1.緒 し16000g,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか
TRANSCRIPT
Toranosuke Kawaguchi, Koichi Ogawa, Munehisa Akashi:Magnetic Prope:㏄ies of:Fe-Cu Alloys Severely Cold-worked. Iron-copper alloys subl㏄ted to severe cold working come
to have good:magnetic properties as semi-hard mag:net materials. The sp㏄imens co且taining 30~70%Fe
and the balance Cu were redu㏄d 55.6~98.6%by cold drawi:ng and the且tempered at tempefatures from
100。to 1000。C. The,esults obtained afe as foUows:the cross section of the iron phase in the copper
:matrix is abou.t O.1x1.0μ, whe:ロthe anoys are s師efely cold-drawn up to the reduction of 98.6%.
With increasi㎎degree of cold-drawing, the residu…皿induction(B7), the square鵬ss(B4 B400), and
especiaHy the coeτcive force, become larger. The saturation inductioll is incfeased in propotion to iron
co:nten:t. Bu.t the coercive force is in:vefsely decreased with increase in iron content and eventualy
comes to obey the equation of 1鴇=El(0)(1-P). W五e:n the sp㏄imens are tempered at 380。~400。C
aftef a considefable reduction, their coercive forces are suddenly increased, showi㎎amaximum value
of 2400e for the sp㏄ime:n cold-reduced 98.6%。
(Received June 28, 1969)
1.緒 言
単磁区粒子からなる強磁性体は,戦後になって大きな注
目を集めてきた.とくにStoner-Wohlfarth(1)の理論研究以
来,多くの人々の研究によって,単磁区的挙動を示す強磁
性微細粒子を非磁性体内に適当に分散させて形状異方性を
もたせれば,高い保磁力が得られることが予測された.そ
してこのような予測によってESD磁石の開発がうながさ
れ,これについての多くの研究開発がなされてきた(2)~(5).
このようなESD的発想法にもとづいて,著者らは非磁
性体である銅と,強磁性体である鉄がほとんど固溶しない
という性質を利用し,これら2相よりなる単磁区磁石を作
るという実験を行なった.このときの考え方としては,非
磁性体である銅相と強磁性体である鉄相とが共存する合金
に激しい冷間加工を行なうことによって,地相に形状異方
性を与えながら単磁区に相当するまで微細化しようという
ものである.
RトCu合金の磁気的な性質については,数%の鉄を含む
いわゆる希薄合金については多くの研究(6)~(10)があり,誘
導磁気異方性や強磁性粒子の析出などについて調べられて
いる.また,以上のものより鉄濃度の高い合金の場合につ
いては,KussmamとSchamow(11)による論文があり,最
大磁束密度はCu量の増加とともに減少し,保磁力はCu
が50%のとき最大値220eをとることが報告されている.
しかし,これに機械的加工を施したときの影響については
触れられていない.なお,本研究で取上げられている鉄濃
度の範囲を越えたFe-Cu合金については,若生(12)らの特
許が出願されている.この特許においては,銅3ないし
25%,残部鉄を主成分としたFe-Cu合金に95ないし30%
の冷間圧延を施した場合には,残留磁束密度10000Gない
し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか
し,これらの研究によって得られた保磁力は低く,組成,
加工度および熱処理などが磁気的性質におよぼす影響につ
いての詳細な検討はなされていない.
本論文では鍛造と線引加工をいろいろな加工条件を与え
て作った線材試料について,さらにこれらに熱処理操作を
行なったとき,その磁気的性質と電子顕微鏡組織とが,ど
のような変化をしてゆくかなどについて検討された.この
結果,Fe-Cu合金は半硬質磁性材料としてもすぐれた特性
をもっているものであることが立証された.
11.実 験 方 法
*明治大学工学部(Faculty of Engineering, Meili University, Tokyo)**明治大学大学院(Gfaduate Sdhoo1, Meiji Univer-
sity, Tokyo)*** 明石合金株式会社(Akashi Alloy CO.,:Ltd.,’ζDokyo)
(1)E.C.Stoner and E.P.Woh lfarth;Phi1.Trans.Roy.
Soc.A, 240(1948),559。
(2)F.E.Luborsky:J.ApP1.Phys・.32(1961),171 S・
(3)F.P.Levi:J.ApP1・Phys.,31(1960♪,1469・
(4>永倉,山口,神野,川口:明治大学科学技術研究所 紀要1964.
実験に用いた原材料は,低炭素の鉄と電解銅である.試
料としは,鉄の組成として30~70wt%までの間で,10%
ごとになるように5種類のものを低周波誘導電気炉によっ
て溶製した.溶解は大気中で行ない,これを75m皿φx
600mmの金型に鋳込んだ.もともと鉄と銅の合金は偏析
(5)R.B.Falk:J.ApP1.Phys.,37(ユ966),1108.
(6)G.Bate, D. Schofield and W・Sucksmith:Phi1・
Mag.,45(1955),621.
(7)三井:金属学会誌,23(1959),731・
‘8)B.W.Lothian, A.C.Robinson aロd W。Sucksmith:
Phi1.Mag.,3(1958),999.
(9)N.Tamagawa and T・Mitui:J・Phys・S㏄Japan, 17(1962),718.
(10>A.Boltax:Trans.Met.S㏄.A【ME,224(1962),281.
(11)A.Kusslnann and B.Sごhamow;Z・Phys・,82(1929),
1.(12)若生,阿部:特許出願公告(昭41-7930)・
るようにした.これから知られるように,3mmφの線材に
なったところで焼なまし(800。C,30 min,水素中)を施して
から以降は,まったく冷間加工のみによるものである.ここ
で冷間加工度の影響をみるために,3mmφから,2・1・0・5
および0.35mmφに至るまでの線引きを行ない,互種類の
冷間加工度の異なる試料を作った.この4種類の冷間加工
度は,それぞれ55.6,88・9,96・0および98・6%reductio:n
である.
Table l Pr㏄ess-diagram of the specimens
Melted by low-frequency furnace(30~70%Fe-Cu)
→Ingot(70 mmφ×600 mm)→Hot rolled(13㎜φ)→㏄1d
folled(6 mmφ)→A:nneald(800。C,30 min, in H2 gas)
→Cold rolled(3 mmφ)→Anneald(800。C,30 min, in
H2 gas)→㏄1d rolled(2 mmφ)→㏄1d rolled(1㎜φ)
→Cold rolled(0.5mmφ)→Cold roUed(0.35 mmφ)
Ta:ble 2 Chemical composition of Fe-Cu alloys(as cast)
CF 3
CF 4
CF 5
CF 6
CF 7
Ele皿e飢(wt%)Cu ba1・
Fe C Mn Si
29.31
27.89
48.90
60.44
69。56
0.007
0.005
tr.
0.01
0.01
0.51
0.74
0.47
0.79
0.72
0.008
0.031
0.023
0.051
0.036
冷間加工線材におよぼす熱処理の影響については,冷間
線引き線材を100。~1000。Cの温度範囲内の各温度で80分
ずつ加算的に焼戻しを行なったものと,350。Cから450。C
まで50。Cとびに3~300分間にわたって加算的に焼戻し
を行なったものとの2系列について行なった.なお,熱処
理に際しての雰囲気はすべて乾燥アルゴン気流中で行な
い,焼戻温度からの冷却は水中冷却を施した.
磁気測定には,上記線材を長さ50mmに切断し, JISに
よるつぼ型磁石試験器と光電式自記磁束計を併用して行な
った.なお,かたさの測定には微少ビッか一スかたさ計を
用いた.
IH.実験結果および考察 1.磁気特性におよぼす線引加工 の影響
Fig.1には冷間加二度と磁気特性との関係を示される.
この図から知れるように,すべての磁気特性は冷間加工度
が増すにつれていずれも上昇してゆく傾向にある.磁界
4000eにおける最大磁束密度(・8400)は,加工度が増しても
ごくわずかしか上昇しないが,残留磁束密度(B∂および角
に伴う磁性の変化をみたものであるが,この場合にはFig・
2とちがって,横軸を加工度で示してないのは,6mmφと
3mmφのところで焼なまし操作を施したためである.この
とき,3mmφから0.35 mmφに至るまでの冷間加工効果
℃
e書
§
ミ
畠
途
こ
§
『
占
F三9.1
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Fig.2
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揶鼈黶Z び’6
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1
ofEff㏄t of cQId draw血g Q虹magnetic properties
of Fe-Cu a皿oy
0 20 40
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幽rθ 0’σ∫ηθ飴r 伽加ψノ
Eff㏄t of wire-drawing on magnetic properties
of 40%Fe-Cu alloys
ユ392 日本金属学会誌(ユ969> 第33巻
についてはFig・1とほぼ同じような傾向になることが確か
められた.保磁力(β息)が加工度90駕を越えたところで急
激に上昇してくる理由は,加工に伴うひずみと鉄相が繊維
状にかなり微細化してゆくたあに生じる形状効果によるも
のと考えられる.事実,線引加工を施された線材中の鉄相
がどのような変化をうけでいるかはPhoto.1,2に示され
る.Ph伽.1は40%R}一Cu合金について線引方向にみた
側面顕微鏡緯圏であウ,Fig・2に対応するものてある.ま
た,Photo.2は130駕Fを一Cu線材の断面についての電子顕微
鏡組織である.これらの組織をみると.初めの鋳造状態で
ほぼ粒状とみられる臨画は加工が進むにつれて次策に引き
伸ばされた微細な繊維状になっていることが知られる.
1びd磯込盈欄▽一両騰諾惣lr
このことから,F圭9・1,2に鐙けるB肖8ノ易σ⑤の値の向上も
おもにこのような形状効果によるためと思われる.またこ
れらの畜実から,線引加工を施すことによって,線引方向
に一軸磁気異方性が生じてくるものと考えられる.
2.鉄成分と磁気特性との関係Fig・3,4は鉄と銅との成分比と磁性値の関係を示してい
る.易。gと易はおもに驚%の増加とともにをまぼ直線的に
増加しているが,出は逆に直線的に下ってくることが知
られる.ここでとくにFig.4に注幽してみると,同一の.化
学組成のものでも加工度の高いものほど,B瓦の減少傾向
のいちじるしいことを知る.これは,強磁性掩粒子間の
磁気的相互作用{15}によるものと思われる.町中における
鳳 点線は,たとえば98・6驚まで線引きされた試料に
嶺
野鱒曝憩璽.、噌
工ngot 13即瓢φ
1.1 き.ヒ・魑幽.論.
6m皿φ 1皿mφ Photo.1 ]M[icrostfuctules of wire-drawn 40%Fe-Cu
a11。ys(s遍e齢ctiαロ)
ついて,Ne創によるこの柑互作用の関係式‘」隣冨
」瓦⑧〈1一.P)を用いて計算を行なって求めたもの
である.ただし,Pは重量比を体積比に換算して
求めたときのパッキγグブアクターである.なお
Fig.4にみられるように,一般に保磁力はPに反
比例することが実験的にも知られたので,単一微
少鉄粒子の保磁力f瓦(OlはFeが0%と仮定して
外挿したときの値である.
このNe¢工の式は心血弄ネルギーに関する異方
性,すなわち形状異方性を持つ強磁性単磁区粒子
の場合にのみ適用可能であるが,前述のように線
引加工度を大きくして二丁が微細化されてゆき,
形状効果が大きくなるにうれて計算式が実験値に
近づいてぐるのは,興味ある事実と思われる.
55.6駕ガeductiQn 88.9瑠 工矧ユuctioゴロ
Te皿pered at 4000C,
80mip afte誓エ宅ducedto 98.6% of afea
Phoち。.2 Electron micro-stfuctuエes of cold-drawn
30%Fe-Cu a皿◎ys (Cfoss sectio皿)
9896%feductiQ灯
3.磁気特性におよほす熱処理条件 の影響
60%脱白(蒐と30%Fe-Cu合金をいろいろの加工度に線
引きしたのち,焼戻しを行なった場合の磁気特性の変化を
示す.とFig.5~7のようになる.このうち, Fig.5は60%
Fe-C燦合金を55.6~98.6駕に至るまで冷間線引き加工を
与えたのち.に焼戻した場合のβ伽.島,B瓦などの変化を示
しれものである.βアは3509~55併Cでわずか上昇するが,
それ以上高い温度で焼戻すといちじるしく減少する.瑞oo
は300。~55QgCの温度範囲でわずか上昇するが,それ以
(13)L..Ne61:(㎞pt.renこ,224(1947),ユ550・
このことがなおいっそう顕著に現われてくるのは,Fig・6に
みられるような30%Fb-Cu合金の場合である.たとえば
冷間加工度98.6%のものでは,200。Cまでの焼戻温度で
B瓦として1200eにすぎないものが,400。C前後での焼戻
しでその倍の2400eとなっている.ただしこの場合の印
加磁界は1000.Oeとした.しかし,700。C以上の高温にな
ると,加工度の低い場合の値とほぼ等しい200e程度にま
で減少して一定となる.また焼戻しにより保磁力がピーク
にまで増加する温度は,加工度が高いほど低温側にずれる
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c一一〇960% 〃ローロ889% 〃
x-x 556% 〃
30 40 50 60 70
1roη 00ηナθη’ r膨ナ%ノ
Fig.3 Eff㏄t of iron content on magnetic pfoperties
of Fe」Cu alloys, reduced by cold drawing to
indicated percentages
’40.
㌃ ’20
s竃’ooこ
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こ
こ
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60
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●一●986%雌dσ0ナ’oρ o’ σ’eσ
Φ一一〇960% 〃 回一ロ 889% 〃 x一一賦556% 〃、 日一噛一 cσ’‘μ’σナed
、
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、
:Fig.4
コ=二「コートよ _ X-X_
30 40 50 60 70
1roρ COρfeρ’ 侮ナ箔ノ
03 04 05 06 07
Pσ‘掬’ρ9 Fσcfor rp/
Eff㏄t of irαn c㎝tent on coercive for㏄s of
Fe-Cu alloys, reduced by cold-drawi:ng to
indi(諭しted percentages
られる.しかし,ビッカースかたさは,すべて初めの20分
間で最大値が得られており,保磁力の変化と対応しない.
以上のように,保磁力は焼戻温度によって種々に変化する
ことが明らかになった.とくに98.6%まで冷間線引きした
試料ではそれが著しいので,このことを顕微鏡組織の上か
らみるとPhoto.2, Photo.3のようになる.すなわち400。C
で焼戻された状態では,鉄相は冷間線引直後とほぼ同一の
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●一● 986%rθdμ‘”oρ o’σ「θσ
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00 ’00 200 500 400 500 600 700 800 900’000
」4ρρθσ”ρ9 τθπrρθrσナμre r℃ノ
Fig.5 Eff㏄t(㎡a皿ealing temperature on some
lnagPetic propefties of 60%Fe-Cu alloys,
after feduced by cold dfawing
240
200
℃
ミ,60
匙
ヒ
k ’20
雪
§80ε
り
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●一・●986劣 西e吻C’施の0’σ’00
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Oh__一A一
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堰f~=きゃ.1=コニ:〔聡1 1 1 1
Cρ 200 400 600 800 ’000
4〃πeσ”ρ9 τe冊ρe’σ’〃re r℃ノ
Fig.6 Eff㏄t of a皿ealing temperature on coercive
force of 30%Fe-Cu alloys, after reduced
by cold d】旧wing
合に生じる保磁力のいちじるしい減少は,鉄相そ㊧ものが
急に粗大化したために生じるものと思われる.また600。C
以上の温度で焼戻した場合に生じるβ.の減少も,線引加
!工によって生じた一軸磁気異方性が,鉄相の粗大化によっ
,て失われたためと思われる.焼戻温度からの冷却速度の影
響についてみると,Table 3が得られるが,炉冷,油冷,
水冷りいずれによってもその値はほとんど変化を認めるこ
とができない.
450
誘400受。も じ
着『ミ550ミ呈
§
ミ
500
’00
ミ90孚
圭800
70
∠、A o
、550℃夢=・
400℃
札
巌1:ビ
450℃
ム ム\ム㍉
↑/350℃
400℃
\450℃
Ca 20 60 ’00 μ0 ’80220260 500540 4湘8σ”π9 τ’π博 ‘5ed
Fig.7 Eff㏄t of a皿ealing time o〔n coercive force
and Vickeでs:hardness of 60%Fe-Cu alloy,
after reduced 98.6%by cold drawing
400。C(side section)
700。C(side s㏄tion)
1000。C(side section)
10000C (c:ross section)
Photo.3 Microstructures of 60%Fe-Cu alloy,
tempered at indicated temperatures after the redu《芝tion of 98・6%
る.、従来の研究結果(14)~(18)によると,数%のCuを含む
Fe-Cu合金を焼鈍後急冷すると,450。~550。Cで析出硬化
することが知られているが,これらの研究においては冷間
加工の影響については触れていない.ついで,冷間加工の
影響については,添野(19)の報告がある.これによると,均
質化焼なまし後に冷間加工をして時効すると300。C付近で
硬化し,これがCuの析出によるものであるとのべている.
本実験に用いた試料は,70~30wt%のCuを含むFe-Cu
合金であるが,Cu相(少量のFeを含む)とFe相(少量のCu
を含む〉が2相に分離しているので,Fe相に添野(19)の考
察を適用できるとすれば,本研究におけるFe-Cu合金の
硬化も上述のものとほぼ同じようであると考えられる.た
とえば,Fig・8は60%Fe-Cu合金に98.6%の冷間加工を
与えたものを800QCまでの各温度で焼鈍したときの硬化曲
線であり,300。Cにおいて析出に伴なう(19)きわめて顕著な
Table 3 Effect of cooling method on、 magロetic
properties of 30%Fe-Cu alloy, redu㏄d
to 98.6%a:nd then tempered at 400。C
for 80 mi11
\、Magnetic l ’ 1\-
_proマerties}β1。。。(G)易(G)
逸・1ing me魍\1.
Furnance colledOil que瓜ched
Water quenched
6800 5800
6600 5900
6500 5900
猛(Oe)
242244239
(BH>
(MG Oe)
0.72
0.691
0.69
§400§
呈
300{
聖
§200己
.ミ
ミ ,00
0 200 400 600 800-
Aηρθo’1η9τθmρerσナひrθ1。0/
Fig。8 Eff㏄t of annealing temperature on Vicker’s
hardness 60%Fe-Cu alloy, aftef:reduced by
cold draw血g to 98.6%of area
(14)R・A・Gfange・V・E・Lambert琴nd J・J・Harrington:
Trans.ASM,51(1959),377.(15)R.L. Rickett and W. C. Leslie:Trans・ASM,51
(1959),310.
(16)E.Hombogen and R. C. Glem:Trans.Met.S㏄.
An㌧1E,218(1960>,1064.
(17)E.Hornboge且:Acta MeL,10(19621,525。
(18>E。Hombogen und H. D. Jurg:Z・Metallk・,55 (1965),691.
(19)添野:金属学会誌,31(1967),1309・
析出物の成長については,Hornbogenら(18)による顕微鏡組
織的研究および理論的研究があるが,著者らはとくに微少
ターゲットを用いたX線マイクロアナライザーや透過電子
顕微鏡などによって明確iにしてゆきたいと考えている.
IV.総 括
以上の実験結果から,つぎのような結論を得る.
(1)Fe-Cu合金に線引き加工を施すことによって.合金
中の鉄相は微細化され線引き方向に繊維状に分布してくる
が,その繊維断面はO.1x1.0μ程度であり,まだ単磁区粒
子に相当するまでには至っていない.しかし,このことか
ら加工方法を適当に選択することによって,非磁性相内に
強磁性粒子を微細に分布させる手がかりが得られた.
(2)加工度を増すにつれて,β400,B.,、B。/.B400はともに
上昇する.とくに保磁力は90%以上の加工度になると著
しく上昇する.40%Fe-Cu合金をたとえば98.6%にまで
冷間加工した場合に,B4。o=8800G, B.=7900G,β瓦=
1050eが得られる.
(3)合金中の鉄の配合比にほぼ反比例して保磁力は減少
ては,400。C付近で加熱するのがよく,この温度近傍にお
いては保磁力は高温で熱処理するほど短時間で最大値にま
で上昇する.たとえば98.6%に冷間線引した30%Fe-Cu
合金にあっては,400。Cで80分間焼戻すことによって,
.Blooo=6500 G,」Bγ=5900 G, B瓦=・2300eとなる.
(5)冷間加工後焼戻しを行なうことは磁性向上のために
望ましいものであるが,焼戻温度からの冷却速度はほとん
ど影響を与えない.
(6)400。C付近で保磁力が急上昇する原因として,微細
なFe相内にCuが析出し,かつ析出物の成長に伴って鉄
相の分断,すなわち鉄相の単磁区化が促進されるものと思
われる.
(7)Fe-Cu合金に線引き加工と熱処理を施すことによっ
て,半硬質磁性材料としてもすぐれた特性が得られること
がわかった.
終りに,本研究は明治大学科学技術研究費によるもので
あることを記すと同時に,いつも有益なる御助言をいただ
いている明治大学永倉充教授,山元 洋博士に厚く御礼
を申し上げる。また電子顕微鏡写真の作成に御援助いただ
いた大同製鋼中央研究所長浅田千秋ならびに同研究所
加藤哲男両博士にも厚く感謝の意を表したい.