1.緒 し16000g,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

6
Toranosuke Kawaguchi, Koichi Ogawa, Munehisa Akashi:M :Fe-Cu Alloys Severely Cold-worked. Iron-copper alloys subl㏄ted to have good:magnetic properties as semi-hard mag:net materials. The and the balance Cu were redu㏄d 55.6~98.6%by cold drawi:ng and the且te 100。to 1000。C. The,esults obtained afe as foUows:the cross section of :matrix is abou.t O.1x1.0μ, whe:ロthe anoys are s師efely cold-drawn up to t With increasi㎎degree of cold-drawing, the residu…皿induction(B7), th especiaHy the coeτcive force, become larger. The saturation inductioll i co:nten:t. Bu.t the coercive force is in:vefsely decreased with increase comes to obey the equation of 1鴇=El(0)(1-P). W五e:n the sp㏄imens are t aftef a considefable reduction, their coercive forces are suddenly of 2400e for the sp㏄ime:n cold-reduced 98.6%。 (Received June 28, 1969) 1.緒 単磁区粒子からなる強磁性体は,戦後になって大きな注 目を集めてきた.とくにStoner-Wohlfarth(1)の理論研究以 来,多くの人々の研究によって,単磁区的挙動を示す強磁 性微細粒子を非磁性体内に適当に分散させて形状異方性を もたせれば,高い保磁力が得られることが予測された.そ してこのような予測によってESD磁石の開発がうながさ れ,これについての多くの研究開発がなされてきた(2)~(5). このようなESD的発想法にもとづいて,著者らは非磁 性体である銅と,強磁性体である鉄がほとんど固溶しない という性質を利用し,これら2相よりなる単磁区磁石を作 るという実験を行なった.このときの考え方としては,非 磁性体である銅相と強磁性体である鉄相とが共存する合金 に激しい冷間加工を行なうことによって,地相に形状異方 性を与えながら単磁区に相当するまで微細化しようという ものである. RトCu合金の磁気的な性質については,数%の鉄を含む いわゆる希薄合金については多くの研究(6)~(10)があり,誘 導磁気異方性や強磁性粒子の析出などについて調べられて いる.また,以上のものより鉄濃度の高い合金の場合につ いては,KussmamとSchamow(11)による論文があり,最 大磁束密度はCu量の増加とともに減少し,保磁力はCu が50%のとき最大値220eをとることが報告されている. しかし,これに機械的加工を施したときの影響については 触れられていない.なお,本研究で取上げられている鉄濃 度の範囲を越えたFe-Cu合金については,若生(12)らの特 許が出願されている.この特許においては,銅3ないし 25%,残部鉄を主成分としたFe-Cu合金に95ないし30% の冷間圧延を施した場合には,残留磁束密度10000Gない し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.し し,これらの研究によって得られた保磁力は低く,組成, 加工度および熱処理などが磁気的性質におよぼす影響につ いての詳細な検討はなされていない. 本論文では鍛造と線引加工をいろいろな加工条件を与え て作った線材試料について,さらにこれらに熱処理操作を 行なったとき,その磁気的性質と電子顕微鏡組織とが,ど のような変化をしてゆくかなどについて検討された.この 結果,Fe-Cu合金は半硬質磁性材料としてもすぐれた特性 をもっているものであることが立証された. 11.実 *明治大学工学部(Faculty of Engineering, Meili University, Tokyo) **明治大学大学院(Gfaduate Sdhoo1, Meiji Univer- sity, Tokyo) *** 明石合金株式会社(Akashi Alloy CO.,:Ltd.,’ζDokyo) (1)E.C.Stoner and E.P.Woh lfarth;Phi1.Trans.Roy. Soc.A, 240(1948),559。 (2)F.E.Luborsky:J.ApP1.Phys・.32(1961),171 S・ (3)F.P.Levi:J.ApP1・Phys.,31(1960♪,1469・ (4>永倉,山口,神野,川口:明治大学科学技術研究所 紀要1964. 実験に用いた原材料は,低炭素の鉄と電解銅である.試 料としは,鉄の組成として30~70wt%までの間で,10% ごとになるように5種類のものを低周波誘導電気炉によっ て溶製した.溶解は大気中で行ない,これを75m皿φx 600mmの金型に鋳込んだ.もともと鉄と銅の合金は偏析 (5)R.B.Falk:J.ApP1.Phys.,37(ユ966),1108. (6)G.Bate, D. Schofield and W・Sucksm Mag.,45(1955),621. (7)三井:金属学会誌,23(1959),731・ ‘8)B.W.Lothian, A.C.Robinson aロd W。Su Phi1.Mag.,3(1958),999. (9)N.Tamagawa and T・Mitui:J・Phys・ 17(1962),718. (10>A.Boltax:Trans.Met.S㏄.A【ME,224(19 (11)A.Kusslnann and B.Sごhamow;Z・Phys・, 1. (12)若生,阿部:特許出願公告(昭41-7930)・

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Page 1: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

 Toranosuke Kawaguchi, Koichi Ogawa, Munehisa Akashi:Magnetic Prope:㏄ies of:Fe-Cu Alloys Severely Cold-worked. Iron-copper alloys subl㏄ted to severe cold working come

to have good:magnetic properties as semi-hard mag:net materials. The sp㏄imens co且taining 30~70%Fe

and the balance Cu were redu㏄d 55.6~98.6%by cold drawi:ng and the且tempered at tempefatures from

100。to 1000。C. The,esults obtained afe as foUows:the cross section of the iron phase in the copper

:matrix is abou.t O.1x1.0μ, whe:ロthe anoys are s師efely cold-drawn up to the reduction of 98.6%.

With increasi㎎degree of cold-drawing, the residu…皿induction(B7), the square鵬ss(B4 B400), and

especiaHy the coeτcive force, become larger. The saturation inductioll is incfeased in propotion to iron

co:nten:t. Bu.t the coercive force is in:vefsely decreased with increase in iron content and eventualy

comes to obey the equation of 1鴇=El(0)(1-P). W五e:n the sp㏄imens are tempered at 380。~400。C

aftef a considefable reduction, their coercive forces are suddenly increased, showi㎎amaximum value

of 2400e for the sp㏄ime:n cold-reduced 98.6%。

                  (Received June 28, 1969)

1.緒 言

 単磁区粒子からなる強磁性体は,戦後になって大きな注

目を集めてきた.とくにStoner-Wohlfarth(1)の理論研究以

来,多くの人々の研究によって,単磁区的挙動を示す強磁

性微細粒子を非磁性体内に適当に分散させて形状異方性を

もたせれば,高い保磁力が得られることが予測された.そ

してこのような予測によってESD磁石の開発がうながさ

れ,これについての多くの研究開発がなされてきた(2)~(5).

 このようなESD的発想法にもとづいて,著者らは非磁

性体である銅と,強磁性体である鉄がほとんど固溶しない

という性質を利用し,これら2相よりなる単磁区磁石を作

るという実験を行なった.このときの考え方としては,非

磁性体である銅相と強磁性体である鉄相とが共存する合金

に激しい冷間加工を行なうことによって,地相に形状異方

性を与えながら単磁区に相当するまで微細化しようという

ものである.

 RトCu合金の磁気的な性質については,数%の鉄を含む

いわゆる希薄合金については多くの研究(6)~(10)があり,誘

導磁気異方性や強磁性粒子の析出などについて調べられて

いる.また,以上のものより鉄濃度の高い合金の場合につ

いては,KussmamとSchamow(11)による論文があり,最

大磁束密度はCu量の増加とともに減少し,保磁力はCu

が50%のとき最大値220eをとることが報告されている.

しかし,これに機械的加工を施したときの影響については

触れられていない.なお,本研究で取上げられている鉄濃

度の範囲を越えたFe-Cu合金については,若生(12)らの特

許が出願されている.この特許においては,銅3ないし

25%,残部鉄を主成分としたFe-Cu合金に95ないし30%

の冷間圧延を施した場合には,残留磁束密度10000Gない

し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

し,これらの研究によって得られた保磁力は低く,組成,

加工度および熱処理などが磁気的性質におよぼす影響につ

いての詳細な検討はなされていない.

 本論文では鍛造と線引加工をいろいろな加工条件を与え

て作った線材試料について,さらにこれらに熱処理操作を

行なったとき,その磁気的性質と電子顕微鏡組織とが,ど

のような変化をしてゆくかなどについて検討された.この

結果,Fe-Cu合金は半硬質磁性材料としてもすぐれた特性

をもっているものであることが立証された.

11.実  験  方  法

 *明治大学工学部(Faculty of Engineering, Meili  University, Tokyo)**明治大学大学院(Gfaduate Sdhoo1, Meiji Univer-

  sity, Tokyo)*** 明石合金株式会社(Akashi Alloy CO.,:Ltd.,’ζDokyo)

(1)E.C.Stoner and E.P.Woh lfarth;Phi1.Trans.Roy.

  Soc.A, 240(1948),559。

(2)F.E.Luborsky:J.ApP1.Phys・.32(1961),171 S・

(3)F.P.Levi:J.ApP1・Phys.,31(1960♪,1469・

(4>永倉,山口,神野,川口:明治大学科学技術研究所  紀要1964.

 実験に用いた原材料は,低炭素の鉄と電解銅である.試

料としは,鉄の組成として30~70wt%までの間で,10%

ごとになるように5種類のものを低周波誘導電気炉によっ

て溶製した.溶解は大気中で行ない,これを75m皿φx

600mmの金型に鋳込んだ.もともと鉄と銅の合金は偏析

(5)R.B.Falk:J.ApP1.Phys.,37(ユ966),1108.

(6)G.Bate, D. Schofield and W・Sucksmith:Phi1・

  Mag.,45(1955),621.

(7)三井:金属学会誌,23(1959),731・

‘8)B.W.Lothian, A.C.Robinson aロd W。Sucksmith:

  Phi1.Mag.,3(1958),999.

(9)N.Tamagawa and T・Mitui:J・Phys・S㏄Japan,  17(1962),718.

(10>A.Boltax:Trans.Met.S㏄.A【ME,224(1962),281.

(11)A.Kusslnann and B.Sごhamow;Z・Phys・,82(1929),

  1.(12)若生,阿部:特許出願公告(昭41-7930)・

Page 2: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

るようにした.これから知られるように,3mmφの線材に

なったところで焼なまし(800。C,30 min,水素中)を施して

から以降は,まったく冷間加工のみによるものである.ここ

で冷間加工度の影響をみるために,3mmφから,2・1・0・5

および0.35mmφに至るまでの線引きを行ない,互種類の

冷間加工度の異なる試料を作った.この4種類の冷間加工

度は,それぞれ55.6,88・9,96・0および98・6%reductio:n

である.

Table l Pr㏄ess-diagram of the specimens

Melted by low-frequency furnace(30~70%Fe-Cu)

→Ingot(70 mmφ×600 mm)→Hot rolled(13㎜φ)→㏄1d

folled(6 mmφ)→A:nneald(800。C,30 min, in H2 gas)

→Cold rolled(3 mmφ)→Anneald(800。C,30 min, in

H2 gas)→㏄1d rolled(2 mmφ)→㏄1d rolled(1㎜φ)

→Cold rolled(0.5mmφ)→Cold roUed(0.35 mmφ)

Ta:ble 2 Chemical composition of Fe-Cu alloys(as cast)

CF 3

CF 4

CF 5

CF 6

CF 7

  Ele皿e飢(wt%)Cu ba1・

Fe    C    Mn    Si

29.31

27.89

48.90

60.44

69。56

0.007

0.005

tr.

0.01

0.01

0.51

0.74

0.47

0.79

0.72

0.008

0.031

0.023

0.051

0.036

 冷間加工線材におよぼす熱処理の影響については,冷間

線引き線材を100。~1000。Cの温度範囲内の各温度で80分

ずつ加算的に焼戻しを行なったものと,350。Cから450。C

まで50。Cとびに3~300分間にわたって加算的に焼戻し

を行なったものとの2系列について行なった.なお,熱処

理に際しての雰囲気はすべて乾燥アルゴン気流中で行な

い,焼戻温度からの冷却は水中冷却を施した.

 磁気測定には,上記線材を長さ50mmに切断し, JISに

よるつぼ型磁石試験器と光電式自記磁束計を併用して行な

った.なお,かたさの測定には微少ビッか一スかたさ計を

用いた.

IH.実験結果および考察 1.磁気特性におよぼす線引加工   の影響

 Fig.1には冷間加二度と磁気特性との関係を示される.

この図から知れるように,すべての磁気特性は冷間加工度

が増すにつれていずれも上昇してゆく傾向にある.磁界

4000eにおける最大磁束密度(・8400)は,加工度が増しても

ごくわずかしか上昇しないが,残留磁束密度(B∂および角

に伴う磁性の変化をみたものであるが,この場合にはFig・

2とちがって,横軸を加工度で示してないのは,6mmφと

3mmφのところで焼なまし操作を施したためである.この

とき,3mmφから0.35 mmφに至るまでの冷間加工効果

e書

§

§

F三9.1

§

Q

e毫

Fig.2

1 ム

1 一一

△  △ OF5

揶鼈黶Z び’6

怐@ ● CF7肌

’00

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O.9

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1午

1

        ofEff㏄t of cQId draw血g Q虹magnetic properties

of Fe-Cu a皿oy

0   20   40

 々θdμ‘f’0η

60  80  ’00

鴻reσ で%ノ

8f/8400

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6§ 鴫

 ぐ4 Q

2

   幽rθ 0’σ∫ηθ飴r 伽加ψノ

Eff㏄t of wire-drawing on magnetic properties

of 40%Fe-Cu alloys

Page 3: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

ユ392 日本金属学会誌(ユ969> 第33巻

についてはFig・1とほぼ同じような傾向になることが確か

められた.保磁力(β息)が加工度90駕を越えたところで急

激に上昇してくる理由は,加工に伴うひずみと鉄相が繊維

状にかなり微細化してゆくたあに生じる形状効果によるも

のと考えられる.事実,線引加工を施された線材中の鉄相

がどのような変化をうけでいるかはPhoto.1,2に示され

る.Ph伽.1は40%R}一Cu合金について線引方向にみた

側面顕微鏡緯圏であウ,Fig・2に対応するものてある.ま

た,Photo.2は130駕Fを一Cu線材の断面についての電子顕微

鏡組織である.これらの組織をみると.初めの鋳造状態で

ほぼ粒状とみられる臨画は加工が進むにつれて次策に引き

伸ばされた微細な繊維状になっていることが知られる.

1びd磯込盈欄▽一両騰諾惣lr

このことから,F圭9・1,2に鐙けるB肖8ノ易σ⑤の値の向上も

おもにこのような形状効果によるためと思われる.またこ

れらの畜実から,線引加工を施すことによって,線引方向

に一軸磁気異方性が生じてくるものと考えられる.

 2.鉄成分と磁気特性との関係Fig・3,4は鉄と銅との成分比と磁性値の関係を示してい

る.易。gと易はおもに驚%の増加とともにをまぼ直線的に

増加しているが,出は逆に直線的に下ってくることが知

られる.ここでとくにFig.4に注幽してみると,同一の.化

学組成のものでも加工度の高いものほど,B瓦の減少傾向

のいちじるしいことを知る.これは,強磁性掩粒子間の

磁気的相互作用{15}によるものと思われる.町中における

 鳳 点線は,たとえば98・6驚まで線引きされた試料に

野鱒曝憩璽.、噌

工ngot 13即瓢φ

1.1 き.ヒ・魑幽.論.

      6m皿φ         1皿mφ   Photo.1 ]M[icrostfuctules of wire-drawn 40%Fe-Cu

       a11。ys(s遍e齢ctiαロ)

ついて,Ne創によるこの柑互作用の関係式‘」隣冨

」瓦⑧〈1一.P)を用いて計算を行なって求めたもの

である.ただし,Pは重量比を体積比に換算して

求めたときのパッキγグブアクターである.なお

Fig.4にみられるように,一般に保磁力はPに反

比例することが実験的にも知られたので,単一微

少鉄粒子の保磁力f瓦(OlはFeが0%と仮定して

外挿したときの値である.

 このNe¢工の式は心血弄ネルギーに関する異方

性,すなわち形状異方性を持つ強磁性単磁区粒子

の場合にのみ適用可能であるが,前述のように線

引加工度を大きくして二丁が微細化されてゆき,

形状効果が大きくなるにうれて計算式が実験値に

近づいてぐるのは,興味ある事実と思われる.

55.6駕ガeductiQn 88.9瑠 工矧ユuctioゴロ

Te皿pered at 4000C,

80mip afte誓エ宅ducedto 98.6% of afea

Phoち。.2 Electron micro-stfuctuエes of cold-drawn

    30%Fe-Cu a皿◎ys (Cfoss sectio皿)

9896%feductiQ灯

 3.磁気特性におよほす熱処理条件   の影響

 60%脱白(蒐と30%Fe-Cu合金をいろいろの加工度に線

引きしたのち,焼戻しを行なった場合の磁気特性の変化を

示す.とFig.5~7のようになる.このうち, Fig.5は60%

Fe-C燦合金を55.6~98.6駕に至るまで冷間線引き加工を

与えたのち.に焼戻した場合のβ伽.島,B瓦などの変化を示

しれものである.βアは3509~55併Cでわずか上昇するが,

それ以上高い温度で焼戻すといちじるしく減少する.瑞oo

は300。~55QgCの温度範囲でわずか上昇するが,それ以

(13)L..Ne61:(㎞pt.renこ,224(1947),ユ550・

Page 4: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

このことがなおいっそう顕著に現われてくるのは,Fig・6に

みられるような30%Fb-Cu合金の場合である.たとえば

冷間加工度98.6%のものでは,200。Cまでの焼戻温度で

B瓦として1200eにすぎないものが,400。C前後での焼戻

しでその倍の2400eとなっている.ただしこの場合の印

加磁界は1000.Oeとした.しかし,700。C以上の高温にな

ると,加工度の低い場合の値とほぼ等しい200e程度にま

で減少して一定となる.また焼戻しにより保磁力がピーク

にまで増加する温度は,加工度が高いほど低温側にずれる

’4

12

6さ

 ’08δ

こθo自

.6

4

“一一一 ニ400

-8r

   ノ

/レ

ノ齪

1X一一

x

 l

l      I●一●986% redμc”oρ o’ σrθσ

c一一〇960%    〃ローロ889%      〃

x-x 556%      〃

     30     40     50     60     70

        1roη  00ηナθη’  r膨ナ%ノ

Fig.3 Eff㏄t of iron content on magnetic pfoperties

   of Fe」Cu alloys, reduced by cold drawing to

   indicated percentages

’40.

㌃ ’20

s竃’ooこ

  810雪

ε

60

40

20

 、。

_\

 ●一●986%雌dσ0ナ’oρ o’ σ’eσ

 Φ一一〇960%   〃 回一ロ 889%    〃 x一一賦556%   〃、  日一噛一 cσ’‘μ’σナed

\ヨー    .女『\\.

    寸’\ 

、\、

 、

:Fig.4

コ=二「コートよ        _  X-X_

30    40    50    60    70

 1roρ COρfeρ’ 侮ナ箔ノ

  03    04   05    06    07

     Pσ‘掬’ρ9  Fσcfor rp/

Eff㏄t of irαn c㎝tent on coercive for㏄s of

Fe-Cu alloys, reduced by cold-drawi:ng to

indi(諭しted percentages

られる.しかし,ビッカースかたさは,すべて初めの20分

間で最大値が得られており,保磁力の変化と対応しない.

以上のように,保磁力は焼戻温度によって種々に変化する

ことが明らかになった.とくに98.6%まで冷間線引きした

試料ではそれが著しいので,このことを顕微鏡組織の上か

らみるとPhoto.2, Photo.3のようになる.すなわち400。C

で焼戻された状態では,鉄相は冷間線引直後とほぼ同一の

’00

80

3ミ60

{40

20

0

降折1聴饗餐訟x

   ●一● 986%rθdμ‘”oρ o’σ「θσ

   ◎一一Q960%    〃   ローロ 889%     〃

θ、。。x-x5含6% ”

  {慈iミミN\

  /       l l\x\、  昌1・1 .   1 ,             o\口

                 ロ  ア                                

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  §.g o自

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7

6

 00  ’00 200 500 400 500 600  700 800 900’000

    」4ρρθσ”ρ9  τθπrρθrσナμre   r℃ノ

Fig.5 Eff㏄t(㎡a皿ealing temperature on some

   lnagPetic propefties of 60%Fe-Cu alloys,

   after feduced by cold dfawing

240

200

ミ,60

k ’20

§80ε

40

●一・●986劣   西e吻C’施の0’σ’00

Q一・og60%  〃

ロー口889髭 〃.x-x 556驚   〃

」O    I

Oh__一A一

    o

堰f~=きゃ.1=コニ:〔聡1   1    1    1

     Cρ   200   400   600   800   ’000

       4〃πeσ”ρ9  τe冊ρe’σ’〃re  r℃ノ

Fig.6 Eff㏄t of a皿ealing temperature on coercive

   force of 30%Fe-Cu alloys, after reduced

   by cold d】旧wing

Page 5: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

合に生じる保磁力のいちじるしい減少は,鉄相そ㊧ものが

急に粗大化したために生じるものと思われる.また600。C

以上の温度で焼戻した場合に生じるβ.の減少も,線引加

!工によって生じた一軸磁気異方性が,鉄相の粗大化によっ

,て失われたためと思われる.焼戻温度からの冷却速度の影

響についてみると,Table 3が得られるが,炉冷,油冷,

水冷りいずれによってもその値はほとんど変化を認めるこ

とができない.

450

 誘400受。も じ

着『ミ550ミ呈

§

500

’00

ミ90孚

圭800

70

∠、A o

、550℃夢=・

400℃

巌1:ビ

450℃

   ム     ム\ム㍉

↑/350℃

400℃

\450℃

   Ca 20 60 ’00 μ0 ’80220260 500540       4湘8σ”π9 τ’π博 ‘5ed

Fig.7 Eff㏄t of a皿ealing time o〔n coercive force

   and Vickeでs:hardness of 60%Fe-Cu alloy,

   after reduced 98.6%by cold drawing

 400。C(side section)

 700。C(side s㏄tion)

 1000。C(side section)

     10000C (c:ross section)

Photo.3 Microstructures of 60%Fe-Cu alloy,

    tempered at indicated temperatures    after the redu《芝tion of 98・6%

る.、従来の研究結果(14)~(18)によると,数%のCuを含む

Fe-Cu合金を焼鈍後急冷すると,450。~550。Cで析出硬化

することが知られているが,これらの研究においては冷間

加工の影響については触れていない.ついで,冷間加工の

影響については,添野(19)の報告がある.これによると,均

質化焼なまし後に冷間加工をして時効すると300。C付近で

硬化し,これがCuの析出によるものであるとのべている.

本実験に用いた試料は,70~30wt%のCuを含むFe-Cu

合金であるが,Cu相(少量のFeを含む)とFe相(少量のCu

を含む〉が2相に分離しているので,Fe相に添野(19)の考

察を適用できるとすれば,本研究におけるFe-Cu合金の

硬化も上述のものとほぼ同じようであると考えられる.た

とえば,Fig・8は60%Fe-Cu合金に98.6%の冷間加工を

与えたものを800QCまでの各温度で焼鈍したときの硬化曲

線であり,300。Cにおいて析出に伴なう(19)きわめて顕著な

Table 3 Effect of cooling method on、 magロetic

    properties of 30%Fe-Cu alloy, redu㏄d

    to 98.6%a:nd then tempered at 400。C

    for 80 mi11

\、Magnetic  l ’ 1\-

_proマerties}β1。。。(G)易(G)

逸・1ing me魍\1.

Furnance colledOil que瓜ched

Water quenched

6800    5800

6600    5900

6500    5900

猛(Oe)

242244239

(BH>

(MG Oe)

0.72

0.691

0.69

§400§

 300{

§200己

.ミ

ミ ,00

    0     200    400    600    800-

      Aηρθo’1η9τθmρerσナひrθ1。0/

Fig。8 Eff㏄t of annealing temperature on Vicker’s

   hardness 60%Fe-Cu alloy, aftef:reduced by

   cold draw血g to 98.6%of area

(14)R・A・Gfange・V・E・Lambert琴nd J・J・Harrington:

  Trans.ASM,51(1959),377.(15)R.L. Rickett and W. C. Leslie:Trans・ASM,51

  (1959),310.

(16)E.Hombogen and R. C. Glem:Trans.Met.S㏄.

  An㌧1E,218(1960>,1064.

(17)E.Hornboge且:Acta MeL,10(19621,525。

(18>E。Hombogen und H. D. Jurg:Z・Metallk・,55  (1965),691.

(19)添野:金属学会誌,31(1967),1309・

Page 6: 1.緒 し16000G,保磁力15ないし400eの値を得ている.しか

析出物の成長については,Hornbogenら(18)による顕微鏡組

織的研究および理論的研究があるが,著者らはとくに微少

ターゲットを用いたX線マイクロアナライザーや透過電子

顕微鏡などによって明確iにしてゆきたいと考えている.

IV.総 括

 以上の実験結果から,つぎのような結論を得る.

 (1)Fe-Cu合金に線引き加工を施すことによって.合金

中の鉄相は微細化され線引き方向に繊維状に分布してくる

が,その繊維断面はO.1x1.0μ程度であり,まだ単磁区粒

子に相当するまでには至っていない.しかし,このことか

ら加工方法を適当に選択することによって,非磁性相内に

強磁性粒子を微細に分布させる手がかりが得られた.

 (2)加工度を増すにつれて,β400,B.,、B。/.B400はともに

上昇する.とくに保磁力は90%以上の加工度になると著

しく上昇する.40%Fe-Cu合金をたとえば98.6%にまで

冷間加工した場合に,B4。o=8800G, B.=7900G,β瓦=

1050eが得られる.

 (3)合金中の鉄の配合比にほぼ反比例して保磁力は減少

ては,400。C付近で加熱するのがよく,この温度近傍にお

いては保磁力は高温で熱処理するほど短時間で最大値にま

で上昇する.たとえば98.6%に冷間線引した30%Fe-Cu

合金にあっては,400。Cで80分間焼戻すことによって,

.Blooo=6500 G,」Bγ=5900 G, B瓦=・2300eとなる.

 (5)冷間加工後焼戻しを行なうことは磁性向上のために

望ましいものであるが,焼戻温度からの冷却速度はほとん

ど影響を与えない.

 (6)400。C付近で保磁力が急上昇する原因として,微細

なFe相内にCuが析出し,かつ析出物の成長に伴って鉄

相の分断,すなわち鉄相の単磁区化が促進されるものと思

われる.

 (7)Fe-Cu合金に線引き加工と熱処理を施すことによっ

て,半硬質磁性材料としてもすぐれた特性が得られること

がわかった.

 終りに,本研究は明治大学科学技術研究費によるもので

あることを記すと同時に,いつも有益なる御助言をいただ

いている明治大学永倉充教授,山元 洋博士に厚く御礼

を申し上げる。また電子顕微鏡写真の作成に御援助いただ

いた大同製鋼中央研究所長浅田千秋ならびに同研究所

加藤哲男両博士にも厚く感謝の意を表したい.