 2017 年 1月 既存顧客やその紹介

C社

プラントメンテナンス

部門

2016年 12月

~2017 年 3月

既存顧客やその紹介

D社

ガス大手 2017 年 2月 専門家等からの紹介

E社

医療ガス供給会社 2017 年 2月~9月 専門家等からの紹介

F社

土木工事関連機器メー

カー、レンタル

2017 年 3月~5月 既存顧客やその紹介

G社

施設運営・機器レンタ

2017 年 3月~8月 専門家等からの紹介

H社

総合ゼネコン 2017 年 3月~5月 専門家等からの紹介

I社

プラントメンテンス業 2017 年 3月~5月 専門家等からの紹介

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J社

医療ガス設備メーカー 2016年 12月

~2017 年 3月

既存顧客やその紹介

K社

産業ガスメーカー 2017 年 4月 既存顧客やその紹介

L社

産業・医療ガス系商社 2017 年 5月 専門家等からの紹介

M社

医療ガス供給会社 2017 年 7月~9月 既存顧客やその紹介

表 1 アプローチ先一覧

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(2-2)海外市場(シンガポール)でのニーズ調査結果

【要旨】

本事業の海外向けビジネスモデルを検討するため、シンガポールにおける情報収

集を目的として、現地企業や大学等との面談やプレゼンテーションを行った。

1.出張者

代表取締役 木幡 巌

2.日程及び用務先

7月 25日(火) 羽田空港発 ⇒ チャンギ空港(シンガポール)着

7月 26日(水) ・SAMURAI FOOD PTE LTD との面談

・A*STAR(Agency for Science and Technology Research)

との面談

7月 27日(木) ・National Technological University でのプレゼンテー

ション実施

・National University Hospital で大学病院での導入可

能性についてヒアリング実施

7月 28日(金) ・National University of Singapore で現地企業も含め

たディスカッション実施

・Focustech Venturesでのプレゼンテーション実施

7月 29日(土) ・ビジネスプランコンテスト TECH PLANTER in Singapore

でのディスカッション実施

チャンギ空港(シンガポール)発 ⇒

7月 30日(日) ⇒ 羽田空港着

3.概要

7月 26日には、SAMURAI FOOD PTE LTD との面談、および、A*STAR(Agency for Science

and Technology Research)との面談し、それぞれ議論を実施した。

7月 27日には、National Technological University で事業プレゼンテーションを

実施し、シンガポール及び東南アジア地域向けの本製品・サービスに対する意見をも

らった。

続いて、National University Hospital で、大学病院での本製品・サービスの導

入可能性についてのヒアリングを実施した。

7月 28日には、National University of Singapore でのディスカッションを行い、

現地企業も含めての議論を実施した。

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続いて、Focustech Ventures にて事業プレゼンテーション実施し、シンガポール

及び東南アジア地域向けのビジネスモデルについての意見をもらった。

7月 29日には、ビジネスプランコンテスト TECH PLANTER in Singapore でのディ

スカッション実施、本製品・サービスおよびビジネスモデルについての意見をもらっ

た。

4.調査結果

今回のシンガポール出張は、海外(特にシンガポールを含む東南アジア地域)向

けビジネスモデルを検討するため、リバネス社のメンター支援により、シンガポー

ルでの情報収集と現地企業とのディスカッションを目的として活動した。

現地の企業や大学との議論を実施して、本プロジェクトの製品・サービスが、シ

ンガポール及び東南アジア地域においてもニーズがあることを確認できた。一方で、

東南アジア地域向けにビジネスをしていく上では価格面での課題や、機器設置に関

しては盗難対策などがあることもわかった。今後は廉価版の開発等、低価格な製品・

サービスや防犯対策を実現する施策が必要になると思われる。

今回の成果を活用し、今後の活動では具体的な海外向け事業計画の策定等、グロ

ーバルなビジネスモデル構築を加速することが期待できる。

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7月 27日、National Technological University でのプレゼンテーションの様子

写真 6 プレゼンテージョンの様子

7月 27日、National University Hospitalでのヒアリングの様子

写真 7 ヒアリングの様子

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7月 28日、National University of Singapore でのディスカッションの様子

写真 8 ディスカッションの様子

7月 28日、Focustech Ventures でのプレゼンテーションの様子

写真 9 プレゼンテーションの様子

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7月 29日、TECH PLANTER in Singapore での会場の様子(ディスカッション実施)

写真 10 TECH PLANTER in Singapore での会場の様子

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(参考)下の写真は導入可能性のあるマンション群。シンガポールは国の支援で同時

期に建てられており、取り替え不要で計器類の遠隔監視ニーズがあることをヒアリン

グできた。

マンション群(昼)

マンション群(夜)

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(3)トライアル導入

トライアル導入先の概要を下記に示す。

トライアル先 導入内容

大手製鉄会社 大手製鉄会社のガス移送ラインにトライアル導入し、

ガス配管のモニタリング監視を実施

病院 病院の医療ガス設備にトライアル導入し、ガス消費量

のモニタリング監視を実施

表 2 トライアル導入・評価

(3-1)工場向けのトライアル導入

工場向けとして、大手製鉄会社のガス移送ラインでトライアル導入を実施した。

・導入の目的

配管の使用ガスの圧力損失を監視するため、遠隔監視が必要。圧力値が小さく、

汎用の接触式センサは使えないので、大阪市立大学センサを使って実証を行う。粉

塵が多い過酷な環境での実証となる。まずは、通信テストを行ってから、遠隔監視

の検証を行う。遠距離に強いと言われるLoRa(920MHz)を使用する。

・導入実証環境

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写真 11 920MHz LoRa 方式 通信試験

写真 12 大手製鉄会社トライアルで使用した計器

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写真 13 大手製鉄会社モニタリング画像

写真 14 OPC-UA 対応ゲートウェイ

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(3-2)病院向けのトライアル導入概要

病院向けとして、大阪市内にある病院のガス設備でトライアル導入を実施した。

・導入の目的

医療用ガスボンベの残圧および流量の遠隔監視を行う。比較的狭い機械室で使用

し、データサンプリング速度も早いため、920MHz wi-sun方式の通信を使用する。

・導入実証環境

写真 15 病院 圧力計

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写真 16 病院 実証風景 圧力計&流量計

写真 17 病院 圧力計 実証試験

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写真 18 病院 圧力流量モニタリング画面

(4)展示会出展

(4-1)展示会

1.2017/6/14 大阪産業創造館 3F・4Fにて開催の「センサ/IoT技術展 2017」に出

展。試作機の展示を行った。

写真 19 センサ/IoT 技術展 2017

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2.2017/6/26 マクニカ本社にて 積乱雲プロジェクト主催「IoT のセキュリティを

考える集い in 新横浜」に出展。試作機の展示を行った。

写真 20 IoTのセキュリティを考える集い in 新横浜

3.2017/8/3-8/4 ベイコム総合体育館にて開催の「あまがさき産業フェア 2017」に

出展。試作機の展示を行った。

写真 21 あまがさき産業フェア 2017

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4.2017/9/9 日本ユニシス本社にて開催のリバネス社主催「第 5 回デープテックグ

ランプリ」にて、試作機の展示を行った。

5.2017/9/14 中央会計セミナールームにて開催の積乱雲プロジェクト主催「OSP2017

“OPC UA を体験する集い”」にて試作機の展示を行った。

写真 22 OSP2017 “OPC UA を体験する集い”

(4-2)事業プレゼンテーション ピッチ

1.2017/1/28 滋賀県・リバネス社主催「滋賀テックプランター最終選考会」にて 事

業プレゼンを行い 企業賞(オムロン賞)を受賞。

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写真 23 滋賀テックプランター最終選考会

2.2017/7/27 シンガポールの NTU 南洋工科大学のベンチャーインキュベーション

施設と、2017/7/28フォーカステックベンチャーズにおいて事業プレゼンを行った。

写真 24 事業プレゼン

(4-3)市場ニーズアンケート調査

インターネット調査アンケートを使って市場ニーズ調査を実施し、約 200 社から

回答を得た。具体的には、開発製品に対する現場ニーズや有用性、価格需要度、設

置環境(無線環境の有無)等について調査した。調査結果を巻末の参考資料1に示

した。

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5.2.3 有効性検証結果

(1)アプローチ/ヒアリングによる検証結果

アプローチ目標8件に対し13件を実施し、目標を達成した。

アプローチ先 業種 ヒアリングによる検証結果

A社 配管工事業 実際に蒸気配管など、経路末端でのバルブ設置

が理想であるが、バルブが 10 万程度なので、

各系統で末端設置をするとコスト面で課題が

あり、設置が難しい現実があるので、低コスト

で遠隔モニタリングが出来るとかなりのニー

ズがあるのではという見解

B社 管材商社 配管や装置に既設の計器に関しては、保証関係

や運転状況により取替が困難な場合も多いの

でニーズがある

C社 プラントメンテ

ナンス部門

主な客先となる石油精製プラントではほとん

どが防爆仕様となるので、現状は採用が困難で

ある。工場内での水圧気密テストの遠隔監視に

ついては、部分的な設置となりクラウドシステ

ムではランニングコストが課題となる。

D社 ガス大手 防爆仕様が重要

温浴施設の炭酸泉の炭酸ガスの監視などにも

ニーズがある

E社 医療ガス供給会

各納入先病院のガス消費量を監視するニーズ

が現在、全社的な課題となっており、丁度検討

するのには、とても良いタイミングであり、現

場ニーズに応じた監視の最適な方法を共同し

て検討することを本社提案したい

F社 土木工事関連機 上下水道管工事用の止水用具を販売されてい

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器メーカー、レ

ンタル

るが、管径が大きく人が管内作業する際の安全

確保のための圧力監視のニーズがある

G社 施設運営・機器

レンタル 同社顧客の数社が興味を持っており、紹介を受

けた

H社 総合ゼネコン メンテナンス部門には、既設計器の IoTはニー

ズがある。

I社 プラントメンテ

ンス業 プラントメンテナンス分野は人材不足であり、

設備保全での遠隔監視にはニーズがあるが、既

設計器の IoT化は望まれる

J社 産業ガス設備メ

ーカー 大手医療用液化酸素供給設備メーカーであり、

医療ガスモニタリングにはニーズがあるとの

こと

K社 産業ガスメーカ

ー 現状自社の独自システムでガスの遠隔モニタ

リングを既に実施しており、この分野の同社へ

の提案参入は難しいが、液化ガスモニタリング

においては、液量検知に課題があり、この分野

での良い物があれば採用連携の可能性がある。

L社 産業・医療ガス

系商社

ガスの供給においては、ほとんどがユーザーへ

の直取引となり、ヒアリングが行いやすいこと

もありニーズや課題を収集してみたいとのこ

と。

M社 医療ガス供給会

LGC(液化酸素ガス)ボンベの圧力のモニタリ

ングよりは、シリンダーと呼ばれる気体酸素ボ

ンベを利用する小規模の病院施設の酸素ガス

モニタリングの方が、より必要性を感じるとの

ニーズヒアリングが出来た。この場合の圧力値

は 15MPa となる。

表 3 ヒアリングによる検証結果

52

また、専門家へのヒアリングの結果、病院ではその殆どは厳密な収支対比集計がさ

れておらず、現場での機器接続時の酸素漏れによるロスや、医療従事者の消費量の誤

計測や、計測請求処理漏れがあるなど、実消費量の厳密な計測把握がきっちり行われ

ていないのが大半である現状(薬事医療報酬請求はこうしたロスを当前と見込んで仕

入の 3割増請求が可能であるのが正規な現状である)で、しかしそれでも意外にも場

合によってはマイナス収支となっている場合も過去には、ある病院での厳密な計測調

査結果で判明した事実があるとのこと。ガス供給施設の供給源の供給量計測と、各病

棟・病室や処置室での末端での消費量計測のモニタリングを病院側の用度部門と医事

部門の双方でのガスの消費収支が計測積算モニタリング出来ることで、いろいろな合

理化の可能性があることが想像される。また既存の医療ガスの遠隔監視システムにつ

いては、何れも高コストであり、あまり普及が進んでいないという現状についてわか

った。

(2)トライアル導入検証結果

トライアル導入目標2件に対し2件を実施し、目標を達成した。

トライアル先 評価結果

大手製鉄会社 大手製鉄会社のガス移送ラインにトライアル導入し、

ガス配管のモニタリング監視を実施した。

機械式計器の IoT 化といううえで好評であったが、現

場からデータが送られていないというシステム的な課

題が発生した時に原因の特定に時間がかかった。

問題点が発生した時に原因を特定する仕組みを組み込

むことで対応を行う見込み。

また、現場で測定データに狂いが発生しソフトキャリ

ブレーションを入れることで対応する見込み。

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病院 病院の医療ガス設備にトライアル導入し、ガス消費量

のモニタリング監視を実施した。

ユーザーインターフェースに対しては好評であった

が、データが通信できないという障害が発生した。

問題点が発生した時に原因を特定する仕組みを組み込

むことで対応を行う見込み。

表 4 トライアル導入検証結果

(3)ビジネスモデル検討結果

ヒアリングやトライアル導入を実施した結果、工場向け/病院向けのビジネスの

特徴にあわせて、それぞれに適したビジネスモデル(販売モデル)を策定した。

・工場向けビジネスモデル:

センサなどのハードは安価で提供し、クラウドを活用した遠隔監視モニタリン

グなどのサービス利用料を月額課金して利益を得るモデルとした。現地でのメン

テナンス業務は顧客の系列メンテナンス会社と連携して実施することで、人件費

コストを抑えながらビジネス規模を拡大できる。

・病院向けビジネスモデル:

病院に直接販売するのではなく、病院との強力なコネクションを持つ医療ガス

販売会社などを代理店として、代理店との協業で販売する。代理店のサービスに

オプションとして組み込み、サービス利用に応じて代理店から対価をもらうモデ

ルとした。営業活動は代理店にまかせることで、人件費コストの削減が可能とな

る。

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6. 事業化に向けた課題と展望

6.1 製品・サービスの課題と展望

現状の課題と展望を下記に示す。

①精度 現行の精度

現行の誤差は2%強で調整に時間がかかるが、新キャリブレーション方式を行

う事で精度を 1.6%以内に抑えると共に調整時間の短縮化を行う予定。

②価格

量産効果と部品点数の削減でコストを 1/3に抑えたい。

③信頼性

指針の読み取り値、通信が誤動作することがあるので、ソフトの修正を行い信

頼性をアップしたい。

④生産性 バイアス磁石の取り付け

バイアス磁石の取り付け精度が現行では精度や調整時間に大きく影響する。取

り付けてから磁化することで精度を上げると同時に調整時間を短縮する予定。

まずは、後付けでなく自社製品に取り付けたものを販売し、次に自社製品に後

付け可能とし、さらには他社製品に後付け可能としたものの発売を行い、既設計

器の IoT化で、より安心・安全な社会への実現に寄与していく。

6.2 ビジネスモデルの課題と展望

工場向け/病院向けのビジネスの特徴にあわせて、それぞれに適したビジネスモデ

ル(販売モデル)を策定した。

工場向けには、ハード単体の販売ではなく、サービス利用料を月額課金して継続的

に対価をもらうビジネスモデルを策定した。一方で、病院向けには、病院と強力なコ

ネクションを持つ代理店と協業してサービスを提供、販売していくビジネスモデルを

策定した。

ただし、ビジネスを展開していくためには、導入実績が大きく不足しており、導入

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事例の積み上げが何よりも重要になる。今後は、営業活動をさらに強化して製品・サ

ービスをアピールし、導入先を着実に増やして導入事例を積み上げていくことが必要

である。

また、自社単独では営業やメンテナンスなどの活動にかけられる人的リソースに限

界があり、ビジネス規模を大きくしていくことが難しい。代理店やパートナー社の開

拓も同時に進めて、協業の枠組みについても整備が必要となる。

さらに将来の展望として、ビジネスの基盤となる技術・体制が確立できた時点で、

ビジネス規模をさらに大きく展開していくため、営業・サービス販売に特化した新会

社を設立し、製品開発とサービス販売の役割分担を明確化する体制を構想した。

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7.付録

7.1用語説明

用語 説明

ビジネスモデル 企業が製品・サービスを提供し、その対価を顧客が支払い、企業

が利益を得るまでの一連の流れを構造化したものであり、本事業

では、以下のような要素をビジネスモデルに組み込むものとす

る。

(1)誰に対して、どのような価値を提供するのか

(2)どのような資源を使ってどのように提供するのか

(3)どのような協業の仕組みをとるのか

(4)どのような流通経路と価格体系をとるのか

OPC-UA 産業オートメーション分野などにおける、安全で信頼性あるデー

タ交換を目的とした相互運用を行うための標準規格。ドイツのイ

ンダストリー4.0 では、工場内の制御ネットワークと IT系ネッ

トワークの接続に関する推奨通信規格として採用している。

LoRa サブギガ帯を利用した長距離・低速・低消費電力通信。

LoRa という規格名は、「長距離」を意味する英語“Long Range”から来

ている。少ない出力で、長い距離での通信ができるという技術。最大

8km 程度という長距離を、低出力の電波を使ってやりとり可能。

表 5 用語説明

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7.2関連 Webサイト

開発成果を公開している Webサイトや、開発成果に関わる Webサイトがあれば、

(本文中に記載の場合も)本項にその URL を必ず記述してください。

日刊工業新聞 2017 年 8月 30日

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00441079

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参考資料 1 「圧力計などの機械式現場計器の確認、点検記録業務」に関するアン

ケート

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