口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1...

12
1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 20131220日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ り、 周囲組織との隔離がなされず、 炎症が 組織間隙を急速に広がり、局所がびまん性 に腫脹した状態。 膿瘍:組織間隙や組織の崩壊によって生じ た空洞に、限局性に膿が貯留した状態。 蜂窩織炎になるか膿瘍になるかは、感染局 所の解剖学的特徴、起炎菌の性質、生体防 御機構の強弱などによって異なる。 50代・女性 口底蜂窩織炎・膿瘍 造影CT 単純CT 造影CT 単純CT 造影CT 単純CT 造影CT 粉瘤 皮膚真皮内または皮下に生じた嚢胞であ り、表皮が真皮内に迷入し壁を形成した 真性と、毛嚢や皮脂腺などの皮膚付属器 の貯留嚢胞である仮性とに大別される 皮膚に由来するため腫瘤は皮膚直下に局 在する。

Upload: doanhanh

Post on 03-Mar-2019

218 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

1

口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断

2013年12月20日(金)

蜂窩織炎・膿瘍

• 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こり、周囲組織との隔離がなされず、 炎症が

組織間隙を急速に広がり、局所がびまん性に腫脹した状態。

• 膿瘍:組織間隙や組織の崩壊によって生じた空洞に、限局性に膿が貯留した状態。

• 蜂窩織炎になるか膿瘍になるかは、感染局所の解剖学的特徴、起炎菌の性質、生体防御機構の強弱などによって異なる。

50代・女性 口底蜂窩織炎・膿瘍

造影CT単純CT

造影CT単純CT

造影CT単純CT

造影CT粉瘤

• 皮膚真皮内または皮下に生じた嚢胞であり、表皮が真皮内に迷入し壁を形成した真性と、毛嚢や皮脂腺などの皮膚付属器の貯留嚢胞である仮性とに大別される

• 皮膚に由来するため腫瘤は皮膚直下に局在する。

Page 2: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

2

単純CT

US横断像

類皮・類表皮嚢胞

• 類皮嚢胞は異所性原基から発生する疾患であり、胎生期に外胚葉成分が迷入することによって生ずる皮膚様の組織からなる嚢胞である。皮膚付属器官のないものを類表皮嚢胞という。

• CT像では境界明瞭な低濃度域としてみられる。MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で境界明瞭な高信号域としてみられる。

• 類皮嚢胞は皮膚付属器官により病巣内部が不均一な信号を呈することがある。

T1強調MRI T1強調MRI

脂肪抑制T2強調MRI 脂肪抑制造影T1強調MRI

10代・女性 類皮嚢胞

T1強調MRI

T1強調MRI T1強調MRI

単純CT

甲状舌管嚢胞

• 胎生期の甲状舌管の遺残に由来する舌骨近傍の正中に好発する嚢胞であり、先天性頸部病変のうち70%と最も高頻度で、頸部腫瘤として良性リンパ節腫大についで多い。

• 若年者に多く、50%が20歳までにみられる。好発部位は舌骨近傍の正中である。

T1強調MRI T2強調MRI

T2強調MRI 造影T1強調MRI

Page 3: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

3

鰓嚢胞

• 胎生期の鰓裂に由来する嚢胞で、リンパ上皮性嚢胞ともよばれる。

• 第2鰓嚢胞は最も高頻度であり、鰓原性嚢胞の90%である。病変の好発部位は下顎角部付近であり、典型的には顎下腺の後方、胸鎖乳突筋内側、頸動脈鞘の側方に位置する。通常10歳以下であることが多く、性差はみられない。

• 画像所見はCT にて境界明瞭な低濃度域としてみられ、悪性腫瘍のリンパ節転移との鑑別が重要である。MRIでは境界明瞭なT1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号を呈し、水に近い信号を呈する。

20代・女性,主訴:左側顎下部の無痛性腫脹

造影CT

ガマ腫 ranula

• 舌下腺の導管閉塞による唾液の停滞、溢出などによって生じた口底部の嚢胞。

• 肉眼的には口底部の粘膜面が盛り上がった柔らかい膨隆としてみられ、青みがかった半透明色を示す。

• 顎舌骨筋との位置関係により舌下型と顎下型(plunging ranula)に分類される。

• 画像所見はCTにて境界明瞭な水に近い低濃度を示し、MRIではT2強調像で著明な高信号を示す。

50代・女性

30代・女性 主訴:顎下部の無痛性腫脹T1強調MRI 脂肪抑制造影T1強調MRI

脂肪抑制T2強調MRI

Page 4: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

4

血管腫・リンパ管腫

• 頭頸部は血管腫およびリンパ管腫の好発部位である。

• 従来、血管性の腫瘍と奇形を含めた先天的で多様な血管病変が血管腫と呼ばれてきたために混乱を来してきた。

• MullikenとGlowackiは臨床症状や病理組織所見、自然経過から、こうした病変を血管腫と血管奇形に分類した。

• 血管腫は、内皮細胞の急速な増殖期があり、これに続く緩徐な退縮期があることが特徴である。これに対して血管奇形は、内皮細胞の異常増殖を伴わない先天異常に属する病態であり、真の腫瘍ではない。

• MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で著明な高信号を呈し、内部に網状のflow voidを呈するのが典型的所見である。また単純X線像やCTにて類円形の不透過像(静脈石)が複数みられることがある。

• リンパ管腫の画像所見はCTでは水に近い低濃度を呈し、造影により隔壁や一部充実部に増強効果を認めることがある。MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で中~高信号を呈する。

20代・女性

T2強調MRI 単純CT骨表示

異所性甲状腺

• 胎生期における、甲状腺原基の舌盲孔から舌骨下頸部への下行の異常によるもので、舌根部(舌盲孔部)や前頸部(甲状舌管部)に認められる。

• 異所性甲状腺には甲状腺が正常の位置に認められる場合と認められない場合とがあり、他の部位での甲状腺組織の有無の診断を行う必要がある。

• 単純CTでは境界明瞭なほぼ均一な高濃度を、MRIでは筋肉と比較してやや高信号を呈する。

Page 5: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

5

T1強調MRI単純CT 造影CT

神経鞘腫

• 神経系腫瘍は口腔領域では舌に、頸部では頸動脈間隙に多く認められる。

• 代表的なものは神経線維腫と神経鞘腫であり、両者とも孤立性のものが多く比較的境界明瞭な小結節性腫瘤として発見される。但し、神経線維腫には一部浸潤性のものや、von Recklinghausen病の一部として多発性に発症するものもある。

• 神経鞘腫はCT・MRIともに、境界明瞭な紡錘形の腫瘤として描出され、周囲組織を浸潤することなく圧迫・偏位させる。

• MRIでは内部性状は病理組織像に反映して様々であるが、多くはT1強調像で筋と等信号でT2強調像では高信号を示す。

• まれに、血管に富んでいるタイプでは内部にflow voidが認められる。この場合、傍神経節腫との鑑別が難しい。

造影CT T1強調MRI

脂肪抑制造影T1強調MRI T2強調MRI

40代・女性 口蓋神経鞘腫

単純CT骨表示 T1強調MRI

脂肪抑制造影T1強調MRI T2強調MRI

脂肪腫

• 脂肪腫は、弾性軟で可動性を示し、粘膜表面に発症したものは僅かに黄色を呈す境界明瞭な腫瘤である。

• 口腔内の好発部位は頬粘膜、舌及び口底である。口腔に発症するものの大部分は粘膜下組織に存在する。頸部では、後頸部に発生することが多い。

• 被膜を持つ成熟した脂肪細胞の集合体であり、代表的なタイプの腫瘍は境界が極めて明瞭で、周囲組織への浸潤傾向は示さない。

• 画像上、正常な皮下脂肪組織と同様な濃度の腫瘤として描出される。

Page 6: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

6

40代・男性、主訴:左側頬部の腫瘤

傍神経節腫

• 胎生期の神経堤傍神経節(neural crest)細胞に由来する緩徐な発育を示す良性腫瘍。

• 総頸動脈分岐部に発生したものは頸動脈小体腫瘍と呼ばれ、口腔顎顔面領域で遭遇する機会が多い。

• 造影CT及びMRIにおいて極めて強い造影効果が認められ、内頸動脈と外頸動脈を分離するように増大する腫瘤像としてみられる。MRI上では、いわゆるsalt-and-pepper様の所見を呈する。これは、腫瘍内の血管がflow voidとして描出され、同時に腫瘍部分の信号が高信号として認められることによる。

T1強調MRI T2強調MRI

T1強調MRI MRA MIP

頸部リンパ節の疾患

1)顎下リンパ節 level IB2)オトガイ下リンパ節 level IA3)深頸リンパ節(1)上内頸静脈リンパ節 level IIA・B(2)中内頸静脈リンパ節 level III(3)下内頸静脈リンパ節 level IV(4)副神経リンパ節 level V(5)鎖骨上窩リンパ節 level V

4)その他のリンパ節(1)顔面リンパ節(2)耳下腺リンパ節(3)前頸静脈リンパ節(4)喉頭前リンパ節(5)気管前リンパ節

頸部リンパ節の名称と分類

IA

IBIIA

IIB

III

IV

VA

VB

IA

IBIIA

IIB

III

IV

VA

VB

浅頸部のリンパ節

日本癌治療学会編:日本癌治療学会リンパ節規約2002年より

Page 7: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

7

日本癌治療学会編:日本癌治療学会リンパ節規約2002年より

深頸部のリンパ節

左側の頸部リンパ節の分布図

Modern Neuroradiology Vol. 3 Computed Tomography of the Head and Neckより改変

内頸静脈

頸動脈

上内頸静脈リンパ節

顎下リンパ節

オトガイ下リンパ節

中内頸静脈リンパ節

下内頸静脈リンパ節

喉頭前・気管前リンパ節

副神経リンパ節

僧帽筋

胸鎖乳突筋肩甲舌骨筋

顎二腹筋前腹

顎二腹筋後腹

鎖骨上窩リンパ節

鎖骨

内頸静脈

頸動脈

上内頸静脈リンパ節

顎下リンパ節

オトガイ下リンパ節

中内頸静脈リンパ節

下内頸静脈リンパ節

喉頭前・気管前リンパ節

副神経リンパ節

僧帽筋

胸鎖乳突筋肩甲舌骨筋

顎二腹筋前腹

顎二腹筋後腹

鎖骨上窩リンパ節

鎖骨

頸部リンパ節の名称と分類

1.顎下リンパ節 submandibular node (SMLN) 顎二腹筋の前腹と後腹・下顎骨により囲まれた領域で、顎下隙・顎下腺の周囲で顎舌骨筋より表層に位置

口唇・鼻腔・頬部・歯肉・歯・口蓋・顎下腺からのリンパ流を受け、内頸静脈リンパ節群へ注ぐ

2.オトガイ下リンパ節 submental node両側顎二腹筋の前腹・舌骨・口腔底で囲まれた正中部の領域で、顎舌骨筋より表層に位置

下唇・歯肉前部・口腔底・頬部からのリンパ流を受け、顎下リンパ節や内頸静脈リンパ節群へ注ぐ

頸部リンパ節の名称と分類

3.深頸リンパ節

(1)上内頸静脈リンパ節(上内深頸リンパ節)

superior internal jugular node (SIJN) 顎二腹筋後腹と内頸静脈が交差する部分から下方で、common facial vein が内頸静脈に注ぐ部分まで

顎二腹筋後腹の直下に位置する最大のリンパ節は jugulodigastric node と呼ばれる上咽頭・口蓋扁桃・後咽頭リンパ節・耳下腺リンパ節・顎下腺からのリンパ流を受ける

3.深頸リンパ節

(2)中内頸静脈リンパ節(中内深頸リンパ節)

middle internal jugular node (MIJN) common facial vein から下方で内頸静脈とomohyoid mucsle が交差する部分まで最大のリンパ節は juguloomohyoid node と呼ばれ、舌からのリンパ流を受ける。

(3)下内頸静脈リンパ節(下内深頸リンパ節)

inferior internal jugular node (IIJN) 中内頸静脈リンパ節の下方で内頸静脈が鎖骨下静脈に注ぐ部分まで

頸部リンパ節の名称と分類

3.深頸リンパ節

(4)副神経リンパ節 spinal accessory node(5)鎖骨上窩リンパ節 supraclavicular node4.その他のリンパ節

(1)顔面リンパ節 facial nodes(2)耳下腺リンパ節 parotid nodes(3)前頸静脈リンパ節 anterior jugular nodes(4)喉頭前リンパ節 prelaryngeal nodes (5)気管前リンパ節 pretracheal nodes

頸部リンパ節の名称と分類

Page 8: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

8

正常リンパ節の構造• リンパ節は通常、扁平な楕円体のソラマメ状の形態をなしており、門(hilum)と呼ばれる陥凹を有する。

• 数本から数十本の輸入リンパ管が門以外の部位において被膜を貫き、リンパ洞へと合流する。リンパ洞には被膜直下の辺縁洞、髄質中で髄索の間に広がる髄洞とその間に位置する中間洞がある。リンパ液はこれらを灌流して門へと向かう。門からは1本から数本の輸出リンパ管が出ており、リンパ節に分布する血管や神経も主としてこの門を経由して出入りする。

• 全身にある約800個のリンパ節のうち、3分の1以上に相当する300個程度が頸部に存在するといわれている。

リンパ節の模式図

5mm

門から連続する樹枝状の血流がみられる(hilar pattern)

門部

造影CT T1強調MR

T2強調MR(脂肪抑制) 造影後T1強調MR(脂肪抑制)

顎下部(顎下リンパ節)の走査

下顎骨下縁に平行 下顎骨下縁に垂直

正常リンパ節の超音波像(Bモード)左顎下リンパ節 level IB

下顎下縁に平行 下顎下縁に垂直

長径

短径

Page 9: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

9

正常リンパ節の超音波像(ドプラ)左顎下リンパ節 level IB

下顎下縁に平行

門部

門から連続する樹枝状の血流がみられる(hilar pattern)

正常リンパ節の超音波像(Bモード)右上内頸静脈リンパ節 level IIA

短径

長径

頸動脈に垂直 頸動脈に平行

正常リンパ節の超音波像(ドプラ)右上内頸静脈リンパ節 level IIA

頸動脈に平行

門部hilar patternの血流

正常リンパ節の超音波像(Bモード)右中内頸静脈リンパ節 level III

短径 長径

頸動脈に垂直 頸動脈に平行

正常リンパ節の超音波像(ドプラ)右中内頸静脈リンパ節 level III

頸動脈に平行

門部hilar patternの血流

頸部リンパ節の疾患

• 最も代表的な病的所見はリンパ節腫脹である。• 原発性と続発性に分けられ、原発性のものにはリンパ節に原発する腫瘍や炎症等があり、続発性のものとしては、他臓器原発の腫瘍のリンパ節転移や、他臓器の炎症により生ずる二次的反応などがある。

• リンパ節腫脹の原因(1) 炎症性腫脹:急性化膿性、亜急性壊死性、伝染性単核球症、結核性、猫ひっかき病・トキソプラズマ症・野兎病・梅毒性、サルコイドーシス(2) 腫瘍性腫脹:悪性リンパ腫・白血病、悪性腫瘍のリンパ節転移(3) アレルギー性および膠原病:薬物アレルギー、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ(4) その他

Page 10: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

10

50代・女性 左上内頸静脈リンパ節の石灰化

リンパ節炎

• 正常リンパ節は扁平な形態を呈し、門部(hilum)が認められる場合が多い。門部は周囲の脂肪組

織と連続性のある陥凹として描出される。

• 一般に画像上、短径(最小断面径)が10mm程度以上のリンパ節は病的腫大像と判断されてい

る。

• 炎症性腫脹の場合にはリンパ節本来の楕円体の形態的特徴を残しつつ腫大し、門部が認められ

る場合が多いが、壊死性リンパ節炎や結核性リ

ンパ節炎では、内部が不均一となり、転移リン

パ節類似の所見を呈する場合がある。

60代・女性 口腔粘膜多発扁平上皮癌

右顎下リンパ節は短径1cmに達する類球形の腫大像で転移が疑われる。

脂肪抑制造影T1強調MRI

脂肪抑制T2強調MRI

造影CT

脂肪抑制T2強調MRI

1.2×0.9cm(短長径比0.75),hilumは不明瞭

5mm

病理組織所見:リンパ濾胞の過形成と洞組織球症 30代・女性 結核性リンパ節炎

造影T1強調MRI T2強調MRI

造影CT

Page 11: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

11

口腔がんの臨床病期分類

1.病期分類(TNM分類)T因子 原発腫瘍N因子 所属リンパ節転移M因子 遠隔転移

2.所属リンパ節の病期分類(UICC 2002年による分類)NX 所属リンパ節転移の評価が不可能

N0 所属リンパ節転移なし

N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが

6cm以下N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下N2c 両側性あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下N3 最大径が6cmをこえるリンパ節転移

リンパ節転移

• 腫瘍性腫脹の場合はリンパ節の形態が楕円体から球体に近くなり、腫瘍の増大に伴う門部の変形や消失が認められる場合が多い。

• CT・MRI・USともに、リンパ節内部に前述の中心壊死が認められる場合には、大きさに関わらず転移をほぼ確定しうる。造影CTや造影MRIではリンパ節辺縁部が線状に強く造影され(rim enhancement)、内部の壊死領域が低濃度もしくは低信号として描出される(focal defect)。USでは、リンパ節内部が不均一となり、不定形の無エコー域や高エコー域、あるいはこれらの混在が認められる場合がある。

• ドプラではリンパ節内部の血管走行の異常や血流信号の欠損、リンパ節辺縁部の血流信号の出現が認められる。

• 一方、リンパ節内部にこうした所見が明瞭には認められない場合、リンパ節の短径が、CTやMRIでは10mm以上、USでは8~10mm以上の場合に転移とする基準が多く受け入れられている。

• 転移腫瘍の増大に伴い、リンパ節は扁平な楕円体から球体に近づくことから、長径と短径の比率が1に近いほど転移リンパ節である確率が高くなり、診断の参考となる。

転移リンパ節の構造

• リンパ行性転移の場合、悪性腫瘍細胞は原発腫瘍巣からリンパ流を介して、輸入リンパ管からリンパ節に流入する。

• 初期の段階では、リンパ節の被膜下、辺縁洞で腫瘍組織が増殖し、徐々に大きくなって、最終的にはリンパ節全体を腫瘍組織が占拠する。

• リンパ節転移の初期から中期では正常リンパ節の楕円体の一部がいびつになる。転移腫瘍巣が大きくなるにつれ、リンパ節全体の形態は球形に近づく。

転移リンパ節の経時的変化の概念図

転移腫瘍巣

典型的な転移リンパ節・角化(顎下リンパ節)71歳・女性 左側口底舌癌 T4aN1

下顎下縁に平行 下顎下縁に垂直

長径13×短径8mm

Page 12: 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断radiology/edu/lecture/...1 口腔・頸部の軟組織疾患の画像診断 2013年12月20日(金) 蜂窩織炎・膿瘍 • 蜂窩織炎:疎性結合織内に化膿性炎が起こ

12

造影CT T2強調MR(脂肪抑制)

造影後T1強調MR(脂肪抑制) ADCマップ

転移左側顎下リンパ節のCT・MR 転移左側顎下リンパ節のUS・病理マクロ像対比

5mm

後発リンパ節転移について

• 画像で検出不可能な微小転移巣が潜在的に存在していたものである。N0症例における画像診断の感度は60%程度に過ぎず、wait and see policyに基づいて定期的に経過観察を行うことにより、微小転移巣が画像で検出可能な大きさにまで増大するのを待つことをひとつの診断手段とする考え方もある。

• USによる経過観察の方法として、原発巣治療後1年半までの間は、1か月に1回程度の頻度の検査が提唱されている。

5mm

20代・男性,左舌腫瘍(SCC)術後

角化領域が明瞭化していく場合

GE LOGIQ-e (5-13MHz)

104日後76日後50日後

転移左顎下リンパ節の経時的変化

134日後

左顎下リンパ節の経時的変化

0

0.5

1

1.5

2

0 50 100 150 200

大きさ(cm)

長径

短径

↓原発巣手術